ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G09F |
---|---|
管理番号 | 1089669 |
審判番号 | 不服2001-11452 |
総通号数 | 50 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1996-02-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2001-07-04 |
確定日 | 2004-01-08 |
事件の表示 | 平成 7年特許願第100157号「透明薄膜EL表示器」拒絶査定に対する審判事件[平成 8年 2月27日出願公開、特開平 8- 54832]について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成7年3月31日(国内優先権主張、平成6年6月10日)に出願した特願平7-100157号であって、平成13年5月29日付で拒絶査定がなされ、これに対し同年7月4日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。 2.本願発明 本願の請求項1に係る発明は、平成13年3月28日付の手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める(以下、「本願発明」という。)。 「透明な一対の電極間に、少なくとも蛍光体よりなる発光層と透明絶縁層を配設してなる薄膜EL素子を、透光性の前面基板と透光性の背面板から成る外囲器内に少なくとも一つ内蔵した透明薄膜EL表示器において、 最も背面側に位置する前記薄膜EL素子よりも背面側に存在する一つ又は二つ以上の構成要素のいずれかを、背面側から入射する外部光の強さに応じて可視域での光の透過率が可逆的に変化する光学構成要素とし、 前記外部光の影響の小さい場合は60%より高い透過率を有し、前記外部光の影響が強い場合には60%以下の透過率に変化すること を特徴とする透明薄膜EL表示器。」 3.引用刊行物 これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前日本国内または外国において頒布された刊行物である、特開昭64-33582号公報(以下、「引用例1」という。)には、次の事項が記載されている。 (ア)第2ページ右上欄第11行〜同欄第16行 「(作用) 板状透過型表示装置の背面に、電気信号によって透明、半透明、不透明のいずれか2以上の動作をするパネルを一体に設けたので、外部の光量に応じてコントラストを調節でき、適切な像を得ることができる。」 (イ)第2ページ右上欄第19行〜同ページ右下欄第4行 「(実施例1) 以下、本発明を第1図に図示した実施例により説明する。第1図において、(1)は板状透過型表示装置、(2)は透明、半透明、不透明のいずれか2以上の動作をするパネルであり、この板状透過型表示装置(1)はガラス基板(3)、ITO透明電極(4)、絶縁層でサンドイッチされたEL薄膜(5)、ITO透明電極(6)で構成されたドットマトリックス型の透過型薄膜EL表示板で形成されており、パネル(2)は電気信号によって透明、不透明の変化をする液晶板によって形成されている。またこの板状透過型表示装置(1)とパネル(2)とは、光の散乱を防ぎEL薄膜(5)の吸湿劣化を防ぐため内部空間を透明シリコン樹脂(図示せず)で満たし、スペーサ(7)を介してエポキシ樹脂接着材等で接着され一体に形成されている。このようにして形成された調光性表示装置は厚さが3mmであった。このようにして形成した調光性表示装置は、板状透過型表示装置(1)の背面に電気信号によって透明、半透明、不透明のいずれか2以上の動作をするパネル(2)が一体に張り付けられているので、パネル(2)に供給する電源をオフすることにより外部(背面)からの光を遮蔽して表示面の輝度を上げることが出来、またパネル(2)に供給する電源をオンすることにより外部から光を取り入れ輝度を低下させることができる。」 (ウ)第2ページ右下欄第5行〜同欄第17行 「(実施例2) 実施例1の板状透過型表示装置(1)として・・・、パネル(2)として光の照射、被照射によって透明、半透明に動作をするフォトクロミックガラス板を用い、その他は実施例1と同様に構成した調光性表示装置を作成した。このようにして構成した調光性表示装置は外部からの光があると不透明になってコントラストを高める働きをし、また外部の光量が少なくなると半透明になりコントラストを低下させる働きをする。」 (エ)第2ページ右下欄第18行〜第3ページ左上欄第13行 「(実施例3) 実施例1または実施例2で構成した調光性表示装置を第2図に示すように自動車運転席のサンバイザ(8)の替わりに取り付ける。これによって次のような効果がある。・・・本例の場合は同一視野内であり、しかも透過した背景が本来の視野であるので、安全性が高くなる。・・・不透明または半透明にすることにより、本来のサンバイザの役割を果たす。」 (オ)第1図 第1図には、ITO透明電極(4)とITO透明電極(6)の間に、絶縁層でサンドイッチされたEL薄膜(5)が配設されていることが記載されている。 これら(ア)〜(オ)の記載事項及び図面の記載からみて、引用例1には、以下の発明が記載されているものと認める(以下、「引用発明」という。)。 「ITO透明電極(4)とITO透明電極(6)の間に、絶縁層でサンドイッチされたEL薄膜(5)を配設したものを、ガラス基板(3)とパネル(2)から成る内部空間に内蔵した調光性表示装置において、 前記EL薄膜(5)よりも背面側に存在するパネル(2)を、液晶板又はフォトクロミックガラス板から構成し、背面側からの光量に応じて透明、半透明、不透明のいずれか2以上の動作をするものとし、 前記背面側からの光量が少ない場合には、前記背面側からの光量が多い場合よりもパネル(2)を透明にした調光性表示装置。」 4.対比 本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明における (a)「ITO透明電極(4)とITO透明電極(6)」 (b)「EL薄膜(5)」 (c)「ITO透明電極(4)とITO透明電極(6)の間に、絶縁層でサ ンドイッチされたEL薄膜(5)を配設したもの」 (d)「ガラス基板(3)とパネル(2)から成る内部空間」 (e)「調光性表示装置」 (f)「パネル(2)」 (g)「背面側からの光量」 (h)「背面側からの光量が少ない」 (i)「背面側からの光量が多い」 は、それぞれ本願発明における (a)「透明な一対の電極」 (b)「蛍光体よりなる発光層」 (c)「薄膜EL素子」 (d)「透光性の前面基板と透光性の背面板から成る外囲器内」 (e)「透明薄膜EL表示器」 (f)「背面側に存在する構成要素」または「光学構成要素」 (g)「背面側から入射する外部光の強さ」、 (j)「外部光の影響の小さい」 (i)「外部光の影響が強い」 に相当する。 そして、引用発明における「絶縁層」は板状透過型表示装置に用いられており、当然に透明なものであるから、本願発明における「透明絶縁層」に相当する。また、透明の程度は透過率と同義であり、液晶板又はフォトクロミックガラス板が可逆的に透明の程度(本願発明における「透過率」に相当。)を変化させることも自明である。さらに、引用発明は、パネル(2)を透過した背景を運転者が視認できるもの(特に、記載事項(エ)参照。)であるから、当該パネル(2)は、可視域での光に対する透明の程度を変化させるものである。 したがって、両者は、 「透明な一対の電極間に、少なくとも蛍光体よりなる発光層と透明絶縁層を配設してなる薄膜EL素子を、透光性の前面基板と透光性の背面板から成る外囲器内に少なくとも一つ内蔵した透明薄膜EL表示器において、 最も背面側に位置する前記薄膜EL素子よりも背面側に存在する一つ又は二つ以上の構成要素のいずれかを、背面側から入射する外部光の強さに応じて可視域での光の透過率が可逆的に変化する光学構成要素とし、 前記外部光の影響の小さい場合は、前記外部光の影響が強い場合よりも透過率を高くしたこと を特徴とする透明薄膜EL表示器。」 という点で一致し、以下の点で相違する。 [相違点] 本願発明における光学構成要素は、外部光の影響の小さい場合は60%より高い透過率を有し、前記外部光の影響が強い場合には60%以下の透過率に変化するのに対して、引用発明におけるパネル(2)は、「透明、半透明、不透明」の各動作の透過率について言及していない点。 5.当審の判断 上記相違点について検討する。 透過型の表示装置において、表示と背景の双方に良好な視認性を求めることは、従来周知(実願昭60-11158号(実開昭61-128137号)のマイクロフィルム(第4ページ第6行〜同ページ第19行)、実願昭58-166416号(実開昭60-74124号)のマイクロフィルム(第2ページ第2行〜同ページ第16行)参照。)であるから、透過型表示装置という点で前記周知技術と一致する引用発明において、表示と背景の双方に対する良好な視認性を確保すべく、外部光の影響の小さい場合と外部光の影響が強い場合のそれぞれに対して適切な透過率を設定し、本願発明のように構成することは、当業者であれば容易に想到できることである。 そして、これら透過率を具体的にどの程度とするかは、当業者であれば適宜選択し得る事項である。 また、本願発明の効果も引用例1の記載及び周知技術から予測される程度のものにすぎない。 6.むすび 以上のとおりであるから、本願発明は引用例1に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり決定する。 |
審理終結日 | 2003-11-05 |
結審通知日 | 2003-11-11 |
審決日 | 2003-11-27 |
出願番号 | 特願平7-100157 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G09F)
|
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 塩澤 克利 |
特許庁審判長 |
末政 清滋 |
特許庁審判官 |
辻 徹二 谷山 稔男 |
発明の名称 | 透明薄膜EL表示器 |
代理人 | 加藤 大登 |
代理人 | 矢作 和行 |
代理人 | 碓氷 裕彦 |