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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  E03B
審判 全部申し立て 2項進歩性  E03B
管理番号 1087954
異議申立番号 異議2002-70265  
総通号数 49 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2000-12-12 
種別 異議の決定 
異議申立日 2002-01-31 
確定日 2002-12-25 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3230085号「水の供給方法とその装置」の請求項1ないし5に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3230085号の請求項1ないし5に係る特許を取り消す。 
理由 1.手続の経緯
特許第3230085号の発明についての出願は、平成11年6月8日に出願され、平成13年9月14日にその発明についての特許権の設定登録がなされ、その後、株式会社エコマスコーポレーション、株式会社日さく、藤田清人、落合重秋、株式会社ネスター、ゼオライト株式会社より特許異議の申立てがなされ、取消しの理由が通知され、その指定期間内である平成14年10月16日に意見書とともに訂正請求がなされたものである。

2.訂正の適否についての判断
(1)訂正の内容
平成14年10月16日付けの訂正請求に係る訂正事項は、以下のとおりである。

a.明細書の「特許請求の範囲」の欄を下記の通り訂正する。
「【請求項1】 1個の受水槽に、水道水と深井戸から汲み上げた後濾過されて飲料水に適合した水質の地下水の両方を供給し、通常の減水に対しては地下水を優先して供給することを特徴とする水の供給方法。
【請求項2】 1個の受水槽に、水道水と深井戸から汲み上げた後濾過されて飲料水に適合した水質の地下水の両方を供給し、通常の減水に対しては地下水を優先して供給し、地下水の供給系統が不作動のときには水道水を供給することを特徴とする水の供給方法。
【請求項3】 1個の受水槽に、それぞれバルブを接続した水道水供給管と深井戸から汲み上げた後濾過されて飲料水に適合した水質の地下水供給管を接続し、前記受水槽内の水位が満水状態から一定値まで低下したときに地下水供給管のバルブを開き、水位が元の満水状態に復帰したときに地下水供給管のバルブを閉じると共に、地下水の供給系統が不作動のときには水道水供給管のバルブを開くように制御することを特徴とする水の供給方法。
【請求項4】 1個の受水槽に、それぞれバルブを接続した深井戸から汲み上げた後濾過されて飲料水に適合した水質の地下水供給管と水道水供給管を接続すると共に、前記受水槽内の水の水位が第1の設定値以下に低下したことと、水の供給によって該第1の設定値まで水位が上昇したことを検出する第1のレベルセンサと、水位が前記第1の設定値になったことと水の供給により第1の設定値より高いところの第2の設定値に達したことを検出する第2のレベルセンサとを設け、前記第1のレベルセンサの出力信号により、水道水供給管のバルブ開閉を制御し、第2のレベルセンサの出力信号により、地下水供給管のバルブ開閉を制御する機構を設けたことを特徴とする水の供給装置。
【請求項5】 前記水道水供給管に接続された第1のレベルセンサが、受水槽に設けたボールタップ式のパイロットバルブであることを特徴とする請
求項4に記載の水の供給装置。」

b.明細書の段落[0010]の「1個の受水槽に水道水と地下水の両方を供給し」を「1個の受水槽に、水道水と深井戸から汲み上げた後濾過されて飲料水に適合した水質の地下水の両方を供給し」と訂正する。

c.明細書の段落[0011]の「1個の受水槽に水道水と地下水の両方を供給し」を「1個の受水槽に、水道水と深井戸から汲み上げた後濾過されて飲料水に適合した水質の地下水の両方を供給し」と訂正する。

d.明細書の段落[0012]の「水道水供給管と地下水供給管を接続し、該貯水槽内」を「水道水供給管と深井戸から汲み上げた後濾過されて飲料水に適合した水質の地下水供給管を接続し、前記受水槽内」と訂正する。

e.明細書の段落[0013]の「地下水供給管と水道水供給管を接続すると共に、該受水槽内」を「深井戸から汲み上げた後濾過されて飲料水に適合した水質の地下水供給管と水道水供給管を接続すると共に、前記受水槽内」と訂正する。

f.明細書の段落[0014]の「前記地下水供給管に接続された第1のレベルセンサが、受水槽に既設のボールタップ式バルブのパイロットバルブ」を「前記水道水供給管に接続された第1のレベルセンサが、受水槽に設けたボールタップ式のパイロットバルブ」と訂正する。

g.明細書の段落[0015]の「通常の使用に対しては地下水を多く使用し」を「通常の使用に対しては深井戸から汲み上げた後濾過されて飲料水に適合した水質の地下水を多く使用し」と訂正する。

h.明細書の段落[0026]の「通常は水位がこれより低下したときには、電極29cの信号により」を「通常は水位がこれより低下して第4レベルDまで降下したときには、電極29bの信号により」と訂正する。

i.明細書の段落[0030]の「受水槽に水道水と地下水の両方を供給したとき」を「受水槽に、水道水と深井戸から汲み上げた後濾過されて飲料水に適合した水質の地下水の両方を供給したとき」と訂正する。

(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更、独立特許要件の存否
上記訂正事項aは、特許請求の範囲の減縮あるいは、明りょうでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当し、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
上記訂正事項b〜g、iは、特許請求の範囲の訂正に整合させたものであって、明りょうでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当し、いずれも、新規事項の追加に該当せず、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
また、上記訂正事項hは、段落[0021]との記載が矛盾しないようにしたものであって、明りょうでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当し、新規事項の追加に該当せず、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(3)むすび
したがって、上記訂正は、特許法第120条の4第2項及び同条第3項において準用する第126条第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正は認められるものである。

3.特許異議の申立てについての判断
(1)本件発明
上記2.で示したように上記訂正が認められるから、本件の請求項1〜5に係る発明は、上記訂正に係る訂正明細書の特許請求の範囲に記載された事項により特定されるとおりのものである。(上記2.(1)訂正事項a.参照。以下、請求項1〜5に係る発明をそれぞれ「本件発明1」〜「本件発明5」という。)

(2)引用刊行物に記載された発明
当審が平成14年8月13日付けで通知した取消し理由において引用した本件出願前に頒布された刊行物1〜3には、それぞれ以下のような事項が記載されている。
ア.刊行物1:「BE建築設備1998年3月号」平成10年3月1日、社団法人建築設備綜合協会出版部、61〜65頁(特許異議申立人 落合重秋が提出した甲第1号証)
「既存の井水受水槽の水位制御は,一般的な電極によるもので,ある下限レベル以下に水位が低下した場合,即座に市水の供給が行われるシステムになっている。」(61頁「1」の項7乃至9行)
「井水受水槽の150m3,400m3共に,時間ごとの貯水量下限テーブルを作成した。…作成したテーブルは,時間ごとの需要予測ラインとし,基準より水位が下がれば1台目の井戸ポンプを運転し,急激に下げれば2台目を運転する。それでも水位が回復せず,市水補給レベルまで低下した場合は,最終的に市水を補給する。」(64頁「6」の項1乃至8行)
そして、62頁の図-2には、下方左右に配置される井水受水槽(150m3、400m3)のいずれについても、NO.1〜5の井戸ポンプからの井水と、図中中央下の市水補給路からの水道水とが供給されるものとなっており、水位センサー(同頁記載によれば超音波式水位センサー)によって、受水槽の供給水選択制御が行われるものが示されている。
以上の記載、そして、井戸ポンプは、水位が満水状態になれば停止させることは明らかであるから、刊行物1には、次の発明がそれぞれ記載されているものと認められる。
「1個の受水槽に、市水と井水の両方を供給し、ある下限レベル以下に水位が低下した場合、即座に市水を供給する水の供給方法。」(以下、引用発明1という。)
「1個の受水槽に、市水供給管と井水供給管を接続し、前記受水槽内の水位が基準より低下したときに井戸ポンプを運転し、水位が元の満水状態に復帰したときに井戸ポンプを停止する水の供給方法。」(以下、引用発明2という。)
「1個の受水槽に、それぞれ井水供給管と市水供給管を接続すると共に、水位センサーにより、市水供給管と井水供給管からの水の給水を制御する機構を設けた水の供給装置。」(以下、引用発明3という。)
イ.刊行物2:「雨水利用システム 設計と実務」平成9年4月1日、社団法人空気調和・衛生工学会、47〜49頁、125頁(特許異議申立人 落合重秋が提出した甲第2号証)
「雨水の不足時に備えて,貯留設備あるいは給水設備に,水道水などによる補給を行える設備としておくこと.」( 48 頁の(4)項)
「3.雨水の不足時には,水道水などによる補給ができるようにする」(同48頁の表3・1中、給水設備の主なポイント欄)
そして、125頁の図5・8及び貯留槽制御系統表には、雨水を利用するシステムにおける貯留槽内に、雨水供給管と上水補給水管とが接続されて、雨水と上水とが供給されるようになっており、その水位に応じて、雨水か上水が供給されるシステムが示されている。そして、そのシステムの水供給の具体的制御は、Bの水位まで下がったことを電極で検知するとFM弁パイロット電磁弁が開いて上水が供給され、Cの水位まで上がったことを電極で検知するとFM弁パイロット電磁弁が閉じて上水の供給が停止され、Cより上位のDの水位まで下がったことを電極で検知すると雨水流入弁が開いて雨水が供給され、Eの水位まで上がったことを電極で検知すると雨水流入弁が閉じて雨水の供給が停止されることになることが示されている。
ウ.刊行物3:特開平6-49877号公報(特許異議申立人 株式会社エコマスコーポレーションが提出した甲第3号証)
「本発明では、上記目的を達成するために、貯水槽1内の水面付近に浮遊する浮子2により開閉されるパイロット弁3を給水栓本体4に備えたパイロット式の貯水槽用ボールタップにおいて、給水栓本体4内に市水供給部に連通する主流水路50と、給水管5に連通した副流水路60とを設け、パイロット弁3の開閉に連動して開閉する主弁体24を給水栓本体4内に設け、上記主流水路50と副流水路60とを主弁体24の開閉移動にて開閉される通水路70にて連通し、パイロット弁3の閉動作後に時間差を持たせて主弁体24にて通水路70を閉じる動作遅延手段Aを給水栓本体4に設けたものである。」(明細書の段落番号【0010】)

(3)対比、判断
(a)本件発明1について
本件発明1と引用発明1とを対比すると、引用発明1の「市水」及び「井水」は、それぞれ本件発明1の「水道水」及び「地下水」に対応し、引用発明1は、下限レベルより上位のある基準より水位が下がれば井戸ポンプを運転するものであるから、通常の減水に対して、ある下限レベル以下に水位が低下しない場合には、井水を優先させることは明らかである。したがって、両発明は、
「1個の受水槽に、水道水と地下水の両方を供給し、通常の減水に対しては地下水を優先して供給する水の供給方法。」
の点で一致しており、以下の点で一応相違している。
相違点:地下水に関して、本件発明1が、深井戸から汲み上げた後濾過されて飲料水に適合した水質の地下水を用いているのに対し、引用発明1は、どのような水質のものか明らかでない点。
上記相違点に関し検討する。
地下水を深井戸から汲み上げた後濾過して飲料水に適合した水質とすることは、従来周知(例えば、特開平4-11999号公報)の事項であるから、該事項は刊行物1に記載されていたに等しいものと認められ、本件発明1と引用発明1は、実質的に同一なものである。

(b)本件発明2について
本件発明2と引用発明1とを対比すると、引用発明1の「市水」及び「井水」は、それぞれ本件発明1の「水道水」及び「地下水」に対応し、引用発明1は、通常の減水に対して、ある下限レベル以下に水位が低下しない場合には、井水を優先させることは明らかであるから、両発明は、
「1個の受水槽に、水道水と地下水の両方を供給し、通常の減水に対しては地下水を優先して供給する水の供給方法。」
の点で一致し、以下の点で相違している。
相違点1:地下水に関して、本件発明2が、深井戸から汲み上げた後濾過されて飲料水に適合した水質の地下水を用いているのに対し、引用発明1は、どのような水質のものか明らかでない点。
相違点2:本件発明2が、地下水の供給系統が不作動のときには水道水を供給するのに対し、引用発明1は、そのようになっていない点。
上記相違点1については、上記「(a)本件発明1について」で検討したとおりである。
上記相違点2に関し検討する。
供給系統が2系統ある場合、一方の系統が不作動のときは、他方の系統を作動させることは当然の事項であり、該事項を引用発明1に適用し、上記相違点2に係る構成とすることは当業者が容易に想到し得るものである。

(c)本件発明3について
引用発明2の「市水供給管」、「井水供給管」、及び「受水槽内の水位が基準より低下したとき」は、それぞれ本件発明3の「水道水供給管」、「地下水供給管」、及び「該受水槽内の水位が満水状態から一定値まで低下したとき」に対応し、引用発明2の「井戸ポンプを運転」及び「井戸ポンプを停止」は、「地下水供給管から給水」及び「地下水供給管からの給水を停止」することであるから、両発明は、
「1個の受水槽に、水道水供給管と地下水供給管を接続し、前記受水槽内の水位が満水状態から一定値まで低下したときに地下水供給管から給水し、水位が元の満水状態に復帰したときに地下水供給管からの給水を停止する水の供給方法。」
の点で一致し、以下の点で相違している。
相違点1:地下水に関して、本件発明3が、深井戸から汲み上げた後濾過されて飲料水に適合した水質の地下水を用いているのに対し、引用発明2は、どのような水質のものか明らかでない点。
相違点2:本件発明3が、地下水の供給系統が不作動のときには水道水供給管から給水するように制御するのに対し、引用発明2は、そのようになっていない点。
相違点3:給水の制御手段に関して、本件発明3は、バルブの開閉で行っているのに対し、引用発明2は、井水に関しては井戸ポンプの運転停止で行い、市水に関しては明らかでない点。
上記相違点1については、「(a)本件発明1について」で検討したとおりである。
上記相違点2に関し検討する。
供給系統が2系統ある場合、一方の系統が不作動のときは、他方の系統を作動させることは当然の事項であり、該事項を引用発明2に適用し、上記相違点2に係る構成とすることは当業者が容易に想到し得るものである。
上記相違点3に関し検討する。
給水の制御手段としてバルブの開閉で制御することは刊行物2に記載されており、該事項を引用発明2に適用し、上記相違点3に係る構成とすることは当業者が容易に想到し得るものである。

(d)本件発明4について
本件発明4と引用発明3とを対比すると、引用発明3の「井水供給管」、「市水供給管」、及び「水位センサ」は、それぞれ本件発明4の「地下水供給管」、「水道水供給管」、及び「レベルセンサ」に対応するから、両発明は、
「1個の受水槽に、それぞれ地下水供給管と水道水供給管を接続すると共に、レベルセンサにより、水道水供給管と地下水供給管からの水の給水をを制御する機構を設けた水の供給装置。」
の点で一致し、以下の点で相違している。
相違点1:地下水に関して、本件発明4が、深井戸から汲み上げた後濾過されて飲料水に適合した水質の地下水を用いているのに対し、引用発明3は、どのような水質のものか明らかでない点。
相違点2:制御機構に関して、本件発明4が、受水槽内の水の水位が第1の設定値以下に低下したことと、水の供給によって該第1の設定値まで水位が上昇したことを検出する第1のレベルセンサと、水位が前記第1の設定値になったことと水の供給により第1の設定値より高いところの第2の設定値に達したことを検出する第2のレベルセンサとを設け、前記第1のレベルセンサの出力信号により、水道水供給管のバルブ開閉を制御し、第2のレベルセンサの出力信号により、地下水供給管のバルブ開閉を制御する機構であるのに対し、引用発明3は、そのようになっていない点。
上記相違点1については、「(a)本件発明1について」で検討したとおりである。
上記相違点2に関し検討する。
本件明細書全体の記載から、第1の設定値、第2の設定値には上下の幅があるものと認められ、刊行物2には、水道水と水道水以外の供給源からの水供給制御機構に関して、受水槽内の水の水位が第1の設定値(Bの水位)以下に低下したことと、水の供給によって該第1の設定値(Cの水位)まで水位が上昇したことを検出する第1のレベルセンサと、水位が前記第1の設定値になったことと水の供給により第1の設定値より高いところの第2の設定値(D、Eの水位)に達したことを検出する第2のレベルセンサとを設け、前記第1のレベルセンサの出力信号により、水道水供給管のバルブ開閉を制御し、第2のレベルセンサの出力信号により、水道水以外の水供給管のバルブ開閉を制御する機構が記載されており、該事項を引用発明3に適用し、上記相違点2に係る構成とすることは当業者が容易に想到し得るものである。

(e)本件発明5について
本件発明5は、本件発明4を引用し、本件発明4の構成を「地下水供給管に接続された第1のレベルセンサが、受水槽に設けたボールタップ式のパイロットバルブである」と技術的に限定したものであるから、この限定した事項について検討する。
水位センサとして、ボールタップ式のパイロットバルブを用いることは刊行物3に記載されており、該事項を引用発明3に適用し、上記限定事項に係る構成とすることは当業者が容易に想到し得るものである。

(4)むすび
以上のとおりであるから、本件発明1は、その出願前に頒布された刊行物に記載された発明であり、本件発明2〜5は、その出願日前に頒布された刊行物に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1〜5についての特許は、特許法第29条第1項第3号あるいは第2項の規定に違反してなされたものである。
したがって、本件発明1〜5についての特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
水の供給方法とその装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1個の受水槽に、水道水と深井戸から汲み上げた後濾過されて飲料水に適合した水質の地下水の両方を供給し、通常の減水に対しては地下水を優先して供給することを特徴とする水の供給方法。
【請求項2】
1個の受水槽に、水道水と深井戸から汲み上げた後濾過されて飲料水に適合した水質の地下水の両方を供給し、通常の減水に対しては地下水を優先して供給し、地下水の供給系統が不作動のときには水道水を供給することを特徴とする水の供給方法。
【請求項3】
1個の受水槽に、それぞれバルブを接続した水道水供給管と深井戸から汲み上げた後濾過されて飲料水に適合した水質の地下水供給管を接続し、前記受水槽内の水位が満水状態から一定値まで低下したときに地下水供給管のバルブを開き、水位が元の満水状態に復帰したときに地下水供給管のバルブを閉じると共に、地下水の供給系統が不作動のときには水道水供給管のバルブを開くように制御することを特徴とする水の供給方法。
【請求項4】
1個の受水槽に、それぞれバルブを接続した深井戸から汲み上げた後濾過されて飲料水に適合した水質の地下水供給管と水道水供給管を接続すると共に、前記受水槽内の水の水位が第1の設定値以下に低下したことと、水の供給によって該第1の設定値まで水位が上昇したことを検出する第1のレベルセンサと、水位が前記第1の設定値になったことと水の供給により第1の設定値より高いところの第2の設定値に達したことを検出する第2のレベルセンサとを設け、前記第1のレベルセンサの出力信号により、水道水供給管のバルブ開閉を制御し、第2のレベルセンサの出力信号により、地下水供給管のバルブ開閉を制御する機構を設けたことを特徴とする水の供給装置。
【請求項5】
前記水道水供給管に接続された第1のレベルセンサが、受水槽に設けたボールタップ式のパイロットバルブであることを特徴とする請求項4に記載の水の供給装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、デパート、スーパーマーケット、量販店、学校、病院、スイミングスクールその他、水を大量に消費する施設に実施する水の供給装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
上記のような水を大量に消費する施設では、水道水の料金が非常に多くなり、年間の水道料金が数千万円になることも決して珍しいことではない。このため、この料金が物価や手数料に反映することになる。そこで節水を検討することになるが、それにも限度があり、単なる節水ではそれほどの効果を期待することができない。
【0003】
そこで着目されたものに地下水(井戸水)がある。地下水は通常の使用に対しては無限にあると言っても過言ではなく、地下水自体に料金は掛からないから、これを使用すれば、水に対する経費を大幅に節減できることになる。地下水を利用する上において問題となるのは、各種細菌の混入である。しかしながらこの細菌は、地表から余り深くない浅井戸(深さ約10m位)に多く存在し、不透水層を1〜3層以上掘り下げた、いわゆる深井戸には多くは存在しないことが知られている。
【0004】
深井戸から汲み上げた地下水には、上記のように細菌は多くは存在しないが、それでも飲用に供するためには数段階の濾過をして使用することになる。ここで図2について、本出願人によって開発された井戸水の濾過装置を説明する。深井戸1には図示しない揚水ポンプが設けられており、汲み上げた地下水(被処理水)をパイプ2によって原水槽3の上方に導くようになっている。原水槽3の大きさは、水質ならびに使用水量により決定される。
【0005】
原水槽3からはパイプ4によって前濾過機5に導かれ、ここで濾過されて通常の飲料水に適合した水質になる。前濾過機5からはパイプ6によって前処理槽7に導かれた後、パイプ8によって膜濾過機9の下部に導かれる。膜濾過機9では被処理水が上昇する過程で膜濾過フィルタに通し、0.1ミクロンの精密膜濾過で、従来完全には除去できなかったO-157、クリプトスポリジウム、ジアルジアなどが完全に除去される。
【0006】
膜濾過機9の上部からは、上記各細菌が除去された水がパイプ10によって処理水槽11に貯留され、使用者の要求により、随時水の供給ができるようになっている。12はそのための地下水供給管、13は水質監視システムである。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上記地下水の濾過装置によれば、上質の安全な水を随時使用することができる。しかしながらこれだけを使用すると、予想しない停電でポンプが停止したときや、フィルタエレメントのメンテナンス時などに一時的に断水となることがある。そこで、上記のように処理した水を従来から使用している水道水と混合して使用することが考えられる。このようにすれば、通常は主として地下水を使用するようにし、これに水道水を適宜混合することによって、安定した供給がなされることになる。
【0008】
しかしながら、地下水と水道水を単に混合するのみでは、一定の地下水を安定して供給することはできない。そこで両方の水の分量比を常に安定して供給する制御が必要になるが、従来は存在しなかった。
【0009】
本発明はこの点に鑑みてなされたものであり、デパート、スーパーマーケット、量販店、学校、病院、スイミングスクールその他、水を大量に消費する施設に実施して好結果を得ることができる水の供給方法とその装置を提供しようとするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決するための手段として、請求項1に記載した発明は、1個の受水槽に、水道水と深井戸から汲み上げた後濾過されて飲料水に適合した水質の地下水の両方を供給し、通常の減水に対しては地下水を優先して供給することを特徴とする水の供給方法である。
【0011】
また、請求項2に記載した発明は、1個の受水槽に、水道水と深井戸から汲み上げた後濾過されて飲料水に適合した水質の地下水の両方を供給し、通常の減水に対しては地下水を優先して供給し、地下水の供給系統が不作動のときには水道水を供給することを特徴とする水の供給方法である。
【0012】
さらに、請求項3に記載した発明は、1個の受水槽に、それぞれバルブを接続した水道水供給管と深井戸から汲み上げた後濾過されて飲料水に適合した水質の地下水供給管を接続し、前記受水槽内の水位が満水状態から一定値まで低下したときに地下水供給管のバルブを開き、水位が元の満水状態に復帰したときに地下水供給管のバルブを閉じると共に、地下水の供給系統が不作動のときには水道水供給管のバルブを開くように制御することを特徴とする水の供給方法である。
【0013】
そして、請求項4に記載した発明は、1個の受水槽に、それぞれバルブを接続した深井戸から汲み上げた後濾過されて飲料水に適合した水質の地下水供給管と水道水供給管を接続すると共に、前記受水槽内の水の水位が第1の設定値以下に低下したことと、水の供給によって該第1の設定値まで水位が上昇したことを検出する第1のレベルセンサと、水位が前記第1の設定値になったことと水の供給により第1の設定値より高いところの第2の設定値に達したことを検出する第2のレベルセンサとを設け、前記第1のレベルセンサの出力信号により、水道水供給管のバルブ開閉を制御し、第2のレベルセンサの出力信号により、地下水供給管のバルブ開閉を制御する機構を設けたことを特徴とする水の供給装置である。
【0014】
さらに、請求項5に記載した発明は、請求項4に記載したものにおいて、前記水道水供給管に接続された第1のレベルセンサが、受水槽に設けたボールタップ式のパイロットバルブであることを特徴とする請求項4に記載の水の供給装置である。
【0015】
このような構成とすれば、通常の使用に対しては深井戸から汲み上げた後濾過されて飲料水に適合した水質の地下水を多く使用し、地下水の供給系統に故障が生じたり、メンテナンスを行うときには水道水を多く使用することができるようになる。また、水道水をあまり使用しないときには、いわゆる赤水が出るが、このようなことがないように適量の水道水を使用することになる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図1について説明する。受水槽14は次に説明するように、上方から水道水あるいは地下水が供給されて一定の水位を保つようになっている。受水槽14には底部近くに配水管15が設けられ、貯留されている水16を、水を使用するところに配水するようになっている。また受水槽14の上端近くにはオーバーフロー管17が設けられ、水位が異常に上昇したときに、その水を外部に排出するようになっている。
【0017】
受水槽14の上方には、2本の水道水供給管18,19と、1本の地下水供給管20の下端が開口している。水道水供給管18はバルブ21を介して水道源(水道配管)22に接続されており、バルブ21が開弁したとき、水道源22から十分な量の水を受水槽14内に放出する。後述するように、このバルブ21は、次に説明するパイロットバルブ23の作動に関連して開閉する。
【0018】
水道水供給管19の基端はバルブ21に接続されており、バルブ21が閉じていても水道源22からの水の一部を受けるようになっている。そして受水槽14の内部に設けられたボールタップ(フロート)24が設定値より降下したとき(水位が下がったとき)パイロットバルブ23が開弁して、水道水供給管19に水を流すようになっている。水道水供給管19に水が流れるとバルブ21はそれを検出し、大きく開弁して水道水供給管18から十分な量の水を受水槽14に放出するようになっている。このように作動するパイロットバルブ23は、本発明において第1のレベルセンサとして機能する。
【0019】
パイロットバルブ23には、本発明によって電磁バルブ25が並列に接続されている。この電磁バルブ25はソレノイド26に通電されたときに閉弁し、通電のないときに開弁するものである。
【0020】
前述のように、受水槽14の上部には、濾過処理された地下水を供給する地下水供給管20の下端が開口している。この地下水供給管20は電磁バルブ27を介して地下水供給管12の先端に接続されており、地下水供給管12は処理水槽11に接続されている(図2参照)。電磁バルブ27も電磁バルブ26と同様に、ソレノイド28への通電制御を行うことにより、開閉する。
【0021】
受水槽14の上部には、長さが異なる(順次短くなる)6本の電極29a,29b,29c,29d,29eおよび29fを有するレベルセンサ29が設けられている。もっとも長い電極29aの下端は受水槽14の底部近くまで延びており、アースとして機能するようになっている。次に長い電極29bの下端は、水位の第4のレベルDの高さに位置し、電極29cは水位の第3のレベルCの高さに位置する。後述するが、水16が第4のレベルDまで降下すると水道水が入り、第3のレベルCまで上昇すると停止する。
【0022】
電極29cより少し短い電極29dの下端は第2のレベルBの高さに位置し、電極29eの下端は第1のレベルAの高さに位置する。第1のレベルAは満水のレベルであり、水16を使用することにより水位が低下して第2のレベルBになると、第1のレベルAまで地下水が供給される。電極29fの下端は第1のレベルAよりさらに高いところにあり、なんらかの理由によって水位が異常に上昇して電極29fの下端に達したとき、これを検知するようになっている。
【0023】
レベルセンサ29には3本の信号線30,31,32が設けられており、信号線30はソレノイド28に、また信号線31はソレノイド26に、さらに信号線32はアラーム33に接続されている。
【0024】
このように構成されたこの装置を使用すると、水の供給方法の発明を実現することができる。すなわち、極端に大量の水を使用することにより、受水槽14内の水位が第4のレベルDより低下したときには、レベルセンサ29の電極29bがこれを検知してソレノイド26への通電を絶つことにより電磁バルブ25を開き、バルブ21も開いて水道水が供給される。この給水により水位が上昇したことを電極29cが検知すると電磁バルブ25が閉じ、バルブ21も閉じて水道水は停止する。前述のように電磁バルブ25は通電されないときに開弁するので、何らかの事由によってレベルセンサ29からの信号が出力されないときには開弁状態が継続し、水位の制御はボールタップ24によって行われることになる。
【0025】
水位が第2のレベルBとなったことを、電極29dでレベルセンサ29が検出したときには、レベルセンサ29はソレノイド28に通電して電磁バルブ27を開き、処理水槽11からの地下水を供給する。地下水の供給により水位が第1のレベルAに復帰すると、レベルセンサ29はソレノイド28への通電を停止する。このように、第1のレベルAと第2のレベルBの間は、地下水のみの供給で水位が保たれる。すなわち、1個の受水槽14に水道水と地下水の両方を供給し、通常の減水に対しては地下水のみを補給することになる。
【0026】
レベルセンサ29には、第3のレベルCに位置する電極29cが設けられているので、水位がこれより低下したことを検出することができる。通常は水位がこれより低下して第4レベルDまで降下したときには、電極29bの信号により、バルブ21が開いて水道水が供給される。
【0027】
水位が正常時の第1のレベルAより低くなったとき、その低下位置が第2のレベルBまでの間は、レベルセンサ29の作動により、地下水が供給されて第1のレベルAを保つような制御が行われるが、地下水の供給系統に故障が発生したときには、水位が第1のレベルAより低下しても地下水の供給が行われないので、水量が不足する虞がある。このときには、ボールタップ24が低下し、レベルAまで水道水が供給されるので、渇水になることはない。
【0028】
レベルセンサ29の作動により、通常は水位が第1のレベルAより高くなることはないが、なんらかの原因により水位が上昇したときには、その水はオーバーフロー管17から外部に排出されるが、同時にレベルセンサ29の作動により、アラーム33が作動する。
【0029】
以上説明した実施の形態では、レベルセンサ29の出力信号で電磁バルブ25,27のソレノイド26,28を励磁するように説明したが、実際には、この間に適当な制御回路を挿入することになることが多い。
【0030】
【発明の効果】
本発明は、以上説明したように構成された水の供給方法とその装置であるから、請求項1ないし3の発明によれば、受水槽に、水道水と深井戸から汲み上げた後濾過されて飲料水に適合した水質の地下水の両方を供給したとき、通常の減水に対しては地下水が優先して供給されるので、水道水の使用を大幅に減らすことができる。また、地下水の供給系統に故障が生じたときに水道水が供給されるので、渇水になることがない。そして請求項4,5の発明によれば、上記制御が行える装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態を示す系統図である。
【図2】 井戸水の濾過装置を示す系統図である。
【符号の説明】
11 処理水槽
12 地下水供給管
14 受水槽
18 水道水供給管
19 水道水供給管
20 地下水供給管
21 バルブ
22 水道源
23 パイロットバルブ
24 ボールタップ
25 電磁バルブ
27 電磁バルブ
29 レベルセンサ
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2002-11-05 
出願番号 特願平11-160713
審決分類 P 1 651・ 121- ZA (E03B)
P 1 651・ 113- ZA (E03B)
最終処分 取消  
前審関与審査官 川島 陵司  
特許庁審判長 田中 弘満
特許庁審判官 長島 和子
鈴木 憲子
登録日 2001-09-14 
登録番号 特許第3230085号(P3230085)
権利者 株式会社ウェルシィ
発明の名称 水の供給方法とその装置  
代理人 萼 経夫  
代理人 萼 経夫  
代理人 牛木 理一  
代理人 大庭 咲夫  
代理人 杉村 興作  
代理人 宮崎 嘉夫  
代理人 中村 寿夫  
代理人 徳永 博  
代理人 小野塚 薫  
代理人 加藤 久  
代理人 宮崎 嘉夫  
代理人 加藤 慎治  
代理人 戸島 省四郎  
代理人 中村 壽夫  
代理人 小野塚 薫  

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