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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  F16L
管理番号 1086488
異議申立番号 異議2002-72398  
総通号数 48 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1998-03-17 
種別 異議の決定 
異議申立日 2002-10-02 
確定日 2003-10-20 
異議申立件数
事件の表示 特許第3270690号「水栓の接続具」の請求項1、2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3270690号の請求項1ないし2に係る特許を維持する。 
理由
1.手続の経緯

特許第3270690号(以下、「本件」という。)の請求項1及び2に係る発明についての出願(以下、「本件出願」という。)は、平成8年8月28日に特願平8-247135号として特許出願され、平成14年1月18日にその発明について特許権の設定登録がされ、その後、その特許について、特許異議申立人 原 弘光 により特許異議の申立てがなされ、取消しの理由が通知され、その指定期間内である平成15年4月15日に、特許権者である株式会社ジェイトップ・ユーコー及びヤンマー産業株式会社により、本件出願の願書に添付した明細書及び図面(以下、「特許明細書及び図面」という。)について、訂正請求がなされ、訂正拒絶理由が通知され、その後、平成15年8月5日に、特許権者より意見書が提出されたものである。

2.訂正の内容

特許権者が求めている訂正の内容は以下のaないしeのとおりである。

(2-1) 訂正事項a

特許請求の範囲の請求項1を、次のとおりに訂正する。

- 訂正前
「【請求項1】水栓(16)の吐出口部(17)とホース端部に設けられるホース継手(20)を接続するための接続具であって、
そのホース継手(20)は、その軸線方向の中間に設けられた段差部(29)で、入口側内周半径よりも出口側内周半径が縮小する段付筒状に形成され、且つ先端部内面に複数のボール(24)が半径方向に移動自在に配置されると共に、そのボールを外側から開閉自在に押さえるスライドリング(25)を有し、
接続具は、水栓接続部(3)とホース継手接続部(4)を設けた本体(2)を備え、そのホース継手接続部(4)はその外周に前記ホース継手の入口側内周が着脱自在に被嵌されると共に、前記複数のボール(24)が着脱自在に掛合するくびれ部(4a)を有し、
該本体(2)の流路(5)に弁座(6)とそれを開閉するための弁体(7)が設けられ、その弁体(7)の栓部(8)にそれに結合された棒体(9)を有し、
その棒体(9)の先端部は、前記ホース継手接続部(4)の開口端より露出され且つ、その棒体(9)の先端部に、半径方向外方へ突起部(9d)を介して、前記ホース継手(20)の前記段差部(29)の出口側内周半径より大になるように、着座部(9c)が突起状に形成され、前記突起部(9d)以外の部分で前記出口側内周半径より小なる位置に通水部(9e)が形成され、
ホース継手接続部(4)外周にホース継手(20)を嵌入して接続したとき、前記スライドリング(25)によって前記複数のボール(24)が前記くびれ部(4a)に掛合されると共に、前記着座部(9c)が前記段差部(29)に着座して棒体(9)が本体(2)に押し込まれ、それによって栓部(8)を弁座(6)から離反させ、弁体(7)の前記通水部(9e)を介してホース継手(20)の出口側に通水し、
ホース継手接続部(4)からホース継手(20)が外れたとき、水圧により栓部(8)が弁座(6)を閉塞するようになされていることを特徴とする水栓の接続具。」

- 訂正後
「【請求項1】水栓(16)の吐出口部(17)とホース端部に設けられるホース継手(20)を接続するための接続具であって、
そのホース継手(20)は、その軸線方向の中間に設けられた内周直径の異なる段差部(29)で、入口側内周半径よりも出口側内周半径が縮小する段付筒状に形成され、且つ先端筒部の内面に複数のボール(24)が半径方向に移動自在に配置されると共に、そのボールを外側から開閉自在に押さえるスライドリング(25)を有し、
接続具は、水栓接続部(3)とホース継手接続部(4)を設けた本体(2)を備え、
その本体(2)は、上流側の水栓側本体(11)と下流側のホース側本体(12)との二部材が、そのホース側本体(12)の軸線方向に直列に接続された接続体からなり、その水栓側本体(11)には水栓接続部(3)が設けられ、
そのホース側本体(12)には、その軸線方向の中間に位置した外周直径の異なる段付き部(4b)を境に、その下流側が小径で前記ホース継手(20)の内周を軸線方向に案内する細長い筒状の前記ホース継手接続部(4)を構成し、その段付き部(4b)の境に近接して前記ホース継手接続部(4)の外周に前記複数のボール(24)が着脱自在に掛合する環状のくびれ部(4a)を有して、そのホース継手接続部(4)の外周に前記ホース継手(20)の入口側内周が着脱自在に被嵌され、
そのホース側本体(12)の前記段付き部(4b)の上流側に外周および内周が拡開された拡開筒部(12b)が形成され、
その拡開筒部(12b)内の流路(5)の内面段付き部に弁座(6)設けられ、
その弁座(6)に接離自在に着座してそれを開閉するための弁体(7)の栓部(8)が、その弁体(7)の上流端に設けられ、
その栓部(8)の下流側中心に下流側へ細長い棒体(9)が突設され、その棒体(9)の最大直径は栓部(8)の直径より充分小であると共に、その断面積が前記ホース継手接続部(4)の内径より充分小で且つ、そのホース継手接続部(4)の長さより長く形成され、
その棒体(9)の下流端は、前記ホース継手接続部(4)の開口端より露出され且つ、その棒体(9)の先端部に、半径方向外方へ突起部(9d)を介して、前記ホース継手(20)の前記段差部(29)の出口側内周半径より大になるように、着座部(9c)が突起状に形成され、前記突起部(9d)以外の部分で前記出口側内周半径より小なる位置に通水部(9e)が形成され、
ホース継手接続部(4)の外周にホース継手(20)を嵌入して接続したとき、前記スライドリング(25)によって前記複数のボール(24)が前記くびれ部(4a)に掛合されると共に、前記着座部(9c)が前記段差部(29)に着座して棒体(9)が本体(2)に押し込まれ、それによって栓部(8)を弁座(6)から離反させ、弁体(7)の前記通水部(9e)を介してホース継手(20)の出口側に通水し、
ホース継手接続部(4)からホース継手(20)が外れたとき、水圧により栓部(8)が弁座(6)を閉塞するようになされていることを特徴とする水栓の接続具。」

(2-2) 訂正事項b

発明の詳細な説明の記載における「課題を解決するための手段」の項である段落【0004】を、上記(2-1)にて記した特許請求の範囲の訂正事項である訂正事項aに対応して、次のとおりに訂正する。

- 訂正前
「【課題を解決するための手段】 上記課題を解決する本発明は、水栓16の吐出口部17とホース端部に設けられるホース継手20を接続するための接続具であって、そのホース継手20は、その軸線方向の中間に設けられた段差部29で、入口側内周半径よりも出口側内周半径が縮小する段付筒状に形成され、且つ先端部内面に複数のボール24が半径方向に移動自在に配置されると共に、そのボールを外側から開閉自在に押さえるスライドリング25を有し、接続具は、水栓接続部3とホース継手接続部4を設けた本体2を備え、そのホース継手接続部4はその外周に前記ホース継手の入口側内周が着脱自在に被嵌されると共に、前記複数のボール24が着脱自在に掛合するくびれ部4aを有し、該本体2の流路5に弁座6とそれを開閉するための弁体7が設けられ、その弁体7の栓部8にそれに結合された棒体9を有し、その棒体9の先端部は、前記ホース継手接続部4の開口端より露出され且つ、その棒体9の先端部に、半径方向外方へ突起部9dを介して、前記ホース継手20の前記段差部29の出口側内周半径より大になるように、着座部9cが突起状に形成され、前記突起部9d以外の部分で前記出口側内周半径より小なる位置に通水部9eが形成され、ホース継手接続部4外周にホース継手20を嵌入して接続したとき、前記スライドリング25によって前記複数のボール24が前記くびれ部4aに掛合されると共に、前記着座部9cが前記段差部29に着座して棒体9が本体2に押し込まれ、それによって栓部8を弁座6から離反させ、弁体7の前記通水部9eを介してホース継手20の出口側に通水し、ホース継手接続部4からホース継手20が外れたとき、水圧により栓部8が弁座6を閉塞するようになされていることを特徴とする水栓の接続具である。また、本発明の好ましい実施の態様は、その弁体と本体との間には前記棒体を前記開口端方向に付勢するスプリングが設けられ、ホース継手接続部からホース継手が外れたとき、前記スプリングおよび水圧により栓部が弁座を閉塞するようになされていることを特徴とするものである。」

- 訂正後
「【課題を解決するための手段】 請求項1に記載の本発明は、水栓(16)の吐出口部(17)とホース端部に設けられるホース継手(20)を接続するための接続具であって、
そのホース継手(20)は、その軸線方向の中間に設けられた内周直径の異なる段差部(29)で、入口側内周半径よりも出口側内周半径が縮小する段付筒状に形成され、且つ先端筒部の内面に複数のボール(24)が半径方向に移動自在に配置されると共に、そのボールを外側から開閉自在に押さえるスライドリング(25)を有し、
接続具は、水栓接続部(3)とホース継手接続部(4)を設けた本体(2)を備え、
その本体(2)は、上流側の水栓側本体(11)と下流側のホース側本体(12)との二部材が、そのホース側本体(12)の軸線方向に直列に接続された接続体からなり、その水栓側本体(11)には水栓接続部(3)が設けられ、
そのホース側本体(12)には、その軸線方向の中間に位置した外周直径の異なる段付き部(4b)を境に、その下流側が小径で前記ホース継手(20)の内周を軸線方向に案内する細長い筒状の前記ホース継手接続部(4)を構成し、その段付き部(4b)の境に近接して前記ホース継手接続部(4)の外周に前記複数のボール(24)が着脱自在に掛合する環状のくびれ部(4a)を有して、そのホース継手接続部(4)の外周に前記ホース継手(20)の入口側内周が着脱自在に被嵌され、
そのホース側本体(12)の前記段付き部(4b)の上流側に外周および内周が拡開された拡開筒部(12b)が形成され、
その拡開筒部(12b)内の流路(5)の内面段付き部に弁座(6)設けられ、
その弁座(6)に接離自在に着座してそれを開閉するための弁体(7)の栓部(8)が、その弁体(7)の上流端に設けられ、
その栓部(8)の下流側中心に下流側へ細長い棒体(9)が突設され、その棒体(9)の最大直径は栓部(8)の直径より充分小であると共に、その断面積が前記ホース継手接続部(4)の内径より充分小で且つ、そのホース継手接続部(4)の長さより長く形成され、
その棒体(9)の下流端は、前記ホース継手接続部(4)の開口端より露出され且つ、その棒体(9)の先端部に、半径方向外方へ突起部(9d)を介して、前記ホース継手(20)の前記段差部(29)の出口側内周半径より大になるように、着座部(9c)が突起状に形成され、前記突起部(9d)以外の部分で前記出口側内周半径より小なる位置に通水部(9e)が形成され、
ホース継手接続部(4)の外周にホース継手(20)を嵌入して接続したとき、前記スライドリング(25)によって前記複数のボール(24)が前記くびれ部(4a)に掛合されると共に、前記着座部(9c)が前記段差部(29)に着座して棒体(9)が本体(2)に押し込まれ、それによって栓部(8)を弁座(6)から離反させ、弁体(7)の前記通水部(9e)を介してホース継手(20)の出口側に通水し、
ホース継手接続部(4)からホース継手(20)が外れたとき、水圧により栓部(8)が弁座(6)を閉塞するようになされていることを特徴とする水栓の接続具である。
請求項2に記載の本発明は、請求項1において、
その弁体(7)と本体(2)との間には前記棒体(9)を前記開口端方向に付勢するスプリング(40)が設けられ、
ホース継手接続部(4)からホース継手(20)が外れたとき、前記スプリング(40)および水圧により栓部(8)が弁座(6)を閉塞するようになされていることを特徴とする水栓の接続具である。」

(2-3) 訂正事項c

発明の詳細な説明の記載における「発明の効果」の項である段落【0013】を、次のとおりに訂正する。

- 訂正前
「【発明の効果】以上のように構成した本発明の水栓の接続具は、それに接続されるホース継手が入口側内周半径よりも出口側内周半径が縮小する段付筒状に形成され、且つ先端部内面に複数のボール24が半径方向に移動自在に配置されると共に、そのボール24を外側から開閉自在に押さえるスライドリング25を有し、それがホース継手接続部4の外周に着脱自在に被嵌され、そのボール24の掛合によって接続状態を保っているものを対象とする。そして接続具の棒体の先端部には、半径方向外方へ突起部9dを介して、ホース継手20の段差部29の出口側内周半径より大になるように、着座部9cが突起状に形成され、突起部9d以外の部分で出口側内周半径より小なる位置に通水部9eが形成されたものである。そのため、ホース継手接続部にホース継手を接続したとき、着座部が段差部に着座して棒体が本体に押し込まれて、栓部を弁座から離反させ、弁体9の通水部を介してホース継手の出口側に通水する。そしてホース継手接続部からホース継手を外すと弁座が閉塞される、閉塞状態になる。また通水中にホース継手接続部からホース継手が離脱したときには、瞬時に弁座が閉塞されて通水が遮断される。そのため、マンションの洗濯用として使用した場合などにおいても、階下への漏水事故を発生させるおそれがなく、安全に使用することができる。」

- 訂正後
「以上のように構成した本発明の水栓の接続具は、それに接続されるホース継手が入口側内周半径よりも出口側内周半径が縮小する段付筒状に形成され、且つ先端部内面に複数のボール24が半径方向に移動自在に配置されると共に、そのボール24を外側から開閉自在に押さえるスライドリング25を有し、それがホース継手接続部4の外周に着脱自在に被嵌され、そのボール24の掛合によって接続状態を保っているものを対象とする。
そして本発明ホース側本体12は、中間に段付き部4bを有する段付き筒状に形成され、その上流側に大径の拡開筒部12bが形成されると共に、下流側に小径の細長いホース継手接続部4が設けられている。
そのホース継手接続部4の外周で段付き部4bに近接した位置には環状のくびれ部4aが設けられている。また、その細長いホース継手接続部4を貫通する棒体9があり、その上流端に棒体9より大径の栓部8が一体に存在し、その栓部8が大径の拡開筒部12b内に存在するものである。
そして大径の拡開筒部12bの存在により弁座6に着座される栓部8の開閉部を大きくして、水の流通路を十分確保する。
拡開筒部12bの下流側に細長く小径のホース継手接続部4を設け、その外周に環状くびれ部4aを有する。そしてその外周にボールを有するコンパクトなホース継手20を容易に且つ安定的に接続できるものとなる。即ち、細長く小径のホース継手接続部4の外周に着脱自在にホース継手20が接続されるものであるから、そのホース継手20自体の外直径を小さく維持し、コンパクトな継手構造を形成できる。それと共に、細長いホース継手接続部4に継手が嵌着されるものであるから、それを安定的に接続できる。
また、係る環境を保持しつつ、細長いホース継手接続部4を貫通して外部に突出する細長い棒体9が、弁体7の下流側に突設され、その下流端に半径方向に突設した突起部9dを介してホース継手20の段差部29の出口側内周半径より大になるように、着座部9cが突起状に形成され、突起部9d以外の部分で出口側内周半径より小なる位置に通水部9eが形成されたものである。そのため、ホース継手接続部にホース継手を接続したとき、着座部が段差部に着座して棒体が本体に押し込まれて、栓部を弁座から離反させ、弁体9の通水部を介してホース継手の出口側に通水する。そしてホース継手接続部からホース継手を外すと弁座が閉塞される、閉塞状態になる。また通水中にホース継手接続部からホース継手が離脱したときには、瞬時に弁座が閉塞されて通水が遮断される。そのため、マンションの洗濯用として使用した場合などにおいても、階下への漏水事故を発生させるおそれがなく、安全に使用することができる。
また、弁体7は大径の栓部8と棒体9よりなり、その弁体7を本体2に挿入できるようにするため、本体2が水栓側本体11とホース側本体12との直列接続体からなる。さらにそのホース側本体12に水栓接続部3が設けられ、全体としてコンパクトで製造し易い構造を形成する。」

(2-4) 訂正事項d

図面の簡単な説明の符号の説明において、「4b 段付き部」、「9c 着座部」、「9d 突起部」、及び「12b 拡開筒部」を付加する。

(2-5) 訂正事項e

図面において、図1に参照番号「4b」を、図2に参照番号「4b」及び「12b」を、図3において参照番号「4b」を、図4において参照番号「(4b)」、「11」、及び「12b」を、それぞれ付加する。また、図3において、参照番号「9c」及び「9d」を削除する。

3.訂正の適否についての判断

(3-1) 訂正の目的

以上の訂正事項aないしeのうち、訂正事項aについては、平成15年4月15日付けの訂正請求書において特許権者が主張するように、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであると認められ、また、訂正事項bないしeについては、特許明細書及び図面の記載を、訂正後の請求項1の記載と整合させるためのものであって、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであると認められる。

(3-2) 新規事項の有無

次に、上記訂正が、特許明細書及び図面に記載した事項の範囲内においてしたものであるか否かについて検討する。

(3-2-1) 訂正事項aについての検討

上記訂正事項aによれば、訂正後の請求項1には、「そのホース側本体(12)には、その軸線方向の中間に位置した外周直径の異なる段付き部(4b)を境に、その下流側が小径で前記ホース継手(20)の内周を軸線方向に案内する細長い筒状の前記ホース継手接続部(4)を構成し、その段付き部(4b)の境に近接して」なる発明特定事項が付加されている。しかしながら、特許明細書には、「ホース継手接続部4はその外周に前記ホース継手の入口側内周が着脱自在に被嵌される」(【0004】段落)こと、「ホース継手接続部4外周にホース継手20を嵌入して接続」(同段落)すること、及び「ホース継手接続部4をホース継手20内に押し込む」(【0009】段落)ことは記載されているものの、ホース継手接続部(4)がホース継手(20)の内周を軸線方向に案内することまでは記載されておらず、また、特許明細書及び図面に記載した事項の範囲内であると認められる程度に自明であるともいえない。さらに、該ホース継手接続部(4)が「細長い筒状」であることについても、特許明細書には記載がなく、また、特許明細書及び図面に記載した事項の範囲内であると認められる程度に自明であるともいえない。
さらに付記すれば、「細長い」か否かは、比較の対象によって異なるから、訂正前の図面を根拠にして「細長い」が自明であるということはできない。例えば、訂正前の図1において、ホース継手接続部(4)は、棒体(9)と比較すれば、太く短いともいえる。
なお、この点に関し特許権者は、上記平成15年8月5日付け意見書において、概略次の主張を行っている。すなわち、確かに、「ホース継手接続部(4)がホース継手(20)の内周を軸線方向に案内すること」は特許明細書に記載されていないが、図3には、ホース継手(20)の継手部(21)の内周が僅かの隙間を有してホース継手接続部(4)外周に被嵌されたものが図示されている。そして、当該図示によれば、ホース継手(20)を軸線方向に移動する際、上記隙間の関係から、当然にホース継手(20)の内周がホース継手接続部(4)外周に案内されることは、当業者であれば認識できることである。また、ホース継手接続部(4)が「細長い筒状」であることについても、確かに、特許明細書には記載されていないが、ホース継手接続部(4)が「細長い筒状」であるか否かについては、該ホース継手接続部(4)の直径と長さとの比をもって判断されるべきであり、図1及び図2から、当業者であれば、ホース継手接続部(4)が「細長い」ということは認識できる。
しかしながら、一般に、特許出願の願書に添付された図面は、図示された物品の実寸法を反映した正確な縮尺図ないし拡大図ではなく、技術思想ないし概念を示すものであって、製品の設計図とは基本的に性格を異にするものである。そのため、特許出願の願書に添付された図面は、具体的な製品を図示したものとは限らない上、例えば、特定部分の拡大、特定方向の拡大なども、概念を明りょうに示すために、必要に応じて行われる。したがって、当該図面が図示された物品の実寸法を実際に示すものであって、その旨の特記が明細書においてなされているような、特殊な場合を除いて、特許出願の願書に添付された図面から、寸法に係る情報を抽出することはできない。よって、図面における「隙間」の程度や「直径と長さの比」に根拠を置いた上記特許権者の主張は、採用することができない。

同じく上記訂正事項aによれば、訂正前の請求項1における「それに結合された棒体(9)を有し、」なる発明特定事項を、訂正後の請求項1では「その栓部(8)の下流側中心に下流側へ細長い棒体(9)が突設され、その棒体(9)の最大直径は栓部(8)の直径より充分小であると共に、その断面積が前記ホース継手接続部(4)の内径より充分小で且つ、そのホース継手接続部(4)の長さより長く形成され、」と変更している。しかしながら、特許明細書には、「弁体7は栓部8とそれに結合された棒体9からなっている」(【0005】段落)こと、及び、「栓部8に結合された棒体9の中間部に直径をわずかに大きくされた段差部9a、先端部の外周に環状溝9bがそれぞれ設けられている」(【0008】段落)ことは記載されているものの、棒体(9)が「細長い」こと、該棒体(9)の最大直径が栓部(8)の直径より「充分小」であること、及び、該棒体(9)の断面積がホース継手接続部(4)の内径より「充分小」であることまでは記載されておらず、また、これらの発明特定事項が特許明細書及び図面に記載した事項の範囲内であると認められる程度に自明であるともいえない。
なお、この点に関し特許権者は、上記平成15年8月5日付け意見書において、概略次の主張を行っている。すなわち、確かに、棒体(9)が「細長い」こと、該棒体(9)の最大直径が栓部(8)の直径より「充分小」であること、及び、該棒体(9)の断面積がホース継手接続部(4)の内径より「充分小」であることは、特許明細書に記載されていないが、図2に図示されたものにおいて、棒体(9)の直径と長さとを比較し、また、棒体(9)の直径と栓部(8)の直径とを比較すれば、当業者には、これらのことは自明である。
しかしながら、既に述べたように、一般に、特許出願の願書に添付された図面から、寸法に係る情報を抽出することはできず、また、何をもって「充分」としているのかも明確でないから、上記特許権者の主張は、採用することができない。

以上より、上記訂正事項aに示す訂正は、特許明細書及び図面に記載した事項の範囲内においてしたものではない。

(3-2-2) 訂正事項cについての検討

上記訂正事項cによれば、発明の効果として、次の事項が追加されている。
ア.「大径の拡開筒部12bの存在により弁座6に着座される栓部8の開閉部を大きくして、水の流通路を十分確保する」
イ.「コンパクトなホース継手20を容易に且つ安定的に接続できるものとなる」
ウ.「ホース継手20自体の外直径を小さく維持し、コンパクトな継手構造を形成できる」
エ.「細長いホース継手接続部4に継手が ・・・ 安定的に接続できる」
オ.「全体としてコンパクトで製造し易い構造を形成する」
しかしながら、特許明細書には、これらの事項は記載されておらず、また、これらの事項が特許明細書及び図面に記載した事項の範囲内であると認められる程度に自明であるともいえない。
なお、これらの事項に関し、特許権者は、上記平成15年8月5日付け意見書において、これらの事項は、確かに特許明細書には記載されていない事項ではあるが、当業者にとっては、請求項1に追加された新たな構成(発明特定事項)から必然的に導かれる効果であると認識できる旨主張している。
しかしながら、当該特許権者の主張は、その根拠を図面に有しているものである。そして、図面にこれらの効果まで記載されているに等しいと認めることはできないから、当該特許権者の主張は、採用することができない。

よって、上記訂正事項cに示す訂正は、特許明細書及び図面に記載した事項の範囲内においてしたものではない。

(3-3) 訂正の適否についてのむすび

以上検討したように、上記2.にて記した、特許権者が求めている訂正は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものではなく、したがって、当該訂正は、特許法第120条の4第3項で準用する第126条第2項の規定に適合しない。
よって、当該訂正は認められない。

4.特許異議申立てについての判断

(4-1) 申立ての理由の概要

特許異議申立人 原 弘光 は、証拠として甲第1号証(特開平7-207724号公報)及び甲第2号証(特開昭62-258288号公報)を提出し、本件の請求項1及び2に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、取り消されるべきものである旨主張している。
なお、特許異議申立人は、次の刊行物からの図面の抜粋を、周知技術を示す参考資料として提出している。(i) ボールを用いた接続具の例として、特開平7-229593号公報の図21及び22、(ii) 棒体を用いて開閉を行う弁の例として、実開昭61-184775号公報の図12、特開平7-76865号公報の図3(a)及び(b)、及び、実開昭56-119092号公報の図2、(iii) 上記(i)及び(ii)を組み合わせた接続具の例として、実開昭51-9318号公報の図1、2、及び4、実開昭53-87924号公報の図1及び2、実開昭53-123627号公報の図1及び2、並びに、実開昭63-48089号公報の図1及び2。

(4-2) 本件発明

本件の請求項1及び2に係る発明(以下、「本件発明1」及び「本件発明2」という。)は、それぞれ、特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。

請求項1: 「水栓(16)の吐出口部(17)とホース端部に設けられるホース継手(20)を接続するための接続具であって、そのホース継手(20)は、その軸線方向の中間に設けられた段差部(29)で、入口側内周半径よりも出口側内周半径が縮小する段付筒状に形成され、且つ先端部内面に複数のボール(24)が半径方向に移動自在に配置されると共に、そのボールを外側から開閉自在に押さえるスライドリング(25)を有し、接続具は、水栓接続部(3)とホース継手接続部(4) を設けた本体(2)を備え、そのホース継手接続部(4)はその外周に前記ホース継手の入口側内周が着脱自在に被嵌されると共に、前記複数のボール(24)が着脱自在に掛合するくびれ部(4a)を有し、該本体(2)の流路(5)に弁座(6)とそれを開閉するための弁体(7)が設けられ、その弁体(7)の栓部(8)にそれに結合された棒体(9)を有し、その棒体(9)の先端部は、前記ホース継手接続部(4)の開口端より露出され且つ、その棒体(9)の先端部に、半径方向外方へ突起部(9d)を介して、前記ホース継手(20)の前記段差部(29)の出口側内周半径より大になるように、着座部(9c)が突起状に形成され、前記突起部(9d)以外の部分で前記出口側内周半径より小なる位置に通水部(9e)が形成され、ホース継手接続部(4)外周にホース継手(20)を嵌入して接続したとき、前記スライドリング(25)によって前記複数のボール(24)が前記くびれ部(4a)に掛合されると共に、前記着座部(9c)が前記段差部(29)に着座して棒体(9)が本体(2)に押し込まれ、それによって栓部(8)を弁座(6)から離反させ、弁体(7)の前記通水部(9e)を介してホース継手(20)の出口側に通水し、ホース継手接続部(4)からホース継手(20)が外れたとき、水圧により栓部(8)が弁座(6)を閉塞するようになされていることを特徴とする水栓の接続具。」

請求項2: 「請求項1において、その弁体(7)と本体(2)との間には前記棒体(9)を前記開口端方向に付勢するスプリング(40)が設けられ、ホース継手接続部(4)からホース継手(20)が外れたとき、前記スプリング(40)および水圧により栓部(8)が弁座(6)を閉塞するようになされていることを特徴とする水栓の接続具。」

(4-3) 刊行物に記載された発明

(4-3-1) 刊行物1に記載された発明

刊行物1: 特開平7-207724号公報(甲第1号証)

刊行物1には、「洗濯機給水用のホースを容易に着脱できる簡易着脱機構を設けた湯水混合栓」に関して、図面とともに、以下の事項が記載されている。

(記載事項1a)

「前記湯水混合栓1は台座10上に配置される混合栓本体4、ハンドシャワーの受け台5および該受け台5に載置されるハンドシャワー6によって構成されている。また、ハンドシャワー6にはハンドシャワー給水ホース60及び、その開放端に簡易着脱機構の継手61を連設する一方、前記洗濯機3には洗濯機給水ホース30及び、その開放端に簡易着脱機構の継手31を連設している。
前記混合栓本体4は、その上部に、水平の回動で湯水の混合比を調整し、上下の回動で湯水の流量を調整するレバー7を設け、回動自在の側面部には簡易着脱機構の継手41を先端に設けた吐出部40を連設している。
図1に示す状態では、前記吐出部40の継手41に前記洗濯機給水ホース30の継手31を接続している状態であるが、この継手31,41の結合は容易に解除でき、継手41とハンドシャワー給水ホース60の継手61との接続に変えることができる。」(段落【0015】-段落【0017】)

(記載事項1b)

「図2は、前記湯水混合栓1の混合栓本体4の一部拡大断面斜視図であり、特に吐出部40の継手41及び洗濯機給水ホース30の継手31を拡大して示している。図2に示すように、吐出部40は混合栓本体4に袋ナットによって固定されるエルボーであり、その先端に構成される前記継手41はフランジ42、該フランジ42の奥に位置する周溝43および吐出部40の管内に組み込まれてその開放端の内径より幾らか大きな直径を持つ球形状の弁体44から成っている。
また、洗濯機給水ホース30の継手31は同心円状に配置される2重の管体32,35、小球33…及び前記内側の管体35の中心軸上に配置される押し棒34から成っており、外側の管体32は、内側の管体35に対して図中のAの方向に摺動できるように構成されている。前記内側の管体35には、内周の方が外周よりも小さい開口を持つ4つの貫通穴が穿設されており、この4つの穴に内周の開口よりも少し大きい直径を持つ前記小球33…が嵌装されている。また、この小球33…は、それぞれ前記外側の管体32によって内側に押圧されるようになっている。」(段落【0019】及び段落【0020】)

(記載事項1c)

「前記洗濯機給水ホース30を吐出部40に装着するときは、継手31の外側の管体32を矢印Aの方向に摺動させ、前記小球33…に対する押圧力を解除した状態でこれを吐出部40の継手41に嵌入する。このとき、前記小球33…は前記周溝43上に位置し、前記外側の管体32を矢印Aと逆の方向に(つまり元の位置へ)摺動させると前記小球33…は再び内側に押圧されて周溝43内においてフランジ42を強固に掴持するようになると共に、前記押し棒34は継手41内に組み込まれた弁体44を押す。このため吐出部40から洗濯機給水ホース30へ水を供給できるようになる。
逆に、前記洗濯機給水ホース30と吐水部40の接合を解除するときには、継手31の外側の管体32を矢印Aの方向に摺動させると、前記小球33…による掴持力が解除されて、洗濯機給水ホース30の継手31は容易に吐水部40の継手31から挿脱できると共に、前記押し棒34による弁体44の押圧も解除される。」(段落【0021】及び段落【0022】)

(記載事項1d)

「・・・洗濯が終了した後に、吐水部40と洗濯機給水ホース30との離脱時にたとえ湯水混合栓1を閉にするのを忘れて、これが全開の状態であったとしても、弁体44が水圧によって吐水部40の開口部を閉管するために、吐水部40から水が噴出するなどの事故を防ぐことができる。」(段落【0023】)

よって、前記した刊行物1の記載事項を、刊行物1の各図面を参照しつつ総合すると、該刊行物1には、次の発明Aが記載されているものと認められる。

発明A: 「混合栓本体4の吐出部40と洗濯機給水ホース30端部に設けられる簡易脱着機構の継手31を接続するための接続具であって、その簡易脱着機構の継手31は、その中心軸上に配置される押し棒34を有し、先端部内面に複数の小球33が半径方向に移動自在に配置されると共に、その小球33を外側から開閉自在に押さえる外側の管体32を有し、接続具は、吐出部40への接続部と簡易脱着機構の継手31への接続部を設けた簡易脱着機構の継手41を備え、その簡易脱着機構の継手31への接続部はその外周に前記簡易脱着機構の継手31の入口側内周が着脱自在に被嵌されると共に、前記複数の小球33が着脱自在に掛合する周溝43を有し、該簡易脱着機構の継手41の流路にそれを開閉するための弁体44が設けられ、簡易脱着機構の継手31への接続部外周に簡易脱着機構の継手31を嵌入して接続したとき、前記外側の管体32によって前記複数の小球33が前記周溝43に掛合されると共に、前記弁体44が前記押し棒34に着座して弁体44が押し込まれ、それによって簡易脱着機構の継手31の出口側に通水し、簡易脱着機構の継手31への接続部から簡易脱着機構の継手31が外れたとき、水圧により弁体44が前記流路を閉塞するようになされている水栓の接続具。」

(4-3-2) 刊行物2に記載された事項

刊行物2: 特開昭62-258288号公報(甲第2号証)

刊行物2には、「流体連結具」に関して、図面とともに、以下の事項が記載されている。

(記載事項2a)

「雄コネクター12はディスペンサー2の配管6先端に取付けられるもので、雌コネクター11の円筒状内面15に嵌合する円筒状外面20A及び先端近傍の内側に弁座20Bを備えた中空の本体20と、該本体内に軸方向に移動可能に保持され、前記弁座20Bに着座する弁体21を備えた軸22と、弁体21を弁座20Bに押付ける方向に付勢するばね23等を有する。この軸22は、軸22と一緒に本体20内を移動するガイド24及び本体20の後端に取付けられたキャップ25の穴25Aによって案内されてその軸方向に移動する。ガイド24はその外周に液体の通過を許容する溝を備えている。軸22の先端には、本体20の先端より突出する位置に、雌コネクター11の薄膜17を突き刺すための尖端26と、雌コネクターの第一当接面16に当接する第二当接面27を有している。更に、尖端26及び第二当接面27のところには、横方向に延びる溝28が形成されている。」(第3頁右上欄第2行-同第18行)

(記載事項2b)

「雄コネクター12を雌コネクター11に差し込むと、まず、雄コネクター12の軸22先端の尖端26が、雌コネクター11の薄膜17に突き当たり、更に差し込むことにより、第3図に示すように、第二当接面27が第一当接面16に接触するまで、尖端26が薄膜17(第1図参照)に刺し込まれ、薄膜17を被断する。
これにより、薄膜17による密封が解除され、スパウト14内(容器13内)と雌コネクター11内の空間30とが連通する。この際、尖端26に形成した溝28がスパウト14内と空間30との両方に延びているので、両者の連通を一層確実とする。なお、この際、雄コネクター12の本体20外面と雌コネクター11の円筒状内面15との間はシール材29でシールされるため、空間30内の液が外部に漏れることはない。また、この時、雄コネクター12内の弁体21はまだ弁座20Bに着座した状態であるので、空間30は本体20内の通路31には連通していない。
その後更に、雄コネクター12を雌コネクター11内に挿入させ、第4図に示すように、雄コネクター12の本体外面の環状突起20Cを雌コネクター11の環状溝18内に係合させる。この状態で雄コネクター12は雌コネクター11に対する所定位置となり、この位置にセットされる。この時、本体20の挿入により、弁座20Bが弁体21から離れ、従って、容器13内が雄コネクター12の本体内の通路31に連通することとなる。この状態で、第5図について説明したように、ポンプ3により容器内の飲料が吸い出され、ディスペンサー2に送られる。容器13内の飲料を吸い出している間、容器内には空気が入ることはないので、容器内の飲料が外気で汚染されることがなく、極めて衛生的である。
容器内の飲料を取り出した後は、雄コネクター12を雌コネクター11から引き抜くと、雄コネクター12は第1図の状態に戻り、弁体21が自動的に弁座20Bに着座する。これにより、本体20の内部の通路31が自動的に閉じられ、通路31内の液が外部に漏れることがなく、また、外部から通路31内に空気が入ってこの部分を汚染することがない。」(第4頁左上欄第1行-同右上欄第19行)

(4-4) 対比・判断

(4-4-1) 本件発明1について

本件発明1と刊行物1に記載された発明Aとを対比すると、後者の「混合栓本体4」、「吐出部40」、「洗濯機給水ホース30」、「簡易脱着機構の継手31」、「小球33」、「外側の管体32」、「吐出部40への接続部」、「簡易脱着機構の継手31への接続部」、「簡易脱着機構の継手41」、「周溝43」、及び「弁体44」は、前者の「水栓(16)」、「吐出口部(17)」、「ホース」、「ホース継手(20)」、「ボール(24)」、「スライドリング(25)」、「水栓接続部(3)」、「ホース継手接続部(4)」、「本体(2)」、「くびれ部(4a)」、及び「弁体(7)」にそれぞれ相当するから、両者は、次の一致点及び相違点を有する。

一致点: 「水栓の吐出口部とホース端部に設けられるホース継手を接続するための接続具であって、そのホース継手は、先端部内面に複数のボールが半径方向に移動自在に配置されると共に、そのボールを外側から開閉自在に押さえるスライドリングを有し、接続具は、水栓接続部とホース継手接続部を設けた本体を備え、そのホース継手接続部はその外周に前記ホース継手の入口側内周が着脱自在に被嵌されると共に、前記複数のボールが着脱自在に掛合するくびれ部を有し、該本体の流路にそれを開閉するための弁体が設けられ、ホース継手接続部外周にホース継手を嵌入して接続したとき、前記スライドリングによって前記複数のボールが前記くびれ部に掛合されると共に、前記弁体が押し込まれ、それによってホース継手の出口側に通水し、ホース継手接続部からホース継手が外れたとき、水圧により弁体が前記流路を閉塞するようになされている水栓の接続具。」

相違点1: 本件発明1においては、ホース継手(20)は、その軸線方向の中間に設けられた段差部(29)で、入口側内周半径よりも出口側内周半径が縮小する段付筒状に形成され、他方、本体(2)の流路(5)に弁座(6)とそれを開閉するための弁体(7)が設けられ、その弁体(7)の栓部(8)にそれに結合された棒体(9)を有し、その棒体(9)の先端部は、前記ホース継手接続部(4)の開口端より露出され且つ、その棒体(9)の先端部に、半径方向外方へ突起部(9d)を介して、前記ホース継手(20)の前記段差部(29)の出口側内周半径より大になるように、着座部(9c)が突起状に形成され、前記突起部(9d)以外の部分で前記出口側内周半径より小なる位置に通水部(9e)が形成されているのに対して、刊行物1に記載の発明Aにおいては、簡易脱着機構の継手31は、その中心軸上に配置される押し棒34を有しており、他方、簡易脱着機構の継手41の流路には、それを開閉するための弁体44が単に設けられているだけである点。

相違点2: 本件発明1においては、ホース継手接続部(4)外周にホース継手(20)を嵌入して接続したとき、前記着座部(9c)が前記段差部(29)に着座して棒体(9)が本体(2)に押し込まれ、それによって栓部(8)を弁座(6)から離反させ、弁体(7)の前記通水部(9e)を介してホース継手(20)の出口側に通水し、ホース継手接続部(4)からホース継手(20)が外れたとき、水圧により栓部(8)が弁座(6)を閉塞するようになされているのに対して、刊行物1に記載の発明Aにおいては、簡易脱着機構の継手31への接続部外周に簡易脱着機構の継手31を嵌入して接続したとき、前記弁体44が前記押し棒34に着座して弁体44が押し込まれ、それによって簡易脱着機構の継手31の出口側に通水し、簡易脱着機構の継手31への接続部から簡易脱着機構の継手31が外れたとき、水圧により弁体44が前記流路を閉塞するようになされている点。

まず、上記相違点1について検討する。

刊行物2には、雌コネクター11が、第一当接面16と薄膜17との境界に形成される段差部で、内筒状内面15の半径よりも上記薄膜17の半径が縮小する段付状に形成されている構成が記載されている。
さらに、該刊行物2には、雄コネクター12の本体20の通路31に弁座20Bとそれを開閉するための弁体21が設けられ、その弁体21の栓部にそれに結合された軸22を有し、その軸22の先端部は、前記雄コネクター12の本体20の雌コネクター11接続部の開口端より露出され且つ、その軸22の先端部に、半径方向外方へ突起部を介して、前記雌コネクター11の前記段差部の薄膜17の半径より大になるように、第二当接面27が突起状に形成され、前記突起部以外の部分で前記薄膜17の半径より小なる位置にまで延びる、液の連通部としての溝28が形成されている構成が記載されている。
しかしながら、刊行物1に記載された発明Aは、混合栓本体の吐出部とホース端部とを接続する水栓の接続具であるのに対して、刊行物2に記載されたものは、容器のスパウトとディスペンサーの配管とを接続する流体連結具であり、両者の技術分野は同一といえない。
そして、弁体に駆動力を伝達する部材としての、刊行物1に記載された発明Aの押し棒34、及び、刊行物2に記載された連結具の軸22に着目すると、前者の押し棒34は、弁体44にではなく、該弁体44を備えた継手41と接続される相手側の継手31に設けられているのに対し、後者の軸22は、弁体21とともに雄コネクター12に設けられている。このため、相違点1に係る本件発明1の発明特定事項に到達するためには、刊行物1に記載された発明Aにおける弁体44に、刊行物2に記載された連結具における、突起部、当接面、及び溝を備えた軸22を設けるのみならず、刊行物1に記載された発明Aにおける押し棒34の代わりに、刊行物2に記載された連結具における、雌コネクター11の上記段差部を設ける必要があり、かかる改変は、刊行物1及び2に接した当業者といえども、容易に想到し得たものとはいえない。
なお、特許異議申立人は、特許異議申立書において、刊行物1(甲第1号証)に記載された発明及び刊行物2(甲第2号証)に記載された発明をそれぞれ指摘するが、前者の発明と後者の発明とを組み合わせることが容易である理由については、全く示していない。

してみれば、刊行物1及び2に接した当業者といえども、相違点1に係る本件発明1の発明特定事項を容易に想到し得たとは認められない。

したがって、相違点2について検討するまでもなく、本件発明1は、刊行物1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(4-4-2) 本件発明2について

本件発明2は、本件発明1にさらに発明特定事項を付加して、限定したものである。
そして、前項(4-4-1)において述べたように、本件発明1は、刊行物1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件発明2もまた、刊行物1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

5.むすび

以上のとおりであるから、特許異議申立人の申立てた理由及び提出した証拠によっては、本件の請求項1及び2に係る特許を取り消すことができない。
また、他に本件の請求項1及び2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2003-09-29 
出願番号 特願平8-247135
審決分類 P 1 651・ 121- YB (F16L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 倉田 和博  
特許庁審判長 鈴木 公子
特許庁審判官 祖山 忠彦
大町 真義
登録日 2002-01-18 
登録番号 特許第3270690号(P3270690)
権利者 ヤンマー産業株式会社 株式会社ジェイトップ・ユーコー
発明の名称 水栓の接続具  
代理人 窪田 卓美  
代理人 窪田 卓美  
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