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審判番号(事件番号) データベース 権利
判定200060165 審決 特許
判定200260110 審決 特許
判定200560030 審決 特許
判定200160010 審決 特許
判定200360077 審決 特許

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審決分類 審判 判定 同一 属する(申立て成立) A24B
管理番号 1088172
判定請求番号 判定2002-60108  
総通号数 49 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許判定公報 
発行日 2000-03-28 
種別 判定 
判定請求日 2002-12-05 
確定日 2003-11-27 
事件の表示 上記当事者間の特許第2997248号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 イ号図面及びその説明書に示す「葉たばこ乾燥装置への葉編み吊込装置」は、特許第2997248号発明の技術的範囲に属する。 
理由 I 請求の趣旨

イ号図面、イ号写真及びそれらの説明書に示す「葉たばこ乾燥装置への葉編み吊込装置」(以下「イ号物件」という。)は、特許第2997248号発明(以下「本件発明」という。)の技術的範囲に属する。
との判定を求める。

II 本件発明

1 本件発明の特定
本件発明は、本件特許明細書〔甲第1号証に係る特許第2997248号掲載公報(以下「本件公報」という。)参照〕の特許請求の範囲の請求項1に記載されている事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1の記載は次のとおりである。なお、ここで、「その上を走行できる」の「その」とは、「誘導レール」を指し、「走行可能な」(2箇所)とは、「床面、路面等の上を走行可能な」の意味であることは、請求項1の全記載に照らして明らかである。
「収穫された葉たばこを吊す車輪付吊具およびこの車輪付吊具の車輪がその上を走行できる誘導レールを備えた走行可能な葉編装置と、この葉編装置の前記誘導レールと連結可能な昇降レールを備えた走行可能な吊上機と、この吊上機の昇降レールに連結されるレールを備えた乾燥室とからなる葉たばこ乾燥装置への葉編み吊込装置であって、前記葉編装置には、水平位置から垂直位置に回転可能な葉編テーブルを備え、この葉編テーブルが水平位置にあるときに垂直状態になる回転レールを前記葉編テーブルに立設し、前記回転レールに車輪が位置するように前記車輪付吊具を横向きに配置し、一組の葉編み終了後、前記葉編テーブルを前記車輪付吊具と共に垂直位置に回転させたときに、水平状態になった前記回転レールの先端部が、前記吊上機の昇降レールに接続した前記誘導レールの先端部に連結する機構を備えたことを特徴とする葉たばこ乾燥装置への葉編み吊込装置。」

2 本件発明の構成要件の分説
前記事項により特定される本件発明は、次の構成要件A〜Cに分説することができる。
【本件発明の構成要件】
「A 収穫された葉たばこを吊す車輪付吊具およびこの車輪付吊具の車輪がその上を走行できる誘導レールを備えた走行可能な葉編装置と、この葉編装置の前記誘導レールと連結可能な昇降レールを備えた走行可能な吊上機と、この吊上機の昇降レールに連結されるレールを備えた乾燥室とからなる葉たばこ乾燥装置への葉編み吊込装置であること。
B 前記葉編装置は、水平位置から垂直位置に回転可能な葉編テーブルを備えたものであり、この葉編テーブルが水平位置にあるときに垂直状態になる回転レールを前記葉編テーブルに立設したものであること。
C 前記回転レールに車輪が位置するように前記車輪付吊具を横向きに配置し、一組の葉編み終了後、前記葉編テーブルを前記車輪付吊具と共に垂直位置に回転させたときに、水平状態になった前記回転レールの先端部が、前記吊上機の昇降レールに接続した前記誘導レールの先端部に連結する機構を備えたものであること。」

3 本件発明の葉編装置及び吊上機に備えられるレール部材について
本件発明においては、レール部材として、葉編装置には回転レール及び誘導レールが、吊上機には昇降レールがそれぞれ備えられ、作業時に、吊上機上の昇降レールに葉編装置の誘導レールが連結(接続)され、当該誘導レールの先端部に葉編装置上の回転レールの先端部が連結されるものであるから、回転レール、誘導レール及び昇降レールは、連結(接続)・解除可能な各々独立した別部材からなるものであることが明らかである。
なお、本件発明においては、誘導レールについてのみ「この車輪付吊具の車輪がその上を走行できる」と規定されているが、このことは、回転レール及び昇降レールについても同様にいえることであって誘導レールに限ったことではないことは明らかである。

III イ号物件

1 イ号物件説明書の記載
請求人は、イ号物件説明書、イ号図面(図1〜3)及びイ号写真(写真1〜4)を甲第3号証として提出し、イ号物件説明書に次のように記載している。
「図1は葉編装置と吊上機を示し、葉編テーブルが水平状態の斜視図である。図2は葉編装置と吊上機を示し、葉編テーブルが垂直状態の斜視図である。図3は車輪付吊具の移動を示す図である。
写真1(a)は葉編装置、(b)は吊上機、写真2(a)は葉たばこを吊具に載せている状態、(b)は葉編テーブルを回転させて回転レールと昇降レールに接続された誘導レールが連結した状態、写真3(a)〜(d)、写真4(e)〜(h)はイ号物件の構造及び作業を示すものである。
(1)構造
イ号物件は、収穫された葉たばこを吊す車輪付吊具6およびこの車輪付吊具6の車輪がその上を走行できるキャスタ10で走行可能な葉編装置31を備え、誘導レール9を有しその誘導レール9の端部に接続して設けられた昇降レール11を備えた吊上機32と、吊上機32の昇降レール11に連結されるレール34,34を備えた乾燥室33とからなる葉たばこ乾燥装置への葉編み吊込装置である。
葉編装置31には、水平位置から垂直位置に回転可能な葉編テーブル1を備えている。
葉編テーブル1が水平位置にあるときに垂直状態となる回転レール3を葉編テーブル1に立設している。
回転レール3に車輪付吊具6の車輪が位置するように車輪付吊具6を横向きに配置し、一組の葉編み終了後、葉編テーブル1を車輪付吊具6と共に垂直位置に回転させたときに、水平状態になった回転レール3の先端部が、吊上機32の昇降レール11に接続した誘導レール9の先端部に継合する。
葉編装置31を吊上機32に連結し位置決めする連結部材44を備えている。
(2)葉編作業から乾燥室への吊込み作業について説明する。
a.葉編テーブル1を水平にする(写真3(a)参照)。
b.車輪付吊具6を水平な葉編テーブル1の回転レール3に車輪を係合させてセットする〔写真3(b)、(c)参照〕。
c.車輪付吊具6の上に葉たばこを均一に置く(写真4(e)参照)。
d.葉たばこを置き終わったら、下向き本体の針で葉たばこを突き刺して、車輪付吊具6に保持する〔写真4(f)参照〕。
e.葉編テーブル1を起して、垂直にする。これにより、葉たばこの葉の部分が吊り下げられた状態になるとともに、葉編装置31の回転レール3と吊上機32の昇降レール11に接続した誘導レール9が継合する〔写真4(g)参照〕。
f.車輪付吊具6を押して、回転レール3から誘導レール9を介して昇降レール11に車輪付吊具6を移動する〔写真4(h)参照〕。
上記の作業を繰り返して、吊上機32の昇降レール11の長手方向に所定個数に達するように、車輪付吊具6を載せ、次いで、車輪付吊具6を昇降レール11に接続された、乾燥室33内のレール34に押し込む。」

2 イ号物件の特定
(1)イ号物件は、イ号物件説明書の記載をイ号図面(図1〜3)及びイ号写真(写真1〜4)を参照しながら総合すると、次の構成からなるものと認めるのが相当である。
「収穫された葉たばこを吊す車輪付吊具6を備えた走行可能な葉編装置31と、後記する回転レール3と連結可能な昇降レール11を備えた走行可能な吊上機32と、この吊上機32の昇降レール11に連結されるレール34,35を備えた乾燥室33とからなる葉たばこ乾燥装置への葉編み吊込装置であって、前記葉編装置31には、水平位置から垂直位置を越えた位置に回転可能な葉編テーブル1を備え、この葉編テーブル1が水平位置にあるときに垂直状態になる回転レール3を前記葉編テーブル1に立設し、前記回転レール3に車輪が位置するように前記車輪付吊具6を横向きに配置し、一組の葉編み終了後、前記葉編テーブル1を前記車輪付吊具6と共に垂直位置を越えた位置に回転させたときに、やや下向き傾斜状態になった前記回転レール3の先端部が、前記吊上機32の昇降レール11の先端部に連結する機構を備え、前記葉編装置31を前記吊上機32に連結し位置決めする連結部材44を備えた葉たばこ乾燥装置への葉編み吊込装置。」
(2)イ号物件の構成のうち、「前記葉編装置31を前記吊上機32に連結し位置決めする連結部材44を備えた」は、本件発明の構成要件に対応しない付加的な構成であることから、本件発明構成要件充足性を判断する上では省略することができるので、これを省略することとすると、本件発明の構成要件と対比すべきイ号物件の構成は、本件発明の構成要件A〜Cに倣って、次のイ号構成A’〜C’に分説して特定することができる(付番省略)。
【イ号構成】
「A’ 収穫された葉たばこを吊す車輪付吊具を備えた走行可能な葉編装置と、後記する回転レールと連結可能な昇降レールを備えた走行可能な吊上機と、この吊上機の昇降レールに連結されるレールを備えた乾燥室とからなる葉たばこ乾燥装置への葉編み吊込装置であること。
B’ 前記葉編装置は、水平位置から垂直位置を越えた位置に回転可能な葉編テーブルを備えたものであり、この葉編テーブルが水平位置にあるときに垂直状態になる回転レールを前記葉編テーブルに立設したものであること。
C’ 前記回転レールに車輪が位置するように前記車輪付吊具を横向きに配置し、一組の葉編み終了後、前記葉編テーブルを前記車輪付吊具と共に垂直位置を越えた位置に回転させたときに、やや下向き傾斜状態になった前記回転レールの先端部が、前記吊上機の昇降レールの先端部に連結する機構を備えたものであること。」

3 当事者の分説したイ号物件の構成
(1)請求人は、判定請求書4頁の「イ号物件の説明」において、イ号物件を次の構成a〜hに分説して記載している。
「a 収穫された葉たばこを吊す車輪付吊具6およびこの車輪付吊具6の車輪がその上を走行できる走行可能な葉編装置31と、誘導レール9を備えた吊上機32であって、
b この誘導レール9の端部に接続して設けられた昇降レール11を備えた走行可能な吊上機32と、
c この吊上機32の昇降レール11に連結されるレール34,35を備えた乾燥室33と
d からなる葉たばこ乾燥装置への葉編み吊込装置であって、
e 前記葉編装置31には、水平位置から垂直位置に回転可能な葉編テーブル1を備え、
f この葉編テーブル1が水平位置にあるときに垂直状態になる回転レール3を前記葉編テーブル1に立設し、
g 前記回転レール3に車輪が位置するように前記車輪付吊具6を横向きに配置し、一組の葉編み終了後、前記葉編テーブル1を前記車輪付吊具6と共に垂直位置に回転させたときに、水平状態になった前記回転レール3の先端部が、前記吊上機6の昇降レール11に接続した前記誘導レール9の先端部に継合する機構を備え、
h 前記葉編装置31を前記吊上機32に連結し位置決めする連結部材44を備えた葉たばこ乾燥装置への葉編み吊込装置。」
(2)被請求人は、判定請求答弁書11〜12頁の「本件特許とイ号物件の構成要素の差異」において、イ号物件を次の構成a〜hに分説して記載している。
「a 収穫された葉たばこを吊す車輪付吊具の車輪がその上を走行できる走行可能な葉編装置と、
b この葉編装置の回転レールと直接連結可能な昇降レールを備えた走行可能な吊上機と、
c この吊上機の昇降レールに連結されるレールを備えた乾燥室と
d からなる葉たばこ乾燥装置への葉編み吊込装置であって、
e 前記葉編装置には、水平位置から垂直位置を越えた位置までに回転可能な葉編テーブルを備え、
f この葉編テーブルが水平位置にあるときに垂直状態になる回転レールを前記葉編テーブルに立設し、
g 前記回転レールに車輪が位置するように前記車輪付吊具を横向きに配置し、一組の葉編み終了後、前記葉編テーブルを前記車輪付吊具と共に垂直位置を越えて回転させたときに、やや下向き傾斜状態になった前記回転レールの先端部が、前記吊上機の昇降レールの先端部に連結する機構を備えた
h ことを特徴とする葉たばこ乾燥装置への葉編み吊込装置。」

4 当事者の分説したイ号物件の構成についての検討
(1)請求人、被請求人のそれぞれ分説した構成a、bについて
(1-1)「誘導レール」の存在について
請求人は、前記IIIの1のとおり、イ号図面の図1において「9」と付番されている部材は「誘導レール」であり、同じく「11」と付番されている部材は「昇降レール」である旨説明し(なお、図2においては「9」の付番はない。)また、判定請求書14頁2行〜16頁7行の「『誘導レール』の存在に関する検討」において、(i)イ号物件の、請求人のいう「誘導レール」は、昇降レールの端部に回転レールよりも一回り大きく形成されて一体に接続して設けられているものであって、回転レールと昇降レールとの「継合」は、この一回り大きく形成された「誘導レール」が回転レールの端部を受けて重なり合うことにより行われるものであること、(ii)この「誘導レール」は、回転レールと昇降レールとがずれることを防止しながら車輪付吊具の移動を円滑に遂行させ、また、回転レールを誘導するものであって、本件発明における誘導レールと同じ機能を発揮するものであること等から、イ号図面の図1において「9」と付番されている部材は、車輪付吊具の車輪がその上を走行できる「誘導レール」に相当する旨主張している。
さらに、請求人は、ファクシミリにより提出した平成15年6月27日付け上申書において、請求人の分説したイ号物件の前記構成bにいう「誘導レール9の端部に接続して設けられた昇降レール11」について、イ号図面の図1において「9」と付番されている部材と「11」と付番されている部材とはもともと別々の要素であり、これらは溶接によって接続して一体とされているものと考えられ、溶接線を境界に端部側が誘導レール9であり、吊上機32側が昇降レール11となる旨主張している。
しかし、前記(i)の請求人の主張及び前記上申書の主張によれば、イ号図面の図1中、「9」と付番されている部分は、これよりも一回り小さく形成された回転レール3の先端部を受けて回転レールと昇降レール11とを重なり合わせるための部材が、昇降レールの先端部に溶接によって一体化されてなるものと認められるから、これは、昇降レールの先端部に固定的に設けられた単なる「連結用端部」というべきものであって、前記IIの3で説示したところの本件発明における誘導レールというべき「連結(接続)・解除可能な独立した別部材からなるもの」に相当するものではない(なお、請求人は、「継合」をレールどうしが重なり合う意味で用いているようであるが、その意味では継合と連結とは重複する概念であるから、以下「連結」という1つの用語のみを用いる。)。
したがって、「イ号図面の図1中、「9」と付番されている部分が、車輪付吊具の移動を円滑に遂行させ、また、回転レールを誘導するものであって、本件発明における誘導レールと同じ機能を発揮するものである」とする前記(ii)の請求人の主張は、採用できない。
そして、イ号図面の図1〜3及びイ号写真の写真2によれば、この連結用端部9は、昇降レール11の葉編装置側に位置する先端部にやや上向きに傾斜して設けられていることが看取される。
してみると、イ号物件には、そもそも、「誘導レール」というべきものに相当する別部材は備えられていないものであるから、イ号物件における吊上機については、これを、請求人の分説した前記構成a、bのように、「誘導レール9を備えた吊上機32であって、この誘導レール9の端部に接続して設けられた昇降レール11を備えた走行可能な吊上機32」と把握するのは適切でなく、「後記する回転レールと連結可能な昇降レールを備えた走行可能な吊上機」と把握するのが相当である。
(1-2)「車輪がその上を走行できる走行可能な葉編装置」について
請求人の分説した構成aにいう「この車輪付吊具6の車輪がその上を走行できる走行可能な葉編装置31」及び被請求人の分説した構成aにいう「車輪付吊具の車輪がその上を走行できる走行可能な葉編装置」なる文言は、必ずしも意味の明りょうなものとはいい難いが、前記IIの3で説示したところを考慮すれば、これらは、要するに、請求人の分説した構成b以下の「回転レール3、昇降レール11及び(又は)レール34,35」や被請求人の分説した構成b以下の「回転レール、昇降レール及び(又は)レール」の上を、車輪付吊具の車輪が走行できることを述べたものと解される。
してみると、イ号物件における葉編装置については、請求人や被請求人の分説したように把握するのは適切でなく、「収穫された葉たばこを吊す車輪付吊具を備えた走行可能な葉編装置」と把握するのが相当である。
(1-3)まとめ
したがって、請求人、被請求人のそれぞれ分説した構成a、bはともに適切ではなく、イ号物件における葉編装置と吊上機とについては、合わせて、「収穫された葉たばこを吊す車輪付吊具を備えた走行可能な葉編装置と、後記する回転レールと連結可能な昇降レールを備えた走行可能な吊上機と」と把握するのが相当である。
(2)請求人の分説した構成g、eについて
(2-1)前記(1)で述べたように、イ号物件における昇降レール11の連結用端部9はやや上向きに傾斜して設けられているものであるところ、イ号図面の図2、3によれば、イ号物件においては、一組の葉編み終了後、このやや上向きに傾斜している連結用端部9は、葉編装置31の葉編テーブル1を回転させたときに、葉編テーブル1の面に対して垂直に立設した回転レール3の先端部を受けるのであるから、そのためには、葉編テーブル1の回転は垂直位置をやや越えたものとなると認められ、したがってまた、このとき、葉編テーブル1に立設した回転レール3(の先端部)は水平状態を越えてやや下向き傾斜状態になるものと推認できる。
したがって、イ号物件における一組の葉編み終了後の葉編テーブルの回転度合及び回転レール(の先端部)の位置状態について、請求人の分説した構成gのように、「前記葉編テーブル1を・・・垂直位置に回転させたときに、水平状態になった前記回転レール3の先端部」とするのは適切でない。
(2-2)このように、イ号物件においては、一組の葉編み終了後の葉編テーブルの回転は垂直位置をやや越えたものになるから、葉編テーブルは、水平位置から垂直位置を越えた位置にまで回転可能なものであると認められる。
したがって、イ号物件における葉編テーブルの回転可能度合について、請求人の分説した構成eのように、単に、「水平位置から垂直位置に回転可能」とするのは適切でない。
(3)請求人の分説した構成hについて
前記IIIの2の(2)で説示したように、イ号物件における「前記葉編装置31を前記吊上機32に連結し位置決めする連結部材44を備えた」は、省略することができる。
(4)まとめ
以上を考慮すると、本件発明の構成要件と対比すべきイ号物件の構成は、前記IIIの2の(2)に示した【イ号構成】のように分説するのが相当である。

IV イ号物件の本件発明各構成要件充足性の判断

1 構成要件A充足性について
(1)イ号構成にいう「葉編装置」が本件発明の構成要件Aにいう「この車輪付吊具の車輪がその上を走行できる誘導レール」を備えないことは、イ号構成Aと本件発明の構成要件Aの文言上明らかである。また、イ号構成にいう「葉編装置」が本件発明の構成要件Aにいう前記誘導レールを備えないことから、イ号構成にいう「吊上機の昇降レール」は、本件発明の構成要件Aにいう「この葉編装置の前記誘導レールと連結可能な」ものでないことが明らかである。
したがって、イ号物件は本件発明の構成要件Aを充足しない。
(2)請求人は、判定請求書6〜7頁の「本件特許発明とイ号物件の技術的対比」の表等において、請求人の分説した構成a、bが本件発明の構成要件Aと部分一致する旨主張するが、同構成a、bの内容が妥当でないことは前説示〔IIIの4の(1)〕のとおりであるから、請求人の主張は失当である。

2 構成要件B充足性について
(1)本件発明の構成要件Bにおいては、葉編テーブルは水平位置から垂直位置に回転可能と規定するのみであって、さらに垂直位置を越えた位置にまで回転可能なものであることを排除するものではない。また、イ号構成にいう「葉編テーブル」は、水平位置から垂直位置を越えた位置に回転可能なものであって、当然、水平位置から垂直位置に回転可能なものであるから、イ号構成にいう「葉編装置」は、水平位置から垂直位置に回転可能な葉編テーブルを備えたものとなる。
したがって、イ号構成は明らかに本件発明の構成要件Bを充足する。
(2)被請求人は、判定請求答弁書10頁1〜19行の「葉編テーブルの回転角度について」において、本件発明における葉編テーブルの回転角度はイ号物件におけるそれを包含するものではない旨主張するが、その主張が失当であることは明らかである。

3 構成要件Cについて
(1)前記2で説示したように、本件発明においては、葉編テーブルは水平位置から垂直位置を越えた位置にまで回転可能なものであることを排除するものではないところ、本件発明の構成要件Cでは、葉たばこ乾燥装置への葉編み吊込装置が、「一組の葉編み終了後、前記葉編テーブルを前記車輪付吊具と共に垂直位置に回転させたときに、水平状態になった前記回転レールの先端部が、前記吊上機の昇降レールに接続した前記誘導レールの先端部に連結する機構を備えたものである」と規定するのみであって、当該機構が、「一組の葉編み終了後、前記葉編テーブルを前記車輪付吊具と共に垂直位置を越えた位置に回転させたときに、やや下向き傾斜状態になった前記回転レールの先端部が、前記吊上機の昇降レールの先端部に連結するものであること」を排除するものではない。
しかし、イ号構成C’にいう「機構」は、回転レールの先端部が直接、吊上機の昇降レールに連結するものであって、本件発明の構成要件Cにいう「機構」のように、回転レールの先端部が吊上機の昇降レールに接続した誘導レールの先端部に連結するものではない。そして、このことは、前説示のように、イ号構成にいう「葉編装置」が本件発明の構成要件Aにいう「誘導レール」を備えないことからの当然の帰結である。
したがって、イ号物件は本件発明の構成要件Cを充足しない。
(2)請求人は、判定請求書6〜7頁の「本件特許発明とイ号物件の技術的対比」の表等において、イ号物件が請求人の分説した構成gと部分一致する旨主張するが、同構成gの内容が妥当でないことは前説示〔IIIの4の(2)〕のとおりであるから、請求人の主張は失当である。

4 まとめ
以上のとおりであるから、イ号物件は、文言上、本件発明の構成要件A及びCを充足しないが、この点について、請求人の主張する均等が成立するか否かについて、さらに検討する。

V 均等の成否についての判断

1 請求人の主張の概要
請求人は、判定請求書9頁3行〜16頁17行において、要旨次の(1)〜(4)のような均等の主張をしている(請求人の主張する相違点4については、イ号構成の本件発明構成要件充足性を判断する上で省略することができるものであり、しかも、請求人はこの相違点について均等を主張するものでないので、取り上げない。)。
「(1)本件発明は、葉編テーブルを水平状態から垂直状態に90度回転させた後、回転レールを次のレールに接続して車輪付吊具を移動させることを最大の特徴とするものである。
(2)本件発明では、誘導レールが葉編装置に備えられているのに対して、イ号物件では、誘導レールが吊上機側に備えられている点で両者は相違するが(相違点1)、誘導レールがいずれの部材に備えられていたとしても実質的な相違点ではなく、たとえ相違点があるとしても均等の範囲に含まれる。
(3)本件発明では、誘導レールと連結可能に昇降レールが吊上機に備えられているのに対し、イ号物件では、誘導レールと接続されて昇降レールが吊上機に備えられている点で両者は相違するが(相違点2)、両者とも誘導レールを介して回転レールと昇降レールとが接続されるものであるから実質的な相違点ではなく、たとえ相違点があるとしても均等の範囲に含まれる。
(4)本件発明では、葉編装置と吊上機の連結が、回転レールの先端部が吊上機の昇降レールに接続した誘導レールの先端部に連結することで行われるのに対して、イ号物件では、それが、回転レールの先端部が吊上機の昇降レールに接続した誘導レールの先端部に継合することで行われる点で両者は相違するが(相違点3)、両者とも誘導レールと回転レールとが接続されるものであるから実質的な相違点ではなく、たとえ相違点があるとしても均等の範囲に含まれる。」

2 被請求人の主張の概要
(1)これに対し、先ず、被請求人は、判定請求答弁書1頁下から2行〜5頁21行において、請求人の主張する前記相違点1について、要旨次の(1)〜(6)のような主張をしている。
「(1)イ号物件は、そもそも均等の対象となる誘導レールを具備していないから、本件発明の誘導レールに対応する部材を欠くイ号物件は、均等論の対象外というほかはないが、あえて、イ号物件の昇降レール上向き屈曲端部を誘導レールと仮定して、以下意見を述べる。
(2)(特許発明の本質的部分について)本件発明は、「誘導レールを備えた葉編装置」を発明の大前提にしており、その特徴事項は、葉編装置上の回転レールと誘導レール、及び吊上機の昇降レールとの密接な連携機構によって構成されている。請求人の主張するように、誘導レールの設置部材が発明の本質的部分でないとすれば、本件発明は、「誘導レールを備えた走行可能な葉編装置と、この誘導レールと連結可能な昇降レールを備えた吊上機」からなる点を含めて、回転レール、誘導レール、昇降レールの設置部材相互の関連機構は全く意味をなさなくなり、発明自体が成り立たない。本件発明の誘導レールは、吊具が走行可能であればよいのではなく、それが回転レールを搭載する葉編装置に固定されていることで、初めて葉編装置の回転レールと吊上機の昇降レールの確実な連結を可能にしているのである。
したがって、誘導レールが葉編装置に固定されていることは、本件発明の核となる本質的な要件である。
(3)(目的、作用効果の同一性について)本件発明は、誘導レールの設置部材を含めて成り立っており、誘導レールのみの機能をとりだして比較することは不当である。
ちなみに、イ号物件では、葉編装置上の回転レールと吊上機上の昇降レール端部(誘導レール)との連結位置決めは不安定で、イ号物件は本件発明の劣悪構造に当たり、同一の作用効果を奏さない。
(4)(製造時の置換容易性について)イ号物件の誘導レール部分は、昇降レールの端部を上向きに構成したもので、吊上機に水平に固定されてはいない。かかる上向き構造は、イ号物件における回転レールの回動終点角度と不可分の関係にあり、回転レールの回動が水平位置までに特定されている本件発明から、製造時に置換容易ではない。
(5)(出願時の置換容易性について)イ号物件の誘導レールの出願時の置換容易性に関しては、これを容易ではないとする請求人に同意する。
(6)(出願手続における意識的除外事項について)本件発明の出願時における特許請求の範囲において、誘導レールの設置位置を葉編装置と明確に特定し、明細書全般の記載に徴しても、吊上機側設置を暗示する言及が皆無である事実から、誘導レールを吊上機側に設置することは、出願時における意識的除外又は出願人の認識限度外に当たる。」
(2)次に、被請求人は、判定請求答弁書5頁22行〜7頁7行において、請求人の主張する前記相違点2について、要旨次の(7)〜(12)のような主張をしている。
「(7)イ号物件では、誘導レールを介して回転レールと昇降レールが接続されているのではなく、回転レールは直接昇降レールの端部に接続される。かかる相違点は、本件発明とイ号物件の本質的な差異であり、これにより、本件発明では、吊上機の連結レバー等の操作により、葉たばこ移動時に誘導レールと昇降レールを接続し、吊上機の昇降レール昇降時にこれを簡単に分離する機構となっているが、イ号物件では、吊上機側の昇降レールの端部が誘導レールで、両者は一体であることから、これを接続したり切り離すことはできない。
(8)(特許発明の本質的部分について)本件発明の回転レール、誘導レール、昇降レールの三本のレールの連結構造は、本件発明の本質的部分に属する。これをイ号物件のように回転レールと昇降レールにしては、本件発明は成り立たない。
(9)(目的、作用効果の同一性について)誘導レールは、本件発明では、回転レールと同じ葉編装置に搭載されて移動するのに対して、イ号物件では吊上機の昇降レールと一体的に作動し、本来独立した誘導レールとはいえない。したがって、両者は、目的も実際の作動機構もまったく異なる。
(10)(製造時の置換容易性について)イ号物件において、回転レールを直接昇降レール端部に連結する技術思想は、本件発明のごとき葉編装置上の固定誘導レールの容易な置換技術にはあたらない。
(11)(出願時の置換容易性について)出願時の置換容易性については、これを容易ではないとする請求人に同意する。
(12)(出願手続における意識的除外事項について)相違点1の検討と同様の理由から、本件発明の特許請求の範囲の記述から、出願時における意識的除外又は出願人の認識限度外に当たる。」
(3)さらに、被請求人は、判定請求答弁書7頁8行〜9頁13行において、請求人の主張する前記相違点3について、要旨次の(13)〜(18)のような主張をしている。
「(13)イ号物件の昇降レールの端部を「誘導レール」と言い換えても、誘導レールが吊上機にあり、本件発明のように葉編装置上に固定されてないことには変わりない。誘導レールが葉編装置にあるか吊上機にあるかによっては、葉編装置と吊上機の連結機構はまったく異なる。
(14)(特許発明の本質的部分について)葉編装置と吊上機の連結は、誘導レールが葉編装置にあるか吊上機にあるかでまったく異なるから、誘導レールが回転レールと同じ葉編装置に固定されていることは、本件発明の本質的部分に属する。
(15)(目的、作用効果の同一性について)誘導レール取り付け部材の相違により、前述のようには、目的は同一でも作用効果が異なる。すなわち、誘導レールが回転レールと同じ葉編装置に固定されている本件発明では、両者の位置決め連結に特別の手段は不要であるが、誘導レールが吊上機にあるイ号物件では、葉編装置と吊上機を固定する補助的連結部材を要する。したがって、両者は目的は同じでも作用効果は異なる。
(16)(製造時の置換容易性について)誘導レールの設置部材による差異が重要であって、葉編装置の回転レールを吊上機の昇降レールの端部に直接連結して、葉編装置と吊上機を接続するイ号物件は、回転レールを同じ葉編装置上の固定誘導レールとの連結により、葉編装置と吊上機を接続する本件発明とは、製造時であっても置換容易性はない。
(17)(出願時の置換容易性について)前述の置換容易性は出願時にもなく、イ号物件はきわめてユニークな発明であるから、出願時に置換容易性がないとする請求人の主張に同意する。
(18)(出願手続における意識的除外事項について)本件特許の特許請求の範囲の記述からは、イ号物件の葉編装置と吊上機の連結機構は出願時に意識的に除外されているか又は出願人の認識限度外に相当することは明白である。」

3 均等成立の要件
(1)最高裁平成6年(オ)第1083号判決(第3小法廷平成10年2月24日言渡)においては、均等成立の要件として次の5要件(以下「均等5要件」という。)が示され、特許発明に係る願書に添付した明細書の特許請求の範囲に記載された構成中に対象製品等(本件では「イ号物件」)の構成と異なる部分(以下「相違部分」という。)が存在する場合であっても、イ号物件が特許請求の範囲に記載された構成と均等なものとして、特許発明の技術的範囲に属するというためには、均等5要件をすべて満たす必要があるとされている。
第1要件:(非本質的部分)相違部分が特許発明の本質的部分ではないこと。
第2要件:(置換可能性)相違部分をイ号物件におけるものと置き換えても、特許発明の目的を達成することができ、同一の作用効果を奏すること。
第3要件:(置換容易性)相違部分をイ号物件におけるものと置き換えることが、イ号物件の実施の時点において、当業者が容易に想到することができたものであること。
第4要件:(自由技術)イ号物件が特許発明の出願時における公知技術と同一又は当業者が公知技術から出願時に容易に推考できたものではないこと。
第5要件:(意識的除外禁反言)イ号物件が特許発明の出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの特段の事情もないこと。
そして、前記最高裁判決は、均等5要件をすべて満たす場合に、このように均等成立とする理由を次のように説示している。
「(1)特許出願の際に将来のあらゆる侵害態様を予想して明細書の特許請求の範囲を記載することは極めて困難であり,相手方において特許請求の範囲に記載された構成の一部を特許出願後に明らかとなった物質・技術等に置き換えることによって,特許権者による差止め等の権利行使を容易に免れることができるとすれば,社会一般の発明への意欲を減殺することとなり,発明の保護,奨励を通じて産業の発達に寄与するという特許法の目的に反するばかりでなく,社会正義に反し,衡平の理念にもとる結果となるのであって、
(2)このような点を考慮すると,特許発明の実質的価値は第三者が特許請求の範囲に記載された構成からこれと実質的に同一なものとして容易に想到することのできる技術に及び,第三者はこれを予期すべきものと解するのが相当であり、
(3)他方,特許発明の特許出願時において公知であった技術及び当業者がこれから右出願時に容易に推考することができた技術については,そもそも何人も特許を受けることができなかったはずのものであるから,特許発明の技術的範囲に属するものということができず、
(4)また,特許出願手続において出願人が特許請求の範囲から意識的に除外したなど,特許権者の側においていったん特許発明の技術的範囲に属しないことを承認するか,又は外形的にそのように解されるような行動をとったものについて,特許権者が後にこれと反する主張をすることは,禁反言の法理に照らし許されないからである。」
(2)したがって、当審においても、以下、請求人の均等の主張について、本件発明とイ号物件との相違部分を把握した上、均等5要件の成否を検討することとする。

4 本件発明とイ号物件との相違部分の把握
前記IVにおいて、イ号物件が文言上本件発明の構成要件を充足しないと認定した構成要件A及びCについて、これらとイ号構成A’及びC’とを全体として対比すると、本件発明とイ号物件との間に、次の相違部分(以下「本件相違部分」という。)を抽出することができる。
【本件相違部分】
「本件発明では、葉編装置が誘導レールを備えることから、葉編装置上の回転レールと吊上機上の昇降レールとの連結を、「当該誘導レールを介して行う」のに対し、イ号物件では、葉編装置が誘導レールを備えない(もちろん吊上機も誘導レールを備えない。)ことから、葉編装置上の回転レールと吊上機上の昇降レールとの連結を、「直接行う」点。」
なお、請求人は、前記IIIの3の(1)における請求人の分説したイ号物件の構成aのように、イ号物件が誘導レールを吊上機側に備えているとの前提のもとに、前記Vの1のように、本件発明とイ号物件との間に相違点1〜3を抽出しているが、イ号物件が、葉編装置側はおろか吊上機側においても誘導レールを備えないことは、前記IIIの2の(2)に【イ号構成】として示したとおりであるから、請求人の当該相違点の抽出は適切でない。

5 均等5要件の成否の検討
(1)第1要件について
(1-1)本件公報(甲第1号証)によれば、本件特許明細書には図面(図1〜7)とともに次のア〜オの記載があることが認められる。各冒頭に段落番号を示す。
ア 【0002】「【従来の技術】葉たばこ乾燥に際して乾燥室内に葉たばこを略均一に配置、吊込む作業が必要である。これを可能にする器具として、図1(a)に示すミシン葉編機によるステッキ葉編み用吊具41、図1(b)に示すバネ式葉編み用吊具42、図1(c)に示すラック葉編み用吊具43が代表的なものである。これら、一組の吊具に葉編みできる葉たばこの量は10kg〜30kg程度で、用途により各種のサイズがある。この作業工程として、上記吊具41〜43を用いての(1)葉編作業、(2)乾燥室への移動運搬作業、(3)乾燥室内への吊込作業がある。」
イ 【0003】「【発明が解決しようとする課題】従来、この(1)〜(3)の作業はそれぞれ分離独立した作業体系として扱われており、重量物運搬や中腰作業、上段・下段への吊込作業等の過重労働を作業者に課す結果となり、葉たばこ生産における省力化、規模拡大への大きなネックとなっていた。《中略》本発明が解決しようとする課題は、前記の(1)〜(3)の作業の有機的結合を図り、葉編みから吊込までの一貫作業体系を作ることにより、重量物運搬、中腰、吊込作業を廃除し、生産性に資することにある。」
ウ 【0004】「【課題を解決するための手段】上記課題を解決するための手段として、本発明は、収穫された葉たばこを吊す車輪付吊具およびこの車輪付吊具の車輪がその上を走行できる誘導レールを備えた走行可能な葉編装置と、この葉編装置の前記誘導レールと連結可能な昇降レールを備えた走行可能な吊上機と、この吊上機の昇降レールに連結されるレールを備えた乾燥室とからなる葉たばこ乾燥装置への葉編み吊込装置であって、前記葉編装置には、水平位置から垂直位置に回転可能な葉編テーブルを備え、この葉編テーブルが水平位置にあるときに垂直状態になる回転レールを前記葉編テーブルに立設し、前記回転レールに車輪が位置するように前記車輪付吊具を横向きに配置し、一組の葉編み終了後、前記葉編テーブルを前記車輪付吊具と共に垂直位置に回転させたときに、水平状態になった前記回転レールの先端部が、前記吊上機の昇降レールに接続した前記誘導レールの先端部に連結する機構を備えたものである。」
エ 【0012】「(3)車輪付吊具の搬送葉編テーブル1のテーブル固定レバー5を引き出して、葉編テーブル1の固定を外す。葉編テーブル1をゆっくり起こして、垂直にする。これにより、葉たばこの葉の部分が図1に示すように吊り下げられた状態となる。吊上機32の昇降レール11を葉編装置31の葉編み台位置(下限)に移動する。葉編装置31を回転して、葉編装置31の誘導レール9と吊上機32の昇降レール11を連結し、葉編装置31の車輪10のブレーキ(図示せず)を締め付ける(図2および図3参照)。車輪付吊具6をゆっくり押して、誘導レール9および昇降レール11上を車輪26が回転する状態で、吊上機32の昇降レール11に車輪付吊具6を移動する。この状態では、葉編装置31の誘導レール9は吊上機32の昇降レール11に接続されているが、葉編終了した葉たばこを数組吊上機32に移送した時点で吊上機32側の連結レバー12を操作することにより簡単に切り離すことができる。上記の作業を繰り返して、吊上機32の昇降レール11の長手方向に所定個数に達するように、車輪付吊具6を載せる。」
オ 【0014】「【発明の効果】上述したように、本発明によれば下記の効果を奏する。
(1)葉編作業-持運び移動-乾燥室へ吊込みという、煩雑かつ労力を要する工程が単純な軽作業に改善でき、従来の重労働からの解放と大幅な時間短縮が可能となる。
(2)葉編装置において、一組の葉編み終了後、同装置の葉編テーブルと吊具を90°回転させたときに、葉編装置側の回転レールが吊上機に接続した誘導レールの上に連結する機構は、葉編作業から吊上機に簡単かつ効果的に自動的に移行することができる。
(3)葉編装置をなす誘導レールと吊上機の昇降レールの接続において、連結レバーとストッパーを備え自在に接続分離できる機構により、吊上機昇降の際は分離し、葉たばこ移動の際は自在に連結することができる。」
本件特許明細書の前記ア〜オの記載(なお、前記オの「発明の効果」の(3)は、特許発明にさらに、誘導レールと昇降レールとの特別の接続分離機構が備わったときの効果である。)によれば、従来、葉編作業、乾燥室への移動運搬作業及び乾燥室内への吊込作業は、それぞれ分離独立した作業として扱われていてこれらが有機的に結合していなかったため、作業者に過重な負担をかけていたものであったところ、本件発明では、葉編装置から乾燥室まで葉たばこを容易に移動させ得るようにして前記の各作業を一貫した連続工程として扱い、もって葉たばこ乾燥における生産性を向上させるという目的を達成するには、先ず、葉編装置から吊上機までを、(葉たばこを吊した)個々の吊具がその上を走行できる1対の実質上水平状態に連結したレールによって結び、次に、吊上機から乾燥室までを、吊上機上に一旦蓄えられた吊具がその上を走行できる1対の水平状態に連結したレールによって結べばよいことを見いだしたものであることが理解される。
(1-2)ところで、職権で調査したところによれば、本件発明の出願前に国内において頒布された刊行物であって、本件発明の審査過程における拒絶理由の中で本件発明と対比すべき先行技術を示すものとして引用された特公平7-28号公報には、次のカ〜コの記載がある。
カ 【0002】「【従来の技術】一般に葉たばこ乾燥における生葉の乾燥機への吊込は、先ず多数の生葉をバインダーなどのハンガーに吊持せしめ、これを乾燥機の乾燥室に多段式に吊込んで行うが、葉編機などにより生葉をハンガーに吊持せしめる葉編作業場所から、葉編が終わって多数の生葉を吊持したハンガーを1本づつ乾燥室まで運んで乾燥室の吊り棚レールに順次架装して行っている。また、同様に乾燥後の乾葉取卸しも、乾燥室の吊り棚レールからハンガーを1本づつ順次取卸して取り外し作業所まで運び、そこでハンガーから乾葉を取り外している。」
キ 【0003】〜【0004】「【発明が解決しようとする課題】しかしながら、ハンガーを乾燥室最上段の吊り棚レールに架装したり、取卸したりするためには踏み台などを使わなければならず、多量の葉たばこを吊したハンガーを持って踏み台への上り下りを何度も繰り返し行わなければならない。また共同乾燥施設などの大規模施設ではハンガーに生葉を挟み込み若しくは葉編したり、ハンガーから乾葉を取り外したりする場所と乾燥機とがかなり離れた場所に設けられている場合も多いので、その間を葉たばこを吊持したハンガーを持って何回も往復しなければならない。しかも葉たばこを多数吊持したハンガーは非常に重い。以上のように葉たばこ乾燥における生葉吊込、乾葉取卸などに伴う一連の作業は、従来重労働で、且多くの人手を必要とするが、《中略》作業の省力化が強く要望されている。本発明はかかる現況に鑑みてなされたもので、葉たばこ乾燥に伴う生葉の吊込、乾葉の取卸などの一連の作業を大幅に省力化することを目的とするものである。」
ク 【0005】「【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために本発明の葉たばこ乾燥作業省力化システムでは、入り口を同一方向に向けて横一列に配置され、各々その左右側壁には左右一対の吊込みレールを複数段備える複数の乾燥室と、乾燥室の前の床面に乾燥室の列と平行に設置された軌道と、乾燥室の吊込みレールの間隔とほぼ同じ間隔を有する左右一対のガイドレールを昇降自在に備えると共に走行手段を備え軌道上に走行移動可能に配置された昇降ラックと、軌道を挟んで乾燥室と反対側の床面に複数個が軌道と平行に並べられ、その各々が昇降ラックのガイドレールの間隔とほぼ同じ間隔に設けられた左右一対のガイド部を有する仮吊りラックと、箱枠状に形成されてその左右上端部に葉たばこを吊持したハンガーを架装するハンガー受け部を備え、各仮吊りラックのガイド部にスライド自在に架装される吊込みラックと、望ましくは各仮吊りラックに対して1個宛配備され仮吊りラックの近傍に配置された葉詰作業台とを備えるものである。
ケ 【0006】「【作用】以上のように構成した葉たばこ乾燥作業省力化システムにあっては、葉詰作業台で葉詰したハンガーを作業台近くに配置した仮吊りラックに架装した吊込みラックに取り敢えず吊込んでおき、この吊込みラックを昇降ラックに移して乾燥室に運び、昇降ラックのガイドレールを昇降させて乾燥室の所要の吊込みレールに吊込みラックごとまとめて吊込む。また、乾燥後の乾葉を昇降ラックで乾燥室から吊込みラックごとまとめて取卸して、作業台近くの仮吊りラックまで移送する。」
コ 【0025】「【効果】本考案は以上のように構成したので、生葉の吊込みに際しては葉詰作業台で葉詰したハンガーを作業台近くに配置した仮吊りラックに架装した吊込みラックに取り敢えず吊込み、この吊込みラックを昇降ラックで乾燥室に運び、昇降ラックのガイドレールを昇降させて乾燥室の所要の吊込みレールにラックごとまとめて吊込むことができ、乾葉の取卸しに際しては乾燥室内の乾葉を昇降ラックに吊込みラックごとまとめて取り降ろし、そのまま作業台近くの仮吊りラックまで運んぶことができるをもって、葉たばこを吊したハンガーを1本づつ持って作業台と乾燥室の間を何回も往復したり、ハンガーをもって踏み台への上り下りを何度も繰り返す必要がない。従って、葉たばこ乾燥における生葉吊込、乾葉取卸などに伴う一連の作業は労働が大幅に軽減され、作業員人数の大幅な削減が可能になる。」
特公平7-28号公報の前記カ〜コの記載によれば、本件発明の出願前にすでに、葉たばこ乾燥における生葉の吊込み、乾葉の取卸しなどの一連の作業を大幅に省力化することを目的として、葉詰作業台(すなわち「葉編装置」)で葉詰めしたハンガー(すなわち「吊具」)を作業台近くに配置した仮吊りラックに架装した吊込みラックに取り敢えず吊込んでおき、この吊込みラックを、軌道上を走行可能な昇降ラック(すなわち「吊上機」)に移して乾燥室に運び、昇降ラックのガイドレール(すなわち「昇降レール」)を昇降させて乾燥室の所要の吊込みレールに吊込みラックごとまとめて吊込むことを可能とする葉たばこ乾燥作業省力化システム(すなわち「葉たばこ乾燥装置への葉編み吊込装置」)とする構成を採用すること、つまり、吊上機から乾燥室までを、吊上機上に一旦蓄えられた吊具がその上を走行できる1対の水平状態に連結したレールによって結ぶことが当業界で公知であったことが認められるものの、葉編装置から吊上機までを、個々の吊具がその上を走行できる1対の実質上水平状態に連結したレールによって結ぶことは、前記公報の記載からは全く知られない。
(1-3)前記(1-1)の本件発明について理解されるところと前記(1-2)で検討した先行技術が教えるところとを照らし合わせてみると、本件発明は、葉編装置から乾燥室まで葉たばこを容易に移動させ得るようにして前記の各作業を一貫した連続工程として扱い、もって葉たばこ乾燥における生産性を向上させるという目的を達成するためには、先行技術が教えるところの、吊上機から乾燥室までを、吊上機上に一旦蓄えられた吊具がその上を走行できる1対の水平状態に連結したレールによって結ぶことに加え、さらに、葉編装置から吊上機までを、個々の吊具がその上を走行できる1対の実質上水平状態に連結したレールによって結べばよいことを見いだし、そうするための具体的構成として、本件発明では、「葉編装置に水平位置から垂直位置に回転可能な葉編テーブルを設け、この葉編テーブルに、これが水平位置にあるときに垂直状態になる回転レールを立設し、一組の葉編み終了後、葉編テーブルを垂直位置に回転させたときに、回転レールが水平状態になるようにする」という構成を採用した点に最大の特徴を有するものであると認められる。
(1-4)このように、本件特許明細書及び図面の記載並びに本件発明と対比すべき先行技術を示すものとして引用された特公平7-28号公報の記載を併せ考慮すると、本件発明の本質的部分、すなわち、特許請求の範囲に記載された本件発明の構成のうちで、本件発明特有の課題解決手段を基礎付け、かつ、本件発明特有の作用効果を生じさせるところの、本件発明の技術的思想の中核をなす特徴的部分は、
「葉編装置に水平位置から垂直位置に回転可能な葉編テーブルを設け、この葉編テーブルに、これが水平位置にあるときに垂直状態になる回転レールを立設し、一組の葉編み終了後、葉編テーブルを垂直位置に回転させたときに、回転レールが水平状態になるようにする点」
にあるものと認められる。
してみると、本件相違部分をなす葉編装置上の誘導レールの有無は本件発明の本質的部分に関わるものとは到底いえないから、本件相違部分は、本件発明の本質的部分ではないというべきであり、本件相違部分をイ号物件におけるものと置き換えて、葉編装置上の回転レールと吊上機上の昇降レールとの連結を、葉編装置上の誘導レールを介して行うことに代え直接行うようにしても、全体として、本件発明の技術的思想と別個のものと評価されるものではない。
よって、本件は第1要件を満たす。
(1-5)被請求人は、前記2の(1)の(2)において、「本件発明の(請求人のいう)誘導レールは、吊具が走行可能であればよいのではなく、それが回転レールを搭載する葉編装置に固定されていることで、初めて葉編装置の回転レールと吊上機の昇降レールの確実な連結を可能にしている。」と主張するが、単なる中継ぎレールに当たる誘導レールを備えなくても、連結位置決めさえ慎重かつ的確にすれば、葉編装置の回転レールと吊上機の昇降レールとを確実に連結することは可能であると認められるから、被請求人の主張は失当である。被請求人の前記2の(1)〜(3)における他の主張を検討しても、前記(1-4)の判断は左右されない。

(2)第2要件について
(2-1)イ号物件が、「葉編装置上の回転レールと吊上機上の昇降レールとの連結を直接行う」という本件相違部分の存在にもかかわらず、葉編装置から乾燥室まで葉たばこを容易に移動させ得るようにして、葉編作業、乾燥室への移動運搬作業及び乾燥室内への吊込作業を一貫した連続工程として扱い、もって葉たばこ乾燥における生産性を向上させるという前認定の本件発明の目的を達成し、所望の作用効果を奏し得るものであることは、当業者にとってほとんど自明のことといえるものである。
してみると、本件相違部分をイ号物件におけるものと置き換え、葉編装置上の回転レールと吊上機上の昇降レールとの連結を、葉編装置上の誘導レールを介して行うことに代え直接行うようにしても、本件発明の目的を達成することができ、本件発明と同一の作用効果を奏するものであることが明らかである。
よって、本件は第2要件を満たす。
(2-2)被請求人は、前記2の(1)の(3)において、「イ号物件では、葉編装置上の回転レールと吊上機上の昇降レール端部との連結位置決めは不安定で、イ号物件は本件発明の劣悪構造に当たり、同一の作用効果を奏さない。」と主張するが、仮に、イ号物件に当該連結位置決め上の問題が多少あったとしても、イ号物件も、前認定のとおり、本件発明の目的を達成し所望の作用効果を奏し得るものと推認できるから、被請求人の主張は失当というほかない。被請求人の前記2の(1)〜(3)における他の主張を検討しても、前記(2-1)の判断は左右されない。

(3)第3要件について
(3-1)一般に、公知となったある装置の発明について、そこで使用されている複数の部材のうち、いずれかの部材の使用が省略可能かどうかということは、省略による当該発明の目的の達成度合等を勘案しながら当業者が日常作業的に常に検討することであり、このことは、本件発明についても例外ではない。
本件発明において、単なる中継ぎレールに当たる葉編装置上の誘導レールの使用を省略したとしても本件発明の目的を達成することは、当業者にとってほとんど自明のことといえるから、本件相違部分をイ号物件のものと置き換えることは、イ号物件の実施の時点において、当業者が容易に想到することができたものというべきである。
よって、本件は第3要件を満たす。
(3-2)被請求人は、前記2の(1)の(4)において、「イ号物件の(請求人のいう)誘導レール部分は、昇降レールの端部を上向きに構成したもので、吊上機に水平に固定されてはいない。かかる上向き構造は、イ号物件における回転レールの回動終点角度と不可分の関係にあり、回転レールの回動が水平位置までに特定されている本件発明から、製造時に置換容易ではない。」と主張するが、昇降レールの端部を上向きに構成することは、請求人、被請求人のそれぞれ分説したイ号物件の構成にも前認定のイ号構成にも係るものでない上、本件発明では、回転レールの先端部がやや下向き傾斜状態に回動する場合を排除しないことは、前記IVの3の(1)で説示したとおりであるから、被請求人の主張はその前提において失当である。被請求人の前記2の(1)〜(3)における他の主張を検討しても、前記(3-1)の判断は左右されない。

(4)第4要件について
イ号物件が本件発明の出願時における公知技術と同一ではなく、しかも、イ号物件が当業者が公知技術から本件出願時に容易に推考できたものでもないことは、本件発明の審査過程からも明らかであり、また、請求人、被請求人がともに認めるところでもある。
よって、本件は第4要件を満たす。

(5)第5要件について
(5-1)第5要件にいう「特段の事情」の存否について、イ号物件の「葉たばこ乾燥装置への葉編み吊込装置」につき、それを本件出願人(特許権者)が本件出願の手続において特許請求の範囲から意識的に除外したなど、特許権者の側においていったん本件発明の技術的範囲に属しないことを承認するか、又は外形的にそのように解されるような行動をとったものに該当するか否かの観点から以下検討する。
(5-2)本件の出願当初の明細書の特許請求の範囲の記載は、次のとおりである。
「【請求項1】収穫された葉たばこを吊す車輪付吊具およびこの車輪付吊具の車輪がその上を走行できる誘導レールを備えた走行可能な葉編装置と、この葉編装置の前記誘導レールと連結可能な昇降レールを備えた走行可能な吊上機と、この吊上機の昇降レールに連結されるレールを備えた乾燥室とからなる葉たばこ乾燥装置への葉編み吊込装置。
【請求項2】葉編装置において、一組の葉編み終了後、同装置の葉編テーブルと吊具を90°回転させたときに、葉編装置側の回転レールが吊上機に接続した誘導レールの上に連結する機構を備えた請求項1記載の葉たばこ乾燥装置への葉編み吊込装置。
【請求項3】葉編装置をなす誘導レールと吊上機の昇降レールの接続において、連結レバーとストッパーを備え自在に接続分離できる機構を備えた請求項1または2記載の葉たばこ乾燥装置への葉編み吊込装置。」
これに対して、本件審査過程において、請求項1及び3に係る発明に対して、特公平7-28号公報を引用文献として進歩性なしとの拒絶理由が通知されたところ、出願人(特許権者)は、拒絶理由の対象となっていない請求項2の構成を請求項1に取り込み請求項3を削除した形で(つまり、請求項2を独立請求項として)、特許請求の範囲について、次のとおりの補正をした。
「【請求項1】収穫された葉たばこを吊す車輪付吊具およびこの車輪付吊具の車輪がその上を走行できる誘導レールを備えた走行可能な葉編装置と、この葉編装置の前記誘導レールと連結可能な昇降レールを備えた走行可能な吊上機と、この吊上機の昇降レールに連結されるレールを備えた乾燥室とからなる葉たばこ乾燥装置への葉編み吊込装置であって、前記葉編装置には、水平位置から垂直位置に回転可能な葉編テーブルを備え、この葉編テーブルが水平位置にあるときに垂直状態になる回転レールを前記葉編テーブルに立設し、前記回転レールに車輪が位置するように前記車輪付吊具を横向きに配置し、一組の葉編み終了後、前記葉編テーブルを前記車輪付吊具と共に垂直位置に回転させたときに、水平状態になった前記回転レールの先端部が、前記吊上機の昇降レールに接続した前記誘導レールの先端部に連結する機構を備えたことを特徴とする葉たばこ乾燥装置への葉編み吊込装置。」
このような審査の経緯によれば、本件では、「葉編装置が誘導レールを備えること」について、本件出願当初から一貫して特許請求の範囲に記載されていることが認められるだけで、このことをもってしては、誘導レールを備えず葉編装置上の回転レールと吊上機上の昇降レールとの連結を直接行うものであるイ号物件について、それを本件出願人(特許権者)が本件出願の手続において特許請求の範囲から意識的に除外したなど、特許権者の側においていったん本件発明の技術的範囲に属しないことを承認するか、又は外形的にそのように解されるような行動をとったものと認めることはできない。
他に、本件には、イ号物件が本件発明の出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの特段の事情はない。
よって、本件は第5要件を満たす。
(5-3)被請求人の前記2の(3)の(18)において、「本件特許の特許請求の範囲の記述からは、イ号物件の葉編装置と吊上機の連結機構は出願人の認識限度外に相当する。」と主張するが、出願人の認識限度外であることが直ちに第5要件にいう「特段の事情」に当たるとはいえないから、被請求人の主張は採用できない。被請求人の前記2の(1)〜(3)における他の主張を検討しても、前記(5-2)の判断は左右されない。

(6)まとめ
以上によれば、イ号物件は、本件発明、すなわち本件特許明細書の特許請求の範囲に記載された構成と均等なものとして、その技術的範囲に属するものというべきである。
なお、請求人の主張する不完全利用発明の理論においては、不完全利用発明に該当する場合に、対象製品等は本件発明の技術的範囲に属するものとする判例と属さないものとする判例とがあり、また、前記最高裁判決以降、不完全利用発明に関しては均等の理論をもって判断するのが多くの下級審判決の教えるところであるところ、すでに、均等について判断を示したので、イ号物件が不完全利用発明に該当するか否かについては、改めて検討することはしない。

VI むすび

以上のとおりであるから、イ号物件、すなわちイ号図面、イ号写真及びそれらの説明書に示す「葉たばこ乾燥装置への葉編み吊込装置」は、特許第2997248号発明の技術的範囲に属するものというべきである。
よって、結論のとおり判定する。
 
別掲
 
判定日 2003-11-14 
出願番号 特願平10-257022
審決分類 P 1 2・ 1- YA (A24B)
最終処分 成立  
特許庁審判長 吉国 信雄
特許庁審判官 鈴木 美知子
杉原 進
登録日 1999-10-29 
登録番号 特許第2997248号(P2997248)
発明の名称 葉たばこ乾燥装置への葉編み吊込装置  
代理人 衞藤 彰  
代理人 井上 浩  

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