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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  H01L
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  H01L
管理番号 1087979
異議申立番号 異議2002-71845  
総通号数 49 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1996-03-12 
種別 異議の決定 
異議申立日 2002-07-25 
確定日 2003-10-14 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3251436号「リードフレーム、半導体装置及び半導体装置の製造方法」の請求項1乃至7に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3251436号の請求項1乃至7に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第3251436号に係る手続の主な経緯は次のとおりである。
特許出願(特願平6-206352号) 平成 6年 8月31日
特許権設定登録 平成13年11月16日
特許異議申立(異議申立人:沖島和子) 平成14年 7月25日
取消理由通知 平成14年10月22日
特許異議意見書・訂正請求書 平成14年12月26日

2.訂正の適否についての判断
2.1.訂正の内容
特許権者が求めている、平成14年12月26日付け訂正請求書に添付された訂正明細書における訂正の内容は以下のとおりである。

2.1.1.訂正事項a
特許請求の範囲の請求項1における「前記半導体チップを他の主面で固定する複数のアイランド部」を、「前記半導体チップを他の主面の隅部で固定する複数のアイランド部」と訂正する。

2.1.2.訂正事項b
特許請求の範囲の請求項1における「前記半導体チップの他の主面は前記半導体チップを固定する位置以外においては実質的に全面が前記レジンと密着する」を、「前記半導体チップの他の主面は、前記半導体チップを固定する複数のアイランド部各々の位置以外においては実質的に全面が前記レジンと密着する」と訂正する。

2.2.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
2.2.1.訂正事項a
上記訂正事項aは、特許請求の範囲の請求項1において、半導体チップの固定について、他の主面のうちの隅部で固定する点を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当するものである。そして、この点については、本件特許明細書又は図面の段落0012、0013、0018、0030、0034、0043、0045等、及び図1乃至5の記載に根拠を有する。
したがって、上記訂正事項aは、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当するものであり、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、かつ実質上特許請求の範囲を拡張し、変更するものではない。

2.2.2.訂正事項b
上記訂正事項bは、特許請求の範囲の請求項1において、半導体チップの他の主面とレジンとの相互の関係について、半導体チップを固定する「複数のアイランド部各々の」位置以外においては実質的に全面が前記レジンと密着する点を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当するものである。そして、この点については、本件特許明細書又は図面の段落0012、0013、0018、0030、0034、0043、0045等、及び図1乃至5の記載に根拠を有する。
したがって、上記訂正事項bは、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当するものであり、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、かつ実質上特許請求の範囲を拡張し、変更するものではない。

2.3.訂正の適否のむすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書、第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3. 特許異議申立て及びこれについての判断
3.1.本件発明
上記2.2.で示したように上記訂正が認められるから、本件発明は、上記訂正請求に係る訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1乃至7に記載された次のとおりのものであると認められるところ、そのうち請求項1に係る発明(以下、「本件発明1」という。)は次のとおりである。
「【請求項1】 一主面に半導体素子とボンディングパッドとが形成された四角形の半導体チップと、
前記半導体チップを他の主面の隅部で固定する複数のアイランド部と、
前記複数のアイランド部の各々から外方に向かって延在する複数の支持リード部と、
前記複数のアイランド部を一平面上に保持する連結部と、
前記複数の支持リード部の間において、その一端が前記半導体チップの周辺に位置し、他端が外方に向かって延在する複数のリードと、
前記リードの一端と、前記ボンディングパッドとを電気的に接続するワイヤと、少なくとも前記半導体チップ、前記リードの一端、前記ワイヤ、前記アイランド部、前記支持リード部及び前記連結部をレジンで封止する封止部とを有し、
前記複数のアイランド部の各々は、前記半導体チップの四隅部のうち、レジン注入ゲート部に最も近い隅部及びそれと対角する隅部で前記半導体チップの中心からの距離と、前記半導体チップの角からの距離が4対1になるような位置またはそれよりも外側において前記半導体チップを固定し、
前記半導体チップの他の主面は、前記半導体チップを固定する複数のアイランド部各々の位置以外においては実質的に全面が前記レジンと密着することを特徴とする半導体装置。」

3.2.取消理由で引用された刊行物に記載された発明
刊行物1(甲第1号証):特開平6-216303号公報には、「リードフレーム、その製造方法およびそれを用いた半導体集積回路装置の製造方法」(発明の名称)が図面(図1、図15、図16、図24〜図26、図29、等々)とともに記載されており、また以下の記載がなされている。
「【0025】リードフレーム1の中央部には、主面に集積回路およびボンディングパッドが形成された半導体チップ2を搭載するための円形のダイパッド(チップ搭載部)3が形成されている。このダイパッド3は、四本の吊りリード4によって支持されている。ダイパッド3のチップ搭載面の面積は、その上に搭載される半導体チップ2の主面の面積よりも小さく設定されているのが特徴である。
【0026】ダイパッド3の周囲には、複数本のリード5がダイパッド3を囲むように配置されている。吊りリード4の幅広部およびリード5の中途部には、絶縁性の薄い合成樹脂フィルムからなるテープ6が枠状に形成されて接着されている。」(5頁左欄25行〜37行)、
「【0047】さらに、図15に示すように、ダイパッド3の周囲に吊りリード4よりも幾分幅の広い小パッド(あるいは接着剤塗布部ともいう)20を形成し、ダイパッド3およびこの小パッド20のそれぞれの主面上に接着剤15を塗布するようにしてもよい。」(7頁左欄1行〜5行)、
「【0048】上記小パッド20は、図16に示すように、それぞれの吊りリード4の途中、例えばダイパッド3と中途部Sとの間に形成してもよい。」(7頁左欄14行〜16行)、
「【0054】次に、図24〜図26に示すように、ダイパッド3上に搭載された半導体チップ2のボンディングパッド25とリード5との間をAuのワイヤ26でボンディングし、電気的に接続する。」(7頁右欄1行〜4行)、
「・・・・・、図29に示すように、半導体チップ2、ダイパッド4、インナーリード部5aおよびワイヤ26をエポキシ樹脂などでモールドすることによりパッケージ本体29を成形した後、・・・・」(7頁右欄38行〜41行)、
「【0059】本実施例のリードフレーム1を用いて製造された表面実装型半導体装置(QFP)30は、ダイパッド3の面積がその上に搭載された半導体チップ2の面積よりも小さいため、半導体チップ2の周辺部の裏面が封止樹脂と密着している。」(7頁右欄50行〜8頁左欄4行)。

刊行物2(参考資料):『日経マイクロデバイス 1990年6月号』、日経BP社、1990年6月1日発行、52頁〜57頁、においては、半田リフロー時のパッケージ・クラック対策としてダイ・パッドの裏面にポリイミドを塗り、界面の密着性を向上させるという技術を応用して、チップの厚さが400μmのままで厚さ1.0mmのパッケージに封止できる技術が開発されたことが記載されており、以下のような記載がある。
「薄型化で最も大きな問題になるリフロー半田付け時のパッケージ・クラックを防ぐため,ダイ・パッドの裏面にポリイミドを約30μm塗布し,ダイ・パッドの裏面とエポキシ樹脂との界面の剥離を防止,水分の凝集を防いだ。」(52頁左欄1行〜5行)、
また、図4の説明に関連して以下のような記載がなされている。
「SOPのゲートはパッケージのリードのない一辺にある。一方,QFPの場合はパッケージのコーナー部に位置する。」(56頁左欄11行〜13行)。

3.3.本件発明と刊行物記載の発明との対比・判断
3.3.1 本件発明1について
本件発明1と刊行物1乃至2に記載された発明とを対比すると、刊行物1乃至2には、本件発明1の構成要件である「半導体チップを他の主面の隅部で固定する複数のアイランド部」、「前記半導体チップの他の主面は、前記半導体チップを固定する複数のアイランド部各々の位置以外においては実質的に全面が前記レジンと密着する」という構成、及び、当該構成のもので「レジン注入ゲート部に最も近い隅部及びそれと対角する隅部で前記半導体チップの中心からの距離と、前記半導体チップの角からの距離が4対1になるような位置またはそれよりも外側において前記半導体チップを固定」するという構成、のいずれの構成についても記載も示唆もされていない。
(刊行物1には、リードフレーム、当該リードフレームの製造方法及び当該リードフレームを用いた半導体集積回路装置の製造方法が記載されており、半導体チップの接着のためには小パッド(「小パッド」は本件発明1における「アイランド部」に相当する)の他にダイパッドも存在しダイパッドと小パッドの双方に半導体チップが接着される旨の構成は開示されているが、ダイパッドをもたない構成に相当する「半導体チップを他の主面の隅部で固定する複数のアイランド部」という構成については記載も示唆もされていない。したがって、「前記半導体チップの他の主面は、前記半導体チップを固定する複数のアイランド部各々の位置以外においては実質的に全面が前記レジンと密着する」という構成についても記載も示唆もされていない。また、「レジン注入ゲート部に最も近い隅部及びそれと対角する隅部で前記半導体チップの中心からの距離と、前記半導体チップの角からの距離が4対1になるような位置またはそれよりも外側において前記半導体チップを固定」するようにした構成についても、半導体チップの他の主面の中央部にはチップ搭載部をもたない本件発明1においてレジン注入時のボイドの発生防止やリフロー時のパッケージクラックの防止などを図るための構成とみられ、技術的意義のない単なる設計事項であるとは認められない。
同様に、刊行物2もダイ・パッド(ダイパッド)による半導体チップの固定を前提とするものであり、上記の各構成のいずれについても記載も示唆もされていない。)
そして本件発明1は上記の各構成を備えることにより、「リフロー時のパッケージクラック及びレジン注入時のボイドの発生を防止し、好適な樹脂封止型半導体装置を得ることができるリードフレーム及びそれを用いた樹脂封止型半導体装置とその製法を提供することができる」(段落0046を参照)という明細書記載の作用効果を奏するものである。
したがって、本件発明1が、刊行物1に記載された発明と同一であるとも、刊行物1乃至2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとも認めることはできない。
また、その他の異議申立理由及び証拠は、本件発明1についての特許を取り消すべき理由として採用することができない。

3.3.2 本件発明2乃至7について
本件発明2乃至7は本件発明1を前提とするものであるから、本件発明1の場合と同様の理由により、本件発明2乃至7が、刊行物1に記載された発明と同一であるとも、刊行物1乃至2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとも認めることはできない。
また、その他の異議申立理由及び証拠は、本件発明2乃至7を取り消すべき理由として採用することができない。

4.むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び証拠によっては本件請求項1乃至7に係る発明についての特許を取り消すことはできない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
リードフレーム、半導体装置及び半導体装置の製造方法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 一主面に半導体素子とボンディングパッドとが形成された四角形の半導体チップと、
前記半導体チップを他の主面の隅部で固定する複数のアイランド部と、
前記複数のアイランド部の各々から外方に向かって延在する複数の支持リード部と、
前記複数のアイランド部を一平面上に保持する連結部と、
前記複数の支持リード部の間において、その一端が前記半導体チップの周辺に位置し、他端が外方に向かって延在する複数のリードと、
前記リードの一端と、前記ボンディングパッドとを電気的に接続するワイヤと、少なくとも前記半導体チップ、前記リードの一端、前記ワイヤ、前記アイランド部、前記支持リード部及び前記連結部をレジンで封止する封止部とを有し、
前記複数のアイランド部の各々は、前記半導体チップの四隅部のうち、レジン注入ゲート部に最も近い隅部及びそれと対角する隅部で前記半導体チップの中心からの距離と、前記半導体チップの角からの距離が4対1になるような位置またはそれよりも外側において前記半導体チップを固定し、
前記半導体チップの他の主面は、前記半導体チップを固定する複数のアイランド部各々の位置以外においては実質的に全面が前記レジンと密着することを特徴とする半導体装置。
【請求項2】 前記複数のアイランド部は2個のアイランド部であって、
前記連結部は、前記2個のアイランド部同士を連結すると共に前記半導体チップの2つの隅部に延在し、前記アイランド部、前記支持リード部及び前記連結部は一体となって対角線状に形成されることを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】 前記複数のアイランド部は4個のアイランド部であって、その各々は、前記半導体チップをその四隅部において固定し、
前記連結部は、前記4個のアイランド部同士を連結し、
前記アイランド部、前記支持リード部及び前記連結部は一体となって形成されることを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項4】 前記連結部は前記4個のアイランド部同士を十字形に連結し、前記アイランド部、前記支持リード部及び前記連結部は一体となって対角線状に形成されることを特徴とする請求項3記載の半導体装置。
【請求項5】 前記連結部の幅は前記支持リード部の幅と等しいことを特徴とする請求項2、3または4のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項6】 前記複数のアイランド部は4個のアイランド部であって、その各々は、前記半導体装置チップをその四隅部において固定し、
前記連結部は帯状の絶縁性フィルムからなり、前記複数の支持リード部同士を連結するように前記支持リード部上に設けられていることを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項7】 前記連結部は前記複数の支持リード部同士を連結すると共に前記複数のリード同士をも連結することを特徴とする請求項6記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、樹脂封止型半導体装置、特にQFP等の面実装型の樹脂封止型半導体装置に関し、リフロー半田工程時のパッケージクラック及びレジン注入時のボイド発生を防止し、好適な樹脂封止型半導体装置を得ることのできるリードフレーム及びそれを用いた半導体装置とその製法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
半導体チップ(以下、チップと称する)をリードフレームの中央部に設けたタブに搭載し、チップとリードとをワイヤボンディングにより電気的に接続した後にレジンで封止する樹脂封止型半導体装置、特にQFP等の面実装型の樹脂封止型半導体装置において、リフロー半田工程時に発生するパッケージクラックが問題となっている。
【0003】
これは、リフロー半田工程時の高温に起因する内部応力によって、接着性の低いレジンとタブとの界面に剥離が生じ、そこに水蒸気圧が作用しておこる現象である。
【0004】
この剥離を防止する方法として、レジンはタブ(金属)よりもチップ(シリコン)との接着性が高いことを利用して、タブに貫通孔を設けることが、香山・成瀬監修「VLSIパッケージング技術(下)」(日本BP社、1993年出版)の第126頁に記載されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、最近の半導体装置のレジンに対するチップの占有率の増加、及びパッケージの薄型化にともない、前述した方法ではパッケージクラックの発生を十分に防止することが困難になりつつある。そこで本発明者は、チップを搭載するタブの外形寸法をチップの外形寸法よりも小さくし、この小さなタブによりチップの中心部を支持する、いわゆる小タブ構造のリードフレームを特願平5-65784号において提案している。
【0006】
上記小タブ構造のリードフレームは、タブの外形寸法を小さくして、この小さなタブによりチップの中心部を接着することにより、チップの周辺部におけるレジンとチップ裏面との接触面積を大きくして、密着性を向上させることにより、界面剥離を防止して、パッケージクラックを抑制しようとするものである。
【0007】
しかし、この構造では、チップはその中心部のみでリードフレームのタブに接着することになるため、モールド工程におけるレジン注入時にレジン流動によりチップに上下方向の力が生じると、タブ吊りリードが上方にたわみやすい。すると、チップがモールド金型の中心からずれ、チップの上側と下側とで溶融レジンの流速が異なってくるため、ボイドが発生しやすくなるという不都合が生じる。このことは、特にパッケージの厚さが2mm以下の、いわゆる薄型パッケージで問題になる。
【0008】
また、チップの中心部でチップをタブに固定しようとすると、接着強度の点からタブはある程度の面積を有する必要があり、この方法では上述したパッケージクラックの防止が完全に行なわれているとはいえない。
【0009】
本発明の目的は、レジン注入時のチップずれによる、ボイドの発生を防止することができ、かつ、リフロー時のパッケージクラックを防止することができる技術を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本願において開示される発明の概要を簡単に説明すれば、次の通りである。
【0011】
すなわち、矩形状の枠と、四角形の半導体チップを固定する複数のアイランド部の各々から前記枠の隅部に向かって延在する複数の支持リード部と、前記複数のアイランド部を一平面上に保持する連結部と、前記複数の支持リード部の間において、前記枠部から延在する複数のリードとを有し、前記複数のアイランド部の各々は、前記半導体チップの四隅部のうち、前記枠の一隅部に設けられるレジン注入ゲート部に最も近い隅部及びそれと対角する隅部で前記半導体チップの中心からの距離と、前記半導体チップの角からの距離が4対1になるような位置またはそれよりも外側において前記半導体チップを固定することを特徴とする半導体装置とその製法である。
【0012】
上記した半導体装置において、チップはその四隅部のうち、レジン注入ゲート部に最も近い隅部及びそれと対角する隅部でアイランド部に固定されているので、レジン注入時にレジン流動によりチップに上下方向の力が生じても、支持リードが上方にたわみチップがモールド部の中心からずれる、といった不都合が生じない。よって、ボイドが発生するのを防止すことができる。
【0013】
それと同時に、チップ裏面はその隅部のみでアイランド部に接着されており、隅部以外においては実質的に全面がレジンと密着することになるので、リフロー時の剥離を抑制することができ、パッケージクラック耐性を向上させることができる。
【0014】
更に、連結部を設けたことで、アイランド部がほぼ一平面上に保持され、チップとアイランド部を接着するためのダイボンディング接着が全てのアイランド部で確実に行われるようになるので、チップをリードフレーム上に安定に支持することができる。
【0015】
【実施例】
以下、本発明の実施例を図面を用いて具体的に説明する。
【0016】
[実施例1]
図1は、本発明の実施例1の樹脂封止型半導体装置に用いるリードフレームの構成を示した平面図である。図2(a)は、本実施例の半導体装置の製造工程を説明する断面図であり、図2(b)は、本実施例の半導体装置のモールド工程を説明する断面図である。図3(a)は、本実施例の半導体装置の平面図であり、図3(b)は、図3(a)の半導体装置のアイランド部3を含む面での断面図である。
【0017】
図1において、リードフレーム1の中央部の点線枠2’は四角形のチップが搭載される領域を示したものである。
【0018】
リードフレーム1のアイランド部3は、チップをリードフレーム上に固定する部分であって、チップ搭載位置2’の隅部の4点に位置する。チップは4個のアイランド部3のみによって、リードフレーム1上に固定される。
【0019】
リードフレーム1の支持リード部4は、上記アイランド部3を所定の位置に支持するものであり、各支持リード部4は、上記各アイランド部3からリードフレーム1の四隅部の各々に延在している。
【0020】
リードフレーム1の連結部6は、4個のアイランド部3のうち互いに対角に位置するアイランド部同志を連結し、チップ搭載位置2’の中心で交わる十字形をなしている。連結部6を設けることによって、4個のアイランド部3は、一平面上に保持される。なお、パッケージクラックを防止するためには、チップの裏面とレジンとの接着面積を大きくするのが有効であるため、連結部6の幅は細く形成することが好ましい。本実施例では、支持リード部4の幅と等しくしている。
【0021】
上記アイランド部3、支持リード部4及び連結部6は、一体となって対角線状に形成される。
【0022】
各支持リード部4の間には、リードフレーム1の周辺部からチップ搭載位置2’に向かって延在する、電気的接続のための複数のリード7が配置されている。また、リード7及び支持リード部4を連結すると共に、モールド工程においてレジンを注入する際にレジンが流出するのを防止するダムバー8がリードフレーム1の周辺部に枠状に形成されている。なお、リード7の、ダムバー8より外側は、レジン封止した後にモールド部の外部に露出し、半導体装置の外部端子となる部分である。
【0023】
ゲート部14’は、モールド工程においてレジンが注入されるゲートの位置とレジンの注入方向を示している。
【0024】
図示はしないが、リードフレームは、上述の各部により構成される単位のリードフレーム1を一方向に複数個連結した構造になっている。そのため、リードフレームの最外周部には、各単位のリードフレームを複数連結している外枠9及び各単位のリードフレームの相互間を分離するように形成されている内枠10が設けられており、外枠9と内枠10が一体となって矩形状の枠を形成している。また、外枠9の一部には、リードフレームをモールド金型に位置決めする際のガイドとなるガイド孔11が設けられている。
【0025】
上記リードフレーム1は厚さ0.1〜0.2mm程度の42アロイや銅等の導電材料を用いて、打ち抜き等の手段により成型される。例えば搭載するチップの一辺が9mmで、パッケージの外寸の一辺が28mm場合、アイランド部3は、幅0.5〜1.5mm、長さ2mm程度、支持リード部4及び連結部6は幅0.25mm程度に形成する。
【0026】
アイランド部3は、チップの中心からの距離と、チップの角からの距離が約4:1になるような位置、またはそれよりも外側においてチップと接着されることが好ましい。換言すれば、上記約4:1の位置よりも外側にアイランド部3が位置すればよいので、1つのリードフレームを外形寸法の異なる複数の品種のチップに併用することができる。よって、外形寸法の異なる複数のチップごとにリードフレームを標準化することができるので、その製造コストが低減され、半導体装置を安価に提供することができる。
【0027】
なお、アイランド部3の大きさは、チップ2とリードフレーム1を固定するのに必要な接着強度を満たすものであればよく、形もダイボンド接着剤塗布に好都合なものであれば良い。
【0028】
次に、上述した図1のリードフレームを用いて、図3に示す本実施例の半導体装置を製造する方法を説明する。図2(a)、(b)は、製造工程を説明する断面図であり、図1におけるリードフレーム1の、ゲート部14’を含む対角線における断面を示している。
【0029】
まず、リードフレーム1の支持リード部4に対してダウンセット加工を施す。ダウンセット加工は、プレス型を使って、図2(a)に示すように、支持リード部4の中途部を下方に折り曲げることにより、水平方向から見たアイランド部3の位置をリード7よりも低くする作業である。このダウンセット加工は、特にレジンモールド部の厚さが2mm以下のいわゆる薄型の面実装型パッケージに適用する場合に有効である。尚、ダウンセット加工の具体的な方法については、特開平2-83961号公報に詳細に説明されている。
【0030】
次に、リードフレーム1にチップ2を搭載する、ダイボンディング工程に移る。まず、アイランド部3にダイボンド接着剤5を塗布する。ダイボンド接着剤5としては、エポキシ樹脂やポリイミド樹脂等を用いる。次に、ダイボンド接着剤5を塗布したアイランド部3上にチップの隅部が位置するようにチップ2を位置決めし、加熱によってダイボンド接着剤5を硬化することによってダイボンディング工程を完了する。なお、従来のいわゆるタブの上にチップの裏面全面を接着する場合に比べ、チップの隅部において面積の小さなアイランド部3のみで接着するので、少量のダイボンド接着剤で必要な接着強度を得ることができ、製造コスト低減をすることができる。
【0031】
次に、チップ2の一主面、すなわちチップ2の2つの主面のうち半導体素子が形成される面の周辺部に設けられたボンディングパッドとリード7の内端部との間をAuワイヤ12でボンディングして、チップ2とリード7との間を電気的に接続する。
【0032】
次に、モールド工程に移る。図2(b)に示すように、上記ワイヤボンディング工程まで完了したリードフレームをモールド金型の上型13aと下型13bに挟んで装着し、ゲート14からキャビティー15内にレジン16、例えばエポキシ樹脂等を注入して、モールド部を成型する。ゲート14は、下型13b側、すなわちリードフレーム1より下の位置に設けられている。上述したようにリードフレーム1にダウンセット加工を施したことにより、チップ2をキャビティー15の中心に位置させ、チップの一主面側のモールド部の厚さと、他の主面側のモールド部厚さを等しくすることができる。すなわち、図2(b)に示すh1とh2とを等しくすることによって、チップ2の上面側と下面側でのレジンの流動速度が等しくすることができ、ボイドの発生を抑制することができる。更に、チップ2の隅部でチップ2とアイランド部3を接着しているので、レジン16の流動によりチップ2に上下方向の力が生じても、チップ2をキャビティー15の中心に安定に保つことができ、レジン注入が完了するまで継続的に上述のボイドの発生を抑制することができる。なお、リードフレーム1にダウンセット加工を施さない場合は、ボイドの発生を抑制するために、図2(b)に示すh1・h2に相当する値のうち小さい値を有する側にゲート14を設けることが好ましい。
【0033】
次に、リードフレーム1の不要箇所、すなわちモールド部の外部に露出したダムバー8、外枠9及び内枠10などをプレスで切断除去し、最後にモールド部の外部に露出したリード7を所定の形状に成型することにより、図3(a)、(b)に示すような樹脂封止型半導体装置が完成する。なお、図3(a)においては、本実施例の半導体装置の内部構造を明らかにするため、二点鎖線によりモールド部をその外形線だけで示しいてる。
【0034】
本実施例の半導体装置は、図3(b)に示すように、チップ裏面はその隅部のみでアイランド部に接着されている。したがって、チップ裏面の隅部以外の部分は、細い連結部6が存在する部分を除くチップ裏面においてレジン16と密着している。すなわち、チップの隅部以外においてはチップ裏面は実質的に全面がレジン16と密着することになるので、リフロー時の界面剥離を抑制することができ、パッケージクラック耐性を向上させることができる。
【0035】
[実施例2]
図4は、本発明の実施例2の樹脂封止型半導体装置に用いるリードフレームの構成を示した平面図である。
【0036】
リードフレーム1の構成は、図4に示すように、アイランド部3が2個しか設けられていない点が実施例1と異なっており、他の部分については図1で説明した実施例1と同様である。2個のアイランド部のうちの1個はゲート部14’に最も近いチップ搭載位置2’の隅部に存在し、他の1個はそれと対角する位置の隅部に存在する。よって、残りの2つの隅部にはアイランド部は存在しない。そのため、チップ搭載位置2’の中心で交わる十字形の連結部6は、上記2個のアイランド部を連結すると共に、アイランド部の存在しない隅部においては、上記枠の2つの隅部に延在し、前記アイランド部3、支持リード部4及び連結部6は一体となって対角線状に形成されている。
【0037】
本実施例のリードフレームを用いた場合においても、実施例1と同様の製造工程により本実施例の半導体装置を得ることができる。
【0038】
本実施例によれば、アイランド部3を2個しか設けていないが、その位置が、レジン注入時のレジンの流動によって生じる力の影響を強く受ける点であるため、実施例1とほぼ同等のボイド防止効果を得ることができる。また、実施例1に比べてアイランド部の数が少なくなり、レジンとチップ裏面との接着面積がより大きくなっているため、実施例1よりも優れたパッケージクラック防止効果を得ることができる。
【0039】
[実施例3]
図5は、本発明の実施例3の樹脂封止型半導体装置に用いるリードフレームの構成を示した平面図である。
【0040】
上記2つの実施例のリードフレーム1は、十字形の連結部6を設けていたが、本実施例のリードフレーム1では、支持リード部4を互いに連結するように、チップ搭載位置2’の周辺に帯状の絶縁性フィルム17を有することを特徴とする。絶縁性フィルム17は、支持リード部4を連結すると共に複数のリード7をも連結するように形成することにより、リード7のバラツキ防止も兼ねることができる。
【0041】
絶縁性フィルム17は、例えば幅1.5mm程度、厚さ0.05mm程度のポリイミド樹脂から成るフィルムの片面にアクリル樹脂系の接着剤を厚さ0.02mm程度塗布した構成する。
【0042】
本実施例のリードフレームを用いた場合においても、実施例1と同様の製造工程により本実施例の半導体装置を得ることができる。ただし、上記したように、絶縁フィルム17がリード7のバラツキ防止を兼ねるためには、ダウンセット加工は、絶縁性フィルム17よりもチップ側の部分において支持リード部4を下方に折り曲げる必要がある。
【0043】
本実施例によれば、実施例1の十字形の連結部6が存在しないため、更にレジンとチップ裏面の接着面積がより大きくなり、実施例1よりも優れたパッケージクラック防止の効果を得ることができる。
【0044】
以上、本発明を実施例に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることはいうまでもない。
【0045】
例えば、連結部6の形状は実施例に限定されるものではなく、チップ隅部に位置する前記アイランド部を一平面上に保持し、チップを安定に支持することができる構造であり、かつチップの隅部以外においてはチップ裏面が実質的に全面がレジンと密着するような構造であればどのようなものでも良い。よって、例えば実施例1の場合、連結部6は十字形に限定されるものではなく、4個の前記アイランド部のうち隣合ったアイランド部同志を連結し、チップ搭載位置2’の周辺部に沿って四角形の枠をなしているような構造でもよい。
【0046】
【発明の効果】
本発明によれば、リフロー時のパッケージクラック及びレジン注入時のボイドの発生を防止し、好適な樹脂封止型半導体装置を得ることができるリードフレーム及びそれを用いた樹脂封止型半導体装置とその製法を提供することができる。
【0047】
更に、本発明によれば、チップ隅部に位置する前記アイランド部が一平面上に保持され、チップが安定に支持されるようなリードフレーム及びそれを用いた樹脂封止型半導体装置とその製法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明の一実施例であるリードフレームの平面図である。
【図2】
(a)本発明の一実施例である半導体装置の製造工程を示す断面図である。
(b)本発明の一実施例である半導体装置のモールド工程を説明する断面図である。
【図3】
(a)本発明の一実施例である半導体装置の平面図である。
(b)本発明の一実施例である半導体装置の断面図である。
【図4】
本発明の他の実施例であるリードフレームの平面図である。
【図5】
本発明の他の実施例であるリードフレームの平面図である。
【符号の説明】
1…リードフレーム,2…半導体チップ,2’…半導体チップ搭載位置,3…アイランド部,4…支持リード部,5…ダイボンド接着剤,6…連結部,7…リード,8…ダムバー,9…外枠,10…内枠,11…ガイド孔,12…ボンディングワイヤ,13a…モールド金型の上型,13b…モールド金型の下型,14…ゲート,14’…ゲート部,15…キャビティー,16…レジン,17…絶縁性フィルム
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2003-09-25 
出願番号 特願平6-206352
審決分類 P 1 651・ 113- YA (H01L)
P 1 651・ 121- YA (H01L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 坂本 薫昭  
特許庁審判長 朽名 一夫
特許庁審判官 内野 春喜
恩田 春香
登録日 2001-11-16 
登録番号 特許第3251436号(P3251436)
権利者 株式会社日立超エル・エス・アイ・システムズ 株式会社北日本セミコンダクタテクノロジーズ 株式会社日立製作所
発明の名称 リードフレーム、半導体装置及び半導体装置の製造方法  
代理人 筒井 大和  
代理人 筒井 大和  
代理人 筒井 大和  
代理人 筒井 大和  

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