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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 G10H |
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管理番号 | 1086340 |
異議申立番号 | 異議2002-72733 |
総通号数 | 48 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1993-07-30 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2002-11-14 |
確定日 | 2003-09-03 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第3282675号「電子楽器」の請求項1、2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第3282675号の請求項1ないし2に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続きの経緯 特許第3282675号の請求項1,2に係る発明についての出願は、平成4年1月8日に特許出願され,平成14年3月1日に設定登録されたものである。 その後、その特許について異議申立人、佐藤勝明から特許異議の申立てがなされ、取消理由通知がされ、その指定期間内である平成15年7月22日に訂正請求がなされるとともに特許異議意見書が提出されたものである。 第2 訂正の適否についての判断 1 訂正の内容 平成15年7月22日付け訂正請求によって特許権者が求めている訂正の内容は,次のとおりである。(下線部は訂正箇所) (1)訂正事項a 【請求項1】 デフォルト状態のパンニングデータを記憶するパンニングデータ記憶手段と、 演奏データを記憶するとともに、パンニングをデフォルト状態に戻すことを指示するあるいは所定のパンニング状態に設定することを指示するパンニングデータを、前記演奏データを構成するトラック毎に、記憶する記憶手段と、 該記憶手段から読出した演奏データに基づいて発音を指示するとともに、前記トラックに記憶されたパンニングデータを読出した場合はそのパンニングデータにしたがってパンニングをデフォルト状態に戻すことを指示するまたは所定のパンニング状態に設定することを指示する制御手段と、 上記制御手段からの指示を受けて、前記トラックのパンニングを、前記パンニングデータ記憶手段に記憶されたパンニングデータを読出してデフォルト状態に設定し、または所定のパンニング状態に設定する、パンニング手段とを具備することを特徴とする電子楽器。 (2)訂正事項b 【請求項2】 デフォルト状態のパンニングデータを含む音色データを予め音色毎に記憶した音色データ記億手段と、 演奏データを記憶するとともに、パンニングをデフォルト状態に戻すことを指示するあるいは所定のパンニング状態に設定することを指示するパンニングデータおよび発音する音色を、前記演奏データを構成するトラック毎に、記憶する演奏データ記憶手段と、 該演奏データ記憶手段から続出した演奏データに基づいて発音を指示するとともに、前記トラックに記憶されたパンニングデータを読出した場合はそのパンニングデータにしたがってパンニングをデフォルト状態に戻すことを指示するまたは所定のパンニング状態に設定することを指示する制御手段と、 上記制御手段からの指示を受けて、前記トラックのパンニングを、前記音色データ記憶手段に記憶された前記トラックの音色に対応した前記音色データ中のパンニングデータを読出してデフォルト状態に設定し、または所定のパンニング状態に設定する、パンニング手段とを具備することを特徴とする電子楽器。 (3)訂正事項c 明細書の段落【0010】を全文訂正明細書のとおり訂正する。 2 訂正の目的、新規事項の有無等の判断 (1)上記訂正事項aは,構成要素として「パンニングデータ記憶手段」を追加するとともに,各構成要素の意味を明確にするものであるから,特許請求の範囲の減縮及び不明瞭な記載の釈明を目的とするものである。 (2)上記訂正事項bは,訂正事項aと同様,各構成要素の意味するところを明確にするものであるから,特許請求の範囲の減縮及び不明瞭な記載の釈明を目的とするものである。 (3)上記訂正事項cは,特許請求の範囲の訂正と整合をとるためになされたもので,不明瞭な記載の釈明を目的とするものである。 そして,上記各訂正事項は,新規事項の追加に該当せず,特許法120条の4第2項及び3項で準用する126条2項の規定に適合するので、当該訂正を認める。 第3 特許異議の申し立てについて 1 本件発明 上記第2に記載したとおり、平成15年7月22日付け訂正請求書による訂正請求は認められるところとなったので、本件発明は、同訂正請求書に添付した訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定されるとおりのものである。 (以下,それぞれを「本件発明1」及び「本件発明2」という。) 2 申立の概要 特許異議申立人佐藤勝明は特許異議の申立て時に、証拠として 甲第1号証:特開昭59-102292号公報 甲第2号証:特開平03―266893号公報 甲第3号証:特開昭56―102891号公報 を提出し、本件発明1は、甲第1号証の記載から,当業者が容易に発明できたものであり,また,本件発明2は,甲第1ないし3号証の記載から,当業者が容易に発明できたものであるから特許法29条2項の規定に該当し、取り消されるべきものである旨主張している。 3 当審の判断 (1)各甲号証記載の発明 甲第1号証には次の事項が記載されている。 ア 「楽音発生器4、5で発生した楽音信号は、フィルタ6、7でそれぞれ音色形成された後音像定位回路8、9に送られる。音像定位回路8、9はCPU2からディジタル信号の音像定位情報を受けそれぞれチャンネルA14、16とチャンネルB15,17の二つのレベルの楽音信号を出力する。出力された楽音信号はチャンネルA14、16とチャンネルB15,17ごとに加算されそれぞれ増幅器10、11を経てスピーカ12、13から例えばピアノは左側、バイオリンは右側といったように音像定位されて発音される。」(1頁右下欄15行〜2頁左上欄5行) イ 「第1図に示した記億装置3はRAM(ランダムアクセスメモリ)などからなるもので、楽譜情報を記憶しておきCPU2の制御で自動演奏、自動伴奏させるとともに、音像定位情報の時間的変化や音色の変化なども記憶させることにより各種の音色が移動し交錯する独特の効果を得ることができる。 茲で、前記音像定位情報S4、S2、S1を0〜6までの数値データをとる制御信号としておいた場合、第4図で示すように7個所の音像定位位置を設定できることになる。…そして第5図に示すようなアルベジオ音のパターンデータが前記記憶装置3に記憶されており、それに対して音像定位情報S4、S2、S1として、低音側を左側に音像定位させ、他方、高音側を右側に音像定位させるような数値データとして第5図に示すように設定し、記億装置3に記憶させておく。なお、この場合、各アルベジオ音の音像定位情報S4、S2、S1は16分音符を単位に設定されている。」(2頁右下欄4行〜3頁左上欄9行参照) 甲第2号証には次の事項が記載されている。 ウ 「RAMテーブル70は RAM により構成され、第2図に示すように、割り当て音色番号テーブル領域71及び楽音制御パラメータ領域72に分割されている。割り当て音色番号テーブル領域71はm+1個の割り当て音色番号データASVN(VSSW)を記憶可能な容量を有しており、同領域71の各アドレスは各音色選択スイッチ21を表す音色スイッチデータVSSWにより指定されるようになっている。楽音制御パラメータ領域72はさらに当該電子楽器にて発音可能な楽音の音色数分の領域72a,72b…に細分化されており、各領域72a,72b…は音色番号データVNにより指定されるようになっているとともに、同領域72a,72b…には各音色毎の音量データVOL、スラー効果データSLEF、バンデータPANなどの楽音制御パラメータが記憶されるようになっている。」(4頁右下欄5行〜5頁左上欄1行参照) 甲第3号証には次の事項が記載されている。 エ 「第3図のデータは、第9図に示す如き楽譜を自動演奏するためのものである。アドレスの100、101、102、103番地にはそれぞれ第1、第2、第3、第4曲目の初期音色の音色コードがデータD3〜D0の4ビットに格納されている。アドレスの104番地以降は第1曲目の音休符データが格納されている。1つの音休符データは2ワードで表される。…休符データの第2ワード目のD7〜D4の4ビットは、アドレス10E、10F番地の休符のようにこの休符の前後で演奏音色が変わる場合、この休符以降の音符に指定される音色の音色コードが格納され、音色変更指定のない普通の休符の場合はオール“0”が格納されている。また、音符、休符がそれ以上ない場合はそれ以降のデータは全て“0”が格納されている。」(3頁左下欄6行〜右下欄8行参照) (2)相違点 本件発明1と甲第1号証に記載された発明とを比較すると,次の点において本件発明1は甲第1号証と相違が認められる。 【相違点】パンニングデータがパンニングを所定の状態に設定するだけでなく,デフォルト状態に戻すように構成されていること,そして,このパンニングデータがデフォルト状態では,他のパンニング指示の状態と区別して別途記憶するようにした点 (3)相違点についての判断 一般に複数の値の中から特定の値を選択しデフォルト値として設定することは,通常行われている手段と言えなくもないが,本件発明1の場合,そのデフォルト値を別途記憶手段に記憶したもの,すなわち,所定のパンニング状態に設定することを指示するパンニングデータと,デフォルト状態に設定することを指示するパンニングデータとを別途記憶させることにより,明細書記載の効果である演奏中も含め簡単な操作でデフォルトのパンニング状態に設定することができるものである。 この構成は,単に,所定のパンニング状態の中から特定の状態を規定したものとはいえず,十分な進歩性を認めることができる。 したがって,本件発明1は,デフォルト状態の示唆も記載もない甲第1号証から当業者が容易に発明できたとすることはできず,特許法29条2項の規定に違反して特許されたとすることはできない。 (4)本件発明2について 本件発明2は,本件発明1と主要部を同じくするものであり,甲第2号証及び甲第3号証にも,デフォルト状態の示唆も記載もなく,本件発明1で検討したと同様の理由により,本件発明2についても,当業者が容易に推考できたとはいえない。 4 むすび 以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件発明の請求項1及び2に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 電子楽器 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 デフォルト状態のパンニングデータを記憶するパンニングデータ記憶手段と、 演奏データを記憶するとともに、パンニングをデフォルト状態に戻すことを指示するあるいは所定のパンニング状態に設定することを指示するパンニングデータを、前記演奏データを構成するトラック毎に、記憶する記憶手段と、 該記憶手段から読出した演奏データに基づいて発音を指示するとともに、前記トラックに記憶されたパンニングデータを読出した場合はそのパンニングデータにしたがってパンニングをデフォルト状態に戻すことを指示するまたは所定のパンニング状態に設定することを指示する制御手段と、 上記制御手段からの指示を受けて、前記トラックのパンニングを、前記パンニングデータ記憶手段に記憶されたパンニングデータを読出してデフォルト状態に設定し、または所定のパンニング状態に設定する、パンニング手段とを具備することを特徴とする電子楽器。 【請求項2】 デフォルト状態のパンニングデータを含む音色データを予め音色毎に記憶した音色データ記憶手段と、 演奏データを記憶するとともに、パンニングをデフォルト状態に戻すことを指示するあるいは所定のパンニング状態に設定することを指示するパンニングデータおよび発音する音色を、前記演奏データを構成するトラック毎に、記憶する演奏データ記憶手段と、 該演奏データ記憶手段から読出した演奏データに基づいて発音を指示するとともに、前記トラックに記憶されたパンニングデータを読出した場合はそのパンニングデータにしたがってパンニングをデフォルト状態に戻すことを指示するまたは所定のパンニング状態に設定することを指示する制御手段と、 上記制御手段からの指示を受けて、前記トラックのパンニングを、前記音色データ記憶手段に記憶された前記トラックの音色に対応した前記音色データ中のパンニングデータを読出してデフォルト状態に設定し、または所定のパンニング状態に設定する、パンニング手段とを具備することを特徴とする電子楽器。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】 この発明は、メモリに記憶された所定時間長の演奏データを繰返し読出して演奏音を得る自動伴奏(自動リズムを含む)またはメモリに記憶された任意時間長の演奏データを読出して演奏音を得る自動演奏を行なう電子楽器に関し、特に自動伴奏または自動演奏においても常に所望のパンニングを設定できる電子楽器に関する。 【0002】 【従来の技術】 従来より、電子楽器においてはモノラルで発生した楽音信号を所定の割合で左右の楽音信号に振り分ける処理(いわゆるパンニング)が行なわれている。パンニングを行なうことにより、モノラルで発生した楽音がステレオの所定の位置で発生しているように、楽音の定位する位置を設定することができる。これにより、広がり感のある楽音発生が実現できる。 【0003】 また、自然楽器の中にはピアノのように発音機構が左右に並べられているようなものがある。このような自然楽器では、楽音が発音される位置がその楽音の音高に応じて変化する。例えば、ピアノの演奏者の位置では、音高が低い音は左側から聞こえ、音高が高い音は右側から聞こえる。電子楽器においても、自然楽器のこのような性質を実現するため、発音する楽音の音高に応じてパンニングを変化させるいわゆるキースケールパンニングが実現されている。 【0004】 一方、自動演奏や自動伴奏においてもパンニングは行なわれている。例えば、自動演奏や自動伴奏を行なうためのパターンデータのヘッダ部分にパンニングデータを記憶しておき、自動演奏や自動伴奏を行なうときにこのパンニングデータにしたがってパンニングを行なう電子楽器がある。また、選択した音色などに応じて定められているデフォルトのパンニングデータにしたがってパンニングを行なうものもある。 【0005】 さらに、電子楽器のうちでもいわゆるディジタルシーケンサーなどではMIDI(Musical instrument digatal interface)規格のデータを記憶できるので、パンニングデータについてのコントロールチェンジも記憶できる。したがって、送出すべきMIDIデータ中にパンニングデータについてのコントロールチェンジを入れておけば、動作途中(演奏途中)でもパンニングデータを変更することができる。 【0006】 【発明が解決しようとする課題】 上述したパターンデータのヘッダ部分に記憶したパンニングデータあるいは音色などに応じたデフォルトのパンニングデータを用いて自動演奏や自動伴奏におけるパンニングを実現する方式では、自動演奏や自動伴奏の途中でパンニングを変更することができないという問題点がある。 【0007】 また、ディジタルシーケンサーによれば、コントロールチェンジを用いることにより演奏途中でパンニングを変更することはできる。しかし、一旦パンニングを変更してしまうと、簡単に元のパンニングの状況を再現できない。例えば、音色に応じたパンニングが行なわれているときにコントロールチェンジでパンニングを変更することはできる。しかし、その後に元のパンニングに戻すためには、元のパンニングデータがどれ程の値であったかを電子楽器の動作を停止させて調べ、その調べた値を設定するという面倒な操作を行なわなければならない。 【0008】 さらに、音色にパンニングがプリセットされている電子楽器では、通常、演奏者は各音色にどのようなパンニングがプリセットされているかを知ることができない。したがって、このような電子楽器にMIDIのコントロールチェンジを送ってパンニングを変えてしまうと、元のパンニングに戻すためにはパンニングデータを少しずつ変更して聴感上で確かめたり、リセットを行なうなどしなければならない。 【0009】 この発明は、上述の従来例における問題点に鑑み、自動伴奏や自動演奏途中でパンニングを容易に変更することができ、さらに自動伴奏や自動演奏を停止することなく容易に元のパンニングに戻すことができる電子楽器を提供することを目的とする。 【0010】 【課題を解決するための手段】 この目的を達成するため、請求項1に係る発明は、デフォルト状態のパンニングデータを記憶するパンニングデータ記憶手段と、演奏データを記憶するとともに、パンニングをデフォルト状態に戻すことを指示するあるいは所定のパンニング状態に設定することを指示するパンニングデータを、前記演奏データを構成するトラック毎に、記憶する記憶手段と、該記憶手段から読出した演奏データに基づいて発音を指示するとともに、前記トラックに記憶されたパンニングデータを読出した場合はそのパンニングデータにしたがってパンニングをデフォルト状態に戻すことを指示するまたは所定のパンニング状態に設定することを指示する制御手段と、上記制御手段からの指示を受けて、前記トラックのパンニングを、前記パンニングデータ記憶手段に記憶されたパンニングデータを読出してデフォルト状態に設定し、または所定のパンニング状態に設定する、パンニング手段とを具備することを特徴とする。さらに請求項2に係る発明は、デフォルト状態のパンニングデータを含む音色データを予め音色毎に記憶した音色データ記憶手段と、演奏データを記憶するとともに、パンニングをデフォルト状態に戻すことを指示するあるいは所定のパンニング状態に設定することを指示するパンニングデータおよび発音する音色を、前記演奏データを構成するトラック毎に、記憶する演奏データ記憶手段と、該演奏データ記憶手段から読出した演奏データに基づいて発音を指示するとともに、前記トラックに記憶されたパンニングデータを読出した場合はそのパンニングデータにしたがってパンニングをデフォルト状態に戻すことを指示するまたは所定のパンニング状態に設定することを指示する制御手段と、上記制御手段からの指示を受けて、前記トラックのパンニングを、前記音色データ記憶手段に記憶された前記トラックの音色に対応した前記音色データ中のパンニングデータを読出してデフォルト状態に設定し、または所定のパンニング状態に設定する、パンニング手段とを具備することを特徴とする。 【0011】 上記のパンニングのデフォルト状態および所定の状態には、パンニングデータとして一定値を設定する状態(すなわち、楽音信号を左右に振り分ける割合が一定の状態)は勿論のこと、上述のキースケールパンニングやエンベロープでパンニングを変えるもの、あるいはパンニングを行なわない指定などの種々のパンニングの状態を含む。 【0012】 【作用】 演奏データを記憶する記憶手段の中に、パンニングデータを記憶するようにしており、そのパンニングデータが読み出されたときは、そのデータにしたがってパンニングの状態が設定される。記憶手段に伴奏データとともに記憶されるパンニングデータは、デフォルト状態に戻すあるいは所定の状態に設定することを指示するデータであるので、一旦パンニングを変更した後でも簡単にデフォルト状態に戻すことができる。 【0013】 【実施例】 以下、図面を用いてこの発明の実施例を説明する。ここでは、自動伴奏の機能を有する電子楽器に本発明を適用した例につき説明する。 【0014】 図1は、この発明の一実施例に係る電子楽器のブロック構成を示す。この実施例の電子楽器は、複数の鍵を有する鍵盤1、その鍵盤1からの出力(キ-オン信号、キ-オフ信号、音高情報であるキ-コ-ドなど)をバスライン12に対して受渡しするための鍵盤インタ-フェ-ス2、種々のスイッチや表示装置などを備えたパネル3、このパネル3からの出力をバスライン12に対して受渡しするためのパネルインタ-フェ-ス4、この電子楽器の全体の動作を制御する中央処理装置(CPU)5、このCPU5に対して所定の時間間隔でタイマ割込をかけるタイマ6、CPU5が実行するプログラムおよび各種のテ-ブルや定数などを記憶したリ-ドオンリメモリ(ROM)7、および各種のワ-クレジスタやフラグなどが割当てられているランダムアクセスメモリ(RAM)8を備えている。ROM7には、後述するような(図5)自動伴奏パターンデ-タおよび音色デ-タが記憶されている。 【0015】 また、この電子楽器は、CPU5の指示に基づき所望の楽音信号を形成する音源9、音源9から与えられたパンニングデ-タにしたがってやはり音源9から入力した楽音信号を左右に振り分けるパンニング回路10、およびパンニング回路10からの左右の楽音信号に基づいてそれぞれ楽音を発生する左右のサウンドシステム11L,11Rを備えている。12は双方向のバスラインを示す。 【0016】 次に、図2の詳細図を参照して、パンニング回路10を詳細に説明する。パンニング回路10は、2つの乗算器21L,21Rを有する。パンニング回路10に入力した楽音信号は、これら左右の乗算器21L,21Rに入力する。乗算器21Lは、入力した楽音信号に係数αを乗算してL側(左側)楽音信号として出力する。同様に乗算器21Rは、入力した楽音信号に係数βを乗算してR側(右側)楽音信号として出力する。係数α,βは、音源9から入力する係数である。 【0017】 図3は、パンニングデ-タの値と上記パンニング回路における係数α,βとの関係を示すグラフである。横軸は音源9に与えられたパンニングデ-タ、縦軸はそれに対応して音源9がパンニング回路10へと出力する係数α,βを示す。パンニングデ-タは、CPU5から音源9に与えられる。パンニングデ-タは「0」〜「7」または「9」〜「15」の整数値をとる。 【0018】 グラフ31Lから分かるように、係数αは、パンニングデ-タが「0」のとき「1.0」パンニングデ-タが「2」「3」と増えていくにしたがって「1.0」から徐々に減少し、パンニングデ-タが「15」のとき「0」になる。グラフ31Rから分かるように、係数βは、パンニングデ-タが「0」のとき「0」、パンニングデ-タが「2」「3」と増えていくにしたがって「0」から徐々に増加し、パンニングデ-タが「15」のとき「1.0」になる。これらのグラフはいわゆるサインカ-ブになっている。 【0019】 図2のパンニング回路10の構成および図3のグラフから分かるように、パンニングデ-タが「0」のときL側楽音信号のレベルが最大でR側楽音信号のレベルが「0」となる。パンニングデ-タが「2」「3」と増加していくにしたがって、(L側楽音信号のレベルがR側楽音信号のレベルより大きい範囲内で)L側楽音信号のレベルが徐々に減少しR側楽音信号のレベルが徐々に増加する。そして、パンニングデ-タが「7」のときL側楽音信号とR側楽音信号とが同レベルとなる。さらに、パンニングデ-タが「9」「10」と増加していくにしたがって、(L側楽音信号のレベルがR側楽音信号のレベルより小さい範囲内で)L側楽音信号のレベルが徐々に減少しR側楽音信号のレベルが徐々に増加する。パンニングデ-タが「15」のときL側楽音信号のレベルが「0」でR側楽音信号のレベルが最大となる。このようにして、パンニング回路10は入力楽音信号をL側とR側の2系統に振り分けて出力する。 【0020】 次に、図4のパネル外観図を参照して、この実施例の電子楽器のパネル上のスイッチおよびその機能につき説明する。図4において、パネル40(図1のパネル3の一部に相当する)上には、各種のスイッチおよび表示装置が配置されている。21は10個の音色選択スイッチ、23は5個のスタイル選択スイッチ、24は各スタイル選択スイッチの近くに設けられたLEDである。 【0021】 また、25は自動伴奏の開始を指示するためのスタ-トスイッチ、27は自動伴奏の終了を指示するためのストップスイッチである。スタ-トスイッチ25およびストップスイッチ27の近くにも、それぞれLED26,28が設けられている。さらに、29および30は自動伴奏のテンポを設定するテンポ設定スイッチであり、29はテンポを上げるためのテンポアップスイッチ、30はテンポを下げるためのテンポダウンスイッチである。31は現在設定されているテンポを1分間の4分音符の数によって示す表示装置である。 【0022】 各スタイル選択スイッチ23を押下することにより、自動伴奏のスタイルを選択することができる。例えばスタイル選択スイッチ23-1を押下すると8ビ-ト、スタイル選択スイッチ23-2を押下するとサンバ、…というようにスタイルを選択でき、以後は選択されたスタイルで自動伴奏が可能となる。なお、押下したスタイル選択スイッチ23の近くのLED24が点灯して、現在選択されている自動伴奏のスタイルが分かるようになっている。 【0023】 スタ-トスイッチ25を押下することによりその時点で選択されているスタイルで自動伴奏が開始される。このときLED26が点灯する。ストップスイッチ27を押下することにより自動伴奏が停止する。このときLED28が点灯する。 【0024】 テンポアップスイッチ29を押下すると、その押下回数あるいは押下時間に応じて自動伴奏のテンポが上げられる。これに伴い、表示装置31に表示されている数値は増加する。一方、テンポダウンスイッチ30を押下すると、その押下回数あるいは押下時間に応じて自動伴奏のテンポが下げられる。これに伴い、表示装置31に表示されている数値は減少する。 【0025】 次に、この実施例の電子楽器で用いているレジスタおよびテ-ブルなどを説明する。 (a)RUN:ランフラグである。「1」で自動伴奏実行中、「0」で自動伴奏停止中を示す。 (b)PC:割込カウンタである。タイマ6によるタイマ割込があったとき「1」カウントアップされていくカウンタである。所定数F0(「95」よりも大きい値とする)を上限とする。この実施例の電子楽器では、1小節を96個の小時間区間に等分割し、その各タイミングで自動伴奏のために発音すべき楽音があれば発音するようになっている。割込カウンタPCがカウントアップされるタイマ割込の時間間隔はこの小区間の時間間隔に等しくされている。 【0026】 (c)OC:自動伴奏処理カウンタである。自動伴奏の発音を行なうべきタイミングで「1」カウントアップされる。このタイミングは上述したようにタイマ割込のタイミングに等しい。ただし、この実施例では、自動伴奏処理カウンタOCの値と上記の割込カウンタPCの値とを比較することによりタイマ割込があったことを検出するようにしている。その処理手順については、フロ-チャ-トを参照して後述する。 (d)TN:自動伴奏として発音される楽音(自動伴奏音)の音色を特定する音色番号が設定される音色番号レジスタである。自動伴奏音の音色番号は、後述する自動伴奏パターンデータにトラックごとにあらかじめ記憶されている。 【0027】 (e)TMP:現在設定されている自動伴奏のテンポの値が設定されるテンポデータレジスタである。 (f)APAN:現在設定されているパンニングデータ(パンデータ)が設定されるパンデータレジスタである。パンデータとしては図3のグラフの横軸に示した「0」〜「15」の整数値をとる。グラフ上では「8」がないが、パンデータAPANが「8」のときはパンニングをデフォルト状態とすることを示す。この実施例では現在設定されている音色に応じたパンデータがデフォルト値とされている。 (g)TRP:自動伴奏パターンデータを順次読出して処理していく際のトラックポインタである。 (h)TIM:自動伴奏パターンデータのうちのタイミングデータを読出してセットするためのタイミングデータレジスタである。 【0028】 (i)自動伴奏パターンデータ:図5(a)に自動伴奏パターンデータの内容を示す。自動伴奏パターンデータは各スタイルごとに用意されており、図4のスタイル選択スイッチ23により選択されたスタイルに対応する自動伴奏パターンデータが読み出されて自動伴奏が行なわれることとなる。各スタイルの自動伴奏パターンデータは4つのトラックデータに分かれている。各トラックデータは1つの音色で発音される1小節分のパターンを表す。例えば、スタイル2の自動伴奏パターンデータの4つのトラックのうち、トラック1はドラム、トラック2はベース、トラック3はピアノ、…というように割り当てられている。 【0029】 各トラックデータは、先頭にヘッダデータとして音色番号とテンポデータを有する。音色番号はそのトラックのパターンで発音される楽音の音色を特定する番号である。テンポデータはそのトラックのパターンで自動伴奏音を発音するときのテンポの初期値を表す。ヘッダデータに引き続いて伴奏データが並べられる。伴奏データは、発音のタイミングを示すタイミングデータ、音高を示すノートナンバ、および音量を示すベロシティデータからなる。なお、ベロシティが「0」以外の値のときその伴奏データはキーオンを示し、ベロシティが「0」のときその伴奏データはキーオフを示す。 【0030】 トラックデータ中にはパンデータを含めることができる。パンデータは伴奏データのどこにいれてもよい。パンデータは、上述したように「0」〜「15」の整数値をとり、「8」のときはデフォルトに戻す指示、それ以外の値のときはその値にパンニングを設定する指示を示す。 【0031】 (j)音色データ:図5(b)に音色データの内容の概略を示す。音色データは各音色ごとに用意されている。演奏者の演奏に対しては、図4の音色選択スイッチ21により選択されている音色に対応する音色データが読み出されてその音色で楽音が発生される。また、自動伴奏に対しては、各トラックデータのヘッダの音色番号に応じた音色データが読み出されてその音色で自動伴奏音が発生される。 なお、上記のレジスタなどの名称は、そのレジスタなどを表すとともに、その内容をも表すものとする。例えば、PCというときは、割込カウンタレジスタそのものを表すとともに、このレジスタに記憶された割込カウンタの値(カウンタ値)をも表すものとする。 【0032】 次に、図6〜図11のフローチャートを参照して、この実施例の電子楽器の動作を説明する。 【0033】 図6のメインルーチンを参照して、この電子楽器の動作がスタートすると、まずステップS1で各レジスタなどのイニシャライズを行う。次に、ステップS2でパネル処理を行ない、ステップS3で鍵盤処理を行ない、ステップS4で自動伴奏処理を行ない、ステップS5でその他の処理を行ない、ステップS2に戻る。そして、ステップS2以降の処理を繰り返す。 【0034】 図7のフローチャートを参照して、タイマインタラプトルーチンを説明する。タイマインタラプトルーチンは、タイマ6からタイマ割込があったとき実行される。タイマ6のタイマ割込は1小節の間に等時間間隔で96回行なわれる。その時間間隔は、レジスタTMPの値に応じて定められる。 【0035】 タイマインタラプトルーチンにおいては、ステップS11で割込カウンタPCが所定値F0より小さいか否かを判別する。小さいときは、ステップS12で割込カウンタPCを「1」カウントアップし、リターンする。割込カウンタPCが所定値F0より小さくないときは、そのままリターンする。 【0036】 次に図8を参照して、パネル処理ルーチン(図6ステップS2)につき説明する。パネル処理ルーチンでは、まず、ステップS21で伴奏パターン選択処理を行なう。これはスタイル選択スイッチ23のオンイベントがあったかどうかを判別して、オンイベントがあったときにそのスイッチに対応するスタイルの伴奏パターンを選択する処理である。次に、ステップS22でスタ-トスイッチ25のオンイベントがあるか否かを判別する。スタートスイッチ25のオンイベントがある場合はステップS23へ、ない場合はステップS33へ、進む。 【0037】 ステップS23でランフラグRUNをオン(「1」)に設定し、ステップS24で割込カウンタPCと自動伴奏処理カウンタOCを初期化する。初期値は、割込カウンタPCが「1」、自動伴奏処理カウンタOCが「0」である。ここでは、自動伴奏開始時に必ず自動伴奏処理を行なうように強制的に割込カウンタPCを自動伴奏処理カウンタOCより大きく設定している。これらカウンタの初期値とカウントアップのタイミング、および自動伴奏のタイミングの検出については、後に詳しく説明する。 【0038】 次に、ステップS25で選択されているスタイルの自動伴奏パターンデータのヘッダデータを読出し、音色番号を音色番号レジスタTNに、テンポデータをテンポデータレジスタTMPに、それぞれ設定する。なおここでは1つのトラックのみに着目して以下説明するが、選択されたスタイルのパターンデータの全トラックについて同様の処理が行なわれるものとする。次に、ステップS26でパンデータレジスタAPANに「8」を設定する。これはパンデータとしてデフォルト値を用いることを示す。 【0039】 次に、ステップS27で自動伴奏パターンデータを読出すためのトラックポインタTRPに初期値として「0」をセットし、自動伴奏パターンデータの先頭のデータを読出す。そして、ステップS28でその読出したデータが、タイミングデータか、パンデータか、またはその他のデータか、を判別する。タイミングデータのときはステップS29に、パンデータのときはステップS30に、その他のデータのときはステップS31に、それぞれ分岐する。 【0040】 読出したパターンデータがタイミングデータのときは、ステップS29でそのタイミングデータをタイミングデータレジスタTIMにセットし、ステップS33に進む。読出したパターンデータがパンデータのときは、ステップS30でそのパンデータをパンデータレジスタAPANにセットし、ステップS32に進む。読出したパターンデータがその他のデータのときは、ステップS31でそのデータに対する処理を行ない、ステップS32に進む。ステップS32でトラックポインタTRPを「1」進めて次のパターンデータを読出し、ステップS28に戻る。 【0041】 ステップS33ではストップスイッチ27のオンイベントがあるか否かを判別する。ストップスイッチ27のオンイベントがある場合は、自動伴奏を停止させるということであるからステップS34へ、ない場合はステップS36へ、進む。ステップS34で割込カウンタPCを上限値であるF0とし、ステップS35でランフラグRUNをオフ(「0」)として、ステップS36に進む。ステップS33でストップスイッチ27のオンイベントがない場合は、ステップS36に進む。 【0042】 ステップS36では、テンポ設定処理を行なう。テンポ設定処理は、テンポ設定スイッチ29,30のオンイベントがあったかどうかを判別して、オンイベントがあったときに新しいテンポの値をテンポレジスタTMPに設定する処理である。ステップS36の後、リターンする。 【0043】 次に図9のフローチャートを参照して、図6のステップS4の自動伴奏処理につき説明する。自動伴奏処理においては、まず、ステップS41でランフラグRUNがオンされているかを判別する。ランフラグRUNがオンされていないときは、自動伴奏処理を行なう必要がないので、そのままリターンする。ランフラグRUNがオンされているときは、ステップS42で割込カウンタPCが自動伴奏処理カウンタOCより大きいかどうか判別する。割込カウンタPCが自動伴奏処理カウンタOCより大きくないときは、自動伴奏処理を行なうタイミングではないということであるから、そのままリターンする。 【0044】 ステップS42で割込カウンタPCが自動伴奏処理カウンタOCより大きいときは、タイマ割込が発生して割込カウンタPCがカウントアップされたということであり、自動伴奏処理を行なうタイミングであるということであるから、ステップS43に進む。 【0045】 ステップS43で自動伴奏処理カウンタOCとタイミングデータTIMが一致しているかどうか判別する。一致しているときは、現タイミングで発生すべき自動伴奏音があるということだから、自動伴奏の楽音発生処理などを行なうべくステップS44に進む。カウンタOCとタイミングデータTIMが一致していないときは、現タイミングで発生すべき自動伴奏音がないということであるから、ステップS54に分岐する。 【0046】 ステップS44では現在トラックポインタTRPが指しているパターンデータからノートナンバおよびベロシティデータを読出す。次に、ステップS45で読出したベロシティが「0」かどうか判別する。ベロシティが「0」でないときは、自動伴奏音の発音処理を行なうべく、ステップS46でノートナンバおよびベロシティとともにその時点のパンデータAPANをパラメータとして発音ルーチン(図10)をコールする。これにより、指示された音高(ノートナンバ)および音量(ベロシティ)で、かつ指示されたパンデータにしたがうパンニングで自動伴奏音が発生される。 【0047】 ステップS45でベロシティが「0」のときは、自動伴奏音の消音が指示されているということだから、ステップS47で対応するノートナンバの楽音を発音しているチャンネルのキーオフを音源9に指示し、消音を行なう。ステップS46、S47の後、ステップS48でトラックポインタTRPを「1」進めて次のパターンデータを読出し、ステップS49に進む。 【0048】 ステップS49で読出したパターンデータが、タイミングデータか、パンデータか、その他のデータか、またはエンドデータか、を判別する。タイミングデータのときはステップS50に、パンデータのときはステップS51に、その他のデータのときはステップS52に、エンドデータのときはステップS53に、それぞれ分岐する。 【0049】 読出したパターンデータがタイミングデータのときは、ステップS50でそのタイミングデータをタイミングデータレジスタTIMにセットし、ステップS54に進む。読出したパターンデータがパンデータのときは、ステップS51でそのパンデータをパンデータレジスタAPANにセットし、ステップS48に戻る。読出したパターンデータがその他のデータのときは、ステップS52でそのデータに対する処理を行ない、ステップS48に戻る。読出したパターンデータがエンドデータのときは、再びパターンデータの先頭に戻るため、ステップS53でパンデータAPANをデフォルト値の「8」としトラックポインタTRPを「0」に初期化してパターンデータの先頭のデータを読出し、ステップS49に戻る。 【0050】 次に、ステップS54では自動伴奏処理カウンタOCが「95」であるかどうか判別する。カウンタOCが「95」のときは、現在のタイミングが小節の最後であるということだから、ステップS56で自動伴奏処理カウンタOCおよび割込カウンタPCを「0」とし、リターンする。ステップS54でカウンタOCが「95」でないときは、ステップS55でカウンタPCと同じ値になるようにカウンタOCを「1」カウントアップして、リターンする。 【0051】 次に図10のフローチャートを参照して、図9のステップS46の発音処理につき説明する。発音処理ルーチンでは、まず、ステップS61で発音チャンネル割当て処理を行なう。次に、ステップS62で音色番号TNに対応する音色データ(図5(b))をメモリから読出し、ステップS63でパンデータAPANがデフォルト指示の「8」であるかどうか判別する。 【0052】 パンデータAPANが「8」のときは、音色に対応するパンデータをそのまま用いればよいから、ステップS64で音色データ(図5(b)で示したように既に音色に対応するパンデータを含んでいる)を先のステップS61で割当てられたチャンネルに送出し、ステップS66に進む。ステップS63でパンデータAPANが「8」でないときは、そのパンデータの値に設定すると言うことだから、ステップS65で音色データのうちパンデータのみをパンデータAPANに置換え、その他の音色データとともに割当てられたチャンネルに送出し、ステップS66に進む。 【0053】 ステップS66でノートナンバ、ベロシティおよびキーオン信号をそのチャンネルに送出して、リターンする。これにより指示されたパンニングにて自動伴奏音が発音される。 【0054】 次に図11のフローチャートを参照して、図6ステップS5のその他の処理のうちタイマ処理ルーチンにつき説明する。タイマ処理ルーチンでは、まず、ステップS71でテンポレジスタTMPの値が変更されているかどうか判別する。変更されているときは、ステップS72で新しいテンポTMPをタイマに送出し、リターンする。これにより、タイマ6はテンポTMPの値に応じた時間間隔でタイマ割込をかけるように設定される。ステップS71でテンポTMPの変更がないときは、そのままリターンする。 【0055】 この実施例の電子楽器では、自動伴奏が行なわれていない状態では図9の自動伴奏処理でステップS41からすぐにリターンし、自動伴奏処理は行なわれない。このときタイマ割込はかかるがカウンタPCは上限値F0で保持されたままとなる。 【0056】 スタートスイッチ25をオンすると図8のステップS23でランフラグRUNがオンされ自動伴奏が開始する。自動伴奏音を発音するタイミングは、割込カウンタPCと自動伴奏処理カウンタOCにより判断するようになっている。すなわち、まず初期値として図8のステップS24で割込カウンタPCが「1」に、自動伴奏処理カウンタOCが「0」に設定される。強制的に割込カウンタPCが自動伴奏処理カウンタOCよりも大きい値とされるため、図9の自動伴奏処理ではステップS42からS43に進み発音すべき自動伴奏音(96等分した小節の先頭タイミングの楽音)があればその発音が実行される。そして、ステップS54からS55に進み、自動伴奏処理カウンタOCが「1」カウントアップされる。したがって、割込カウンタPCおよび自動伴奏処理カウンタOCはともに「1」となる。 【0057】 割込カウンタPCおよび自動伴奏処理カウンタOCがともに「1」となるので、次からの自動伴奏処理ではステップS42からすぐにリターンする。所定の時間の後、タイマ割込がかかるとタイマインタラプトルーチン(図7)により割込カウンタPCがカウントアップされ、「1」から「2」になる。すると、割込カウンタPCが「2」、自動伴奏処理カウンタOCが「1」であるので、次の自動伴奏処理ではステップS42からS43に進み発音すべき自動伴奏音(96等分した小節の第2番目のタイミングの楽音)があればその発音が実行される。そして、ステップS54からS55に進み、自動伴奏処理カウンタOCはカウントアップされ「2」となる。 【0058】 割込カウンタPCおよび自動伴奏処理カウンタOCはともに「2」となるので、次からの自動伴奏処理ではステップS42からすぐにリターンする。以上のような処理を繰返し、タイマ割込で割込カウンタPCが「1」進み自動伴奏処理カウンタOCより「1」大きくなると、発音処理が行なわれ自動伴奏処理カウンタOCが「1」進む。そして、96等分した小節の最後のタイミングでステップS42からS43に進んだとき、自動伴奏処理カウンタOCは「95」であるのでステップS54からS55に進む。そして、次の小節の先頭タイミングを検出する準備として割込カウンタPCおよび自動伴奏処理カウンタOCは、ともに「0」とされる。 【0059】 上記の実施例によれば、パターンデータ中にパンデータを含めることができ、そのパンデータが「0」〜「7」または「9」〜「15」のときは、そのパンデータにしたがったパンニングで自動伴奏音が発音される。また、パターンデータ中のパンデータが「8」のときは、デフォルトのパンデータとして音色に応じたパンデータでパンニングが実行される。したがって、自動伴奏の途中で容易にパンニングを変更でき、変更後も容易に元のパンニングに戻すことができる。 【0060】 なお、上記の実施例は自動伴奏装置つきの電子楽器に本発明を適用した例であるが、本発明は自動演奏装置に対しても適用することができる。例えば、シーケンサなどに適用する場合は、デフォルトの指定とパンニングの指定とを識別するコードを記憶しておき、読出した後でそれを識別し、その指定に基づいてパンニングを制御すればよい。 【0061】 また、上記の実施例ではパターンデータ中に出現したパンニングデータの値にしたがってパンニングを行なうようにしているが、値そのものに基づくパンニングを行なうのではなく、所定のパンエンベロープでパンニングを行なったり、スケーリングパンを行なうなどの指示を示すコードを含めて、これらのコードが出現したときにはそのコードにしたがったパンニングの状態とするようにしてもよい。 【0062】 さらに、上記実施例ではモノラル信号を左右に振り分けるパンニングを行なう例を説明したが、左右とは限らず、サウンドシステムのスピーカの配置に応じて振り分けるようにしてよい。 【0063】 【発明の効果】 以上説明したように、この発明によれば、自動伴奏または自動演奏のための伴奏データを記憶する記憶手段の中に、パンニングデータを記憶するようにしており、そのパンニングデータが読み出されたときは、そのデータにしたがってパンニングの状態が設定され、さらにデフォルト状態に戻す指定もできるので、自動伴奏や自動演奏途中でパンニングを容易に変更することができ、さらに自動伴奏や自動演奏を停止することなく容易に元のパンニングに戻すことができる。 【0064】 近年ではエンベロープでパンニングを動かしていくもの、音高によってパンニングを異ならせるスケーリングパン、あるいは既にパンニングの状態も含めてステレオサンプリングしたデータを再生するものなど、種々のパンニングが用いられるが、この発明によれば、このようなパンニングを自動伴奏や自動演奏に取り入れたり、逆にそれらのパンニングを外したりできる。したがって、種々のパンニングを積極的に取入れたり、曲のバランスを崩すと思われるときは外すなど、柔軟に自動演奏や自動伴奏のパンニングを設定できる。これにより、自動演奏や自動伴奏による表現がより豊かになる。さらに、音色に適したパンニングが種々設定できるため、スタイルのバリエーションを増やすこともできる。 【図面の簡単な説明】 【図1】 この発明の一実施例に係る電子楽器のブロック構成図 【図2】 パンニング回路の詳細な構成図 【図3】 パンニングデ-タとパンニング回路の係数α,βとの関係図 【図4】 この実施例の電子楽器のパネル外観図 【図5】 自動伴奏パターンデータおよび音色データの詳細図 【図6】 メインルーチンのフローチャート 【図7】 タイマインタラプトルーチンのフローチャート 【図8】 パネル処理ルーチンのフローチャート 【図9】 自動伴奏処理ルーチンのフローチャート 【図10】 発音処理ルーチンのフローチャート 【図11】 タイマ処理ルーチンのフローチャート 【符号の説明】 1…鍵盤、2…鍵盤インタ-フェ-ス、3…パネル、4…パネルインタ-フェ-ス、5…中央処理装置(CPU)、6…タイマ、7…リ-ドオンリメモリ(ROM)、8…ランダムアクセスメモリ(RAM)、9…音源、10…パンニング回路、11L,11R…サウンドシステム、12…バスライン。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2003-08-15 |
出願番号 | 特願平4-19477 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
YA
(G10H)
|
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 千葉 輝久 |
特許庁審判長 |
杉山 務 |
特許庁審判官 |
小林秀美 小松 正 |
登録日 | 2002-03-01 |
登録番号 | 特許第3282675号(P3282675) |
権利者 | ヤマハ株式会社 |
発明の名称 | 電子楽器 |
代理人 | 矢島 保夫 |
代理人 | 矢島 保夫 |