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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B25F |
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管理番号 | 1087271 |
審判番号 | 不服2002-12745 |
総通号数 | 49 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1994-12-06 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2002-07-10 |
確定日 | 2003-11-13 |
事件の表示 | 平成 5年特許願第123976号「ブロック結合式電動工具」拒絶査定に対する審判事件[平成 6年12月 6日出願公開、特開平 6-335874]について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1 手続の経緯・本件発明 本件出願は、平成5年5月26日に特許出願されたものであって、その請求項1乃至3に係る発明は、平成14年8月2日付手続補正書により補正がされた明細書及び願書に最初に添付された図面の記載からみてその特許請求の範囲の請求項1乃至3に記載されたとおりのものと認めるところ、請求項1に係る発明(以下「本件発明1」という。)は、次のとおりである。 「モーターブロックとリヤブロックとが結合されて組立てられた電動工具であり、 前記モーターブロックは、当該電動工具のハウジングを兼用するモーターブロックハウジング中に界磁コイルブロックと回転子を内蔵するとともに、前記モーターブロックハウジングにブラシホルダが取付可能となっており、 前記モーターブロックハウジングには、前記界磁コイルブロックが収容されたときに該界磁コイルブロックの端子に接続される一端と前記ブラシホルダに接続される他端とを有する導体片が固定されており、 前記リヤブロックは、当該電動工具のリヤハウジングを兼用するリヤブロックハウジング中にスイッチを内蔵するとともに、一端がモーターブロック結合側に突出し、他端が前記スイッチないし電源コードに接続される導体片を有しており、 前記モータブロックに前記リヤブロックを結合すると、前記リヤブロック側の導体片の一端が前記界磁コイルに接続されることにより、該界磁コイルと前記スイッチとの間、および該界磁コイルと前記電源コードとの間が接続されてモータ配線が完成する構成としたブロック結合式電動工具において、 前記スイッチないし電源コードに接続される導体片は、前記リヤブロックハウジングに直接固定したことを特徴とするブロック結合式電動工具。」 2 引用例 原査定における拒絶の理由に引用した本件出願前に日本国内において頒布された刊行物である実願昭59-170689号(実開昭61-84658号)のマイクロフィルム(以下「引用例」という。)には、次の事項が記載されていると認める。 a 明細書第1頁下から第2行-第2頁第1行 「本考案は、携帯用電動工具のようにモータと電源部との接続を必要とする電気機器の配線、接続作業を容易にするための構造に関するものである。」 b 明細書第3頁第3行-第4頁第9行 「以下図示実施例により本考案を説明する。第1図乃至第5図において、ステータ収納室、ブラシホルダ室およびベアリング室を備えたハウジング1に、コイルの一端を接続したコイル端子2を備えたステータ3が内装され、またブラシホルダ室にはブラシ4が内挿され、導電性材料で作られたブラシチューブ5の一部を露出させたブラシホルダ6が挿入されている。一方、一端をスイッチ7の端子に圧接するように、他端は突出して前記ステータ3のコイル端子2に挿入されるピン状端子8を成形してなるリード線9を埋設してある電源配線組10は、ハウジング1から分離した部分組立として予め組立てておく。 以上の構成において、ステータ3のコイル端子2はハウジングの凹部穴1aに遊嵌する。この凹部穴1aと対応した位置の裏面には、凹部1bと貫通穴1cがあり電源配線組10の端子8は、この穴を通してステータ3のコイル端子2に挿入接続されると同時にブラシホルダ6のブラシチューブ5の露出部と接触し、電気的に接続されるようになっている。電源配線組10はハウジング1に装着された後、ハンドルカバ11、12で支持される。 本考案によれば、電源配線部を一つのブロックにし、ハウジングから分離したので、モータとブラシおよび電源スイッチ等の配線接続を容易にすることができる。」 c 第1乃至3図 一実施例を示す要部でその縦断側面図である第1図、電源配線組の側面図である第2図及び第1図のハウジングに第2図の電源配線組が装着された状態でのAA線断面図である第3図。 回転子がハウジング1に内蔵されていること及びリード線9の他端が電源コードに接続されていることは技術常識より明らかなこと並びに上記a乃至cの記載事項より、引用例には、次の「電動工具」の発明が記載されていると認める。 ハウジング1と電源配線組10とハンドルカバ11,12とが結合されて組立てられた電動工具であり、 前記ハウジング1は、ステータ3と回転子を内蔵するとともに、ブラシホルダ6が取付可能となっており、 電源配線組10には、前記ハウジング1に前記ステータ3が収容されている状態で前記ハウジング1に前記電源配線組10が結合されたときに前記ステータ3のコイル端子2に接続されるピン状端子8が成形されている一端と前記ブラシホルダ6に接続される他端とを有するリード線9が固定されており、 前記電源配線組10は、スイッチ7を有するとともに、ピン状端子8が成形された一端がハウジング1結合側に突出し、他端が前記スイッチ7ないし電源コードに接続されるリード線9を有しており、 前記ハウジング1に前記電源配線組10を結合すると、前記電源配線組10側のピン状端子8が前記ステータ3のコイル端子2に接続されることにより、前記ステータ3のコイルと前記スイッチ7との間、および該コイルと前記電源コードとの間が接続されてモータ配線が完成する構成とした電動工具において、 前記スイッチ7ないし電源コードに接続されるリード線9は、前記電源配線組10に直接固定した電動工具。 3 対比 本件発明1と引用例記載の発明とを対比すると、引用例記載の発明の「ステータ」は、本件発明1の「界磁コイルブロック」に相当し、同様に、「ステータのコイル」は「界磁コイル」に、「ハンドルカバ」は「電動工具のリヤハウジング」にそれぞれ相当していることが明らかであり、また、引用例記載の発明の「ハウジング」は、本件発明1の「モーターブロック」に相当するとともに「モーターブロックハウジング」にも相当していることが明らかである。 また、本件発明1のブロック結合式電動工具は、電動工具であることに限り、引用例記載の発明と共通している。 また、引用例記載の発明のスイッチを有するとともに、ピン状端子が成形された一端がモーターブロック結合側に突出し、他端が前記スイッチないし電源コードに接続されるリード線を有している電源配線組は、スイッチを有するとともに、一端がモーターブロック結合側に突出し、他端が前記スイッチないし電源コードに接続される導体(以下「導体A」という。)を有している電源配線ブロックであることに限り、本件発明1の電動工具のリヤハウジングを兼用するリヤブロックハウジング中にスイッチを内蔵するとともに、一端がモーターブロック結合側に突出し、他端が前記スイッチないし電源コードに接続される導体片を有しているリヤブロックと共通している。 また、引用例記載の発明の電源配線ブロックには、前記モーターブロックハウジングに前記界磁コイルブロックが収容されている状態で前記モータブロックに前記電源配線ブロックが結合されたときに前記界磁コイルブロックの端子に接続されるピン状端子が成形されている一端と前記ブラシホルダに接続される他端とを有するリード線が固定されていることは、電動工具には、界磁コイルブロックの端子に接続される一端とブラシホルダに接続される他端とを有する導体(以下「導体B」という。)が固定されていることに限り、本件発明1の前記モーターブロックハウジングには、前記界磁コイルブロックが収容されたときに該界磁コイルブロックの端子に接続される一端と前記ブラシホルダに接続される他端とを有する導体片が固定されていることと共通している。 以上のとおりであるので、本件発明1と引用例記載の発明とは、次の一致点および相違点を有していることになる。 (1) 一致点 モーターブロックと電源配線ブロックとが結合されて組立てられた電動工具であり、 前記モーターブロックは、当該電動工具のハウジングを兼用するモーターブロックハウジング中に界磁コイルブロックと回転子を内蔵するとともに、前記モーターブロックハウジングにブラシホルダが取付可能となっており、 前記界磁コイルブロックの端子に接続される一端と前記ブラシホルダに接続される他端とを有する導体Bが固定されており 前記電源配線ブロックは、スイッチを有するとともに、一端がモーターブロック結合側に突出し、他端が前記スイッチないし電源コードに接続される導体Aを有しており、 前記モータブロックに前記電源配線ブロックを結合すると、前記電源配線ブロック側の導体Aの一端が前記界磁コイルに接続されることにより、該界磁コイルと前記スイッチとの間、および該界磁コイルと前記電源コードとの間が接続されてモータ配線が完成する構成とした電動工具。 (2) 相違点 ア 導体A及びBが、本件発明1では、導体片であるのに対して、引用例記載の発明では、一端がピン状端子で成形されたリード線である点(以下「相違点1」という。)。 イ 界磁コイルブロックの端子に接続される一端とブラシホルダに接続される他端とを有する導体Bが、本件発明1では、モーターブロックハウジングに固定されており、界磁コイルブロックが収容されたときに該界磁コイルブロックの端子に導体Bの一端が接続されるものであるのに対して、引用例記載の発明では、電源配線ブロックに固定されており、モーターブロックハウジングに界磁コイルブロックが収容されている状態でモータブロックに電源配線ブロックが結合されたときに該界磁コイルブロックの端子に導体Bの一端が接続されるとともにブラシホルダに導体Bの他端が接続されるものである点(以下「相違点2」という。)。 ウ 電源配線ブロックが、本件発明1では、リヤブロックであり、該リヤブロックは、電動工具のリヤハウジングを兼用するリヤブロックハウジング中にスイッチを内蔵し、該リヤブロックハウジングにスイッチないし電源コードに接続される導体Aを直接固定しているのに対し、引用例記載の発明では、電源配線組であり、該電源配線組は、電動工具のリヤハウジングと別体であるのでこれを兼用するものではなく、したがって、上記のようにスイッチを内蔵しているものではなく、また、スイッチないし導体Aを直接固定しているものでもない点(以下「相違点3」という。)。 エ 本件発明1の電動工具はブロック結合式であるのに対し、引用例記載の発明では、ブロック結合式と言えるものであるのか明らかではない点(以下「相違点4」という。)。 4 判断 そこで、上記相違点について、以下検討する。 (1) 相違点1について 導体として導体片を用いることは、例示するまでもなく本件出願前周知の事項であり、また、端子の形状としてピン状のものや板状即ち片状のものも、例示するまでもなく本件出願前周知の事項であるので、引用例記載の発明における一端がピン状端子で成形されたリード線である導体を導体片とすることに、格別の困難性は見当たらない。 (2) 相違点2について 引用例記載の発明では、モーターブロックハウジングに界磁コイルブロックが収容され、ブラシホルダが取付可能となっており、そして、界磁コイルブロックの端子とブラシホルダとを接続する導体Bについては、電源配線ブロックに固定されているが、電源配線ブロックに固定しなければならないものではなく、また、接続のタイミングについても、モーターブロックハウジングに界磁コイルブロックが収容されている状態でモータブロックに電源配線ブロックを結合したときに、導体Bの一端が界磁コイルブロックの端子に接続され、他端がブラシホルダに接続されるようになっているが、このタイミングで接続が行われなければならないものでもなく、要するに、モーターブロックハウジングに界磁コイルブロックが収容され、ブラシホルダが取り付けられている状態で界磁コイルブロックの端子とブラシホルダとを接続できるように導体Bが設けられていれば良いものであることは、技術常識より明らかであるので、電源配線ブロックに固定されている導体Bをモーターブロックハウジングに固定されるように固定位置を変更し、その他端がブラシホルダに接続され、一端が、モーターブロックハウジングに界磁コイルブロックが収容されたときに該界磁コイルブロックの端子に接続されるようにすることは、当業者が容易に想到することができたことである。 (3) 相違点3について 引用例記載の発明では、電動工具のリヤハウジングと電源配線組とは別体であるが、これらを一体にしてリヤブロックとすることは、例えば、特開昭57-97339号公報(第2頁右下欄第6-10行記載事項参照。)に記載されているように、必要に応じて適宜なしうる設計的事項であるので、引用例記載の発明において、電動工具のリヤハウジングと電源配線組とを一体にしてリヤブロックとすること、したがって、電動工具のリヤハウジングを兼用するリヤブロックハウジング中にスイッチを内蔵し、リヤブロックハウジングにスイッチないし導体Aを直接固定することに、格別の困難性は見当たらない。 (4) 相違点4について 上記(3) のとおり、電動工具のリヤハウジングと電源配線組とは一体となり、そして、この一体となったリヤブロックとモータブロックとのブロックの結合により電動工具が組立てられることになるのであるから、このような電動工具は、ブロック結合式電動工具と言うことができるものである。 5 むすび したがって、本件発明1は、本件出願前に日本国内において頒布された上記引用例に記載された発明及び上記周知な事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 以上のとおりであるので、請求項2及び3に係る発明について判断するまでもなく、本件出願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2003-09-02 |
結審通知日 | 2003-09-09 |
審決日 | 2003-09-29 |
出願番号 | 特願平5-123976 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(B25F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 和田 雄二 |
特許庁審判長 |
小池 正利 |
特許庁審判官 |
神崎 孝之 宮崎 侑久 |
発明の名称 | ブロック結合式電動工具 |
代理人 | 福田 鉄男 |
代理人 | 中村 敦子 |
代理人 | 犬飼 達彦 |
代理人 | 岡田 英彦 |