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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01N
管理番号 1089088
審判番号 不服2001-1851  
総通号数 50 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-01-23 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-02-13 
確定日 2003-12-18 
事件の表示 平成 8年特許願第169675号「走査型プローブ顕微鏡の立体表示方法」拒絶査定に対する審判事件[平成10年 1月23日出願公開、特開平10- 19904]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1. 経緯・本願発明

本願は、平成 8年 6月28日の出願であって、その請求項1に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1に記載された次の通りのものと認める。(以下、「本願発明」という。)

「試料の表面形状の3次元データを求める走査型プローブ顕微鏡において、前記3次元データを所定の視差角に対応する右眼と左眼の視線方向から見て得られる二つの二次元データに変換し、前記二つの二次元データを複数に分割し、分割した二つの二次元データを交互に表示画面上に一画像として表示し、視差角に対応した距離離れた位置において、レンズアレイを通して前記表示画面を観察することを特徴とする、走査型プローブ顕微鏡の立体表示方法。」

2.刊行物に記載された事項

これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された特開平5-266215号公報(以下、「刊行物」という。)には、次の事項が記載されている。

「【0009】3次元メモリ1は、X線CTスキャナ装置等の画像収集装置あるいは画像ファイル装置から対象物の3次元画像データを構成する複数の画素値データ(以下、PGデータとする)を、またマーカデータ書込部9から3次元マーカデータを構成する複数の画素値データ(以下、MGデータとする)を、アドレスデータと共にディジタル信号で入力し、各画素値データをアドレスデータに指定されたアドレス位置にそれぞれ格納する。その際、MGデータと同じアドレスデータを有するPGデータとを識別し、そのPGデータは補助メモリ15に一時的に格納される。
【0010】投影像作成部2は、3次元メモリ1に格納されているPGデータとMGデータとを入力し、これらの画素値データを3次元アドレスジェネレータ(以下、AGとする)3から供給される投影方向を規定する投影アドレスデータに基づき右目用の投影像データと左目用の投影像データとを再構成する。ここで、MGデータの後方にあるPGデータに対して陰線処理を実施する。
【0011】右目用メモリ4と左目用メモリ5は、投影像作成部2で作成された右目用の投影像データと左目用の投影像データとをそれぞれ格納し、選択スイッチ6を介してD/A変換器7に接続されている。選択スイッチ6は、右目用メモリ4と左目用メモリ5とを所望の時間間隔で選択的にD/A変換器7と接続させる。D/A変換器7は、ディジタル信号データである右目用の投影像データと左目用の投影像データとを入力し、それらをアナログ信号データに変換し、ステレオ表示装置8に交互に出力する。ステレオ表示装置8は、右目用投影像と左目用投影像とを選択スイッチ6に規定された時間間隔で交互に表示する。時分割メガネ14は、ステレオ表示装置8に交互に表示される右目用投影像と左目用投影像とを、選択スイッチ6に規定された時間間隔に同期して右目と左目とに入射する光線を交互に遮断する。」

この記載事項及び図示によると、刊行物には、「X線CTスキャナ装置等の画像収集装置あるいは画像ファイル装置から得られた対象物の3次元画像データを、右目用の投影像データと左目用の投影像データとに再構成し、これらのデータをステレオ表示装置に、選択スイッチに規定された時間間隔で交互に表示し、時分割メガネで、ステレオ表示装置に交互に表示される右目用投影像と左目用投影像とを、選択スイッチに規定された時間間隔に同期して右目と左目とに入射する光線を交互に遮断することにより、立体表示を行う方法」という発明が記載されていると認められる。

3. 対比・判断

本願発明と刊行物に記載された発明とを比較すると、刊行物に記載された、「3次元画像データ」、「右目用の投影像データと左目用の投影像データ」は、それぞれ本願発明における、「3次元データ」、「所定の視差角に対応する右眼と左眼の視線方向から見て得られる二つの二次元データ」に相当し、両者は、
「3次元データを所定の視差角に対応する右眼と左眼の視線方向から見て得られる二つの二次元データに変換し、前記二つの二次元データに基づいて立体表示させる立体表示方法」である点で一致し以下の点で相違している。

(相違点1)
3次元データが、本願発明は走査型プローブ顕微鏡より得られる試料の表面形状の3次元データであるのに対し、刊行物に記載された発明はX線CTスキャナ装置等の画像収集装置あるいは画像ファイル装置から得られた対象物の3次元データであり、必然的に観察される画面の種類も相違する点。

(相違点2)
立体表示を行う方法が、本願発明は、二つの二次元データを複数に分割し、分割した二つの二次元データを交互に表示画面上に一画像として表示し、視差角に対応した距離離れた位置において、レンズアレイを通して前記表示画面を観察する方法であるのに対し、刊行物に記載された発明は、二つの二次元データを、ステレオ表示装置に、選択スイッチに規定された時間間隔で交互に表示し、時分割メガネで、ステレオ表示装置に交互に表示される右眼の視線方向から見て得られる二次元データと左眼の視線方向から見て得られる二次元データとを、選択スイッチに規定された時間間隔に同期して右目と左目とに入射する光線を交互に遮断する方法である点。

上記(相違点1)について検討する。
走査型プローブ顕微鏡は、本出願前に周知の試料の表面形状の3次元データを収集する装置であって、その3次元データに基づいて表示を行うことも通常行われていることである。また、走査型プローブ顕微鏡から得られる試料の表面形状の3次元データも、X線CTスキャナ装置等の画像収集装置あるいは画像ファイル装置から得られた対象物の3次元データも、共に3次元空間内での位置を表すデータとしては同じものであることは当業者にとって明らかである。

してみれば、刊行物に記載された発明における3次元データとして、本出願前に周知の走査型プローブ顕微鏡より得られる試料の表面形状の3次元データを採用して走査型プローブ顕微鏡による画面の観察ができるようにする程度のことは当業者であれば容易になし得ることにすぎない。

上記(相違点2)について検討する。
二つの二次元データを複数に分割し、分割した二つの二次元データを交互に表示画面上に一画像として表示し、視差角に対応した距離離れた位置において、レンズアレイを通して前記表示画面を観察する方法により立体表示することは、本出願前に周知の技術にすぎない。(例えば、原査定の理由において引用された特開平1-73330号公報、特開平3-65942号公報及び特開平4-18893号公報を参照。)

そして、刊行物に記載された発明においても、立体表示を行う方法の1実施例として時分割メガネを使用した方法が記載されているにすぎず、刊行物に記載された発明の立体表示方法として、上記周知の立体表示方法を適用する程度のことは、当業者であれば容易になし得ることにすぎない。

そして、出願人が主張する本願発明の効果についても、刊行物に記載された発明や、上記の本出願前に周知の技術などに基いて、当業者が予測可能なことにすぎない。

4.まとめ

したがって、本願発明は、刊行物に記載された発明及び本出願前に周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条2項の規定により特許を受けることができない。
 
審理終結日 2003-10-15 
結審通知日 2003-10-21 
審決日 2003-11-04 
出願番号 特願平8-169675
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G01N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 郡山 順▲高▼見 重雄山口 剛  
特許庁審判長 渡部 利行
特許庁審判官 河原 正
福島 浩司
発明の名称 走査型プローブ顕微鏡の立体表示方法  
代理人 江口 裕之  
代理人 喜多 俊文  

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