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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 A01C |
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管理番号 | 1088062 |
異議申立番号 | 異議2002-72547 |
総通号数 | 49 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2000-09-05 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2002-10-17 |
確定日 | 2003-10-08 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第3275905号「施肥装置付き田植機」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第3275905号の請求項1に係る特許を維持する。 |
理由 |
1.手続の経緯 本件特許第3275905号の請求項1に係る発明についての出願は、平成4年3月31日に出願した特願平4-77068号の一部を平成8年8月26日に新たな特許出願とし(特願平8-224223号)、この出願の一部を平成12年2月1日に新たな特許出願とした特願2000-24033号であって、平成14年2月8日にその発明について特許権の設定登録がなされ、その後、本件請求項1に係る発明の特許に対し、平成14年10月17日にヤンマー農機株式会社より特許異議の申立てがなされ、取消の理由を通知したところ、その指定期間内である平成15年8月19日に訂正請求がなされたものである。 2.訂正の適否についての判断 2-1.訂正の内容 (1) 訂正事項a 特許請求の範囲の請求項1について、「【請求項1】 肥料を繰り出す繰出部31を苗載台21の前側に配置し、圃場に施肥用の溝を形成する作溝器27を苗載台21の下端部下方近傍に配置し、前記繰出部31が繰り出した肥料を前記作溝器27に導く施肥ホース32を前記繰出部31の下方から後方に延びて苗載台21の下方に入り込むよう配置し、該施肥ホース32内に肥料搬送用の圧風を吹き込む構成とした施肥装置付き田植機において、前記施肥ホース32に、作溝器27内に泥などが詰まって該作溝器27に連結する施肥ホース32の肥料排出口が塞がれたとき施肥ホース32内の圧風をホース外に吹き出させる孔32”cを設け、該孔32”cを苗載台21の下方に位置する個所で上方に向かって開口するように設けたことを特徴とする施肥装置付き田植機。」を、 「【請求項1】 昇降リンク装置3により昇降する植付部4に前側が高く後側が低くなるよう傾斜した苗載台21と圃場面を滑走するフロート25,26とを設け、肥料を繰り出す繰出部31を苗載台21の前側に配置し、圃場に施肥用の溝を形成する作溝器27を前記フロート25,26に取り付けて苗載台21の下端部下方近傍に配置し、前記繰出部31が繰り出した肥料を前記作溝器27に導く施肥ホース32を前記繰出部31の下方から後方に延びて苗載台21の下方に入り込むよう配置し、該施肥ホース32内に肥料搬送用の圧風を吹き込む構成とした施肥装置付き田植機において、前記施肥ホース32を可撓性のホース32’に作溝器27側に連結する所定の形態に成型したホース32”を連結して構成し、作溝器27側に連結するホース32”に、作溝器27内に泥などが詰まって該作溝器27に連結する施肥ホース32の肥料排出口が塞がれたとき施肥ホース32内の圧風をホース外に吹き出させる孔32”cを設け、該孔32”cを苗載台21の下方に位置する個所で上方に向かって開口するように設けたことを特徴とする施肥装置付き田植機。」と訂正する。 (2)訂正事項b 明細書の段落【0004】の【課題を解決するための手段】の記載について、「この発明は、上記課題を解決するために、肥料を繰り出す繰出部31を苗載台21の前側に配置し、圃場に施肥用の溝を形成する作溝器27を苗載台21の下端部下方近傍に配置し、前記繰出部31が繰り出した肥料を前記作溝器27に導く施肥ホース32を前記繰出部31の下方から後方に延びて苗載台21の下方に入り込むよう配置し、該施肥ホース32内に肥料搬送用の圧風を吹き込む構成とした施肥装置付き田植機において、前記施肥ホース32に、作溝器27内に泥などが詰まって該作溝器27に連結する施肥ホース32の肥料排出口が塞がれたとき施肥ホース32内の圧風をホース外に吹き出させる孔32”cを設け、該孔32”cを苗載台21の下方に位置する個所で上方に向かって開口するように設けたことを特徴とする施肥装置付き田植機としたものである。」(本件特許公報2頁3欄21〜35行)とあるのを、 「この発明は、上記課題を解決するために、昇降リンク装置3により昇降する植付部4に前側が高く後側が低くなるよう傾斜した苗載台21と圃場面を滑走するフロート25,26とを設け、肥料を繰り出す繰出部31を苗載台21の前側に配置し、圃場に施肥用の溝を形成する作溝器27を前記フロート25,26に取り付けて苗載台21の下端部下方近傍に配置し、前記繰出部31が繰り出した肥料を前記作溝器27に導く施肥ホース32を前記繰出部31の下方から後方に延びて苗載台21の下方に入り込むよう配置し、該施肥ホース32内に肥料搬送用の圧風を吹き込む構成とした施肥装置付き田植機において、前記施肥ホース32を可撓性のホース32’に作溝器27側に連結する所定の形態に成型したホース32”を連結して構成し、作溝器27側に連結するホース32”に、作溝器27内に泥などが詰まって該作溝器27に連結する施肥ホース32の肥料排出口が塞がれたとき施肥ホース32内の圧風をホース外に吹き出させる孔32”cを設け、該孔32”cを苗載台21の下方に位置する個所で上方に向かって開口するように設けたことを特徴とする施肥装置付き田植機としたものである。」と訂正する。 (3)訂正事項c 明細書の段落【0005】の【作用】の記載について、「この発明の施肥装置付き田植機にあっては、繰出部31で繰り出された肥料は圧風を受けて搬送され施肥ホース32に導かれて作溝器27に移送され、作溝器27によって圃場に形成された施肥用の溝に排出される。また、作溝器27内に泥などが詰まって施肥ホース32の肥料排出口が塞がれると、施肥ホース32内に吹き込まれた圧風は、施肥ホース32に設けた孔32”cから施肥ホース32の外に抜け出ていって、肥料がすぐに施肥ホース32内に詰まることがない。しかも、孔32”cは上方に向かって開口しているので、作業走行中に水田から跳ね上がる泥水がその孔32”cから施肥ホース32内に入り込みにくい。また、孔32”cを上方に向かって開口しているものの、施肥ホース32の苗載台21の下方に位置する個所にその孔32”cを設けているので、上から降る雨がその孔32”cから施肥ホース32内に入り込みにくい。」(本件特許公報2頁3欄37行〜4欄2行)とあるのを、 「この発明の施肥装置付き田植機にあっては、繰出部31で繰り出された肥料は圧風を受けて搬送され施肥ホース32に導かれて作溝器27に移送され、作溝器27によって圃場に形成された施肥用の溝に排出される。また、作溝器27内に泥などが詰まって施肥ホース32の肥料排出口が塞がれると、施肥ホース32内に吹き込まれた圧風は、施肥ホース32に設けた孔32”cから施肥ホース32の外に抜け出ていって、肥料がすぐに施肥ホース32内に詰まることがない。しかも、作溝器27がフロート25,26に取り付けられ孔32”cは上方に向かって開口しているので、作業走行中に水田から跳ね上がる泥水がその孔32”cから施肥ホース32内に入り込みにくい。また、孔32”cを上方に向かって開口しているものの、施肥ホース32の作溝器27側に連結するホース32”で苗載台21の下方に位置する個所にその孔32”cを設けているので、上から降る雨がその孔32”cから施肥ホース32内に入り込みにくい。」と訂正する。 (4)訂正事項d 明細書の段落【0006】の【発明の効果】の記載について、「よって、この発明により、圧風を利用して肥料を搬送する施肥装置5を備えた施肥装置付き田植機にあって、作溝器27内に泥などが詰まって施肥ホース32の肥料排出口が塞がれても、施肥ホース32内に吹き込まれた圧風は、施肥ホース32に設けた孔32”cから施肥ホース32の外に抜け出ていくので、肥料がすぐに施肥ホース32内に詰まることがなく、そのため繰出部31の作動不良まで生じてしまうことは起こりにくいものとなる。しかも、孔32”cは上方に向かって開口しているので、作業走行中に水田から跳ね上がる泥水が孔から施肥ホース32内に入り込みにくく、また、孔32”cを上方に向かって開口しているものの、施肥ホース32の苗載台21の下方に位置する個所にその孔32”cを設けているので、上から降る雨がその孔32”cから施肥ホース32内に入り込みにくいので、施肥ホース32内が濡れてそこに肥料が付着し肥料詰りが生じるということも起こりにくくなる。」(本件特許公報2頁4欄4行〜20行)とあるのを、 「よって、この発明により、圧風を利用して肥料を搬送する施肥装置5を備えた施肥装置付き田植機にあって、作溝器27内に泥などが詰まって施肥ホース32の肥料排出口が塞がれても、施肥ホース32内に吹き込まれた圧風は、施肥ホース32に設けた孔32”cから施肥ホース32の外に抜け出ていくので、肥料がすぐに施肥ホース32内に詰まることがなく、そのため繰出部31の作動不良まで生じてしまうことは起こりにくいものとなる。しかも、作溝器27がフロート25,26に取り付けられ孔32”cは上方に向かって開口しているので、作業走行中に水田から跳ね上がる泥水が孔から施肥ホース32内に入り込みにくく、また、孔32”cを上方に向かって開口しているものの、施肥ホース32の作溝器27側に連結するホース32”で苗載台21の下方に位置する個所にその孔32”cを設けているので、上から降る雨がその孔32”cから施肥ホース32内に入り込みにくいので、施肥ホース32内が濡れてそこに肥料が付着し肥料詰りが生じるということも起こりにくくなる。」と訂正する。 2-2.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否 上記訂正事項aは、請求項1について、苗載台の構成、作溝器の配置、孔を設けた施肥ホースの構成を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当する。 上記訂正事項bないしdは、上記訂正事項aと整合を図るものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当する。 そして、上記訂正事項aの訂正における構成は、特許明細書の段落番号【0007】、【0009】、【0019】、【0020】に記載されているから、上記訂正事項aないしdは、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 2-3.むすび 以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書、第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。 3.特許異議の申立てについての判断 3-1.申立ての理由の概要 特許異議申立人は、下記の証拠を提示し、本件発明の特許は次の理由により取り消されるべきである旨を主張している。 (1)本件請求項1に係る発明は、甲第1号証、甲第2各号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 甲第1号証:実願昭60-5599号(実開61-122644号)のマイクロフィルム 甲第2号証の1:特開平3-244306号公報 甲第2号証の2:特開平3-240406号公報 甲第2号証の3:特開平4-84811号公報 甲第3号証:特開昭59-220112号公報 3-2.取消理由の概要 当審が通知した平成15年6月20日付けの取消理由通知では、本件発明の特許は次の理由により取り消されるべきである旨を通知した。 (1)本件請求項1に係る発明は、刊行物1ないし5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 刊行物1:特開平4-84811号公報(甲第2号証の3) 刊行物2:特開昭59-220112号公報(甲第3号証) 刊行物3:実願昭60-5599号(実開61-122644号)のマイクロフィルム(甲第1号証) 刊行物4:特開平3-244306号公報(甲第2号証の1) 刊行物5:特開平3-240406号公報(甲第2号証の2) 3-3.本件発明 上記2.で示したように上記訂正が認められるから、本件特許第3275905号の請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、平成15年8月19日に提出された訂正請求書の特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。 「【請求項1】 昇降リンク装置3により昇降する植付部4に前側が高く後側が低くなるよう傾斜した苗載台21と圃場面を滑走するフロート25,26とを設け、肥料を繰り出す繰出部31を苗載台21の前側に配置し、圃場に施肥用の溝を形成する作溝器27を前記フロート25,26に取り付けて苗載台21の下端部下方近傍に配置し、前記繰出部31が繰り出した肥料を前記作溝器27に導く施肥ホース32を前記繰出部31の下方から後方に延びて苗載台21の下方に入り込むよう配置し、該施肥ホース32内に肥料搬送用の圧風を吹き込む構成とした施肥装置付き田植機において、前記施肥ホース32を可撓性のホース32’に作溝器27側に連結する所定の形態に成型したホース32”を連結して構成し、作溝器27側に連結するホース32”に、作溝器27内に泥などが詰まって該作溝器27に連結する施肥ホース32の肥料排出口が塞がれたとき施肥ホース32内の圧風をホース外に吹き出させる孔32”cを設け、該孔32”cを苗載台21の下方に位置する個所で上方に向かって開口するように設けたことを特徴とする施肥装置付き田植機。」 3-4.甲号証及び刊行物等に記載された発明 (1)上記甲第1号証(刊行物3)には、次の事項が記載されている。 (1-a).「前記ボンネット(7)の右側には、前記原動機に連動して出口部を前方に向けた送風ファン(14)を設け、又このボンネット(7)の左側の前部下端には、前部の風の入ロ部と左側面の複数の風の出口部とを有した箱形状の空気室(15)を設け、この風の入口部と該送風ファン(14)の出口部とは蛇腹状の送風管(16)を設けて連結し、又該ボンネット(7)の左側部には、上側の粒肥を入れる粒肥ホッパー(17)と下側の出口部とを各々有した粒肥を繰出す複数の繰出装置(18)(18)を前後方向に連設し、又前記空気室(15)の複数の出口側には、後方に向かって長い施肥パイプ(3)(3)を各々延設して該繰出装置(18)の出ロ部とこの施肥パイプ(3)とは各々連通させる。 前記苗植付装置(12)の前側には、上下方向の支持部(19)を有した左右方向に複数の支持部材(20)(20)を前方に向けて各々突設し、この各々の支持部(19)(19)には、当該支持部(19)に支持された支持杵(21)を上部に有して、前部の前傾する稜線部(22)と両側面部、及び三角状の上面部とによって形成された作溝機(2)を各々設け、又この作溝器(2)の稜線部(22)の後側には、前記施肥パイプ(3)の終端部に一体状に設けた肥料粒径よりは小さい目合の網状パイプ(4)部をこの稜線部(22)に沿って取付ける。」(3頁10行〜5頁12行) (1-b).「送風ファン(14)を回転させると、発生した風は送風管(16),空気室(15)を経て施肥パイプ(3)内を後方に向かって流れ、粒肥ホッパー(17)内の粒肥を繰出装置(18)によって繰出すと、施肥パイプ(3)内の風によって後方に搬送され、この粒肥を搬送した搬送風は網状パイプ(4)部に至ると、網目から適宜に外周に放散されることによって減衰し、搬送された粒肥は作溝器(2)によって作溝された溝内に、この減衰した風によって施肥されることになり、従って粒肥は溝外に飛散することなく正確に施肥される。」(5頁2〜12行) (2)上記甲第2号証の1(刊行物4)には、次の事項が記載されている。 (2-a).第1図及び第3図には、施肥ノズル25及び開溝板26を苗載せ台15の下端部下方近傍に配置した構成が記載されていると認められる。 (3)上記甲第2号証の2(刊行物5)には、次の事項が記載されている。 (3-a).「29は施肥装置で、施肥繰出部Aと施肥移送部Bと作溝部Cとからなっていて、夫々次の通り構成されている。」(2頁右下欄19行〜3頁左上欄1行) (3-b).「肥料移送部Bは、前記漏斗32に一体的に取付けた変形しない硬管33と後述する作溝器側に位置する硬管34との間を屈曲自在な可撓性の軟管35で連結し、且つ、前記硬管33の基端側を送風機37の空気吹き出し口に連結の風圧溜タンク38に連通して肥料が風送されるように構成されている。」(3頁左上欄7〜13行) (3-c).「作溝部Cは、整地フロートF面下に固着されて圃場表土面に溝を形成する溝付け金具39の後部に平面視がコ字状の肥料受入体40を固着した構成になっていて、この肥料受入体40内に前記硬管34が突っ込まれて固着されている。 以上の実施例の作用について説明すると、苗植付け作業中において、肥料タンク30内の肥料が繰出ロールで漏斗32内に繰り出され、肥料移送管の硬管33内に流下されると送風機37からの空気圧で後方へ吹き出されて可撓管の軟管35内に送り込まれて下部の作溝器のコ字状の受入体40内に送られて作溝された溝に撒かれて施肥される。」(3頁右上欄2〜14行) (3-d).第1図には、作条器Cを苗載台25の下端部下方近傍に配置した構成が記載されていると認められる。 (4)上記甲第2号証の3(刊行物1)には、次の事項が記載されている。 (4-a).「エンジン2の動力で車輪3,4が回転して前進する走行車体1と、その後部にリンク8で連結されて苗を移植する苗植装置9と、苗植装置9による苗の移植と同時に施肥を行う施肥装置18を備え、・・・特徴とする施肥装置付苗植機。」(1頁左下欄5〜15行) (4-b).「この苗植装置9は、中央部に位置する歯車ケース13と、その上に前倒れに設けられて左右に移動する苗載台14と、苗載台14の下端の後部で上下に向う長円の軌道で旋回する植付杆15と、歯車ケース13の下に設けられているフロート16で構成されている。」(2頁左下欄7〜13行) (4-c).「施肥装置18は、肥料タンク19,繰出部20,ブロア21,エアチヤンバ22およびホース23などで構成されている。すなわち、走行車体1の後端で上に伸びる支柱24に横長のエアチヤンバ22が固定され、このエアチャンバ22の前面に繰出部20が取付けられ、その上に肥料タンク19が配置されている。」(2頁左下欄20行〜右下欄6行) (4-d).「ホッパ38がそれぞれの繰出ロータ25の下に設けられ、その下端がそれぞれのパイプ39の中間の上部に連なっている。このパイプ39の一端は、前記のエアチヤンバ22に接続し、他端は、ホース23の上端に接続している。このホース23の下端は、フロート16の作条器40に連なっている。また、ブロア21は、エアチヤンバ22に接続し、これが吹き出した空気がエアチヤンバ22でそれぞれのパイプ39に配分され、パイプ39内を流れる空気で繰出ロータ25が送り出した肥料をホース23を通して作条器40内に送るように出来ている。」(3頁左上欄11行〜右上欄2行) (4-e).第1図には、作条器40を苗載台14の下端部下方近傍に配置した構成が記載されていると認められる。 (5)上記甲第3号証(刊行物2)には、次の事項が記載されている。 (5-a).「施肥・播種溝形成用の作溝パイプ(25)内を、風力で強制的に肥料・種子を圧送してその終端から強制的に放出施肥・播種可能に構成し、該作溝パイプの終端部近傍にエアー抜きパイプ(30)を配設してなる施肥機の作溝パイプ。」(1頁左下欄5〜9行) (5-b).「(25)は、作溝パイプで、該作溝パイプ(25)は苗タンク(15)の下方に位置した状態で、田植機体(14)に支持部材を介して取付けられていて、植付装置(16)で苗を取付ける植付位置の横側部に施肥用の溝を形成するものであって、該作溝パイプ(25)の上端部に施肥パイプ(24)の終端部を接続している。(26)は、ブローワーで、該ブローワー(26)で発生した風は給風パイプ(27)を介して施肥パイプ(24)の前部に連通されていて、肥料繰出し装置(21)から繰出された肥料は、施肥パイプ(24)内を圧送されるように構成している。 つぎに、作溝パイプ(25)について説明すると、該作溝パイプ(25)は、中間部に屈曲部(25a)を構成するとともに、作溝パイプ(25)の屈曲部上方部位にエアー抜き穴(28)を開口して、該エアー抜き穴(28)にエアー抜きパイプ(29)を後方上方へ向うように延出し、該エアー抜きパイプ(29)の終端部に風の圧力で開孔するエアー抜きパイプ(30)を軸支している。そして、該エアー抜きパイプ(29)をフロート(17)上面より高位にして、泥水がエアー抜きパイプ(29)内へ流入しないように構成している。」(2頁左上欄2行〜右上欄2行) (5-c).「これと同時に、植付位置の横側方には作興パイプ(25)で施肥溝が形成され、肥料繰出し装置(21)の落下筒部(21a)から施肥パイプ(24)へ落下した粒状の肥料は、ブローワー(26)から給風パイプ(27)を経て供給された風により、施肥パイプ(24)内を的確に圧送され、粒状の肥料は作溝パイプ(25)の下端部から施肥溝内へ供給落下され、施肥されるものである。 このような状態で田植作業と共に施肥作業をするのであるが、施肥パイプ(24)から作溝パイプ(25)へ圧送された粒状の肥料は、作溝パイプ(24)の屈曲部(25a)に当って慣性力で作溝パイプ(25)の下部内周面に沿って後方へ流れ、作溝パイプ(25)の終端から施肥溝内へ落下する。この際、粒状の肥料を圧送してきた風は、屈曲部(25a)上方のエアー抜き穴(28)を通ってエアー抜きパイプ(29)に流入し、エアー抜きバルブ(30)を押し開けながら機外へ導かれ、粒状の肥料が作溝パイプ(25)の終端から落下排出するにあたり、圧送力が弱められた状態となり、作溝パイプ(25)終端から排出され、排出された粒状の肥料が必要以上に作溝パイプ(25)の終端から後方へ跳ね飛されることもなく、粒状の肥料の施肥を均等に行うことができる。」(2頁右上欄14行〜左下欄15行) 3-5.対比・判断 本件発明と上記3-4.に摘記した事項から把握される甲第1号証ないし甲第3号証に記載された発明を比較すると、 甲第1号証ないし甲第3号証に記載された発明は、少なくとも本件発明を特定する事項である「圃場に施肥用の溝を形成する作溝器27をフロート25,26に取り付けて苗載台21の下端部下方近傍に配置し、施肥ホース32を可撓性のホース32'に作溝器27側に連結する所定の形態に成型したホース32"を連結して構成し、作溝器27側に連結するホース32"に、作溝器27内に泥などが詰まって該作溝器27に連結する施肥ホース32の肥料排出口が塞がれたとき施肥ホース32内の圧風をホース外に吹き出させる孔32"cを設け、該孔32"cを苗載台21の下方に位置する個所で上方に向かって開口するように設けた」構成を備えていない。 また、上記構成が自明であるとも、本件特許が出願された時点で周知であるということもできない。 そして、本件発明が上記構成を備えることにより、特許明細書に記載の格別の作用効果を奏するものと認められる。 したがって、本件発明は甲第1号証ないし甲第3号証に記載された発明から容易に発明をすることができたものとすることはできない。 3-6.むすび 以上のとおりであるから、異議申立の理由及び証拠によっては本件発明についての特許を取り消すことができない。 また、他に本件発明についての特許を取り消すべき理由を発見しない。 したがって、本件発明についての特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認められない。 よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 施肥装置付き田植機 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 昇降リンク装置3により昇降する植付部4に前側が高く後側が低くなるよう傾斜した苗載台21と圃場面を滑走するフロ-ト25,26とを設け、肥料を繰り出す繰出部31を苗載台21の前側に配置し、圃場に施肥用の溝を形成する作溝器27を前記フロ-ト25,26に取り付けて苗載台21の下端部下方近傍に配置し、前記繰出部31が繰り出した肥料を前記作溝器27に導く施肥ホース32を前記繰出部31の下方から後方に延びて苗載台21の下方に入り込むよう配置し、該施肥ホース32内に肥料搬送用の圧風を吹き込む構成とした施肥装置付き田植機において、前記施肥ホース32を可撓性のホ-ス32’に作溝器27側に連結する所定の形態に成型したホ-ス32”を連結して構成し、作溝器27側に連結するホ-ス32”に、作溝器27内に泥などが詰まって該作溝器27に連結する施肥ホース32の肥料排出口が塞がれたとき施肥ホース32内の圧風をホース外に吹き出させる孔32”cを設け、該孔32”cを苗載台21の下方に位置する個所で上方に向かって開口するように設けたことを特徴とする施肥装置付き田植機。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明が属する技術分野】 この発明は、田植機に施肥装置を取付けた施肥装置付き田植機の技術分野に関する。 【0002】 【従来の技術】 従来、肥料を繰り出す繰出部を苗載台の前側に配置し、圃場に施肥用の溝を形成する作溝器を苗載台の下端部下方近傍に配置し、前記繰出部が繰り出した肥料を前記作溝器に導く施肥ホースを前記繰出部の下方から後方に延びて苗載台の下方に入り込むよう配置し、該施肥ホース内に肥料搬送用の圧風を吹き込む構成とした施肥装置付き田植機があった。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】 上記従来の施肥装置付き田植機は、繰出部と作溝器が前後に離れた構成となっているが、圧風を利用して肥料を搬送するので、施肥ホース内での肥料の移送が良好に行える利点がある。しかし、一旦、作溝器内に泥などが詰まって施肥ホースの肥料排出口が塞がれてしまうと、施肥ホース内に吹き込まれる圧風が肥料移送方向に流れなくなってしまう。そうなると、この状態で施肥装置が作動し続けて施肥ホース内に肥料が更に供給されると、肥料の移送経路にあって肥料が自重で容易に移送方向に移動しないような水平状になった個所があると、その個所に肥料が次々と溜まって、たちまちのうちに施肥ホースの肥料供給個所まで、また施肥ホースに肥料を供給する繰出部まで肥料が詰まってしまうのである。このため、作溝器内に泥などが詰まったのに気付いてそれを取り除く作業に入る前に、繰出部まで肥料が詰って繰出部の作動不良を起してしまう場合がある。そこで、この発明は、圧風を利用して肥料を搬送する施肥装置を備えた施肥装置付き田植機にあって、作溝器内に泥などが詰まって施肥ホースの肥料排出口が塞がれても繰出部の作動不良までは生じにくいものとすることを課題とする。 【0004】 【課題を解決するための手段】 この発明は、上記課題を解決するために、昇降リンク装置3により昇降する植付部4に前側が高く後側が低くなるよう傾斜した苗載台21と圃場面を滑走するフロ-ト25,26とを設け、肥料を繰り出す繰出部31を苗載台21の前側に配置し、圃場に施肥用の溝を形成する作溝器27を前記フロ-ト25,26に取り付けて苗載台21の下端部下方近傍に配置し、前記繰出部31が繰り出した肥料を前記作溝器27に導く施肥ホース32を前記繰出部31の下方から後方に延びて苗載台21の下方に入り込むよう配置し、該施肥ホース32内に肥料搬送用の圧風を吹き込む構成とした施肥装置付き田植機において、前記施肥ホース32を可撓性のホ-ス32’に作溝器27側に連結する所定の形態に成型したホ-ス32”を連結して構成し、作溝器27側に連結するホ-ス32”に、作溝器27内に泥などが詰まって該作溝器27に連結する施肥ホース32の肥料排出口が塞がれたとき施肥ホース32内の圧風をホース外に吹き出させる孔32”cを設け、該孔32”cを苗載台21の下方に位置する個所で上方に向かって開口するように設けたことを特徴とする施肥装置付き田植機としたものである。 【0005】 【作用】 この発明の施肥装置付き田植機にあっては、繰出部31で繰り出された肥料は圧風を受けて搬送され施肥ホース32に導かれて作溝器27に移送され、作溝器27によって圃場に形成された施肥用の溝に排出される。また、作溝器27内に泥などが詰まって施肥ホース32の肥料排出口が塞がれると、施肥ホース32内に吹き込まれた圧風は、施肥ホース32に設けた孔32”cから施肥ホース32の外に抜け出ていって、肥料がすぐに施肥ホース32内に詰まることがない。しかも、作溝器27がフロ-ト25,26に取り付けられ孔32”cは上方に向かって開口しているので、作業走行中に水田から跳ね上がる泥水がその孔32”cから施肥ホース32内に入り込みにくい。また、孔32”cを上方に向かって開口しているものの、施肥ホース32の作溝器27側に連結するホ-ス32”で苗載台21の下方に位置する個所にその孔32”cを設けているので、上から降る雨がその孔32”cから施肥ホース32内に入り込みにくい。 【0006】 【発明の効果】 よって、この発明により、圧風を利用して肥料を搬送する施肥装置5を備えた施肥装置付き田植機にあって、作溝器27内に泥などが詰まって施肥ホース32の肥料排出口が塞がれても、施肥ホース32内に吹き込まれた圧風は、施肥ホース32に設けた孔32”cから施肥ホース32の外に抜け出ていくので、肥料がすぐに施肥ホース32内に詰まることがなく、そのため繰出部31の作動不良まで生じてしまうことは起こりにくいものとなる。しかも、作溝器27がフロ-ト25,26に取り付けられ孔32”cは上方に向かって開口しているので、作業走行中に水田から跳ね上がる泥水が孔から施肥ホース32内に入り込みにくく、また、孔32”cを上方に向かって開口しているものの、施肥ホース32の作溝器27側に連結するホ-ス32”で苗載台21の下方に位置する個所にその孔32”cを設けているので、上から降る雨がその孔32”cから施肥ホース32内に入り込みにくいので、施肥ホース32内が濡れてそこに肥料が付着し肥料詰りが生じるということも起こりにくくなる。 【0007】 【実施例】 図1に示す施肥装置付き田植機1は、動力車両である走行車体2に昇降リンク装置3を介して植付部4が装着されているとともに、走行車体2とこの植付部4の間に施肥装置5が設けられている。図中の6は前輪、7は後輪、8はエンジン、9は操縦席である。 【0008】 昇降リンク装置3は、走行車体2のリンクベース10に昇降自在に取り付けられた上リンク11および下リンク12、12を備え、これら上下リンクの後端部に縦リンク13が連結されている。そして、縦リンク13の下端部から後方に突出するローリング軸14に植付部4が進行方向に対して左右に回動自在に装着される。走行車体フレーム16に油圧シリンダ17の基部側を取り付け、ピストンロッド18側を上リンク11の基部から一体的に下向きに突設したスイングアーム15の先端部にスプリングを介して連結し、油圧シリンダ17を伸縮させることにより植付部4が昇降するようになっている。この油圧シリング17は後記油圧バルブ28によって制御される。尚、この昇降リンク装置3は、植付作業時などで植付部4を下げた状態で、走行車体2に対して最も前後に離れた状態になり(このとき苗載台21の先端部が施肥装置5のホッパー30の後側に位置し互いに接触することはない)、植付部4を上げたときは走行車体2に近づく(このとき、苗載台21の先端部が施肥装置5のホッパー30の上側に位置して操縦席9側に接近し、苗補給がしやすくなる)ようなリンク構成になっている。 【0009】 植付部4は、平面視E字状の伝動ケース20が植付部4のフレームを兼ね、該伝動ケース20の上側に、前側が高く後側が低くなるよう傾斜させて苗載台21が設けられている。この苗載台21は伝動ケース20内の左右往復移動機構と連結して左右に往復移動するようになっている。また、伝動ケース20の後端部に植付条数分の植付装置22…を備え、苗載台21が左右に往復動して台上の苗を該苗載台の下端側に設けた苗受け枠21aの苗取出口21b…に順次供給しつつ、植付装置22…の植付具23…が所定の軌跡を描きながら回転して、前記苗取出口21b…に供給された苗を植付具23の植付爪が挾持し、これを圃場に達したとき開放して植え付けるようになっている。植付部4の下部にはセンターフロート25と左右一対のサイドフロート26、26が設けられており、機体の進行により圃場面を滑走して整地しつつ、植付部4の昇降動のダンパー機能として働く。これら各フロート25、26、26には、各条の苗植付位置の近傍の圃場面に施肥用の溝を形成する作溝器27…が取り付けられている。また、センターフロート25は圃場面の凹凸を検出するセンサでもあり、このセンサーフロート25の上下動に応じて油圧バルブ28が作動するようになっている。すなわち、センターフロート25が上動すると油圧シリンダ17を伸ばす方向に油圧バルブ28が作動され、逆にセンターフロート25が下動すると油圧シリンダ17を縮める方向に油圧バルブ28が作動されるものである。 【0010】 施肥装置5は、植付苗の近傍に施肥する側条施肥装置で、まず、図1に示すように、肥料を収容するホッパー30と該ホッパー30の下側に取り付けられる繰出部31…を、前後方向に対して植付部4の苗載台21の前側で走行車体2の操縦席9の後側に位置させ、且つ各植付条に対応した複数の繰出部31…(ここでは6条植えに対応して6体の繰出部が設けられる)が左右に一列、並ぶように設けている。そして、繰り出された肥料を苗載台21の下端部下方近傍に配置した作溝器27…に導く施肥ホース32…を各繰出部31…にそれぞれ連結し、施肥ホース32を繰出部31の下方から後方に延びて苗載台21の下方に入り込むよう配置している。更に、ブロア33とそのブロアからの圧風を一時的に貯えて施肥ホース32…の上端部へ送るエアーチャンバー34とが備えられて、施肥ホース32…内を圧風により肥料が強制的に移送されるようになっている。 【0011】 ホッパー30は、繰出部31…が植付条と同数の施肥条数分設けられているのに対し、左右に長く一体的に設けられて肥料を大容量収容できるように構成されている。この一体ホッパー30は、単条分のホッパー30’…を施肥条数分左右に連結して構成できるので、施肥条数の異なるホッパー30を単条分のホッパー30’…の組合せで構成できコストダウンが図れる。単条分のホッパー30’の本体部は、前後の側壁30’a、30’aと左右の上側に開いて凹状に切り欠かれた側壁30’b、30’bと、底部側の漏斗状の前後左右の傾斜面30’c、30’c、30’d、30’e(30’dは急傾斜面、30’e緩傾斜面)からなり、上側の開放部が肥料投入口30aに、下側の四角孔が肥料排出口30bとなる。尚、肥料排出口30bの位置は、平面視で左右に(急傾斜面30’d側に)ずれて設けられている。この単条分のホッパー30’…が、施肥条数分、凹条に切り欠かれた左右側壁30’b、30’bが互いにつき合うようにしてリベットで連結して一体的に構成している。更に、ここでは、連結して左右に長くなったホッパー30の前後の側壁30’a…、30’a…の外側面に、左右が略同幅で上下が前記側壁上下幅より広い前後外側板30’f、30’fを貼付け、左右端の凹状に切り欠かれた側壁30’b、30’bの外側面に前記凹状切り欠き部を塞ぐように左右外側板30’g、30’gを貼り付ける。以上のようにして施肥条数分のホッパー30’…が一体的に連結され、更に、この一体ホッパー30の上側の肥料投入口30aには蓋30cがホッパー後側壁30’aに枢支されて開閉可能に設けられている。この一体ホッパー30は、各単条分のホッパー30’…の連結部の左右側壁30’b…、30’b…が凹状に切り欠かれているため各単条のホッパー30’…ごとに仕切りがない状態になっているから、ホッパー30内の肥料を全体的に手で均すこともできて、肥料補給時の作業性が良いものとなる。 【0012】 また、ホッパー30の各施肥条数に応じた一体連結構成は、図6(a)、(b)、図7(c)、(d)に示すように、それぞれ単条分のホッパー30’…を連結構成する。図は、ホッパー部が平面視の略図で、そのホッパー30(肥料排出口30b…の中心)の位置と、植付位置P…、施肥位置(側条施肥のため植付位置Pから左右にずれた位置になる)F…との位置関係を対応させて示した図である。図6(a)は4条植えタイプの場合、図6(b)は5条植えタイプの場合、図7(c)は6条植えタイプの場合、図7(d)は8条植えタイプの場合である。各図において、各肥料排出口30b…の中心から各条毎の施肥ホース32…が導出されるものとし、その施肥ホース32…が施肥位置F…まで左右にずれることなく配されるようにホッパー30が構成されている。また、急傾斜面30’dどうしができるだけ互いに隣合うように、またその急傾斜面30’dどうしの連結部ができるだけ機体の左右中心位置Cに配されるように連結構成されている。30sは肥料減少センサーで、いずれも急傾斜面30’dに取り付けられている。以上のように構成することで、ホッパー30を操縦席9の後側で植付部4の前側に配置した形態の施肥装置付き田植機において、特に、5条植えと6条植えの場合のホッパー連結構成で有効な点がある。即ち、中央側のホッパー内に残った肥料を取り出すときは、操縦席9がその前にあって肥料取り出しスペースがないために左右側のホッパー内に肥料をかき分け移動して左右側から取り出すのであるが、この場合において、特に、5条植えと6条植えの場合のホッパー30は、肥料減少センサー30sが取付けられていない緩傾斜面30’e上を肥料をかき分け移動させられるので、中央側の肥料取り出し作業がしやすい構成になっている(急傾斜面30’d上を肥料をかき分け移動することになると、傾斜が急で移動させにくいし、その面に取り付けられている肥料減少センサー30sにひっかかってやりずらい)。 【0013】 また、各単条分のホッパー30’…の底部側に設けられた漏斗状の前後左右の傾斜面30’c、30’c、30’d、30’eにより、ホッパー30内に収容された肥料はホッパー30の肥料排出口30bに連設される繰出部31…の供給口31c…に向けて自然に滑り落ちるようになっている。尚、蓋30cを開けて肥料を投入するとき、蓋30c枢支部側に肥料が溜らないようにホッパー内壁後側と蓋30cの内面枢支部側とにわたって帯状の肥料溜り防止用のシート30c’が貼付られている。 【0014】 また、前記前後外側板30’f、30’fの下端位置が前記傾斜面30’c、30’c、30’d、30’eの傾斜上位位置より下方まで位置するよう上下幅が広くなっている。即ち、前記傾斜面の上位側からその傾斜面30eの傾斜とは平行せずに下方に垂れ下がるスカート部30d、30dが設けられている。これにより、ホッパー30の外側面に付着した水滴が前記傾斜面30’c、30’c、30’d、30’eにつたって繰出部31との連結部から繰出部内部にしみこむことがない。よって、繰出部31内で肥料が水分を吸収して付着し肥料詰まりが生じるというトラブルの発生が防止できる。 【0015】 尚、各条ホッパー30’の連結部となっている左右側壁30’g…、30’g…のスカート部30d、30dの内側でホッパー30の外側の部分に左右に貫通する孔30e…が設けられている。この孔30e…は、各条ホッパー30’の傾斜面(急傾斜側)30’d…に設けられる肥料減少センサー30s…のコード30s’等の電装系のコードを通してコードホルダーとして用いられる。また、コードはスカート部30d、30dの内側に配線されるので防水対策にもなる。 【0016】 次に、繰出部31は、上下に開口した繰出部ケース31a内に所定量づつ肥料を上から下へ繰り出す繰出ロール31bが組み込まれて構成されている。各条ごとの繰出部ケース31a…は、その上側の供給口31c…が前記ホッパー30の肥料排出口30b…が合わさって連通状態になるようにホッパー30と連結し、下側の繰出口31d…には繰り出された肥料を施肥ホース32…に導く漏斗36…が取付けられている。繰出ロール31bは、全周に軸方向に長さ調節可能な繰出溝31e…が設けられていて、その溝31e…にホッパー30内の肥料を蓄えて回転し、下方で溝内の肥料を落下させるように作動する。回転途中、繰出ロール31bの外周面に接するように取付けられたブラシ31fによりそがれて溝内の肥料が常に定量で繰り出されるようになっている。尚、ブラシ31fは、繰出部ケース31aの前側面に設けられた蓋31a’を開くと容易に取り出すことができる。このとき、蓋31a’の開きとともに、肥料取出しプレート31a”が漏斗36への肥料の流下を妨げない位置から漏斗36への肥料の流下を阻止する位置に移動するので、施肥ホース32側に肥料を流すことなくホッパー30内の肥料を蓋31a’が開いて開放された肥料取出し口から取り出すことができる。また、前記繰出ロール31bの繰出溝31e…は、ブロア33の取付け位置とは左右反対側に設けられた全条繰出量調節ハンドル40を回すことで、その繰出溝31e…の軸方向の溝長を一斉に変更調節することができる。よって、繰出ロール31bの1回転当たりの肥料繰出量は、ハンドル40により全条を繰出部31…を一斉に同時に同量変更調節することができ、また、各条ごとの繰出部31…においても個々に独立して変更調節することができる。 【0017】 また、繰出ロール31bの回転は、走行車体1のミッションケースから植付部4への伝動経路上に設けられた植付施肥クラッチケース37内から取り出された施肥駆動軸37aから伝動されて回転する。詳述すると、施肥駆動軸37aに取付けられた回転アーム37bと、全条繰出伝動軸38に取付けられた伝動アーム38aとが、ロッド37cで連結する。更に伝動軸38に固着の各条伝動アーム38b…と、隣合う繰出部31、31…を2条一対としてその一対の繰出部の繰出ロール31b、31b…を一軸で軸支する繰出軸31g…にワンウェイクラッチを介して取付けられた各条駆動アーム31h…とが、ロッド38c…で連結する。よって、施肥駆動軸37aの回転は各条駆動アーム31h…を揺動させ、ワンウェイクラッチを介して連結する繰出軸31g…を一方向に間欠的に回転駆動する。植付施肥クラッチケース37の上部に基部側が取り付けられているレバーは、植付部4と施肥装置5への伝動を断続する作業クラッチレバー39である。 【0018】 漏斗36は、その下側の口が施肥ホース32が連結する筒状のホース取付部36a内に入り込んで漏斗36内と連通するように一体的に連結している。ホース取付部36aのホース取付口36b側と反対側の口はエアー吹込み口36cで、その圧風吹込み口36c…側はエアーチャンバー34のエアー吹出し口34b…に各条ごとにそれぞれ対応して挿入連結して、圧風が施肥ホース32…に導かれるようになっている。なお、漏斗36の壁部には掃除用の孔が開けられてキャップ36dで蓋されている。 【0019】 施肥ホース32は、前記漏斗部36のホース取付部36aに可撓性のホース32’が連結し、そしてそのホース32’が、作溝器27側に連結するホース状で所定の形態に成型した合成樹脂ホース32”に連結されて構成されている。可撓性のホース32’は、塩化ビニール製で透明の軟質ホース32’a(内面は凹凸がなく滑らか)の外周に塩化ビニール製で透明の硬質線材32’bをらせん状に巻き付け溶着或は接着したもので、これにより植付部4が上昇して可撓性のホース32’…が曲がる際に、ホース屈曲部の半径がそのホース長でとりうる最大半径に近い半径をとって滑らかに屈曲するようになり、局所的に折れ曲がってホースを痛めることはない。 【0020】 また、施肥ホース32の合成樹脂ホース32”には、ホース内径の半分程度の孔32”c…が各ホース32”…毎に設けられている。作溝器27内に泥などが詰まってホース32”の肥料排出口(作溝器27側の口)が塞がれた場合、この孔32”cがないと圧風が施肥ホース32内に吹き込まなくなり数秒間のうちに水平状になっているホース取付部36a内に肥料が詰まり繰出部31内の肥料詰まりまで波及することになってしまうが、前記孔32”cが設けられていることにより圧風がこの孔32”cから吹き抜けるので、たちまちは前記ホース取付部36aまで肥料が詰まることにはならず、肥料詰まりに対する対処が施肥ホース32内の対処ですむ。そして、その孔32”c…は、図8に示すように、肥料移送方向とは逆方向に向かって開口したものとなっていて、正常に肥料が搬送されているときに圧風がその孔32”cから施肥ホース32の外に抜け出ていくことは起こりにくくなっている。 【0021】 また、上記の孔32”cは、図8に示すように、上方に向かって開口しているので、作業走行中に水田から跳ね上がる泥水が孔から施肥ホース32内に入り込みにくく、また、孔32”cを上方に向かって開口しているものの、施肥ホース32の苗載台21の下方に位置する個所にその孔32”cを設けているので、上から降る雨がその孔32”cから施肥ホース32内に入り込みにくいので、施肥ホース32内が濡れてそこに肥料が付着し肥料詰りが生じるということも起こりにくくなる。 【0022】 更に、上記の孔32”c…には開閉回動自在な蓋32”d…が設けられている。従って、上方に向かって開口する孔32”cに開閉回動自在な蓋32”dを設けたことで、施肥装置を停止して圧風が吹き込まれない状態にしたときでも孔32”cは蓋32”dで塞がれるようになり、より一層、雨が孔32”cから施肥ホース32内に入り込みにくいものとなっている。なお、肥料移送方向とは逆方向に向かって開口する孔32”cに開閉回動自在な蓋32”dを設けたものともなっているので、孔32”cから異物を施肥ホース32内に吸い込むことも防止される。 【0023】 尚、この蓋32”d…が前述のように肥料詰まりによりホース内に吹き込まれた圧風のすべてが孔32”c…から抜け出ていくときに大きく開いてスイッチ・オンとなる肥料詰まり検出スイッチ32”e…が設けられ、そしてスイッチ32”e…がオンとなったときに点灯する警告装置が設けられている。これにより、施肥ホース32…の肥料排出口(作溝器27側の口)側で肥料詰まりが発生したとき、警告灯が点灯してどの条のホース32が肥料詰まりを起こしたを直ちに知ることができるようにもなっている。尚、この構成に替えて、孔32”c…にホース内に吹き込まれた圧風のすべてが孔32”c…から抜け出ようとすると鳴りだす笛をもうけても良い。また、施肥ホース32…が透明でしかも操縦席9側から容易に見える位置にあることより、ホース32…内の肥料搬送状態を操縦者が容易に監視できるので、肥料がホース32…内を搬送されなくなったのを見れば繰出部31側で肥料詰まりが発生したことを知ることができる。 【0024】 ブロア33は、電動モーターで送風ファンが駆動回転する構成で、その圧風吹き出し口33aをエアーチャンバー34の左右一端部の圧風吹込み口34aに連結させて、エアーチャンバー34の長手方向に圧風が吹き込むように取付けられている。また、このブロア33の圧風吹き出し口39a部のエアーチャンバー34との連結部は、エアーチャンバー34に固定の上下の縦軸34c回りに回動可能に構成されており、固定具33cを解除してブロア33を回動すればエアーチャンバー34の圧風吹込み口34aを開放できるようになっている。 【0025】 エアーチャンバー34は、左右に長い鉄パイプで構成されていて、その部材の中空部でブロア33からの圧風を一時的に貯えて、各条の施肥ホース32…に圧風を送る。このエアーチャンバー34は、各条の繰出部31…の取付フレームとしても兼用されていて、リンクベース10の上側へ固着するブラケットに取り付けられている。また、漏斗36…の圧風吹込み口36c…部がこのエアーチャンバー34の側部に設けた孔に嵌め込まれているが、エアーチャンバー34内の圧風吹込み口36c…部は、ブロア33側に近いほど内側に大きく入り込んでおり、また、その圧風吹込み口36c…部のブロア33側は切り欠かれている。これは、前記ブロア33の風圧が十分に大きくないことにより各条の圧風吹込み口36c…に吹き込んでいく圧風の風圧に格差を生じるのを防止するためである。これをしないと、ブロア33に遠い(エアーチャンバー34の塞がれた開口部側でブロア33の圧風が突き当たる側の)圧風吹込み口36cに吹き込む圧風の風圧に比べてブロア33に近い圧風吹込み口36cに吹き込む圧風の風圧が低くなる。よって、前記構成によりブロア33が吹き出した圧風がエアーチャンバー34の長手方向にそって流れていく過程でその圧風の流れの一部がブロア33に近い側から順に圧風吹込み口36c…に分かれて流れ込んでいくようになって、ブロア33から遠い側と近い側の圧風の格差を解消することができる。 【0026】 また、エアーチャンバー34の左右一端側のブロア33が取り付けられる圧風吹込み口34a側とは反対側の開口部34bは、蓋34dで塞がれている。この蓋34dは締め付け固定具34e、34eで開口部34bをすき間なく塞ぐように取り付けられるとともに、その締め付け固定具34eを取り外すことで容易に開口部34bを開放することができる。開口部34bを開放してブロア33を作動させエアーチャンバー34内に風を送れば、エアーチャンバー34内に入り込んだ肥料を外に吹き出すことができる。これにより、エアーチャンバー34内に入り込んだ肥料により、エアーチャンバー34が腐触し劣化するのを防止することができる。また、エアーチャンバー34の左右両端側の前側部にはサイドステップ51、51が取り付けられている。このサイドステップ51、51は、走行車体2のステップフロア50の後側高位部とほぼ同じ高さで連続するように設けられ、施肥装置5の左右両端の繰出部31、31の前側まで広がっている。これにより、施肥装置5のホッパー30への肥料補給や植付部4の苗載台21へ苗補給において左右両端側に補給するときそのサイドステップ51、51に足を載せて身をのりだすことができ補給作業が安全で容易になった。また、サイドステップ51、51は下方に折畳める構成にもなっている。52、52はエアーチャンバー34の下側に固着のブラケットに固定したステップ支持フレーム、53はステップ部、54はステップ部53の下側に固着のコ字状フレームで、このフレームがステップ支持フレーム52、52に係合し、ピン55、55で連結されている。このピンでの連結部は、コ字状フレーム54側が長孔54a、54aになっている。また、コ字状フレーム54側とエアーチャンバー34側とはスプリング56で連結されている。よって、ステップ部53をスプリング56の引っ張りに抗して長孔54a、54a部にそって引き出して下方に折り曲げると、その折り曲げ姿勢もまたスプリング56により保持される。左右両端側の繰出部31、31から肥料取り出しするときに、このステップ部53、53が邪魔になるのであれば、又必要に応じて容易に下方に折り畳むことができる。 【図面の簡単な説明】 【図1】施肥装置付き田植機の側面図。 【図2】施肥装置付き田植機の平面図。 【図3】施肥装置の一部を示す側方断面図。 【図4】施肥装置の一部を示す一部断面背面図。 【図5】施肥装置のホッパーの構成を示す斜視図。 【図6】施肥装置のホッパーの構成と、そのホッパーと施肥位置、植付位置の位置関係を示す説明図。(a)は4条植えタイプの場合。(b)は5条植えタイプの場合。 【図7】施肥装置のホッパーの構成と、そのホッパーと施肥位置、植付位置の位置関係を示す説明図。(c)は6条植えタイプの場合。(d)は8条植えタイプの場合。 【図8】施肥装置の一部を示す一部断面側面図。 【図9】施肥装置の一部を示す断面平面図。 【図10】施肥装置の一部を示す平面図。 【図11】施肥装置の一部を示す側面図。 【符号の説明】 1:施肥装置付き田植機 2:走行車体 4:植付部 5:施肥装置 21:苗載台 27:作溝器 30:ホッパー 31:繰出部 32:施肥ホース 32”c:孔 32”d:蓋 33:ブロア 34:エアチャンバー 36a:ホース取付部 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2003-09-17 |
出願番号 | 特願2000-24033(P2000-24033) |
審決分類 |
P
1
651・
121-
YA
(A01C)
|
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 番場 得造、西田 秀彦 |
特許庁審判長 |
藤井 俊二 |
特許庁審判官 |
鈴木 寛治 瀬津 太朗 |
登録日 | 2002-02-08 |
登録番号 | 特許第3275905号(P3275905) |
権利者 | 井関農機株式会社 |
発明の名称 | 施肥装置付き田植機 |