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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 B09B 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 B09B |
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管理番号 | 1088025 |
異議申立番号 | 異議2002-72579 |
総通号数 | 49 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1999-03-02 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2002-10-22 |
確定日 | 2003-09-25 |
異議申立件数 | 2 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第3276138号「有機性廃棄物の処理法」の請求項1ないし3に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第3276138号の請求項1ないし3に係る特許を維持する。 |
理由 |
1.訂正の適否についての判断 1-1訂正の内容 別紙「訂正の内容」参照。 1-2(訂正の適否) 上記訂正事項aについては、特許明細書の特許請求の範囲に記載された請求項1に、請求項2の構成である「酸発酵工程の可溶化液は固液分離して分離液を生物学的脱窒工程に注入する」を付加すると共に、「固液分離した分離汚泥を酸発酵工程に返送する」を加えて訂正後の請求項1とし、また、請求項2及び3の構成である「酸発酵工程の可溶化液は、固液分離して分離液を生物学的脱窒工程に注入する」と「消化工程からの流出液は、固液分離して分離液を生物学的脱窒工程で処理する」を付加して、訂正後の請求項3とすると共に、特許明細書に記載された請求項3を訂正後の請求項2とし、構成要件をより下位の概念に限定して減縮しようとするものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 以上のとおりであるから、訂正事項aは、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書及び第2項の規定に適合するので、当該訂正を認める。 また、その他の訂正事項bについても特許法第126条第1項ただし書及び第2項の規定に適合するので、当該訂正を認める。 2.特許異議申立について 2-1本件発明 上記のとおり、訂正は認められるから、本件特許の発明(請求項1〜3)は、訂正された特許明細書に記載された次のとおりのものである。 【請求項1】有機性廃棄物を酸発酵工程で可溶化したのちに嫌気性消化工程で嫌気性消化し、該消化工程からの流出液を生物学的脱窒工程で処理する有機性廃棄物の処理法において、前記酸発酵工程の可溶化液の一部を固液分離し、分離液を生物学的脱窒工程に注入して消化工程流出液と共に脱窒処理すると共に、前記固液分離した分離汚泥を酸発酵工程に返送することを特徴とする有機性廃棄物の処理法。 【請求項2】前記嫌気性消化工程からの流出液は、固液分離して分離液を生物学的脱窒工程で処理することを特徴とする請求項1記載の有機性廃棄物の処理法。 【請求項3】有機性廃棄物を酸発酵工程で可溶化したのちに嫌気性消化工程て嫌気性消化し、該消化工程からの流出液を固液分離して分離液を生物学的脱窒工程で処理する有機性廃棄物の処理法において、前記酸発酵工程の可溶化液の一部を、前記消化工程からの流出液と共に固液分離し、分離液を生物学的脱窒工程に注入して脱窒処理することを特徴とする有機性廃棄物の処理法。 2-2取消理由の概要 取消理由の概要は、請求項1〜3に係る発明(以下、本件特許発明という。)は刊行物1または3に記載された発明と同一であるか、または、刊行物1〜3に記載された発明から当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第1項第3号または第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。 2-2-1取消理由通知で引用された刊行物に記載された発明 刊行物1(特開昭59-112898号公報):「有機性汚泥を酸発酵処理し、さらにメタン発酵処理を施した後、該消化汚泥を生物学的硝化脱窒素処理し、脱水処理する方法において、前記酸発酵処理後の汚泥の一部または前記有機性汚泥の一部を前記生物学的硝化脱窒素処理工程の脱窒素工程に混入させることを特徴とする有機性汚泥の処理方法」(特許請求の範囲) 刊行物2(特開平8-24891号公報):「【請求項1】(1)生ゴミを粉砕すると共に生ゴミ水スラリーとする生ゴミ粉砕・スラリー工程、(2)該生ゴミ水スラリーを濃縮するスラリー濃縮工程、(3)濃縮された生ゴミ水スラリーを嫌気的生物処理して可溶化する嫌気的生物処理工程、及び、(4)嫌気的生物処理工程からの液分を好気生物処理する好気生物処理工程からなる生ゴミの生物処理方法。」、 「【請求項7】前記嫌気的生物処理工程が嫌気的生物処理と固液分離処理とからなる請求項1〜6いずれか記載の生ゴミの生物処理方法。」 刊行物3(「EXPEPRIENCES GAINED IN THE OPERATION OF ANAEROBIC TREATMENT PLANTS IN GERMANY」、Water Science and Technology,1994年、第30巻、第9号、p.415〜424):脱窒タンクにおいて窒素除去のために十分な有機炭素源が不足する場合に、酸発酵槽の処理液をバイパスして脱窒タンクへ直接導入することが記載(第422頁)されている。 しかし、これら刊行物には、訂正後の請求項1及び2に係る本件発明の構成である「酸発酵工程の可溶化液の一部を固液分離して、分離液を脱窒工程に注入し、分離汚泥を酸発酵工程に返送すること」、及び請求項3に係る本件発明の構成である「酸発酵工程の可溶化液の一部を、消化工程からの流出液と共に固液分離し、分離液を生物学的脱窒工程に注入して脱窒処理すること」については何らの記載がない。 なお、当審の審尋に対し、特許異議申立人伊藤豪からは何ら応答がなく、また、浅野一良からは、刊行物2,3を理由に回答されているが、刊行物2には、酸発酵工程がなく、刊行物3には、固液分離工程がないことから、浅野一良の主張は採用することができない。 したがって、本件発明は、刊行物1または3に記載された発明と同一でないばかりか、刊行物1〜3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。 3.結論 以上のとおり、本件請求項1〜3に係る発明の特許は、特許異議申立の理由によっては、取り消すことができない。 また、他に本件発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。 したがって、本件発明についての特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認めない。 よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。 |
別掲 |
a 特許第3276138号発明の明細書中の特許請求の範囲の 「【請求項1】有機性廃棄物を酸発酵工程で可溶化したのちに嫌気性消化工程で嫌気性消化し、該消化工程からの流出液を生物学的脱窒工程で処理する有機性廃棄物の処理法において、前記酸発酵工程の可溶化液の一部を生物学的脱窒工程に注入して消化工程流出液と共に脱窒処理することを特徴とする有機性廃棄物の処理法。 【請求項2】前記酸発酵工程の可溶化液は、固液分離して分離液を生物学的脱窒工程に注入することを特徴とする請求項1記載の有機性廃棄物の処理法。 【請求項3】前記嫌気性消化工程からの流出液は、固液分離して分離液を生物学的脱窒工程で処理することを特徴とする請求項1又は2記載の有機性廃棄物の処理法。」 を、 「【請求項1】有機性廃棄物を酸発酵工程で可溶化したのちに嫌気性消化工程で嫌気性消化し、該消化工程からの流出液を生物学的脱窒工程で処理する有機性廃棄物の処理法において、前記酸発酵工程の可溶化液の一部を固液分離し、分離液を生物学的脱窒工程に注入して消化工程流出液と共に脱窒処理すると共に、前記固液分離した分離汚泥を酸発酵工程に返送することを特徴とする有機性廃棄物の処理法。 【請求項2】前記嫌気性消化工程からの流出液は、固液分離して分離液を生物学的脱窒工程で処理することを特徴とする請求項1記載の有機性廃棄物の処理法。 【請求項3】有機性廃棄物を酸発酵工程で可溶化したのちに嫌気性消化工程て嫌気性消化し、該消化工程からの流出液を固液分離して分離液を生物学的脱窒工程で処理する有機性廃棄物の処理法において、前記酸発酵工程の可溶化液の一部を、前記消化工程からの流出液と共に固液分離し、分離液を生物学的脱窒工程に注入して脱窒処理することを特徴とする有機性廃棄物の処理法。」 と訂正する。 b特許第3276138号発明の明細書中の段落番号【0005】の 「【0005】 【課題を解決するための手段】 上記課題を解決するために、本発明では、有機性廃棄物を酸発酵工程 で可溶化したのちに嫌気性消化工程で嫌気性消化し、該消化工程からの 流出液を生物学的脱窒工程で処理する有機性廃棄物の処理法において、 前記酸発酵工程の可溶化液の一部を生物学的脱窒工程に注入して消化工 程流出液と共に脱窒処理することとしたものである。 前記有機性廃棄物の処理法において、酸発酵工程の可溶化液は、固液 分離して分離液を生物学的脱窒工程に注入するのがよく、また、前記嫌 気性消化工程からの流出液も、固液分離して分離液を生物学的脱窒工程 で処理するのがよい。」 を、 「【0005】 【課題を解決するための手段】 上記課題を解決するために、本発明では、有機性廃棄物を酸発酵工程 で可溶化したのちに嫌気性消化工程で嫌気性消化し、該消化工程からの 流出液を生物学的脱窒工程で処理する有機性廃棄物の処理法において、 前記酸発酵工程の可溶化液の一部を固液分離し、分離液を生物学的脱窒 工程に注入して消化工程流出液と共に脱窒処理すると共に、前記固液分 離した分離汚泥を酸発酵工程に返送することとしたものである。 前記有機性廃棄物の処理法において、前記嫌気性消化工程からの流出 液は、固液分離して分離液を生物学的脱窒工程で処理するのがよい。 また、本発明では、有機性廃棄物を酸発酵工程で可溶化したのちに嫌 気性消化工程で嫌気性消化し、該消化工程からの流出液を固液分離して 分離液を生物学的脱窒工程で処理する有機性廃棄物の処理法において、 前記酸発酵工程の可溶化液の一部を、前記消化工程からの流出液と共に 固液分離し、分離液を生物学的脱窒工程に注入して脱窒処理することを 特徴とする有機性廃棄物の処理法としたものである。」 と訂正する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 有機性廃棄物の処理法 (57)【特許請求の範囲】 「【請求項1】 有機性廃棄物を酸発酵工程で可溶化したのちに嫌気性消化工程で嫌気性消化し、該消化工程からの流出液を生物学的脱窒工程で処理する有機性廃棄物の処理法において、前記酸発酵工程の可溶化液の一部を固液分離し、分離液を生物学的脱窒工程に注入して消化工程流出液と共に脱窒処理すると共に、前記固液分離した分離汚泥を酸発酵工程に返送することを特徴とする有機性廃棄物の処理法。 【請求項2】 前記嫌気性消化工程からの流出液は、固液分離して分離液を生物学的脱窒工程で処理することを特徴とする請求項1記載の有機性廃棄物の処理法。 【請求項3】 有機性廃棄物を酸発酵工程で可溶化したのちに嫌気性消化工程で嫌気性消化し、該消化工程からの流出液を固液分離して分離液を生物学的脱窒工程で処理する有機性廃棄物の処理法において、前記酸発酵工程の可溶化液の一部を、前記消化工程からの流出液と共に固液分離し、分離液を生物学的脱窒工程に注入して脱窒処理することを特徴とする有機性廃棄物の処理法。」 【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、有機性廃棄物の処理法に係り、特に、生ごみ等の有機性廃棄物の嫌気性消化処理、消化脱離液の生物学的脱窒処理する処理法に関する。 【0002】 【従来の技術】 従来、生ごみ等の有機物は、ほとんどが他の一般ごみと共に焼却、埋立処分されている。しかし、近年、ごみの減量化、再資源化のため、一部では、家庭向けコンポスターの普及促進、厨芥の分別収集、コンポスト化等の努力が行われている。 また、廃水中の窒素は、閉鎖系水域の富栄養化の原因物質として問題になっているため、一部の廃水では生物学的脱窒法によって処理されている。 一般ごみの焼却処理において、生ごみは発熱量変動の原因となり、また、生ごみ中の塩素によるダイオキシン発生も懸念されている。更に、生ごみの処理技術の一つに嫌気性消化法があり、日本でも生ごみの嫌気性消化処理の研究開発は古くから行われているが、比較的高濃度の廃水である嫌気性消化脱離液の処理に問題があるため、実用化には至っていない。 【0003】 廃水中の窒素は、放流先の水系の富栄養化の原因物質として、その除去が強く要望されているが、嫌気性消化処理は窒素除去機能を有しない。現在、廃水の窒素除去はほとんど全て生物学的脱窒処理が行われている。この処理で最も普及率が高い方法は硝化液循環方式である。この方式は、アンモニアが硝化されて生成した硝酸を廃水中のBOD成分(有機性汚染物質)を利用して脱窒ができるため、脱窒のための有価の還元剤の注入量が極めて少ないため経済的であり、またBOD成分も脱窒に際して同時に処理できるという特長がある。 しかしながら、嫌気性消化処理は、BOD成分をガス処理するため、生ごみの消化脱離液中に残存するBOD量は、脱窒に不足となり、経済的に脱窒処理することができないという問題点があった。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】 本発明は、上記従来技術に鑑み、有機性廃棄物の嫌気性消化液を、安価に、効率良く脱窒処理することができる有機性廃棄物の処理法を提供することを課題とする。 「【0005】 【課題を解決するための手段】 上記課題を解決するために、本発明では、有機性廃棄物を酸発酵工程で可溶化したのちに嫌気性消化工程で嫌気性消化し、該消化工程からの流出液を生物学的脱窒工程で処理する有機性廃棄物の処理法において、前記酸発酵工程の可溶化液の一部を固液分離し、分離液を生物学的脱窒工程に注入して消化工程流出液と共に脱窒処理すると共に、前記固液分離した分離汚泥を酸発酵工程に返送することとしたものである。 前記有機性廃棄物の処理法において、前記嫌気性消化工程からの流出液は、固液分離して分離液を生物学的脱窒工程で処理するのがよい。 また、本発明では、有機性廃棄物を酸発酵工程で可溶化したのちに嫌気性消化工程で嫌気性消化し、該消化工程からの流出液を固液分離して分離液を生物学的脱窒工程で処理する有機性廃棄物の処理法において、前記酸発酵工程の可溶化液の一部を、前記消化工程からの流出液と共に固液分離し、分離液を生物学的脱窒工程に注入して脱窒処理することを特徴とする有機性廃棄物の処理法としたものである。」 【0006】 【発明の実施の形態】 次に、本発明を図面を用いて詳細に説明する。 図1は、本発明の処理法を実施するための全体工程図である。 図1において、有機性廃棄物である生ごみ1は前処理工程2で破砕、選別され、選別生ごみ3は嫌気性条件下にある酸発酵槽4に導入され、希釈水20の注入によって通常攪拌が容易なSS(浮遊固形物)濃度10〜15%に調整され、酸発酵が進行したのちに嫌気性消化槽5に導入される。酸発酵槽の攪拌機が高濃度対応のものであれば、SS濃度は必ずしも15%以下にする必要はない。酸発酵槽4では、生分解性有機物が嫌気分解してメタン発酵が容易な有機酸を蓄積してpHが低下するので、酸発酵槽は耐食性の材料で建設しなければならない。酸発酵槽4流出液は嫌気性消化槽5に導入され、流入液中の有機物は嫌気的条件下でバイオガス6に分解される。バイオガス6は脱硫装置7を経由してガスタンク8に貯留され、用途に応じて利用される。図示していないが、消化槽5は機械攪拌あるいはガス攪拌が行われる。 【0007】 消化脱離液(消化槽流出液)9は、汚泥脱水工程10に導入され、脱水汚泥11と脱水分離水12に分離され、分離水12は生物学的処理装置である脱窒工程13に流入し、脱窒素処理される。 酸発酵槽4の液の一部14は、消化槽5を経由せず直接脱窒工程13に導入される。液14の有機酸を主成分とするBOD源は硝酸の還元剤となる。なお、有機酸は脱窒(硝酸の生物学的分解)の極めて優れた還元剤である。液14にSSが多い場合には、脱窒工程13の余剰汚泥15の量を増加せしめることになるので、これを防止するため遠心分離機、膜分離装置等の固液分離装置16でSSを分離し、分離液17を脱窒工程13に導入し、分離汚泥18は酸発酵槽4に返送すればよい。余剰汚泥15は嫌気性消化槽5に導入することによって、減容、ガス化することができる。 【0008】 脱窒工程への酸発酵液注入量は、おおよそ次式に基づいて設定すればよい。 Q=3Q′・N′(X-3N)-1 Q :酸発酵液注入量(m3/日)、 X :酸発酵液BOD濃度(mg/リットル)、 N :酸発酵液窒素濃度(mg/リットル)、 Q′:分離水量(m3/日)、 N′:分離水窒素濃度(mg/リットル) 脱窒素工程13は、有機性廃水中のBOD成分を脱窒の還元剤として利用できる経済的な硝化液循環方式、あるいは回分式等の公知の生物学的脱窒法を利用することができる。 【0009】 脱水分離水12、脱窒処理水19は、酸発酵槽4の希釈水20として利用することができる。 有機性廃棄物としては、一般家庭、給食センター、レストラン等からの生ごみの他、食品加工工場からの廃棄物(おから、ジュースかす、ビールかす、焼酎粕等)、賞味期限切れ食品、流通過程における腐敗食品等、余剰コンポスト、使用済キノコ培養床、農畜産廃棄物等の基本的に微生物によって分解可能なものはすべて対象となる。固体状でもスラリー状、更に懸濁液等の液状でもかまわない。有機性廃棄物である生ごみ1は、一般家庭、給食センター、レストラン、食品加工工場等から排出されるものが対象となる。一般家庭からのものは分別収集された生ごみが望ましい。前処理工程2は非生物分解性のプラスチック、金属等を除去する工程であり、ごみ袋の破袋機、軟質、硬質プラスチック分離機、鉄類の磁選機等の機械による異物の自動分離の他、必要に応じて手選別が行われる。生ごみは、選別前あるいは選別後に分解が容易になるように破砕、粉砕することが望ましい。 【0010】 酸発酵槽4に導入された厨芥は、含水率が70〜80%程度あり、嫌気性消化に必要な流動性がないので、本槽4に希釈水20を注入して、SS濃度を10〜15%(含水率85〜90%)に調整すると共に、蒸気等を注入して水温を50〜55℃で1〜2日滞留せしめる。これによって、微生物学的な酸発酵が進行してSSが可溶化するため、嫌気性消化によるガス化が容易になる。本槽4は、緩やかな機械攪拌によって酸発酵が円滑に進み、また比較的比重の大きい異物は底部に沈積するので、定期的に排出するとよい。また、希釈及び固形物の可溶化によって、固形物に付着していた微細な砂等の沈降分離も容易となる。 嫌気性消化槽5への流入液は、水温55℃程度、滞留日数10〜15日で有機物がガス化する。 【0011】 脱水工程10において、含水率の低い脱水汚泥11を得るためには、汚泥脱水用ポリマーをSSの1.0%程度注入し、従来の脱水装置である遠心脱水機、ベルトプレス、スクリュープレス、フィルタープレス等の脱水機によって含水率80数%以下、好ましくは70%前後にすることが望ましい。消化汚泥の性状がよければ、ポリマーの注入量は減少あるいは無添加にすることができる。 次に、本発明の処理法の他の実施態様を示す図2を用いて説明する。 図2では、酸発酵槽4の液の一部14は脱水工程10に導入され脱水され、液14中の有機酸を含有する液分が脱水分離水12と同伴して脱窒工程13に導入されるので、経済的な脱窒を容易に行うことができる。本法は、生物分解性の有機物が十分可溶化し、非生物分解性SSが比較的多く混濁している液14に適用するとよい。 【0012】 【実施例】 以下、本発明を実施例により具体的に説明する。 実施例1 本発明を図1、2の工程図に従って行った実施例について述べる。 選別生ごみ: 5t/日、 酸発酵槽(希釈調整槽:縦型スクリュー攪拌機、沈澱物排出管付帯)、 有効容積 : 10m3、 水温 : 55℃、 脱水分離水注入量 : 5m3/日、 嫌気性消化槽(ガス攪拌設備付帯)、 有効容積 : 100m3、 水温 : 55℃、 【0013】 脱水機 (スクリュープレス脱水機)、 カチオンポリマー注入量(汚泥用)、対SS:0.3〜1.0%、脱水分離水NH3-N:1000mg/リットル、 生物学的脱窒処理方式:硝化液循環型膜分離方式、 全体有効容積: 20m3、 処理水温: 35℃、 酸発酵槽からの液分配量、 図1の方法: 1.8m3/日、 図2の方法: 1.8m3/日、 比較例 : 0.0m3/日 【0014】 〔処理結果〕 処理結果を表1に示す。なお、比較例として、酸発酵槽からの液を脱窒工程に導入しない場合を同時に示す。本発明によって脱窒の還元剤としてのメタノールを使用せずに、高率の窒素処理を行うことができた。また、比較例において、メタノールを使用しなかった場合の窒素除去率は16%にすぎなかった。 【表1】 【0015】 【発明の効果】 本発明によって、嫌気性消化脱離液の高率の生物学的脱窒を、メタノール等の外部からの有価の還元剤を使用せずに、あるいはほとんど使用せずに行うことができる。 【図面の簡単な説明】 【図1】 本発明の一例の処理法を実施するための全体工程図。 【図2】 本発明の他の例の処理法を実施するための全体工程図。 【符号の説明】 1:生ごみ、2:前処理工程、3:選別生ごみ、4:酸発酵槽、5:嫌気性消化槽、6:バイオガス、7:脱硫装置、8:ガスタンク、9:消化脱離液、10:汚泥脱水工程、11:脱水汚泥、12:脱水分離水、13:脱窒工程、14:酸発酵液、15:余剰汚泥、16:固液分離装置、17:分離液、18:分離汚泥、19:脱窒処理水、20:希釈水 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2003-09-03 |
出願番号 | 特願平9-227081 |
審決分類 |
P
1
651・
113-
YA
(B09B)
P 1 651・ 121- YA (B09B) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 中野 孝一 |
特許庁審判長 |
石井 良夫 |
特許庁審判官 |
山田 充 野田 直人 |
登録日 | 2002-02-08 |
登録番号 | 特許第3276138号(P3276138) |
権利者 | 株式会社荏原製作所 |
発明の名称 | 有機性廃棄物の処理法 |
代理人 | 松田 大 |
代理人 | 松田 大 |