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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  D01F
管理番号 1086386
異議申立番号 異議2001-72500  
総通号数 48 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1994-06-07 
種別 異議の決定 
異議申立日 2001-09-11 
確定日 2003-07-30 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3144919号「研磨用ナイロン610モノフィラメント」の請求項1ないし3に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3144919号の請求項1に係る特許を取り消す。 
理由 I.手続の経緯
本件特許第3144919号は、平成4年11月20日に出願され、平成13年1月5日にその特許権の設定登録がされ、その後、東レ・モノフィラメント株式会社より特許異議の申立てがされ、平成14年7月4日付け取消理由が通知され、その指定期間内である同年9月13日に訂正請求がされ、更にその後、平成15年2月4日付け取消理由が通知されたものである。

II.通知された平成15年2月4日付け取消理由
取消理由の内容は、以下のとおりである。

「1.訂正の可否についての判断
平成14年9月13日付けの訂正請求は、
a.特許請求の範囲の記載の請求項1の、
「相対粘度が3.5〜5.0であり、砥材粒子を10〜50重量%含有することを特徴とする研磨用ナイロン610モノフィラメント。」を
「相対粘度が3.5〜5.0であり、砥材粒子を10〜50重量%及び熱安定剤としてのヨウ化銅を含有し、ボイド率が4.2%以下であることを特徴とする耐久性に優れた水をスプレーしながら作業する研磨用ナイロン610モノフィラメント。」と訂正する。
b.特許請求の範囲の記載の請求項2及び3を削除する。
c.明細書の段落【0004】の
「【課題を解決するための手段】本発明者らは上記目的を達成するために鋭意検討した結果本発明に到達した。すなわち、本発明は、相対粘度が3.5〜5.0であり、砥材粒子を10〜50重量%含有することを特徴とする研磨用ナイロン610モノフィラメントである。」を
「【課題を解決するための手段】本発明者らは上記目的を達成するために鋭意検討した結果本発明に到達した。すなわち、本発明は、相対粘度が3.5〜5.0であり、砥材粒子を10〜50重量%及び熱安定剤としてのヨウ化銅を含有し、ボイド率が4.2%以下であることを特徴とする耐久性に優れた水をスプレーしながら作業する研磨用ナイロン610モノフィラメントである。」と訂正する。
d.明細書の段落【0014】の、
「ヨウ化鋼」を
「ヨウ化銅」と訂正する。
e.明細書の段落【0017】の、
「【実施例2】」を
「【比較例2】」と訂正する。
というものである。
上記各訂正事項についてみると、
a.請求項1に(i)「熱安定剤としてのヨウ化銅を含有し」、(ii)「ボイド率が4.2%以下である」、(iii)「耐久性に優れた」及び(iv)「水をスプレーしながら作業する」を付加する訂正は、それぞれ訂正前の明細書の、(i)「その改良策として、熱安定剤であるヨウ化銅を添加(特開平4-41183号公報)する方法が開示されている・・・」(段落【0002】)、「例えば熱安定剤としてはハロゲン化銅等・・・を含ませることもできる。」(段落【0006】)及び「【実施例1】・・・ナイロン610のペレット50Kgに配合し、その全量に対してヨウ化鋼(当審註:下記のとおり、「ヨウ化銅」の誤記と認める。)を0.02重量%添加して150リットルのタンブラー型ミキサーで均一に混合した。」、(ii)「ボイド率が4.2%以下であることを特徴とする請求項1記載の研磨用ナイロン610モノフィラメント。」(【請求項3】)、(iii)「本発明の目的は、耐久性を向上させることにより研磨力、研削力を充分に発揮できる研磨用モノフィラメントを提供することにある。」(段落【0003】)及び「この様にして、本発明によると非常に耐久性の優れた研磨用モノフィラメントが得られる。」(段落【0010】)、そして(iv)「・・・これら工業用ブラシを実用する場合、・・・ブラシが研磨、研削面に接触する箇所に水、温水及び各種エマルジョン液等の液体を散布しつつ作業することがほとんどである。」(段落【0002】)及び「1)耐久性:総本数30本の研磨用モノフィラメントの円筒状のロールに中心から放射状になるように円周面状に固定しこのロールを静止した鋼板の表面に1200rpmで回転衝突させ、その衝突面に水温45℃×150リットル/hrでスプレーしながら屈曲疲労により研磨用モノフィラメントの糸折れが開始するまでの時間(分)で耐久性を表わす。」(段落【0006】)との記載に基づいて「研磨用ナイロン610モノフィラメント」を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする明細書の訂正に該当するものである。
b.請求項2及び3を削除する訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とする明細書の訂正に該当するものである。
c.段落【0004】に「熱安定剤としてのヨウ化銅を含有し、ボイド率が4.2%以下であることを特徴とする耐久性に優れた水をスプレーしながら作業する」を付加する訂正は、上記訂正事項a.による特許請求の範囲の訂正に整合させるためのものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とする明細書の訂正に該当するものである。
d.段落【0014】の「ヨウ化鋼」を「ヨウ化銅」とする訂正は、通常の技術用語ではない「ヨウ化鋼」なる記載を、訂正前の明細書の「・・・熱安定剤であるヨウ化銅を添加(特開平4-41183号公報)する方法が開示されている・・・」(段落【0002】)及び「例えば熱安定剤としてはハロゲン化銅等・・・を含ませることもできる。」(段落【0006】)の記載に基づいて「ヨウ化銅」と訂正するものであるから、誤記の訂正を目的とする明細書の訂正に該当するものである。
e.段落【0017】の「【実施例2】」を「【比較例2】」とする訂正は、特許請求の範囲に記載された範囲に含まれない「相対粘度」を呈する「実施例2」について、【表1】の記載に基づいて「比較例2」と訂正するものであるから、誤記の訂正を目的とする明細書の訂正に該当するものである。
そして、上記訂正は、いずれも願書に添付した明細書又は図面の範囲内においてしたものであり、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
よって、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書、第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

2.本件発明
本件請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、訂正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。

3.刊行物
刊行物1:特開平4-300166号公報(特許異議申立人東レ・モノフィラメント株式会社が提出した甲第1号証)
刊行物2:特開昭61-76279号公報(同甲第3号証)
刊行物3:特開平4-41183号公報
実験報告書:平成13年8月24日 西村 紘紀 作成(同甲第2号証)

刊行物1、2及び実験報告書には、特許異議申立人東レ・モノフィラメント株式会社が提出した特許異議申立書の第5頁第3行〜第10頁第7行(「b.証拠の説明・・・差異を認めることができない。」)に指摘された事項が記載されている。
また、刊行物3には、下記の事項が記載されている。
(3-1)「研磨砥粒を含有するポリアミド系熱可塑性高分子樹脂フィラメントから成る研磨用繊維において、該繊維にヨウ化銅を含有せしめて耐湿熱性を改善した研磨用繊維。」(特許請求の範囲)
(3-2)「本発明に用いるポリアミド系熱可塑性高分子樹脂としてはナイロン6、ナイロン66、ナイロン610・・・である。」(第2頁左上欄第12〜16行)
(3-3)「金属表面等の研削、研磨を、熱可塑性高分子樹脂に砥粒を混入せしめた研磨用繊維から作られたブラシで行う場合、ブラシを高速で回転させ、かつ被研削物にブラシを押付けて行うため、摩擦熱が発生し、研磨用繊維が溶着する等の事故が発生する問題がある。この問題を解決するため、水をスプレーする方法等が行われている。しかしブラシを、長時間連続して使用する場合、ブラシは高温、多湿の湿熱状態にさらされるため、研磨用繊維に対して湿熱加水分解による劣化が発生し、研磨用繊維の折損等の事故が発生する。・・・本発明は従来公知の研磨用繊維の有する問題点を解決して耐湿熱性が改善された研磨用繊維を提供することを目的とする。」(第1頁右欄第1〜16行)

4.特許法第29条第2項の規定違反について
刊行物1及び2には、本件発明と軌を一にする、「砥材粒子を含有し、耐久性に優れた研磨用ナイロン610モノフィラメント」の発明が記載(「耐久性」については、刊行物1の第6欄【発明の効果】の項及び刊行物2の第2頁左上欄第4〜7行参照。)されており、相対粘度範囲及び砥材粒子の含有率についても本件発明と実質的に一致(相対粘度については実験報告書参照。)している。
刊行物1及び2には、本件発明における「ボイド率が4.2%以下」という点について直接的には記載されていないが、刊行物2には、「相対粘度が2.7未満では、溶融紡糸時のポリマーの状態が不安定となり、空洞(ボイド)、コブ糸及び糸径斑が発生し、充分な糸条が得られない。」(第2頁右上欄第7〜9行)と記載されており、紡糸時のポリマーの相対粘度がボイドの発生に密接な関係を有すること、及び、糸条の品質上、ボイドが好ましくないとの認識が示されているのであるから、紡糸工程においてポリマーの相対粘度を調整しボイドの発生を極力抑制して糸条を生成させることは当業者が当然配慮すべきことというべきであり、そのボイドの抑制程度を本件発明のように設定することは、製品に付与すべき性能に応じて適宜なし得たものというほかはない。
また、刊行物1及び2には、本件発明における「熱安定剤としてのヨウ化銅を含有」する点及び「水をスプレーしながら作業する」点について記載されていないが、刊行物3には「研磨砥粒を含有するポリアミド系熱可塑性高分子樹脂フィラメントから成る研磨用繊維において、該繊維にヨウ化銅を含有せしめて耐湿熱性を改善した研磨用繊維」(摘記事項(3-1))が記載されており、このポリアミド系熱可塑性高分子樹脂としてナイロン610等が用いられること(摘記事項(3-2))及び当該繊維が、水をスプレーする方法等の湿熱下の使用による劣化防止を目指したものであること(摘記事項(3-3))も記載されている。 そうすると、刊行物1及び2に記載された発明においてこの技術を適用し、フィラメントを水をスプレーしながら作業する環境で用いる場合に当該フィラメント中にヨウ化銅を含有せしめて本件発明のようにすることは、当業者が容易に想到し得たものというべきである。
そして、これら「ボイド率の限定」、「水スプレー下の作業」及び「ヨウ化銅の含有」を併用することにより、特に予測を超える作用効果を生ずるものとも認められない。
したがって、本件発明は、刊行物1〜3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができた発明であるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

5.まとめ
以上のとおりであるから、本件請求項1に係る発明についての特許は、拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものである。
なお、再度の訂正請求を行う場合には、他の訂正請求を取り下げた上で行う必要がある。」

III.訂正の適否についての判断
訂正の内容及びその適否についての判断は、先に「II」において摘示した、取消理由の内容の「1.訂正の可否についての判断」にあるとおりであって、当該訂正は認められるものである。

IV.特許異議の申立についての判断
本件特許第3144919号は、訂正された特許明細書の記載から見て、その特許請求の範囲請求項1に記載されたとおりのものであると認める。
これに対して、先に「I」で述べたように平成15年2月4日付けの取消理由を通知し期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、特許権者からは何らの応答もない。
そして、上記の取消理由は妥当なものと認められるので、本件特許は、この取消理由によって取り消すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
研磨用ナイロン610モノフィラメント
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 相対粘度が3.5〜5.0であり、砥材粒子を10〜50重量%及び熱安定剤としてのヨウ化銅を含有し、ボイド率が4.2%以下であることを特徴とする耐久性に優れた水をスプレーしながら作業する研磨用ナイロン610モノフィラメント。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は研磨用モノフィラメントに関するものである。更に詳しくは、ブラシロール等で金属類の表面を研磨、研削する際、その耐久性に優れ工業用ブラシの用途に適した研磨用モノフィラメントに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、工業用ブラシ等の研磨、研削材分野において砥材粒子を含有する熱可塑性樹脂からできたモノフィラメントを用いることはよく知られている。熱可塑性樹脂としては、耐久性に優れているナイロン6、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン6/66(ナイロン6成分とナイロン66成分とのコポリマー)及びナイロン12のポリアミドが主として使用されている。ところで、これら工業用ブラシを実用する場合、研磨、研削工程で発生する摩擦熱を拡散し蓄熱を防止すること、及び研磨、研削面を清浄化することを目的として、ブラシが研磨、研削面に接触する箇所に水、温水及び各種エマルジョン液等の液体を散布しつつ作業することがほとんどである。従来から使用されているモノフィラメントはブラッシング中に湿熱劣化及び酸化劣化等による物性低下を起こし、耐久性が低下するために研磨及び研削効果が充分に発揮できなくなるという問題がある。その改良策として、熱安定剤であるヨウ化銅を添加(特開平4-41183号公報)する方法が開示されているが耐久性を向上させる方法としては未だ満足するレベルに到達していない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、耐久性を向上させることにより研磨力、研削力を充分に発揮できる研磨用モノフィラメントを提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記目的を達成するために鋭意検討した結果本発明に到達した。
すなわち、本発明は、相対粘度が3.5〜5.0であり、砥材粒子を10〜50重量%及び熱安定剤としてのヨウ化銅を含有し、ボイド率が4.2%以下であることを特徴とする耐久性に優れた水をスプレーしながら作業する研磨用ナイロン610モノフィラメントである。
【0005】
本発明のフィラメントを得るために用いるナイロン610の相対粘度は4.0〜6.0の範囲であることが最適である。相対粘度とは98重量%濃硫酸100ml中に熱可塑性樹脂1gを溶解させた溶液粘度を25℃でオストワルド粘度計にて測定した値である。相対粘度の下限未満において、特に相対粘度3.0未満では溶融紡糸時の溶融粘性が低下し均一なモノフィラメントが得られにくく、また相対粘度3.0〜4.0では均一なモノフィラメントが得られ、若干の耐久性向上はみられるものの耐久性レベルとして未だ満足されるものではない。一方、相対粘度6.0を超えると溶融粘性が著しく高まり溶融紡糸することが困難となり研磨用としての均一なモノフィラメントを得ることができないばかりか、曳糸性低下の要因か耐久性に影響を与えるボイドの発生が多く、充分な耐久性を得られない。上記のナイロン610を用いて得られる本発明の研磨用モノフィラメントの相対粘度は3.5〜5.0である。
【0006】
本発明の研磨用モノフィラメントは熱可塑性樹脂に通常添加される熱安定剤、酸化防止剤、滑剤、着色剤等を含んでいてもよい。例えば熱安定剤としてはハロゲン化銅等、酸化防止剤としては2,4,6‐トリ‐ターシャリブチル‐フェノール等が挙げられ、更にはタルク、炭化カルシュウム等の滑剤及び酸化チタン等の着色剤を含ませることもできる。
【0007】
本発明で使用できる砥材粒子としては酸化アルミニュウム、酸化ジルコニュウム等の酸化物、炭化珪素等の炭化物、窒化珪素等の窒化物及び人工ダイヤモンド等の人造研磨材またはダイヤモンド、コランダム、エメリー、ざくろ石等の天然研磨材が挙げられ、これらは単独もしくは2種以上混合してもよい。砥材粒子の粒度は通常#30〜#2000の範囲にあるが特に#46〜#1000の範囲のものが研磨力、研削力及び紡糸性の面から好ましく使用できる。
【0008】
本発明における研磨用モノフィラメントの砥材粒子の含有量はナイロン610に対しての10〜50重量%の範囲にあり、特に20〜40重量%が好ましい。10重量%未満では研磨力、研磨力が不足し、50重量%を超えるものはモノフィラメントの成形が著しく困難となる上、靱性も大幅に低下し耐久性が乏しくなるため好ましくない。
【0009】
砥材粒子と熱可塑性樹脂との接着性を強固にするために通常のポリアミドに使用されるカップリング剤は本発明でも使用することができる。カップリング剤の例としては、無機質材料と科学結合するメトキシ基と有機質材料と結合するアミノ基等の2種の官能基を有するシランカップリング剤がポリアミドによく使用される。
【0010】
モノフィラメントの溶融紡糸は通常のポリアミド溶融紡糸と同様に、例えば押出法にて紡糸することができる。また、本発明においては研磨用モノフィラメントの直径には特に制限はない。その使用される分野の要求に応じて通常直径0.1〜3.0mmΦの範囲から用途に応じて任意に選択することができる。
本発明における研磨用モノフィラメントのボイド率は、5%以下が好ましい。さらに好ましくは、ボイド率4.2%以下である。比較例3に示すようにボイド率が10%程度になると、研磨用モノフィラメントとしての耐久性か低下する。
この様にして、本発明によると非常に耐久性の優れた研磨用モノフィラメントが得られる。従って、本発明による研磨用モノフィラメントを工業用ブラシや一般家庭用ブラシ等に使用することにより優れた研磨、研削能力を発揮することができる。
【0011】
【実施例】
次に、実施例により本発明を更に詳細に説明する。尚、物性は以下の方法で評価した。
1)耐久性:総本数30本の研磨用モノフィラメントの円筒状のロールに中心から放射状になるように円周面状に固定しこのロールを静止した鋼板の表面に1200rpmで回転衝突させ、その衝突面に水温45℃×150リットル/hrでスプレーしながら屈曲疲労により研磨用モノフィラメントの糸折れが開始するまでの時間(分)で耐久性を表わす。ここで、研磨用モノフィラメントの固定位置から先端までの長さは30mm、研磨用モノフィラメントの固定位置から鋼板表面までの距離を20mmとする。
【0012】
2)ボイド率:実質密度を測定し、以下に式で計算する。実質密度は10mlの秤量瓶に一定温度の水を満たし、この中にサンプルを5g加え、一定容量における水、水+サンプルの重量の差から算出する。
ボイド率(%)=(1-実質密度/理論密度)×100
3)紡糸性:紡糸時の状態から以下のように判定した。
【0013】
○…安定した連続製糸ができ、糸切れは起こらない。
×…曳糸性が悪く、モノフィラメントの直径が不均一。
【0014】
【実施例1】
炭化珪素の0.4重量%に相当するアミン系シランカップリング剤(信越化学工業株式会社製、KBM-603)とナイロン610に対して、30重量%の#100の炭化珪素(昭和電工株式会社製)を相対粘度4.4のナイロン610のペレット50Kgに配合し、その全量に対してヨウ化銅を0.02重量%添加して150リットルのタンブラー型ミキサーで均一に混合した。次に、この混合体を溶融押出機上部に備わったホッパーに入れ、280℃に保たれた押出機の溶融ゾーンに導いて溶融し、紡口から吐出させ常温の冷却水に紡出させた。引き続いて、固化したモノフィラメントを熱水浴中で2.5倍に延伸しながら40m/minで巻取り、直径1.6mmの研磨用モノフィラメントを得た。
【0015】
【実施例2】
相対粘度5.9のナイロン610を用い、これ以外の条件は全て実施例1と同様にし、直径1.6mmの研磨用モノフィラメントを得た。
【0016】
【比較例1】
相対粘度2.9のナイロン610を用い、これ以外の条件は全て実施例1と同様にし、直径1.6mmの研磨用モノフィラメントを得た。
【0017】
【比較例2】
相対粘度3.3のナイロン610を用い、これ以外の条件は全て実施例1と同様にし、直径1.6mmの研磨用モノフィラメントを得た。
【0018】
【比較例3】
相対粘度6.7のナイロン610を用い、これ以外の条件は全て実施例1と同様にし、直径1.6mmの研磨用モノフィラメントを得た。
以上の実施例及び比較例で得たモノフィラメントの評価結果を表1にまとめた。表1から明らかなように本発明の研磨用モノフィラメント(実施例1、2)は紡糸性良好であり耐久性が大幅に向上しており、その改善効果は著しいものである。一方、相対粘度が3.5未満の研磨用モノフィラメント(比較例1、2)は、耐久性が充分でない。一方、相対粘度が6.0を超えると研磨用モノフィラメントは溶融紡糸時の溶融体の粘性が著しく高まり、曳糸性が悪くモノフィラメントの直径が不均一であり、またボイド率も高くなり高い耐久性を示さなかった。
【0019】
【表1】

【0020】
【発明の効果】
本発明の研磨用モノフィラメントは従来のものに比較して耐久性が非常に優れている。従って、工業用ブラシに応用すると優れた耐久性から研磨、研削効果を充分に発揮することができる。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2003-06-10 
出願番号 特願平4-312289
審決分類 P 1 651・ 121- ZA (D01F)
最終処分 取消  
前審関与審査官 中島 庸子  
特許庁審判長 鈴木 由紀夫
特許庁審判官 鴨野 研一
石井 克彦
登録日 2001-01-05 
登録番号 特許第3144919号(P3144919)
権利者 旭化成株式会社
発明の名称 研磨用ナイロン610モノフィラメント  
代理人 清水 猛  
代理人 武井 英夫  
代理人 鳴井 義夫  
代理人 鳴井 義夫  
代理人 武井 英夫  
代理人 伊藤 穣  
代理人 清水 猛  
代理人 佐藤 謙二  
代理人 伊藤 穰  

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