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審決分類 |
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 G01T |
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管理番号 | 1089716 |
審判番号 | 不服2001-12058 |
総通号数 | 50 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1999-01-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2001-07-12 |
確定日 | 2004-01-08 |
事件の表示 | 平成 9年特許願第175502号「放射線検出器」拒絶査定に対する審判事件[平成11年 1月29日出願公開、特開平11- 23722]について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続きの経緯 本願は、平成9年7月1日の出願であって、平成13年5月31日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年7月12日に拒絶査定に対する審判請求がなされ、同年8月7日付けで手続補正がなされたものである。 2.平成13年8月7日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成13年8月7日付けの手続補正を却下する。 [理由] (1)補正後の本願発明 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、 「複数の受光素子をもつ1次元または2次元光センサチップが多数個配列された1次元または2次元光センサアレイと、その光センサアレイ上に配置されたシンチレータシートからなる1次元または2次元放射線検出器において、前記多数個の光センサチップを一つの伝熱部材上に搭載するとともに、その伝熱部材を介して放射線検出器の温度を一定に保つための温度調整手段を設け、前記多数個の光センサチップ間の接続部で発生するアーチファクトを防止するように構成されていることを特徴とする放射線検出器。」と補正された。 上記補正は、補正前の発明について、「多数個の光センサチップを一つの伝熱部材上に搭載する」と限定したものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に適合するか)について以下に検討する。 (2)引用例 原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前である平成3年4月19日に頒布された特開平3-95479号公報(以下、「引用例」という。)には、次の(a1)〜(a5)に事項が記載されている。 (a1)「2.特許請求の範囲 1.シンチレータとフォトダイオードとを有する放射線検出部および信号処理回路部から成る放射線検出装置において、少なくとも、前記放射線検出部の温度を一定に保つための温度制御機構を設けたことを特徴とする放射線検出装置。」(第1ページ左下欄第5行〜第10行)、 (a2)「一方、第三世代方式のX線CT装置では、CT用X線検出器の感度のチャンネル間のバラツキはリングアーチファクトを生じる原因となる。」(第2ページ右上欄第7行〜第9行)、 (a3)「第4図は、前述の検出部4の詳細な構成を示すものであり、X線CT装置の円弧状に配置された多数の検出器の上記弧に直交する平面による断面図である。図において41はシンチレータ、42はフォトダイオード、43は基板、44aおよび44bはX線コリメータ、45aおよび45bはハウジング、46は保温用のヒータ、47は保温用の断熱材、48は信号取り出し用コネクタを示している。 本実施例に示す検出部4においては、入射X線は、基板43上に固定されたフォトダイオード42とシンチレータ41により電気信号に変換される。この信号は、信号取り出し用コネクタ48を経て第1図に示した検出回路部6に導びかれる。フォトダイオード42とシンチレータ41は、X線コリメータ44aおよび44b、ハウジング45aおよび45bにより覆われている。上記ハウジング45aおよび45bは、例えば、アルミ、真鍮等の熱伝導率の高い材料で構成されており、その一部はヒータ46と接している。ヒータ46は、例えば、図示されていない温度センサを含み、PID制御により温度管理される如く構成されている。 上記X線コリメータ44aおよび44b、ハウジング45aおよび45bは、断熱材47で覆われており、外気と熱的に遮断されている。X線入射面は、必要に応じて断熱材47を除去しても良い。本構成によれば、シンチレータ41とフォトダイオード42とは、ヒータ46により恒温化され、後述する如く、望ましい温度範囲内に制御される。」(第3ページ右下欄第11行〜第4ページ左上欄第18行)、 (a4)「上述の如く、本実施例によれば、X線CT装置における高速撮像を可能とするとともに、リングアーチファクトの発生を防止できるという効果がある。」(第5ページ左上欄第16行〜第19行)、 (a5)「[発明の効果] 以上、詳細に説明した如く、本発明によれば、シンチレータとフォトダイオードとを有する放射線検出部および信号処理回路部から成る放射線検出装置において、少なくとも、前記放射線検出部の温度を一定に保つための温度制御機構を設けたことにより、固体検出器の感度のチャンネル間のバラツキを低減し、また、上記放射線検出装置の出力を処理して画像再構成を行う画像処理部を有する放射線CT装置により、高速撮像を可能とするという効果を奏するものである。」(第5ページ右上欄第6行〜第16行) 上記(a1)〜(a5)及び第4図の記載から、引用例には「多数の検出器が円弧状に配置されたX線CT装置に用いられる放射線検出装置において、検出部4は、シンチレータ41、フォトダイオード42、基板43、熱伝導率の高い材料からなるハウジング45a、45b、前記ハウジングと一部接触する保温用のヒータ46及び保温用の断熱材47から構成され、フォトダイオード42とシンチレータ41は基板43上に固定されるとともに、ハウジング45a、45bに覆われており、検出器間のリングアーチファクトを低減するために、放射線検出部の温度を一定に保つための温度制御機構を設けた放射線検出装置」が記載されているものと認められる。 (3)対比 本願補正発明と引用例に記載された発明を対比すると、引用例に記載のシンチレータ41はシンチレータシートとは明記されていないが、第4図に記載のシンチレータの形状及び一般のシンチレーション放射線検出器においてシンチレータはシート状で用いられることが通常であることを考慮すれば、引用例に係るシンチレータもシンチレータシートということができるものであり、また、引用例のフォトダイオードは、上記(a3)及び第4図の記載からみて多数個平面状に配列されていることから、1次元又は2次元のアレイ状に配列されているものであり、さらに、引用例に記載の「リングアーチファクト」、「フォトダイオード42」は、それぞれ本願補正発明に係る「アーチファクト」、「受光素子」に実質的に相当するから、結局、両者は、「複数の受光素子が多数個配列された1次元または2次元光センサアレイと、その光センサアレイ上に配置されたシンチレータシートからなる1次元または2次元放射線検出器において、放射線検出器の温度を一定に保つための温度調整手段を設け、放射線検出器に発生するアーチファクトを防止するように構成されていることを特徴とする放射線検出器」で一致し、下記の点で一応相違する。 相違点(イ) 本願補正発明に係るセンサアレイは、複数の受光素子をもつ1次元または2次元光センサチップが多数個配列されたものであるのに対し、引用例のものは、複数の受光素子からなるものの、光センサチップについての記載はない点。 相違点(ロ) 本願補正発明では、多数個の光センサチップが一つの伝熱部材上に搭載されているのに対し、引用例のものは多数の受光素子が熱伝導率の高い部材からなるハウジングにより覆われている点。 相違点(ハ) 本願補正発明では、アーチファクトが多数個の光センサチップ間の接続部で発生するものでるのに対し、引用例のものはその旨の記載がない点。 (4)当審の判断 上記相違点(イ)〜(ハ)について検討する。 相違点(イ)について; シンチレータを用いる放射線検出器において、複数の受光素子から1次元または2次元光センサアレイを構成する際に、複数の受光素子が集積された1次元または2次元の光センサチップを多数個用いて、センサアレイを形成することは、通常の半導体検出器又はシンチレーション検出器において普通に採用されている技術であり(例えば、特開平8-5747号公報、特開平5-212023号公報、特開平3-150487号公報等を参照されたい。)、したがって、上記出願時点での技術水準を考慮すれば、センサアレイとして多数個の光センサチップを用いることは単なる設計事項にすぎない。 相違点(ロ)について 引用例に係る多数の受光素子からなるセンサアレイは、上記(a3)及び第4図の記載をみれば、熱伝導率の高い材料からなるハウジング45aの下部と基板43を介してその上に載置されているものであり、また、通常のX線CT装置のハウジング構造を考慮すれば、当該ハウジングはセンサアレイ全体を覆う構成であることは明らかであるから(例えば、特開昭57-50673号公報(第2図の図面番号15を参照)、特開昭53-148400号公報(添付図の図面番号6を参照)、特開平4-367654号公報等(図1の図面番号1参照)を参照のこと。)、引用例に係るセンサアレイも一つの伝熱部材上に搭載されているものと認められる。したがって、上記相違点(イ)で説示したように、センサアレイを多数のセンサチップにより構成することが周知の技術であることを考慮すれば、引用例には、実質的に相違点(ロ)の構成が開示されているものである。 なお、引用例のものにおいて、基板43がハウジング45aの下部と受光素子(フォトダイオード)との間に配置されているが、基板43はフォトダイオードを固定する部材であり(上記(a3)参照)、かつ、フォトダイオード間及び外部機器と電気的に接続する機能を果たすものと解されるから、この基板43は、センサアレイと一体として捉えられるものである。したがって、上記相違点(ロ)の判断に影響を及ぼすものではない。 相違点(ハ)について 引用例の第4ページ右上欄第20行〜右下欄第19行の記載「・・・温度変動が0.1℃のときには、フォトダイオードのリーク電流が65pA/℃以下であれば、リングアーチファクトが生じないことがわかる。・・・以上のことから、検出器の温度変動とフォトダーオードのリーク電流値が、次の関係にあれば、リングアーチファクトを生じないことになる。・・・」によれば、アーチファクトは検出回路のリーク電流と関連することが示されており、これによれば引用例のものも受光素子間の接続部で発生するアーチファクトを防止しうるものであることは明らかである。 したがって、本願補正発明は、引用例に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (5)むすび 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第4項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 3.本願発明について 平成13年8月7日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成12年12月25日付け手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)。 「複数の受光素子をもつ1次元または2次元光センサチップが多数個配列された1次元または2次元光センサアレイと、その光センサアレイ上に配置されたシンチレータシートからなる1次元または2次元放射線検出器において、当該放射線検出器を伝熱部材上に搭載するとともに、その伝熱部材を介して放射線検出器の温度を一定に保つための温度調整手段を設け、前記多数個の光センサチップ間の接続部で発生するアーチファクトを防止するように構成されていることを特徴とする放射線検出器。」 (1)引用例 原査定の拒絶の理由に引用された引用例及びその記載事項は、前記2.(2)に記載したとおりである。 (2)対比・判断 本願発明は、前記2.(1)で認定した本願補正発明の「多数個の光センサチップを一つの伝熱部材上に搭載する」という限定を「放射線検出器を伝熱部材上に搭載する」という構成に上位概念化したものである。 そこで本願発明と引用例に記載された発明とを対比・検討するに、上記2.(3)の記載も参酌すれば、上記2.(3)で示した相違点(イ)〜(ハ)のうち、相違点(イ)及び(ハ)は本願発明においても同じものであり、相違点(ロ)のみが、本願発明との関係では「本願発明では、放射線検出器が伝熱部材上に搭載されているのに対し、引用例のものは多数の受光素子が熱伝導率の高い部材からなるハウジングにより覆われている点」となる(以下、「相違点(ロ)’」という。)。 相違点(イ)及び(ハ)は既に上記2.(4)で判断済みであるので、相違点(ロ)’を検討するに、引用例に係るセンサアレイは、上記2.(2)の(a3)及び第4図の記載をみれば、熱伝導率の高い材料からなるハウジング45aの下部と基板43を介してその上に載置されているものであり、結局、引用例1のものにおいても、伝熱部材上に放射線検出器が搭載されているものと認められるから、両者は実質的に差異はない。 したがって、本願発明は引用例に記載された発明と同一である。 (3)むすび 以上のとおり、本願発明は、引用例に記載された発明と同一であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2003-10-30 |
結審通知日 | 2003-11-04 |
審決日 | 2003-11-18 |
出願番号 | 特願平9-175502 |
審決分類 |
P
1
8・
113-
Z
(G01T)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 中塚 直樹 |
特許庁審判長 |
鹿股 俊雄 |
特許庁審判官 |
末政 清滋 谷山 稔男 |
発明の名称 | 放射線検出器 |
代理人 | 江口 裕之 |
代理人 | 喜多 俊文 |