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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G11B
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 G11B
管理番号 1089200
審判番号 不服2003-5628  
総通号数 50 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1995-11-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-04-03 
確定日 2003-12-19 
事件の表示 平成 6年特許願第103083号「高密度光情報再生装置」拒絶査定に対する審判事件[平成 7年11月28日出願公開、特開平 7-311971]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
1.手続の経緯
本願は、平成6年5月17日の出願であって、平成15年2月28日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成15年4月3日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年5月6日付けで手続補正が提出されたものである。

2.平成15年5月6日付けの手続補正についての補正却下の決定

〔補正却下の決定の結論〕
平成15年5月6日付けの手続補正(以下、「本件手続補正」という。)を却下する。

〔理 由〕
(1)本件手続補正後の本願発明
本件手続補正は、特許請求の範囲の記載を、
「【請求項1】 可視光である短波長光ビームを供給する光源手段と、
前記短波長光ビームを光記録媒体に照射し前記光記録媒体上に光スポットを形成する対物レンズと、
前記光記録媒体に照射された前記短波長光ビームの戻り光を受光する光検出器と、
を備え、
前記光記録媒体が挿入された初期動作時においてコントロールトラックの再生出力によって当該光記録媒体の種類を識別した後に、光ビームの一部を遮光する部材を介して半導体レーザからの発光量を検出することにより当該半導体レーザを制御する動作を開始することを特徴とする高密度光情報再生装置。
【請求項2】 前記光ビームの波長及び前記対物レンズの開口数は、前記複数の光記録媒体のうち、最もトラックピッチの狭い前記光記録媒体に基づいて設定されることを特徴とする請求項1に記載の高密度光情報再生装置。」
と補正することを含むものである。

(2)本件手続補正前の本願発明
一方、本件手続補正前の特許請求の範囲は、平成14年11月1日付け手続補正により補正された以下のとおりのものである。
「【請求項1】 可視光である短波長光ビームを供給する光源手段と、
前記短波長光ビームをカートリッジに収納された光記録媒体に照射し前記光記録媒体上に光スポットを形成する対物レンズと、
前記光記録媒体に照射された前記短波長光ビームの戻り光を受光する光検出器と、
を備え、
前記カートリッジに設けられた識別子を検出する識別回路からの出力によって、光ディスクの種類を識別したのち、光ビームを整形する光ビーム整形手段の動作を開始することを特徴とする高密度光情報再生装置。
【請求項2】 前記光ビーム整形手段は前記短波長光ビームの一部を遮光する部材であることを特徴とする請求項1に記載の高密度光情報再生装置。
【請求項3】 前記光ビームの波長及び前記対物レンズの開口数は、前記複数の光記録媒体のうち、最もトラックピッチの狭い前記光記録媒体に基づいて設定されることを特徴とする請求項1に記載の高密度光情報再生装置。」

(3)本件手続補正の検討
(イ)本件手続補正後の請求項2の記載は、本件手続補正前の請求項3と同一の記載である。
(ロ)本件手続補正後の請求項1について検討すると、「光ビームの一部を遮光する部材」は、本件手続補正前の請求項2に記載された構成要件であるから、まず、本件手続補正を本件手続補正前の請求項1が削除されたものとして、本件手続補正後の請求項1が、本件手続補正前の請求項2(本件手続補正前の請求項1を引用する部分を含む)を減縮したものとすることができるかについて検討する。
(ハ)本件手続補正は、本件手続補正前の請求項2が引用する本件手続補正前の請求項1に記載した構成要件である「光記録媒体」について、本件手続補正前に「カートリッジに収納された」とあったものを削除したものである。
(ニ)また、同じく本件手続補正前の請求項2が引用する本件手続補正前の請求項1に記載した構成要件である「種類を識別」することについて、本件手続補正前には「前記カートリッジに設けられた識別子を検出する識別回路からの出力によって、光ディスクの種類を識別したのち」とあったものを、本件手続補正では「前記光記録媒体が挿入された初期動作時においてコントロールトラックの再生出力によって当該光記録媒体の種類を識別した後に」とするものである。「カートリッジに設けられた識別子を検出する」ことと、「コントロールトラックの再生出力によって」識別することとは、全く異なる別々の技術手段であり、後者が、前者を技術的に限定したものであるとも、前者に技術的要件を付加して限定したものであるともすることができない。
(ホ)すると、本件手続補正は、本件手続補正前の請求項2(本件手続補正前の請求項1を引用する部分を含む)に係る発明の構成に欠くことができない事項の全部又は一部を限定したものとすることができない。
(ヘ)同様に、本件手続補正を本件手続補正前の請求項2が削除されたものとして、本件手続補正後の請求項1が、本件手続補正前の請求項1に係る発明の構成に欠くことができない事項の全部又は一部を限定したものであるかについて検討しても、上記(ハ)及び(ニ)において検討した内容は、援用することができるから、本件手続補正は、本件手続補正前の請求項1に係る発明の構成に欠くことができない事項の全部又は一部を限定したものとすることができない。
(ト)更に、本件手続補正が、誤記の訂正に当たるものでないことが明らかである。また、本件手続補正が、拒絶の理由に示す事項について、明瞭でない記載の釈明をするものでもないことが明らかである。

(4)むすび
以上のとおりであるから、本件手続補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。


3.本願発明について
(1)本願発明
平成15年5月6日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成14年11月1日付け手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】 可視光である短波長光ビームを供給する光源手段と、
前記短波長光ビームをカートリッジに収納された光記録媒体に照射し前記光記録媒体上に光スポットを形成する対物レンズと、
前記光記録媒体に照射された前記短波長光ビームの戻り光を受光する光検出器と、
を備え、
前記カートリッジに設けられた識別子を検出する識別回路からの出力によって、光ディスクの種類を識別したのち、光ビームを整形する光ビーム整形手段の動作を開始することを特徴とする高密度光情報再生装置。」

(2)引用例
原査定において引用された特開平6-52549号公報(以下、「第1引用例」という。)には、図面とともに次の技術事項が記載されている。

「【請求項1】 光源からのビームにより媒体上の情報を読み取り、これを再生する光学式再生装置において、光源と、光源からのビームを収束させる光学手段と、ディスクの記録密度を検出する検出手段と、検出手段からの検出出力に基づき媒体上のビームスポットの大きさを変更する変更手段とを有する光学式再生装置。」

「【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、記録密度の異なる複数種類の光学記録媒体の再生が可能な光学式再生装置に関する。」

「【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題に鑑み本発明は、光源からのビームにより媒体上の情報を読み取り、これを再生する光学式再生装置において、光源と、光源からのビームを収束させる光学手段と、ディスクの記録密度を検出する検出手段と、検出手段からの検出出力に基づき媒体上のビームスポットの大きさを変更する変更手段とを有することを第一の特徴とする。」

「【0013】
【実施例】
まず、第1の実施例に係る光ピックアップの動作原理について図1、図2、図3、図4を用いて説明する。図1は対物レンズに入射する平行ビーム光の入射領域が大きい場合の光ピックアップである。図2は対物レンズに入射する平行ビーム光の入射領域が小さい場合の光の流れを示す光ピックアップである。図3は対物レンズに入射する平行ビームの入射領域を変化させる原理について説明した説明図である。図4は対物レンズの集光ビームスポット径に関する説明図である。
【0014】図において、1は光ディスクの再生に用いられる半導体レーザ、2は半導体レーザより発せられるビーム、3は焦点距離がf1である第1のレンズ、4は焦点距離がf2である第2のレンズ、5は偏光ピームスプリッタ、6は1/4波長板、7はレーザビームを微小に集光する対物レンズ、8はピット部が微小で大容量のデータ記録が可能な高密度光ディスク、9はピット部が大きく小容量のデータしか記録できない低密度光ディスクである。
【0015】半導体レーザ1からは直線偏光の拡散ビームが発せられており、このビームは、第1、第2のレンズによって平行ビームに変換される。偏光ビームスプリッタ5は、かかるビームを透過する様に偏光面が設定されている。偏光ビームスプリッタ5を通過したビームは、1/4波長板6によって円偏光にされた後、対物レンズ7によって、ディスク上に収束される。ディスクから反射されたビームは、1/4波長板6によって再び直線偏光に変換されるが、この偏光は、偏光ビームスプリッタ5に対してS偏光となる為、ビームは偏光ビームスプリッタ5によって反射され、センサによって受光される。
【0016】対物レンズ7に平行ビームが入射された場合の集光スポット径dは次式によって決定される。
【0017】
【数1】
d=K・λ/NA
【0018】ここで、NAは対物レンズ7の開口数、Kは定数、λは光の波長を示す。開口数NAは、次式によって決定され、集光位置からのビーム拡がり角の半角θの正弦に相当する(図4参照)。
【0019】
【数2】
NA= sinθ
【0020】
従って、数1および数2より、集光位置からのビームの拡がり角が大きいほど集光スポット径は小さくなる。即ち、対物レンズ7に対する平行ビームの入射領域が大きいほど、集光ビーム径は小さくなる。
【0021】
図1と図2の光学系を比較すると、図1の光学系の方が対物レンズ7に対する平行ビームの入射領域が大きいため、ディスク上のビーム径は小さくなる。対物レンズ7に対するビーム入射領域の変更は、第1、第2のレンズ3、4の位置を光軸方向に変化させることにより達成できる。以下、その原理について、図3を用いて説明する。」

「【0035】
次に、上記原理を採用した第1の実施例について説明する。かかる第1の実施例を図5に示す。
【0036】
図において、11は本発明に用いる光ディスクである。12は光ディスク上の記録密度をトラックピッチにより検出する記録密度検出器である。トラックピッチによる検出方法はディスクにレーザ光を照射したとき、トラックピッチの差異により反射される回折光の入射角度の差異が生じ、このことによりディスクの記録密度が検出できる方法である。尚、記録密度検出器12には、トラックピッチを検出するピックアップが内蔵されている。13は光ディスク上に記録密度に関する情報が記録されている場合にこれを検出する記録媒体情報検出器である。係る情報は一般にディスクの最内周または最外周に記録されており、プレーヤは再生に先立ってこの部分を読み取り記録密度を検出する。尚、カートリッジにより光ディスクが保護されているものでカートリッジの一部に記録密度に関する情報が記録されている場合には、記録媒体情報検出器13がこの部分を検出できるように設計する必要がある。」

「【0042】
上記方法により記録密度の情報が得られれば、CPU21は得られた記録密度情報とROMに予め記録されている記録密度に関する情報を適合させ、もし、適合する情報がなければ、光ディスク11の記録密度の情報は本実施例に使用する再生装置では再生できないとみなしディスクを排出し、ユーザに知らせる。もし、適合する情報であれば対物レンズから出射されるビームの集光スポット径の大きさを光ディスク11のピットの大きさに応じ変更する動作を開始する。
【0043】
記録密度の異なる光ディスク11のピットを読み取るために、集光ビームスポット径を変更しなければならないが、このためには、上記原理の光ピックアップで示したように、第1、第2レンズ3、4を通過することにより生成された平行ビームの対物レンズに対する入射領域を変更することが必要である。平行ビームの入射領域の変更は、第1、第2レンズ3、4を移動させることにより達成できる。」

「【0047】
次に、第2の実施例に係る電荷スリットを用いた場合の光ピックアップの原理を図6、図7を用いて説明する。図6は高密度のディスクを検出する場合であり、図7は低密度のディスクを検出する場合である。図中、30はコリメータレンズ、31は電荷を通すことにより、通過光の領域を制限する電荷スリットである。実施例においては、電荷スリット31はコリメータレンズ30とビームスプリッタ5の間に配置される。また、図7に示すように電荷スリットに電荷を加えれば、斜線で示す部分は光を遮蔽するため、通過光の領域が制限される。
【0048】
図6においては、高密度ディスクを再生するため、平行ビームの対物レンズへの入射領域を大きくする必要がある。予め、光ピックアップ内のビームの光路を高密度ディスクが再生できるように設定する。かかる電荷スリット31に電荷を加えなければ、ビームはすべて電荷スリットを通過し、高密度ディスクのピットを読み取ることができる集光スポットが得られる。
【0049】
図7においては、図6と同等の光学系を使用している。図6の低密度ディスクを再生するために、平行ビームの対物レンズ7への入射領域を小さくする必要がある。このため、電荷スリット31に電荷を加えれば、図7に示すように、電荷スリットの斜線で示した部分が光を遮蔽する。このことにより、コリメータレンズ30からの平行ビームの通過光を制限する。よって、対物レンズへの平行ビームの入射量は小さくなり、対物レンズ7の開口数も小さくなり、低密度のディスクのピットを読み取る集光スポットが得られる。
【0050】
次に上記原理の光ピックアップを採用した第2の実施例について説明する。かかる第2の実施例の構成を図8に示す。図において、32は電荷スリットにCPU21からの命令により電荷を加える電荷スリット制御回路、33は図6、図7に示す光学系を内蔵するピックアップである。
【0051】
図8において、記録密度の情報を受け取ったCPU21は電荷スリット制御回路32に制御信号を送る。電荷スリット制御回路32は制御信号に応じ電荷スリットに電荷を送る。記録密度の情報が高密度の場合には、電荷スリットに電荷を加えない。低密度の情報であれば、電荷スリットに電荷を加える。このことにより、上記原理で説明したように平行ビーム光の大きさを変更することで、ピックアップ33により記録密度に応じてディスクの情報を読み取ることができる。
【0052】
以って、かかる電荷スリットを用いた光学式再生装置においても、高密度のディスク及び低密度のディスクを再生することができる。上記第2の実施例においては、電荷スリットは電荷を加え、光を遮蔽する部分が1個所であったが、スリット上に段階的に複数の遮蔽部分を設ければ、複数種類の記録密度のディスクを再生できる。」

上記記載事項及び図面の記載を総合勘案すると、上記第1引用例には、結局次の発明が記載されているものとすることができる。

「光ビームを発する半導体レーザ1と、
前記光ビームを微小に集光してカートリッジに保護された光ディスク上に収束する対物レンズ7と、
ディスクから反射されたビームを受光するセンサと、
を備え、
カートリッジの一部に記録された、記録密度に関する情報を記録媒体情報検出器13が検出した後、
(i)第1、第2レンズ3、4を通過することにより生成された平行ビームの対物レンズに対する入射領域を変更する
または、
(ii)電荷スリット31に電荷を加えれば、図7に示すように、電荷スリットの斜線で示した部分が光を遮蔽する。このことにより、コリメータレンズ30からの平行ビームの通過光を制限する
ことで対物レンズから出射されるビームの集光スポット径の大きさを光ディスク11のピットの大きさに応じ変更する動作を開始する、
高密度のディスク及び低密度のディスクを再生することができる光学式再生装置。」

また、原査定で引用された特開平5-242520号公報(以下、「第2引用例」という)には、図面とともに次の技術事項が記載されている。

「【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、短波長の光源で長波長用の光ディスクに対して記録・再生できるように、互換性を持たせた短波長光ディスクヘッドに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
光ディスクには、画像、音声、一般データ等の情報を高密度に記録、ないし再生することができ、記録情報を高S/N比で記録再生することができる。
【0003】
従来の光ディスクヘッドの光源は、半導体レーザであるが、その発振波長は赤外光(波長780nm,830nm近辺)である。光源の波長が短い程、光ディスクの記録密度は高くなる。従って、最近では、半導体レーザや固体レーザの第2高調波や、バンド幅の広いII-V族の半導体結晶を用いた波長700nm以下の赤、黄、緑、青、紫、紫外、等の短波長レーザを光ディスクの光源に適用して、記録密度を赤外光の場合の数倍以上にまで向上させようという試験が行われている。例えば、光源の波長が半分になると絞り込まれた光スポットのサイズは半分となり、その面積は4分の1になる。その結果、光ディスクの記録密度は4倍となる。なお、「光ディスク」の公知文献としては、「光ディスク」(P2,森晶文,久保高啓著;オーム社,1988.5.10発行)(中略)がある。」

「【0010】
【発明が解決しようとする課題】
前述のように、光源の短波長化によって光ディスクの高密度化が年々推進される見通しであるが、これから出回る超高密度光ディスクと従来から用いられている光ディスクとの互換性の問題が発生する。つまり、短波長光源を搭載した超高密度光ディスクの駆動装置で、従来のコンパクトディスク(CD)、あるいはレーザディスクが再生できるか否かが非常に問題となる。この意味の互換性が無視されると、各家庭やオフィスに既に普及している数多くの光ディスクが使用できなくなるため、顧客や消費者のためにならない。このことは、再生専用型光ディスクのみならず、書換え可能な光磁気ディスクや、相変化ディスクや、追記型光ディスクにも課せられた重要な課題である。」

「【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明の目的は、このような従来の課題を解決し、光源の波長が短くなっても信号量を低下させることなく従来の長波長対応の光ディスクとの互換性を保つことが可能な短波長光ディスクヘッドを提供することにある。
【0014】
上記目的を達成するため、本発明の短波長光ディスクヘッドは、1ないし複数種の波長を持つ1ないし複数のコヒーレント光源と、光源からの光ビームを光ディスク面上に絞り込む光学系と、光ディスク面上からの反射光もしくは透過光を検知して、光を電気信号に変換する光検知器と、反射光もしくは透過光を光検知器上に導く光学系を備えた光ディスクヘッドにおいて、絞り込み光学系中に、光ディスク面上のトラックピッチもしくはピットサイズに応じて変化する開口絞り器を配置し、且つ上記のコヒーレント光源は、開口絞り器の絞りの径に応じて、光源の出力を増減するようにしたものである。」

上記記載事項及び図面の記載を総合勘案すると、上記第2引用例には、結局次の発明が記載されているものとすることができる。
「光記録再生装置において、光源である半導体レーザに波長700nm以下の赤、黄、緑、青、紫等の短波長レーザを用い、さらに、記録密度の異なる光記録媒体の再生を可能とした光記録再生装置。」

(3)対 比
本願発明と第1引用例に記載された発明とを対比する。
第1引用例に記載された発明における「半導体レーザ」 は、光ビームを供給するという限りにおいて本願発明における「光源手段」に相当する。
第1引用例に記載された発明における「対物レンズ7」は、光ビームをカートリッジに収納された光記録媒体に照射し前記光記録媒体上に光スポットを形成するという限りにおいて本願発明における「対物レンズ」に相当する。
第1引用例に記載された発明における「センサ」は、光記録媒体に照射された光ビームの戻り光を受光するという限りにおいて本願発明における「光検出器」に相当する。
第1引用例に記載された
「カートリッジの一部に記録された、記録密度に関する情報を記録媒体情報検出器13が検出した後、
(i)第1、第2レンズ3、4を通過することにより生成された平行ビームの対物レンズに対する入射領域を変更する
または、
(ii)電荷スリット31に電荷を加えれば、図7に示すように、電荷スリットの斜線で示した部分が光を遮蔽する。このことにより、コリメータレンズ30からの平行ビームの通過光を制限する
ことで対物レンズから出射されるビームの集光スポット径の大きさを光ディスク11のピットの大きさに応じ変更する動作を開始する」
ことは、本願発明における「前記カートリッジに設けられた識別子を検出する識別回路からの出力によって、光ディスクの種類を識別したのち、光ビームを整形する光ビーム整形手段の動作を開始する」ことに相当する。
また、第1引用例に記載された発明における「高密度のディスク及び低密度のディスクを再生することができる光学式再生装置」は、本願発明における「高密度光情報再生装置」と特段の相違はない。

そうすると、本願発明と第1引用例に記載された発明とは次の点で一致する。
<一致点>
「光ビームを供給する光源手段と、
前記光ビームをカートリッジに収納された光記録媒体に照射し前記光記録媒体上に光スポットを形成する対物レンズと、
前記光記録媒体に照射された前記光ビームの戻り光を受光する光検出器と、
を備え、
前記カートリッジに設けられた識別子を検出する識別回路からの出力によって、光ディスクの種類を識別したのち、光ビームを整形する光ビーム整形手段の動作を開始することを特徴とする高密度光情報再生装置。」

一方、次の点で相違する。
<相違点>
本願発明においては、光源手段が供給する光ビーム、光記録媒体に照射される光ビーム、及び戻り光が、「可視光である短波長」光ビームであるとされているのに対し、第1引用例に記載された発明では特に光ビームの波長について言及がない点

(4)判 断
そこで、上記相違点について検討する。
第2引用例には、光源である半導体レーザに波長700nm以下の赤、黄、緑、青、紫等の、すなわち可視光の短波長レーザを用いた光記録再生装置が記載されている。
第2引用例に記載された発明は、光情報再生に関し、より詳細には、記録密度の異なる光記録媒体の再生を可能とするものである点で、第1引用例に記載された発明と技術分野を同じくするものであるから、第1引用例に記載された発明において、光源として、第2引用例に記載された発明に採用されている可視光短波長レーザを採用することで本願発明とすることは、当業者が容易に推考しうるものである。

(5)むすび
以上のとおりであって、本願発明は、第1引用例及び第2引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2003-10-21 
結審通知日 2003-10-22 
審決日 2003-11-06 
出願番号 特願平6-103083
審決分類 P 1 8・ 572- Z (G11B)
P 1 8・ 121- Z (G11B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 審査長古河 雅輝中野 浩昌  
特許庁審判長 山田 洋一
特許庁審判官 片岡 栄一
田中 純一
発明の名称 高密度光情報再生装置  
代理人 伊藤 進  

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