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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B01J
管理番号 1088105
異議申立番号 異議2003-70629  
総通号数 49 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1993-03-23 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-03-07 
確定日 2003-11-10 
異議申立件数
事件の表示 特許第3323213号「懸濁触媒系の反応方法」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3323213号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 1.本件の手続の経緯
本件特許第3323213号は、平成14年6月28日に設定の登録がなされたものであり、これに対し、斎藤秀和(以下「申立人」という)から特許異議の申立がなされたものである。

2.本件発明
本件請求項1に係る発明(以下「本件発明」という)は、本件明細書の特許請求の範囲に記載された以下のとおりである。
「【請求項1】 微粒子状固体触媒の存在下、液と液または液と気体の接触反応で液状反応生成物を得るに際し、(1)懸濁液流動床にて液状反応生成物を得る工程、(2)主に液状反応生成物からなるスラリー濃度3重量%以上の触媒懸濁液を、0.5〜10μmの平均細孔径の濾材を用い、かつ、クロスフロー線速度が0.05m/秒以上のクロスフロー方式の濾過により、液状反応生成物と濃縮された触媒懸濁液とに分離する工程、(3)懸濁液流動床へ前記濃縮された触媒懸濁液を循環する工程を有することを特徴とする連続反応方法。」

3.当審の判断
申立人が提出した甲第1号証(特開昭50-37701号公報)には、懸濁触媒方式により連続的に液相反応を行うに際し、反応装置から触媒懸濁液を連続的に抜出し、これを反応生成物を含む液相と濃縮された触媒懸濁液とに分離し液相は系外に抜出し、濃縮された触媒懸濁液は連続的に反応装置へ戻すこと、「気相成分のバブリング状態において過程を行うことが可能なこと」(第2頁右下欄9〜11行)及び実施例2(第4頁左下欄18行〜右上欄4行)として、100〜140μmの触媒を60〜75g/l(すなわち触媒濃度約6〜7.5重量%)で用いてp-ニトロフェノールの連続液相水素添加が行われたことが記載されている。
本件発明と甲第1号証に記載される発明とを対比すると、両者は
「微粒子状固体触媒の存在下、液と液または液と気体の接触反応で液状反応生成物を得るに際し、(1)懸濁液流動床にて液状反応生成物を得る工程、(2)主に液状反応生成物からなるスラリー濃度3重量%以上の触媒懸濁液を分離手段により、液状反応生成物と濃縮された触媒懸濁液とに分離する工程、(3)懸濁液流動床へ前記濃縮された触媒懸濁液を循環する工程を有することを特徴とする連続反応方法」である点で一致し、分離手段が、本件発明では「0.5〜10μmの平均細孔径の濾材を用い、かつ、クロスフロー線速度が0.05m/秒以上のクロスフロー方式の濾過」であるのに対し、甲第1号証の方法では、「流体の運動方向に対して90ないし180度の角度でかつ同流体の流速よりはるかに低速で反応生成物と触媒とを分離する」(特許請求の範囲)手段である点で相違する。
申立人はこの点に関し、甲第2号証及び甲第3号証を提出し、クロスフロー方式は周知の濾過方法であり、濾材の細孔径の限定も、懸濁触媒反応方式では触媒粒径は小さい方が好ましいことは当業者にとって自明であり、甲第2号証に記載されるように通常のセラミック濾過膜の細孔径がサブミクロン〜ミクロンオーダーであることを考慮すると、平均細孔径を0.5〜10μmの濾過膜を用いることは当業者の適宜なし得ることであり、クロスフローの線速度を0.005m/秒以上とすることも、線速度が小さいと濾過面に粒子が堆積して濾過抵抗が大きくなり、かつ目詰まりも生じやすくなることより当業者に自明の選択にすぎないと主張する。
しかしながら、上記甲第2号証ないし甲第3号証には、懸濁液の濾過をクロスフロー方式で行うこと、係る方式によれば濾過面に濾滓が堆積しないので濾過膜が目詰まりを起こしにくいこと、セラミック濾過膜を用いれば超微粒子の分離が可能であることが記載されているものの、係る濾過を懸濁触媒方式の懸濁触媒と反応生成物の分離に適用することは記載されていない。
本件発明は、懸濁触媒方式による連続反応手段と、特定の平均細孔径を有する濾材を用い特定のクロスフローの線速度で行う、懸濁触媒と反応生成物の分離とを組み合わせることにより、目詰まりの問題もなく触媒分離を円滑に行うことができ(段落【0014】)、粒径が数ミクロン単位までの触媒の使用が可能であり反応器の小型化ができ(段落【0045】)、気・液・固の三相系においても濾過性能の低下がない(段落【0046】)、という本件明細書記載の作用効果を奏するものと認められる。
したがって、甲第1号証記載の発明に、甲第2号証及び甲第3号証記載の一般的なクロスフロー方式による濾過技術を単に組み合わせても、上記特定の平均細孔径を有する濾材を用い特定のクロスフローの線速度で行うことを特徴とする本件発明の構成を、本件特許出願前、当業者が容易に想到することができたとはいえない。

4.結び
以上のとおりであるから、特許異議の申立の理由および証拠によっては、本件請求項に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2003-10-21 
出願番号 特願平3-230244
審決分類 P 1 651・ 121- Y (B01J)
最終処分 維持  
前審関与審査官 豊永 茂弘  
特許庁審判長 石井 良夫
特許庁審判官 野田 直人
金 公彦
登録日 2002-06-28 
登録番号 特許第3323213号(P3323213)
権利者 旭化成株式会社
発明の名称 懸濁触媒系の反応方法  
代理人 渡辺 一雄  

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