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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01R |
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管理番号 | 1089007 |
審判番号 | 不服2001-3117 |
総通号数 | 50 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1997-02-14 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2001-03-01 |
確定日 | 2003-12-12 |
事件の表示 | 平成 7年特許願第193515号「ランプソケット用防水構造」拒絶査定に対する審判事件[平成 9年 2月14日出願公開、特開平 9- 45444]について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成7年7月28日の出願であって、平成13年1月23日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年3月1日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年3月30日付で手続補正がなされたものである。 2.平成13年3月30日付の手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成13年3月30日付の手続補正を却下する。 [理由] (1)補正の目的、新規事項の有無について 本件補正は、平成12年12月4日付で補正された明細書の、特許請求の範囲の請求項1の「該ランプソケットが該取り付けパネルに取り付けられた際に該取り付けパネルを介して該係止爪と該フランジとの間に挟持され且つ該円筒状リブの内周面に対し半径方向で圧縮して密着係合する密閉係合外周部を具備する環状ガスケット」の記載を、「該装着部の係止爪が該取り付けパネルの爪逃げ部を挿入通過後に該ランプソケットを旋回させて取り付けられた際に該取り付けパネルと該フランジとの間に挟持されると共に、該円筒状リブの内径よりも大きい外径を有し該円筒状リブの内周面に対し半径方向で圧縮して密着係合する密閉係合外周部を具備する環状ガスケット」と補正し(以下、「補正事項1」という。)、併せて、明細書の段落番号【0005】の記載を特許請求の範囲の記載に整合するように補正(以下、「補正事項2」という。)しようとするものである。 上記補正事項1は、ランプソケットと取り付けパネルとの取り付け態様を、「装着部の係止爪が該取り付けパネルの爪逃げ部を挿入通過後に該ランプソケットを旋回させて取り付け」る態様、すなわちバヨネット式の取り付け態様に特定するとともに、環状ガスケットの寸法関係につき、「円筒状リブの内径より大きい外径を有」するものに限定するものであり、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。 また、補正事項2は、発明の詳細な説明の記載を特許請求の範囲の記載に整合させるものであるので、特許法第17条の2第4項第4号の明りょうでない記載の釈明を目的とする補正に該当する。 そして、上記補正事項1及び2は、補正前の明細書の段落番号【0013】及び【0011】の記載に基づくものであって、いずれも、補正前の明細書に記載された事項の範囲内の補正であるといえる。 なお、上記補正事項1における「該装着部」の記載は、「該挿着部」の誤記と認められるが、補正書に記載の通りに表記した。 (2)独立特許要件について そこで、上記補正後の本願発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に適合するか)について以下に検討する。 (i)補正後の本願発明 補正後の本願請求項1に係る発明は、上記補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである(以下、「本願補正発明」という。) (本願補正発明) 「複数の係止爪を有する挿着部と該挿着部の端部に設けられたフランジとを具備するランプソケットと、 該ランプソケットの該挿着部を通過可能且つ該フランジを通過不可能とする取り付け孔と、該ランプソケットの該係止爪が通過可能な爪逃げ部と、該取り付け孔と該爪逃げ部を取り囲み且つ該取り付け孔と同心的に設けられた円筒状リブとを具備する取り付けパネルと、 該装着部の係止爪が該取り付けパネルの爪逃げ部を挿入通過後に該ランプソケットを旋回させて取り付けられた際に該取り付けパネルと該フランジとの間に挟持されると共に、該円筒状リブの内径よりも大きい外径を有し該円筒状リブの内周面に対し半径方向で圧縮して密着係合する密閉係合外周部を具備する環状ガスケットとを有することを特徴とするランプソケット用防水構造。」 (ii)引用文献 原査定の拒絶の理由に引用された実願平4-19592号(実開平5-72076号)のCD-ROM(以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。 (イ)「本考案は電球用ソケットに関するものであり、詳細にはバヨネット構造とされてハウジングなどの板面に着脱自在な構成とされた電球用ソケットに係るものである。」(第3頁の段落【0001】の【産業上の利用分野】の欄参照) (ロ)「従来のこの種のソケット90の構造の例を示すものが図2であり、前記ソケット90の円筒状とした挿着部91の挿着方向先端には例えば4本の係止爪92が設けられると共に、前記挿着部91の後端にはフランジ93が設けられる、所謂バヨネット構造のものとされている。」(第3頁の段落【0002】の【従来技術】の欄参照) (ハ)「ハウジング20の側には板面状となる位置に前記挿着部91よりも僅かに大きい径とした取付孔21と前記係止爪92を通過させるための爪逃げ部22とが形成され、ソケット90を取付けるときには係止爪92と爪逃げ部22とを位置合わせした状態で挿着部91を取付孔21に貫通させ、その後にソケット90を旋回させることでハウジング20をフランジ93と係止爪92とで挟持して係止するものである。 尚、このときに前記ハウジング20とフランジ93との間には防水を目的としてゴムなど弾性部材で形成されたパッキン30が挟持されるものとなり、」(第3頁の段落【0003】〜【0004】参照) 上記記載事項(イ)〜(ハ)並びに図面に示された事項を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下、「従来発明」という。)が記載されているといえる。 (従来発明) 「4本の係止爪92を有する挿着部91と該挿着部91の後端に設けられたフランジ93を具備する電球用ソケット90と、該電球用ソケット90の該挿着部91よりもわずかに大きい径とした取付孔21と、該電球用ソケット90の該係止爪92を通過させるための爪逃げ部22をハウジング20の平面板状となる位置に形成し、該挿着部91の係止爪92が該ハウジング20の爪逃げ部22に位置合わせされて挿通された後に該電球用ソケット90が旋回されて係止された際に該ハウジング20と該フランジ93との間に挟持される弾性式パッキン30を有する電球用ソケットの防水が可能な取り付け構造。」 (iii)対比 そこで、本願補正発明と従来発明とを対比する。 従来発明における「電球用ソケット90」、「平面板状となる位置でのハウジング20」及び「パッキン30」は、その作用ないし機能からみて、本願補正発明の「ランプソケット」、「取り付けパネル」、「ガスケット」に、それぞれ相当するといえる。 そして、従来発明における「取付孔21」は、その電球用ソケット90の挿着部91よりわずかに大きい径とされていることから、当然該挿着部91を通過可能であり、逆に、その「フランジ93」は、ハウジング20との間で弾性式パッキン30を挟持するのであるから、上記「取付孔21」を通過不可能なものでなければならないことが明らかであり、また、「爪逃げ部22」は、電球用ソケット90の係止爪92が通過可能であることも明らかである。さらに、従来発明における「弾性式パッキン30」が、環状のものであることも図面にも示されているとおり明らかである。 してみると、本願補正発明と従来発明とは、 「複数の係止爪を有する挿着部と該挿着部の端部に設けられたフランジとを具備するランプソケットと、 該ランプソケットの該挿着部を通過可能且つ該フランジを通過不可能とする取り付け孔と、該ランプソケットの該係止爪が通過可能な爪逃げ部と、該取り付け孔を具備する取り付けパネルと、 該挿着部の係止爪が該取り付けパネルの爪逃げ部を挿入通過後に該ランプソケットを旋回させて取り付けられた際に該取り付けパネルと該フランジとの間に挟持される環状ガスケットと を有することを特徴とするランプソケット用防水構造。」 である点で一致しており、以下の点で両者は相違している。 [相違点] 本願補正発明が、取り付けパネルに、取り付け孔及び爪逃げ部とともに「該爪逃げ部を取り囲み且つ該取り付け孔と同心的に設けられた円筒状リブ」を有し、環状ガスケットを「該円筒状リブの内径よりも大きい外径を有し該円筒状リブの内周面に対し半径方向で圧縮して密着係合する密閉係合外周部を具備する」ように構成しているのに対して、従来発明は、このような構成を具備していない点。 (iv)判断 そこで、上記の相違点について検討する。 平板状の取り付け部に形成された取り付け孔に筒状或いは棒状の部材を挿入し、これを水密的に挿着する際に、環状のシール部材(パッキン、ガスケット)の半径方向への膨らみを規制するように作用する円筒状の外枠構造を、上記取り付け孔を同心的に取り囲む態様で上記平板状の取り付け部側または挿入する部材側のいずれか一方の側に設けることは、本願出願前に周知の手段であるといえる(例えば、前者については、実願昭63-166249号(実開平2-86074号)のマイクロフィルム(原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2)、実願昭62-90670号(実開昭63-200877号)のマイクロフィルムを参照、また、後者については、実願昭56-163539号(実開昭58-68054号)のマイクロフィルムの第6図参照)。 また、密封用の環状シール部材(パッキン、ガスケット)を、その装着時の位置ずれや脱落等を防止する目的で、予め半径方向に圧縮された状態で被装着部へ装着すること、いいかえれば、該環状のシール部材(パッキン、ガスケット)の外径をその装着部の内径よりも僅かに大きいものを選択し、その外周面を密着係合するような態様で被装着部へ装着することも、従来より当業者が必要に応じて適宜採用している装着態様であるといえる(例えば、特開昭61-189392号公報や実願昭58-140797号(実開昭60-47957号)のマイクロフィルム参照)。 してみると、従来発明における電球用ソケット取り付け部の構造を、上記本願出願前周知の手段を採用して、ハウジングの平板状部分(取り付けパネル)に、取り付け孔の爪逃げ部を取り囲み且つ取り付け孔と同心的に円筒状リブを設けたものに変更することは、当業者が容易に想到し得た設計上の変更であるといえるし、また、その際に、パッキンの外径を円筒状リブの内径より大きなものと設定することも、当業者が必要に応じて適宜採用し得た装着態様であるといわざるを得ない。 そして、環状のシール部材の外径をその装着部の内径よりも僅かに大きいものとした場合は、いいかえれば、予め半径方向に圧縮された状態で被装着部へ装着した場合は、そのような装着態様を採用しない場合と比較して、その中心軸線方向の圧縮力をより低減することができるということは当業者にとって従来より自明な事項であるといえるから、本願補正発明の奏する作用・効果も、従来発明及び周知技術から、当業者が普通に予測し得た範囲内のものであるといえる。 以上検討したことから、本願補正発明は、従来発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものと認められるので、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (3)むすび したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第4項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 3.本願発明について 平成13年3月30日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成12年12月4日付で補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。(以下、「本願発明」という。)。 (本願発明) 「複数の係止爪を有する挿着部と該挿着部の端部に設けられたフランジとを具備するランプソケットと、 該ランプソケットの該挿着部を通過可能且つ該フランジを通過不可能とする取り付け孔と、該ランプソケットの該係止爪が通過可能な爪逃げ部と、該取り付け孔と該爪逃げ部を取り囲み且つ該取り付け孔と同心的に設けられた円筒状リブとを具備する取り付けパネルと、 該ランプソケットが該取り付けパネルに取り付けられた際に該取り付けパネルを介して該係止爪と該フランジとの間に挟持され且つ該円筒状リブの内周面に対し半径方向で圧縮して密着係合する密閉係合外周部を具備する環状ガスケットとを有することを特徴とするランプソケット用防水構造。」 (1)引用文献 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1及びその記載事項は、前記「2.(2)(ii)」に記載したとおりである。 (2)対比・判断 本願発明は、前記「2.(1)」で検討したとおり、本願補正発明から、ランプソケットと取り付けパネルの取り付け態様を特定する構成及び環状ガスケットの外径と筒状リブの内径との寸法関係を限定する構成を省いたものである。 そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(2)(iii)」及び「2.(2)(iv)」に示したとおり、従来発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものといえるから、本願発明も、同様の理由により、従来発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるといえる。 (3)むすび したがって、本願発明は、従来発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2003-10-08 |
結審通知日 | 2003-10-15 |
審決日 | 2003-10-28 |
出願番号 | 特願平7-193515 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H01R)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 井上 哲男 |
特許庁審判長 |
大元 修二 |
特許庁審判官 |
石川 好文 平上 悦司 |
発明の名称 | ランプソケット用防水構造 |
代理人 | 萩野 平 |
代理人 | 本多 弘徳 |
代理人 | 市川 利光 |
代理人 | 高松 猛 |
代理人 | 小栗 昌平 |
代理人 | 栗宇 百合子 |
代理人 | 添田 全一 |