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審決分類 審判 全部申し立て 5項1、2号及び6項 請求の範囲の記載不備  A01N
審判 全部申し立て 2項進歩性  A01N
審判 全部申し立て 発明同一  A01N
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  A01N
管理番号 1088156
異議申立番号 異議1999-71213  
総通号数 49 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2004-01-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-03-30 
確定日 2000-10-04 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第2806039号「農薬含有ワックスマトリックスの製法及び製剤」の請求項1ないし5に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第2806039号の請求項1ないし5に係る特許を維持する。 
理由 I 手続の経緯
本件特許第2806039号の発明は、平成7年4月20日(優先権主張、平成6年4月21日、日本)に出願され、平成10年7月24日にその特許の設定登録がなされ、その後、五島香里、日本曹達株式会社及び足立泰守による特許異議の申立て(以下「異議1ないし3」という。)があり、取消理由の通知がなされ、その指定期間内である平成11年11月8日に訂正請求がなされたものである。
II 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
本件訂正は、(a)訂正前の特許請求の範囲の請求項1及び3における「多軸型エクストルーダー」を、「使用するワックスのうち最も高い融点をもつワックスの融点より5〜30℃程度低い温度にバレル及びダイの温度を設定した、多軸型エクストルーダー」に訂正し、(b)訂正前の特許請求の範囲の請求項2を、請求項1の従属項の形式に訂正し、(c)これら特許請求の範囲の訂正に伴い、発明の詳細な説明の該当個所の記載を整合させるように訂正したものである。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
上記(a)、(b)の訂正は、多軸型エクストルーダーのバレル及びダイの温度を、使用するワックスのうち最も高い融点をもつワックスの融点より5〜30℃程度低い温度に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。そして、これらの訂正は、本件明細書の「エクストルーダーのバレル及びダイの温度は、使用するワックスの種類に応じて適宜設定することができる。通常、使用するワックスのうち最も高い融点のワックスの融点より5〜30℃程度低い温度、・・・に設定することができる。」(本件特許公報4頁7欄40〜44行)との記載に基づくものである。
また、上記(c)の訂正は、発明の詳細な説明を特許請求の範囲の訂正に整合させるべく訂正したものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的としたものである。
したがって、上記(a)ないし(c)の訂正は、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内のものであり、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
3 独立特許要件の判断
(1)本件発明
訂正後の特許請求の範囲の請求項1ないし5に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定される次のものである。
「【請求項1】物性の異なる複数のワックス及び農薬を必須成分として、使用するワックスのうち最も高い融点をもつワックスの融点より5〜30℃程度低い温度にバレル及びダイの温度を設定した、多軸型エクストルーダーにより一括処理することを特徴とする農薬含有ワックスマトリックスの製法。
【請求項2】物性が融点である請求項1記載の農薬含有ワックスマトリックスの製法。
【請求項3】疎水性ワックス、親水性ワックス及び農薬を必須成分として、使用するワックスのうち最も高い融点をもつワックスの融点より5〜30℃程度低い温度にバレル及びダイの温度を設定した、多軸型エクストルーダーにより一括処理することを特徴とする農薬含有ワックスマトリックスの製法。
【請求項4】多軸型エクストルーダーが2軸型エクストルーダーである請求項1乃至3記載の農薬含有ワックスマトリックスの製法。
【請求項5】請求項1乃至4記載の製法により製造される農薬含有ワックスマトリックスを含有する製剤。」
(2)引用刊行物等に記載された事項
(ア)当審において通知した取消理由で引用した刊行物等
刊行物1(特開昭56-30901号公報、異議1の甲第1号証、異議2の甲第2号証)には「農薬成分をロウ状物質に溶解若しくは分散させ、水溶性若しくは水分散性物質を増量剤として押し出し造粒してなることを特徴とする水面施用用農薬粒剤。」(特許請求の範囲第1項)、「押し出し式造粒方法としては湿式による方法と加熱による方法とを包含する。湿式押し出し造粒方法による場合には、農薬成分を分散してなるロウ状物質を粉砕して、これを粉末状態の上記増量剤と適量の水を加えて混練し所望の目開きの金網から押し出して造粒する。・・・加熱による押し出し造粒方法は、ロウ状物質、農薬成分及び粉末状の増量剤の混合物をロウ状物質の融点以上に加熱混合して可塑状態として造粒する方法で、ロウ状物質が結合剤として働く。」(2頁右下欄19行〜3頁左上欄末行)と記載されている。
刊行物2(国際公開92/18106号パンフレット、異議1の甲第3号証)には「固体分散体を製造するにあたって、2軸型エクストルーダーを用いることを特徴とする固体分散体の製造方法。」(特許請求の範囲)、「本発明の目的は、・・・優れた固体分散体を製造する方法を確立することにある。本発明の要旨は、固体分散体の成分である薬物及び高分子担体等の混合物を2軸型エクストルーダーで処理するとこにある。」(2頁8〜11行)、「本発明において使用される高分子担体は、一般に医薬品製剤原料として使用することができる天然及び合成高分子化合物であって」(3頁16、17行)、「本発明において使用しうる薬物は、特に限定されないが、温度に安定な薬物、特に50℃以下で分解しない薬物が好ましい。このような薬物としては、例えば以下のようなものを挙げることができる。」(6頁12〜14行)、「本発明によれば、薬物及び高分子担体を高温状態に置かず、かつ有機溶媒を一切使用せずとも、固体分散体を得ることができる。」(12頁15、16行)と記載されている。
刊行物3(「〈湿式〉造粒機」カタログNo.2016、1988年1月5日発行、不二パウダル株式会社、1〜19頁、異議1の甲第4号証、異議2の甲第9号証)には、湿式造粒機によって造粒される粒のタイプ及びそのサイズが写真と共に示され、その中に、医薬品、有機肥料、農薬などがあり、また、2軸エクストルーダーが農薬の製剤に使用されることが示されている。
刊行物4(「ケミカルエンジニアリング臨時増刊 工場操作シリーズ(造粒編)」昭和43年8月15日発行、株式会社化学工業社、18〜23頁、異議1の甲第5号証)には、押し出し式造粒の工程が記載され、「この工程をとるものとしては、医薬、食品、肥料、農薬、・・・その他大多数のものがこれにあてはまる。」(19頁11、12行)、「スクリュー軸は、1軸と2軸のものがある。・・・したがって1軸よりも2軸の方が付着に対しては強い。」(20頁下8〜6行)と記載されている。
刊行物5(特開平5-262606号公報、異議2の甲第1号証)には、水田用除草固体製剤に係る発明が記載され、「水田水中への溶出をできるだけ少量ずつ除々に行うようにすることが重要であり、そのために、スルホニルウレア系除草活性化合物、鉱物質微粉および常温で固状のパラフィンワックスからなる造粒物とする必要がある。」(2頁2欄44〜48行)、「常温で固体のパラフィンワックスとしては、・・・例えば、通常の石油系固形パラフィンワックス、木蝋、・・・またはこれらの混合物でその融点の範囲が50〜95℃のものが適当である。」(3頁3欄8〜14行)と記載され、具体的には、微粉砕化した除草剤活性成分を約80℃で溶融した石油系パラフィンワックス(融点69〜72℃)の中に添加し、混合撹拌し、除草剤活性成分をワックス中に均一に分散させたことが記載されている(実施例1)。
刊行物6(特開昭62-265217号公報、異議2の甲第3号証、異議3の甲第6号証)には「a)重量基準で1%乃至20%の活性成分と、重量基準で1.0%乃至40%のワックス又はワックス混合物と、重量基準で0%乃至23%の脂肪と、20%乃至85%の高密度の薬理学的及び製薬学的に許容しうる充てん剤の軟化したドライブレンド又はペレット化したドライブレンドをモールドに射出し、b)・・・c)・・・工程を含むことを特徴とする特効性大形丸剤配合物の製造方法。」(特許請求の範囲第1項)、「工程a)の射出プロセスが、特許請求の範囲第1項記載のドライブレンド又はペレット化したドライブレンドを約60℃より低い温度でスクリュウに供給し、該ブレンドをその軟化点より高い温度に徐々に加熱しそして軟化したブレンドをモールド中に強制することを含む・・・方法。」(特許請求の範囲第2項)、「ブレンディングの後、混合物は排出されそしてペレット化押出機に移送されるか又は直接射出成形機に仕込まれる。均一性を改良するためにペレット化が望まれる場合には、ワックス又はワックスの混合物の融点より低い温度に保持された供給区域と、ワックス又はワックスとステアレートとの混合物の融点より高い温度に保持されたホット移行区域・・・と、ワックス又はワックスとステアレートとの混合物の融点より低い温度に保持されたメータリング区域・・・より成る3段階温度プロフィルを、ブレーカープレートを備えたストレートスルーダイ・・・と共に使用して、ブレーカープレートを備えたダイ組立体の温度範囲をメータリング区域の温度範囲と同様に保持して、前記混合物をペレット化することができる。」(3頁左上欄11行〜右上欄6行)と記載されている。
刊行物7(DRUG DEVELOPMENT AND INDUSTRIAL PHARMACY、16(9)、1505-1519(1990) 、異議2の甲第4号証)には、流動床における硬質ゼラチンカプセル内の放出制御ワックスマトリックスの製造に係る発明が記載され、「異なるHLB価を持つワックスの混合使用は薬物の放出パターンに対する良好な制御を可能にする。」(1505頁下7〜5行)、「界面活性剤はワックスマトリックスから薬物の放出を促進するために用いられた。この研究において、薬物の放出はより親水性のワックスを添加することにより明確に増加させることができた。」(1509頁下2行〜1511頁1行)と記載されている。
刊行物8(国際公開92/15197号パンフレット、異議3の甲第1号証、そして、異議3の甲第2号証がこの翻訳文に相当する。)には「組成物の合計重量に基づく重量により:
1)0.01-90%の1種類か又はそれ以上の活性成分;
2)1-60%の・・・1種類か又はそれ以上の水溶性希釈剤;
3)最高30%の1種類か又はそれ以上の、40-120℃の温度で熔融する水溶性熱活性化結合剤;及び
4)a)最高0%の凝結防止剤;
b)最高10%の化学安定剤;
c)最高20%の気体発生剤;
d)0.1-10%の崩壊剤;
e)0.1-20%の分散剤;
f)最高5%の湿潤剤;及び
g)最高80%の不活性充填剤
から成る群より選ばれる2種類か又はそれ以上の添加剤
を含み、組成物中の全成分の合計が100%である水-分散性顆粒状組成物。」(特許請求の範囲請求項1)、「請求の範囲第1-7項のいずれか1つに記載の組成物の乾燥予備混合物を50-130℃の温度でダイ又はスクリーンを通して押し出し、顆粒を形成することを含む方法。」(特許請求の範囲請求項10)、「本発明は、・・・迅速に崩壊する水-分散性顆粒状農業用組成物を目的とする。」(1頁28〜2頁17行)、「本発明は本発明の組成物の製造法も目的としており、該方法は水を用いずに高温でダイ又はスクリーンを通して予備混合物を押し出すことを含む。従って本発明の方法は、組成物の合計重量に基づく重量により:
1)0.01-90%の1種類か又はそれ以上の活性成分;
2)・・・
3)0-30%の1種類か又はそれ以上の、40-120℃の温度で熔融する水溶性熱活性化結合剤;
4)・・・・
を含む乾燥予備混合物を、50-130℃の温度でダイ又はスクリーンを通して押し出し、押し出された材料を細断又は粉砕して均一な顆粒を形成することを含む。」(2頁22行〜3頁15行)、「予備混合物は・・・加熱された押し出し機に供給又は量り込むのが好ましい。適した押し出し機には1軸又は2軸スクリューを有する中軸又は放射設計、及びロール型押し出しプレスが含まれる。」(10頁3〜8行)、「活性成分は押し出し温度範囲で化学的に安定でなければならない。適した活性成分の例を表1に挙げる。」(10頁34〜36行)、「熱活性化結合剤(HAB)は固体の界面活性材料であり、・・・高温で結合剤は軟化し、熔融し、それにより有害生物防除剤を結合してより大きな凝集物とするのに十分な粘着性となる。・・・HABに関する好ましい融点範囲は45℃〜100℃である。適したHABの例は、エチレンオキシド/プロピレンオキシドコポリマー、・・・及びポリエチレングリコールである」(25頁29行〜26頁13行)と記載されている。
先願明細書(特願平5-269882号(PCT/JP/94/01637)、国際公開第95/09532号パンフレット、異議2の甲第10号証)には「農薬活性成分、融点50℃以上の疎水性物質及び吸油能を有する物質を含有することを特徴とする農薬組成物。」(請求の範囲第1項)、「融点50℃以上の疎水性物質を溶融し、融点以上の加熱条件下で押し出し造粒して製造したことを特徴とする・・・農薬組成物。」(請求の範囲第2項、「本発明は、農薬活性成分と融点50℃以上の疎水性物質および吸油能を有する物質を含有する徐放性農薬組成物、及び融点50℃以上の疎水性物質を溶融し、融点以上の加熱条件下で押し出し造粒して製造したことを特徴とする土壌に施用する徐放性農薬組成物である。」(2頁18〜21行)、「本発明に使用する50℃以上の融点を有する疎水性物質としては・・・例えばカルナバワックス、・・・蜜ロウ、木ロウ・・・等がある。・・・また上記疎水性物質は1種だけの単独、あるいは2種以上の混合により使用することが可能である。」(5頁1〜9行)と記載されている。
(イ)その他の異議証拠
(a)異議1の証拠
甲第2号証(「化学大辞典8」昭和59年3月15日発行、共立出版株式会社、742、743頁)には、ポリエチレングリコールの融点が記載されている。
(b)異議2の証拠
甲第5号証(Journal of Controlled Release ,16(1991) 269-278)、甲第6号証(Pesticide Formulations and Application Systems : 11th Vol.41-47、1992)及び甲第7号証(Porymeric Delivery Systems Properties and Applications Chapter14、pp213-219、1993)には、放出制御された除草剤を含有するスターチマトリックスを2軸型エクストルーダーを使用して製造することが記載されている。
甲第8号証(日本粉体工業協会編「造粒便覧」昭和56年7月20日発行、株式会社オーム社、131〜139頁)には、2軸スクリュー型押出し造粒機が農薬の分野において普通に使用されていることが記載されている。
甲第11号証の1及び2(CA Selects Formulation Chemistry、121:141772g、121:141773h)には、ケミカルアブストラクトの抄録基準及び農薬と医薬分野の特許抄録が示されている。
(c)異議3の証拠
甲第3号証(BASF社の技術資料(11.87)「非イオン界面活性剤」)及び甲第4号証(Aldrich社カタログHandbook of FineChamicals 1996-1997)には、それぞれ各種のPO/EO-ブロックポリマーとポリエチレングリコールの融点が記載されている。
甲第5号証及び甲第7号証は、本件の審査段階での拒絶理由通知書及びそれに対する意見書である。
(3)対比・判断
(ア)特許法第29条第1項第3号違反について
訂正後の請求項1に係る発明(以下「本件第1発明」という。)と刊行物8に記載された発明を対比する。
刊行物8には、迅速な崩壊及び優れた分散性を有する水-分散性顆粒状農業用組成物を提供することを技術的課題とすること、及びその課題解決のために、農薬等の活性成分及び40-120℃の温度で熔融する水溶性熱活性化結合剤を含む乾燥予備混合物を、50-130℃の温度でダイ又はスクリーンを通して押し出し、押し出された材料を細断又は粉砕して均一な顆粒を製造することが記載されている。
これに対し、本件第1発明は、ワックスマトリックスからの農薬の放出とワックスマトリックス自身の溶融温度とが高度に制御された農薬含有ワックスマトリックスを、実用性、経済性に優れた方法で製造するということを技術的課題とし(本件特許公報2頁3欄44行〜4欄1行)、その課題解決のために、本件第1発明は、上記した構成、すなわち、「使用するワックスのうち最も高い融点をもつワックスの融点より5〜30℃程度低い温度にバレル及びダイの温度を設定した、多軸型エクストルーダーにより一括処理する」という構成を必須の要件としてを採用するものである。
そうすると、刊行物8には、本件第1発明の技術的課題について記載されておらず、また、課題解決のための構成、すなわち、ワックスの融点に着眼して、多軸型エクストルーダーのバレル及びダイの温度を規定することについて記載も示唆もされていないから、本件第1発明の技術的課題及び課題解決のための構成から窺える技術的思想について開示されているとはいえない。
したがって、本件第1発明は刊行物8に記載された発明とはいえない。
(イ)特許法第29条第2項違反について
本件第1発明と刊行物1ないし8に記載された発明を対比する。
刊行物1、5、6及び8には、活性成分及びワックスを、ワックスの融点より高い温度で溶融し、次いで造粒して農薬粒剤を製造することが記載されているが、これら農薬製造技術は、本件明細書中に本件出願の優先権主張日当時の技術水準として開示されているところの使用ワックスの融点以上で溶融させ、次いで造粒する、いわゆる溶融法の域を超えるものでなく、まして、本件第1発明の必須の要件である、「使用するワックスのうち最も高い融点をもつワックスの融点より5〜30℃程度低い温度にバレル及びダイの温度を設定した、多軸型エクストルーダーにより一括処理する」ことについて記載も示唆もない。
また、刊行物2ないし4には、医薬、農薬の製造分野において、2軸型エクストルーダーが使用されていることが記載され、さらに、刊行物7には、異なるHLB価を持つワックスを混合使用するにより、薬品の放出パターンを制御することが記載されているが、これら証拠には、本件第1発明の上記した構成について何ら触れるものではない。
そうすると、刊行物1、5、6及び8には、本件第1発明の上記した構成について示唆されていないこと、また、刊行物2ないし4及び7には、本件第1発明の構成について何ら触れるものではないことに照らせば、これら刊行物1ないし8を併せ考えても、これら証拠から本件第1発明は当業者が容易に想到し得たものとはいえない。
そして、本件第1発明は、上記した構成を採用することにより、物性の異なる複数のワックスを充分均一に混合することができ、ワックスマトリックスからの農薬の放出とワックスマトリックス自身の溶融温度とが高度に制御された農薬含有ワックスマトリックスを、実用性、経済性に優れた方法で製造できという顕著な効果を奏するものである。
したがって、本件第1発明は、刊行物1ないし8に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(ウ)特許法第29条の2違反について
上記先願明細書には、徐放性農薬組成物を提供することを技術的課題とすること、及び課題解決のために、疎水性物質の融点以上の加熱条件下で押し出し造粒して農薬粒状組成物を製造することが記載されているが、本件第1発明の必須の要件である、「使用するワックスのうち最も高い融点をもつワックスの融点より5〜30℃程度低い温度にバレル及びダイの温度を設定した、多軸型エクストルーダーにより一括処理する」ことについて記載も示唆もない。
そうすると、先願明細書には、上記II3(3)(ア)と同様な理由により、本件第1発明の技術的思想は開示されているとはいえない。
したがって、本件第1発明と上記先願明細書に記載された発明は同一であるとはいえない。
(エ)特許法第36条第4項、第5項違反(平成6年法律第116号による改正前のもの)について
(a)異議3は、本件請求項1ないし5には多軸型エクストルーダーの温度設定について規定されていないから、必須の要件を欠くものである旨主張している。
しかし、本件訂正により、訂正後の各請求項には、「使用するワックスのうち最も高い融点をもつワックスの融点より5〜30℃程度低い温度にバレル及びダイの温度を設定した、多軸型エクストルーダーにより一括処理する」という要件が具備されたから、不備は解消された。
(b)異議3は、本件明細書の表3によれば、実施例3でのワックスマトリックスの融点は53℃であるが、その製造においては2軸型エクストルーダーのバレル及びダイの温度は55℃に設定してあり、2軸型エクストルーダーの中ではワックスは溶融状態になっていると考えられるから、本件第1発明の連続相を有するワックスマトリックスがどのようにして製造されるのか不明であり、本件請求項1ないし5に係る発明を当業者が容易に実施できない旨主張している。
しかし、本件明細書には「本発明に係る「ワックスマトリックス」とは、不連続ではない(連続相である)ワックス中に農薬が溶解又は分散したものをいう。」(本件特許公報1頁2欄11〜13行)、「上記既知の農薬組成物は、基本的にはワックスを一定の手段により溶融し、これに農薬を分散させて・・・製造されている(いわゆる溶融法・・・)。この製法では、最終的に疎水ワックスと親水性ワックスとを充分均一に溶融混合することができず」(同2頁3欄14〜20行)、「また溶融温度の高いワックスの比率を多くするとワックスマトリックス自身の溶融温度を高くすることができる。」(同2頁4欄50行〜3頁5欄2行)、「本発明によれば、物性の異なる複数のワックスを充分均一に混合することができ、ワックスマトリックスからの農薬の放出とワックスマトリックス自身の溶融温度とが高度に制御された農薬含有ワックスマトリックスを製造することができる。」(同4頁8欄43〜47行)、「表3に示すように、本発明法で得られたワックスマトリックスの融点は、使用するワックスの構成比率に相対した温度変化を示しており、所望とする融点温度のワックスマトリックスを得ることができる。」(同6頁12欄45〜48行)と記載されている。
以上の記載によれば、本件請求項1ないし5に係る発明は、多軸型エクストルーダーのバレルとダイの温度を特定することにより、農薬の放出とワックスマトリックス自身の溶融温度とが高度に制御された農薬含有ワックスマトリックスを製造することができ、そして、製造されたワックスマトリックスの融点は、使用するワックスの構成比率に従って、すなわち、異なる溶融温度を有するワックスの比率に従って決まるものであると認められる。
そうすると、本件明細書には、連続相を有する農薬含有ワックスマトリックスを製造することができることが明記されており、そして、本件明細書の記載から明らかのように、多軸型エクストルーダーのバレル及びダイの設定温度が、製造されたワックスマトリックスの融点よりも高くても何ら矛盾するところはないから、異議3の主張は採用することはできない。
(c)さらに、異議3は、本件請求項3において、「疎水性ワックス」、「親水性ワックス」という用語が使用され、疎水性、親水性という意味は水への溶解度に関するものと考えられるが、その溶解度の数値が具体的に記載されていないから、本件請求項3に係る発明を当業者が容易に実施できない旨主張している。
しかしながら、本件明細書には、疎水性及び親水性とは、水への溶解度を意味することが明記され(本件特許公報2頁4欄16、17行)、それら具体的ワックスの例示がなされている(同2頁4欄23〜37行)ところ、本件請求項3の「疎水性ワックス」、「親水性ワックス」の技術的意義は明確であり、そして、本件請求項3に係る発明では、これらの異なるワックスの融点に着眼して農薬含有ワックスマトリックスを製造するものであることは、上記したとおりであるから、水への溶解度の数値が具体的に記載されていないからといって、本件請求項3に係る発明を当業者が容易に実施できないというものでもない。
(d)異議1は、訂正前の請求項5に係る発明は、請求項1ないし4の製法により規定された物の発明であるが、訂正前の請求項1ないし4には具体的な温度条件等は何ら規定されていないから、訂正前の請求項5の記載は外延が不明瞭である旨主張しているが、上記II3(3)(エ)(a)と同様な理由により、この不備は解消された。
(オ)その他の異議証拠について
異議1の甲第2号証には、ポリエチレングリコールの融点が記載され、また、異議2の甲第5号証、甲第6号証及び甲第7号証には、2軸型エクストルーダーを放出制御された除草剤を含有するスターチマトリックスの製造に使用することが、甲第8号証には、2軸型を含むスクリュー型押出し造粒機が農薬を含む広い分野において使用されることが、甲第11号証の1及び2には、その抄録基準及び農薬と医薬の特許抄録が、それぞれ記載され、さらに、異議3の甲第3号証及び甲第4号証には、各種のPO/EO-ブロックポリマーとポリエチレングリコールの融点が記載されているが、これら証拠には、本件第1発明の上記した必須の要件について記載も示唆もない。
また、異議3の甲第5号証及び甲第7号証は、本件第1発明の構成について何ら触れるものではない。
したがって、本件第1発明は、これら証拠に記載された発明であるとはいえないし、また、これら証拠及び上記刊行物1ないし8に記載された発明を併せ考えても、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。
(カ)訂正後の請求項2ないし4に係る発明は、本件第1発明を更に技術的に限定したものであり、訂正後の請求項5に係る発明は、請求項1ないし4に記載されている製法により得られた製剤に係る発明であるから、訂正後の請求項2ないし5に係る発明は、上記と同様な理由により、上記刊行物1ないし8及びその他の異議証拠に記載された発明であるはいえないし、刊行物1ないし8及びその他の異議証拠に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものとはいえない。
よって、訂正後の本件請求項1ないし5に係る発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができる発明と認められる。
(4)むすび
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の4第2項及び同条第3項で準用する第126条第2項から4項の規定に適合するので、当該訂正を認める。
III 異議申立てについての判断
1 異議申立ての理由の概要
異議1は、訂正前の特許請求の範囲の請求項1ないし5に係る発明は、甲第1号証ないし甲第5号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、また、本件明細書には記載不備があるから、特許を受けることができない旨主張している。
異議2は、訂正前の特許請求の範囲の請求項1ないし5に係る発明は、甲第1号証ないし甲第9号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、また、請求項1ないし2に係る発明は、甲第10号証に記載された発明と同一であるから、特許を受けることができない旨主張している。
異議3は、訂正前の特許請求の範囲の請求項1、2、4及び5に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であるか、あるいは甲第1証ないし甲第4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるか、あるいは本件明細書には記載不備があるから、訂正前の請求項1ないし5に係る発明は、特許を受けることができない旨主張している。
2 判断
異議1ないし3の主張がいずれも採用できないことは、上記II3から明らかである。
3 むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件請求項1ないし5に係る発明の特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1ないし5に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
農薬含有ワックスマトリックスの製法及び製剤
(57)【特許請求の範囲】
(1)物性の異なる複数のワックス及び農薬を必須成分として、使用するワックスのうち最も高い融点をもつワックスの融点より5〜30℃程度低い温度にバレル及びダイの温度を設定した、多軸型エクストルーダーにより一括処理することを特徴とする農薬含有ワックスマトリックスの製法。
(2)物性が融点である請求項1記載の農薬含有ワックスマトリックスの製法。
(3)疎水性ワックス、親水性ワックス及び農薬を必須成分として、使用するワックスのうち最も高い融点をもつワックスの融点より5〜30℃程度低い温度にバレル及びダイの温度を設定した、多軸型エクストルーダーにより一括処理することを特徴とする農薬含有ワックスマトリックスの製法。
(4)多軸型エクストルーダーが2軸型エクストルーダーである請求項1乃至3記載の農薬含有ワックスマトリックスの製法。
(5)請求項1乃至4記載の製法により製造される農薬含有ワックスマトリックスを含有する製剤。
【発明の詳細な説明】
技 術 分 野
本発明は、農薬を含有するワックスマトリックスの製法に関するものである。詳しくは、多軸型、特に2軸型エクストルーダーにより農薬を含有するワックスマトリックスを製造することができる製法に関するものである。
ここで本発明に係る「ワックスマトリックス」とは、不連続でない(連続相である)ワックス中に農薬が溶解又は分散したものをいう。
背 景 技 術
土中の水分による農薬組成物の速やかな崩壊を制御するとともに効力のバラツキを少なくするため、ワックスを主体とした放出制御型の農薬組成物が種々開発されている(特開昭63-35504号公報、特開昭63-45201号公報、特開平2-288803号公報、特開平4-295402号公報など)。これら既知の農薬組成物は、単純にワックスの撥水性を利用して農薬の放出を制御するものにすぎず、また組成物自身の溶融温度については制御されたものではない。従って、これら既知の農薬組成物は、気温の変化や土中水分量の変化といった環境の変化に充分に対応しうる農薬組成物ということはできない。
環境の変化に充分に対応しうる農薬組成物とするためには、物性(例えば、融点、水への溶解性など)の異なるワックス同士を充分均一に混合しなければならない。
上記既知の農薬組成物は、基本的にはワックスを一定の手段により溶融し、これに農薬を分散させて冷却固化し、造粒・破砕するという手法によって製造されている(いわゆる溶融法。特開昭56-30901号公報、特開昭57-38702号公報、など。)。この製法では、最終的に疎水性ワックスと親水性ワックスとを充分均一に溶融混合することができず、また冷却温度を正確に制御できる装置によらなければ融点の異なるワックス同士を充分均一に混合することが困難である。温度を正確に制御できる装置によらなければならないとすると、製造コストが上がり、特に農薬分野で求められているコストダウンに反することになる。
一方、多軸型エクストルーダーは、複数のスクリューが互いに絡み合い干渉しあって物理的に高いエネルギーを発生させることができるスクリュー式混練押出機である。この多軸型エクストルーダーは、1軸型エクストルーダーでは得られない加工処理を原料に施すことができるので、1軸型エクストルーダーとは性能、用途等を全く異にする機械であるということができる。多軸型エクストルーダーは、主に食品分野やプラスチック分野で発展し、食品(穀類、タンパク、畜肉、魚肉等)の加工やプラスチックの射出成形等に広く利用されている。最近、医薬品分野における利用も報告されている(PCT WO92/18106、PCT WO94/08568、PCT WO95/05809など)。
なお、1軸型エクストルーダーは、単純混合や造粒操作等を主な機能とするスクリュー式混練押出機であるので、それ以上の効果は期待できず、例えば疎水性ワックスと親水性ワックスとを充分均一に混合することは困難であると考えられる。
発 明 の 開 示
本発明の目的は、これまでの農薬含有ワックスマトリックス以上に気温の変化や土中水分量の変化といった環境の変化に対応しうる農薬含有ワックスマトリックスの製法を提供することにある。具体的には、ワックスマトリックスからの農薬の放出とワックスマトリックス自身の溶融温度とが高度に制御された農薬含有ワックスマトリックスを、実用性、経済性に優れた方法で製造することができる製造技術を提供することにある。
本発明者らは、多軸型エクストルーダー(以下、単に「エクストルーダー」という)の利用を種々検討する中で、上記目的を達成しうる農薬含有ワックスマトリックスの製法を見出し、本発明を完成した。
以下に本発明を詳述する。
本発明は、物性の異なる複数のワックス及び農薬を必須成分として、使用するワックスのうち最も高い融点をもつワックスの融点より5〜30℃程度低い温度にバレル及びダイの温度を設定した、エクストルーダーにより一括処理することを特徴とする農薬含有ワックスマトリックスの製法である。
ここで「ワックス」とは、高級脂肪酸の高級アルコールエステルという狭義のワックスのみならず、広義のワックス、即ちワックスの性状(可塑性、光沢性、不透明性など)を持った40〜90℃で溶融する物質をも意味する。
ワックスの物性としては、融点、水への溶解度(疎水性、親水性)等を挙げることができる。
本発明に係るワックスとしては、動植物由来の天然ワックス、石油若しくは鉱物由来の天然ワックス、又は合成若しくは半合成のワックスを挙げることができる。また疎水性ワックス、親水性ワックスのいずれも用いることができる。
疎水性ワックスとしては、例えば、カルナウバロウ、木ロウ、鯨ロウ、羊毛ロウ、マイクロクリスタルワックス、ポリエチレンワックス、塩素化ナフタレンワックス、硬化ヒマシ油、硬化ナタネ油、ミツロウ、ステアリン酸、パラフィンワックス、牛脂、カカオ脂などを挙げることができる。
親水性ワックスとしては、例えば、ポリエチレングリコール20,000、ポリエチレングリコール6,000、ポリエチレングリコール4,000、ポリエチレングリコール2,000、ポリエチレングリコール1,540、ポリエチレングリコール1,000ポリオキシエチレン〔105〕ポリオキシプロピレン〔5〕グリコール、ポリオキシエチレン〔160〕ポリオキシプロピレン〔30〕グリコール、ポリオキシエチレン〔196〕ポリオキシプロピレン〔67〕グリコールなどを挙げることができる。
上記ワックスを二種以上組み合わせて農薬含有ワックスマトリックスを製造することができる。従来困難であった疎水性ワックスと親水性ワックスとの併合も任意に行うことができる。
ワックスの総配合比率は、使用するワックスの種類、農薬や添加剤の種類、エクストルーダーの種類や機種等によって異なるが、10〜99.999%(w/w)とすることができ、好ましくは50〜99.99%(w/w)、より好ましくは90〜99.9%(w/w)である。
各ワックスの配合比率は、所望する農薬放出速度や溶融温度等によって任意に設定することができる。一般に、親水性ワックスの比率を多くすると農薬の放出を速くすることができる。また溶融温度の高いワックスの比率を多くするとワックスマトリックス自身の溶融温度を高くすることができる。
本発明において適用できる農薬の種類に特に制限はない。殺虫剤、殺菌剤、除草剤などいずれをも適用することができる。具体的にはエチオフェンカルブ、ベンフラカルブ、カルボフラン、アルデイカルブ、アセフェート、ダイアジノン、イミダクロプリド等の殺虫剤、ベノミル、チオファネートメチル、ヘキサコナゾール、イソプロチオラン、フラサイド、ペンコナゾール、フルジラゾール、ビテルタノール、プロベナゾール、トリアジメフォントリアジメノール、トリフルミゾール、トリシクラゾール、ホセチルアミノ、エタコナゾール等の殺菌剤、メフェナセット、アラクロール、メトラクロール、アトラジン、シアナジン、トリフルラリン等の除草剤などを挙げることができる。
農薬は、単独又は二種以上を併合して使用することができる。
農薬の配合比率は、農薬の種類、使用するワックスや添加剤の種類、エクストルーダーの種類や機種等によって異なるが、0.001〜50%(w/w)とすることができ、好ましくは0.01〜20%(w/w)、より好ましくは0.1〜10%(w/w)である。
その他,必要に応じてセルロース誘導体、澱粉、澱粉の誘導体、糖類、無機物質、鉱物質担体などの添加剤を配合することができる。具体的には、例えば以下のものを挙げることができる。
1.セルロース誘導体
結晶セルロース、結晶セルロース・カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース2208、ヒドロキシプロピルメチルセルロース2906、ヒドロキシプロピルメチルセルロース2910、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム。
2.澱粉及びその誘導体
小麦デンプン、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、デキストリン、アルファー化デンプン、部分アルファー化デンプン、カルボキシメチルスターチナトリウム、プルラン。
3.糖類及び糖アルコール
白糖、マンニトール、キシリトール、ソルビトール。
4.無機物質、鉱物質担体
カオリン、タルク、ステアリン酸マグネシウム、酸化チタン、沈降炭酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、クレー、ベントナイト、珪藻土、ホワイトカーボン。
5.可塑剤
クエン酸トリエチル、トリアセチン、中鎖脂肪酸トリグリセライド、プロピレングリコール。
6.その他
大豆油、ピーナッツ油、胡麻油、菜種油、椿油、オリーブ油、落花生油、ユーカリ油。
これら添加剤は50%(w/w)まで配合することができる。
エクストルーダーの主要部は、バレルと呼ばれる筒、出口に相当するダイ、及び種々のスクリューエレメントを搭載したスクリューから主に構成されている。バレルは通常複数あり、その中をスクリューが貫通している。スクリューエレメントには、台形スクリューエレメント、台形カットスクリューエレメント、台形リバースカット、ボールスクリューエレメント、ニーディングパドル(ニーディングディスク)等のタイプがあり、その組合せは任意に行うことができる。バレル内に送られた構成成分は、スクリューによりバレル内を移動し、バレル内でニーディングパドル等のスクリューエレメントにより剪断、混合等の処理がなされ、ダイの細孔から押し出される。通常、各バレル及びダイは独立して温度調節ができるようになっている。
本発明においては、食品分野やプラスチック分野等で一般に使用されている高水分・高油分原料の搬送機能、混合機能、剪断機能、圧縮機能、粉砕機能及び加熱機能といった基本特性を備えたエクストルーダーであればそのまま使用することができる。なお、2本のスクリューを有する2軸型エクストルーダーを用いれば充分に本発明に係るワックスマトリックスを製造することができる。
また、エクストルーダーには、非噛み合い型異方向又は同方向回転エクストルーダーや完全又は一部噛み合い型異方向又は同方向回転エクストルーダーなど種々のタイプのものがあり、本発明においては、完全噛み合い型同方向回転エクストルーダーが好ましく、特に軸上にニーディングパドル(ニーディングディスク)を有する完全噛み合い型同方向回転2軸エクストルーダーが好ましい。
エクストルーダーでの一括処理は、エクストルーダーの全バレル及びダイ内で必ずしも行われなければならないものではない。あるバレル内以降において一括処理されれば、充分に本発明に係るワックスマトリックスを製造することができる。
ここで「一括処理」とは、全原料を実質同時に剪断、混合、練合、押出し処理を行うことをいう。
エクストルーダーで原料を一括処理する方法としては、▲1▼全原料(ワックス、農薬、他の添加剤)を予め単純に混合し、これをエクストルーダーの主供給孔から供給して一括処理する方法、▲2▼原料の中「いくつかの原料」を予め混合し、これをエクストルーダーの主供給孔から供給し、「残りの原料」を補助供給孔から供給して一括処理する方法、▲3▼「一つの原料」をエクストルーダーの主供給孔から供給し、「残りの原料」を補助供給孔から供給して一括処理する方法などを挙げることができる。これらの方法の中で、▲1▼▲2▼が好ましい。
ここで主供給孔とは、バレル内へ原料を供給する最も基本的な供給孔をいい、補助供給孔とは、補助成分等を補助的にバレル内へ供給することができる主供給孔以外の供給孔をいう。
上記▲1▼において、必要に応じ、任意の原料を更に補助供給孔から供給することができる。
上記▲2▼において、例えば、ワックス及び農薬を「いくつかの原料」とし、その他の添加剤を「残りの原料」とすることができる。いずれも本発明ワックスマトリックスを得ることができる。ワックスを「いくつかの原料」の一つとするのが好ましい。「残りの原料」は、混合物として一つの補助供給孔から供給することもできるし、個々の原料を又は任意の原料の混合物を複数の補助供給孔から供給することもできる。なお、主供給孔から供給される「いくつかの原料」の中の一つ以上を「残りの原料」の中に含めて補助供給孔からも供給することができる。
上記▲3▼において、「一つの原料」はワックスとするのが好ましい。「残りの原料」は、混合物として一つの補助供給孔から供給することもできるし、個々の原料を又は任意の原料の混合物を複数の補助供給孔から供給することもできる。なお、主供給孔から供給される「一つの原料」の一部を「残りの原料」の中に含めて補助供給孔からも供給することができる。
原料の単純混合は、ニーダーミキサー、V型混合機、二重円錐型混合機、立方体型混合機、リボン型混合機などの機械や手動によって行うことができる。
バレル内への原料の供給は、手動により、又は使用するエクストルーダーに一般に装備されている原料供給機によって行うことができるが、一定速度で原料を供給しうる装置であれば特に制限なく行うことができる。かかる装置として、例えば、スクリューフィーダー、テーブルフィーダー、スラリーフィーダー、圧送フィーダー、ベルトコンベア式定量供給機、電磁フィーダーなどを挙げることができる。
続いてエクストルーダーの処理条件について説明する。
エクストルーダーのバレル及びダイの温度は、使用するワックスの種類に応じて適宜設定することができる。通常、使用するワックスのうち最も高い融点のワックスの融点より5〜30℃程度低い温度、好ましくは10〜20℃程度低い温度に設定することができる。これより高い温度でも本発明に係るワックスマトリックスを得ることができる場合があるが、これより高い温度では、通常溶融状態でワックスがダイから出てくるため、任意の形状の成形体を得ることが困難となる。
スクリューの回転数(処理速度)は、エクストルーダーの機種や種類、原料、スクリューの形状等によって適宜設定することができ、使用するエクストルーダーの許容範囲内で設定することができる。バレルの全長が長いエクストルーダーほど回転数を上げることができる。バレルの全長が長いほど、混合や剪断等の処理能力が高いからである。具体的には50rpm以上が適当であり、50〜300rpmが好ましい。
吐出圧力は、10〜150kg/cm2が適当であり、30〜120kg/cm2が好ましい。
使用しうるスクリューエレメントの形状及びその組合せは、特に制限なく選択することができる。但し、混練作用及び剪断作用の強いニーディングパドル(ニーディングディスク)を1つ以上使用することが好ましい。
排出ダイは、目的によって適宜変えることができる。具体的には、円柱状処理物を得るための種々の口径を有する円型排出ダイ、板状処理物を得るための平型排出ダイ等を挙げることができる。
本発明により製造されるワックスマトリックスを含有する製剤もまた本発明に含まれる。その製剤形態は特に制限されることはない。具体的には粉剤、粉粒剤、錠剤などを挙げることができる。
本発明に係る製剤は、以下のようにして製造することができる。
エクストルーダーで一括処理された原料は、本発明組成物となってダイの細孔から連続して押し出されてくる。これを適当な裁断機、例えば、ローラー型解砕機、カッターミル、ピンミル等で所望の長さに裁断することができる。この裁断されたものは、そのまま粒状の本発明製剤とすることができる。また、ダイの細孔から押し出されてきた本発明ワックスマトリックスを、例えばダイの先端に装備した回転式カッター(例えば、栗本鉄工所社製KEXN-30用ロータリーカッターなど)にて所望する長さに裁断することで、特別な整粒操作なしに直接粒状の本発明製剤とすることができる。
裁断された粒状の本発明に係るワックスマトリックスを圧縮成形すれば錠剤形の本発明製剤とすることができる。
更に、ダイの細孔から押し出されてきたワックスマトリックス、裁断された粒状のワックスマトリックス、又は圧縮成形したワックスマトリックス錠剤にコーティング処理などを施したものも本発明製剤に含めることができる。
発 明 の 効 果
▲1▼本発明によれば、物性の異なる複数のワックスを充分均一に混合することができ、ワックスマトリックスからの農薬の放出とワックスマトリックス自身の溶融温度とが高度に制御された農薬含有ワックスマトリックスを製造することができる。従って、散布時の気温や土中水分量といった散布時の状況(季節)に適した農薬含有ワックスマトリックスを提供することができる。加えて、任意の温度で農薬が放出される農薬含有ワックスマトリックスを製造することができるので、害虫、病気が発生しやすい気温に到達したときに農薬を放出し、気温が低下すると農薬の放出を抑える農薬含有ワックスマトリックスを提供することができる。
▲2▼本発明に係る製法は、あらゆる農薬に適用することができる。
▲3▼本発明に係る製法は、実用面、経済面においても優れている。
発明を実施するための最良の形態
以下に実施例、比較例、試験例を挙げて、本発明を更に詳しく説明する。なお、バレル番号は、試料供給側(入口側)にあるバレルから昇順に付けている。
実施例1
メフェナセット4g、カルナウバロウ末280g、ポリエチレングリコール1000末120gをガラス製V型混合機にて15分間混合し、これを直径:32mmφ、有効L/D:20、スクリューエレメントパターン:16P、12P、9.6P、8P、30deg;8t×3枚、1mmφ×5穴のダイを装着した2軸型エクストルーダー(KEXN-30S-20型、栗本鉄工所製、以下同じ)を用い、バレル1を25℃、バレル2、3、4、5およびダイを63℃に設定し、混合末を1分間あたり40gの速度でホッパーにより主供給孔へ投入し、80rpmのスクリュー回転速度で押出し処理を行い本発明に係るワックスマトリックスを製造した。
実施例2
メフェナセット4g、カルナウバロウ末200g、ポリエチレングリコール1000末200gをガラス製V型混合機にて15分間混合し、2軸型エクストルーダーのバレル1を25℃、バレル2、3、4、5およびダイを55℃に設定した他、実施例1と同様の条件で処理を行い本発明に係るワックスマトリックスを製造した。
実施例3
メフェナセット4g、カルナウバロウ末120g、ポリエチレングリコール1000末280gをガラス製V型混合機にて15分間混合し、2軸型エクストルーダーのバレル1を25℃、バレル2、3、4、5およびダイを55℃に設定した他、実施例1と同様の条件で処理を行い本発明に係るワックスマトリックスを製造した。
実施例4
メフェナセット5g、パラフィンワックス350g、カカオ脂100g、ポリエチレングリコール1500末50gをガラス製V型混合機にて15分間混合し、2軸型エクストルーダーのバレル1を25℃、バレル2、3、4、5およびダイを35℃、押しだし速度を100rpmに設定した他、実施例1と同様の条件で処理を行い本発明に係るワックスマトリックスを製造した。
実施例5
メフェナセット5g、パラフィンワックス350g、カカオ脂50g、ポリエチレングリコール1500末100gをガラス製V型混合機にて15分間混合し、これを実施例4と同様の条件で処理を行い本発明に係るワックスマトリックスを製造した。
実施例6
メフェナセット5g、パラフィンワックス250g、カカオ脂200g、ポリエチレングリコール1500末50gをガラス製V型混合機にて15分間混合し、2軸型エクストルーダーのバレル1を25℃、バレル2、3、4、5およびダイを33℃に設定した他、実施例4と同様の条件で処理を行い本発明に係るワックスマトリックスを製造した。
実施例7
メフェナセット5g、パラフィンワックス250g、カカオ脂150g、ポリエチレングリコール1500末100gをガラス製V型混合機にて15分間混合し、これを実施例6と同様の条件で処理を行い本発明に係るワックスマトリックスを製造した。
実施例8
メフェナセット5g、パラフィンワックス250g、カカオ脂100g、ポリエチレングリコール1500末150gをガラス製V型混合機にて15分間混合し、2軸型エクストルーダーのバレル1を25℃、バレル2、3、4、5およびダイを34℃に設定した他、実施例4と同様の条件で処理を行い本発明に係るワックスマトリックスを製造した。
実施例9
メフェナセット5g、パラフィンワックス250g、カカオ脂50g、ポリエチレングリコール1500末200gをガラス製V型混合機にて15分間混合し、これを実施例8と同様の条件で処理を行い本発明に係るワックスマトリックスを製造した。
実施例10
メフェナセット5g、パラフィンワックス150g、カカオ脂300g、ポリエチレングリコール1500末50gをガラス製V型混合機にて15分間混合し、2軸型エクストルーダーのバレル1を25℃、バレル2、3、4、5およびダイを31℃に設定した他、実施例4と同様の条件で処理を行い本発明に係るワックスマトリックスを製造した。
実施例11
メフェナセット5g、パラフィンワックス150g、カカオ脂250g、ポリエチレングリコール1500末100gをガラス製V型混合機にて15分間混合し、これを実施例10と同様の条件で処理を行い本発明に係るワックスマトリックスを製造した。
試験例1
水溶性色素である食用青色1号をマーカーとして、本発明法と従来法との操作性、ワックスマトリックスの外観および含量均一性について比較検討した。その結果を表1に示す。
本発明法試料:
メフェナセットの代わりに食用青色1号色素粉末4gを用いた他、実施例2と同様の条件で処理を行い本発明法試料とした。
従来法試料:
本発明法試料と同様の組成混合末を透明なガラス製ビーカー(直径11.6cm、高さ16cm)に投入し90℃に加熱した温浴にて加熱溶融させ、ステンレス製スパーテルで撹拌混合した。その後このビーカーを取り出し25℃の環境下に放置し自然冷却させ比較試験用のワックスマトリックスを製造した(自然冷却法)。また、同様の組成混合末をステンレス製ビ-カー(直径20cm、高さ26cm)に投入し90℃に加熱した温浴にて加熱溶融させた後25℃環境下に取り出し、この中に3枚撹拌羽根を装着したスリーワンモーター撹拌機(1200RTS;新東科学製)にて撹拌混合冷却操作を加え比較試験用のワックスマトリックスを調製した(撹拌混合冷却法)。

表1に示すように本発明法試料は、操作性、組成物の外観、含量均一性の点において従来法試料よりも優れていることが明らかである。
試験例2 溶出試験(1)
本発明法により製造したワックスマトリックス及び従来法の撹拌混合冷却法で製造したワックスマトリックスをロールグラニュレーター(GRN-1041型;日本グラニュレーター社製、以下同じ)を用いて解砕し、16号(1000μ)〜30号(500μ)範囲の粒子を溶出試験用の試料とした。これら各々の試料600mgを30℃の精製水900mlに投入し、日本薬局法パドル法(パドル回転数;100rpm)、測定波長629nmの条件で経時的に青色1号の溶出量を測定した。その結果を表2に示す。

表2に示すように溶出速度には両者に大差はないが、バラツキは本発明に係るワックスマトリックスの方がかなり少いことが明らかである。
*バラツキの尺度
先に示した溶出試験法に従いそれぞれを3回測定し、その標準偏差を求めバラツキの指標とした。
試験例3 融点測定及び溶出試験(2)
1)実施例1、2、3に準じて製造した本発明に係るワックスマトリックスをロールグラニュレータを用いて解砕し、16号(1000μ)〜30号(500μ)範囲の粒子を溶出試験用の試料とした。融点は、顕微鏡による融点測定器を用いて測定した。溶出試験用は、上記試料を30℃の精製水900mlに投入し、日本薬局方パドル法(パドル回転数;100rpm)の条件で経時的にメフェナセットの溶出量を測定した。その結果を表3に示す。

表3に示すように、本発明法で得られたワックスマトリックスの融点は、使用するワックスの構成比率に相対した温度変化を示しており、所望とする溶融温度のワックスマトリックスを得ることができた。また親水性ワックスであるポリエチレングリコールの添加量が増加するにつれて放出速度は増大した。このことから親水性及び疎水性ワックスの組成比を変えることで放出のコントロールが可能であることがわかった。
2)実施例4、6、7、10及び11に係る本発明ワックスマトリックスをロールグラニュレータを用いて解砕し、16号(1000μ)〜30号(500μ)範囲の粒子を溶出試験用の試料とした。融点は、顕微鏡による融点測定器を用いて測定した。溶出試験用は、上記試料を30℃の精製水900mlに投入し、日本薬局方パドル法(パドル回転数;100rpm)の条件で経時的にメフェナセットの溶出量を測定した。その結果を表4に示す。

表4に示すように、溶解特性、融点の異なる3種類のワックス(パラフィンワックス、カカオ脂、ポリエチレングリコール)の構成比率を変化させることによって、ワックスマトリックスの融点を高度に制御することができ、また同一の融点を示すワックスマトリックスでも異なる薬物放出を与えることがわかった。更にワックスマトリックスの融点温度で試験したとき、速やかな薬物放出が認められ、気温の変化に相対した薬物放出を促すことができることがわかった。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2000-09-14 
出願番号 特願平7-527523
審決分類 P 1 651・ 534- YA (A01N)
P 1 651・ 113- YA (A01N)
P 1 651・ 161- YA (A01N)
P 1 651・ 121- YA (A01N)
最終処分 維持  
前審関与審査官 山田 泰之  
特許庁審判長 花田 吉秋
特許庁審判官 後藤 圭次
佐藤 修
登録日 1998-07-24 
登録番号 特許第2806039号(P2806039)
権利者 日本新薬株式会社
発明の名称 農薬含有ワックスマトリックスの製法及び製剤  
代理人 東海 裕作  
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