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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G08B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G08B
管理番号 1087245
審判番号 不服2001-6152  
総通号数 49 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1996-05-07 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-04-19 
確定日 2003-11-13 
事件の表示 平成 6年特許願第250391号「防災システムの表示装置」拒絶査定に対する審判事件[平成 8年 5月 7日出願公開、特開平 8-115482]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成6年10月17日の出願であって、平成13年3月13日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成13年4月19日に拒絶査定に対する審判請求がされるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。


2.平成13年4月19日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成13年4月19日付けの手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正後の本願発明
平成13年4月19日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)により、本願の明細書における特許請求の範囲の請求項1は、

「防災センター等に設けられる防災受信盤及び地区に設けられ前記防災受信盤と伝送路を介して接続される複数の表示盤のそれぞれに、メッセージ表示部を有する表示手段を設けた防災システムの表示装置において、
前記防災受信盤は、防災システムで設定される通常監視状態、火災シミュレーションによる火災訓練状態、保守・点検状態、システム試験状態等の設定状態を示す旨をメッセージで前記メッセージ表示部に表示する表示制御手段と、前記設定状態を示すデータを前記伝送路を介して前記表示盤に送信する表示盤移報部とを設け、
前記表示盤は、前記防災受信盤から送信される前記設定状態を示すデータを受信して、前記防災受信盤で設定された設定状態を示す旨をメッセージで前記メッセージ表示部に表示する表示制御手段を設けたことを特徴とする防災システムの表示装置。」
と補正された。

上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「表示盤」について「複数の表示盤」との限定を付加し、同じく「防災受信盤」について「設定状態を示すデータを前記伝送路を介して前記表示盤に送信する表示盤移報部とを設け」との限定を付加し、同じく「表示盤」について「前記表示盤は、前記防災受信盤から送信される前記設定状態を示すデータを受信して、前記防災受信盤で設定された設定状態を示す旨を・・・表示する表示制御手段を設け」との限定を付加するものであって、特許法第17条の2第3項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許請求の際に独立して特許を受けることができるものであるかについて以下に検討する。


(2)引用文献
(2)-1.引用文献1
ア.原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物特開平5-274563号公報(平成5年10月22日公開、以下「引用文献1」という。)には、次の事項が記載されている。

(ア)「警戒中である通常モード、点検中である点検モード及び施工中である施工モードなどといった動作モードを入力手段で設定し、この入力手段による設定モードに応じて処理手段が各モードを実現する複数の個別動作処理を実行し、上記処理手段が入力手段のモード設定に応じた表示を表示手段で行わせて成ることを特徴とする火災受信機のモード設定方法。」(請求項1)

(イ)「・・・本発明の一実施例を示す。本実施例の自火報システムは、図9に示すように、火災受信機Aと、この火災受信機Aに感知器回線L11〜L1nを介して接続された複数の感知器Sと、火災受信機Aに地区音響回線L12〜L2mを介して接続された複数の地区音響Bとで構成され、・・・。但し、このシステム構成は一例を示しただけであり、他のシステム構成の場合にも本発明を適用できる。」(段落0010)

(ウ)「火災受信機Aには、・・・モード選択スイッチSW0が設けられ、このモード選択スイッチSW0で点検モード、施工モード、通常モードという各種モードの設定が行われ、そのモードの設定状態を表示装置Dで表示する構成としてある。・・・、表示装置DとしてはLED、液晶表示装置、プラズマディスプレイなどを用いてある。」(段落0011)

(エ)「・・・火災受信機Aは、図10に示すように、モード選択スイッチSW0の操作状態をIO部2を介してCPU部1が取り込み、この操作入力に応じてメモリ(ROM)3から所定のデータを読み出し、上記各種モードに応じた処理を実行する。そして、上記操作入力に応じて表示ドライバ5を介して表示装置Dを駆動する。」(段落0013)

(オ)「・・・この図1の場合には、モード選択スイッチSW0によるモードの設定を、「通常」、「点検」、「施工」の文字表示の右側に付された三角形のカーソルで示し、通常モードを選択している場合は、上記表示の左斜め上に「警戒中」の文字を表示するようにしてある。」(段落0014)

(カ)「さらに、図5に示すように、各モード毎に、「警戒中」、「点検中」及び「施工中」の表示を設け、図6(a)〜(c)に示すように各モード毎に、各表示を明確に示すようにしてもよい。」(段落0016)

(キ)「・・・現在のモードが点検あるいは施工モードのように火災受信機が通常の火災受信をしない状態となっていることを、明確に表示し、つまりは火災受信機が通常の火災受信を行わないことを強調し、点検中あるいは施工中であることを一目で分かるようにし、・・・。即ち、より分かりやすいマンマシーンインターフェースを備えるシステムを構築することが可能となり、より安全性を向上させることができる。」(段落0019)

イ.以上の点、並びに発明の詳細な説明の記載等を考慮すると、引用文献1には、次のとおりの発明が記載されていると認められる。
「火災受信機に、表示装置Dを有する表示手段を設けた防災システムの表示装置において、
火災受信機は、防災システムで設定される通常モード、点検モード等の設定状態を示す旨をメッセージで前記表示装置Dに表示する表示制御手段を設けたことを特徴とする防災システムの表示装置。」


(3)対比
本願補正発明と引用文献1に記載の発明を対比すると、後者における「火災受信機」、「表示装置D」、「防災システムで設定される通常モード、点検モード等の設定状態」は、それぞれ、前者における「防災受信盤」、「メッセージ表示部」、「防災システムで設定される通常監視状態、保守・点検状態等の設定状態」に相当することから、
両者は、
「防災受信盤に、メッセージ表示部を有する表示手段を設けた防災システムの表示装置において、
前記防災受信盤は、防災システムで設定される通常監視状態、保守・点検状態等の設定状態を示す旨をメッセージで前記メッセージ表示部に表示する表示制御手段を設けたことを特徴とする防災システムの表示装置。」
である点で一致し、次の点において相違している。

(相違点1)
本願補正発明は、防災センター等に設けられる防災受信盤及び地区に設けられ前記防災受信盤と伝送路を介して接続される複数の表示盤のそれぞれに、メッセージ表示部を有する表示手段を設けたものであるのに対し、
引用文献1に記載の発明は、防災受信盤にメッセージ表示部を有する表示手段を設けるものである点。

(相違点2)
本願補正発明においては、防災受信盤は、設定状態を示すデータを伝送路を介して表示盤に送信する表示盤移報部を設け、表示盤は、防災受信盤から送信される設定状態を示すデータを受信して、防災受信盤で設定された設定状態を示す旨をメッセージでメッセージ表示部に表示する表示制御手段を設けたものであるのに対して、
引用文献1に記載の発明は、そのような構成を備えない点。


(4)判断

ア.相違点1について
防災センター等に設けられる防災受信盤及び地区に設けられ前記防災受信盤と伝送路を介して接続される複数の表示盤のそれぞれに、メッセージ表示部を有する表示手段を設ける防災システムの表示装置は、慣用されるタイプの一つである(必要なら、特開平6-119585号公報(図1、段落番号0013-0014等参照)、特開昭64-61897号公報、等参照)。そして、上記(2)-1ア(イ)に「・・・他のシステム構成の場合にも本発明を適用できる。」とされているものでもあることからして、引用文献1に記載の発明の適用対象として、上記慣用されるタイプのものを採用すること、すなわち相違点1に係る本願補正発明の構成を採用することは、当業者が必要に応じて適宜に選択し得た設計的な事項である。

イ.相違点2について
防災受信盤から送信される設定状態を示すデータを受信して、防災受信盤で設定された設定状態を示す旨をメッセージでメッセージ表示部に表示する表示制御手段を地区に設ける表示盤に持たせる技術は、防災システムの表示装置の分野において本願出願前の周知技術に過ぎない(必要なら、例えば特開平6-119585号公報(図1、「住棟制御装置(20)は、表示パネル(22)の一部に「テストモード中」と表示する。」(段落0016)、「住戸管理装置(12)をテストモードに設定するための通報は、・・・住棟制御装置(20)のテストモード設定時に、自動的に成されるようにしてもよい。そして、この時、住戸管理装置(12)側も「テストモード中」の表示を行う。」(段落0021)の記載等参照))。そして、この周知技術を用いるに際して、防災受信盤に設定状態を示すデータを伝送路を介して表示盤に送信する表示盤移報部を設けることは、当業者が設計上適宜になし得る事項である。
よって、相違点2に係る本願補正発明の構成を採用することは、周知技術の付加に過ぎない。

ウ.そして、本願補正発明の全体の作用効果としても、引用文献1に記載の発明及び慣用技術・周知技術から、当業者が予測できる範囲のものである。

したがって、本願補正発明は、これらに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際に独立して特許を受けることができないものである。


(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第4項で準用する同法第126条第3項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項で準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。


3.本願発明について

(1)以上のとおり、平成13年4月19日付けの手続補正は却下されたため、
本願の請求項1ないし5に係る発明は、平成10年12月28日付けの手続補正書により補正された明細書及び出願当初の図面の記載からみて、その明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載されたとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という)は、次のとおりである。

「防災センター等に設けられる防災受信盤及び地区に設けられ前記防災受信盤と伝送路を介して接続される表示盤のそれぞれは、メッセージ表示部を有する表示手段と、防災システムで設定される通常監視状態、火災シュミレーションによる火災訓練、保守・点検状態、システム試験状態、等の設定状態を示す旨をメッセージで前記メッセージ表示部に表示する表示制御手段とを設けたことを特徴とする防災システムの表示装置。」


(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、上記2(2)のとおりのものが記載されている。


(3)対比、判断
本願発明の構成要件は、上記2で検討した本願補正発明に全て含まれているものである。
したがって、本願補正発明が、上記のとおり、引用文献1に記載の発明及び慣用技術・周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものである。


(4)むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2003-09-12 
結審通知日 2003-09-16 
審決日 2003-09-29 
出願番号 特願平6-250391
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G08B)
P 1 8・ 121- Z (G08B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 原 光明宮崎 敏長  
特許庁審判長 三友 英二
特許庁審判官 村上 哲
岩本 正義
発明の名称 防災システムの表示装置  
代理人 宮内 佐一郎  
代理人 竹内 進  

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