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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B23H |
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管理番号 | 1087588 |
審判番号 | 審判1999-9959 |
総通号数 | 49 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2004-01-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 1999-06-24 |
確定日 | 2000-05-17 |
事件の表示 | 平成 3年特許願第510765号「放電加工方法及び装置」拒絶査定に対する審判事件[平成 4年 3月 5日国際公開、WO92/03246]について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、1991年6月20日を国際出願日とする出願であって、その請求項1乃至13に係る発明は、平成10年11月27日付けの手続補正書により補正された明細書及び願書に最初に添付した図面の記載からみてその特許請求の範囲の請求項1乃至13に記載されたとおりのものと認められるところ、請求項12に係る発明(以下「本願発明12」という。)は、次のとおりである。 「加工用電極と被加工物との間に形成される加工間隙に加工液を介して加工用パルス電圧を繰り返し印加して前記被加工物を放電加工する方法において、 前記加工間隙に印加されるパルス電圧のパルス数を計数する計数ステップと、 該計数ステップに応答し所定の第1のパルス数に相応する期間だけ前記加工用パルス電圧を一方の極性で前記加工間隙に印加する第1ステップと、 該計数ステップに応答し前記第1ステップの実行終了後所定の第2のパルス数に相応する期間だけ前記加工用パルス電圧を他方の極性で前記加工間隙に印加する第2ステップとを有し、 前記第1及び第2ステップを繰り返し実行することを特徴とする放電加工方法。」 2.引用例 これに対して、原査定における拒絶の理由に引用した特公昭59-26414号公報(以下「引用例」という。)には、次の事項が記載されている。 (1)「本発明は電極と被加工体の加工間隙にパルス放電を繰返して加工する放電加工装置の改良に関するものである。」(第1欄第27-29行) (2)「以上の装置による加工は加工間隙が正常である間、パルス発生回路6からスイツチ31,32にゲートパルスが加わり、スイツチのオン.オフ制御によつて繰返放電が行われる。このときの放電極性は図示のように電極1を正極、被加工体2を負極とする極性で行われ、・・・該回路6は作動を続けスイツチ31,32のオン.オフスイツチングによつて一定極性での放電が、そして加工が行われる。」(第3欄第23-37行) (3)「検出信号がある一定のレベル以下または以上になると今まで作動中のパルス発生回路6を停止し、今度はパルス発生回路7を作動させる。判別装置のレベル設定は与め試験結果にもとづいて最良の加工効果が得られるよう設定され、かくして検出信号が設定レベルに達すると反転してパルス発生回路7が作動し、スイッチ41,42をオン.オフし今までと逆極性のパルスを間隙に加え、逆極性パルス放電を行わせる。」(第4欄第14-23行) (4)「またこの逆極性パルス放電は1パルスに限らず繰返して複数回放電を行わせるようにしてもよい。」(第4欄第28-30行) (5)「このようにして付着堆積する金属の除去が行われれば加工は再び安定なものになり、間隙は正常に戻つて検出信号が判別装置10により判別され、判別結果正常加工状態に復帰したことが確認されれば、パルス発生回路7の作動を停止するとともにパルス発生回路6を作動せしめ、この出力ゲートパルスによりスイツチ31,32をオン.オフして電極1から被加工体2に流れる極性のパルス放電を繰返して目的とする条件での加工を行わせる。そして再び異種金属の付着堆積により加工が不安定になればパルス発生回路7を駆動して逆極性パルス放電を行わせる如く、これが繰返されて安定した放電加工が続けられるようになり、・・・増大できた。」(第4欄第38行-第5欄第15行) (6)「またこの逆極性パルス放電を行う時期は不安定状態になる加工間隙の状態変化を検出判定して最適時期を判断し逆極性パルス放電を行わせるようにしてもよいが、この異種金属の付着堆積する状態は一定のパルス放電を繰返して加工する場合は、実験的にパルス放電数に比例することが確められており、したがつて所定のパルス放電数毎に、あるいは所定時間間隔毎に逆極性パルス放電を行わせるようにしてもよい。」(第5欄第22行-第6欄第6行) 以上の(1)乃至(6)より、ゲートパルスによるスイッチ31,32,41,42のオン・オフ制御を繰り返すことにより、加工間隙に加工液を介して加工用パルス電圧が繰り返し印加されていることは明らかであり、また、所定のパルス放電数だけ放電させるために、所定のパルス放電数と同数の加工用電圧パルスを同数に相応する期間だけ印加していることも明らかであるので、結局、引用例には、 「電極1と被加工体2との間に形成される加工間隙に加工液を介して加工用パルス電圧を繰り返し印加して前記被加工体2を放電加工する方法において、 所定のパルス数に相応する期間だけ加工用パルス電圧を電極1を正極、被加工体2を負極とする極性で加工間隙に印加する正常状態での加工と、 前記正常状態での加工の後、複数回のパルス数に相応する期間だけ加工用パルス電圧を電極1を負極、被加工体2を正極とする極性で加工間隙に印加する逆極性での加工と、 前記正常状態での加工及び前記逆極性での加工を繰り返し実行する放電加工方法。」 の発明が記載されていると認める。 3.対比 本願発明12と引用例に記載された発明とを対比すると、引用例に記載された発明の「電極1」、「被加工体2」、「所定のパルス数」、「電極1を正極、被加工体2を負極とする極性」、「正常状態での加工」、「複数回のパルス数」、「電極1を負極、被加工体2を正極とする極性」及び「逆極性での加工」が、本願発明12の「加工用電極」、「被加工物」、「所定の第1のパルス数」、「一方の極性」、「第1ステップ」、「所定の第2のパルス数」、「他方の極性」及び「第2ステップ」にそれぞれ相当するので、両者は、 「加工用電極と被加工物との間に形成される加工間隙に加工液を介して加工用パルス電圧を繰り返し印加して前記被加工物を放電加工する方法において、 所定の第1のパルス数に相応する期間だけ前記加工用パルス電圧を一方の極性で前記加工間隙に印加する第1ステップと、 前記第1ステップの実行終了後所定の第2のパルス数に相応する期間だけ前記加工用パルス電圧を他方の極性で前記加工間隙に印加する第2ステップとを有し、 前記第1及び第2ステップを繰り返し実行することを特徴とする放電加工方法。」 である点で一致し、次の点で相違している。 相違点 本願発明12は、加工間隙に印加されるパルス電圧のパルス数を計数する計数ステップを有し、この計数ステップに応答して所定のパルス数に相応する期間だけ加工用パルス電圧を印加しているのに対し、引用例に記載された発明が、このような計数ステップを有し、計数ステップに応答して前記加工用パルス電圧を印加しているものであるのか不明である点。 4.当審の判断 そこで、この相違点について検討すると、パルス数が所定数であることを検出する計数ステップを有し、この計数ステップに応答して所定数のパルスが得られるように制御することは、例示するまでもなく従来周知であり、本願発明12は、この周知技術を単に採用しただけのものにすぎない。 また、本願発明12の効果は、引用例に記載された発明及び周知技術から予測しうる程度のものである。 5.むすび 以上のとおり、本願発明12は、本願の出願前に頒布された刊行物である引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願請求項1乃至11及び13に係る発明について判断するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2000-03-03 |
結審通知日 | 2000-03-17 |
審決日 | 2000-03-28 |
出願番号 | 特願平3-510765 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(B23H)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 佐々木 正章、佐々木 正章 |
特許庁審判長 |
小池 正利 |
特許庁審判官 |
播 博 宮崎 侑久 |
発明の名称 | 放電加工方法及び装置 |
代理人 | 高野 昌俊 |