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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A61B
管理番号 1086548
異議申立番号 異議2003-70695  
総通号数 48 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1994-02-22 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-03-15 
確定日 2003-10-22 
異議申立件数
事件の表示 特許第3326201号「血圧計及び脈波計における圧力降下速度制御装置」の請求項1、2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3326201号の請求項1ないし2に係る特許を取り消す。 
理由 本件特許第3326201号は、特許査定時の明細書及び図面の記載から見て、その特許請求の範囲に記載されたとおりのものであると認める。
これに対して、平成15年5月30日付けで取消理由を通知し、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、特許権者からは何らの応答もない。
前記取消理由は次のものである。
*******************************************************************
理 由
1.本件発明について
特許第3326201号の請求項1,2に係る発明(以下で、「本件第1発明」、「本件第2発明」という)は、その特許請求の範囲の請求項1,2に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】 カフ(1A)の空気ノウ(1)に連通して設けられた排気調整弁(4)の排気口(4e)を塞ぐ弾性体(4c)を作動させる電磁手段(4A)へ通電し、この通電を制御することにより前記排気口(4e)からの排気を制御するようにした血圧計及び脈波計における圧力降下速度制御装置において、前記排気調整弁(4)及び空気ノウ(1)に連通された加圧器(2)及び圧検出部(3)と、前記圧検出部(3)に接続された脈波検出部(6)と、前記圧検出部(3)及び脈波検出部(6)に接続されたマイクロコンピュータ(5)と、前記マイクロコンピュータ(5)と排気調整弁(4)間に接続された電力制御部(7)とを有し、前記圧検出部(3)及び脈波検出部(6)からの検出信号(3a,3b)に基づき前記電磁手段(4A)への通電を制御すると共に、前記弾性体(4c)の表面に第1粗面(4cA)が形成され、前記第1粗面(4cA)が前記排気口(4e)に接するように構成したことを特徴とする血圧計及び脈波計における圧力降下速度制御装置。
【請求項2】 カフ(1A)の空気ノウ(1)に連通して設けられた排気調整弁(4)の排気口(4e)を塞ぐ弾性体(4c)を作動させる電磁手段(4A)へ通電し、この通電を制御することにより前記排気口(4e)からの排気を制御するようにした血圧計及び脈波計における圧力降下速度制御装置において、前記排気調整弁(4)及び空気ノウ(1)に連通された加圧器(2)及び圧検出部(3)と、前記圧検出部(3)に接続された脈波検出部(6)と、前記圧検出部(3)及び脈波検出部(6)に接続されたマイクロコンピュータ(5)と、前記マイクロコンピュータ(5)と排気調整弁(4)間に接続された電力制御部(7)とを有し、前記圧検出部(3)及び脈波検出部(6)からの検出信号(3a,3b)に基づき前記電磁手段(4A)への通電を制御すると共に、前記排気口(4e)の周囲に第2粗面(4eA)が形成され、前記第2粗面(4eA)が前記弾性体(4c)に接するように構成したことを特徴とする血圧計及び脈波計における圧力降下速度制御装置。」

2.刊行物
刊行物1:特開昭59-141934号公報
刊行物2:実公平2-37341号公報
刊行物3:特開昭57-107481号公報

2-1.刊行物1について
刊行物1には、特許異議申立人斎藤順一が提出した特許異議申立書「証拠の説明」欄の甲第1号証の説明(特許異議申立書第6頁第11行-第7頁第5行)に記載のとおりの発明(以下「刊行物1発明」という)が記載されている。
注:刊行物1は、もう一人の特許異議申立人安藤和義が提出した特許異議申立書「証拠の説明(i)甲第1号証」の欄でも説明されているものでもある。

2-2 刊行物2について
刊行物2には次の事項が記載されている。
「弁体と弁座との当接部のうち少なくともいずれか一方をゴム状弾性体により形成したバルブにおいて、上記弁体と弁座のゴム状弾性体により形成した当接部のうち少なくともいずれか一方の接触面を粗面にすると共に、非粘着材を表面に露出させて成ることを特徴とするバルブ」(第1頁左欄第2行-7行)、
「而して開弁、閉弁の応答性がmsec単位で要求されるものが多くゴムの粘着性が問題となるために、一般的にゴム表面に四フッ化エチレン樹脂等の樹脂コーティングを施して粘着を防止していた」(第1頁左欄第18-22行)、
「長時間シール部12が弁座6に押圧されていても、シール部6は粘着性が弱いので粘着力が過大になることなく、所定圧で弁座6から確実に離れる」(第2頁右欄第26-29行)、
「さらに本実施例ではソレノイドバルブについて説明したが、これに限るものではなく、流量制御弁、圧力制御弁、……等にも適用し得るものである。」(第2頁右欄第36-39行)

2-3.刊行物3には次の事項が記載されている。
「一方弁と弁座の粘着が起こらないような工夫も従来からされて来た。その方法を以下に述べる。第1はゴム等の弁の表面アラサを粗くする方法である。これは弁の成形時に金型の表面を粗くして作る」(第1頁右下欄第17行-第2頁左上欄第1行)

3.対比・判断
3-1.本件第1発明についての対比・判断
刊行物1発明は、前記斎藤順一が提出の異議申立書の第6頁第11行-第7頁第5行に記載の(イ)、(ロ)、(ハ)、(ニ)、(ホ)、(ヘ)、(ト’、チ’)の構成事項からなるものであり、刊行物1発明における「開口部(58)」、「弾性体の弁体(60)」がそれぞれ、本件第1発明における「排気口(4e)」、「排気口(4e)を塞ぐ弾性体(4c)」に該当することが明らかであるから、本件第1発明と刊行物1発明は、両者ともに
「カフ(1A)の空気ノウ(1)に連通して設けられた排気調整弁(4)の排気口(4e)を塞ぐ弾性体(4c)を作動させる電磁手段(4A)へ通電し、この通電を制御することにより前記排気口(4e)からの排気を制御するようにした血圧計及び脈波計における圧力降下速度制御装置において、前記排気調整弁(4)及び空気ノウ(1)に連通された加圧器(2)及び圧検出部(3)と、前記圧検出部(3)に接続された脈波検出部(6)と、前記圧検出部(3)及び脈波検出部(6)に接続されたマイクロコンピュータ(5)と、前記マイクロコンピュータ(5)と排気調整弁(4)間に接続された電力制御部(7)とを有し、前記圧検出部(3)及び脈波検出部(6)からの検出信号(3a,3b)に基づき前記電磁手段(4A)への通電を制御すると共に、前記弾性体(4c)の表面が前記排気口(4e)に接するように構成したことを特徴とする血圧計及び脈波計における圧力降下速度制御装置」である点で一致し、次の点で相違する。
(相違点1)
本件第1発明は、弾性体の表面に粗面が形成されており、粗面が排気口に接するようにしたのに対し、刊行物1発明は、弾性体の表面が排気口に接するようにするものであるが、表面が粗面かどうか記載がないものである点。
(相違点1についての検討)
刊行物2の記載により、弁体と弁座との当接部のうち少なくともいずれか一方をゴム状弾性体により形成したバルブにおいて、上記弁体と弁座のゴム状弾性体により形成した当接部のうち少なくともいずれか一方の接触面を粗面にして、粘着を防ぎ、それにより、開弁、閉弁の応答性の良さが得られるということおよび、それらバルブは流量制御用、圧力制御用に用いることができるということが従来周知であって、刊行物3においても、弁と弁座の粘着防止のための工夫が従来からされて来ていて、その一つとしてゴム製の弁の表面アラサを粗くするものがあると紹介されているのであるから、刊行物1発明において、弁体と排気口の周囲の粘着のおそれを防止するために、弁体表面を粗面に仕上げることは当業者が容易に想到できた事項と認められる。
したがって、相違点1は格別のものと認められない。

3-2.本件第2発明についての対比・判断
刊行物1発明は、前記本件第1発明についての対比・判断の段落で述べたように(イ)、(ロ)、(ハ)、(ニ)、(ホ)、(ヘ)、(ト’、チ’)の構成事項からなるものであり、刊行物1発明における「開口部58」、「弾性体の弁体60」がそれぞれ、本件第2発明における「排気口(4e)」、「排気口(4e)の周囲に接する弾性体(4c)」に該当することが明らかであるから、本件第2発明と刊行物1発明は、両者ともに
「カフ(1A)の空気ノウ(1)に連通して設けられた排気調整弁(4)の排気口(4e)を塞ぐ弾性体(4c)を作動させる電磁手段(4A)へ通電し、この通電を制御することにより前記排気口(4e)からの排気を制御するようにした血圧計及び脈波計における圧力降下速度制御装置において、前記排気調整弁(4)及び空気ノウ(1)に連通された加圧器(2)及び圧検出部(3)と、前記圧検出部(3)に接続された脈波検出部(6)と、前記圧検出部(3)及び脈波検出部(6)に接続されたマイクロコンピュータ(5)と、前記マイクロコンピュータ(5)と排気調整弁(4)間に接続された電力制御部(7)とを有し、前記圧検出部(3)及び脈波検出部(6)からの検出信号(3a,3b)に基づき前記電磁手段(4A)への通電を制御すると共に、前記弾性体(4c)の表面が前記排気口(4e)に接するように構成したことを特徴とする血圧計及び脈波計における圧力降下速度制御装置」である点で一致し、次の点で相違する。
(相違点2)
本件第2発明は、排気口(4e)の周囲に第2粗面(4eA)が形成され、前記第2粗面(4eA)が前記弾性体(4c)に接するように構成したのに対し、刊行物1発明は、排気口の周囲の表面が弾性体に接するように構成したものであるものの、排気口の周囲が粗面かどうかについて記載がない点。
(相違点2についての検討)
前記(相違点1についての検討)の段落で刊行物2,3を用いて述べたと同様の道理により、刊行物1発明において、排気口の周囲を弁体と粘着しない程度の粗面にすることは当業者が容易に想到できた事項と認められる。
したがって、相違点2も格別のものといえない。

以上述べたように、本件出願の請求項1,2に係る発明はいずれも、上記刊行物1-3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。よって、請求項1,2に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
********************************************************************
そして、上記の取消理由は妥当なものと認められるので、本件の請求項1ないし2に係る特許は、この取消理由によって取り消すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2003-09-08 
出願番号 特願平4-186710
審決分類 P 1 651・ 121- Z (A61B)
最終処分 取消  
前審関与審査官 居島 一仁小原 博生  
特許庁審判長 渡部 利行
特許庁審判官 河原 正
菊井 広行
登録日 2002-07-05 
登録番号 特許第3326201号(P3326201)
権利者 株式会社パラマ・テック
発明の名称 血圧計及び脈波計における圧力降下速度制御装置  
代理人 田村 敏朗  

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