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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1089708
審判番号 不服2002-9265  
総通号数 50 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1994-08-05 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-05-23 
確定日 2004-01-08 
事件の表示 平成 5年特許願第 3658号「テレテキスト信号処理回路」拒絶査定に対する審判事件[平成 6年 8月 5日出願公開、特開平 6-217218]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯(本願発明・査定)
(1)本願は、平成5年1月13日の出願である。
(2)その請求項1及び請求項2に係る発明は、平成11年11月22日、平成13年7月23日、及び平成14年6月24日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、下記1のとおりのものと認める。
なお、請求項1に記載した「表示アスペト比」及び請求項2に記載した「請求項1に記載ののテレテキスト信号処理回路」はいずれも誤記と認め、正しくは、請求項1及び請求項2の他の部分の記載を参酌し、それぞれ、「アスペクト比」及び「請求項1に記載のテレテキスト信号処理回路」として各発明を認定した。
記1(請求項1に係る発明)
アスペクト比が16:9の表示画面に対して、表示アスペクト比が4:3のテレテキスト信号を表示するテレテキスト信号処理回路において、
前記テレテキスト信号をテレテキストの映像信号にデコードするデコーダと、
前記デコーダからの出力をデジタルに変換するA/D変換器と、
前記A/D変換器からの出力を書込んで記憶するメモリと、
前記メモリから読み出された出力をアナログに変換するD/A変換器と、前記メモリの書込みと読出しを制御すると共に、前記メモリの書込みに対して読出しを4/3倍の速度に設定する制御部と、
前記D/A変換器からの出力と、通常の映像信号とを選択的に切替える切替スイッチと
を有することを特徴とするテレテキスト信号処理回路。
記1(請求項2に係る発明)
前記制御部は、ライン毎の読出しの開始タイミングを制御して、前記テレテキスト信号の表示位置を前記表示画面の一方の隅に寄せた位置としたことを特徴とする請求項1に記載のテレテキスト信号処理回路。
(3)査定
原査定の理由は、概略、下記2のとおりである。
記2(査定の理由)
本願発明は、下記刊行物に記載された各発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
刊行物1:特開平4-200190号公報
刊行物2:特開平4-200194号公報
刊行物3:特開平4-124983号公報

2.引用刊行物の記載
(1)引用例1
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物1(特開平4-200190号公報(平成4年7月21日公開)、以下「引用例1」という。)には、名称を「テレビジョン受像機」とする発明について、次の(a)から(e)までの事項が記載されている。
(a)「本発明は、NTSCカラーテレビジョン信号と両立性を有するワイドアスペクトテレビジョン(TV)信号を受信する受像機に、文字放送デコーダを内蔵したワイドアスペクトTV受像機に関するものである。」(第1頁左下欄第18行〜同頁右下欄第2行)
(b)「本発明は文字放送の映像をワイドアスペクト受像管上に映す場合において、縦横比4:3の文字放送画面と重ならない領域にテレビ放送の映像を子画面として映すようにしたものである。」(第1頁右下欄第4行〜第7行)
(c)「文字放送の表示モードには、以下の6種類がある。
1.全画面固定表示
2.スーパー固定表示
3.字幕表示
4.1行横スクロール表示
5.全面縦スクロール表示
6.多画面表示
この中で2,3,4番のモードは文字放送の映像をテレビ放送の映像に重ねて表示するもので、1,5,6番のモードは文字放送の映像のみで表示するものである。」(第1頁右下欄第9行〜第20行)
(d)「映像復調回路4ではNTSC信号、或いはNTSC信号と両立性を有するワイドアスペクト信号が復調され、RGB信号に変換されて、子画面作成部5及び映像音声切替回路8に供給される。」(第2頁右上欄第19行〜同頁左下欄第3行)
(e)「一方、文字放送デコーダ6では、文字放送信号がデコードされる〔第2図(a)〕。デコードされたRGB信号は水平時間変換回路7に供給され、音声信号及びコントロール信号YS,YMは映像音声切替回路8に供給される。水平時間変換回路7では、文字放送画面が左に寄せて縦横比の歪み無くワイドアスペクト受像管に表示されるようにRGB信号が時間圧縮され〔第2図(b)〕、映像音声切替回路8に供給される。映像音声切替回路8では文字放送の表示モードに応じて、RGB信号が混合或いは選択される。」(第2頁左下欄第8行〜第18行)
(2)引用例2
同じく、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物3(特開平4-124983号公報(平成4年4月24日公開)、以下「引用例2」という。)には、名称を「画像表示システム」とする発明について、次の(f)から(l)までの事項が記載されている。
(f)「また、この発明による画像表示システムは、NTSC方式の映像信号およびこの映像信号に重畳されている文字多重データを、第1および第2のクロック信号によって書き込み、それぞれ上記第1のクロック信号の3分の4倍の周波数を有する第3のクロック信号によって読み出す第1および第2のバッファメモリと、上記第1のバッファメモリから出力される画像表示用の第1の映像信号と上記第2のバッファメモリから出力される多重文字表示用の第2の映像信号とを、ライン毎に特定の位置で水平方向に切り換えて出力するセレクタと、上記セレクタから出力される上記第1の映像信号に基づいて画面の右側または左側にアスペクト比4対3のNTSC画像を表示し、上記第2の映像信号に基づいて上記画面の左側または右側の余白領域に上記文字多重データを表示するアスペクト比16対9の画面を有するテレビジョン受像機とからなる。」(第2頁左下欄第16行〜同頁右下欄第14行)
(g)「こうして出力されるRGB信号のうち、映像信号は、例えば色副搬送波fSCの4倍の周波数を有する第1のクロック信号によって第1のバッファメモリに書き込まれ、文字多重データは、例えば色副搬送波fSCの16/5倍の周波数を有する第2のクロック信号によって第2のバッファメモリに書き込まれ、それぞれ第1のクロック信号の4/3倍の周波数を有する第3のクロック信号で読み出される。これによって、水平掃引速度が早められ、直接テレビジョン受像機に供給した場合に画像が水平方向に引き延ばされて表示されるのを防止できる。」(第3頁左上欄第5行〜第16行)
(h)「第1図において、入力端子1は走査線数525本、アスペクト比4対3の標準NTSC方式の複合カラーTV信号が入力される端子で、この入力端子1は第1のPLL回路2、AD変換器3および文字多重デコーダ4にそれぞれ接続されている。第1のPLL回路2は入力カラーTV信号から周波数3.58MHzの色副搬送波fSCを抽出し、4逓倍して周波数4fSCのクロック信号C1として出力する回路で、その出力は第2のPLL回路5に接続されている。第2のPLL回路5は周波数4fSCのクロック信号C1を4/3(=(16/9)÷(4/3))逓倍してクロック信号C2として出力する回路で、この第2のPLL回路5の出力は、さらにタイミング生成回路6に接続されている。」(第3頁右上欄第16行〜同頁左下欄第10行)
(i)「AD変換器3はクロック信号C1をサンプリング信号としてNTSC信号の標本化を行い、1ライン(H)当たり910サンプルのディジタルNTSC信号を得る回路で、その出力はYC分離・色復調回路7に接続される。YC分離・色復調回路7はディジタルNTSC信号をクロック信号C1によって輝度信号Yと色差信号I,Qとに分離し、さらに逆マトリクス変換して3原色RGB信号を得る回路で、その出力はバッファメモリ8に接続されている。」(第3頁左下欄第15行〜同頁右下欄第4行)
(j)「バッファメモリ8はYC分離・色復調回路7から供給されるRGB信号をクロック信号C1のタイミングで書き込み、クロック信号C2のタイミングで読み出す速度変換回路」(第4頁左上欄第2行〜第5行)
(k)「これら両バッファメモリ8および10の出力は共にセレクタ11に接続される。セレクタ11はバッファメモリ8から供給される画像用の映像信号とバッファメモリ10から供給される文字用の映像信号とを前述したタイミング信号TMによって水平方向に切り換えて出力する回路で、その出力はDA変換器12に接続されている。DA変換器12はクロック信号C2をサンプリング信号としてセレクタ11から出力されるディジタル映像信号をアナログ映像信号に変換する回路で、その出力はテレビジョン受像機13のRGB端子に接続されている。テレビジョン受像機13は走査線数525本、水平走査周波数15.73KHzのNTSC受像機で、アスペクト比16対9の画像が表示できるように水平掃引幅の広いワイドアスペクト比(16対9)の受像機で構成されている。」(第4頁左上欄第9行〜同頁右上欄第7行)
(l)「この構成において、入力端子1に走査線数525本、アスペクト比4対3の標準NTSC方式の映像信号が入力されると、映像信号はAD変換器3でディジタル信号に変換され、次いで、YC分離・色復調回路7で3原色RGB信号に変換されてバッファメモリ8に供給される。また、文字放送データは文字多重デコーダ4で抽出され、対応する文字および図形を表すパターンデータおよび図形データがRGB信号として出力され、2次元フィルタ9に供給される。フィルタ9に供給されたRGB信号は、画面で表示する文字または図形の大きさに応じた画素数のRGB信号に変換されてバッファメモリ10に供給される。バッファメモリ8および10に供給されたRGB信号は、クロック信号C1およびC3でバッファメモリ8および10に書き込まれ、それぞれクロック信号C1の4/3倍の周波数を有するクロック信号C2で読み出される。これによって、水平掃引速度が早められ、直接テレビジョン受像機13に供給すると、画像が水平方向に引き延ばされた状態で表示されるのを防止する。こうして、速度変換されたバッファメモリ8および10の出力は、それぞれセレクタ11に供給され、タイミング信号TMの制御の元にライン毎に特定の水平位置で切り換えられ、例えば、第2図に示すように、画面の左側に画像を、画面の右側に文字を表示するように切り換えられる。従って、ワイドアスペク比16対9、走査線数525本のテレビジョン受像機13の画面には、画面の左側にアスペク比4対3、走査線数525本の標準NTSC画面が表示され、画面右側の余白領域には文字多重データが表示される。」(第4頁右上欄第8行〜同頁左下欄第19行)

3.対比
(1)引用例1に記載された発明
引用例1では、次の(a)から(d)までの点が認められる。
(a)ワイドアスペクトTV受像機に関して(上記2.(a)参照)、文字放送の映像をワイドアスペクト受像管上に映す場合において、文字放送画面は縦横比4:3の画面であることが記載されており(上記2.(b)参照)、また、受像管上に映すことは表示画面に表示することに相当するから、上記ワイドアスペクトTV受像機は、ワイドアスペクト比の表示画面に対して、表示アスペクト比が4:3の文字放送信号を表示するものであることが認められる。したがって、上記ワイドアスペクトTV受像機は、「ワイドアスペクト比の表示画面に対して、表示アスペクト比が4:3の文字放送信号を表示する文字信号処理回路」を備えていることが認められる。
(b)上記ワイドアスペクトTV受像機は文字放送デコーダを内蔵し(上記2.(a)参照)、文字放送デコーダでは文字放送信号がデコードされ、デコードされた信号はRGB信号であることが記載されており(上記2.(e)参照)、また、RGB信号は映像信号の一種であるから、上記文字放送デコーダは、「文字放送信号を文字放送の映像信号にデコードするデコーダ」であることが認められる。
(c)文字放送デコーダでデコードされたRGB信号は水平時間変換回路に供給され、水平時間変換回路では、文字放送画面が左に寄せて縦横比の歪み無くワイドアスペクト受像官に表示されるようにRGB信号が時間圧縮され映像音声切換回路に供給されると記載されており(上記2.(e)参照)、水平時間変換回路は、「文字放送デコーダからの出力(RGB信号)を、縦横比の歪み無くワイドアスペクト受像官に表示されるように時間圧縮し、映像音声切換回路に出力する」信号処理部であることが認められる。
(d)映像復調回路ではNTSC信号或いはNTSC信号と両立性を有するワイドアスペクト信号が復調され、RGB信号に変換されて映像音声切換回路に直接(或いは子画面作成部を経由して)供給される(上記2.(4)参照)。そして、映像音声切換回路には、水平時間変換回路からの出力(時間圧縮されたRGB信号)と、NTSC信号或いはNTSC信号と両立性を有するワイドアスペクト信号から復調され変換されたRGB信号とが供給され、文字放送の表示モードに応じて、RGB信号が混合或いは選択される(上記2.(e)参照)。
ところで、上記ワイドアスペクトTV受像機は、NTSC信号と両立性を有するワイドアスペクト信号を受信する受像機に、さらに文字放送デコーダを内蔵し、文字放送画面と重ならない領域にテレビ放送の映像を子画面として映すようにしたものであり(上記2.(a)(b)参照)、これにより、文字放送の表示モードにおいて、従来、文字放送の映像をテレビ放送に重ねて表示(2、3、4番のモード)するか、文字放送の映像のみで表示(1、5、6番のモード)するしかできなかったところへ、「両者(注:テレビ放送の映像と文字放送の映像)を同時に見ることが可能」(引用例1の第2頁右下欄第9行〜第10行)としたものである。
したがって、文字放送を表示しないモード、すなわち、NTSC信号或いはNTSC信号と両立性を有するワイドアスペクト信号を表示するモードの存在を前提としていることは、明らかである。そして、上記ワイドアスペクトTV受像機においては、「NTSC信号或いはNTSC信号と両立性を有するワイドアスペクト信号から復調され変換されたRGB信号」は、「文字放送信号」に対比する意味において「通常の映像信号」と呼ぶべきものであることは明らかである。
そうすると、映像音声切換回路は、「水平時間変換回路からの出力と、通常の映像信号とを選択的に切替える切替スイッチ」であることが認められる。
(2)対比
(a)本願明細書には、「本発明は、文字等のテレテキスト信号を画面表示用に処理するテレテキスト信号処理回路に関する。」(段落【0001】)と記載されている。これによれば、請求項1に係る発明の「テレテキスト信号」は「文字等」を表示するための信号であり、引用例1の「文字放送信号」はこれに相当する。
(b)本願明細書には、「【作用】デコーダから出力されるテレテキストの映像信号は、表示アスペクト比に適合するようメモリで圧縮等されるため表示画面のアスペクト比によらない表示アスペクト比の信号となる。」(段落【0007】)と記載されている。これによれば、請求項1に係る発明の、A/D変換器、メモリ、D/A変換器及び制御部からなる構成部分は、「デコーダからの信号を、表示画面のアスペクト比によらない表示アスペクト比の信号となるように圧縮し、切替スイッチに出力する」信号処理部であるということができる。
そうすると、請求項1に係る発明と引用例1に記載された発明とは、「デコーダからの出力を圧縮する信号処理部」を有する点で一致することが認められる。
(3)一致点・相違点
以上のことから、請求項1に係る発明と引用例1に記載された発明とを対比すると、両者は、下記3の点で一致し下記4の点で相違することが認められる。
記3(一致点)
ワイドアスペクト比の表示画面に対して、表示アスペクト比が4:3のテレテキスト信号を表示するテレテキスト信号処理回路において、
前記テレテキスト信号をテレテキストの映像信号にデコードするデコーダと、
前記デコーダからの出力を圧縮する信号処理部と、
前記信号処理部からの出力と、通常の映像信号とを選択的に切替える切替スイッチと
を有するテレテキスト信号処理回路。
記4(相違点)
(a)相違点1
ワイドアスペクト比の表示画面のアスペクト比が、本願の請求項1に係る発明では「16:9」であるのに対し、引用例1に記載された発明ではアスペクト比の具体的比率について記載されていない点。
(b)相違点2
信号処理部が、請求項1に係る発明では、「デコーダによって映像信号にデコードされたデコーダからの出力をデジタルに変換するA/D変換器と、前記A/D変換器からの出力を書込んで記憶するメモリと、前記メモリから読み出された出力をアナログに変換するD/A変換器と、メモリの書込みと読出しを制御すると共に、前記メモリの書込みに対して読出しを4/3倍の速度に設定する制御部」とから構成されるのに対し、引用例1に記載された発明では、「水平時間変換回路」から構成される点。

4.当審の判断
(1)上記相違点1及び相違点2について検討する。
(a)相違点1
一般的な「ワイドアスペクト比の表示画面」のアスペクト比が16:9であることは当業者にとって明らかであるから(例えば、引用例2には「ワイドアスペクト比(16対9)」(上記2.(k)参照)という記載や「アスペクト比4対3の標準NTSC方式の画像を、アスペクト比16対9のワイドアスペクト比構成のNTSC受像機に表示する場合」(第3頁右上欄第12行〜第14行)という記載がある。)、上記相違点1は格別なものではない。
(b)相違点2
引用例2には、信号処理部が、映像信号をデジタルに変換するAD変換器(上記2.(h)(i)(l)参照)と、デジタルに変換された映像信号を書き込んで記憶するバッファメモリ(上記2.(f)(g)(i)(j)(l)参照)と、当該バッファメモリから読み出された出力をアナログに変換するDA変換器(上記2.(k)参照)とからなる旨、及びワイドアスペクト比の表示画面に4:3の映像信号を歪み無く表示するためにバッファメモリの書込みに対して読み出しを4/3倍の速度とする旨が示されており(上記2.(f)(g)(h)(j)(l)参照)、さらに、引用例2の信号処理部においても、メモリの書込み及び読出しを制御する制御部が存在することは明らかである。
そして、引用例1に記載された発明と引用例2に記載された発明とは、ともにワイドアスペクト比の表示画面に4:3の映像信号を歪み無く表示するという点で技術分野及び課題が共通しているから、信号処理部として引用例1の「水平時間変換回路」に代えて引用例2の「映像信号をディジタル信号に変換するAD変換器と、ディジタル信号に変換された映像信号を書き込んで記憶するバッファメモリと、当該バッファメモリから読み出された出力をアナログに変換するDA変換器と、デコーダからの出力を縦横比の歪み無くワイドアスペクト受像管に表示されるように時間圧縮するためにバッファメモリの書込みに対して読み出しを4/3倍の速度とする制御部」とを適用することは、当業者が適宜なし得ることと認められる。
(c)なお、信号処理する対象の信号が、引用例1では文字放送信号、引用例2では映像信号であるが、両者ともにRGB信号に変換されていることから、信号処理の対象としての物理的な相違はなく、引用例1に記載された発明の構成に引用例2に記載された発明の構成を適用する際の阻害要因とはならないものと認められる。
(d)そして、相違点1及び相違点2を総合しても、各相違点に係る作用を越える格別の作用を認めることはできない。
(2)請求項2に係る発明について検討する。
引用例1には、文字放送画面が左に寄せて縦横比の歪み無くワイドアスペクト受像管に表示されると記載されており(上記2.(e)参照)、「ライン毎の読出しの開始タイミングを制御して、テレテキスト信号の表示位置を表示画面の一方の隅に寄せた位置としている」ことは明らかである。
そうすると、請求項2に係る発明と引用例1に記載された発明とは、上記請求項1に係る発明について指摘した相違点(相違点1及び相違点2)と同じ相違点において相違すると認められる。
そして、上記相違点1及び相違点2についての判断は上記のとおりである。
(3)そして、請求項1及び請求項2に係る発明の構成に基づく効果についてみても、引用例1及び引用例2の記載から予測し得る範囲内のもので格別顕著なものがあるとはいえない。

5.請求人の主張について検討する。
請求人は、「通常の映像信号」とは、「時間圧縮しないため水平方向に引き延ばされることを見越して予め縦長に処理された」信号であって「時間圧縮しないためスクイズ方式のように予め縦長に処理された」信号であると主張している。
本願の明細書及び図面には、「通常の映像信号」に関する記載としては、「メモリ3は、2水平ライン分の映像信号を記憶する容量を有し、このメモリ3の書込みと読出しはコントローラ4によって制御される。メモリ3より読出されたテレテキストの映像信号はD/A変換器5でアナログに戻された後、切換スイッチSWの被選択端子aに導かれる。切換スイッチSWの他の被選択端子bには通常の映像信号が導かれ、この切換スイッチSWによってテレテキストの映像信号と通常の映像信号とが選択されてCRTドライブ回路に出力される。」(段落【0009】)及び「図4には上記実施例の変形例が示されている。上記実施例ではメモリ3の1ライン毎の読出し開始タイミングをa時間だけ遅らせて表示位置が表示画面の中央となるよう構成したが、この変形例ではメモリ3の1ライン毎の読出し開始タイミングを遅らせることなく読出して表示位置を表示画面の一方の隅に寄せた位置としている。このように表示位置を寄せることによって図4にてハッチングで示す余白区間を、通常の映像信号を映す等して有効に使用できる。」(段落【0012】)との記載のみであり、しかも、当該記載からみても、「通常の映像信号」が「予め縦長に処理された」信号であることが記載又は示唆されているとは認められない。
したがって、上記請求人の主張は、本願の明細書及び図面に基づく主張ではなく、採用することはできない。
6.むすび
以上のとおり、請求項1及び請求項2に係る発明は、いずれも、引用例1及び2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2003-11-04 
結審通知日 2003-11-11 
審決日 2003-11-27 
出願番号 特願平5-3658
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 梅本 達雄  
特許庁審判長 新宮 佳典
特許庁審判官 橋本 恵一
小松 正
発明の名称 テレテキスト信号処理回路  
代理人 志賀 富士弥  
代理人 橋本 剛  

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