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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H02P 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H02P |
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管理番号 | 1087274 |
審判番号 | 不服2002-21060 |
総通号数 | 49 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1996-11-22 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2002-10-31 |
確定日 | 2003-11-13 |
事件の表示 | 平成 7年特許願第111842号「センサレス式DCブラシレスモータの駆動装置」拒絶査定に対する審判事件[平成 8年11月22日出願公開、特開平 8-308288]について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成07年05月10日の出願であって、平成14年09月24日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年10月31日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年11月28日付で手続補正がなされたものである。 2.平成14年11月28日付の手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成14年11月28日付の手続補正を却下する。 [理由] (1)補正後の本願発明 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、 「起動時には擬似交流電源の電圧及び周波数を強制的に変化させ、その後ロータ位置検出信号に基づいた出力パターンによる駆動に切り換えるものであって、DCブラシレスモータの起動時の印加電圧を決定するための起動電圧データ、及びDCブラシレスモータの起動時の周波数変化速度を決定するための周波数変化倍率データを記憶し、マイコンに接続された電気的に書き換え可能なメモリを備え、モータ仕様や使用条件が変更された場合は、前記電気的に書き換え可能なメモリの内容のみ変更することで対応できることを特徴とするセンサレス式DCブラシレスモータの駆動装置。」 と補正された。 上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「メモリの内容」について「起動時の印加電圧を決定するための起動電圧データ、及びDCブラシレスモータの起動時の周波数変化速度を決定するための周波数変化倍率データ」との限定を付加するものであって、特許法第17条の2第3項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第4項において準用する同法第126条第3項の規定に適合するか)について以下に検討する。 (2)引用例 原査定の拒絶の理由に引用された特開平5-276787号公報(平成5年10月22日公開、以下、引用例1という。)には、図面とともに、 「【0001】 【産業上の利用分野】 この発明は、ブラシレス直流モータの電機子巻線に誘起された誘起電圧に基づいて磁石回転子と電機子巻線との相対的位置を検出し、検出した相対的位置に基づいてブラシレス直流モータを駆動するようにしたブラシレス直流モータの駆動装置に関する。」、 「 【0004】 マイクロコンピュータ7は、起動時は電機子巻線4に電圧が誘起していないため位置検出ができないので、時間と共に周波数が増加する同期信号を発生し、この同期信号に基づいてインバータ駆動信号U′,V′,W′およびUバー,Vバー,Wバーを出力する。駆動信号U′,V′,W′はそれぞれ各相に設けられたOR回路8によってチョッピング信号(Chop)との論理和がとられ、駆動信号U,V,Wとなる。すなわち、上アームのトランジスタQ1.Q2,Q3はチョッピングした信号で駆動し、下アームのトランジスタQ4,Q5,Q6はチョッピングしない信号で駆動する。ブラシレス直流モータ3が回転し、一定時間が経過すると、位置検出運転に切り換え、上記位置検出回路6の出力信号Sa,Sb,Scに基づいてインバータ駆動信号を出力する。」、 「【0005】 図6は上記同期運転のフローチャート、図7はそのタイミングチャートである。以下、図7を参照しながら、図6に基づいて同期運転の動作を説明する。 ステップS1からS2で起動指令があると、ステップS3に進んで、出力すべき駆動信号の周波数と電圧の初期値をテーブルから読み込み、ステップS4で起動を開始し、ステップS5で割り込みタイマをスタートさせる。この割り込みタイマは図7の割込タイミングの時間Tをカウントするものである。この時間Tは周波数の増加に応じて減少するものであり、スタートS6で読み込んだ周波数に基づいてステップS7で計算される。ステップS8は割り込み待ちのステップである。すなわち割り込みタイマが時間Tをカウントするかどうかを待ち、時間Tをカウントすると、ステップS12に進んで割り込み、すなわち運転モードの変更を行う。ステップS13では、割り込みタイマをステップS7で演算された時間Tにセットし、カウントをスタートさせる。ステップS13からS16ではモード演算を行った後、電圧値を読み込み、その電圧値に対応したデューティ比の演算を行う。そして、ステップS17でそのデューティ比の駆動信号を出力したのち、ステップS18で再びメインルーチンに戻る。メインルーチンのステップS9では同期運転から位置検出運転への切換条件がそろったか否かの判断を行い、切換条件がそろっていなければステップS6に戻って上述の動作を繰り返す。 切換条件がそろえばステップS10に進んで、位置検出運転に切り換え、ステップS11で速度制御を行って、その後通常の運転に入る。」と記載されている。 なお、マイクロコンピュータを用いて制御する装置において、「・・・値をテーブルから読み込み」と記載されている場合の「テーブル」が、メモリの意味であることは自明のことと認められる。また、メモリテーブルから読込むためには、予め該テーブルに記憶させておくことも当然のことと認められる。 これらの記載及び図面の記載によれば、引用例1には、 「起動指令を受けると、時間と共に周波数が増加する駆動信号を発生させ、該駆動信号により電機子巻線に通電して磁石回転子を同期運転し、切り換え条件がそろったら、磁石回転子の移動により電機子巻線に誘起された誘起電圧に基づいて磁石回転子と電機子巻線との相対的位置を検出し、検出した相対的位置に基づいてブラシレス直流モータを駆動する位置検出運転に切り換えるようにしたブラシレス直流モータの駆動装置において、上記制御をマイクロコンピュータで行うとともに、前記起動指令があると駆動信号の周波数と電圧の初期値を予め記憶させておいたメモリから読込んで設定することを特徴とするブラシレス直流モータの駆動装置。」 との発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認めることができる。 同じく、原査定の拒絶の理由に引用された特開平3-173395号公報(平成3年7月26日公開、以下、引用例2という。)には、図面とともに、 「本発明の目的は、ステータコイルに誘導される電圧によってロータ位置を検出するタイプのブラシレス直流電動機の起動及び運転のための方法並びに制御回路を提供することで・・」(4頁左上欄2-5行)、 「第2図Aによれば、起動及び運転回路45は第5図に示された表にまとめられた一組の情報が記憶されるROM又はEPROMタイプのメモリーであり得る組合わせ論理回路50に基づいて作動する。電動機動作サイクル14の起動ではメモリー50の・・・」(7頁右上欄5-9行) と記載されている。なお、上記記載から見て、「50」は、ROMまたはEPROMタイプのメモリーであることは明らかである。 これ等の記載によれば、引用例2には「ステータコイルに誘導される電圧によってロータ位置を検出するタイプのブラシレスモータにおいて、起動及び運転のための情報をEPROMタイプのメモリに記憶させる点」の発明(以下、引用発明2という。)が記載されているものと認めることができる。 (3)対比 そこで、本願補正発明と引用発明1とを比較すると、引用発明1の「時間と共に周波数が増加する駆動信号を発生させ、該駆動信号により電機子巻線に通電して磁石回転子を同期運転し」は、本願補正発明の「起動時に擬似交流電源の電圧及び周波数を強制的に変化させ」に相当し、以下同様に、「ロータ位置検出信号に基づいた出力パターンによる駆動」は「ロータ位置検出信号に基づいた出力パターンによる駆動に切り換えるもの 」に、「切り換え条件がそろったら・・切り換え」は「その後切り換える」に、「駆動信号の電圧の初期値」は「DCブラシレスモータの起動時の印加電圧を決定するための起動電圧データ」に、「ブラシレス直流モータ」は「センサレス式DCブラシレスモータ」にそれぞれ相当する。 また、引用発明の「・・・制御をマイクロコンピュータで行うとともに、・・・メモリから読込んで」は、メモリとマイクロコンピュータが電気的に接続されているために可能なことであるから、本願補正発明の「マイコンに接続されたメモリを備え」を含むものと認められる。 さらに、引用発明の「出力すべき駆動信号の周波数の初期値」と、本願補正発明の「周波数変化速度」は、共に擬似交流電源の周波数を強制的に変化させる程度を具体的に決定するための「周波数に関するデータ」として関連するデータであることは明かであるから、 両者は、 「起動時には擬似交流電源の電圧及び周波数を強制的に変化させ、その後ロータ位置検出信号に基づいた出力パターンによる駆動に切り換えるものであって、DCブラシレスモータの起動時の印加電圧を決定するための起動電圧データ及びDCブラシレスモータの起動時の周波数に関するデータを記憶し、マイコンに接続されたメモリを備えたことを特徴とするセンサレス式DCブラシレスモータの駆動装置。 」 の点で一致し、以下の点で相違している。 [相違点1] 本願補正発明は、「DCブラシレスモータの起動時の周波数変化速度を決定するための周波数変化倍率データを記憶し、・・・電気的に書き換え可能なメモリを備え、」ているのに対し、引用発明1では特に周波数について摘記すると「・・・駆動信号の周波数(と電圧)の初期値を予め記憶させておいたメモリ」との構成を備えている点。 [相違点2] 本願補正発明は、「マイコンに接続された電気的に書き換え可能なメモリを備え、モータ仕様や使用条件が変更された場合は、前記電気的に書き換え可能なメモリの内容のみ変更することで対応できること」と規定しているのに対し、引用発明1は、この様な規定を具備していない点。 (4)判断 [相違点1について] 引用発明1においては、周波数の変化(増加)する速度を規定していないが、引用発明1及び本願補正発明と同様の技術分野において、周波数の増加の程度(速度)を必要に応じて変化させようとすることは周知のことにすぎない(例えば、特開平2-197291号公報、特開昭63-206191号公報、特開平5-68394号公報等参照)ので、引用発明1においても、メモリに記憶しておき、起動時に該メモリから読込むデータとして「周波数の変化倍率データ」も用いることは必要に応じて適宜実施しうる程度のことにすぎないと認められる。 また、引用発明1は、メモリの種類について明記されていないが、引用発明1及び本願補正発明と同じ技術分野において、メモリとしてEPROMタイプのメモリーを用いることは引用発明2に記載されているので、引用発明1においても、そのメモリとして引用発明2の「EPROMタイプのメモリー」を用いることを阻害する要因は何ら認められない。 なお、EPROMタイプのメモリーが書き換え可能であることは、周知の事項にすぎないと認められる。 [相違点2について] 相違点2にかかる本願補正発明の構成は、マイコンを備えた制御装置において、上記相違点1についてで記載のように、マイコンとして当然備えるべきメモリの一部に書き換え可能な(EPROMタイプの)メモリを用いた場合、その制御装置の分野における当業者が、該書き換え可能なメモリの特性を活用しようとして行う当然の使用形態に他ならないものと認められる。 [効果等について] 以上のとおり、上記相違点1,2に係る構成は格別なものではなく、本願補正発明による効果は、引用発明1,2及び周知技術等から当然予測しうる程度のことにすぎないと認められる。 したがって、本願補正発明は、引用例1に記載された発明、引用例2に記載された発明、及び、周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (5)むすび 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第4項で準用する同法第126条第3項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 3.本願発明について 平成14年11月28日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成14年5月15日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「【請求項1】 起動時には擬似交流電源の電圧及び周波数を強制的に変化させ、その後ロータ位置検出信号に基づいた出力パターンによる駆動に切り換えるものであって、DCブラシレスモータの起動電圧、及び周波数変化速度の起動条件を記憶し、マイコンに接続された電気的に書き換え可能なメモリを備え、モータ仕様や使用条件が変更された場合は、前記電気的に書き換え可能なメモリの内容のみ変更することで対応できることを特徴とするセンサレス式DCブラシレスモータの駆動装置。」 (1)引用例 原査定の拒絶の理由に引用された引用例、および、その記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。 (2)対比・判断 本願発明は、前記2.で検討した本願補正発明から、メモリの内容である起動条件の限定事項である「起動時の印加電圧を決定するための起動電圧データ、及びDCブラシレスモータの起動時の周波数変化速度を決定するための周波数変化倍率データ 」との構成を「DCブラシレスモータの起動電圧、及び周波数変化速度の起動条件」と簡略にしたものである。 そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(4)」に記載したとおり、引用例1、引用例2、及び、周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例1、引用例2、及び、周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (3)むすび 以上のとおり、本願発明は、引用例1に記載された発明、引用例2に記載された発明、及び、周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2003-09-09 |
結審通知日 | 2003-09-16 |
審決日 | 2003-09-30 |
出願番号 | 特願平7-111842 |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(H02P)
P 1 8・ 121- Z (H02P) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 川端 修、牧 初 |
特許庁審判長 |
三友 英二 |
特許庁審判官 |
村上 哲 大野 覚美 |
発明の名称 | センサレス式DCブラシレスモータの駆動装置 |
代理人 | 池上 徹真 |
代理人 | 小原 寿美子 |
代理人 | 溝井 章司 |
代理人 | 波田 啓子 |
代理人 | 竹内 三明 |
代理人 | 山地 博人 |