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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  H05B
審判 全部申し立て 発明同一  H05B
審判 全部申し立て 4項(5項) 請求の範囲の記載不備  H05B
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  H05B
審判 全部申し立て 特36 条4項詳細な説明の記載不備  H05B
管理番号 1088014
異議申立番号 異議2002-71202  
総通号数 49 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2001-07-31 
種別 異議の決定 
異議申立日 2002-05-08 
確定日 2003-10-14 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3228924号「半導体製造・検査装置用セラミックヒータ」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3228924号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第3228924号の請求項1に係る発明についての出願は、平成12年1月21日に特許出願され、平成13年9月7日にその特許の設定登録がなされ、平成13年11月12日に特許掲載公報が発行されたものである。
これに対して、渡部 佳代、阪本 裕一、宇田川 政子より特許異議の申立てがなされ、その後取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成14年11月5日付けで訂正請求がなされたものである。

2.訂正の適否についての判断
2-1.訂正の内容
本件訂正の内容は、本件特許明細書を平成14年11月5日付けの訂正請求書に添付された訂正明細書のとおり、すなわち次の訂正事項1ないし訂正事項23のとおり訂正するものである。
・訂正事項1
特許請求の範囲を次のとおりに訂正する
「【請求項1】セラミック基板の内部または表面に抵抗発熱体を有する半導体製造・検査装置用セラミックヒータであって、前記セラミック基板は、直径が200mm以上で、厚さが25mm以下であり、かつ、窒化アルミニウムからなり、その窒化アルミニウム中には、0.5〜3重量%の酸素、2〜30ppmのSiおよび0.5〜8重量%のイットリアを含有し、200℃以上で使用することを特徴とする半導体製造・検査装置用セラミックヒータ。」
・訂正事項2
明細書中の段落【0006】(本件特許掲載公報第2頁第3欄第21行〜第28行)を次のとおり訂正する。
「本発明は、セラミック基板の内部または表面に抵抗発熱体を有する半導体製造・検査装置用セラミックヒータであって、前記セラミック基板は、直径が200mm以上で、厚さが25mm以下であり、かつ、窒化アルミニウムからなり、その窒化アルミニウム中には、0.5〜3重量%の酸素、2〜30ppmのSiおよび0.5〜8重量%のイットリアを含有し、200℃以上で使用することを特徴とする半導体製造・検査装置用セラミックヒータである。」
・訂正事項3
明細書中の段落【0007】(本件特許掲載公報第2頁第3欄第29行〜第36行)を次のとおり訂正する。
「【発明の実施の形態】本発明の半導体製造・検査装置用セラミックヒータは、酸素とSiとイットリアを含有し、Siの含有量が2〜30ppmである。本発明では、窒化アルミニウムの粒界にSi-Al-O-Nの複雑な化合物が形成されると推定され、セラミックの高温でのヤング率の低下を抑制できると考えられる。」
・訂正事項4
明細書中の段落【0008】(本件特許掲載公報第2頁第3欄第37行〜第47行)を次のとおり訂正する。
「特開平9-48668号公報には、Siの含有量が100ppm以下の窒化アルミニウム(Al-O-Nを含む)を用いた半導体製造用装置を開示しているが、Siが30ppm以下に調整された場合の効果については記載示唆ともしておらず、この公報の存在を理由に本発明の新規性進歩性が阻却されることはない。」
・訂正事項5
明細書中の段落【0009】(本件特許掲載公報第2頁第3欄第48行〜第4欄第5行)を次のとおり訂正する。
「前記Siの含有量は、いわゆるグロー放電-マススペクトル法(GD-MS法)による測定で、2〜30ppm(重量、以下すべて重量)が望ましい。2ppm未満では、ヤング率低下の抑制効果がなく、30ppmを越えると逆にセラミック粒子境界のSiの酸化物によって高温でのヤング率が低下してしまうからである。つまり、2〜30ppmで効果が発揮される特有の範囲であると言える。」
・訂正事項6
明細書中の段落【0010】(本件特許掲載公報第2頁第4欄第6行〜第10行)を次のとおり訂正する。
「Siは、Si原子、Siイオン、あるいはSi-Al-O-Nのような化合物で存在していてもよいと考えられる。」
・訂正事項7
明細書中の段落【0011】(本件特許掲載公報第2頁第4欄第11行〜第19行)を次のとおり訂正する。
「酸素含有量は、0.5〜3重量%であることが望ましい。酸素含有量が0.5重量%未満では焼結性が悪くなって熱伝導率が低下し、また、本発明の課題そのものが発生しにくく、3重量%を越えると酸素が障壁となって熱伝導率が低下するからである。酸素量は、原料粉末を空気、酸素中で加熱するか、酸化物焼結助剤を添加して調整する。」
・訂正事項8
明細書中の段落【0012】(本件特許掲載公報第2頁第4欄第20行〜第28行)を次のとおり訂正する。
「セラミック基板は、その厚さは、25mm以下が望ましい。セラミック基板の厚さが25mmを超えると、セラミック基板の熱容量が大きくなり、特に、温度制御手段を設けて加熱、冷却すると、熱容量の大きさに起因して温度追従性が低下してしまう。また、本発明が解決する反りの問題は、厚さが25mmを越えるような厚いセラミック基板では発生しにくいからである。特に5mm以上が最適である。なお、厚みは、1mm以上が望ましい。」
・訂正事項9
明細書中の段落【0013】(本件特許掲載公報第2頁第4欄第29行〜第33行)を次のとおり訂正する。
「なお、本発明の半導体製造・検査装置用セラミックヒータでは、半導体ウエハをセラミック基板のウエハ載置面に接触させた状態で載置するほか、半導体ウエハを支持ピンなどで支持し、セラミックス基板との間に一定の間隔を保って保持する場合もある。」
・訂正事項10
明細書中の段落【0016】(本件特許掲載公報第2頁第4欄第46行〜第49行)の記載を削除し、明細書中の段落【0017】(本件特許掲載公報第2頁第4欄第50行〜第3頁第5欄第7行)を次のとおり訂正して、段落【0016】とする。
「本発明においては、セラミック基板中に焼結助剤を含有することが望ましい。焼結助剤としては、アルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、希土類酸化物を使用することができ、これらの焼結助剤のなかでは、特にCaO、Y2O3、Na2O、Li2O、Rb2O3が好ましい。また、アルミナを使用してもよい。Y2O3の含有量としては、0.5〜8重量%が望ましく、他の焼結助剤の含有量としては、0.1〜20重量%が望ましい。」
・訂正事項11
段落【0016】の記載の削除に伴い、明細書中の以下の段落番号を全て一つずつ繰り上げる。
なお、平成14年11月5日付けの訂正請求書には、訂正する段落番号として訂正後の段落番号が記載されているが、それでは本件特許明細書におけるどの段落を訂正するのかが不明確となるので、ここでは訂正前の段落番号を記載する。
・訂正事項12
明細書中の段落【0021】(本件特許掲載公報第3頁第5欄第33行〜第39行)を次のとおり訂正する。
「本発明の半導体製造・検査装置用セラミックヒータは、半導体の製造や半導体の検査を行うための装置に用いられるヒータであり、具体的な装置としては、例えば、静電チャック、ウエハプローバ、ホットプレート、サセプタ等が挙げられる。また、本発明の半導体装置用セラミック基板は、150℃以上、望ましくは200℃以上で使用されることが最適である。」
なお、訂正事項11にあるとおり、段落【0021】の訂正後の段落番号を【0020】とする。以下、全て同様である。
・訂正事項13
明細書中の段落【0022】(本件特許掲載公報第3頁第5欄第40行〜第44行)を次のとおり訂正する。
「図1は、本発明の半導体製造・検査装置用セラミックヒータの一実施形態である静電チャックの一例を模式的に示した縦断面図であり、図2は、図1に示した静電チャックにおけるA-A線断面図であり、図3は、図1に示した静電チャックにおけるB-B線断面図である。」
・訂正事項14
明細書中の段落【0046】(本件特許掲載公報第5頁第9欄第18行〜第22行)を次のとおり訂正する。
「本発明の半導体製造・検査装置用セラミックヒータの表面および内部に導電体が配設され、上記内部の導電体が、ガード電極またはグランド電極のいずれか少なくとも一方である場合には、上記セラミック基板は、ウエハプローバとして機能する。」
・訂正事項15
明細書中の段落【0047】(本件特許掲載公報第5頁第9欄第23行〜第32行)を次のとおり訂正する。
「図6は、本発明に係るウエハプローバを模式的に示した断面図であり、図7は、図6に示したウエハプローバにおけるA-A線断面図である。このウエハプローバ201では、平面視円形状のセラミック基板43の表面に平面視同心円形状の溝47が形成されるとともに、溝47の一部にシリコンウエハを吸引するための複数の吸引孔48が設けられており、溝47を含むセラミック基板43の大部分にシリコンウエハの電極と接続するためのチャックトップ導体層42が円形状に形成されている。」
・訂正事項16
明細書中の段落【0052】(本件特許掲載公報第5頁第10欄第8行〜第10)を次のとおり訂正する。
「次に、本発明の半導体製造・検査装置用セラミックヒータの製造方法に関し、静電チャックの製造方法を一例として、図8に示した断面図に基づき説明する。」
・訂正事項17
明細書中の段落【0053】(本件特許掲載公報第5頁第10欄第11行〜第20行)を次のとおり訂正する。
「(1)まず、窒化アルミニウム粉体、ホウ素化合物をバインダおよび溶剤と混合して混合組成物を調製した後、成形を行うことにより、グリーンシート50を作製する。カーボンを含有させる場合には、目的とする特性に応じて、上記結晶質カーボンまたは非晶質カーボンを使用し、その量を調節する。前記ホウ素化合物としては、窒化ホウ素、炭化ホウ素、ホウ酸などを使用することができる。また、窒化ホウ素板を焼結体に接触させて1500〜1900℃で加熱して熱拡散させる方法も採用できる。」
・訂正事項18
明細書中の段落【0054】(本件特許掲載公報第5頁第10欄第21行〜第24行)を次のとおり訂正する。
「上述した窒化アルミニウム粉体には、前述したイットリアを含む焼結助剤などを加える。」
・訂正事項19
明細書中の段落【0068】(本件特許掲載公報第6頁第12欄第14行〜第18行)を次のとおり訂正する。
「以上、本発明の半導体製造・検査装置用セラミックヒータは、半導体製造・検査用のホットプレート(ヒータ)、ヒータ機能を有する静電チャック、ウエハプローバ、サセプターなどに応用できる。以下、実施例に則して説明するが、実施例に拘泥されないことは言うまでもない。」
・訂正事項20
明細書中の段落【0069】(本件特許掲載公報第6頁第12欄第20行〜第30行)を次のとおり訂正する。
「【実施例】
(実施例1)
(1)窒化アルミニウム粉末(平均粒径:1.1μm トクヤマ製)1000重量部、イットリア(平均粒径:0.4μm)をそれぞれ10重量部、20重量部、30重量部、40重量部、40重量部、40重量部、SiO2をそれぞれ4.8×10-3重量部、0.012重量部、0.027重量部、0.037重量部、0.050重量部、0.074重量部、アクリルバインダ120重量部およびアルコールからなる組成物のスプレードライを行い、7種類の顆粒状の粉末を作製した。」
・訂正事項21
明細書中の段落【0078】(本件特許掲載公報第7頁第14欄第11行〜第16行)を次のとおり訂正する。
「2.Si含有量の測定は、グロー放電-マススペクトル法(GD-MS法)を使用した。なお、分析は米国の「SHIVA TECHNOLOGIES,INC」(電話:315-699-5332、FAX:315-699-0349)に依頼した。」
・訂正事項22
明細書中の段落【0084】(本件特許掲載公報第8頁)を次のとおり訂正する。



・訂正事項23
明細書中の【図面の簡単な説明】(本件特許掲載公報第10頁第19欄第15行〜第20欄第5行)を次のとおり訂正する。
「【図1】
本発明の半導体製造・検査装置用セラミックヒータの一実施形態である静電チャックを模式的に示す縦断面図である。
【図2】
図1に示した静電チャックのA-A線断面図である。
【図3】
図1に示した静電チャックのB-B線断面図である。
【図4】
静電チャックの静電電極の一例を模式的に示す断面図である。
【図5】
静電チャックの静電電極の一例を模式的に示す断面図である。
【図6】
本発明に係るウエハプローバを模式的に示す断面図である。
【図7】
図6に示したウエハプローバにおけるA-A線断面図である。
【図8】
(a)〜(d)は、静電チャックの製造工程の一部を模式的に示す断面図である。
【図9】
本発明の半導体製造・検査装置用セラミックヒータの断面図である。」
2-2.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
訂正事項1は、特許請求の範囲の「導体層」を「抵抗発熱体」と訂正し、「窒化物セラミック」を「窒化アルミニウム」と訂正し、その「窒化物セラミック」中の酸素の含有量を「0.1〜5重量%」から「0.5〜3重量%」に、Siの含有量を「0.5〜50ppm」から「2〜30ppm」に、それぞれ訂正し、更にイットリアを「0.5〜8重量%」含有することを追加する訂正をするものである。そして、上記訂正は、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
訂正事項2ないし10、訂正事項12ないし20及び訂正事項22、23は、訂正事項1による特許請求の範囲の訂正に伴って明細書の記載を訂正するものであるか、あるいは明瞭でない記載を明瞭化する訂正であるから、いずれにしても明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
訂正事項11は、明細書中の段落【0016】の記載の削除に伴い、明細書中の以下の段落番号を全て一つずつ繰り上げるものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
訂正事項21は、誤記の訂正を目的とするものであって、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
また、これら訂正事項1ないし23は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
2-3.むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法第120条の4第2項及び第3項で準用する特許法第126条第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.特許異議の申立てについての判断
3-1.申立ての理由の概要
異議申立人渡部 佳代は、本件特許の請求項1に係る発明は、甲第1号証(特開平9-315867号公報)、甲第2号証(特開平11-312570号公報)に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当する旨、及び、上記請求項1に係る発明は、上記甲第1号証、甲第2号証及び甲第3号証(日本軽金属株式会社の窒化アルミニウム粉末「ニッケイサーマルトップ」のカタログ 1988年5月3日発行)、甲第4号証(特開平8-97321号公報)に記載された発明に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有するものが容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、特許法第113条第1項第2号の規定により取り消すべきものである旨主張している。
異議申立人阪本 裕一は、本件特許の請求項1に係る発明は、甲第1号証(特開平11-312570号公報)、甲第2号証(特開平11-74064号公報)、甲第3号証(特開平11-40330号公報)、甲第4号証(特開平2-275770号公報)、甲第5号証(カタログ集編集事務局編「ファインセラミックスカタログ集」社団法人日本ファインセラミックス協会(昭61-12-1)p.72)に記載された発明に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有するものが容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、特許法第113条第1項第2号の規定により取り消すべきものである旨主張している。
異議申立人宇田川 政子は、本件特許の請求項1に係る発明は、甲第1号証(WO95/21139)、甲第2号証(特開平7-65935号公報)に記載された発明であるので、特許法第29条第1項第3号の規定により、特許を受けることができない旨、上記請求項1に係る発明は、上記甲第1号証、甲第2号証及び甲第3号証(特開平11-283729号公報)、甲第4号証(特開平11-40330号公報)に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明し得たものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない旨、上記請求項1に係る発明は、甲第5号証(特開2001-163672号公報)及びその国内優先主張基礎出願の願書に添付された明細書である甲第6号証(特願平11-278727)に記載された発明であるから、特許法第29条の2第1項の規定により、特許を受けることができない旨、及び、本件は明細書の記載が特許法第36条第4項及び第5項第2号の規定に違反している旨主張している。
3-2.訂正明細書の請求項1に係る発明
平成14年11月5日付け訂正請求書による訂正は、「2.訂正の適否についての判断」に記載したとおり、認められるから、本件特許の請求項1に係る発明(以下、本件発明という)は、上記訂正請求書に添付された訂正明細書(以下、訂正明細書という)の特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】セラミック基板の内部または表面に抵抗発熱体を有する半導体製造・検査装置用セラミックヒータであって、前記セラミック基板は、直径が200mm以上で、厚さが25mm以下であり、かつ、窒化アルミニウムからなり、その窒化アルミニウム中には、0.5〜3重量%の酸素、2〜30ppmのSiおよび0.5〜8重量%のイットリアを含有し、200℃以上で使用することを特徴とする半導体製造・検査装置用セラミックヒータ。」
3-3.引用刊行物記載の発明
(1)当審が通知した取消理由通知に引用した引用例1(WO95/21139号公報:異議申立人宇田川 政子の提出した甲第1号証)には、以下の記載がなされている。
(1-A)「アルミニウムを除く金属元素の含有量がいずれも100ppm以下であり、かつJIS Z 8721に規定する明度がN4以下の黒色を呈していることを特徴とする、窒化アルミニウム焼結体。」(【特許請求の範囲】)
(1-B)「こうした問題を解決するため、本発明者は、緻密質セラミックス基材の内部に、高融点金属からなるワイヤーを埋設したセラミックスヒーターを提案した。このワイヤーは、円盤状基材の内部で螺旋状に巻回されており、かつこのワイヤーの両端に端子を接続する。こうしたセラミックスヒーターは、特に半導体製造用として優れた特性を有していることが判った。
セラミックスヒーターの基体を構成するセラミックスとしては、窒化珪素、窒化アルミニウム、サイアロン等の窒化物系セラミックスが好ましいと考えられている。また、セラミックスヒーター上にサセプターを設置し、このサセプターの上に半導体ウエハーを設置して、半導体ウエハーを加熱する場合がある。
こうしたセラミックスヒーターやサセプターの基材としては、本発明者の研究によれば、窒化アルミニウムが好ましい。なぜなら、特に半導体製造装置においては、エッチングガスやクリーニングガスとして、CF3等のハロゲン系腐食性ガスを多用するが、これらのハロゲン系腐食性ガスに対する耐食性の点で、窒化アルミニウムがきわめて高度の耐食性を有していることが確認されたからである。」(第3ページ第10行〜第24行)
(1-C)「本発明者は、窒化アルミニウム焼結体を研究する過程で、アルミニウム以外には焼結助剤等の金属元素をほとんど含有しておらず、しかも、JIS Z 8721に規定する明度がN4以下の黒色を呈する、きわめて明度の低い黒灰色ないし黒褐色の窒化アルミニウム焼結体を提供することに成功した。」(第4ページ第24行〜第27行)
(1-D)「ここで、「アルミニウム以外の金属元素」とは、周期律表のIa〜VIIa、VIII、Ib、IIb及びIIIb、IVbの一部(Al、Si、Ga、Ge等)をいう。」(第5ページ第13行〜第15行)
(1-E)「また、この場合、焼結助剤であるY2O3を添加した窒化アルミニウム粉末を使用すると、たとえ焼結体の相対密度が99.4%以上となっても、たかだか明度5.5以上の焼結体しか製造することができなかった。これは、原料粉末が、還元窒化法による場合も、直接窒化法による場合も、同様であった。すなわち、アルミニウムを除く金属元素の含有量がいずれも100ppm以下である高純度窒化アルミニウム粉末を使用することが必要条件であった。」(第8ページ第1行〜第6行)
(1-F)「(比較例1〜3および実施例1)
本発明者は、実際に窒化アルミニウム焼結体を製造した。原料としては、前述した直接窒化法によって製造した窒化アルミニウム粉末を使用した。
表1に示す比較例1、2においては、イットリアを5重量%含有する粉末を使用し、比較例3、実施例1においては、イットリアを含有しない高純度窒化アルミニウム粉末を使用した。」(第9ページ第15行〜第20行)
(1-G)


」(第11ページ)
(1-H)「(比較例4〜6)
比較例1〜3と同様にして窒化アルミニウム焼結体を製造した。原料としては、前述した還元窒化法によって製造した窒化アルミニウム粉末を使用した。
表2に示す比較例4、5においては、イットリアを3重量%含有する粉末を使用し、比較例6においては、イットリアを含有しない高純度窒化アルミニウム粉末を使用した。」(第12ページ第17行〜第22行)
(1-I)


」(第13ページ)
(1-J)「(比較例7〜9)
比較例1〜3と同様にして窒化アルミニウム焼結体を製造した。原料としては、前述した還元窒化法によって製造した、イットリアを含有しない高純度窒化アルミニウム粉末を使用し、この原料粉末を一軸加圧成形して予備成形体を製造し、これを窒素雰囲気下でホットプレス焼成した。」(第14ページ第12行〜第16行)
(1-K)


」(第15ページ)
(1-L)「(実施例2〜5)
比較例7〜9と同様にして窒化アルミニウム焼結体を製造した。原料としては、前述した還元窒化法によって製造した、イットリアを含有しない高純度窒化アルミニウム粉末を使用し、この原料粉末を一軸加圧成形して予備成形体を製造し、これを窒素雰囲気下でホットプレス焼成した。ただし、焼成温度、保持時間、加圧力は、表4に示すように変更した。」(第16ページ第6行〜第11行)
(1-M)


」(第17ページ)
(1-N)「(実施例6、7および比較例10,11)
比較例7〜9と同様にして、実施例6、7および比較例10の窒化アルミニウム焼結体を製造した。原料としては、前述した還元窒化法によって製造した、イットリアを含有しない高純度窒化アルミニウム粉末を使用し、この原料粉末を一軸加圧成形して予備成形体を製造し、これを窒素雰囲気下でホットプレス焼成した。ただし、焼成温度、保持時間、加圧力は、表5に示すように変更した。比較例11においては、前述した実施例3の焼結体を、更に、1950℃で2時間、窒素雰囲気下で熱処理して、焼結体を製造した。」(第18ページ第20行〜第27行)
(1-O)


」(第19ページ)
(1-P)「(ウエハーの加熱実験)
本発明の実施例3によって製造した窒化アルミニウム焼結体によって、直径210mm、厚さ10mmのプレートを用意し、このプレートを赤外線ランプによる加熱機構を備えた真空チャンバー内に設置した。このプレートの上に直径8インチのシリコンウエハーを乗せ、プレートとシリコンウエハーとの各温度を同時に測定するための熱電対を取り付けた。この赤外線ランプとしては、500Wの波長1μm前後に赤外線のピークを有するものを、アルミニウム製の反射板に20本取り付け、この反射板および各ランプを真空チャンバーの外側に設置した。 各赤外線ランプより放射される赤外線は、直接に、または反射板によって反射された後に、真空チャンバーに設けられた円形の石英窓(直径250mm、厚さ50mm)を通過し、窒化アルミニウムプレートに到達し、このプレートを加熱する。
この加熱装置において、各赤外線ランプを発熱させ、室温から700℃まで11分間でプレートの温度を上昇させ、700℃で1時間保持し、この後に赤外線ランプを停止し、プレ-トを徐々に冷却させた。この結果、赤外線ランプの消費電力は、最大8600Wであり、安定した温度コントロールが可能であった。
また、シリコンウエハ-の温度を測定したところ、プレートの温度を700℃に保持しているときには、シリコンウエハーの温度は611℃であった。
また、実施例4、5の窒化アルミニウム焼結体について同様の実験を行ったところ、上記と同様の結果を得た。
次に、比較例1の窒化アルミニウム焼結体によってプレートを製造し、上記と同様の実験を行った。これは、1900℃で焼成した、密度が994%の白色窒化アルミ二ウム焼結体である。この際には、消費電力が最大10kWとなり、温度上昇時間にも2分間程度の遅れが見られた。また、上記のようにして、室温と700℃との間での温度上昇および下降の熱サイクルを繰り返したところ、赤外線ランプの断線が生しやすかった。
また、シリコンウエハーの温度を測定したところ、プレートの温度を700℃に保持しているときには、シリコンウエハーの温度は593℃であり、上記の本発明例と比較すると、シリコンウエハーの温度も低下していることが判明した。
以上の結果からわかるように、本発明に係る窒化アルミニウムは、白色の窒化アルミニウムと比較して、赤外線の吸収能力が良好であり、安定しており、かつウエハ-を加熱するときの放射能力も優れている。」(第20ページ第22行〜第21ページ第25行)
(2)当審が通知した取消理由通知に引用した特許出願(特願2000-232598号(特開2001-163672号))の願書に最初に添付した明細書又は図面(以下、先願明細書という:異議申立人宇田川 政子の提出した甲第5号証)には、以下の記載がなされている。
(2-A)「窒化アルミニウムを主成分とし、窒化アルミニウム結晶の多結晶構造を有しており、セリウムを酸化物に換算して0.01重量%以上、1.0重量%以下含有していることを特徴とする、窒化アルミニウム焼結体。」(【特許請求の範囲】)
(2-B)「本発明の課題は、高純度な窒化アルミニウム焼結体において、体積抵抗率を低下させ、かつ印加電圧とリーク電流との間での電圧非直線抵抗体的な挙動を抑制することである。」(段落【0005】)
(2-C)「本発明の焼結体は、特に半導体製造装置用のサセプター等の耐蝕性部材に適している。また、この耐蝕性部材中に金属部材を埋設してなる金属埋設品に対して好適である。耐蝕性部材としては、例えば半導体製造装置中に設置されるサセプター、リング、ドーム等を例示できる。サセプター中には、抵抗発熱体、静電チャック電極、高周波発生用電極等を埋設できる。」(段落【0038】)
(2-D)
「【表1】

」(段落【0042】)
(2-E)「この原料粉末を200kgf/cm2の圧力で一軸加圧成形し、直径100mm、厚さ20mmの円盤状成形体を作製した。この成形体を黒鉛モールド内に収納した。ホットプレス法によって、成形体を焼結させた。プレス圧力を200kgf/mm2とし、焼成温度を1900℃または2000℃とし、1900℃または2000℃で4時間保持し、冷却した。室温と1000℃との間は真空とし、1000℃と1900℃または2000℃との間は、1.5kgf/cm2の圧力で窒素ガスを導入した。」(段落【0044】)
3-4.対比・判断
(1)訂正明細書の記載について
平成14年11月5日付けの訂正明細書により訂正された請求項1の記載からみて、本件発明は、「半導体製造・検査装置用セラミックヒータ」に係るものである。
そして、上記請求項1には、本件発明が、「セラミック基板の内部または表面に抵抗発熱体」を有し、「前記セラミック基板は、直径が200mm以上で、厚さが25mm以下」であり、「前記セラミック基板は、窒化アルミニウムからなり、その窒化アルミニウム中には、0.5〜3重量%の酸素、2〜30ppmのSiおよび0.5〜8重量%のイットリアを含有」し、「200℃以上で使用」するものであることが記載されており、したがって、特許請求の範囲には、特許を受けようとする発明を特定するために必要と認める事項のすべてが記載されており、かつ、その記載は明確で、簡潔であるといえる。
ゆえに、訂正後の特許請求の範囲の記載が特許法第36条第5項の規定に違反しているとはいえない。
一方、発明の詳細な説明に関しては、平成14年11月5日付けの訂正請求書による訂正により、発明の詳細な説明における「窒化物セラミック」は「窒化アルミニウム」と訂正されたから、発明の詳細な説明の特許法第36条第4項違反は解消され、かつ、特許請求の範囲に記載された特許を受けようとする発明は、発明の詳細な説明に記載したものであるといえる。
更に、例えば発明の詳細な説明段落【0083】【表1】(2-1.訂正の内容「訂正事項22」参照)には、本件発明により「半導体製造・検査装置用セラミックヒータ」の反り量を小さくできることが記載されているといえるから、本件発明が初期の課題を解決できないとはいえない。
したがって、訂正明細書の特許請求の範囲及び発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項ないし第6項の規定を満足している。
(2)引用例1(WO95/21139号公報)について
引用例1(1-A)の記載からみて、引用例1には、「窒化アルミニウム焼結体」が記載されており、引用例1(1-B)の記載からみて、引用例1には、「緻密質セラミックス基材の内部に、高融点金属からなるワイヤーを埋設したセラミックスヒーター」、および、「こうしたセラミックスヒーターは、特に半導体製造用として優れた特性を有している」こと、「こうしたセラミックスヒーターやサセプターの基材としては、本発明者の研究によれば、窒化アルミニウムが好ましい」ことが記載されている。
そして、これらの記載からみて、引用例1には、「窒化アルミニウム焼結体」が、「緻密質セラミックス基材の内部に、高融点金属からなるワイヤーを埋設したセラミックスヒーター」として「好ましい」ことが記載されているといえる。
また、引用例1(1-F)ないし(1-I)の記載からみて、引用例1には、「イットリアを5重量%含有する粉末」あるいは「イットリアを3重量%含有する粉末」を使用して製造した、0.5〜3重量%の酸素および0.5〜8重量%のイットリア含有する窒化アルミニウム焼結体である「比較例1」、「比較例2」、「比較例4」、「比較例5」が記載されているといえる。
更に、引用例(1-J)ないし(1-O)の記載からみて、引用例1には、「イットリアを含有しない高純度窒化アルミニウム粉末を使用」して製造した、0.5〜3重量%の酸素、2〜30ppmのSiを含有する窒化アルミニウム焼結体である「比較例7」〜「比較例11」、「実施例2」〜「実施例7」が記載されているといえる。
加えて、引用例1(1-P)の記載からみて、引用例1には、「実施例3」、「実施例4,5」及び「比較例1」の「窒化アルミニウム焼結体」によって、「直径210mm、厚さ10mmのプレートを用意」し、当該「窒化アルミニウム焼結体」を「赤外線ランプによる加熱機構を備えた真空チャンバー内」で「700℃」に加熱することが記載されているといえる。
ところが、引用例1には、窒化アルミニウム中に「0.5〜3重量%の酸素、2〜30ppmのSiおよび0.5〜8重量%のイットリアを含有」することは記載されていない。
また、引用例1には、引用例1(1-A)、(1-B)に記載された「緻密質セラミックス基材」が、引用例1(1-F)ないし(1-O)に記載された比較例及び実施例の「窒化アルミニウム焼結体」であることは記載されておらず、かつ、引用例1(1-P)には、「実施例3」、「実施例4,5」及び「比較例1」の「窒化アルミニウム焼結体」を「赤外線ランプ」により加熱することしか記載されていない。
してみれば、引用例1には、本件発明を特定するために必要と認める事項のうち「セラミック基板の内部または表面に抵抗発熱体を有する半導体製造・検査装置用セラミックヒータであって、前記セラミック基板は、窒化アルミニウムからなり、その窒化アルミニウム中には、0.5〜3重量%の酸素、2〜30ppmのSiおよび0.5〜8重量%のイットリアを含有」することが記載されていない。
ゆえに、本件発明が引用例1に記載された発明であるとはいえない。
また、引用例1(1-F)ないし(1-I)の記載からみて、引用例1には、0.5〜3重量%の酸素および0.5〜8重量%のイットリアを含有する「窒化アルミニウム焼結体」が記載されているといえ、かつ、引用例1には、「窒化アルミニウム焼結体」はSiを含有することも記載されている。
ここで、例えば訂正明細書段落【0009】の記載(2-1.訂正の内容「訂正事項5」参照)からみて、本件発明においては、Siを、高温での「ヤング率低下の抑制効果」を発揮する範囲として、2〜30ppm含有しているのに対して、引用例1に記載された発明におけるSiは不純物として含有されているものであり、その含有量を2〜30ppmとすることにより、「窒化アルミニウム焼結体」の高温でのヤング率の低下を抑制することは記載されていない。
かつ、Siの含有量を2〜30ppmとすることにより、「窒化アルミニウム焼結体」の高温でのヤング率の低下を抑制することを記載した引用例はほかに提示されていない。
ゆえに、引用例1に記載された発明において、Siの含有量を2〜30ppmとすることにより、「窒化アルミニウム焼結体」の高温でのヤング率の低下を抑制することを、当業者が容易になし得るとはいえない。
一方、引用例1(1-J)ないし(1-O)の記載からみて、引用例1には、0.5〜3重量%の酸素、2〜30ppmのSiを含有する「窒化アルミニウム焼結」体が記載されているといえるが、引用例1(1-A)、(1-C)ないし(1-E)の記載からみて、引用例1に記載された発明における「窒化アルミニウム焼結体」は「アルミニウムを除く金属元素の含有量がいずれも100ppm以下」のものであって、「アルミニウム以外には焼結助剤等の金属元素」をほとんど含有しないものであるから、たとえイットリアが公知の焼結助剤であるとしても、引用例1に記載された発明における「窒化アルミニウム焼結体」に「0.5〜4重量%のイットリア」を含有させることを、当業者が容易になし得るとはいえない。
そして、本件発明は、窒化アルミニウム中に「0.5〜3重量%の酸素、2〜30ppmのSiおよび0.5〜8重量%のイットリアを含有」することにより、「本発明の半導体製造・検査装置用セラミックヒータでは、上記Siによって熱伝導率を低下させず(即ち、昇温降温性能を低下させず)、高温でのヤング率の低下を抑制できる。」(訂正明細書段落【0111】)という顕著な効果を奏するものである。
ゆえに、本件発明を、当業者が引用例1に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。
(3)先願明細書(特願2000-232598号(特開2001-163672号)について
先願明細書(2-A)、(2-B)の記載からみて、先願明細書には、「窒化アルミニウムを主成分とし、窒化アルミニウム結晶の多結晶構造を有しており、セリウムを酸化物に換算して0.01重量%以上、1.0重量%以下含有していることを特徴とする、窒化アルミニウム焼結体」により、「高純度な窒化アルミニウム焼結体において、体積抵抗率を低下させ、かつ印加電圧とリーク電流との間での電圧非直線抵抗体的な挙動を抑制する」ことが記載されているといえる。
また、先願明細書(2-C)の記載からみて、そのような窒化アルミニウム焼結体は、「特に半導体製造装置用のサセプター等の耐蝕性部材に適して」おり、「耐蝕性部材としては、例えば半導体製造装置中に設置されるサセプター、リング、ドーム等を例示」でき、更に「サセプター中には、抵抗発熱体、静電チャック電極、高周波発生用電極等を埋設できる」ことが記載されているといえる。
加えて、先願明細書(2-D)の記載からみて、そのような窒化アルミニウム焼結体は、Oを0.9重量%、Siを4ppm含むものであり、先願明細書(2-E)の記載からみて、当該窒化アルミニウム焼結体は「直径100mm、厚さ20mmの円盤状成形体」であるといえる。
ところが、先願明細書には、窒化アルミニウム中に「0.5〜8重量%のイットリアを含有」することが記載されていない。
したがって、本件発明が、先願明細書に記載された発明と同一とはいえない。
なお、異議申立人渡部 佳代が証拠として提示した甲第1号証ないし甲第4号証に記載の発明、異議申立人阪本 裕一が証拠として提示した甲第1号証ないし甲第5号証に記載の発明、及び、異議申立人宇田川 政子が証拠として提示した甲第2号証ないし甲第4号証に記載の発明は、いずれも本件発明を特定するために必要と認める事項である「窒化アルミニウム中には、0.5〜3重量%の酸素、2〜30ppmのSiおよび0.5〜8重量%のイットリアを含有」する事項を備えておらず、かつ、上記各甲号証には、窒化アルミニウム焼結体中のSiの含有量を2〜30ppmとすることにより、当該窒化アルミニウム焼結体の高温でのヤング率の低下を抑制することは記載されていない。
そして、当該事項により、本件請求項1に係る発明は「熱伝導率を低下させず(即ち、昇温降温性能を低下させず)、高温でのヤング率の低下を抑制できる」という顕著な効果を奏するものであり、したがって、本件発明が上記各甲号証に記載された発明であるとも、上記各甲号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
3-5.むすび
以上のとおりであるから、異議申立人渡部 佳代、阪本 裕一、宇田川 政子の理由及び証拠によっては、本件請求項1に係る発明の特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
半導体製造・検査装置用セラミックヒータ
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 セラミック基板の内部または表面に抵抗発熱体を有する半導体製造・検査装置用セラミックヒータであって、
前記セラミック基板は、直径が200mm以上で、厚さが25mm以下であり、かつ、窒化アルミニウムからなり、その窒化アルミニウム中には、0.5〜3重量%の酸素、2〜30ppmのSiおよび0.5〜8重量%のイットリアを含有し、200℃以上で使用することを特徴とする半導体製造・検査装置用セラミックヒータ。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、主に、ホットプレート(セラミックヒータ)、静電チャック、ウエハプローバなど、半導体の製造用や検査用の装置として用いられる半導体製造・検査装置用セラミックヒータに関する。
【0002】
【従来の技術】
エッチング装置や、化学的気相成長装置等を含む半導体製造、検査装置等においては、従来、ステンレス鋼やアルミニウム合金などの金属製基材を用いたヒータや、ウエハプローバ等が用いられてきた。しかしながら、金属製のヒータでは温度制御特性が悪く、また厚みも厚くなるため重く嵩張るという問題があり、腐食性ガスに対する耐蝕性も悪いという問題を抱えていた。
【0003】
このような問題を解決するため、金属製のものに代えて、窒化アルミニウムなどのセラミックを使用したヒータが開発されてきた。このようなセラミックヒータでは、セラミック基板自体の剛性が高いため、その厚さを余り厚くしなくても、基板の反り等を防止することができるという利点を有している。
【0004】
このような技術としては、特開平11-40330号公報では、窒化物セラミックの表面に発熱体を設けたヒータを開示する。また、特開平9-48668号公報では、黒色化した窒化アルミニウムを使用したヒータを開示する。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これらの窒化アルミニウムは、本発明者らの試験では温度の上昇に伴い、ヤング率が低下することが判った。特に600℃まで昇温するとヤング率は280GPa程度まで低下することが判った。ヤング率が低下すると高温で反りが発生しやすくなり、ウエハを均一に加熱することができない。このような傾向は、直径が200mm以上で、厚さが25mm以下の大きな直径を持ち、薄いセラミック基板で顕著である。本発明は、熱伝導率などの諸特性を低下させることなく、高温でのヤング率の低下を抑制することを目的とする。
【0006】
本発明は、セラミック基板の内部または表面に抵抗発熱体を有する半導体製造・検査装置用セラミックヒータであって、前記セラミック基板は、直径が200mm以上で、厚さが25mm以下であり、かつ、窒化アルミニウムからなり、その窒化アルミニウム中には、0.5〜3重量%の酸素、2〜30ppmのSiおよび0.5〜8重量%のイットリアを含有し、200℃以上で使用することを特徴とする半導体製造・検査装置用セラミックヒータである。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明の半導体製造・検査装置用セラミックヒータは、酸素とSiとイットリアを含有し、Siの含有量が2〜30ppmである。本発明では、窒化アルミニウムの粒界にSi-Al-O-Nの複雑な化合物が形成されると推定され、セラミックの高温でのヤング率の低下を抑制できると考えられる。
【0008】
特開平9-48668号公報には、Siの含有量が100ppm以下の窒化アルミニウム(Al-O-Nを含む)を用いた半導体製造用装置を開示しているが、Siが30ppm以下に調整された場合の効果については記載示唆ともしておらず、この公報の存在を理由に本発明の新規性、進歩性が阻却されることはない。
【0009】
前記Siの含有量は、いわゆるグロー放電-マススペクトル法(GD-MS法)による測定で、2〜30ppm(重量、以下すべて重量)が望ましい。2ppm未満では、ヤング率低下の抑制効果がなく、30ppmを越えると逆にセラミック粒子境界のSiの酸化物によって高温でのヤング率が低下してしまうからである。つまり、2〜30ppmで効果が発揮される特有の範囲であると言える。
【0010】
Siは、Si原子、Siイオン、あるいはSi-Al-O-Nのような化合物で存在していてもよいと考えられる。
【0011】
酸素含有量は、0.5〜3重量%であることが望ましい。酸素含有量が0.5重量%未満では焼結性が悪くなって熱伝導率が低下し、また、本発明の課題そのものが発生しにくく、3重量%を越えると酸素が障壁となって熱伝導率が低下するからである。酸素量は、原料粉末を空気、酸素中で加熱するか、酸化物焼結助剤を添加して調整する。
【0012】
セラミック基板は、その厚さは、25mm以下が望ましい。セラミック基板の厚さが25mmを超えると、セラミック基板の熱容量が大きくなり、特に、温度制御手段を設けて加熱、冷却すると、熱容量の大きさに起因して温度追従性が低下してしまう。また、本発明が解決する反りの問題は、厚さが25mmを越えるような厚いセラミック基板では発生しにくいからである。特に5mm以上が最適である。なお、厚みは、1mm以上が望ましい。
【0013】
なお、本発明の半導体製造・検査装置用セラミックヒータでは、半導体ウエハをセラミック基板のウエハ載置面に接触させた状態で載置するほか、半導体ウエハを支持ピンなどで支持し、セラミックス基板との間に一定の間隔を保って保持する場合もある。
【0014】
セラミック基板の直径は200mm以上が望ましい。特に12インチ(300mm)以上であることが望ましい。次世代の半導体ウエハの主流となるからである。また、本発明が解決する反りの問題は、直径が200mm以下のセラミック基板では発生しにくいからである。
【0015】
前記セラミック基板の気孔率は、0または5%以下であることが望ましい。気孔率が5%を越えると熱伝導率が低下したり、高温で反りが発生するからである。気孔率は、アルキメデス法により測定することが望ましい。焼結体を粉砕して比重を求め、真比重と見かけの比重から気孔率を計算する。
【0016】
本発明においては、セラミック基板中に焼結助剤を含有することが望ましい。焼結助剤としては、アルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、希土類酸化物を使用することができ、これらの焼結助剤のなかでは、特にCaO、Y2O3、Na2O、Li2O、Rb2O3が好ましい。また、アルミナを使用してもよい。Y2O3含有量としては、0.5〜8重量%が望ましく、他の焼結助剤の含有量量としては、0.1〜20重量%が望ましい。
【0017】
本発明では、セラミック基板中に50〜5000ppmのカーボンを含有していることが望ましい。カーボンを含有させることにより、セラミック基板を黒色化することができ、ヒータとして使用する際に輻射熱を充分に利用することができるからである。カーボンは、非晶質のものであっても、結晶質のものであってもよい。非晶質のカーボンを使用した場合には、高温における体積抵抗率の低下を防止することができ、結晶質のものを使用した場合には、高温における熱伝導率の低下を防止することができるからである。従って、用途によっては、結晶質のカーボンと非晶質のカーボンの両方を併用してもよい。また、カーボンの含有量は、200〜2000ppmがより好ましい。
【0018】
セラミック基板にカーボンを含有させる場合には、その明度がJIS Z 8721の規定に基づく値でN4以下となるようにカーボンを含有させることが望ましい。この程度の明度を有するものが輻射熱量、隠蔽性に優れるからである。
【0019】
ここで、明度のNは、理想的な黒の明度を0とし、理想的な白の明度を10とし、これらの黒の明度と白の明度との間で、その色の明るさの知覚が等歩度となるように各色を10分割し、N0〜N10の記号で表示したものである。実際の明度の測定は、N0〜N10に対応する色票と比較して行う。この場合の小数点1位は0または5とする。
【0020】
本発明の半導体製造・検査装置用セラミックヒータは、半導体の製造や半導体の検査を行うための装置に用いられるヒータであり、具体的な装置としては、例えば、静電チャック、ウエハプローバ、ホットプレート、サセプタ等が挙げられる。また、本発明の半導体装置用セラミック基板は、150℃以上、望ましくは200℃以上で使用されることが最適である。
【0021】
図1は、本発明の半導体装置・検査装置用セラミックヒータの一実施形態である静電チャックの一例を模式的に示した縦断面図であり、図2は、図1に示した静電チャックにおけるA-A線断面図であり、図3は、図1に示した静電チャックにおけるB-B線断面図である。
【0022】
この静電チャック101では、平面視円形状のセラミック基板1の内部に、チャック正極静電層2とチャック負極静電層3とからなる静電電極層が埋設されている。また、静電チャック101上には、シリコンウエハ9が載置され、接地されている。
【0023】
この静電電極層上に、該静電電極層を被覆するように形成されたセラミック層は、シリコンウエハを吸着するための誘電体膜として機能するので、以下においては、セラミック誘電体膜4ということとする。
【0024】
図2に示したように、チャック正極静電層2は、半円弧状部2aと櫛歯部2bとからなり、チャック負極静電層3も、同じく半円弧状部3aと櫛歯部3bとからなり、これらのチャック正極静電層2とチャック負極静電層3とは、櫛歯部2b、3bを交差するように対向して配置されており、このチャック正極静電層2およびチャック負極静電層3には、それぞれ直流電源の+側と-側とが接続され、直流電圧V2が印加されるようになっている。
【0025】
また、セラミック基板1の内部には、シリコンウエハ9の温度をコントロールするために、図3に示したような平面視同心円形状の抵抗発熱体5が設けられており、抵抗発熱体5の両端には、外部端子ピン6が接続、固定され、電圧V1が印加されるようになっている。図1、2には示していないが、このセラミック基板1には、図3に示したように、測温素子を挿入するための有底孔11とシリコンウエハ9を支持して上下させる支持ピン(図示せず)を挿通するための貫通孔12が形成されている。なお、抵抗発熱体5は、セラミック基板の底面に形成されていてもよい。また、セラミック基板1には、必要に応じてRF電極が埋設されていてもよい。
【0026】
この静電チャック101を機能させる際には、チャック正極静電層2とチャック負極静電層3とに直流電圧V2を印加する。これにより、シリコンウエハ9は、チャック正極静電層2とチャック負極静電層3との静電的な作用によりこれらの電極にセラミック誘電体膜4を介して吸着され、固定されることとなる。このようにしてシリコンウエハ9を静電チャック101上に固定させた後、このシリコンウエハ9に、CVD等の種々の処理を施す。
【0027】
上記静電チャックは、静電電極層と抵抗発熱体とを備えており、例えば、図1〜3に示したような構成を有するものである。以下においては、上記静電チャックを構成する各部材で、上記半導体装置用セラミック基板の説明で記載していないものについて、説明していくことにする。
【0028】
上記静電電極上のセラミック誘電体膜4は、セラミック基板のほかの部分と同じ材料からなることが望ましい。同じ工程でグリーンシート等を作製することができ、これらを積層した後、一度の焼成でセラミック基板を製造することができるからである。
【0029】
上記セラミック誘電体膜は、セラミック基板のほかの部分と同様に、カーボンを含有していることが望ましい。静電電極を隠蔽することができ、輻射熱を利用することができるからである。また、上記セラミック誘電体膜は、アルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、希土類酸化物を含んでいることが望ましい。これらは、焼結助剤等の働きをし、高密度の誘電体膜を形成することができるからである。
【0030】
上記セラミック誘電体膜の厚さは、50〜1500μmであることが望ましい。上記セラミック誘電体膜の厚さが50μm未満であると、膜厚が薄すぎるために充分な耐電圧が得られず、シリコンウエハを載置し、吸着した際にセラミック誘電体膜が絶縁破壊する場合があり、一方、上記セラミック誘電体膜の厚さが1500μmを超えると、シリコンウエハと静電電極との距離が遠くなるため、シリコンウエハを吸着する能力が低くなってしまうからである。セラミック誘電体膜の厚さは、5〜1500μmがより好ましい。
【0031】
セラミック基板内に形成される静電電極としては、例えば、金属または導電性セラミックの焼結体、金属箔等が挙げられる。金属焼結体としては、タングステン、モリブデンから選ばれる少なくとも1種からなるものが好ましい。金属箔も、金属焼結体と同じ材質からなることが望ましい。これらの金属は比較的酸化しにくく、電極として充分な導電性を有するからである。また、導電性セラミックとしては、タングステン、モリブデンの炭化物から選ばれる少なくとも1種を使用することができる。
【0032】
図4および図5は、他の静電チャックにおける静電電極を模式的に示した水平断面図であり、図4に示す静電チャック20では、セラミック基板1の内部に半円形状のチャック正極静電層22とチャック負極静電層23が形成されており、図5に示す静電チャックでは、セラミック基板1の内部に円を4分割した形状のチャック正極静電層32a、32bとチャック負極静電層33a、33bが形成されている。
【0033】
また、2枚の正極静電層22a、22bおよび2枚のチャック負極静電層33a、33bは、それぞれ交差するように形成されている。なお、円形等の電極が分割された形態の電極を形成する場合、その分割数は特に限定されず、5分割以上であってもよく、その形状も扇形に限定されない。
【0034】
抵抗発熱体は、図1に示したように、セラミック基板の内部に設けてもよく、セラミック基板の底面に設けてもよい。抵抗発熱体を設ける場合は、静電チャックを嵌め込む支持容器に、冷却手段としてエアー等の冷媒の吹きつけ口などを設けてもよい。
【0035】
抵抗発熱体としては、例えば、金属または導電性セラミックの焼結体、金属箔、金属線等が挙げられる。金属焼結体としては、タングステン、モリブデンから選ばれる少なくとも1種が好ましい。これらの金属は比較的酸化しにくく、発熱するに充分な抵抗値を有するからである。
【0036】
また、導電性セラミックとしては、タングステン、モリブデンの炭化物から選ばれる少なくとも1種を使用することができる。さらに、セラミック基板の底面に抵抗発熱体を形成する場合には、金属焼結体としては、貴金属(金、銀、パラジウム、白金)、ニッケルを使用することが望ましい。具体的には銀、銀-パラジウムなどを使用することができる。上記金属焼結体に使用される金属粒子は、球状、リン片状、もしくは球状とリン片状の混合物を使用することができる。
【0037】
金属焼結体中には、金属酸化物を添加してもよい。上記金属酸化物を使用するのは、セラミック基板と金属粒子を密着させるためである。上記金属酸化物により、セラミック基板と金属粒子との密着性が改善される理由は明確ではないが、金属粒子の表面はわずかに酸化膜が形成されており、セラミック基板は、酸化物の場合は勿論、非酸化物セラミックである場合にも、その表面には酸化膜が形成されている。従って、この酸化膜が金属酸化物を介してセラミック基板表面で焼結して一体化し、金属粒子とセラミック基板とが密着するのではないかと考えられる。
【0038】
上記金属酸化物としては、例えば、酸化鉛、酸化亜鉛、シリカ、酸化ホウ素(B2O3)、アルミナ、イットリア、チタニアから選ばれる少なくとも1種が好ましい。これらの酸化物は、抵抗発熱体の抵抗値を大きくすることなく、金属粒子とセラミック基板との密着性を改善できるからである。
【0039】
上記金属酸化物は、金属粒子100重量部に対して0.1重量部以上10重量部未満であることが望ましい。この範囲で金属酸化物を用いることにより、抵抗値が大きくなりすぎず、金属粒子とセラミック基板との密着性を改善することができるからである。
【0040】
また、酸化鉛、酸化亜鉛、シリカ、酸化ホウ素(B2O3)、アルミナ、イットリア、チタニアの割合は、金属酸化物の全量を100重量部とした場合に、酸化鉛が1〜10重量部、シリカが1〜30重量部、酸化ホウ素が5〜50重量部、酸化亜鉛が20〜70重量部、アルミナが1〜10重量部、イットリアが1〜50重量部、チタニアが1〜50主部が好ましい。但し、これらの合計が100重量部を超えない範囲で調整されることが望ましい。これらの範囲が特にセラミック基板との密着性を改善できる範囲だからである。
【0041】
抵抗発熱体をセラミック基板の底面に設ける場合は、抵抗発熱体の表面は、金属層で被覆されていることが望ましい。抵抗発熱体は、金属粒子の焼結体であり、露出していると酸化しやすく、この酸化により抵抗値が変化してしまう。そこで、表面を金属層で被覆することにより、酸化を防止することができるのである。
【0042】
金属層の厚さは、0.1〜10μmが望ましい。抵抗発熱体の抵抗値を変化させることなく、抵抗発熱体の酸化を防止することができる範囲だからである。被覆に使用される金属は、非酸化性の金属であればよい。具体的には、金、銀、パラジウム、白金、ニッケルから選ばれる少なくとも1種以上が好ましい。なかでもニッケルがさらに好ましい。抵抗発熱体には電源と接続するための端子が必要であり、この端子は、半田を介して抵抗発熱体に取り付けるが、ニッケルは半田の熱拡散を防止するからである。接続端子しては、コバール製の端子ピンを使用することができる。
【0043】
なお、抵抗発熱体をヒータ板内部に形成する場合は、抵抗発熱体表面が酸化されることがないため、被覆は不要である。抵抗発熱体をヒータ板内部に形成する場合、抵抗発熱体の表面の一部が露出していてもよい。
【0044】
抵抗発熱体として使用する金属箔としては、ニッケル箔、ステンレス箔をエッチング等でパターン形成して抵抗発熱体としたものが望ましい。パターン化した金属箔は、樹脂フィルム等ではり合わせてもよい。金属線としては、例えば、タングステン線、モリブデン線等が挙げられる。
【0045】
本発明の半導体製造・検査装置用セラミックヒータの表面および内部に導電体が配設され、上記内部の導電体が、ガード電極またはグランド電極のいずれか少なくとも一方である場合には、上記セラミック基板は、ウエハプローバとして機能する。
【0046】
図6は、本発明に係るウエハプローバを模式的に示した断面図であり、図7は、図6に示したウエハプローバにおけるA-A線断面図である。このウエハプローバ201では、平面視円形状のセラミック基板43の表面に平面視同心円形状の溝47が形成されるとともに、溝47の一部にシリコンウエハを吸引するための複数の吸引孔48が設けられており、溝47を含むセラミック基板43の大部分にシリコンウエハの電極と接続するためのチャックトップ導体層42が円形状に形成されている。
【0047】
一方、セラミック基板43の底面には、シリコンウエハの温度をコントロールするために、図3に示したような平面視同心円形状の発熱体49が設けられており、発熱体49の両端には、外部端子ピン(図示せず)が接続、固定されている。また、セラミック基板43の内部には、ストレイキャパシタやノイズを除去するために平面視格子形状のガード電極45とグランド電極46(図7参照)とが設けられている。ガード電極45とグランド電極46の材質は、静電電極と同様のものでよい。
【0048】
上記チャックトップ導体層42の厚さは、1〜20μmが望ましい。1μm未満では抵抗値が高くなりすぎて電極として働かず、一方、20μmを超えると導体の持つ応力によって剥離しやすくなってしまうからである。
【0049】
チャックトップ導体層42としては、例えば、銅、チタン、クロム、ニッケル、貴金属(金、銀、白金等)、タングステン、モリブデンなどの高融点金属から選ばれる少なくとも1種の金属を使用することができる。
【0050】
このような構成のウエハプローバでは、その上に集積回路が形成されたシリコンウエハを載置した後、このシリコンウエハにテスタピンを持つプローブカードを押しつけ、加熱、冷却しながら電圧を印加して導通テストを行うことができる。
【0051】
次に、本発明の半導体製造・検査装置用セラミックヒータの製造方法に関し、静電チャックの製造方法を一例として、図8に示した断面図に基づき説明する。
【0052】
(1)まず、窒化アルミニウム粉体、ホウ素化合物をバインダおよび溶剤と混合して混合組成物を調製した後、成形を行うことにより、グリーンシート50を作製する。カーボンを含有させる場合には、目的とする特性に応じて、上記結晶質カーボンまたは非晶質カーボンを使用し、その量を調節する。前記ホウ素化合物としては、窒化ホウ素、炭化ホウ素、ホウ酸などを使用することができる。また、窒化ホウ素板を焼結体に接触させて1500〜1900℃で加熱して熱拡散させる方法も採用できる。
【0053】
上述した窒化アルミニウム粉体には、前述したイットリアを含む焼結助剤などを加える。
【0054】
後述する静電電極層印刷体51が形成されたグリーンシートの上に積層する数枚または1枚のグリーンシート55は、セラミック誘電体膜となる層であるので、目的等により、その組成をセラミック基板と異なる組成としてもよい。また、まず先にセラミック基板を製造しておき、その上に静電電極層を形成し、さらにその上にセラミック誘電体膜を形成することもできる。
【0055】また、バインダとしては、アクリル系バインダ、エチルセルロース、ブチルセロソルブ、ポリビニルアルコールから選ばれる少なくとも1種が望ましい。さらに、溶媒としては、α-テルピネオール、グリコールから選ばれる少なくとも1種が望ましい。これらを混合して得られるペーストをドクターブレード法でシート状に成形してグリーンシート50を作製する。
【0056】
グリーンシート50に、必要に応じてシリコンウエハの支持ピンを挿入する貫通孔や熱電対を埋め込む凹部を設けておくことができる。貫通孔や凹部は、パンチングなどで形成することができる。グリーンシート50の厚さは、0.1〜5mm程度が好ましい。
【0057】
(2)次に、グリーンシート50に静電電極層や抵抗発熱体となる導体ペーストを印刷する。印刷は、グリーンシート50の収縮率を考慮して所望のアスペクト比が得られるように行い、これにより静電電極層印刷体51、抵抗発熱体層印刷体52を得る。印刷体は、導電性セラミック、金属粒子などを含む導電性ペーストを印刷することにより形成する。
【0058】
これらの導電性ペースト中に含まれる導電性セラミック粒子としては、タングステンまたはモリブデンの炭化物が最適である。酸化しにくく、熱伝導率が低下しにくいからである。また、金属粒子としては、例えば、タングステン、モリブデン、白金、ニッケルなどを使用することができる。
【0059】
導電性セラミック粒子、金属粒子の平均粒子径は0.1〜5μmが好ましい。これらの粒子は、大きすぎても小さすぎても導体用ペーストを印刷しにくいからである。
【0060】
このようなペーストとしては、金属粒子または導電性セラミック粒子85〜97重量部、アクリル系、エチルセルロース、ブチルセロソルブおよびポリビニルアルコールから選ばれる少なくとも1種のバインダ1.5〜10重量部、α-テルピネオール、グリコール、エチルアルコールおよびブタノールから選ばれる少なくとも1種の溶媒を1.5〜10重量部混合して調製した導体用ペーストが最適である。さらに、パンチング等で形成した孔に、導体用ペーストを充填してスルーホール印刷体53、54を得る。
【0061】
(3)次に、図8(a)に示すように、印刷体51、52、53、54を有するグリーンシート50と、印刷体を有さないグリーンシート50とを積層する。静電電極層印刷体51が形成されたグリーンシート上には、数枚または1枚のグリーンシート55を積層する。抵抗発熱体形成側に印刷体を有さないグリーンシート50を積層するのは、スルーホールの端面が露出して、抵抗発熱体形成の焼成の際に酸化してしまうことを防止するためである。もしスルーホールの端面が露出したまま、抵抗発熱体形成の焼成を行うのであれば、ニッケルなどの酸化しにくい金属をスパッタリングする必要があり、さらに好ましくは、Au-Niの金ろうで被覆してもよい。
【0062】
(4)次に、図8(b)に示すように、積層体の加熱および加圧を行い、グリーンシートおよび導電ペーストを焼結させる。加熱温度は、1000〜2000℃、加圧は100〜200kg/cm2が好ましく、これらの加熱および加圧は、不活性ガス雰囲気下で行う。不活性ガスとしては、アルゴン、窒素などを使用することができる。この工程で、スルーホール16、17、チャック正極静電層2、チャック負極静電層3、抵抗発熱体5等が形成される。
【0063】
(5)次に、図8(c)に示すように、外部端子接続のための袋孔13、14を設ける。袋孔13、14の内壁は、その少なくともその一部が導電化され、導電化された内壁は、チャック正極静電層2、チャック負極静電層3、抵抗発熱体5等と接続されていることが望ましい。
【0064】
(6)最後に、図8(d)に示すように、袋孔13、14に金ろうを介して外部端子6、18を設ける。さらに、必要に応じて、有底孔12を設け、その内部に熱電対を埋め込むことができる。
【0065】
半田は銀-鉛、鉛-スズ、ビスマス-スズなどの合金を使用することができる。なお、半田層の厚さは、0.1〜50μmが望ましい。半田による接続を確保するに充分な範囲だからである。
【0066】
なお、上記説明では静電チャック101(図1参照)を例にしたが、ウエハプローバを製造する場合には、例えば、静電チャックの場合と同様に、初めに抵抗発熱体が埋設されたセラミック基板を製造し、その後、セラミック基板の表面に溝を形成し、続いて、溝が形成された表面部分にスパッタリングおよびめっき等を施して、金属層を形成すればよい。
【0067】
以上、本発明の半導体製造・検査装置用セラミックヒータは、半導体製造・検査用のホットプレート(ヒータ)、ヒータ機能を有する静電チャック、ウエハプローバ、サセプターなどに応用できる。以下、実施例に則して説明するが、実施例に拘泥されないことは言うまでもない。
【0068】
【実施例】
(実施例1)
(1)窒化アルミニウム粉末(平均粒径:1.1μm トクヤマ製)1000重量部、イットリア(平均粒径:0.4μm)をそれぞれ10重量部、20重量部、30重量部、40重量部、40重量部、40重量部、SiO2をそれぞれ4.8×10-3重量部、0.012重量部、0.027重量部、0.037重量部、0.050重量部、0.074重量部、アクリルバインダ120重量部およびアルコールからなる組成物のスプレードライを行い、7種類の顆粒状の粉末を作製した。
【0069】
(2)次に、この顆粒状の粉末を金型に入れ、平板状に成形して生成形体(グリーン)を得た。この生成形体にドリル加工を施し、半導体ウエハの支持ピンを挿入する貫通孔95となる部分、熱電対を埋め込むための有底孔となる部分(直径:1.1mm、深さ:2mm)94を形成した。
【0070】
(3)加工処理の終った生成形体を1800℃、圧力:200kg/cm2でホットプレスし、厚さが5mmの窒化アルミニウム板状体を得た。次に、この板状体から直径210mmの円板体を切り出し、セラミック製の板状体(ヒータ板)91とした。
【0071】
(4)上記(3)で得たヒータ板に、スクリーン印刷にて導体ペーストを印刷した。印刷パターンは、同心円状のパターンとした。導体ペーストとしては、プリント配線板のスルーホール形成に使用されている徳力化学研究所製のソルベストPS603Dを使用した。この導体ペーストは、銀-鉛ペーストであり、銀100重量部に対して、酸化鉛(5重量%)、酸化亜鉛(55重量%)、シリカ(10重量%)、酸化ホウ素(25重量%)およびアルミナ(5重量%)からなる金属酸化物を7.5重量部含むものであった。また、銀粒子は、平均粒径が4.5μmで、リン片状のものであった。
【0072】
(5)次に、導体ペーストを印刷したヒータ板を780℃で加熱、焼成して、導体ペースト中の銀、鉛を焼結させるとともにヒータ板11に焼き付け、発熱体12を形成した。銀-鉛の発熱体は、厚さが5μm、幅2.4mm、面積抵抗率が7.7mΩ/□であった。
【0073】
(6)硫酸ニッケル80g/l、次亜リン酸ナトリウム24g/l、酢酸ナトリウム12g/l、ほう酸8g/l、塩化アンモニウム6g/lの濃度の水溶液からなる無電解ニッケルめっき浴に上記(5)で作製したヒータ板11を浸漬し、銀-鉛の発熱体12の表面に厚さ1μmの金属被覆層(ニッケル層)92aを析出させた。
【0074】
(7)電源との接続を確保するための端子を取り付ける部分に、スクリーン印刷により、Ni-Auろう剤を印刷して形成した。ついで、この上にコバール製の外部端子93を載置し、温度制御のための熱電対を挿入後、81.7Au-18.3Niの金ローで接続し、(1030℃で加熱して融着)、図9のセラミックヒータを得た。
【0075】
(比較例1)基本的には実施例1と同様であるが、表1に示すように、イットリア量とSi量を調整した。この実施例1と比較例のヒータを600℃まで昇温し、昇温時間、ヤング率、そり量を測定した。また、酸素含有量、Si含有量も測定した。結果を表1に示す。
(比較例2)基本的には実施例1(イットリア4重量部 Si11重量部)と同様であるが、厚さを30mmとした。後述の方法で反りを測定したところ1μmであった。
(比較例3)基本的には実施例1(イットリア4重量部 Si11重量部)と同様であるが、直径を150mmとした。後述の方法で反りを測定したところ1μmであった。
【0076】
評価方法1.酸素含有量実施例にかかる焼結体と同条件で焼結させた試料をタングステン乳鉢で粉砕し、これの0.01gを採取して試料加熱温度2200℃、加熱時間30秒の条件で酸素・窒化同時分析装置(LECO社製 TC-136型)で測定した。
【0077】
2.Si含有量の測定は、グロー放電-マススペクトル法(GD-MS法)を使用した。なお、分析は米国の「SHIVA TECHNOLOGIES,INC」(電話:315-699-5332、FAX:315-699-0349)に依頼した。
【0078】
3.ヤング率曲げ共振法ヤング率測定装置を使用した。試験片は、長さ100mm、幅20mm、厚さ2mmの形状に切り出したものを使用した。
【0079】
具体的な測定方法は、以下のとおりである。即ち、試験片の両端から0.224L近傍を支点とし、アルミナ繊維を用いて電気炉中に試験片を吊り下げ、共振点の測定は、測定温度に達した辞典より10分間温度を保持してから開始した。曲げの一次共振点の探索は、まず、簡易発振器の周波数を手動で走査し、オシロスコープ管面上のリサージュ図形の変化から周波数の一次測定を行い、ついでファンクションジョエネレータの出力周波数を計算機より制御して二次測定を行って、共振周波数を求めた。以上により得た一次曲げモードの共振周波数から、以下の式(1)を用いてヤング率を測定した。
【0080】
E=0.9465×((m・f2)/w)×(L/t)3×(1+6.59×(t/L)2)・・・(1)
【0081】
但し、E:ヤング率(Pa)、f:共振周波数(Hz)、L:試験片の長さ(m)、w:試験片の幅、t:試験片の厚さ(m)、m:試験片の質量(kg)である。
【0082】
4.そり量400℃まで昇温して10分間保持し、150kg/cm2の圧力をかけた後、形状測定機(京セラ製 ナノウエイ)により反り量を測定した。
【0083】
【表1】

【0084】
表1からSi量が多すぎても少なすぎても反り量が大きくなることが判る。Si量が少なすぎると高温でのヤング率低下を抑制する効果がなく、逆に多すぎると粒界に酸化物を形成してこれがヤング率を低下させるものと推定される。
【0085】
また、酸素量が多すぎても少なすぎても高温でのヤング率低下を抑制する効果がなく、また昇温時間が長くなり、半導体ウエハを製造するためのスループットに時間がかかる。また、本発明は、直径が200mm以上、厚さが25mm以下のセラミック基板において主として発生する問題を解決できる。
【0086】
(実施例2)静電チャック(図1〜3)の製造(1)次に、窒化アルミニウム粉末(トクヤマ社製、平均粒径1.1μm)1000重量部、イットリア(平均粒径:0.4μm)40重量部、SiO20.027重量部、アクリルバインダ115重量部、分散剤5重量部、アクリル系バインダ0.9重量部および1-ブタノールとエタノールとからなるアルコール530重量部を混合したペーストを用い、ドクターブレード法による成形を行って、厚さ0.47mmのグリーンシート50を得た。
【0087】
(2)次に、これらのグリーンシート50を80℃で5時間乾燥させた後、加工が必要なグリーンシートに対し、パンチングにより直径1.8mm、3.0mm、5.0mmの半導体ウエハ支持ピンを挿入する貫通孔となる部分、外部端子と接続するためのスルーホールとなる部分を設けた。
【0088】
(3)平均粒子径1μmのタングステンカーバイト粒子100重量部、アクリル系バインダ3.0重量部、α-テルピネオール溶媒3.5重量部および分散剤0.3重量部を混合して導体ペーストAを調製した。平均粒子径3μmのタングステン粒子100重量部、アクリル系バインダ1.9重量部、α-テルピネオール溶媒3.7重量部および分散剤0.2重量部を混合して導体ペーストBを調製した。この導電性ペーストAをグリーンシート50にスクリーン印刷で印刷し、導体ペースト層を形成した。印刷パターンは、同心円パターンとした。また、他のグリーンシート50に図2に示した形状の静電電極パターンからなる導体ペースト層を形成した。
【0089】
(4)さらに、外部端子を接続するためのスルーホール用の貫通孔に導体ペーストBを充填した。抵抗発熱体のパターンが形成されたグリーンシート50に、さらに、タングステンペーストを印刷しないグリーンシート50′を上側(加熱面)に34枚、下側に13枚積層し、その上に静電電極パターンからなる導体ペースト層を印刷したグリーンシート50を積層し、さらにその上にタングステンペーストを印刷していないグリーンシート50′を2枚積層し、これらを130℃、80kg/cm2の圧力で圧着して積層体を形成した(図8(a))。
【0090】
(5)次に、得られた積層体を窒素ガス中、600℃で5時間脱脂し、1890℃、圧力150kg/cm2で3時間ホットプレスし、厚さ3mmの窒化アルミニウム板状体を得た。これを直径300mmの円板状に切り出し、内部に厚さ6μm、幅10mmの抵抗発熱体5および厚さ10μmのチャック正極静電層2、チャック負極静電層3を有する窒化アルミニウム製の板状体とした(図8(b))。
【0091】
(6)次に、(3)で得られた板状体を、ダイヤモンド砥石で研磨した後、マスクを載置し、SiC等によるブラスト処理で表面に熱電対のための有底孔(直径:1.20m、深さ:2.0mm)を設けた。
【0092】
(7)さらに、スルーホールが形成されている部分をえぐり取って袋孔13、14とし(図8(c))、この袋孔13、14にNi-Auからなる金ろうを用い、700℃で加熱リフローしてコバール製の外部端子6、18を接続させた(図8(d))。
【0093】
なお、外部端子の接続は、タングステンの支持体が3点で支持する構造が望ましい。接続信頼性を確保することができるからである。
【0094】
(8)次に、温度制御のための複数の熱電対を有底孔に埋め込み、抵抗発熱体を有する静電チャックの製造を完了した。400℃に上げて動作させたが、反りも1μm程度であり、また400℃までの昇温時間も50秒であった。
【0095】
(実施例3)ウエハプローバ201(図6参照)の製造(1)窒化アルミニウム粉末(トクヤマ社製、平均粒径1.1μm)1000重量部、イットリア(平均粒径0.4μm)40重量部および、SiO20.027重量部、1-ブタノールおよびエタノールからなるアルコール530重量部を混合して得た混合組成物を、ドクターブレード法を用いて成形し、厚さ0.47mmのグリーンシートを得た。
【0096】
(2)次に、このグリーンシートを80℃で5時間乾燥させた後、パンチングにて発熱体と外部端子ピンと接続するためのスルーホール用の貫通孔を設けた。
【0097】
(3)平均粒子径1μmのタングステンカーバイド粒子100重量部、アクリル系バインダ3.0重量部、α-テルピネオール溶媒3.5重量および分散剤0.3重量部を混合して導電性ペーストAとした。また、平均粒子径3μmのタングステン粒子100重量部、アクリル系バインダ1.9重量部、α-テルピネオール溶媒を3.7重量部、分散剤0.2重量部を混合して導電性ペーストBとした。
【0098】
次に、グリーンシートに、この導電性ペーストAを用いたスクリーン印刷で、格子状のガード電極用印刷体、グランド電極用印刷体を印刷した。また、端子ピンと接続するためのスルーホール用の貫通孔に導電性ペーストBを充填した。
【0099】
さらに、印刷されたグリーンシートおよび印刷がされていないグリーンシートを50枚積層して130℃、80kg/cm2の圧力で一体化することにより積層体を作製した。
【0100】
(4)次に、この積層体を窒素ガス中で600℃で5時間脱脂し、1890℃、圧力150kg/cm2で3時間ホットプレスし、厚さ3mmの窒化アルミニウム板状体を得た。得られた板状体を、直径300mmの円形状に切り出してセラミック製の板状体とした。スルーホール16の大きさは、直径0.2mm、深さ0.2mmであった。
【0101】
また、ガード電極45、グランド電極46の厚さは10μm、ガード電極45の形成位置は、ウエハ載置面から1mm、グランド電極46の形成位置は、ウエハ載置面から1.2mmであった。また、ガード電極45およびグランド電極46の導体非形成領域46aの1辺の大きさは、0.5mmであった。
【0102】
(5)上記(4)で得た板状体を、ダイアモンド砥石で研磨した後、マスクを載置し、SiC等によるブラスト処理で表面に熱電対のための凹部およびウエハ吸着用の溝47(幅0.5mm、深さ0.5mm)を設けた。
【0103】
(6)さらに、ウエハ載置面に対向する面に発熱体49を形成するための層を印刷した。印刷は導電ペーストを用いた。導電ペーストは、プリント配線板のスルーホール形成に使用されている徳力化学研究所製のソルベストPS603Dを使用した。この導電ペーストは、銀/鉛ペーストであり、酸化鉛、酸化亜鉛、シリカ、酸化ホウ素、アルミナからなる金属酸化物(それぞれの重量比率は、5/55/10/25/5)を銀100重量部に対して7.5重量部含むものであった。また、銀の形状は平均粒径4.5μmでリン片状のものであった。
【0104】
(7)導電ペーストを印刷したヒータ板を780℃で加熱焼成して、導電ペースト中の銀、鉛を焼結させるとともにセラミック基板43に焼き付けた。さらに硫酸ニッケル30g/l、ほう酸30g/l、塩化アンモニウム30g/lおよびロッシェル塩60g/lを含む水溶液からなる無電解ニッケルめっき浴にヒータ板を浸漬して、銀の焼結体49の表面に厚さ1μm、ホウ素の含有量が1重量%以下のニッケル層(図示せず)を析出させた。この後、ヒータ板は、120℃で3時間アニーリング処理を施した。銀の焼結体からなる発熱体は、厚さが5μm、幅2.4mmであり、面積抵抗率が7.7mΩ/□であった。
【0105】
(8)溝47が形成された面に、スパッタリング法により、順次、チタン層、モリブデン層、ニッケル層を形成した。スパッタリングのための装置は、日本真空技術株式会社製のSV-4540を使用した。スパッタリングの条件は気圧0.6Pa、温度100℃、電力200Wであり、スパッタリング時間は、30秒から1分の範囲内で、各金属によって調整した。得られた膜の厚さは、蛍光X線分析計の画像から、チタン層は0.3μm、モリブデン層は2μm、ニッケル層は1μmであった。
【0106】
(9)硫酸ニッケル30g/l、ほう酸30g/l、塩化アンモニウム30g/lおよびロッシェル塩60g/lを含む水溶液からなる無電解ニッケルめっき浴に、上記(8)で得られたセラミック板を浸漬し、スパッタリングにより形成された金属層の表面に厚さ7μm、ホウ素の含有量が1重量%以下のニッケル層を析出させ、120℃で3時間アニーリングした。発熱体表面は、電流を流さず、電解ニッケルめっきで被覆されない。
【0107】
さらに、表面にシアン化金カリウム2g/l、塩化アンモニウム75g/l、クエン酸ナトリウム50g/lおよび次亜リン酸ナトリウム10g/lを含む無電解金めっき液に、93℃の条件で1分間浸漬し、ニッケルめっき層上に厚さ1μmの金めっき層を形成した。
【0108】
(10)溝47から裏面に抜ける空気吸引孔48をドリル加工により形成し、さらにスルーホール16を露出させるための袋孔(図示せず)を設けた。この袋孔にNi-Au合金(Au81.5重量%、Ni18.4重量%、不純物0.1重量%)からなる金ろうを用い、970℃で加熱リフローしてコバール製の外部端子ピンを接続させた。また、発熱体に半田(スズ90重量%/鉛10重量%)を介してコバール製の外部端子ピンを形成した。
【0109】
(11)次に、温度制御のための複数熱電対を凹部に埋め込み、ウエハプローバヒータ201を得た。
【0110】
セラミック基板の温度を200℃に上げたが、反りは1μm程度であり、さらに、昇温時間も30秒と非常に短くなる。
【0111】
【発明の効果】
以上説明のように、本発明の半導体製造・検査装置用セラミックヒータでは、上記Siによって熱伝導率を低下させず(即ち、昇温降温性能を低下させず)、高温でのヤング率の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明の半導体製造・検査装置用セラミックヒータの一実施形態である静電チャックを模式的に示す縦断面図である。
【図2】
図1に示した静電チャックのA-A線断面図である。
【図3】
図1に示した静電チャックのB-B線断面図である。
【図4】
静電チャックの静電電極の一例を模式的に示す断面図である。
【図5】
静電チャックの静電電極の一例を模式的に示す断面図である。
【図6】
本発明に係るウエハプローバを模式的に示す断面図である。
【図7】
図6に示したウエハプローバにおけるA-A線断面図である。
【図8】
(a)〜(d)は、静電チャックの製造工程の一部を模式的に示す断面図である。
【図9】
本発明の半導体製造・検査装置用セラミックヒータの断面図である。
【符号の説明】
101 静電チャック
1、43 セラミック基板
2、22、32a、32b チャック正極静電層
3、23、33a、33b チャック負極静電層
2a、3a 半円弧状部
2b、3b 櫛歯部
4 セラミック誘電体膜
5、49 抵抗発熱体
6、18 外部端子ピン
9 90 シリコンウエハ
11 有底孔
12 貫通孔
16 スルーホール
42 チャックトップ導体層
45 ガード電極
46 グランド電極
47 溝
48 吸引孔
91 セラミック基板
92 発熱体
93 端子
92a 金属被覆層
96 支持ピン
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2003-09-18 
出願番号 特願2000-17857(P2000-17857)
審決分類 P 1 651・ 161- YA (H05B)
P 1 651・ 113- YA (H05B)
P 1 651・ 121- YA (H05B)
P 1 651・ 531- YA (H05B)
P 1 651・ 532- YA (H05B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 三崎 仁  
特許庁審判長 石井 良夫
特許庁審判官 岡田 和加子
金 公彦
登録日 2001-09-07 
登録番号 特許第3228924号(P3228924)
権利者 イビデン株式会社
発明の名称 半導体製造・検査装置用セラミックヒータ  
代理人 安富 康男  
代理人 安富 康男  

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