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審決分類 審判 訂正 2項進歩性 訂正しない F04B
審判 訂正 4項(134条6項)独立特許用件 訂正しない F04B
管理番号 1088885
審判番号 訂正2002-39051  
総通号数 50 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1990-02-20 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2002-02-19 
確定日 2003-12-04 
事件の表示 特許第2600317号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.手続の経緯
(1)本件訂正審判請求に係る特許第2600317号に係る発明についての出願は、昭和63年8月11日に特許出願(特願昭63-200392号)され、平成9年1月29日にその発明について特許権の設定登録がなされた。
(2)その後、株式会社ゼクセルより特許異議の申立(異議9-74818)がなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成10年7月27日に訂正請求書が提出され、平成10年8月18日付けでその訂正を認めて、特許維持の決定がなされ、平成10年9月21日に確定したものである。
(3)これに対して、株式会社ゼクセルヴァレオクライメートコントロールより特許無効審判(無効2000-35636)が請求され、特許無効審判請求書の副本が被請求人に送達され、その指定期間内である平成13年3月8日に訂正請求書が提出され、平成13年6月12日に口頭審理が行われ、平成13年8月15日に「訂正を認める。特許第2600317号の請求項1に係る発明についての特許を無効とする。審判費用は、被請求人の負担とする。」との審決が送達された。
(4)その後、平成13年9月12日に被請求人により東京高等裁判所に審決の取消しを求める訴え(平成13年(行ケ)408号)が提起された。
(5)一方、平成14年2月19日付けで本件発明の願書に添付した明細書の訂正を求める本件訂正審判(訂正2002-39051)が請求され、平成14年4月2日付けで訂正拒絶理由が通知され、その指定期間内の平成14年6月3日付けで意見書が提出されたものである。

II.請求の要旨
本件審判の請求の要旨は、特許第2600317号発明(昭和63年8月11日特許出願、平成9年1月29日設定登録)の願書に添付した明細書及び図面を、審判請求書に添付した訂正明細書のとおりに訂正しようとするものである。
(訂正の内容)
特許請求の範囲の請求項1の記載について、
「吸入室、吐出室およびクランク室を備え、該吐出室と該クランク室とを連通する給気通路に設けられた弁制御手段を介して、吸入圧力の変化に応じて揺動板の傾斜角を変化させて圧縮容量を制御するようにした可変容量圧縮機において、前記弁制御手段は、前記給気通路を開閉する開閉弁と、該開閉弁に結合し、前記吸入圧力の低下を検出して該開閉弁を開くように制御する感圧手段と、該感圧手段に可変荷重を加えて該感圧手段の圧力制御点を可変とする可変荷重入力手段とから構成されていることを特徴とする可変容量圧縮機。」との記載を、
「吸入室、吐出室およびクランク室を備え、該吐出室と該クランク室とを連通する給気通路に設けられた弁制御手段を介して、吸入圧力の変化に応じて揺動板の傾斜角を変化させて圧縮容量を制御するようにした車両空調用の可変容量圧縮機において、前記弁制御手段は、前記給気通路を開閉する開閉弁と、該開閉弁に結合し、前記吸入圧力の低下を検出して該開閉弁を開くように制御する感圧手段と、通常の圧縮運転において該感圧手段に外部からの信号による可変荷重を加えて、該感圧手段の圧力制御点を可変とし吐出室からクランク室に導入される吐出ガスの導入時期及び導入量を任意に制御する可変荷重入力手段とから構成されていることを特徴とする車両空調用の可変容量圧縮機。」と訂正する。
なお、訂正の対象となる明細書は、上記手続の経緯の(2)において確定した決定において認められた訂正に係る願書に添付された明細書である。また、下線は、対比の便のため当審で付したものである。

III.訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)特許請求の範囲の【請求項1】について、「可変容量圧縮機」を「車両空調用の可変容量圧縮機」(2箇所)に、「該感圧手段に可変荷重を加えて」を「通常の圧縮運転において該感圧手段に外部からの信号による可変荷重を加えて、」に、「可変とする可変荷重入力手段」を「可変とし吐出室からクランク室に導入される吐出ガスの導入時期及び導入量を任意に制御する可変荷重入力手段」に訂正することは、いずれも、構成要件を加えるものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当し、そして、「車両空調用の可変容量圧縮機」については、明細書の[産業上の利用分野]の項(本件特許公報の第1頁第1欄第14〜15行)及び(実施例1)の項(同第2頁第4欄第31〜32行)に、「通常の圧縮運転において該感圧手段に外部からの信号による可変荷重を加えて、」については、(実施例1)の項(同第3頁第6欄第42行〜第4頁第7欄第6行)及び(実施例2)の項(同第4頁第7欄第13〜15行及び第4頁第7欄第43行〜同頁第8欄第7行)に、「可変とし吐出室からクランク室に導入される吐出ガスの導入時期及び導入量を任意に制御する可変荷重入力手段」については、[課題を解決するための手段]の項(同第2頁第4欄第15〜20行)、(実施例1)の項(同第4頁第7欄第7〜11行)及び[発明の効果]の項(同第4頁第8欄第25〜31行)に記載されているので、いずれも、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(2)以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書き及び第2項の規定に適合する。

IV.訂正拒絶の理由
一方、平成14年4月2日付けで通知した訂正の拒絶の理由の概要は、次のとおりである。
「訂正後における特許請求の範囲に記載されている事項により構成されている発明は、上記特許出願の出願前に頒布された「特開昭62-282182号公報」(昭和62年12月8日発行。以下、「刊行物1」という。)及び「特開昭63-16177号公報」(昭和63年1月23日発行。以下、「刊行物2」という。)、並びに前記刊行物1、2、「実願昭60-17615号(実開昭61-134580号)のマイクロフィルム」(昭和61年8月22日発行。以下、「刊行物3」という。)及び「特開昭63-162996号公報」(昭和63年7月6日発行。)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。したがって、本件審判の請求は、平成6年法改正前の特許法第126条第3項の規定に適合しない。」

V.刊行物
そして、刊行物1(特開昭62-282182号公報)には、「本発明は容量可変コンプレッサにおける容量制御機構に関するものである。〔従来の技術〕カークーラにおいてはコンプレッサが自動車エンジンと連動するように設けられているので、」(第1頁下左欄第14〜18行)、「該駆動軸5は外端に設けたプーリ6を介してベルト7によりエンジン(図示せず)で駆動される。駆動軸5には公知の如くに角度可変ウオブル板8が設けられ、」(第2頁上右欄第7〜10行)、「容量調整弁Bにおいて、本体14の一側に圧力応動部Mが設けられる。圧力応動部Mは、本体14に固着された下蓋15に対してダイヤフラム16を挟持した状態で上蓋17を設けると共に該上蓋17にばね箱18を固着し、ばね箱18内に螺着した調整ねじ19とダイヤフラム16の上当金20に当接するばね受21との間に調整スプリング22を設けて構成する。ダイヤフラム16の他側には連動杆23の当金24が当接している。連動杆23は本体14の摺動孔14aを貫通して延長しており、該連動杆23の一部と当金24は受圧室R1に位置しており、該受圧室R1には吸入圧力Psを導入する通路s”に連通する吸入圧力導入口14bが形成されている。摺動孔14aを通って延長する連動杆23は弁室R2に達し、その先端に固着されたボール弁体25が弁座Vを開閉する。そしてボール弁体25に当接するばね受26と本体14に螺着された調整ねじ27との間には前記調整スプリング22に対抗する調整スプリング28が設けられている。なお、29はシールリングである。弁室R2の一次側には吐出圧力供給通路d”と連通する吐出圧力導入口14cが設けられ、二次側にはクランクケース1に対する吐出圧力供給通路d”’と連通する吐出圧力供給口14dが形成される。」(第2頁下左欄第10行〜同頁下右欄第16行)、「上記構成において、吸入圧力Psは通路s”を介して吸入圧力導入口14bから受圧室R1に導入され、ダイヤフラム16を介して調整スプリング22と対抗している。そして、吸入圧力Psが低くなるとダイヤフラム16が連動杆23を第1図において押し下げるように作動し、弁体25が弁座Vを開いて吐出圧力Pdをクランクケース1内に導入し、クランクケース内の圧力Pcを高くしてウオブル板を立てることによりピストン4のストロークを小さくする。吸入圧力Psが上昇すると、逆に動作してクランクケース1内への吐出圧力の供給を遮断する。」(第3頁上左欄第2〜13行)、及び「〔発明の効果〕本発明は上記した如くに、ピストンシリンダの吐出側からクランクケース内に連通する吐出圧力供給通路に介設した弁体を該ピストンシリンダの吸入圧力により制御し、該クランクケース内から固定オリフィスを介して該ピストンシリンダの吸入側に至る圧力逃し通路を設けたものであるから、吸入圧力の変動時におけるクランクケース内外の差圧の変化を緩やかにしてコンプレッサの運転の円滑性を確保することができ、また圧縮機の構造を簡略化することが可能となる。」(第3頁上右欄第1〜11行)との記載、並びに第1図の記載からみて、
「吸入室、吐出室およびクランク室を備え、該吐出室と該クランク室とを連通する吐出圧力供給通路d”、d”’に設けられた容量制御弁Bを介して、吸入圧力Psの変化に応じて角度可変ウオブル板8の傾斜角を変化させて圧縮容量を制御するようにした車両空調用の容量可変コンプレッサにおいて、前記容量制御弁Bは、前記吐出圧力供給通路d”、d”’を開閉するボール弁体25と、該ボール弁体25に結合し、前記吸入圧力Psの低下を検出して該ボール弁体25を開くように制御するダイヤフラム16とから構成されている車両空調用の容量可変コンプレッサ。」という発明、
及び、
通常の圧縮運転において吐出室からクランク室に導入される吐出ガスの導入量を制御すること、そして、ボール弁体25を開き、クランク室の圧力を高くし、圧縮容量を減少させること、
が記載されている。
刊行物2(特開昭63-16177号公報)には、「クランク室と,該クランク室内に延在し,回転可能に支持された主軸と,該主軸に固着されたロータと,該ロータに該主軸に対する傾斜角が変化するようにヒンジ機構を介して支持された斜板と,該斜板の傾斜面に沿って回転を抑止されるように配設され,前記主軸の回転に応じて揺動する揺動板と,該揺動板に連結され,該揺動板の揺動によりそれぞれのシリンダ内で往復動する複数のピストンと,前記シリンダ内に流体を供給する吸入室と,前記シリンダ内で圧縮された流体が吐出される吐出室と,前記クランク室と前記吸入室との間の連通路に設けられた弁手段とを含み,前記弁手段により前記クランク室内の圧力を調節し,前記斜板の傾斜角を変えることにより前記流体のシリンダへの取り込み容積を可変する容量可変型圧縮機において,前記弁手段が前記クランク室と前記吸入室との間の通路の開度を調節する調整弁と,該調整弁に結合し,吸入圧力を検出して該調整弁を制御する第1の感圧手段と,該第1の感圧手段に結合し,外部入力により該第1の感圧手段に可変荷重を与えて該第1の感圧手段の圧力制御点を可変する外部制御手段とから成ることを特徴とする容量可変型圧縮機。」(第1頁下左欄第5行〜同頁下右欄第9行)、「本発明は主として自動車内空調用に供する圧縮容量の制御可能な容量可変型圧縮機に関する。」(第2頁上左欄11〜12行)、「したがって、特段に低い蒸発温度を必要としたり、逆に負荷低減のために低容量で運転したいなどの要求があっても感圧手段の圧力設定値を変えることができないので、これに対応することができなかった。」(第2頁下左欄第11〜15行)、「この斜板6には、ベアリング20を介して揺動板7が配置されており、」(第3頁上右欄第6〜8行)、「ハウジング1には、吸入室10および吐出室11が設けられており、」(第3頁上右欄第18〜19行)、「クランク室2内のガスはクランク室2と吸入室10とを連通する通路27を通り,その通路27の途中に設けられた調整弁100の開度に応じて吸入室10に流出するようになっており,この流出量を制御することによってクランク室2内の圧力を変えることができる。この調整弁100は従来技術におけると同様に吸入圧力を検知して伸縮するべローズ101に結合されているが,調整弁100とべローズ101との結合点には更に電磁ソレノイド102の可動鉄片103が結合されている。この可動鉄片103は電磁ソレノイド102のコア102aとともにソレノイドアクチェータを形成し,ソレノイドコイルに流れる電流の値に応じて可動鉄片103に電磁吸引力Feを生ぜしめる。調整弁100にべローズ101を結合したのみの従来の方法では,調整弁100の開閉動作点は吸入圧力,べローズ101のバネ特性,ベローズの有効断面積,ベローズの設定圧縮量(予荷重)等によって成りたつ力のつり合いにより固定的に決められるが,前述のごときソレノイドアクチェータ機能の付加により,電磁吸引力Feを上記力のつり合いに関与させることが可能になる。すなわち,電磁吸引力Feは駆動電流によって変えることができるから,外部から電磁ソレノイド102に流す電流を可変することにより,べローズ101の圧力設定値を変えて調整弁100の動作を制御することができるようになる。かくして,ピストン9による冷媒ガスの圧縮の際,シリンダ8からクランク室2に漏れるブローバイガスの吸入室10への帰還量の調整が任意となり,クランク室内圧力の変化による斜板6の変化,すなわちピストン9のストロークの変化による圧縮容量の変化が熱負荷およびその変動の大きさに対応することができる。」(第3頁下右欄第6行〜第4頁上左欄第20行)、「この例によれば,調整弁200に結合されたべローズ201の内部は外部との流通口204を介して大気圧に設定されており,」(第4頁上右欄第7〜9行)、「この例においては,上述の第1,第2の実施例と同じように調整弁300とべローズ301とを用いているが,」(第4頁下左欄第2〜4行)、「この2つの例は,それぞれ調整弁400,または500に直結される感圧手段としてべローズ401,またはダイヤフラム501が用いられている。」(第4頁下右欄第2〜5行)、及び「〔発明の効果〕以上の説明により明らかなように,本発明によれば,調整弁の開閉を駆動する感圧手段の圧力設定値を別に付加された外部制御手段により任意に制御することが可能となり,これによって吸入圧力とクランク室圧力との差を広範囲に設定し,結果的にピストンのストローク,すなわち圧縮容量を好ましい値に調整できるから,媒体に低い蒸発温度を維持させたり,低容量の運転により負荷の低減を可能にするなど,得られる効果は大きい。」(第4頁下右欄第18行〜第5頁上左欄第7行)との記載、並びに第1ないし5図の記載からみて(設定値と検出値とから演算された信号を操作部に与え、任意の時に設定値を変更する制御というそれ自体不足することのない技術思想である発明を、更に、具体化し、設定値を圧力制御点とし、検出値をベローズ101、201、301、401、又はダイヤフラム501により検出される吸入圧力とし、操作部を調整弁100、200、300、400、500とし、クランク室内圧力、ひいては圧縮容量を任意に制御する自動車内空調用の容量可変型圧縮機という技術思想である発明を不足することなく開示しているので)、
「吸入室10、吐出室11およびクランク室2を備え、該吸入室10と該クランク室2とを連通する通路27に設けられた弁制御手段を介して、吸入圧力の変化に応じて揺動板7の傾斜角を変化させて圧縮容量を制御するようにした自動車内空調用の容量可変型圧縮機において、前記弁制御手段は、前記通路を開閉する調整弁100、200、300、400、500と、該調整弁100、200、300、400、500に結合し、前記吸入圧力の低下を検出して該調整弁100、200、300、400、500を制御するベローズ101、201、301、401、又はダイヤフラム501と、通常の圧縮運転において該ベローズ101、201、301、401、又はダイヤフラム501に外部からの信号による可変荷重を加えて、該ベローズ101、201、301、401、又はダイヤフラム501の圧力制御点を可変としガスの導入時期及び導入量を任意に制御する可変荷重入力手段とから構成されている自動車内空調用の容量可変型圧縮機」という発明、
「吸入室10、吐出室11およびクランク室2を備え、該吸入室10と該クランク室2とを連通する通路27に設けられた弁制御手段を介して、吸入圧力の変化に応じて揺動板7の傾斜角を変化させて圧縮容量を制御するようにした自動車内空調用の容量可変型圧縮機において、前記弁制御手段は、前記通路27を開閉する調整弁100、200、300、400、500と、該調整弁100、200、300、400、500に結合し、前記吸入圧力の低下を検出して該調整弁100、200、300、400、500を閉じるように制御するベローズ101、201、301、401、又はダイヤフラム501と、通常の圧縮運転において該ベローズ101、201、301、401、又はダイヤフラム501に外部からの信号による可変荷重を加えて、該ベローズ101、201、301、401、又はダイヤフラム501の圧力制御点を可変としクランク室2から吸入室10に帰還されるブローバイガスの導入時期及び導入量を任意に制御する可変荷重入力手段とから構成されている自動車内空調用の容量可変型圧縮機」という発明、
及び、
感圧手段の圧力設定値だけにより圧縮容量を制御するという内部制御を可能としつつ、負荷低減の要求時に圧縮容量を減少させるといった任意な容量制御をすること、
が記載されている。
刊行物3(実願昭60-17615号(実開昭61-134580号)のマイクロフィルム)には、「車室温度、圧縮機又はエンジンの回転数、吸気マニホールド負圧、アクセル踏み込み量等が設定値に達したとき、アンプにおいてこの設定値を制御信号として検出し、同制御信号により電磁弁が開閉する。そして同電磁弁の開閉によりクランク室内において吸入圧力状態より吐出圧力状態に切り換える作用が得られるのであるが、電磁弁は車室温度、圧縮機又はエンジンの回転数、吸気マニホールド負圧、アクセル踏み込み量等を制御信号として開閉することにより、容量ダウンへの切り換えを速やかに行なうことが出来、且つ容量ダウンへの切り換えを時間的及び量的に自由にコントロールすることが出来る。」(第6頁第15行〜第7頁第7行)、「リヤハウジング3には吸入室6と吐出室7が環状の隔壁8を介して同心円状に設けられる。」(第7頁第20行〜第8頁第2行)、「同回転斜板19にはベアリング24を介して前述の揺動板20がその回転を規制された状態にて揺動自在に支承される。」(第9頁第17〜19行)、「一方、30は吐出室7とクランク室13間を繋ぐ連通路であって同連通路30には電磁弁31が介在させて設けられる。」(第10頁第8〜10行)、及び「エンジン若しくは圧縮機の回転数(又は吸気マニホールド負圧、アクセル踏み込み量等)を制御信号として用いた場合 車を加速させる場合において、その加速の初期の段階で電磁弁31が開いて圧縮容量をダウンさせる作用が得られる。即ち、例えばエンジン回転数が急激に高くなると同時にアンプがその制御信号を検知し、電磁弁31が開き、クランク室圧力が直ちに高くなることから、時間的に速やかに容量ダウンを得る事が出来る。(3)車室温度とエンジン若しくは圧縮機の回転数(又は吸気マニホールド負圧、アクセル踏み込み量等)を制御信号として用いた場合 車室温度が未だ設定温度迄下がっていなくても、加速が必要となり、エンジン回転数を上げるとその加速の初期の段階でその設定温度迄下がる事によりアンプが制御信号を検知し、電磁弁31を開いて吐出ガスをクランク室13に送り込み、クランク室13圧力を吸入圧より高い状態とし、直ちに圧縮容量をダウンさせる作用が得られる。そしてこの様に車室温度が設定温度まで下がっていない状態において容量ダウンが得られる事により、スムーズなる加速性が得られ、加速作用が終了すると直ちに電磁弁31が閉じられ、車室設定温度まで急冷房作用が行なわれる(第3図参照)。第2図は第2の実施例を表わす図面であって、連通路30は吸入室6とクランク室13間を繋ぐ様に設けられる。そして同連通路30には第1の実施例と同様電磁弁31を介在させて設けるに、同電磁弁31は車室内の冷房負荷が大きい状態においては電磁弁31が開かれた状態にあり、又冷房負荷が減少するのに伴い、電磁弁31を閉じる状態が得られる様に設けられる。そして同電磁弁31にはアンプ35が接続され、同アンプ35において、例えば吸入圧力、吸入温度、車室温度、圧縮機の回転数、エンジン回転数、吸気マニホールド負圧、アクセル踏み込み量等を制御信号として検知し、同制御信号の内何れか一つ或いは二つ以上の制御信号を介して電磁弁31の開閉を行なう様に設けられる。 考案の効果 本考案は以上の様に構成されるものであって、上記の様にクランク室と、吐出室若しくは吸入室間を繋ぐ連通路に介在させて電磁弁を設け、同電磁弁を例えば車室温度と、圧縮機回転数、エンジン回転数、エンジンの吸気マニホールド負圧、アクセル踏み込み量等を制御信号として開閉させる様にした事により、最大容量の圧縮状態からその容量をダウンさせる状態への切り換えをドライバー及び車の状況に応じて自由に且つ速やかにコントロールする事が出来るに至った。そしてこの様に最大容量の圧縮状態からその容量をダウンさせる状態への切り換えを自由にコントロールする事が出来る事により、急冷房性能(クールダウン)と加速性能を選択して高める事が出来るに至った。」(なお、刊行物3原文においては、「(3)」は丸数字の3で記載されている。)(第13頁第13行〜第16頁第8行)との記載、並びに第1及び2図の記載からみて、
吸入圧力の変化に応じて揺動板の傾斜角を変化させて圧縮容量を制御するようにしているかは明らかではないが、吸入室6、吐出室7およびクランク室13を備え、該吐出室7と該クランク室13とを連通する連通路30に設けられた弁制御手段を介して、揺動板20の傾斜角を変化させて圧縮容量を制御するようにした車両空調用の可変容量圧縮機において、前記弁制御手段は、前記連通路30を開閉する開閉弁[電磁弁31の弁体]と、圧縮運転において外部からの信号によって、吐出室7からクランク室13に導入される吐出ガスの導入時期及び導入量を任意に制御する可変入力手段[アンプ35等を含む部分]とから構成されている車両空調用の可変容量圧縮機、そして、加速時等に、開閉弁を開き、クランク室の圧力を高くし容量を減らすこと、及び車室温度が設定温度を上回る状態時に、開閉弁を閉じ、クランク室の圧力を低くくし容量を増やすこと、
吸入圧力の変化に応じて揺動板の傾斜角を変化させて圧縮容量を制御するようにしているかは明らかではないが、吸入室6、吐出室7およびクランク室13を備え、該クランク室13と該吸入室6とを連通する連通路30に設けられた弁制御手段を介して、揺動板20の傾斜角を変化させて圧縮容量を制御するようにした車両空調用の可変容量圧縮機において、前記弁制御手段は、前記連通路30を開閉する開閉弁[電磁弁31の弁体]と、圧縮運転において外部からの信号によって、クランク室13から吸入室6に導入されるブローバイガスの導入時期及び導入量を任意に制御する可変入力手段[アンプ35等を含む部分]とから構成されている車両空調用の可変容量圧縮機、そして、加速時等に、開閉弁を閉じ、クランク室の圧力を高くし容量を減らすこと、及び車室内の冷房負荷が大きい状態時に、開閉弁を開き、クランク室の圧力を低くくし容量を増やすこと、
及び、
車両空調用の可変容量圧縮機において、圧縮運転において、加速時等に圧縮容量を減少させるといった任意な圧縮容量制御をすることを技術課題とすること、そして、吐出室7とクランク室13とを連通する連通路30を備え、該連通路30を開閉する開閉弁[電磁弁31の弁体]を備える車両空調用の可変容量圧縮機においては、アンプがその制御信号を検知し、開閉弁[電磁弁31の弁体]が開きクランク室圧力が直ちに高くなり、時間的に速やかに容量ダウンを得ることができること、
が記載されている。

VI.対比
訂正請求書に添付された訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明(以下、「訂正発明」という。)と上記刊行物1に記載された発明とを対比すると、刊行物1に記載された発明の「吐出圧力供給通路d”、d”’」、「吸入圧力Ps」、「角度可変ウオブル板8」、「容量可変コンプレッサ」、「ボール弁体25」、「ダイヤフラム16」は、それぞれ、訂正発明の「給気通路」、「吸入圧力」、「揺動板」、「可変容量圧縮機」、「開閉弁」(本件訂正明細書第5頁第14〜15行の「そして同弁杆40の先端部には上記弁座36と対応させて円錐状の開閉弁37が進退自在に嵌合されている。」との記載からみて、開閉弁とは弁座を含まない弁体を指称すると解される。)、「感圧手段」に相当するから、両者は、
吸入室、吐出室およびクランク室を備え、該吐出室と該クランク室とを連通する給気通路に設けられた弁制御手段を介して、吸入圧力の変化に応じて揺動板の傾斜角を変化させて圧縮容量を制御するようにした車両空調用の可変容量圧縮機において、前記弁制御手段は、前記給気通路を開閉する開閉弁と、該開閉弁に結合し、前記吸入圧力の低下を検出して該開閉弁を開くように制御する感圧手段とから構成されている車両空調用の可変容量圧縮機、
の点で一致し、
(イ)訂正発明では、通常の圧縮運転において該感圧手段に外部からの信号による可変荷重を加えて、該感圧手段の圧力制御点を可変とし吐出室からクランク室に導入される吐出ガスの導入時期及び導入量を任意に制御する可変荷重入力手段とから構成されるのに対して、刊行物1に記載された発明では、そのような構成を具備するか否か不明である点、
で相違する。

VII.当審の判断
訂正拒絶する理由1:
上記相違点(イ)について検討する。
刊行物2に記載された発明の「吸入室10」、「吐出室11」、「クランク室2」、「揺動板7」、「自動車内空調用の容量可変型圧縮機」は、それぞれ、訂正発明の「吸入室」、「吐出室」、「クランク室」、「揺動板」、「車両空調用の可変容量圧縮機」に相当するので、刊行物2に記載された発明は、
「吸入室、吐出室およびクランク室を備え、通路に設けられた弁制御手段を介して、吸入圧力の変化に応じて揺動板の傾斜角を変化させて圧縮容量を制御するようにした車両空調用の可変容量圧縮機において、前記弁制御手段は、前記通路を開閉する開閉弁と、該開閉弁に結合し、前記吸入圧力の低下を検出して該開閉弁を制御する感圧手段と、通常の圧縮運転において該感圧手段に外部からの信号による可変荷重を加えて、該感圧手段の圧力制御点を可変とし開閉弁が開閉する通路を介して導入されるガスの導入時期及び導入量を任意に制御する可変荷重入力手段とから構成されている車両空調用の可変容量圧縮機」であると解することができる。
該刊行物2記載の発明の可変荷重入力手段は、開閉弁が、設置される通路を開閉する弁体としての機能を有し、吐出室とクランク室とを連通する給気通路を開閉するか、吸入室とクランク室とを連通する通路を開閉するかに拘わらず、本件訂正発明における可変荷重入力手段と同じく、通常の圧縮運転において感圧手段に外部からの信号による可変荷重を加えて、該感圧手段の圧力制御点を可変とし開閉弁が設置される通路のガスの導入時期及び導入量を任意に制御するという点における作用効果を、奏しうるものである。この点については、本件訂正明細書にも『[発明が解決しようとする課題]ところが上記の様な従来の可変容量圧縮機においては、開閉弁における弁の開度がブローズ等の感圧手段の伸縮により調整されるようになっており、これによりクランク室内の圧力を変化させ、揺動板の傾斜角(ピストンのストローク)を制御している。この場合、感圧手段の圧力制御点は決められた値に設定されているので、結果的に吸入圧力は固定の一定値に制御されることになる。したがって加速時等に低容量圧縮運転したいといった要望があっても感圧手段の圧力設定値を変えることができないので、これに対応することができなかった。本発明は、クランク室内を制御する弁制御手段を改変することにより、クランク室内圧力、ひいては圧縮容量を任意に制御可能とすることを解決すべき技術課題とする。』(第3頁第2〜13行)と記載されており、この記載は、可変荷重入力手段が、開閉弁が、吐出室とクランク室とを連通する給気通路を開閉するか、吸入室とクランク室とを連通する通路を開閉するかに拘わらず、圧力制御点を任意に変更するという作用効果を、奏しうるものであることを示唆している。ここで、「上記の様な従来の可変容量圧縮機」とは、「吐出室aとクランク室b間に連通されて吐出圧力の給気通路c、dが形成されると共に同給気通路c、d間に介在させて開閉弁eが設けられる。」(本件訂正明細書第2頁第7〜9行)ものであり、この点は、刊行物1記載の発明の車両空調用の可変容量圧縮機と異ならない。そして、刊行物1記載の発明の車両空調用の可変容量圧縮機においても、刊行物2記載の発明の車両空調用の可変容量圧縮機においても、いずれもクランク室内の圧力を変化させ、揺動板の傾斜角(ピストンのストローク)を制御し、圧縮容量を制御している。
そして、刊行物1記載の発明と刊行物2記載の発明とは、同一の技術分野に属するものであるから、両発明を組み合わせることに格別の困難性はない。
また、両発明を組み合わせることを妨げる特段の事情がないことは、刊行物3に記載された技術的事項(連通する連通路30に設けられた弁制御手段を介して、揺動板20の傾斜角を変化させて圧縮容量を制御するようにした車両空調用の可変容量圧縮機において、吐出室7とクランク室13とを連通する連通路30であっても、クランク室13と吸入室6とを連通する連通路30であっても、加速時等に、開閉弁を開き又は閉じ、クランク室の圧力を高くし容量を減らすことができる)をみても明らかである。
したがって、刊行物2記載の発明の、通常の圧縮運転において、感圧手段に外部からの信号による可変荷重を加えて、該感圧手段の圧力制御点を可変とし開閉弁が開閉する通路を介して導入されるガスの導入時期及び導入量を任意に制御する可変荷重入力手段に係る技術思想を、刊行物1に記載された発明に適用し、本件訂正発明のように、通常の圧縮運転において該感圧手段に外部からの信号による可変荷重を加えて、該感圧手段の圧力制御点を可変とし吐出室からクランク室に導入される吐出ガスの導入時期及び導入量を任意に制御する可変荷重入力手段とから構成されていることとすることは、当業者が容易になしえたことである。
次に、効果の予測性について、検討する。
刊行物2には、〔発明が解決しようとする問題点〕の項で、「したがって、特段に低い蒸発温度を必要としたり,逆に負荷低減のために低容量で運転したいなどの要求があっても感圧手段の圧力設定値を変えることができないので、これに対応することができなかった。」(第2頁下左欄第11〜15行)と記載され、〔発明の効果〕の項で、「以上の説明により明らかなように,本発明によれば,調整弁の開閉を駆動する感圧手段の圧力設定値を別に付加された外部制御手段により任意に制御することが可能となり,これによって吸入圧力とクランク室圧力との差を広範囲に設定し,結果的にピストンのストローク,すなわち圧縮容量を好ましい値に調整できるから,媒体に低い蒸発温度を維持させたり,低容量の運転により負荷の低減を可能にするなど,得られる効果は大きい。」(第4頁下右欄第19行〜第5頁上左欄第7行)と記載されており、任意な圧縮容量制御を可能とすることは、刊行物1及び2に記載された発明から当業者であれば予測できる程度のものであり異質のものではない。更に、「負荷低減のために低容量で運転したいなどの要求があっ」たときとは加速時等のことであることをも示唆しているので、特定の実施態様ないし使用態様である、加速時等に開閉弁を開にするという態様における、加速時等に圧縮容量を減少させることが可能になるといった効果も、刊行物1及び2に記載された発明から当業者であれば予測できる程度のものであり、異質のものではない。
したがって、訂正発明は、刊行物1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。

訂正拒絶する理由2:
訂正請求人は、平成14年6月3日付けの意見書において、「本書は格別顕著な効果についての判断を遺漏しているとしかいい得ない。」(第29頁第23行)としていることからも、更に検討する。
訂正後における特許請求の範囲の請求項1には、車両空調用の[クランク室の圧力が高くなると圧縮容量が減少し、クランク室の圧力が低くなると圧縮容量が増加する]可変容量圧縮機において、加速時等に圧縮容量を減少させるとの構成(例えば、加速時等に給気通路を開閉する開閉弁を開く構成)は記載されていない。[発明の効果]の項においても、「開閉弁を制御する感圧手段の圧力制御点を変位可能とすることによって、開閉弁の制御を任意とすることができ、これにより吐出室からクランク室に導入される吐出ガスの導入量及び導入時期を任意に制御することができる。したがって、本発明の可変容量圧縮機によれば、加速時等に圧縮容量を減少させるといった任意な圧縮容量制御が可能となる。」(本件訂正明細書第8頁第28行〜第9頁第3行)と記載されているので、吐出ガスの導入量及び導入時期を任意に制御することはできるが、加速時等に圧縮容量を減少させるといった任意な圧縮容量制御は可能となるのみであり、その制御には、更に他の構成、例えば加速時等に開閉弁を開くことが必要であることを示唆している。そして、本件特許公報には、「加速時等の圧縮容量を任意に減少させたい場合、・・・開閉弁37を開く」(本件訂正明細書第6頁第26行〜第7頁第5行)と記載されている。そして、以下は、加速時等に開閉弁を開くとの特定を除去した発明に対して訂正拒絶する理由でもある。
刊行物2に記載された発明の「吸入室10」、「吐出室11」、「クランク室2」、「揺動板7」、「自動車内空調用の容量可変型圧縮機」は、それぞれ、訂正発明の「吸入室」、「吐出室」、「クランク室」、「揺動板」、「車両空調用の可変容量圧縮機」に相当するので、刊行物2に記載された発明は、
「吸入室、吐出室およびクランク室を備え、該吸入室と該クランク室とを連通する通路27に設けられた弁制御手段を介して、吸入圧力の変化に応じて揺動板の傾斜角を変化させて圧縮容量を制御するようにした車両空調用の[クランク室の圧力が高くなると圧縮容量が減少し、クランク室の圧力が低くなると圧縮容量が増加する]可変容量圧縮機において、前記弁制御手段は、前記通路27を開閉する(設置される通路を開閉する弁体としての機能を有する)開閉弁と、該(設置される通路を開閉する弁体としての機能を有する)開閉弁に結合し、前記吸入圧力の低下を検出して該(設置される通路を開閉する弁体としての機能を有する)開閉弁を閉じるように制御する(圧力を感知する機能を有する)感圧手段と、通常の圧縮運転において該(圧力を感知する機能を有する)感圧手段に外部からの信号による可変荷重を加えて、該(圧力を感知する機能を有する)感圧手段の圧力制御点を可変としクランク室から吸入室に帰還されるブローバイガスの導入時期及び導入量を任意に制御する可変荷重入力手段とから構成されている車両空調用の可変容量圧縮機」であると解することができる。
刊行物2記載の発明の可変荷重入力手段は、開閉弁が、設置される通路を開閉する弁体としての機能を有し、吐出室とクランク室とを連通する給気通路を開閉するか、吸入室とクランク室とを連通する通路を開閉するかに拘わらず、本件における可変荷重入力手段と同じく、通常の圧縮運転において感圧手段に外部からの信号による可変荷重を加えて、該感圧手段の圧力制御点を可変とし開閉弁が設置される通路のガスの導入時期及び導入量を任意に制御するという点における作用効果を、奏しうるものである。
そして、刊行物2においては、「低容量の運転により負荷の低減を可能にする」(第5頁上左欄第6〜7行)ことは予定されており、図1ないし5図の構成及び「かくして,ピストン9による冷媒ガスの圧縮の際,シリンダ8からクランク室2に漏れるブローバイガスの吸入室10への帰還量の調整が任意となり,クランク室内圧力の変化による斜板6の変化,すなわちピストン9のストロークの変化による圧縮容量の変化が」(第4頁上左欄第14〜19行)との記載は、技術常識をも加味すれば、低容量にするには開閉弁を閉じることを示唆している。
次に、刊行物1記載の発明と刊行物2記載の発明とは、同一の技術分野に属するものであるから、両発明を組み合わせることに格別の困難性はない。
次に、刊行物3に記載された「吸入室6」、「吐出室7」、「クランク室13」、「該吐出室7と該クランク室13とを連通する連通路30」、「揺動板20」は、それぞれ、訂正発明の「吸入室」、「吐出室」、「クランク室」、「該吐出室と該クランク室とを連通する給気通路」、「揺動板」に相当するので、刊行物3には、
吸入室、吐出室およびクランク室を備え、該吐出室と該クランク室とを連通する給気通路に設けられた弁制御手段を介して、揺動板の傾斜角を変化させて圧縮容量を制御するようにした車両空調用の可変容量圧縮機において、前記弁制御手段は、前記連通路30を開閉する開閉弁と、圧縮運転において外部からの信号によって、吐出室からクランク室に導入される吐出ガスの導入時期及び導入量を任意に制御する可変入力手段とから構成されている車両空調用の可変容量圧縮機、そして、加速時等に、開閉弁を開き、クランク室の圧力を高くし圧縮容量を減少すること、及び車室温度が設定温度を上回る状態時に、開閉弁を閉じ、クランク室の圧力を低くくし圧縮容量を増加すること、
吸入室、吐出室およびクランク室を備え、該クランク室と該吸入室とを連通する連通路30に設けられた弁制御手段を介して、揺動板の傾斜角を変化させて圧縮容量を制御するようにした車両空調用の可変容量圧縮機において、前記弁制御手段は、前記連通路30を開閉する開閉弁と、圧縮運転において外部からの信号によって、クランク室から吸入室に導入されるブローバイガスの導入時期及び導入量を任意に制御する可変入力手段とから構成されている車両空調用の可変容量圧縮機、そして、加速時等に、開閉弁を閉じ、クランク室の圧力を高くし圧縮容量を減少すること、及び車室内の冷房負荷が大きい状態時に、開閉弁を開き、クランク室の圧力を低くし圧縮容量を増加すること、
及び、
吐出室とクランク室とを連通する給気路を備え、該給気通路を開閉する開閉弁を備える車両空調用の可変容量圧縮機においては、可変入力手段が制御信号を検知し、開閉弁が開き、クランク室圧力が直ちに高くなり、時間的に速やかに容量ダウンを得ることができること、
が記載されていると解される。
したがって、刊行物3は、吸入室、吐出室およびクランク室を備え、通路に設けられた弁制御手段を介して、揺動板の傾斜角を変化させて圧縮容量を制御するようにした車両空調用の可変容量圧縮機において、一つの態様として、該吐出室と該クランク室とを連通する給気通路に設けられた弁制御手段が、前記給気通路を開閉する開閉弁と、圧縮運転において外部からの信号によって、吐出室からクランク室に導入される吐出ガスの導入時期及び導入量を任意に制御する可変入力手段とから構成されている車両空調用の可変容量圧縮機(以下、「前者」という。)とし、加速時等に、開閉弁を開き、他の態様として、該クランク室と該吸入室とを連通する連通路30に設けられた弁制御手段が、前記連通路30を開閉する開閉弁と、圧縮運転において外部からの信号によって、クランク室から吸入室に導入されるブローバイガスの導入時期及び導入量を任意に制御する可変入力手段とから構成されている車両空調用の可変容量圧縮機(以下、「後者」という。)とし、加速時等に、開閉弁を閉じ、共に、クランク室の圧力を高くし圧縮容量を減らすこと、及び、前者においては、車室温度が設定温度を上回る状態時に、開閉弁を閉じ、後者においては、車室内の冷房負荷が大きい状態時に、開閉弁を開き、共に、クランク室の圧力を低くし圧縮容量を増加することを示唆している。
そして、刊行物1記載の発明と刊行物3記載の発明とは、同一技術分野であることを示唆し、両発明を組み合わせることに格別の困難性はない。
更に、刊行物3には、同一の付加手段である可変入力手段が、吐出室とクランク室とを連通する給気通路を開閉する開閉弁を備える車両空調用の可変容量圧縮機とクランク室と吸入室とを連通する通路を開閉する開閉弁を備える車両空調用の可変容量圧縮機とに、加速時等に応答性良く圧縮容量を減少させるといった任意な圧縮容量制御を可能にすることに関して、共に(同じ作用をもたらすためには、開閉弁の開閉を逆にしつつ)適用されることを示しているので、刊行物2記載の発明のクランク室と吸入室とを連通する通路を開閉する開閉弁を備える車両空調用の可変容量圧縮機の可変荷重入力手段を、刊行物1記載の発明の吐出室とクランク室とを連通する給気通路を開閉する開閉弁を備える車両空調用の可変容量圧縮機に、加速時等に圧縮容量を減少させるといった任意な圧縮容量制御を可能にすることに関して、(同じ作用をもたらすためには、開閉弁の開閉を逆にしつつ)適用することを動機づけるものが示唆されているということができる。
してみると、相違点に係る訂正発明の構成は、刊行物1に記載された発明、刊行物2に記載された発明及び刊行物3に記載された技術的事項に接した当業者にとって容易に想到することができたものということができる。
次に、効果の予測性について、検討する。
刊行物2には、〔発明が解決しようとする問題点〕の項で、「したがって、特段に低い蒸発温度を必要としたり、逆に負荷低減のために低容量で運転したいなどの要求があっても感圧手段の圧力設定値を変えることができないので、これに対応することが出来なかった。」(第2頁下左欄第11〜15行)と記載され、〔発明の効果〕の項で「以上の説明により明らかなように,本発明によれば,調整弁の開閉を駆動する感圧手段の圧力設定値を別に付加された外部制御手段により任意に制御することが可能となり,これによって吸入圧力とクランク室圧力との差を広範囲に設定し,結果的にピストンのストローク,すなわち圧縮容量を好ましい値に調整できるから,媒体に低い蒸発温度を維持させたり,低容量の運転により負荷の低減を可能にするなど,得られる効果は大きい。」(第4頁下右欄第19行〜第5頁上左欄第7行)と記載されており、刊行物3には、「作用」の項に「電磁弁は車室温度、圧縮機又はエンジンの回転数、吸気マニホールド負圧、アクセル踏み込み量等を制御信号として開閉することにより、容量ダウンへの切り換えを速やかに行なうことが出来、且つ容量ダウンへの切り換えを時間的及び量的に自由にコントロールすることが出来る。」(第7頁第1〜7行)と記載され、「電磁弁31が開き、クランク室圧力が直ちに高くなることから、時間的に速やかに容量ダウンを得る事が出来る。」(第13頁第20行〜第14頁第2行)と記載され、「考案の効果」の項で、「同電磁弁を例えば車室温度と、圧縮機回転数、エンジン回転数、エンジンの吸気マニホールド負圧、アクセル踏み込み量等を制御信号として開閉させる様にした事により、最大容量の圧縮状態からその容量をダウンさせる状態への切り換えをドライバー及び車の状況に応じて自由に且つ速やかにコントロールする事が出来るに至った。そしてこの様に最大容量の圧縮状態からその容量をダウンさせる状態への切り換えを自由にコントロールする事が出来る事により、急冷房性能(クールダウン)と加速性能を選択して高める事が出来るに至った。」(第15頁第18行〜第16頁第8行)と記載されており、任意な圧縮容量制御が可能であることは元より、「加速時等に圧縮容量を減少させること」及び本件特許発明の構成によってもたらされると審判請求書で主張されている効果又は技術課題、即ち「感圧手段の圧力設定値だけにより圧縮容量を制御するという内部制御を可能としつつ、加速時等に圧縮容量を減少させるといった任意な容量制御を可能とする」(平成14年2月19日付け審判請求書第14頁第6〜8行)ことは、刊行物1ないし3に記載された発明から当業者であれば予測できる程度のものであり、異質のものではない。更に、刊行物3には、「一方、30は吐出室7とクランク室13間を繋ぐ連通路であって同連通路30には電磁弁31が介在させて設けられる。」(第10頁第8〜10行)及び「アンプがその制御信号を検知し、電磁弁31が開き、クランク室圧力が直ちに高くなることから、時間的に速やかに容量ダウンを得る事が出来る。」(第13頁第19行〜第14頁第2行)と記載されており、吐出室とクランク室とを連通する給気通路を備え、該給気通路を開閉する開閉弁を備える車両空調用の可変容量圧縮機においては、可変入力手段が制御信号を検知し、開閉弁が開き、クランク室圧力が直ちに高くなり、時間的に速やかに容量ダウンを得ることができることが、記載されているので(クランク室内の圧力が高くなれば、当然揺動板の傾斜角は小さくなる)、平成14年2月19日付け審判請求書第18頁下から第3〜4行に「訂正発明の圧縮機は運転中に外部からの信号により揺動板の傾斜角を極めて迅速に最小化できることがわかる。」と記載しているが、迅速に圧縮容量を減少させることも、刊行物1ないし3に記載された発明から当業者であれば予測できる程度のものであり、異質のものではない。
したがって、訂正明細書の請求項1に係る発明は、刊行物1ないし3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。

A.なお、訂正請求人は、「請求人は、訂正発明の圧縮機が加速カットを実現でき、その程度がいかなるものかを以下の性能評価によって立証する。すなわち、給気通路外部制御形態の圧縮機(訂正発明の圧縮機)と、抽気通路外部制御形態の圧縮機(引用発明5の圧縮機に相当)とを用意し、これらについて性能評価を行った。」(平成14年2月19日付け審判請求書第17頁第10〜13行)(「引用発明5の圧縮機」とは、本審決の刊行物2記載の圧縮機に該当する。)と記載しているので、検討する。
公知技術から予測される範囲を超えた顕著な作用効果をもたらすことが、立証されるべきところ、単に公知技術の一部(本審決の場合刊行物2記載の技術)との比較のみ、しかも公知技術の一部(本審決の場合刊行物2記載の技術)で、他の公知技術(本審決の場合刊行物1記載の技術)への適用において基本的に適用されていない公知技術との比較による性能評価のみによって、当該立証がなされたとすることはできない。刊行物1記載の車両空調用の可変容量圧縮機においても、吐出室とクランク室とを連通する給気通路を備え、前記給気通路を開閉する開閉弁を有し、通常の圧縮運転において吐出室からクランク室に導入される吐出ガスの導入量を制御しており、吐出室とクランク室とを連通する給気通路を開閉する開閉弁が開になれば、吐出室内の高圧の吐出ガスが給気通路を経てクランク室に導入され、クランク室の圧力を上昇させるのであり、吐出室とクランク室とを連通する給気通路を備える車両空調用の可変容量圧縮機である利点は、迅速に圧縮容量を減少させる速応性をも含め当然有する構成のものである。刊行物2記載の車両空調用の可変容量圧縮機については、技術思想として、それ単独で把握される、可変荷重入力手段が、刊行物1記載の車両空調用の可変容量圧縮機の吐出室とクランク室とを連通する給気通路を開閉する開閉弁を制御する感圧手段に適用されるのであり、クランク室と吸入室とを連通する通路が適用されるのではない。したがって、迅速速応性について、たとえ比較するとしても、吐出室とクランク室とを連通する給気通路を備え、前記給気通路を開閉する開閉弁を有する車両空調用の可変容量圧縮機である本件発明と比較するときには、刊行物1に(訂正拒絶する理由2については更に刊行物3にも)記載される同じく吐出室とクランク室とを連通する給気通路を備え、前記給気通路を開閉する開閉弁を有する車両空調用の可変容量圧縮機をも考慮すべきであり、クランク室と吸入室とを連通する通路を備え、前記通路を開閉する開閉弁を有する車両空調用の可変容量圧縮機とのみ比較することは、失当である。
B.次に、訂正請求人は、「訂正発明の格別顕著な効果」(平成14年2月19日付け審判請求書第19頁第13〜14行)について、判例昭和60年(行ケ)35を挙げている(平成14年2月19日付け審判請求書第19頁第25行)ので検討する。
a)該判決は、『ところで、原告は、・・・かつ審決が「本願発明の作用効果にしても、それは第一引用例のものと同等のものにすぎないと解すべきである。」として本願発明の奏する顕著な作用効果を看過した点を審決取消理由として主張し、特に作用効果の顕著性を強調して本願発明が特許されるべきものであると主張するので、以下に本願発明の作用効果の顕著性について検討する。』(特許庁公報審決取消訴訟判決集(5) 1(1989)-256〔5421〕日本国特許庁平成1年11月16日第297頁左欄第3〜16行)としているのであり、本審決は、本件発明の作用効果が刊行物1のものと同等のものにすぎないとしているのではないので、本件の場合に直ちに妥当するものではない。そして、該判決は、最終的には、「本願発明は、当業者が第一引用例及び第二引用例記載の構成から予想しえるであろう範囲を超えた核別に顕著な作用効果を奏するものとして、その進歩性が認められるべきであり、これらを否定した審決の判断は誤りであるから、審決は違法として取消しを免れない。」(同第302頁左欄第12行〜同頁右欄第4行)としているのであり、単に第一引用例のものより作用効果が優れたものであれば進歩性を認めるとしたものではないので、本件の場合に直ちに妥当するものではない。
b)訂正請求人も『もちろん、本件特許発明は、刊行物2発明と同様に「特段に低い蒸発温度を必要としたり、逆に負荷低減のために低容量で運転したいなどの要求」があった場合には、内部制御である通常の圧縮運転から感圧手段の圧力制御点を変更することで、吐出室からクランク室に導入される吐出ガスの導入時期及び導入量を制御して、上記要求にあった制御が可能になるのであるが、それに加えて「加速時等に圧縮容量を減少させる」ことを実現可能なのである。』(平成14年6月3日付け意見書第13頁第15〜20行)とし、「加速時等に圧縮容量を減少させる」効果は、特定の実施態様ないし使用態様のみにおいて奏されるものであり、訂正発明に普遍的な効果ではないことを示している。
当該判例には、『特許請求の範囲に記載のとおりの構成を採択したことによって、「出力電圧振幅を十分に得ることができ、信号応答時間が早く、また電力損失が小さく、更に集積回路内外の論理を一致させることができるなどの利点を有したバッファ回路を提供できた。」ものであることは前認定のとおりであるところ』(同第297頁左欄第22〜29行)としており、特定の実施態様ないし使用態様のみにおいて奏されるものであり、「加速時等に圧縮容量を減少させる」効果は、訂正発明に普遍的な効果ではないので、本件の場合に直ちに妥当するものではない。
c)該判決は、『また、審決が、本願発明の「作用効果がたとえ、どのようなものであれ、本願発明の構成に困難性が認められない」として、本願発明の進歩性を否定したことも誤った判断とみざるを得ない。』(同第302頁左欄第8〜12行)としているのであり、本審決が、作用効果が、どのようなものであれ、本件発明の構成に困難性が認められないとするものではないので、本件の場合に直ちに妥当するものではない。
d)構成の変更が公知技術から予測される範囲を越えた(格別)顕著な作用効果をもたらすものでないことは、訂正拒絶すべき理由1及び2に記載したとおりである。
C.更に、審判請求人は、「訂正発明の圧縮機は市販により好評をえており、」(平成14年2月19日付け審判請求書第20頁第5〜6行)と主張しているが、商業的成功又はこれに準じる事実は、進歩性の存在を肯定的に推認するのに役立つ事実として参酌することができるが、該審判請求人の主張が事実であったとしても、該事実が本件訂正発明の特徴に基づくものであり、しかも、販売技術や宣伝等、それ以外の原因によるものでないことが、審判請求人により立証されているわけではないので、参酌することはできない。
D.審査基準の、「異質な効果を有する場合、あるいは同質の効果であるが際だった優れた効果を有し、これらが技術水準から当業者が予測することができたものではない場合には、この事実により進歩性の存在が推認される。」点については、本審決は、効果が予測できるものであり、異質のものではないとするものであり、審査基準に反するものではない。

VIII.むすび
したがって、本件訂正審判請求による願書に添付した明細書の訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書き及び第2項の規定に適合するものの、同条第3項の規定に適合しないので、当該訂正を認めることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2002-08-15 
結審通知日 2002-08-20 
審決日 2002-09-02 
出願番号 特願昭63-200392
審決分類 P 1 41・ 856- Z (F04B)
P 1 41・ 121- Z (F04B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 石橋 和夫  
特許庁審判長 舟木 進
特許庁審判官 氏原 康宏
西野 健二
清田 栄章
亀井 孝志
登録日 1997-01-29 
登録番号 特許第2600317号(P2600317)
発明の名称 可変容量圧縮機  
代理人 中村 敬  

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