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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1089093
審判番号 不服2000-18978  
総通号数 50 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1994-02-15 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2000-11-30 
確定日 2003-12-18 
事件の表示 平成 4年特許願第199706号「パチンコ遊戯機」拒絶査定に対する審判事件[平成 6年 2月15日出願公開、特開平 6- 39111]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯、本願発明
本願は、平成4年7月27日の出願であって、平成12年5月25日付拒絶理由通知に対応して同年12年7月28日付けで手続補正がなされ、同年10月20日付けで拒絶査定され、平成12年12月12日付けで審判請求に際して手続補正がなされたものである。

本願請求項1にかかる発明(以下「本願発明」という)は、本願の特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの次のものと認める。
「遊戯盤に配設され光透過率を変更可能なドットがマトリックス状に配置されて構成された液晶ディスプレイと、前記液晶ディスプレイに表示する画像を記憶する複数の記憶手段と、前記複数の記憶手段に記憶された各画像の表示位置が独立に変化するように前記各画像を液晶ディスプレイに表示させると共に、各画像の重なっている部分では、前記各画像を単位として予め定められた優先順位に従い、優先順位の高い画像が前記液晶ディスプレイに表示されるように制御する制御手段と、を有するパチンコ遊戯機。」

2.引用例
(2-1)引用文献1.
これに対して、原査定の拒絶の理由で引用された特開平4-90779号公報(以下「引用文献1」という)には、以下の点が記載されている。(なお、拒絶理由通知書には特開平4-199706号公報との誤記がなされているものの、平成12年7月28日付出願人意見書、及び平成12年12月12日付けの審判請求の理由において、引用文献は特開平4-90779号であると記載されており、原審における議論も上記公報に基づいているので、引用文献は上記のものであると認定する。)

(記載1)「前記遊技面に設けられた液晶表示板と、前記図柄の画像データを記憶した図柄データ記憶手段と、複数の背景の画像データを記憶した背景データ記憶手段と、前記図柄データ記憶手段の画像データを前記液晶表示板に出力して図柄を表示させるとともに、背景データ記憶手段の画像データを液晶表示板に出力して遊技の進行に応じて順次異なる背景を表示させる画像制御手段とを備えた図柄組合せ遊技機」(第2ページ左上欄第19行-同ページ右上欄第7行)

(記載2)「以下、この発明を図柄組合せ式のパチンコ機に具体化した一実施例を図面に従って説明する。」(第2ページ左下欄第5行-第6行)

(記載3)「乱数表示26等の他に第1から第4の背景27〜30の画像データを第2のRAM24に記憶し、パチンコ遊技の進行に応じてその背景27〜30」を変更するようにしたため、液晶表示板4上の表示が変化に富みパチンコ遊技の面白味を高めることができる」(第4ページ右上欄第18行-同ページ左下欄第3行)

(記載4)「さらに、上記したように乱数表示26等と第1から第4の背景27〜30との画像データをそれぞれ独立してROM23,24に記憶し、その乱数表示26と背景27〜30とを組み合わせて所望の画像を作り出すようにした。従って、所望する全ての画像をデータとしてROM23,24に記憶した場合に比較して小さな記憶容量のROM23,24でまかなうことができる。」(第4ページ左下欄第4行-11行)

(記載5)「遊技内容以外の画像を表示して遊技の面白味を高めることができる」(第4ページ左下欄第20行-右下欄第1行)
これらの記載によれば、引用文献1には、「遊技面に設けられた液晶表示板と、図柄の組み合わせに応じて遊技状態を変更するような図柄組み合わせ遊技のための図柄の画像データを記憶した図柄記憶手段と、複数の背景の画像データを記憶した背景データ記憶手段と、前記図柄データ記憶手段の画像データを前記液晶表示板に出力して図柄を表示させるとともに、背景データ記憶手段の画像データを液晶表示板に出力して遊技の進行に応じて順次異なる背景を表示させる画像制御手段とを備えた図柄組合せパチンコ遊技機であって、遊技内容以外の画像を表示して遊技の面白味を高めることができるパチンコ遊技機」(以下「引用発明1」という)が記載されていると認められる。

(2-2)周知例1
また、周知例として特開平1-124481号公報には以下の点が記載されている。

(記載6)「本発明はパチンコ機に関し、特にパチンコ機本来の入賞口への入賞遊技に他のゲームを組合せたものである。」(第1ページ右下欄第11行-13行)

(記載7)「遊技盤6のほぼ中央位置にはゲームパターン表示装置21としてCRT(陰極線管)が配設され」(第2ページ右上欄第11行-第13行)

(記載8)「また、パターン表示メモリ31に記憶されている第2のゲームパターンは第4図に示す如く、… …第1、第2及び第3の円盤U1、U2及びU3は時間の経過に応じて移動して行くようになされている。」(第3ページ左上欄第1行-第7行)

(記載9)「なお、ゲームパターン表示装置21としてはCRTばかりでなく、液晶、あるいは発光ダイオードによるマトリクス表示などを利用してもよい。」(第4ページ右下欄第12行―第15行)

(2-3)周知例2
また、周知例として特開平3-55081号公報には以下の点が記載されている。

(記載10)「こうしたパチンコ機の可変表示装置として液晶式の画像表示装置を用いたものがある。」(第1ページ右下欄第10行-第12行)

(記載11)「遊技が行われていないときあるいは遊技が行われていても打球発射装置により遊技部3に発射された打球が特定入賞口6a〜6cに入賞しないときは、デジタル52に普段動作のディスプレイ表示が行われる。

(2-4)周知例3
拒絶査定において例示した周知例記載文献(実願平2-7485号(実開平3-100892号)のマイクロフィルム)には、以下の点が記載されている。

(記載12)「本考案は、シミュレータ用模擬視界作成装置に関し、特に、実光景撮影画像(背景画像)と動きや形状が計算機で制御される移動物体画像との合成画像の発生およびその表示に関する。本考案によるシミュレータ用模擬視界作成装置は、例えば射撃訓練用シミュレータに利用される」(第2ページ第7行-第12行)

(記載13)「背景画像および移動体画像のそれぞれについて、画像データSI、MIとともに距離データSD,MDを制御手段3により第2のメモリ2から第1のメモリ1に一時的に格納し、比較手段4において両者の距離データの比較を行い、その比較結果に基づき合成画像データ生成手段5において両者の画像の隠顕の優先順位を決定し、それに基づき背景と移動物体の合成画像データCIをディジタル処理により得て、その合成画像を可視表示するようにしている。 このように、背景中の地形地物と移動物体との相互間の隠顕処理を自動的に行うことができるので、移動物体の動きを正確に模擬することが可能となる。また、従来形に見られたような背景画像と移動物体画像の二重投写ではなく、上記隠顕処理に基づく両者の合成画像を可視表示させるようにしているので、背景中の移動物体の輝度を地形地物の輝度に対して調和させることができる。」(第6ページ第14行-第7ページ12行)

(記載14)「続いてマイクロプロセッサ20は、前記のようにして得られた移動物体画像の光ディスク装置10内の最初のアドレスから、各バッファメモリへの書き込みアドレスのカウントアップに従い順次に光ディスク装置10から移動物体画像のR、G、Bの輝度データMIを取り出し、背景画像に対すると同じバッファメモリ50または60の内部のRGB画像データフレームバッファ53または63に該データを書き込んだ後、前記のようにして得られた移動物体画像の距離データMDを距離データフレームバッファ54または64の移動物体画像が占有する画素に書き込む。この時、移動物体画像が占有しない画素に対しては、距離の最大値を指定する。」(第10ページ第18行-第11ページ第10行)

(記載15)「以上説明したように本考案によれば、背景中の地形地物と移動物体との相互間の隠顕処理を自動的に行うことができ、ひいては移動物体の動きを正確に模擬することが可能になる。また、従来形に見られたような背景画像と移動物体画像の二重投写ではなく、上記隠顕処理に基づく両者の合成画像を可視表示させるようにしているので、背景中の移動物体と地形地物の輝度を互いに調和させることができる。」(第15ページ第11行-第19行)

(2-5)周知例4
また、周知例として特開昭63-271294号公報には以下の点が記載されている。

(記載16)「本発明は、リアルタイムでの高速画像処理が必要なビデオゲームマシンにおいて、高速大容量の画像転送が行える2フレームバッファ方式を採用したビデオゲームマシンにおける画像書換方式に関する。」(第1ページ右下欄最終行-第2ページ左上欄第4行)

(記載17)「第6A図および第6B図に示すように、山72および木74が静止しており自動車76のみが右方に変化する簡単な場合を想定すると、第6A図の画像を第6B図の画像へと変化させるには、移動前の自動車76を消去するとともに、その自動車76に隠れた画像部分および移動後の自動車76を書込む必要がある」(第2ページ右上欄第4行-第10行)

(記載18)「フレームメモリ14及び24は、それぞれセレクタ10及び… …これにより、画像データ消去用の無効データまたは背景色データが、トライステートバッファ16,26を介することなく得られる。」(第4ページ左上欄第7行-第19行)

(記載19)「すなわち、両出力をプライオリティエンコーダ94により判定して優先順位の高い方の出力をセレクタ92が選択してラッチ41に送る。具体的には、セレクタ40からのデータが上記無効データのとき、セレクタ92は背景イメージ発生回路96の出力を選択するようにする。」(第4ページ左下欄第3行-第9行)

(2-6)周知例5
また、周知例として特開昭59-141976号公報には以下の点が記載されている。

(記載20)「特に背景となる静止画と操作者の制御下で移動する動画とが独立して制御され、合成されて表示されるテレビゲーム装置において、複数個のパターンデータ信号を合成して1個の表示画面を構成する方法に関する。」(第1ページ左下欄第14行-第18行)

(記載21)「動画キャラクタパターンデータ中の属性データにより優先順位を決定して、カラーゼネレータ35に信号を送出する。」(第4ページ右下欄第19行―第5ページ左上欄第1行)

(記載22)「52は背景となる静止画キャラクタパターンデータBG0〜BG3と動画キャラクタパターンデータOBJ0〜OBJ3のいずれを転送するかを判定する優先判定回路で、OBJ0とOBJ1をNOR回路53の2入力とし、BG0とBG1をOR回路54の2入力とする。優先順位を決めるデータOBJ4とOR回路54の出力をAND回路55の2入力とし、このAND回路55の出力とNOR回路53の出力とをOR回路56の2入力とすることにより、そのOR回路56の出力、及びその出力のインバータ57による反転出力をそれぞれトランスミッションゲート50及び51の各トランジスタのゲートに印加するものである、」(第5ページ右上欄第15行-左下欄第7行)

(2-7)周知例6
また、周知例として特開平4-182698号公報には以下の点が記載されている。

(記載23)「優先順位回路44は、動画や背景画が重なったとき優先データで表される優先順位のより高いデータを出力するための回路であり、具体的には第8図に示すように構成される。すなわち、優先順位回路44は透明検出回路46a、46b、46c、46dおよび46eを含み、これらはそれぞれ動画データOBJ、背景がデータBG1、BG2、BG3およびBG4に対応する。」(第6ページ左上欄第9行―第16行)

(2-8)周知例7
また、周知例として特開昭63-127777号公報には以下の点が記載されている。

(記載24)「例えば第4図に示すゲーム画面を例にとると、常に画面内に表示されるマイシップ100bのような標体の右視野データ及び左視野データのみをキャラクタジェネレータ42a及び42b内に登録しておき、障害物100cの様に動きが早く、しかも常に画面内に登場しない標体は右視野及び左視野の区別のない1種類の画像データをモノキャラクタジェネレータ42cへ登録すればよい。」(第11ページ右上欄第16行-左下欄第4行)

3.対比
そこで、本願発明と引用発明1とを比較すると、前者の「液晶ディスプレイ」は後者の「液晶表示板」に相当し、前者の「画像を記憶する複数の記憶手段」は後者の「図柄記憶手段」及び「背景データ記憶手段」に、前者の「制御手段」は後者の「画像制御手段」にそれぞれ相当するから、両者は、「遊戯盤に配設された液晶ディスプレイと、液晶ディスプレイに表示する画像を記憶する複数の記憶手段と、前記複数の記憶手段に記憶された画像が液晶ディスプレイに表示されるように制御する制御手段とを有するパチンコ遊戯機」
の点で一致し、

(相違点1)本願発明は「光透過率を変更可能なドットがマトリックス状に配置されて構成された」という液晶ディスプレイの構成を限定しているのに対して引用発明1は構成の限定がなく、記憶手段から画像データを出力して図柄を表示させるという機能の限定のみがなされた「液晶表示板」であることにおいて一応相違し、

(相違点2)本願発明の複数の記憶手段に記憶された画像は、表示位置が独立に変化するように液晶ディスプレイに表示されるのに対し、引用発明1においては画像の表示位置に関しては格別記載がないこと、

(相違点3)本願発明の複数の記憶手段に記憶された各画像の重なっている部分では、各画像を単位として予め定められた優先順位に従い、優先順位の高い画像が液晶ディスプレイに表示されるのに対し、引用発明1は「図柄データ」と「複数の背景の画像データ」が出力されてディスプレイに表示され「遊技の進行に応じて順次異なる背景を表示する」ものであると記載されているものの、優先順位については記載がないこと、
の点において相違している。

4.当審の判断
(相違点1について) 記憶手段の画像データを表示するという機能を果たす液晶ディスプレイの通常の構造は、光透過率を変更可能なドットがマトリックス状に配置されて構成されているものであるから、相違点1は通常の構成の記載の有無の相違にすぎず実質的に相違点ではない。

(相違点2について) パチンコ遊技機の遊技盤に配設されたディスプレイにおいて電子ゲーム等の画像を表示することは周知例1、2が示すように周知であり、電子ゲーム等の遊技機の画面表示において画像表示位置が独立に変化する複数の画像を表示することは周知例3-7に見られるように周知慣用の手法であるから、相違点2は引用発明1に周知慣用の手法を適用したものにすぎない。

(相違点3について) 図柄データと背景の画像データのように、ディスプレイ上の表示位置が競合する場合に、図柄データを背景よりも優先して表示することによって背景の手前に図柄データが表示されているという画像が出来上がる、という手法は、周知例3-7等に見られる周知手法であり、電子ゲーム等の画像表示をパチンコ機に適用することが周知例1、2に見られるように周知であるから、相違点3は引用発明1に周知手法を適用したものに過ぎない。

以上の通りであるから、本願発明は、引用発明1及び周知手法に基づいて当業者が容易に発明をすることができたと判断される。

なお、請求人は審判請求の理由において、「本願発明では、複数の記憶手段に記憶される各画像を単位として優先順位が定められており、各画像の重なっている部分では、優先順位の高い画像が液晶ディスプレイに表示されるように制御するので、パチンコ遊戯機の液晶ディスプレイに表現豊かでかつ様々なバリエーションの表示を行うことを、簡易な処理によって実現することができると共に、優先順位を記憶するために大容量のメモリ等も不要となるので装置構成を簡単にすることができる」と主張し、上記周知例3にはない顕著な効果を有するとしているが、本願発明において、画像の重なっている部分を検出する手法は開示していないため、上記各周知手法との相違は認められないので、この主張は採用できない。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献1に記載された発明、及び周知手法に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2003-09-30 
結審通知日 2003-10-07 
審決日 2003-10-21 
出願番号 特願平4-199706
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 澤田 真治  
特許庁審判長 中村 和夫
特許庁審判官 塩崎 進
白樫 泰子
発明の名称 パチンコ遊戯機  
代理人 中島 淳  
代理人 加藤 和詳  

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