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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B41J
管理番号 1089795
異議申立番号 異議2003-70147  
総通号数 50 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1998-07-07 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-01-22 
確定日 2003-11-04 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3304046号「プリンタ」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3304046号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 1.手続きの経緯
本件特許第3304046号発明は、平成8年12月24日に出願され、平成14年5月10日にその特許の設定登録がなされ、その後、池田英治より請求項1に係る発明について特許異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成15年8月12日に訂正請求がなされたものである。

2.訂正の適否についての判断
(1)訂正の内容(下線は訂正箇所を示す)
1)訂正事項a
特許請求の範囲の請求項1中の「設定された印字濃度と前記検出した温度情報より印字速度を切り換える手段」を「設定された印字濃度に対応する基準設定温度と前記検出した温度情報より印字速度を切り換える手段」と訂正する。
2)訂正事項b
特許明細書段落0008及び0033中の「設定された印字濃度と」を「設定された印字濃度に対応する基準設定温度と」と訂正する。
3)訂正事項c
特許明細書段落0033中の「高速印字と低速印字を問わず」を「媒体の種類に応じて高速,低速問わず」と訂正する。

(2)訂正の目的、新規事項の有無、拡張変更の存否の各要件についての判断
1)訂正事項aについて
本訂正は、検出した温度情報と比較されるものが設定された印字濃度に対応する基準設定温度であることを、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項(特に明細書段落0027〜0030参照)の範囲内で限定するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とし、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
2)訂正事項b,cについて
訂正事項bは訂正事項aにより訂正された特許請求の範囲に発明の詳細な説明の記載を整合させるための訂正であり、また、訂正事項cは願書に添付した明細書又は図面に記載した事項(特に明細書段落0020,0021,0032参照)の範囲内で発明の効果を明りょうにするものであり、これらの訂正は、明りょうでない記載の釈明を目的とし、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。

(3)訂正の適否のまとめ
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法第120条の4第2項及び同条第3項において準用する特許法第126条第2項から第4項までの規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.異議申立てについての判断
(1)異議申立ての概要
異議申立人池田英治は、甲第1乃至3号証を提出し、本件請求項1に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされた旨主張している。

(2)本件発明
本件請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という)は、訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「サーマルヘッドの温度を検出する手段と、印字濃度を設定する手段と、前記設定された印字濃度に対応する基準設定温度と前記検出した温度情報より印字速度を切り換える手段と、前記切り換えられた印字速度に応じて印字駆動時間を設定する手段と、前記切り換えられた印字速度に対応する履歴テーブルと印字履歴に基づいて前記設定した印字駆動時間の補正を行うよう履歴制御する手段を備えたことを特徴とするプリンタ。」

(3)甲各号証とその記載事項
甲各号証とその記載事項は次のとおりである。
1)甲第1号証:特願平6-8502号公報
印字濃度を一定に保ち且つ印字処理時間を短縮するためのものであって、サーマルヘッド1の温度を検出する温度センサ9と、A/Dコンバータ2と、CPU3と、所定濃度を印字するためのヘッド速度とヘッド温度との関係を示すテーブルデータを格納するROM5と、印字を行っていないときに所定時間間隔(数秒)で割込を行うタイマ6と、搬送速度制御部7と、搬送モータ8とを備え、所定時間間隔でサーマルヘッド1の温度を監視し、前記温度センサ9により検出した温度データに対応した目標速度データをROM5から読み取り、読み取った目標速度とヘッドの実速度とを比較して、実速度が目標速度より遅ければ搬送モータ8の速度を目標速度まで上げ、実速度が目標速度より速ければ搬送モータ8の速度を目標速度まで下げるように搬送モータ8を制御するプリンタ、等が図面と共に記載されている。

2)甲第2号証:特開平3-67664号公報
均一な濃淡で印字して高い印字品位を得るためのものであって、テーブル7に、Nビット前までの印字履歴に対応してパルス幅を設定した高速印字用テーブル7aと、Nビットよりも小さいMビット前までの印字履歴に対応してパルス幅を設定した低速印字用テーブル7bとを予め備え、印字周期の短い高速印字モードと印字周期の長い低速印字モードのいずれかをキーボード2により設定し、それに応じて高速印字用テーブル7a又は低速印字用テーブル7bが選択され、選択されたテーブルに基づいて、印字履歴をチェックして印字履歴状態に対応するアドレス位置をアクセスし、アクセスしたアドレスのパルス幅により各ドット発熱体に通電するようにしたプリンタ、等が図面と共に記載されている。

3)甲第3号証:実願平2-1492号(実開平3-93144号)のマイクロフイルム
指定以外の感熱紙に対しても濃い目の記録を行うためのものであって、装着されている感熱紙8が指定通りの物かそれ以外の物かを指示する二者択一の設定スイッチ48により、どちらの感熱紙が装着されているかを判断し、それに応じてパルス発生回路45の回路Aか回路Bのいずれかを選択して通電制御を実行するようにしたプリンタ、等が図面と共に記載されている。

(4)対比・判断
本件発明(前者)と甲第1号証に記載された発明(後者)とを対比するに、後者の「サーマルヘッド1の温度を検出する温度センサ9」は前者の「サーマルヘッドの温度を検出する手段」に対応するから、両者は、「サーマルヘッドの温度を検出する手段を備えたことを特徴とするプリンタ。」である点で一致し、前者が「印字濃度を設定する手段と、前記設定された印字濃度に対応する基準設定温度と前記検出した温度情報より印字速度を切り換える手段と、前記切り換えられた印字速度に応じて印字駆動時間を設定する手段と、前記切り換えられた印字速度に対応する履歴テーブルと印字履歴に基づいて前記設定した印字駆動時間の補正を行うよう履歴制御する手段」を備えているのに対して、後者はこれを備えていない点で相違する。

以下、相違点について検討する。
まず、前者の「印字濃度を設定する手段」について甲第1乃至3号証に記載されていない。
申立人は後者の「ROM5」が相当するとしているが、前者の該手段は、「設定された印字濃度に対応する基準設定温度」も勘案すれば、明らかに複数の印字濃度から選択して設定するものであるところ、後者の「ROM5」には所定濃度を印字するためのヘッド速度とヘッド温度との関係を示すテーブルデータが格納されているだけであり、複数の印字濃度から選択して設定することについて何らの示唆もないから相当するとはいえない。申立人は、又、甲第3号証にも記載があるとしているが、甲第3号証記載のものは指定の感熱紙か指定以外の感熱紙かを指示するだけのものであり、「印字濃度」自体を直接的に設定するものとは言い難い。
同様に、前者の「前記設定された印字濃度に対応する基準設定温度と前記検出した温度情報より印字速度を切り換える手段」も「前記切り換えられた印字速度に応じて印字駆動時間を設定する手段」も甲第1乃至3号証に記載されていない。
申立人は、後者の「CPU3」が、該「・・・印字速度を切り換える手段」に相当し、かつ、該「・・・印字駆動時間を設定する手段」として機能するとしているが、前者において基準設定温度と検出温度とを比較することと、後者において検出温度と同じ温度をテーブルデータから見出し、その温度に対応する目標速度を読み出して実速度と比較することとが同じことであるとはいえない。また、前者において上記比較により切り換えられた印字速度に応じて印字駆動時間(決定注:発熱エネルギーに係る時間である)を設定することと、後者において上記比較により実速度が目標速度となるように搬送モータ8の速度を上下に制御することとが同じことであるとはいえない。
また同様に、前者の「前記切り換えられた印字速度に対応する履歴テーブルと印字履歴に基づいて前記設定した印字駆動時間の補正を行うよう履歴制御する手段」も甲第1乃至3号証に記載されていない。
申立人は甲第2号証における高速印字モード又は低速印字モードの設定に応じて選択された高速印字用テーブル7a又は低速印字用テーブル7bに基づく印字履歴による通電制御が同じことであるとしているが、前者のように切り換えられた印字速度に応じて印字駆動時間を設定した上でこの印字駆動時間を印字速度に対応する履歴テーブルと印字履歴に基づいて補正するようにしたものと同じとはいえず、しかも、前者の如くすることは選択すべき印字濃度が複数ある場合には有用といえる(甲第2号証のものはより多くのパルス幅を用意する必要がある)。
さらにいえば、後者が数秒間隔のきめ細かさで温度変化に応じてヘッド速度を頻繁且つ多様な速度に変化させるものであるときに、甲第2号証の印字履歴による通電制御を後者の目的である印字濃度を一定に保つことを満たしつつ適用することが容易であるとは言い難い。
これらのことから、上記相違点を当業者が容易になし得ることとはいえず、しかも、本件発明は、上記相違点に係る各手段を含む全手段が有機的に結合して明細書に記載された格別の作用効果を奏するものであるから、甲第1乃至3号証記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

4.むすび
したがって、特許異議の申立ての理由によっては本件発明についての特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
プリンタ
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 サーマルヘッドの温度を検出する手段と、
印字濃度を設定する手段と、
前記設定された印字濃度に対応する基準設定温度と前記検出した温度情報より印字速度を切り換える手段と、
前記切り換えられた印字速度に応じて印字駆動時間を設定する手段と、
前記切り換えられた印字速度に対応する履歴テーブルと印字履歴に基づいて前記設定した印字駆動時間の補正を行うよう履歴制御する手段を備えたことを特徴とするプリンタ。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、サーマルヘッドを用いたプリンタに関し、特に、発熱素子が1列に並んで配列されたライン式のサーマルヘッドで1ドットライン毎の印字を行う例えば発券プリンタにおける印字制御の方式に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図8はサーマルヘッドによる印字原理を示すタイムチャートである。
印字駆動パルスがONとなってサーマルヘッドが駆動されると、発熱素子の温度が上昇し、感熱温度を越えると発色する。そして、印字駆動パルスをOFFにすることで発熱素子の温度が感熱温度以下に下降する。この動作を印字タイミング信号に合わせて繰り返すことで、所定の間隔で印字が成されるものである。
【0003】
従来より、このようなサーマルヘッドの印字では、蓄熱制御と呼ばれる方式により印字品位を制御している。蓄熱制御とは、周囲温度およびヘッド駆動時のサーマルヘッドの蓄熱による発熱特性の変化を、サーマルヘッドに内蔵したサーミスタ等の温度検出素子により検出し、その値に応じたエネルギーをサーマルヘッドに印加することにより、印字結果を等濃度となるように制御するものである。
【0004】
また、サーマルヘッドの印字では、履歴制御が行われている。この履歴制御は、あるドットが連続して打たれる場合、サーマルヘッドの温度が下がらずドットではなく線となってしまうことを防ぐために、過去何ラインかの履歴からドットを打つ連続回数に応じて本来駆動を行うべきドットを駆動しない等の制御を行うものである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ここで、サーマルヘッドへ印加するエネルギー量の増減は、サーマルヘッドを駆動して実際に印字する時間を変化させることにより実現している。図9は温度と印字駆動時間の関係を示すグラフで、環境温度に対して発色に必要なエネルギー量を示している。
【0006】
図9に示すように、ある装置保証温度範囲内で、サーマルヘッドの温度が低い時には、多くのエネルギーを必要とするため、サーマルヘッドを駆動する時間が長くなり、温度が高い場合には、短くて済むことになる。
そして、温度が高くサーマルヘッドを駆動する時間が短くて済むのであれば、印字タイミングの間隔を短くすることが可能であるので、サーマルヘッドが低温の時より高温の時の媒体の搬送速度を高速にして印字高速化を図ることが考えられている。
【0007】
しかしながら、印字速度を可変とする場合、履歴制御に必要なテーブルを高速印字用に合わせると、低速印字時にはドットが出にくくなり、反対に、履歴テーブルを低速印字用に合わせると、高速印字時にドットが濃くなり過ぎてしまうという問題があり、印字品位を保つことができなかった。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上述した課題を解決するため、本発明のプリンタは、サーマルヘッドの温度を検出する手段と、印字濃度を設定する手段と、前記設定された印字濃度に対応する基準設定温度と前記検出した温度情報より印字速度を切り換える手段と、前記切り換えられた印字速度に応じて印字駆動時間を設定する手段と、前記切り換えられた印字速度に対応する履歴テーブルと印字履歴に基づいて前記設定した印字駆動時間の補正を行うよう履歴制御する手段を備えたことを特徴とする。
【0009】
【発明の実施の形態】
図1は本発明のプリンタの第1の実施の形態を示すブロック図である。
図において、1はサーマルヘッド、2はこのサーマルヘッド1に内蔵され、該サーマルヘッド1自身およびその周囲近傍の温度を測定するためのサーミスタ、3はこのサーミスタ2の抵抗値をデジタル値に変換する回路であるA/D変換部である。
【0010】
4は前記サーマルヘッド1を制御する回路である印字制御部、5はサーマルヘッド1に対向配置される図示しないプラテンローラを駆動するモータ、6はこのモータ5を駆動するとともにその回転速度等を制御するモータ制御部である。
7は本装置全体を制御する主制御部、8はこの主制御部7で実行されるプログラム等が格納されているROM、9はサーマルヘッドの使用履歴を格納するRAMであり、主制御部7は、このROM8からプログラムを読み出して各部の制御を行う。
【0011】
すなわち、主制御部7は、サーミスタ2の抵抗値をA/D変換部3を介してデジタル値として受け、これを温度と認識してこの温度に基づいてモータ5の回転速度を制御するために、所望の回転速度でモータ5を回転させるためのパラメータをモータ制御部6にセットする。
また、主制御部7は、前記A/D変換部3から出力されるサーマルヘッド1の温度に応じて印字制御パラメータを印字制御部4にセットする。
【0012】
すなわち、サーマルヘッドの温度による印字駆動時間の切り換えのために低温時の低速用の印字駆動時間テーブルと高温時の高速用の印字駆動時間テーブルをROM8かRAM9に持ち、サーマルヘッド1の温度に応じて高速用のテーブルか低速用のテーブルを読み出して印字駆動時間の長短を設定する。
また、履歴による印字駆動時間の切り換えのために低温時の低速用の履歴テーブルと高温時の高速用の履歴テーブルをROM8かRAM9に持ち、RAM9に例えば過去3ライン分の印字データを履歴として格納し、あるドットに注目した場合、このドットの過去3ドット分の履歴と両隣のドットの履歴をサーマルヘッド1の温度に応じて高速用のテーブルか低速用のテーブルに照らし合わせて印字駆動時間の長短や有無を設定し、この設定した印字駆動時間から印字制御パラメータを決定し、印字制御部4にセットする。
【0013】
図2は上述した第1の実施の形態のプリンタの動作を示すフローチャートであり、以下に第1の実施の形態の動作を説明する。
発券指示があると、まず、サーマルヘッド1に設けたサーミスタ2の抵抗値をA/D変換部3を介して温度データとして読み込み(SA1)、あらかじめ設定してある設定温度との大小を比較する(SA2)。
【0014】
サーマルヘッド1の温度が設定温度より低い場合は、モータ制御部6に低速印字用のパラメータをセットし、媒体移動速度が低速になるようにする(SA3)。
また、温度が設定温度より低く媒体移動速度を低速に設定したので、低速用の印字駆動時間テーブルを読み出して印字駆動時間が長いパラメータを設定する(SA4)。
【0015】
さらに、低速用の履歴テーブルを読み出し、このテーブルにRAM9に格納してある履歴を照らし合わせてパラメータを設定して(SA5)、印字駆動時間および履歴に応じた印字制御パラメータを印字制御部4にセットする(SA6)。
前記SA2の比較処理でサーマルヘッド1の温度が設定温度より高い場合は、モータ制御部6に高速印字用のパラメータをセットし、媒体移動速度が高速になるようにする(SA7)。
【0016】
また、温度が設定温度より高く媒体移動速度を高速に設定したので、高速用の印字駆動時間テーブルを読み出して印字駆動時間が短いパラメータを設定する(SA8)。
さらに、高速用の履歴テーブルを読み出し、このテーブルにRAM9に格納してある履歴を照らし合わせてパラメータを設定して(SA9)、印字駆動時間および履歴に応じた印字制御パラメータを印字制御部4にセットする(SA6)。
【0017】
そして、モータ制御部6にセットしたパラメータと印字制御部4にセットしたパラメータで印字を行い(SA10)、印字の終わった券を排出して処理を終了する。
図3は印字駆動時間の一例を示すタイムチャートで、図3(a)に低速印字時の印字駆動時間を示し、図3(b)に高速印字時の印字駆動時間を示す。
【0018】
図3に示すように、高速印字時の印字駆動時間T′が低速印字時の印字駆動時間Tより短く設定されており、また、高速印字時と低速印字時で同じ位置に印字するためには高速印字時の印字間隔L′を低速印字時の印字間隔Lより短くする必要があるので、非駆動時間も高速印字時の方が短く設定される。
【0019】
図4は履歴制御の一例を示す説明図で、図4(a)に示すように、例えばあるドットの履歴が現時点から遡って3ドット前(N-3)が打ち(○で示す)、2ドット前(N-2)と1ドット前(N-1)が打っていない(*で示す)場合、低速印字ではヘッド温度が下がる充分な時間があり3ドット前(N-3)の印字の影響がないため、現印字ドット(N)を図4(b)に示すように印字駆動時間Tで打ち、高速印字ではヘッド温度が下がる充分な時間がなく3ドット前(N-3)の印字の影響があるため、図4(c)に示すように印字駆動時間T″(<T′)で打つように履歴制御する。
【0020】
以上説明したように、本発明の第1の実施の形態のプリンタでは、履歴制御を行う際、サーマルヘッドの温度により決まる印字速度に合わせて印字駆動時間を決め、当該印字駆動時間に対し高速印字と低速印字に対応した履歴制御を行うようにしたので、高速印字と低速印字を問わず、高品位な印字を実現することが可能となる。
図5は本発明のプリンタの第2の実施の形態を示すブロック図である。
【0021】
印字対象の媒体は、その種類、例えば表面の凹凸具合に応じて印字が出やすいものと出にくいものがある。このため、第2の実施の形態では印字が濃くしたり薄くしたりできるようにするとともに、印字濃度に応じて印字速度を切り換える基準となる設定温度を切り換えて、印字濃度に応じて最適な印字速度が得られるようにする。
【0022】
図において、1はサーマルヘッド、2はこのサーマルヘッド1に内蔵され、該サーマルヘッド1自身およびその周囲近傍の温度を測定するためのサーミスタ、3はこのサーミスタ2の抵抗値をデジタル値に変換する回路であるA/D変換部である。
4は前記サーマルヘッド1を制御する回路である印字制御部、5はサーマルヘッド1に対向配置される図示しないプラテンローラを駆動するモータ、6はこのモータ5を駆動するとともにその回転速度等を制御するモータ制御部である。
【0023】
7は本装置全体を制御する主制御部、8はこの主制御部7で実行されるプログラム等が格納されているROM、9はサーマルヘッドの使用履歴を格納するRAM、10は印字濃度を切り換えるスイッチであり、主制御部7は、このROM8からプログラムを読み出して各部の制御を行う。
すなわち、主制御部7は、サーミスタ2の抵抗値をA/D変換部3を介してデジタル値として受け、これを温度と認識してこの温度と印字濃度に応じて選択される設定温度との対比に基づいてモータ5の回転速度を制御するために、所望の回転速度でモータ5を回転させるためのパラメータをモータ制御部6にセットする。
【0024】
また、主制御部7は、前記A/D変換部3から出力されるサーマルヘッド1の温度と前記選択した設定温度との対比に基づき、かつ、スイッチ10により選択される印字濃度に応じた印字制御パラメータを印字制御部4にセットする。
すなわち、サーマルヘッドの温度による印字駆動時間の切り換えのために低温時の低速用の印字駆動時間テーブルと高温時の高速用の印字駆動時間テーブルをROM8かRAM9に持ち、サーマルヘッド1の温度に応じて高速用のテーブルか低速用のテーブルを読み出し、このテーブルをスイッチ10により選択される印字濃度により補正して印字駆動時間の長短を設定する。
【0025】
また、履歴による印字駆動時間の切り換えのために低温時の低速用の履歴テーブルと高温時の高速用の履歴テーブルをROM8かRAM9に持ち、サーマルヘッド1の温度に応じて高速用の履歴テーブルか低速用の履歴テーブルを読み出し、このテーブルをスイッチ10により選択される印字濃度により補正して、RAM9に例えば過去3ライン分の印字データを履歴として格納し、あるドットに注目した場合、このドットの過去3ドット分の履歴と両隣のドットの履歴を前記スイッチ10の選択に応じて補正した高速用のテーブルか低速用のテーブルに照らし合わせて印字駆動時間の長短や有無を設定し、この設定した印字駆動時間から印字制御パラメータを決定し、印字制御部4にセットする。
【0026】
図6は温度と印字駆動時間(エネルギー)の関係を示すグラフで、印字濃度を濃い、通常、薄いという3種類に調整可能とする場合、スイッチ10の切り換えにより印字駆動時間のテーブルを3段階に補正すれば可能となるが、設定温度を例えばA′に固定すると、印字濃度が濃い場合は最適な印字速度が得られるが、他の濃度では最適な印字速度が得られない。よって、設定温度をA,A′,A″と3種類設け、選択された印字濃度に応じて切り換えられるようにする。
【0027】
図7は上述した第2の実施の形態のプリンタの動作を示すフローチャートであり、以下に第2の実施の形態の動作を説明する。
発券指示があると、まず、スイッチ10により選択された印字濃度に応じて設定温度を選択する(SB1)。例えば、図6に示す例であると、スイッチ10で印字濃度を濃く設定すると設定温度A′が選択される。また、印字濃度を通常に設定すると設定温度Aが選択される。さらに、印字濃度を薄く設定すると設定温度A″が選択される。
【0028】
次に、サーマルヘッド1に設けたサーミスタ2の抵抗値をA/D変換部3を介して温度データとして読み込み(SB2)、前記SB1で選択した設定温度との大小を比較する(SB3)。
サーマルヘッド1の温度が設定温度より低い場合は、モータ制御部6に低速印字用のパラメータをセットし、媒体移動速度が低速になるようにする(SB4)。
【0029】
また、温度が設定温度より低く媒体移動速度を低速に設定したので、低速用の印字駆動時間テーブルを読み出して印字駆動時間が長いパラメータを設定する。このとき、スイッチ10により設定されている印字濃度に合わせて印字駆動時間を補正する(SB5)。
さらに、低速用の履歴テーブルを読み出し、このテーブルにRAM9に格納してある履歴を照らし合わせてパラメータを設定して(SB6)、印字駆動時間および履歴に応じた印字制御パラメータを印字制御部4にセットする(SB7)。
【0030】
前記SB3の比較処理でサーマルヘッド1の温度が設定温度より高い場合は、モータ制御部6に高速印字用のパラメータをセットし、媒体移動速度が高速になるようにする(SB8)。
また、温度が設定温度より高く媒体移動速度を高速に設定したので、高速用の印字駆動時間テーブルを読み出して印字駆動時間が短いパラメータを設定する。このとき、スイッチ10により設定されている印字濃度に合わせて印字駆動時間を補正する(SB9)。
【0031】
さらに、高速用の履歴テーブルを読み出し、このテーブルにRAM9に格納してある履歴を照らし合わせてパラメータを設定して(SB10)、印字駆動時間および履歴に応じた印字制御パラメータを印字制御部4にセットする(SB7)。
そして、モータ制御部6にセットしたパラメータと印字制御部4にセットしたパラメータで印字を行い(SB11)、印字の終わった券を排出して処理を終了する。
【0032】
以上説明したように、本発明の第2の実施の形態では、第1の実施の形態で説明した機能に加え、印字速度を切り換える基準となる設定温度を印字濃度の設定に応じて切り換えられるようにしたので、媒体の種類に応じて高速,低速問わず高品位印字が可能となる。
【0033】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明は、設定された印字濃度に対応する基準設定温度とサーマルヘッドから検出した温度情報より印字速度を切り換え、切り換えられた印字速度に応じて印字駆動時間を設定し、前記切り換えられた印字速度に対応する履歴テーブルと印字履歴に基づいて前記設定した印字駆動時間の補正を行うよう履歴制御するものとしているため、媒体の種類に応じて高速,低速問わず、高品位な印字を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明のプリンタの第1の実施の形態を示すブロック図
【図2】
第1の実施の形態の動作を示すフローチャート
【図3】
印字駆動時間の一例を示すタイムチャート
【図4】
履歴制御の一例を示す説明図
【図5】
本発明のプリンタの第2の実施の形態を示すブロック図
【図6】
温度と印字駆動時間の関係を示すグラフ
【図7】
第2の実施の形態の動作を示すフローチャート
【図8】
サーマルヘッドによる印字原理を示すタイムチャート
【図9】
温度と印字駆動時間の関係を示すグラフ
【符号の説明】
1 サーマルヘッド
2 サーミスタ
4 印字制御部
5 モータ制御部
7 主制御部
9 RAM
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2003-10-15 
出願番号 特願平8-343171
審決分類 P 1 651・ 121- YA (B41J)
最終処分 維持  
前審関与審査官 桐畑 幸▲廣▼  
特許庁審判長 小沢 和英
特許庁審判官 番場 得造
藤井 靖子
登録日 2002-05-10 
登録番号 特許第3304046号(P3304046)
権利者 沖電気工業株式会社
発明の名称 プリンタ  
代理人 大西 健治  
代理人 大西 健治  

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