• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1089012
審判番号 不服2001-21770  
総通号数 50 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-02-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-12-06 
確定日 2003-12-11 
事件の表示 平成 9年特許願第129810号「ニューラルネットワーク回路」拒絶査定に対する審判事件[平成10年 2月24日出願公開、特開平10- 55346]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成9年5月20日(優先権主張平成8年5月30日)の出願であって、平成13年6月22日付で拒絶の理由が通知され、同年9月3日付で意見書が提出されるとともに、同日付で手続補正がなされたが、同年11月2日付で拒絶査定がなされ、これを不服として、同年12月6日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年12月26日付で手続補正がなされたものである。

2.平成13年12月26日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成13年12月26日付の手続補正を却下する。
[理由]
(1)本件手続補正
平成13年12月26日付の手続補正(以下、「本件手続補正」という。)は、平成13年9月3日付け手続補正により補正された特許請求の範囲(以下、「補正前の特許請求の範囲」という。)を次のとおり(以下、「補正後の特許請求の範囲」という。)変更するもの(以下、「本件補正」という)を含むものである。

(補正前の特許請求の範囲)
「【請求項1】 1つの出力端子と複数の入力端子とを有するニューロンを複数個備えて少なくとも1層を構成し、1組の入力データを共通に前記各ニューロンの複数の入力端子に与えて前記各ニューロンの出力を得て、この各出力に基いて前記1組の入力データを認識するニューラルネットワーク回路であって、
前記各ニューロンの複数の入力端子に対応し且つ初期学習された値を持つ複数の荷重値が記憶された読み出し専用の重みメモリと、
前記読み出し専用の重みメモリに記憶された荷重値と、これ等の荷重値に対応し且つ追加学習された荷重値との差分値を記憶する書き換え可能な差分値メモリと、
与えられる1組の入力データの認識時に、この1組の入力データ、前記読み出し専用の重みメモリの荷重値、及び前記書き換え可能な差分値メモリの差分値に基いて、各ニューロンの出力値を計算する計算手段と
を備えることを特徴とするニューラルネットワーク回路。
【請求項2】 1つの出力端子と複数の入力端子とを有するニューロンを複数個備えて少なくとも1層を構成し、1組の入力データを共通に前記各ニューロンの複数の入力端子に与えて、この1組の入力データと前記各ニューロンの複数の入力端子に対応する荷重値とに基いて前記各ニューロンの出力を得て、この各出力に基いて前記1組の入力データを認識するニューラルネットワーク回路において、
前記各ニューロンの複数の入力端子に対応し且つ初期学習された値を持つ複数の荷重値が記憶された読み出し専用の重みメモリと、
追加学習時に、新たな1組の入力データを正しく認識するように、前記読み出し専用の重みメモリに記憶された荷重値とこの荷重値を追加学習した荷重値との差分値を所定の学習則に従って算出する荷重値変更手段と、
前記荷重値変更手段により算出された差分値を記憶する書き換え可能な差分値メモリと
を備えることを特徴とするニューラルネットワーク回路。
【請求項3】 前記書き換え可能な差分値メモリは前記読み出し専用の重みメモリよりもサイズの小さいRAMで構成される
ことを特徴とする請求項1又は2記載のニューラルネットワーク回路。
【請求項4】 前記書き換え可能な差分値メモリは、 一部のニューロンの荷重値に対する差分値のみを記憶する少アドレス数のRAMで構成される
ことを特徴とする請求項1又は2記載のニューラルネットワーク回路。
【請求項5】 前記荷重値変更手段は、 前記学習則をヘブ則とすると共に、荷重値の変更に際し、その荷重値の変更回数をn、n回目の入力データをX (n) 、変更係数をα、n-1回目までの合計変更値をdW (n-1) として、n回目の合計変更値dW (n) を下記式
dW (n) =dW (n-1) +X (n) ・α
に基いて算出するものであり、
前記算出したn回目の合計変更値dW (n) が差分値として前記書き換え可能な差分値メモリに記憶される
ことを特徴とする請求項2記載のニューラルネットワーク回路。
【請求項6】 前記荷重値変更手段は、乗算器、及び加算器として動作可能な算術演算回路を用いて、n回目の合計変更値dW (n) を算出する
ことを特徴とする請求項5記載のニューラルネットワーク回路。
【請求項7】 前記書き換え可能な差分値メモリは、 前記読み出し専用の重みメモリに保持された荷重値よりもビット数が少ない差分値であって且つ全てのニューロンの複数の入力端子の荷重値に対する差分値を記憶するRAMで構成される
ことを特徴とする請求項1又は2記載のニューラルネットワーク回路。
【請求項8】 差分値の最大値を所定値のリミットレベルで制限するリミッタを備え、
前記リミッタにより制限された後の差分値が前記書き換え可能な差分値メモリに格納される
ことを特徴とする請求項1又は2記載のニューラルネットワーク回路。
【請求項9】 前記書き換え可能な差分値メモリから読み出された差分値のビット幅を拡張するビット拡張器を備える
ことを特徴とする請求項8記載のニューラルネットワーク回路。
【請求項10】 所定ビット幅で表現される差分値においてその下位より所定数のビットを右にシフトすることにより、このシフト後の差分値のビット幅を前記所定ビット幅より小さい数のビット幅に制限するシフトリミッタを備え、
前記シフトリミッタにより制限された後の差分値が前記書き換え可能な差分値メモリに格納される
ことを特徴とする請求項2記載のニューラルネットワーク回路。
【請求項11】 前記差分値メモリから読み出された差分値のビット幅を拡張し、その差分値の変更幅を大きするシフト拡張器を備える
ことを特徴とする請求項10記載のニューラルネットワーク回路。
【請求項12】 前記荷重値変更手段は、 前記学習則をデルタ則又はバックプロパゲーション則とすると共に、荷重値の変更に際し、その荷重値の変更回数をn、n回目の入力データをX (n) 、O ( n) をニューロンの出力値、T (n) を前記ニューロンの出力の教師値、変更係数をα、n-1回目までの合計変更値をdW (n-1) として、n回目の合計変更値dW (n) を下記式
dW (n) =dW (n-1) +(T (n)-O (n))・X (n) ・α
に基いて算出するものであり、
前記算出したn回目の合計変更値dW (n) が差分値として前記書き換え可能な差分値メモリに記憶される
ことを特徴とする請求項2記載のニューラルネットワーク回路。
【請求項13】 前記荷重値変更手段は、乗算器、及び加算器として動作可能な算術演算回路を用いて、n回目の合計変更値dW (n) を算出する
ことを特徴とする請求項12記載のニューラルネットワーク回路。
【請求項14】 前記計算手段は、 与えられる1組の入力データの認識時に、前記1組の入力データのうちの1つの入力データに対応する前記重みメモリの荷重値と、この荷重値に対応する前記書き換え可能な差分値メモリの差分値とを加算し、
前記加算結果の荷重値と、前記1つの入力データとを乗算することを繰返して、各ニューロンの出力値を計算する
ことを特徴とする請求項2記載のニューラルネットワーク回路。」

(補正後の特許請求の範囲)
「【請求項1】 1つの出力端子と複数の入力端子とを有するニューロンを複数個備えて少なくとも1層を構成し、1組の画像又は音声の入力パターンデータを共通に前記各ニューロンの複数の入力端子に与えて前記各ニューロンの出力を得て、この各出力に基いて前記1組の画像又は音声の入力パターンデータを認識するニューラルネットワーク回路であって、
前記各ニューロンの複数の入力端子に対応し且つ初期学習された値を持つ複数の荷重値が記憶された読み出し専用の重みメモリと、
前記読み出し専用の重みメモリに記憶された荷重値と、これ等の荷重値に対応し且つ追加学習された荷重値との差分値を記憶する書き換え可能な差分値メモリと、
与えられる1組の画像又は音声の入力パターンデータの認識時に、この1組の入力パターンデータ、前記読み出し専用の重みメモリの荷重値、及び前記書き換え可能な差分値メモリの差分値に基いて、各ニューロンの出力値を計算する計算手段と
を備えることを特徴とするニューラルネットワーク回路。
【請求項2】 1つの出力端子と複数の入力端子とを有するニューロンを複数個備えて少なくとも1層を構成し、1組の画像又は音声の入力パターンデータを共通に前記各ニューロンの複数の入力端子に与えて、この1組の入力パターンデータと前記各ニューロンの複数の入力端子に対応する荷重値とに基いて前記各ニューロンの出力を得て、この各出力に基いて前記1組の画像又は音声の入力パターンデータを認識するニューラルネットワーク回路において、
前記各ニューロンの複数の入力端子に対応し且つ初期学習された値を持つ複数の荷重値が記憶された読み出し専用の重みメモリと、
追加学習時に、新たな1組の画像又は音声の入力パターンデータを正しく認識するように、前記読み出し専用の重みメモリに記憶された荷重値とこの荷重値を追加学習した荷重値との差分値を所定の学習則に従って算出する荷重値変更手段と、
前記荷重値変更手段により算出された差分値を記憶する書き換え可能な差分値メモリと
を備えることを特徴とするニューラルネットワーク回路。
【請求項3】 前記書き換え可能な差分値メモリは前記読み出し専用の重みメモリよりもサイズの小さいRAMで構成される
ことを特徴とする請求項1又は2記載のニューラルネットワーク回路。
【請求項4】 前記書き換え可能な差分値メモリは、 一部のニューロンの荷重値に対する差分値のみを記憶する少アドレス数のRAMで構成される
ことを特徴とする請求項1又は2記載のニューラルネットワーク回路。
【請求項5】 前記荷重値変更手段は、 前記学習則をヘブ則とすると共に、荷重値の変更に際し、その荷重値の変更回数をn、n回目の入力データをX (n) 、変更係数をα、n-1回目までの合計変更値をdW (n-1) として、n回目の合計変更値dW (n) を下記式
dW (n) =dW (n-1) +X (n) ・α
に基いて算出するものであり、
前記算出したn回目の合計変更値dW (n) が差分値として前記書き換え可能な差分値メモリに記憶される
ことを特徴とする請求項2記載のニューラルネットワーク回路。
【請求項6】 前記荷重値変更手段は、乗算器、及び加算器として動作可能な算術演算回路を用いて、n回目の合計変更値dW (n) を算出する
ことを特徴とする請求項5記載のニューラルネットワーク回路。
【請求項7】 前記書き換え可能な差分値メモリは、 前記読み出し専用の重みメモリに保持された荷重値よりもビット数が少ない差分値であって且つ全てのニューロンの複数の入力端子の荷重値に対する差分値を記憶するRAMで構成される
ことを特徴とする請求項1又は2記載のニューラルネットワーク回路。
【請求項8】 差分値の最大値を所定値のリミットレベルで制限するリミッタを備え、
前記リミッタにより制限された後の差分値が前記書き換え可能な差分値メモリに格納される
ことを特徴とする請求項1又は2記載のニューラルネットワーク回路。
【請求項9】 前記書き換え可能な差分値メモリから読み出された差分値のビット幅を拡張するビット拡張器を備える
ことを特徴とする請求項8記載のニューラルネットワーク回路。
【請求項10】 所定ビット幅で表現される差分値においてその下位より所定数のビットを右にシフトすることにより、このシフト後の差分値のビット幅を前記所定ビット幅より小さい数のビット幅に制限するシフトリミッタを備え、
前記シフトリミッタにより制限された後の差分値が前記書き換え可能な差分値メモリに格納される
ことを特徴とする請求項2記載のニューラルネットワーク回路。
【請求項11】 前記差分値メモリから読み出された差分値のビット幅を拡張し、その差分値の変更幅を大きするシフト拡張器を備える
ことを特徴とする請求項10記載のニューラルネットワーク回路。
【請求項12】 前記荷重値変更手段は、 前記学習則をデルタ則又はバックプロパゲーション則とすると共に、荷重値の変更に際し、その荷重値の変更回数をn、n回目の入力データをX (n) 、O ( n) をニューロンの出力値、T (n) を前記ニューロンの出力の教師値、変更係数をα、n-1回目までの合計変更値をdW (n-1) として、n回目の合計変更値dW (n) を下記式
dW (n) =dW (n-1) +(T (n)-O (n))・X (n) ・α
に基いて算出するものであり、
前記算出したn回目の合計変更値dW (n) が差分値として前記書き換え可能な差分値メモリに記憶される
ことを特徴とする請求項2記載のニューラルネットワーク回路。
【請求項13】 前記荷重値変更手段は、乗算器、及び加算器として動作可能な算術演算回路を用いて、n回目の合計変更値dW (n) を算出する
ことを特徴とする請求項12記載のニューラルネットワーク回路。
【請求項14】 前記計算手段は、 与えられる1組の画像又は音声の入力パターンデータの認識時に、前記1組の入力パターンデータのうちの1つの入力パターンデータに対応する前記重みメモリの荷重値と、この荷重値に対応する前記書き換え可能な差分値メモリの差分値とを加算し、
前記加算結果の荷重値と、前記1つの入力パターンデータとを乗算することを繰返して、各ニューロンの出力値を計算する
ことを特徴とする請求項2記載のニューラルネットワーク回路。」

(2) 本件補正の目的
本件補正前後の特許請求の範囲の記載を対比すると、補正後の特許請求の範囲の請求項1ないし14は、各々補正前の特許請求の範囲の請求項1ないし14に対応するものであり、本件補正は、補正前の請求項1、2及び14の「1組の入力データ」を「1組の画像又は音声の入力パターンデータ」とし、同じく「入力データ」を「入力パターンデータ」とするものであるから、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものであることは明らかであるから、特許法第17条の2第4項第2号に掲げる事項を目的とするものである。

(3)独立特許要件
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に適合するか)について以下に検討する。
(3-1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特開平5-61847号公報(以下、「引用例1」という。)には、ニューラルネットワーク学習装置に関して、以下の事項が記載されている。
1).「図1に本発明の一実施例に係るニューラルネットワーク学習装置の基本的な構成を示す。図中1は、学習機能付ニューラルネットワークハードウェア(LSI)2は、入力パターンを保持するための入力パターン用バッアァ、3は、教師パターンを保持するための教師パターン用バッアァ、4は、学習済の荷重値を記憶しておくための読み出し専用記憶装置、5は、ニューラルネットワーク装置1で学習した荷重値を電源オフ時、あるいは定時刻毎に退避するための書替可能の不揮発性記憶装置、6は、学習用入力、教師パターン(これらを合わせて学習パターンと呼ぶ)組合せを記憶しておく書替可能の不揮発性記憶装置、7は、各記憶装置4,5,6及び入力、教師パターン用バッアァ2,3とニューラルネットワーク装置1との間のデータ転送の制御を行うコントローラである。」(段落番号【0013】)
2).「図2は、本学習装置の学習対象である学習機能付ニューラルネットワーク装置1の機能構成の一例を表すブロック図である。ここでは、バックプロパゲーションネットワークをとり上げて説明する。まず、入力部A21、入力部B22がそれぞれ前記の入力パターンバッアァ2、教師パターン3より入力パターン、教師パターンを受け取る。荷重値記憶部23はネットワークにおける各ニューロン間の結合重み(これを荷重値と呼ぶ)を一時的に記憶するものである。・・・(中略)・・・学習の済んだニューラルネットワーク装置1は、入力パターンを入力して出力される出力パターンによりパターン認識を行う等の用途に供されることになる。」(段落番号【0014】)
3).「読出専用記憶装置4には、学習済の荷重値を標準データとして記憶しておく。例えば、音声認識応用を考えるなら、標準的話者の情報を使って、前もって学習し、その結果の荷重値を予め記憶装置4に焼きつけておく。この前もって行う学習は、大型計算機等を使い、大がかりな計算を時間をかけて行い、荷重値を最適化しておくとよい。また、使用者個人のパターンを、図3のように学習パターン組合せ用記憶装置6に予め記録しておく。例えば、使用者が一音づつ発音し、その発音パターンを入力パターンとし、一音に対応する文字を示すパターンを教師パターンとして、入力、教師パターンを定義し、これらを組合せた学習パターンの集合を記憶装置6に記録しておく。さらに、記憶装置6は書替可能であるから、必要に応じて外部信号により学習パターンを追加したり削除したりすることもできる。」(段落番号【0017】)
4).「上記の手続により、記憶装置4あるいは5から既学習データをニューラルネットワーク装置1に転送し、その値を初期値として学習を進められることから、学習時間の短縮化が図れる。特に、各使用者毎の個性が荷重値に及ぼす影響はわずかであると考えられるので、標準データの荷重値を最適解としておき、そこから学習を始めれば各使用者毎の学習により、個人に応じた最適解(標準の最適解とそれほど離れた値ではない)に速やかに収束させることができる。また、荷重更新手続においては、入力パターンとそれに応じた教師パターンのベクトルを図4で示したようなバッアァにより一斉にニューラルネットワーク装置1に与えられるから、学習パターン転送でのボトルネックを取除き、学習速度を上げることができる。さらに、学習過程の途中で学習した荷重値をニューラルネットワーク装置1から、書替可能記憶装置5に退避させることにより、学習中のシステムダウンからの復帰を容易にすると共に、学習終了時に荷重値を5の記憶装置に退避させておき、次回の使用時には、この記憶装置5からの荷重値を使用することによって、同じ学習を繰り返す必要がなくなる。また、この系全体をVLSIとして実現すれば、汎用の超小形高速学習装置となる。」(段落番号【0019】)

上記記載1)及び2)によると、引用例1のニューラルネットワーク学習装置は、学習機能付きニューラルネットワーク装置1を有し、ニューラルネットワークの一例としてバックプロパゲーションネットワークがとり上げられており、上記記載1)及び3)からみて、読出専用記憶装置は学習済の荷重値を標準データとして記憶しており、また、該荷重値が複数であることは明らかである。
上記記載1)及び4)からみて、書換可能の不揮発性記憶装置には、読出し専用記憶装置の値を初期値として学習した学習終了時の荷重値が記憶されている。また、前記書換可能の不揮発性記憶装置の荷重値が認識の際に使用されることは明らかである。
また、上記記載3)からみて、ニューラルネットワークは音声認識にも用いられる。
したがって引用例1には、「音声認識に用いられるバックプロパゲーションネットワークからなる学習機能付きニューラルネットワーク装置であって、学習済みの標準データとしての荷重値が複数記憶された読出専用記憶装置と、前記読出専用記憶装置の標準データとしての荷重値を初期値として学習した荷重値を記憶する書換可能の不揮発性記憶装置とを有し、音声認識時に前記書換可能の不揮発性記憶装置の荷重値に基づいた認識を行うことを特徴とする学習機能付きニューラルネットワーク装置。」(以下、「引用例1に記載された発明」という。)が記載されている。

(3-2)対比
本件補正発明と引用例1に記載された発明とを対比する。
引用例1に記載された発明の、「音声認識に用いられるバックプロパゲーションネットワークからなる学習機能付きニューラルネットワーク装置」は、本件補正発明の、「画像又は音声の入力パターンデータを認識するニューラルネットワーク回路」に相当し、引用例1に記載された発明の「学習済みの標準データとしての荷重値が複数記憶された読出専用記憶装置」は本件補正発明の「初期学習された値を持つ複数の荷重値が記憶された読み出し専用の重みメモリ」に相当し、引用例1に記載された発明の、「前記読出専用記憶装置の荷重値を初期値として学習した荷重値を記憶する書換可能の不揮発性記憶装置」と本件補正発明の、「これ等の荷重値に対応し且つ追加学習された荷重値との差分値を記憶する書き換え可能な差分値メモリ」は、追加学習された荷重値に関する値を記憶する書き換え可能なメモリである点で共通している。
また、引用例1に記載された発明においても認識時に入力パターンデータを必要とすることは当然であるから、引用例1に記載された発明の、「音声認識時に前記書換可能の不揮発性記憶装置の荷重値に基づいた認識を行う」ことと、本件補正発明の、「与えられる1組の画像又は音声の入力パターンデータの認識時に、この1組の入力パターンデータ、前記読み出し専用の重みメモリの荷重値、及び前記書き換え可能な差分値メモリの差分値に基いて、各ニューロンの出力値を計算する」こととは、与えられる1組の画像又は音声の入力パターンデータの認識時に、この1組の入力パターンデータと前記書き換え可能なメモリの値に基いて認識を行う」点で共通している。
したがって、本件補正発明と引用例1に記載された発明は、
「画像又は音声の入力パターンデータを認識するニューラルネットワーク回路であって、初期学習された値を持つ複数の荷重値が記憶された読み出し専用の重みメモリと、追加学習された荷重値に関する値を記憶する書き換え可能なメモリと、を備え、与えられる1組の画像又は音声の入力パターンデータの認識時に、この1組の入力パターンデータと前記書き換え可能なメモリの値に基いて認識を行うことを特徴とするニューラルネットワーク回路。」である点で一致し、以下の点で相違する。
(相違点1)
本件補正発明のニューラルネットワーク回路は、「1つの出力端子と複数の入力端子とを有するニューロンを複数個備えて少なくとも1層を構成し、1組の画像又は音声の入力パターンデータを共通に前記各ニューロンの複数の入力端子に与えて前記各ニューロンの出力を得て、この各出力に基いて前記1組の画像又は音声の入力パターンデータを認識するニューラルネットワーク回路」であるのに対し、引用例1に記載された発明は、ニューロンレベルの構成は明らかでなく、本件補正発明の「読み出し専用の重みメモリ」の荷重値は、各ニューロンの複数の入力端子に対応しているのに対して、引用例1に記載された発明の「読出専用記憶装置」の荷重値は、各ニューロンの複数の入力端子に対応しているか否かが引用例1には明記されていない点。
(相違点2)
書き換え可能なメモリの追加学習された荷重値に関する値が、本件補正発明は、読出し専用の重みメモリに記憶された荷重値と追加学習された荷重値との差分値であるのに対して、引用例1に記載された発明は、学習した荷重値そのものであり、「与えられる1組の音声の入力パターンデータの認識時に、この1組の入力パターンデータと前記書き換え可能なメモリの値に基いて認識を行う」際に、本件補正発明は「前記読み出し専用の重みメモリの荷重値、及び前記書き換え可能な差分値メモリの差分値に基いて」計算する計算手段を有しているのに対して、引用例1に記載された発明は、書換可能の不揮発性記憶装置の荷重値に基づいた認識を行う点。

(3-3)判断
上記相違点について検討する。
(相違点1について)
1つの出力端子と複数の入力端子とを有するニューロンを複数個備えて少なくとも1層を構成し、前記各ニューロンの出力を得て、この各出力に基いて認識することは、バックプロパゲーションネットワークからなるニューラルネットワーク回路における通常の手法であり、当該手法を引用例1に記載された発明に適用することは当業者が適宜なし得たことである。
また、バックプロパゲーションネットワークでは、荷重値を各ニューロンの複数の入力端子に対応付けるのが一般的構成であり、引用例1に記載された発明において特に明示されない荷重値とニューロンとの対応付けを上記一般的構成とすることは当業者が容易になしえたことである。
したがって相違点1は格別のものではない。
(相違点2について)
情報処理の分野において、類似の値をもつ2つのデータを記憶する際に、それらの差分を記憶しメモリを効率的に使用することは周知技術である。(特開平5-290013号公報の第51段落ないし第54段落、特開平4-368999号公報の第68段落ないし第69段落の記載参照。)
引用例1に記載された発明の読出専用記憶装置の荷重値と、書換可能の不揮発性記憶装置の荷重値が類似した値であることは、上記(3-1)の記載4)から明らかであるから、これら荷重値に上記周知技術を適用し本件補正発明のように構成することは当業者が容易になし得たことである。
そして引用例1に記載された発明において、上記周知技術を採用したのであれば、それに伴い音声認識の際に、前記読み出し専用の重みメモリの荷重値、及び前記書き換え可能な差分値メモリの差分値に基いた処理を行うようにすることは当然であり、そのための計算手段を設けることも当業者が適宜なし得たことである。
したがって、相違点2は格別のものではない。

なお、請求人は、審判請求書の「1) 本願発明の説明」において、「本願の請求項1に係る発明は、1組の画像又は音声の入力パターンデータを認識する場合にも、差分値メモリをニューラルネットワーク回路に内蔵して、追加学習を高速に行うことができる,という格別の作用効果を奏するものである。」と主張するが、上記作用効果は引用例1に記載された発明に、「(相違点2について)」で示した周知技術を適用した際に当業者が当然期待するものである。よって本件補正発明の効果も格別のものとはいえない。
また、請求人は審判請求書の(3)のc.で「第2引用例記載の発明と本願発明とは、入力データが相関性を持つデータであるか又は相関性を持たない画像又は音声のパターンデータであるかの点、及び、差分値メモリに記憶するデータが相関性を持つ入力データの差分値であるか荷重値の差分値であるかの点で発明特定事項が全く相違する。」と主張するが、引用例1に記載された発明の「書換可能の不揮発性メモリの荷重値」に対して、引用例2〜3の周知技術を適用することは、「(相違点2について)」で示した理由により、当業者が容易になしえたことであり、入力データの相関性の有無は差分を用いるか否かと全く関係ないことであるから、当該主張は失当である。

以上のとおりであるので、本件補正発明は、引用例1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(4)むすび
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第4項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
平成13年12月26日付の手続補正は上記のとおり決定をもって却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成13年9月3日付手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「1つの出力端子と複数の入力端子とを有するニューロンを複数個備えて少なくとも1層を構成し、1組の入力データを共通に前記各ニューロンの複数の入力端子に与えて前記各ニューロンの出力を得て、この各出力に基いて前記1組の入力データを認識するニューラルネットワーク回路であって、
前記各ニューロンの複数の入力端子に対応し且つ初期学習された値を持つ複数の荷重値が記憶された読み出し専用の重みメモリと、
前記読み出し専用の重みメモリに記憶された荷重値と、これ等の荷重値に対応し且つ追加学習された荷重値との差分値を記憶する書き換え可能な差分値メモリと、
与えられる1組の入力データの認識時に、この1組の入力データ、前記読み出し専用の重みメモリの荷重値、及び前記書き換え可能な差分値メモリの差分値に基いて、各ニューロンの出力値を計算する計算手段と
を備えることを特徴とするニューラルネットワーク回路。」(以下、「本願発明」という。)

(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例、および、その記載事項は、前記2.の(3-1)に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記2.の(3)で検討した本件補正発明の「1組の画像又は音声の入力パターンデータ」を「1組の入力データ」と上位概念化し、「入力パターンデータ」を「入力データ」と上位概念化したものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本件補正発明が、前記2.の(3-3)に記載したとおり、引用例1及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例1及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
したがって、本願発明は、引用例1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2003-10-08 
結審通知日 2003-10-14 
審決日 2003-10-27 
出願番号 特願平9-129810
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
P 1 8・ 575- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 久保 光宏  
特許庁審判長 徳永 民雄
特許庁審判官 平井 誠
村上 友幸
発明の名称 ニューラルネットワーク回路  
代理人 前田 弘  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ