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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A01N
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  A01N
管理番号 1088151
異議申立番号 異議1998-76227  
総通号数 49 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2004-01-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 1998-12-29 
確定日 2000-07-17 
異議申立件数
事件の表示 特許第2772445号「抗菌剤」の特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第2772445号の請求項1ないし11に係る特許を維持する。 
理由 (1)本件発明
本件特許第2772445号の請求項1乃至11に係る発明(平成5年3月10日国際出願(特許法41条に基づく優先権主張平成4年3月13日、平成4年8月11日)、平成10年4月24日設定登録。)は、特許明細書及び図面の記載からみてその特許請求の範囲の請求項1乃至11に記載された次のとおりのものと認める。
【請求項1】亜鉛化合物とヒノキチオール及びその塩から選はれる少なくと1種を含有することを特徴とする抗菌剤(但し、抗カビ剤は除く)。
【請求項2】亜鉛化合物と、ヒノキチオール及びその塩から選ばれる少なくとも1種との合計量に対して、亜鉛化合物を10〜99.95重量%含有し、ヒノキチオール及びその塩から選はれる少なくとも1種を90〜0.05重量%含有する請求項1に記載の抗菌剤。
【請求項3】亜鉛化合物と、ヒノキチオール及びその塩から選ばれる少なくとも1種との合計量に対して、亜鉛化合物を50〜99.9重量%含有し、ヒノキチオール及びその塩から選ばれる少なくとも1種を50〜0.1重量%含有する請求項2に記載の抗菌剤。
【請求項4】亜鉛化合物と、ヒノキチオール及びその塩から選ばれる少なくとも1種との合計量に対して、亜鉛化合物を10〜99.9重量%含有し、ヒノキチオール及びその塩から選ばれる少なくとも1種を90〜0.05重量%含有する請求項1に記載の細菌に起因する感染症治療用抗菌剤。
【請求項5】亜鉛化合物と、ヒノキチオール及びその塩から選ばれる少なくとも1種との合計量に対して、亜鉛化合物を50〜99.9重量%含有し、ヒノキチオール及びその塩から選ばれる少なくとも1種を50〜0.1重量%含有する請求項4に記載の細菌に起因する感染症治療用抗菌剤。
【請求項6】亜鉛化合物と、ヒノキチオール及びその塩から選ばれる少なくとも1種との合計量に対して、亜鉛化合物をl0〜99.9重量%含有し、ヒノキチオール及びその塩から選ばれる少なくとも1種を90〜0.05重量%含有する請求項1に記載の化粧料の防腐用抗菌剤。
【請求項7】亜鉛化合物と、ヒノキチオール及びその塩から選ばれる少なくとも1種との合計量に対して、亜鉛化合物を50〜99.9重量%含有し、ヒノキチオール及びその塩から選ばれる少なくとも1種を50〜0.1重量%含有する請求項6に記載の化粧料の防腐用抗菌剤。
【請求項8】亜鉛化合物が、酸化亜鉛、塩化亜鉛、硝酸亜鉛、硫酸亜鉛、リン酸亜鉛、アルミン酸亜鉛、弗化亜鉛、沃化亜鉛、水酸化亜鉛、炭酸亜鉛、クロム酸亜鉛、安息香酸亜鉛、酢酸亜鉛、パラアミノ安息香酸亜鉛、パラジメチルアミノ安息香酸亜鉛、パラフェノールスルホン酸亜鉛、パラメトキシ桂皮酸亜鉛、乳酸亜鉛、2-メルカプトピリジン-N-オキシド亜鉛、グルコン酸亜鉛、ピクリン酸亜鉛、クエン酸亜鉛、アスパラギン酸亜鉛、ナフテン酸亜鉛、サリチル酸亜鉛、フェノールスルホン酸亜鉛、セバシン酸亜鉛、トリポリリン酸亜鉛ナトリウム、ステアリン酸亜鉛、カプリン酸亜鉛、ラウリン酸亜鉛、ミリスチン酸亜鉛、バルミチン酸亜鉛、オレイン酸亜鉛、ポリホスホン酸亜鉛、コンドロイチン硫酸亜鉛、ウンデシレン酸亜鉛、アスコルビン酸亜鉛、ジンクピリチオン、ヒノキチオール亜鉛、亜鉛ジピコリネート、亜鉛グリセロレート錯体、ビスヒスチジン亜鉛錯体、亜鉛-3,4-ジヒドロキシ安息香酸錯体及びニコチン酸亜鉛及びニコチン酸アミド亜鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種であり、ヒノキチオール及びその塩から選ばれた少なくとも1種が、ヒノキチオール及びヒノキチオールのナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、銅塩、亜鉛塩、ジエタノールアミン塩、2-アミノ-2-エチル-1,3-プロパンジオール塩、トリエタノールアミン塩、モルホリン塩、ピペラジン塩、ピペリジン塩、アンモニウム塩、アルギニン塩、リジン塩及びヒスチジン塩からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜7のいずれかに記載の抗菌剤。
【請求項9】亜鉛化合物が、酸化亜鉛、ミリスチン酸亜鉛、塩化亜鉛、硫酸亜鉛、ニコチン酸アミド亜鉛、ビスヒスチジン亜鉛錯体、硝酸亜鉛、サリチル酸亜鉛、乳酸亜鉛及びリン酸亜鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜8のいずれかに記載の抗菌剤。
【請求項10】亜鉛化合物が、酸化亜鉛、ミリスチン酸亜鉛、塩化亜鉛、硫酸亜鉛、炭酸亜鉛、ラウリン酸亜鉛、パルミチン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛及びパラフェノールスルホン酸亜鉛からなる群から選ばれた少なくとも1種である請求項1〜8のいずれかに記載の抗菌剤。
【請求項11】亜鉛化合物が酸化亜鉛である請求項1〜9のいすれかに記載の抗菌剤。
(2)特許異議申立人の主張
特許異議申立人 杉本光史は、甲第1号証(薬事日報社発行 「最近の新薬第17集」第239頁)、甲第2号証(株式会社廣川書店発行 「医薬品集成・第二版世界の医薬品データバンク医薬品の対照一覧」第1414頁、甲第3号証(特開昭56-8309号公報)、甲第4号証(株式会社薬業時報社発行 「医療薬日本医薬品集」第1頁)、甲第5号証(株式会社鹿川書店発行 「医薬品集成・第二版世界の医薬品データバンク医薬品の対照一覧」第961頁)、甲第6号証(株式会社廣川書店発行 「最新植物化学」第119頁、第120頁)、甲第7号証(共立出版株式会社発行 「化学大辞典7」第486頁、第487頁)、甲第8号証(「フレグランスジャーナル1989-2」第74頁乃至第79頁)、甲第9号証(「フレグランスジャーナルNO.71(1985)」第45頁乃至第48頁)、甲第10号証(株式会社薬事日報社発行 「最近の新薬第28集」第249頁)及び甲第11号証(株式会社薬業時報社発行 「一般薬 日本医薬品集」第663頁)を提出し、本件特許の請求項1乃至5に係る発明は、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明であり、また請求項8乃至11に係る発明は甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定する発明に該当し、前記発明の特許は、同法第113条第1項第2号の規定により取り消されるべきものであり、また、本件特許の請求項1乃至11に係る発明は、甲第1号証乃至甲第3号証に記載された発明に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、前記発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、同法第113条第1項第2号の規定により取り消されるべきものであると主張している。
(3)甲号各証記載の発明、対比・判断
(甲号各証記載の発明)
甲第1号証には、ヒノキオイル、チンク油及び亜鉛華軟膏を含有してなるスメックW軟膏が各種白癬症等に適応されること(第239頁右欄スメックW軟膏の項)が、甲第2号証には、ヒノキチオール及びウンデシレン酸亜鉛を含有してなるヒバ軟膏が抗真菌薬の一種として(第1414頁(250)の項)記載されている。
甲第3号証には、「トロポロン系化合物を有効成分とする色白化粧料」(特許請求の範囲)に関する発明が記載されている。そして、トロポロン系化合物として、具体的に、β・ツヤプリン(4-イソプロピルトロポロン、即ちヒノキチオール)を使用しうること(第6頁左下欄第14、5行)、4-イソプロピルトロポロン、フェノールスルホン酸亜鉛及び防腐剤を含有してなるローション(処方例1)が記載されている。
甲第5号証には、ヒノキチオールは、「ヒノキ油中の主成分で、防腐・防かび作用があり、ヘアトニックとして、ふけとり、毛髪促進に、また水虫治療薬にも配合される。」(第961頁左欄下から第2行〜右欄第3行)ことが記載されている。
甲第6号証には、植物精油の「比重は0.7〜1.07の間にある」(第120頁第10行〜第12行)ことが記載されている。
甲第7号証には、「ヒノキチオールが抗菌性を示す」(第486頁右欄ヒノキチオールの項)ことが記載されている。
甲第8号証には、ヒノキチオールNa塩を用いた抗菌試験の結果、腸チフス菌、大腸菌、コレラ菌、赤痢菌、ブドウ球菌、ジフテリア菌の発育を阻止することが、また、ヒノキチオールは、腸内細菌、嫌気性菌、乳酸菌、真菌、担子菌、クロストリジア、虫歯菌、スピロヘータ並びにレプトスピラに対して抗菌活性を有することが記載されている。
甲第9号証には、ジンクピリチオン、ヒノキチオールが、薬用シャンプー・リンスの殺菌剤として、また、ヒノキチオールは育毛剤の殺菌剤として配合されること(第46頁 3-1表 下から第5〜4行、第47頁 3-2表 第2〜3行)が記載されている。
甲第10号証には、クロルヘキシジンジグルコネートを含有してなるオロナインH軟膏がにきび、吹出物、やけど、ひび、しもやけ、あかぎれ、きず、乳児くさ、とひび、あせも、ただれ、虫さされ、水虫、たむし、いんきん、しらくも、はたけ、痔疾、手指消毒に適応されること(第249頁右欄オロナインH軟膏の項)が、甲第11号証には、酸化亜鉛を含有してなる橙色モンシャープ軟膏が火傷、かぶれ、湿疹、痔疾、じんましん、一般創傷、水虫に適応されること(第663頁右欄橙色モンシャープ軟膏の項)が記載されている。
なお、甲第4号証は平成10年10月25日に発行された刊行物であって、本件特許に係る発明についての出願前に頒布された刊行物ではないので、その記載内容については検討するまでもなく、本件特許異議申立ての証拠足りえない。
(請求項1に係る発明について)
甲第1号証には、亜鉛華軟膏、チンク油及びヒノキオイルが含有されてなるスメックW軟膏が記載されている。そして、ヒノキオイルがヒノキチオールを主成分とするものであることは、甲第5号証の記載から明らかであるし、また、亜鉛華軟膏、チンク油はいずれも酸化亜鉛を含有する製剤を意味するものであることは本件特許出願前に周知の事実であって(必要なら、「医薬品要覧 第4版」 大阪府病院薬剤師会編 株式会社薬業時報社 平成元年11月20日発行)、結局、甲第1号証における亜鉛華軟膏及びチンク油は、本件請求項1に係る発明の亜鉛化合物に、また、同ヒノキオイルは本件請求項1に係る発明のヒノキチオール及びその塩に相当するものといえる。
そして、同号証には、当該軟膏を各種白癬症に適応し得る旨記載されているが、白癬症が真菌(カビ)の一種である白癬菌に起因する疾病である。他方、本件請求項1においては「抗菌剤(但し、抗カビ剤は除く。)」とあるように、本件請求項1に係る発明における抗菌剤には抗真菌(カビ)剤が包含されることはなく、また、同号証には、スメックW軟膏が真菌以外の菌に対する抗菌活性を有し抗菌剤として使用可能であることを示す何らの記載もないのであるから、同号証記載の発明と本件請求項1に係る発明とは同一ではない。
甲第2号証には、本件請求項1に係る発明の亜鉛化合物に相当するウンデシン酸亜鉛及びヒノキチオールが含有されてなるヒバ軟膏並びに当該軟膏が一種の抗真菌薬であることが記載されているものの、真菌以外の菌に対する抗菌活性を有し抗菌剤として使用可能であることを示す何らの記載もないのであるから、同号証記載の発明と本件請求項1に係る発明とは同一ではない。
また、甲第3号証記載の発明は、美白化粧料に関する発明であって、同号証には具体的に、4-イソプロピルトロポロン即ちヒノキチオール、フェノールスルホン酸亜鉛及び防腐剤を含有してなるローション(処方例1)が記載されており、本件請求項1に係る発明とはその用途が異なり同一ではない。
甲第7、9号証には、ヒノキチオールあるいは亜鉛化合物が抗菌性を示すこと、殺菌剤として使用しうることが、また甲第8号証には、ヒノキチオール及びその塩が真菌以外に対して抗菌活性を有することが記載されているものの、本件請求項1に係る発明におけるがごとく、ヒノキチオール及びその塩と亜鉛化合物とを併用する点について記載はない。
ところで、甲第1、2、3号証には、前記のとおり、本件請求項1に係る発明にいう亜鉛化合物並びにヒノキチオール及びその塩を含有してなる製剤が記載されているが、当該製剤は抗真菌(カビ)剤あるいは美白化粧料に関する発明であって、真菌以外の菌に対するものではない。また、甲第7、8、9号証には、亜鉛化合物、あるいはヒノキチオール及びその塩が、それぞれ、真菌以外の菌に対する抗菌活性を有することが記載されているが、これらを併用する点について示唆する記載はない。そうすると、結局、これら甲第1、2、3号証及び甲第7、8、9号証には、亜鉛化合物とヒノキチオール及びその塩とを併用して真菌以外の抗菌剤とすることについては記載がないのである。
これに対して、本件請求項1に係る発明は、ヒノキチオール及びその塩に亜鉛化合物を併用することにより、明細書及び図面に記載のとおり、真菌以外の菌に対し顕著な抗菌効果を奏するものである。そして、当該効果は、甲第1、2、3号証及び甲第7、8、9号証の記載からでは予測することができないものとせざるを得ない。
したがって、以上の点からみれば、甲第1、2、3号証及び甲第7、8、9号証の記載を組み合わせても、本件請求項1に係る発明を当業者が容易にに想到しえたとすることはできない。
なお、特許異議申立人は、甲第10、11号証を提示し、真菌以外の菌に起因するにきびやきずなどに、白癬症に適応される薬を適用するということは一般的に行われていることから、甲第1号証記載のスメックW軟膏、甲第2号証記載のヒバ軟膏を抗菌剤として用いることは、当業者であれば容易に想到しうるものであると主張する。
しかし、甲第10号証に記載された発明は、本件請求項1に係る発明とは異なりクロルヘキシジンジグルコネートを主成分とする製剤に関する発明であるし、また、甲第11号証に記載された発明は、酸化亜鉛を含有してなる火傷、かぶれ、湿疹、痔疾、じんましん、一般創傷、水虫に適応するための製剤に関する発明であるが、抗菌剤あるいは殺菌剤としてではなく、鎮痛・鎮痒・収れん・消炎薬の一種として把握されるものであり、そこに記載された限られた製剤に関する記載をもって、白癬症に適応される薬であれば、すべからく真菌以外の菌に対して抗菌活性を有すると結論付けうるものでもないので、特許異議申立人の主張を採用することはできない。
(請求項2〜11に係る発明について)
請求項2〜11に係る発明は、いずれも請求項1に係る発明の構成要件を全て含むものであって、請求項2〜11に係る発明についても、上記請求項1に係る発明についての判断と同様である。
(4)むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立人の主張及び証拠によっては、本件請求項1〜11に係る発明の特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2000-06-19 
出願番号 特願平5-515537
審決分類 P 1 651・ 113- Y (A01N)
P 1 651・ 121- Y (A01N)
最終処分 維持  
特許庁審判長 吉村 康男
特許庁審判官 宮本 和子
穴吹 智子
登録日 1998-04-24 
登録番号 特許第2772445号(P2772445)
権利者 大塚製薬株式会社
発明の名称 抗菌剤  
代理人 掛樋 悠路  
代理人 齋藤 健治  
代理人 関 仁士  
代理人 三枝 英二  
代理人 大月 伸介  
代理人 鈴木 活人  
代理人 小原 健志  
代理人 中川 博司  
代理人 藤井 淳  
代理人 中野 睦子  
代理人 舘 泰光  

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