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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L
管理番号 1087251
審判番号 不服2000-11283  
総通号数 49 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1997-11-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2000-07-21 
確定日 2003-11-13 
事件の表示 平成8年特許願第148360号「半導体装置の製造方法」拒絶査定に対する審判事件[平成9年11月28日出願公開、特開平9-306901]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成8年5月17日の出願であって、その請求項1〜5に係る発明は、平成11年3月29日、及び平成12年8月16日付手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1〜5に記載されたとおりであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は、特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりである。
「【請求項1】半導体基板(1)上に無機絶縁層(3)を形成する工程と、
該無機絶縁層上にポリイミド層(4)を形成する工程と、
該ポリイミド層上に約4μmないし5μmの厚さを有するポジ型フォトレジスト層(5)を形成する工程と、
該ポジ型フォトレジスト層にポジ用マスク(6)を用いて露光を行う工程と、
所定現像液を用いて前記露光されたポジ型フォトレジスト層の部分及び該ポジ型フォトレジスト層をマスクとして前記ポリイミド層の部分を除去して、前記ポジ型フォトレジスト層下にアンダカット(X)を入れる工程と、
該アンダカットを入れる工程後に前記ポジ型フォトレジスト層の残り部分を除去する工程と、
該ポジ型フォトレジスト層の残り部分を除去する工程後に前記ポリイミド層をマスクとして前記無機絶縁層をエッチング除去する工程と
を具備する半導体装置の製造方法。」

2.刊行物の記載事項
これに対して、当審の拒絶の理由に引用された、本願出願前日本国内において頒布された特開平7-58107号公報(以下「刊行物1」という。)、特開平6-275511号公報(以下「刊行物2」という。)、特開平2-249232号公報(以下「刊行物3」という。)には、以下の事項が記載されている。
(1)刊行物1
(1a)「【請求項1】半導体基板上に形成された金属配線上に無機絶縁膜を形成する工程と、
前記無機絶縁膜上にポリイミド膜を形成する工程と、
前記ポリイミド膜上にフォトレジストを形成する工程と、
前記フォトレジストを所定の形状に形成した後、これをマスクとして前記ポリイミド膜にエッチングにて所定の開口部を設ける工程と、
前記フォトレジストを除去する工程と、
前記ポリイミド膜をマスクにして前記無機絶縁膜にRIEによるドライエッチングを施す工程と、
前記ポリイミド膜の表面層を一定量除去する工程とから構成される積層パッシベーション膜形成工程を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。」
(1b)「【0012】【実施例】 本発明の一実施例について、図1及び図2を参照しながら説明する。
図1(a)〜図1(e)は、本発明の一実施例における半導体装置の製造工程を示す断面図である。以下に、本実施例の製造工程について説明する。
【0013】 まず、所定のパターンを有した、例えばAl-Siからなる金属配線11(厚さ:約1.0μm)上に、通常のプラズマCVD法により無機絶縁膜12として1μm厚のP-SiO膜を形成し、この無機絶縁膜12のP-SiO膜上にポリイミド膜13を約3.2μm(4000rpm-60秒)塗布をする。更に140℃(5分)のベーク後、ポジ型フォトレジスト14を約2.5μm(4000rpm-30秒)塗布し、110℃(60秒)のベークを行う(図1(a))。
【0014】 次に、所定のパターンを有するマスクを用い、露光後、アルカリ系現像液により、ポジ型フォトレジスト14の現像とポリイミド膜13のエッチングを連続して行ない、ポリイミド膜13に所定のパターンを形成する(図1(b))。
【0015】 続いて、有機溶剤により、ポジ型フォトレジスト14を選択的に除去した後、所定の手順でベーク((250℃-30分)+(350℃-40分))を行ない、ポリイミド膜13のイミド化を完了させる。この後所定の開孔部をもつ、ポリイミド膜13をマスクにこの無機絶縁膜12の開孔を、通常のRIEによるドライエッチングで行う(図1(c))。」
(1c)「【0021】【発明の効果】 本発明による半導体装置の製造方法によれば、モールド樹脂との密着性の良好であり、モールド樹脂中に水分が侵入しても、パッドや配線のコロージョンが発生しにくい半導体装置の製造方法を提供することが出来る。」

(2)刊行物2
(2a)「【0001】【産業上の利用分野】 本発明は、ポリイミドパターンの形成方法に関するものである。さらに詳しくは、ポジ型フォトレジストを用いた場合のポリイミドパターンの形成方法に関するものである。
【0002】【従来の技術】 半導体素子などの用途に用いられるポリイミドには、上部配線と下部配線、または外部リードと下部配線との導通のために絶縁層にスルーホール(接続孔)を形成する必要があり、そのためには、ポリイミドパターンの形成が不可欠である。通常ポリイミドは、ポリイミド前駆体の形で供与され、このポリイミド前駆体のパターンを形成した後、熱処理を行いポリイミドのパターンを形成する。」
(2b)「【0005】 通常、ポジ型フォトレジストを用いてポリイミド前駆体のパターンを形成するには、次のように行われる。
【0006】(1)ポリイミド前駆体被膜を基板上に形成する。
【0007】(2)ポジ型フォトレジスト被膜を形成した後に露光し、ポジ型フォトレジストの現像後または現像と同時にそれをマスクとして該ポリイミド前駆体被膜のエッチングを行いパターン化する。
【0008】(3)該ポジ型フォトレジスト被膜を剥離する。
【0009】(4)パターンの形成されたポリイミド前駆体被膜を加熱処理しポリイミドのパターンに変換する。」
(2c)「【0022】 ポジ型フォトレジストを塗布する方法としては、公知の方法が使用できるが、回転法によることが好ましい。膜厚としては、通常、プリベーク後の膜厚が、2.0〜4.0μmとなるように塗布される。」

(3)刊行物3
(3a)ポリイミド系樹脂膜のエッチング方法およびそれを用いた多層配線構造体の形成方法と題する発明であって、従来技術欄に「配線導体の形成された絶縁面上にポリイミド樹脂膜が形成され、その上にポジ型もしくはネガ型のレジスト膜を形成し、所定の選択露光及び現像処理によりレジストパターンを形成し、これをエッチングマスクとしてエッチング液によりポリイミド樹脂膜を選択的に溶解除去するものである。」(2頁右下欄7〜13行)
(3b)「上記レジスト膜4の膜厚としては0.3〜10μmの範囲であることが望ましい。0.3μmより薄いと形成膜にピンホールなどの膜欠陥が生じ易く、10μmより厚いとパターン精度が低下し、何れもエッチングにより形成したパターンに不良が発生する原因となる。」(4頁左下欄5〜10行)、第1図(e)、第2図(e)には、エッチング液によりポリイミド樹脂膜をエッチングして、該膜にアンダーカットが形成されていることが示されている。

3.当審の判断
上記摘記事項(1b)によると、ポリイミド膜の上に、ポジ型レジスト層を約2.5μm塗布し、べークを行い、現像液により露光されたポジ型レジスト層の部分とポリイミド層とを除去することが記載されているから、上記刊行物1には、「半導体基板上に無機絶縁層を形成する工程と、
該無機絶縁層上にポリイミド層を形成する工程と、
該ポリイミド層上に約2.5μmの厚さのポジ型フォトレジスト層を形成する工程と、
該ポジ型フォトレジスト層にポジ用マスクを用いて露光を行う工程と、
所定現像液を用いて前記露光されたポジ型フォトレジスト層の部分及び該ポジ型フォトレジスト層をマスクとして前記ポリイミド層の部分を除去する工程と、
該工程後に前記ポジ型フォトレジスト層の残り部分を除去する工程と、
該ポジ型フォトレジスト層の残り部分を除去する工程後に前記ポリイミド層をマスクとして前記無機絶縁層をエッチング除去する工程と
を具備する半導体装置の製造方法。」が記載されていることになる。

そこで、本願発明1と刊行物1に記載された発明とを対比すると、
両者は、「半導体基板上に無機絶縁層を形成する工程と、
該無機絶縁層上にポリイミド層を形成する工程と、
該ポリイミド層上にポジ型フォトレジスト層を形成する工程と、
該ポジ型フォトレジスト層にポジ用マスクを用いて露光を行う工程と、
所定現像液を用いて前記露光されたポジ型フォトレジスト層の部分及び該ポジ型フォトレジスト層をマスクとして前記ポリイミド層の部分を除去する工程と、
該工程後に前記ポジ型フォトレジスト層の残り部分を除去する工程と、
該ポジ型フォトレジスト層の残り部分を除去する工程後に前記ポリイミド層をマスクとして前記無機絶縁層をエッチング除去する工程と
を具備する半導体装置の製造方法。」で一致しているが、次の2点で相違している。
相違点1;ポジ型フォトレジスト層の厚みについて、本願発明1が、約4μmないし5μmの厚さを有するとしているのに対して、刊行物1に記載された発明では、約2.5μmとしている点.
相違点2;本願発明1が、ポリイミド層の部分を除去して、前記ポジ型フォトレジスト層下にアンダカット(X)を入れるとしているのに対して、刊行物1に記載された発明では、ポジ型フォトレジスト層下にアンダカットを入れることが明記されていない点.

そこで、上記相違点1、2について検討する。
相違点1について;刊行物2には、ポジ型レジスト層を膜厚として、通常、2.0〜4.0μmに形成すること、刊行物3には、ポジ型レジスト膜の膜厚としては0.3〜10μmの範囲であることが望ましいことが記載されているから、刊行物1記載での厚み約2.5μmを、約4μmないし5μmの厚さとすることは、当業者ならば適宜なし得ることである。
相違点2について;刊行物3には、エッチング液によりポリイミド樹脂膜をエッチングして、該膜にアンダーカットが形成されていることが記載されている。また、通常、エッチング液によると等方エッチングされ、アンダーカットが形成されることは周知であり、このことは、本願の明細書に記載された第2の従来技術第8図(A)にも示されている。
そうすると、刊行物1に記載された発明では、ポジ型フォトレジスト層下にアンダカットを入れることが明記されていないが、現像液でポリイミド層の部分をエッチング除去するのであるから、前記ポジ型フォトレジスト層下のポリイミド層の部分は等方エッチングされ、アンダカットが形成されているはずである。よって、相違点2は実質的な相違点とは云えない。
また、本願発明1による効果も、刊行物1〜3の記載から予測し得るものであって格別なものとは認められない。
したがって、本願発明1は、上記刊行物1〜3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

なお、上記したように当審で拒絶理由を通知し、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、請求人からは何らの応答もない。
そして、以上検討したように、上記の拒絶理由は妥当なものと認められるので、本願は、この拒絶理由によって拒絶すべきものである。

4.むすび
したがって、本願発明1は、上記刊行物1〜3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2003-09-08 
結審通知日 2003-09-09 
審決日 2003-09-29 
出願番号 特願平8-148360
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 池渕 立今井 拓也  
特許庁審判長 城所 宏
特許庁審判官 川真田 秀男
中西 一友
発明の名称 半導体装置の製造方法  
代理人 谷澤 靖久  
代理人 河合 信明  
代理人 机 昌彦  

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