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審決分類 審判 一部申し立て 判示事項別分類コード:なし  H01L
管理番号 1089803
異議申立番号 異議2001-72722  
総通号数 50 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1996-05-31 
種別 異議の決定 
異議申立日 2001-10-03 
確定日 2003-10-14 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3152859号「半導体装置の製造方法」の請求項1、5、6に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 本件特許異議の申立てを却下する。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第3152859号の特許請求の範囲の請求項1ないし6に係る発明についての特許は、平成7年3月9日(優先権主張平成6年9月16日)に出願され、平成13年1月26日にその特許権の設定登録がなされ、その後、本件特許の請求項1、5、6に係る特許に対して、異議申立人日本電気株式会社により特許異議の申立てがなされ、平成14年10月15日(起案日)に取消の理由が通知され、その指定期間内である平成14年12月5日に訂正請求(後日取り下げ)がなされた後、平成15年9月16日(起案日)に再度の取消の理由が通知され、その指定期間内である平成15年9月24日に訂正請求がなされたものである。


2.訂正の適否についての判断
(1)訂正の内容
特許権者が求めている、平成15年9月24日付け訂正請求書に添付された訂正明細書における訂正の内容は以下のとおりである。

訂正事項1.特許請求の範囲の請求項1を削除する。

訂正事項2.
「【請求項2】 請求項1に記載の半導体装置の製造方法であって、前記化学的気相成長法は、前記元素Aのβジケトン錯体および前記元素Bのβジケトン錯体の何れの熱分解温度よりも低い温度で行われる方法。」を、
「【請求項1】 半導体層上に、下記の一般式(1)で表わされる化合物からなる誘電体薄膜を形成する工程を具備した半導体装置の製造方法であって、
ABO3……(1)
(ここで、AはCa、Ba、Sr、PbおよびLaからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素であり、BはZrおよびTiからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素である)前記誘電体薄膜の形成は、前記元素Aのβジケトン錯体化合物と、前記元素Bのβジケトン錯体化合物と、酸化剤とを含む原料ガスを用いた化学的気相成長法により、400Torr以下の圧力下において、500℃以下の温度で行われることと、前記化学的気相成長法を反応律速条件下で行なうことと、前記化学的気相成長法は、前記元素Aのβジケトン錯体および前記元素Bのβジケトン錯体の何れの熱分解温度よりも低い温度で行われることとを特徴とする半導体装置の製造方法。」と訂正する。

訂正事項3.
「【請求項3】 請求項1〜2の何れか1項3に記載の半導体装置の製造方法であって、前記化学的気相成長法は、前記元素Bのβジケトン錯体の供給量が、モル比で、前記元素Aのβジケトン錯体の供給量の5倍以上になる条件下で行われる方法。」を、
「【請求項2】 半導体層上に、下記の一般式(1)で表わされる化合物からなる誘電体薄膜を形成する工程を具備した半導体装置の製造方法であって、
ABO3……(1)
(ここで、AはCa、Ba、Sr、PbおよびLaからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素であり、BはZrおよびTiからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素である)前記誘電体薄膜の形成は、前記元素Aのβジケトン錯体化合物と、前記元素Bのβジケトン錯体化合物と、酸化剤とを含む原料ガスを用いた化学的気相成長法により、400Torr以下の圧力下において、500℃以下の温度で行われることと、前記化学的気相成長法を反応律速条件下で行なうことと、前記化学的気相成長法は、前記元素Bのβジケトン錯体の供給量が、モル比で、前記元素Aのβジケトン錯体の供給量の5倍以上になる条件下で行われることとを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項3】 半導体層上に、下記の一般式(1)で表わされる化合物からなる誘電体薄膜を形成する工程を具備した半導体装置の製造方法であって、
ABO3……(1)
(ここで、AはCa、Ba、Sr、PbおよびLaからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素であり、BはZrおよびTiからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素である)前記誘電体薄膜の形成は、前記元素Aのβジケトン錯体化合物と、前記元素Bのβジケトン錯体化合物と、酸化剤とを含む原料ガスを用いた化学的気相成長法により、400Torr以下の圧力下において、500℃以下の温度で行われることと、前記化学的気相成長法を反応律速条件下で行なうことと、前記化学的気相成長法は、前記元素Aのβジケトン錯体および前記元素Bのβジケトン錯体の何れの熱分解温度よりも低い温度で行われることと、前記化学的気相成長法は、前記元素Bのβジケトン錯体の供給量が、モル比で、前記元素Aのβジケトン錯体の供給量の5倍以上になる条件下で行われることとを特徴とする半導体装置の製造方法。」と訂正する。

(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
(2-1)訂正事項1について
訂正事項1は、訂正前の特許請求の範囲の請求項1に係る発明を削除するものである。
したがって、上記訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当するものである。
なお、上記訂正前の特許請求の範囲の請求項1に係る発明の削除に伴って、訂正前の特許請求の範囲の請求項5、6における、請求項1に係る発明を引用して記載した部分は、削除されることになる。

(2-2)訂正事項2について
訂正事項2は、異議申立並びに取消理由を受けていない訂正前の請求項2に係る発明を独立項に訂正するものである。
したがって、訂正事項2は、明りょうでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当するものである。

(2-3)訂正事項3について
訂正事項3は、異議申立並びに取消理由を受けていない訂正前の請求項3に係る発明の「請求項1〜2の何れか1項3に記載の半導体装置の製造方法であって、」部分の誤記を「請求項1〜2の何れか1項に記載の半導体装置の製造方法であって、」と訂正した上で、訂正前の請求項1及び請求項3からなる独立項と、訂正前の請求項1、請求項2及び請求項3からなる独立項に訂正するものである。
したがって、訂正事項3は、誤記の訂正及び明りょうでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当するものである。

そして、前記訂正事項1〜3のいずれの訂正事項も、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、いずれも、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(3)むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、平成11年改正前の特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書、第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。


3.特許異議の申立てについての判断
本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、訂正の結果削除され、また、特許請求の範囲の請求項1に係る発明が削除されたことに伴い、特許請求の範囲の請求項5、6における、請求項1に係る発明を引用して記載した部分も、削除されることになり、特許異議の申立ての対象が存在しないので、この特許異議の申立ては、不適法な申立てであって、その補正をすることができないものである。
したがって、本件特許異議の申立ては、特許法第120条の6第1項で準用する第135条の規定によって却下すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
半導体装置の製造方法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 半導体層上に、下記の一般式(1)で表わされる化合物からなる誘電体薄膜を形成する工程を具備した半導体装置の製造方法であって、
ABO3……(1)
(ここで、AはCa、Ba、Sr、PbおよびLaからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素であり、BはZrおよびTiからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素である)前記誘電体薄膜の形成は、前記元素Aのβジケトン錯体化合物と、前記元素Bのβジケトン錯体化合物と、酸化剤とを含む原料ガスを用いた化学的気相成長法により、400Torr以下の圧力下において、500℃以下の温度で行われることと、前記化学的気相成長法を反応律速条件下で行なうことと、前記化学的気相成長法は、前記元素Aのβジケトン錯体および前記元素Bのβジケトン錯体の何れの熱分解温度よりも低い温度で行われることとを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】 半導体層上に 下記の一般式(1)で表わされる化合物からなる誘電体薄膜を形成する工程を具備した半導体装置の製造方法であって、
ABO3……(1)
(ここで、AはCa、Ba、Sr、PbおよびLaからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素であり BはZrおよびTiからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素である)前記誘電体薄膜の形成は、前記元素Aのβジケトン錯体化合物と、前記元素Bのβジケトン錯体化合物と、酸化剤とを含む原料ガスを用いた化学的気相成長法により、400Torr以下の圧力下において、500℃以下の温度で行われることと、前記化学的気相成長法を反応律速条件下で行なうことと、前記化学的気相成長法は、前記元素Bのβジケトン錯体の供給量が、モル比で、前記元素Aのβジケトン錯体の供給量の5倍以上になる条件下で行われることとを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項3】 半導体層上に、下記の一般式(1)で表わされる化合物からなる誘電体薄膜を形成する工程を具備した半導体装置の製造方法であって、
ABO3……(1)
(ここで AはCa、Ba、Sr、PbおよびLaからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素であり、BはZrおよびTiからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素である)前記誘電体薄膜の形成は、前記元素Aのβジケトン錯体化合物と、前記元素Bのβジケトン錯体化合物と、酸化剤とを含む原料ガスを用いた化学的気相成長法により、400Torr以下の圧力下において、500℃以下の温度で行われることと、前記化学的気相成長法を反応律速条件下で行なうことと、前記化学的気相成長法は、前記元素Aのβジケトン錯体および前記元素Bのβジケトン錯体の何れの熱分解温度よりも低い温度で行われることと、前記化学的気相成長法は、前記元素Bのβジケトン錯体の供給量が、モル比で、前記元素Aのβジケトン錯体の供給量の5倍以上になる条件下で行われることとを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項4】 請求項1〜3の何れか1項に記載の半導体装置の製造方法であって、前記一般式(1)で表わされる化合物が、BaxSr1-xTiO3(0≦x≦1)である方法。
【請求項5】 請求項1〜4の何れか1項に記載の半導体装置の製造方法であって、前記βジケトン錯体化合物のリガンドが、ジピバロイルメタン(DPM;C11H19O2)である方法。
【請求項6】 請求項1〜5の何れか1項に記載の半導体装置の製造方法であって、前記酸化剤が、分子状酸素またはN2Oを含む方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、例えばDRAMのように、キャパシタを具備した半導体装置の製造方法に関する。より具体的には、かかる半導体装置のキャパシタ絶縁膜(蓄積容量膜)を形成する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
キャパシタは、半導体集積回路における重要な素子である。例えば、半導体記憶装置の1種であるダイナミック・ランダム・アクセス・メモリ(DRAM)では、トランジスタとキャパシタとを組み合わせることにより、データの書込みおよび読出しを行なうように構成されている。また、他の半導体集積回路においても、キャパシタは電荷の蓄積を行う素子として広く使用されている。
【0003】
半導体集積回路におけるキャパシタは、半導体基板もしくは該基板上の導体からなる下部電極と、該下部電極上に積層されたキャパシタ絶縁膜と、該絶縁膜上に積層された上部電極とで構成されている。このキャパシタ絶縁膜として、従来の集積回路用キャパシタでは、酸化シリコン(SiO2)または窒化シリコン(Si3N4)が用いられている。
【0004】
ところで、半導体装置の高集積化および記憶容量の大容量化が急速に進展するに伴って、大きな蓄積容量をもったキャパシタを、狭い平面領域内に形成することが要求されている。この要求を満たす第一の手段として、キャパシタ絶縁膜の膜厚を薄くして有効単位面積当たりのキャパシタ容量を増大させることが行われている。また、第二の手段としては、立体的構造を採用することにより、キャパシタの有効表面積を増大させることが行われている。この第二の手段の例としては、トレンチキャパシタ技術およびスタックトキャパシタ技術が知られている。トレンチキャパシタ技術は、下部電極(例えばシリコン基板)にトレンチ溝を形成し、このトレンチ溝の表面に沿ってキャパシタを形成することにより、キャパシタの有効面積を増大させるものである。また、スタックトキャパシタ技術では、トランジスタの上に一以上のキャパシタを積層して形成することにより、集積度を犠牲にすることなく大きなキャパシタ面積を確保している。
【0005】
しかしながら、蓄積容量膜を薄くするに従ってリーク電流が増大するため、その薄膜化には限度があり、また、立体構造をさらに複雑にすることも技術的に困難になりつつある。このため、酸化シリコン(SiO2)または窒化シリコン(Si3N4)をキャパシタ絶縁膜として用いる限り、更に集積度の高いDRAMを実現することは困難であった。事実、ギガビット以上の高集積度DRAMは未だ実現されていない。
【0006】
このような状況から、より一層の微細化および高集積化を達成するためには、キャパシタ絶縁膜として、従来の絶縁膜よりも誘電率の高い高誘電率材料を用いることが不可欠になってきている。そこで、近年、SiO2やSi3N4よりも誘電率が高いチタン酸ストロンチウム(SrTiO3)、チタン酸バリウムストロンチウム(BaxSr1-xTiO3)、PZT(PbZrxTi1-xO3)等のようなペロブスカイト型の結晶構造を有する高誘電体材料を用いることが検討されている。これらの高誘電体材料は、シリコン酸化膜よりも20倍〜1000倍以上も高い誘電率を有している。
【0007】
しかしながら、これらの高誘電体材料をキャパシタ絶縁膜に用いた場合には、次に述べるような別の問題がある。
【0008】
一般に、これらの高誘電体膜は禁制帯幅が小さいため、電圧印加時にリーク電流が流れやすい。このため、DRAMのキャパシタに使用する際に、必要なキャパシタ容量を確保するために薄膜化すると、リーク電流が過大になるという問題がある。また、ペロブスカイト結晶構造を有する高誘電体膜は、薄膜化すると誘電率が低下する性質があるので、せっかく薄膜化しても、その割にはキャパシタ容量が増加しないという問題がある。従って、上記の高誘電体材料をキャパシタ絶縁膜に用いる場合でも、それだけでは十分なキャパシタ容量を得ることはできず、やはりトレンチキャパシタ技術およびスタックトキャパシタ技術と同様の立体構造を併用する必要がある。
【0009】
立体構造を併用する場合には、凹凸を有する表面上に良好なステップカバレージで高誘電体薄膜を形成しなければならない。ところが、上記高誘電体薄膜の形成に従来用いられているスパッタリングは、ステップカバレージに劣る。従って、立体構造を併用するためには、スパッタリングではなく、ステップカバレッジに優れた化学的気相成長法(CVD法)によって上記高誘電体薄膜を形成することが必要とされる。ところが、複合酸化物である上記の高誘電体材料からなる均一な膜厚の薄膜を、段差のある基板上に良好なステップカバレッジで形成できるようなCVD法は知られていない。このため、これらの高誘電体薄膜をキャパシタ絶縁膜に用い、且つ立体構造を併用することは困難であり、その結果、SiO2やSi3N4の蓄積容量膜を用いた半導体装置ほど集積度の高い半導体装置は未だ得られていない。この問題について、より詳細に説明すれば次の通りである。
【0010】
一般に、金属酸化膜をCVD法によって形成する際には、有機金属を原料とするMOCVD(metal organic CVD)法が採用される。上記ペロブスカイト結晶構造を有する高誘電体材料も金属酸化物であるが、複数種類の金属酸化物からなっているため、その薄膜をMOCVD法で形成する場合には次のような問題がある。即ち、所望の高い誘電率をもった薄膜を得るためには、ペロブスカイト型の結晶構造を乱れなく形成することが不可欠であり、これを達成するためには、結晶組成の化学量論比からのずれを±10%以下におさえる必要がある。このような複合酸化物膜の精密な組成制御を達成する必要がある場合、MOCVDは、薄膜の堆積速度が供給律速になる条件下で行われる。供給律速の条件下では原料の熱分解反応が速いので、原料の供給量に比例した堆積量が得られる。従って、このような供給律速下のCVDにおいて、夫々の原料の供給量を精密に制御することによって、堆積される複合酸化物の組成を精密に制御することができる。各原料についての供給量の制御は、原料温度、原料容器圧力、原料バブリングガス流量等のCVD条件を精密に制御することによって制御することができる。このような方法は、BaxSr1-xTiO3等の誘電体薄膜およびYBa2Cu3O7-d等の高温超電導体膜の形成に用いられている。
【0011】
ところが、上記のような供給律速の下でのCVDでは精密な組成制御は可能となるが、次の理由によってステップカバレージに劣る。即ち、このような供給律速条件下では、原料が基板に到達すると、基板表面に十分に広がることなく直ちに分解反応を起こして堆積してしまう。そのため、トレンチ構造のように原料が到達し易い部分と到達し難い部分が存在する場合には、均一な膜厚を得ることができない。従って、供給律速下でのMOCVDは、トレンチキャパシタ及びスタックトキャパシタのような立体構造を併用するという目的には適合せず、ギガビット世代に対応するための技術にはなり得ない。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その課題は、従来用いられているSiO2、Si3N4等よりも誘電率が高い高誘電体化合物の薄膜、即ち、SrTiO3、BaxSr1-xTiO3、PZT等の薄膜をキャパシタ-絶縁膜とする半導体装置を製造する際に、これら高誘電体薄膜を基板上に均一な膜厚で形成することができ、特に、段差のある基板上にも良好なステップカバレッジで形成できる方法を提供することである。このような方法によって、高誘電体薄膜をキャパシタ絶縁膜として用いると同時に、トレンチキャパシタ及びスタックトキャパシタのような立体構造を併用することが可能となり、ひいてはより集積度の高い半導体装置を製造することが可能になる。
【0013】
【課題を解決するための手段】
発明者らは、鋭意研究の結果、SrTiO3、BaxSr1-xTiO3、PZT等のような高誘電体薄膜であっても、特定の原料を選択すると共に、原料が気相中で分解することなく基板表面に到達、且つ該表面上に十分に広がるようにしてCVDを行えば、段差のある基板表面上にも均一な膜厚を有する薄膜を形成できることを見出し、この発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、この発明による半導体装置の製造方法は、半導体層上に、下記の一般式(1)で表わされる化合物からなる誘電体薄膜を形成する工程を具備した半導体装置の製造方法であって、ABO3……(1)
(ここで、AはCa、Ba、Sr、PbおよびLaからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素であり、BはZrおよびTiからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素である)
前記誘電体薄膜の形成は、前記元素Aのβジケトン錯体化合物と、前記元素Bのβジケトン錯体化合物と、酸化剤とを含む原料ガスを用いた化学気相成長法により、400Torr以下の圧力下において、1000℃以下の温度で行われることを特徴とする半導体装置の製造方法である。
【0015】
この発明において、一般式(1)のABO3で表わされる化合物の例としては、前述したSrTiO3、BaxSr1-xTiO3およびPZTに加えて、例えばPb1-xLaxZryTi1-yO3(0≦x≦1、0≦y≦1)を挙げることができる。
【0016】
この発明では、前記元素Aのβジケトン錯体化合物、前記元素Bのβジケトン錯体化合物および酸化剤を含有する原料を用い、化学気相成長法(CVD)によって、前記式ABO3で表わされる化合物からなる誘電体薄膜を形成する。化学気相成長法による薄膜形成は、従来行われている通りのCVDプロセスで行なうことができる。
【0017】
CVDの原料として用いられる上記βジケトン錯体化合物において、そのリガンド部分は特に限定されず、例えば次のものを用いることができる。
【0018】
・ジピバロイルメタン(DPM;C11H19O2)
なお、DPMのIUPACに従う命名は、2,2,6,6‐テトラメチル‐3,5‐ヘプタンジオンである。
【0019】
・ヘキサフルオロアセチルアセトン(HFA;C5HF6O2)
また、酸化剤も特に限定されるものではなく、例えば、分子状酸素(O2)、N2O、NO2、NO、O3、フラン(C4H4O)およびテトラヒドロフラン(C4H8O)、並びにこれらのガスをプラズマや光で活性化したものを用いることができる。利用上の簡便さからはO2が好ましく用いられ、この発明の効果も十分得ることができる。しかし、N2Oを用いると原料の気相での分解反応がさらに抑制され、非常に大きな効果を得ることができるため特に好ましい。
【0020】
本発明において、CVDプロセスの圧力および温度は、400Torr以下で1000℃以下より好ましくは100Torr以下で700℃以下である。圧力が400Torrを越えると、他のプロセス条件を如何に設定しても、気相中での原料の分解反応を抑制することが困難となる。また、反応温度が1000℃を越えると、原料化合物が直ちに基板と反応してしまう。これら何れの場合にも、均一な膜厚の薄膜を得ることは困難になる。好ましくは、上記の圧力および温度に関する条件を、高誘電体薄膜の成長速度が反応律速となるように設定する。
【0021】
本発明の一つの好ましい態様においては、前記CVDプロセスは、前記元素Aのβジケトン錯体および前記元素Bのβジケトン錯体の何れの熱分解温度よりも低い温度で行われる。これによって、ステップカバレッジだけでなく、高誘電体薄膜表面の平滑性を向上することができる。
【0022】
また、本発明の他の好ましい態様では、CVDプロセスにおける原料の供給を制御して、前記元素B(Zrおよび/またはTi)のβジケトン錯体の供給量を、モル比で、前記元素A(Ca、Ba、Sr、Pbおよび/またはLa)のβジケトン錯体の供給量の5倍以上になるように設定する。これによって、目的とする高誘電体薄膜の結晶性および誘電率を向上することができる。
【0023】
本発明においては、上記二つの好ましい態様を組合わせてもよい。
【0024】
【作用】
(1)本発明において最も重要なことは、CVDの金属原料として、前記元素Aおよび元素Bのβジケトン錯体化合物を用いることと、CVDを400Torr以下の圧力下において1000℃以下の温度で行うことである。CVDの金属原料としてこれ以外の有機金属を用いた場合、または上記範囲から外れるCVD条件を用いた場合には、所期の良好なステップカバレッジを得ることはできない。
【0025】
また、上記のCVD条件を作用的な観点から言い換えると、CVDによる高誘電体薄膜の成長が、供給律速条件ではなく反応律速条件下で行われるとことである。そこで、先ずこの点について説明する。
【0026】
CVDにおける膜の成長速度と成長温度との間には、通常、図1に示すような関係がある。すなわち、縦軸に成長速度をとり、横軸に膜の成長温度をとると、ある特定の温度までは膜の成長温度と成長速度とが比例関係にあり、その特定温度を越えると成長速度は一定となる。図1で一定の勾配を有する領域、即ち、膜の成長温度と成長速度とが比例する領域に相当する反応条件を、反応律速条件と称する。反応律速条件下では、原料の分解速度が遅いため、原料は基板表面に到達した後にも、熱分解反応を生じる前に十分な距離を拡散する。従って、原料が到達し難い部分にも均一に高誘電体膜が堆積する結果、膜厚は均一となり、段差を有する基板上でのステップカバレッジも良好となる。
【0027】
図2は、StTiO3膜を堆積する場合について、一定量のSr原料およびTi原料をCVDチャンバーに供給したときの、Sr堆積速度およびTi堆積速度の温度依存性を示している。この図から、Sr堆積速度およびTi堆積速度は、基板の表面温度が約480℃より低い温度においては、温度に比例することが分る。また、図3は、PZT膜の場合についての同様の曲線を示している。この場合にも、500℃以下の成膜温度において、各金属元素が反応律速条件を満たすようになる。
【0028】
(2)ところで、上記のような反応律速の条件下でCVDを行う手段としては、原料ガスの供給量を増大させることも可能であるが、特に有用なのは、上記のように成膜温度を下げて基板表面での原料の分解を抑制することである。しかし、低温化すると良好なステップカバレッジは得られるものの、得られた膜の表面の平滑性が悪化する場合がある。例えば、Sr,Ba,CaのようなIIa族の元素に関しては、このような温度領域で成膜を行うと、薄膜表面の平滑性が著しく悪化する。このような表面の平滑性に劣る薄膜は、LSIのキャパシタ絶縁膜としては適さない。
【0029】
そこで、発明者等はその原因を追及した結果、次に述べるように、有機金属原料は上記の反応律速の条件下においても一部が気相で分解を起こし、これが平滑性を劣化させる原因であることを発見した。一般式ABO3における元素A、即ちSr,BaのようなIIa族の元素について説明すると、これら元素のDPM錯体には個々の錯体に特有の分解温度Tcが存在する。例えば、Sr(DPM)2の気相中における分解温度Tcは図4に示す通りである。なお、図示のように、この場合のTcは酸化剤条件に依存して変化する。何れにしても、Tcより高い温度領域においては、Sr(DPM)2は基板表面に達する前に気相中で分解してしまう。その結果、図5に示すように、気相分解により形成されたる粒子2が基板1の表面に付着し、その上に良好な被覆性で高誘電体膜3が堆積することになる。これが、薄膜表面の平滑性を悪化させる原因である。
【0030】
従って、本発明の好ましい態様においては、このような有機金属の気相分解を防止するために、高誘電率薄膜を形成するためのCVDを反応律速の条件下で行うだけでなく、原料として使用する全ての有機金属化合物のTcよりも低い温度でCVDを行なう。これによって、良好なステップカバレッジを得るだけでなく、高誘電体薄膜表面の平滑性を向上することができる。なお、上記の分解温度Tcは成膜温度以外の条件にも依存し、例えば成膜時における成膜チャンバー内の圧力によっても変化する。従って、実際の成膜条件に則して各有機金属化合物の分解温度Tcを求めた上で、これらTcよりも低い温度で成膜を行う。
【0031】
(3)次に、本発明における更に別の好ましい態様について説明する。この態様においては、前記元素B(Zrおよび/またはTi)のβジケトン錯体の供給量を、モル比で、前記元素A(Ca、Ba、Sr、PbまたはLa)のβジケトン錯体の供給量の5倍以上になるように制御する。この構成によって、成膜温度を低温化して反応律速の条件下でCVDを行なう場合にも、高誘電体薄膜における金属元素組成を好ましい比率とし、結晶性に優れた高品質な高誘電体薄膜を形成することができる。その作用を以下に説明する。
【0032】
既述のように、SrTiO3またはPbZrxTi1-xO3等のようなペロブスカイト結晶構造を有する高誘電体では、結晶構造がペロブスカイト構造をとったときにのみ所望の高い誘電率を得ることができる。従って、所望の高誘電率を得るためには、これら複合酸化物における各金属元素の比率を化学量論比±10%以内に制御して、ペロブスカイト結晶構造とすることが必要である。例えばチタン酸ストロンチウムの誘電率は、図6に示すような組成依存性を示す。図示のように、Sr/(Sr+Ti)が0.5の化学量論比であれば、約550の誘電率が得られる。しかし、この比率が化学量論比から大きくずれ、ペロブスカイト結晶構造を取れなくなると、30程度の誘電率しか得られない。
【0033】
一方、原料ガス中のSr/(Sr+Ti)比が0.5になるように原料を供給しながら、CVDによってチタン酸ストロンチウムを成膜すると、図7に示すように、堆積膜中のSr/(Sr+Ti)比は成膜温度に依存して変化する。図示のように、成膜温度が600℃の場合は、金属酸化膜中のSr/(Sr+Ti)比は0.5となり、良好な結晶性が得られる。ところが、本発明に従って良好なステップカバレッジを得るために成膜温度を低下させると、チタンの比率が低下し、良好な結晶性は得られなくなってしまう。この現象は、チタン原料とアルカリ土類金属原料とが低温で気相中に併存していると、チタン原料単体の分解が抑制されてしまい、以下のような反応が支配的になることが原因である。
【0034】
即ち、アルカリ土類金属原料としてSr(DPM)2を用い、チタン原料としてTiO(DPM)2を用いると、
m・Sr(DPM)2+TiO(DPM)2→SrmTi-R
[但し、Rは有機基である。]
のような反応が生じる。
【0035】
理想的な結晶組成が得られるのは、m=1の場合である。このような理想的な反応が支配的になるための条件は、成膜温度などの条件によって異なる。発明者等は鋭意研究を行った結果、本発明に従う反応律速の条件でのCVDにおいては、アルカリ土類原料の供給量に対するチタン原料の供給量の比が、モル比で5以上のときに、上記理想的な反応が支配的になることをつき止めた。なお、この原料供給量のモル比は各原料の分圧比に等しい。
【0036】
従って、前記元素A(Ca、Ba、Sr、Pbおよび/またはLa)のβジケトン錯体の供給量に対する前記元素B(Zrおよび/またはTi)のβジケトン錯体の供給量を、モル比で5倍以上になるように制御すれば、反応律速の条件下でのCVDで高誘電率薄膜を形成する際にも、良好なペロブスカイト結晶構造および所望の高誘電率を有し、且つ絶縁性に優れた薄膜を形成することができる。
【0037】
【実施例】
以下、この発明の実施例を図面を参照して説明する。
【0038】
実施例1
この実施例では、Sr原料としてSr(C11H19O2)2を、Ti原料としてTiO(C11H19O2)2をそれぞれ用い、さらに酸化剤としてO2を用いて、成長温度450℃での化学的気相成長により、Si基板上にチタン酸ストロンチウム(SrTiO3)薄膜を形成した。
【0039】
図8は、この実施例において薄膜の形成に用いられる化学気相成長装置の概略を示す図である。この装置は、大別して、化学気相成長を行なう反応容器と、この反応容器への原料ガス、酸化剤等の供給・排出を行なう給排出管系とからなり、アルゴンガスをキャリアガスとしてバルブの調節により各種ガスの供給・排出を行なう。
【0040】
この装置のガス供給系は、図示しないアルゴンガス供給源に接続するアルゴンガス供給管113から2系統に分岐し、一方は質量流量制御器124を介して原料ガス供給管114に接続し、他方は質量流量制御器126を介して酸素ガス供給管116に接続する。これら二つの系統は、それぞれ配管加熱オーブン173に導入されて反応容器101に接続している。反応容器101には、圧力調整バルブ106を介して真空ポンプ107に接続する排出管118が接続している。一方、質量流量制御器125を介してアルゴンガス供給管113に接続する排出管115は、配管加熱オーブン173内部を通過して排出管118に直接接続し、この装置のガス排出系をなしている。アルゴンガス供給管113からは更に2系統が分岐されており、一方は質量流量制御器121および圧力検知機161を介して、原料加熱オーブン171に収容された原料充填容器111に接続されている。他方の系統は、質量流量制御器122および圧力検知機162を介して、原料加熱オーブン172に収容された原料充填容器112に接続している。原料充填容器171は、圧力調整バルブ151を介して流路切換え器141で原料ガス供給管114に接続している。この流路切換え器141は、バルブ131を介して排出管115に接続している。同様に、原料充填容器172は、圧力調整バルブ152を介して流路切換え器142で原料ガス供給管114に接続している。この流路切換え器142は、バルブ132を介して排出管115に接続している。これらの流路切換え器141および142を用いて流路を切換えることにより、原料ガスの反応容器101への供給と、排出管115を介しての排出とが行なわれる。また、図示しない酸素ガス供給源が、質量流量制御器123を介して流路切換え器143で酸素ガス供給管116と接続している。流路切換え器143は、バルブ133を介して排出管115に接続している。原料ガスと同様に、流路切換え器143の切換えによって、反応容器101への酸素ガスの供給と、排出管115を介しての排出とが行なわれる。反応容器101にはゲートバルブ108および圧力検知器105が備えられ、さらにその内部には熱電対104を備えた抵抗加熱ヒーター103が設けられている。薄膜を形成しようとする基板102はこの抵抗加熱ヒーター103上に載置され、加熱される。
【0041】
薄膜の形成は、図8に示した上記の化学気相成長装置を用い、以下の工程に従って行なった。
【0042】
膜成長の予備段階として、まず図9に示す溝を形成したSi基板102を抵抗加熱ヒーター103上に載置する。次に、供給系を介して高純度アルゴンガスを反応容器101内に供給して、容器内部の空気を置換する。次いで、真空ポンプ107を作働させ、圧力検知器105で監視しながら反応容器101内部の圧力を10Torrに調整する。その後、質量流量制御器123を介して反応容器101内に高純度酸素ガスを供給し、抵抗加熱ヒーター103でSi基板102を加熱して450℃まで昇温する。Si基板102を昇温している間に、質量流量制御器121および122を経由して流量を調節したアルゴンガスを、各々215℃および110℃に保持したSr(C11H19O2)2およびTiO(C11H19O2)2を収容している原料充填容器111および112に対して、それぞれ300sccmおよび30sccmの割合で送り、得られた蒸気を供給系を介して下流側に送り出す。その際、流路切換え器141および142を操作して配管を排出管115に連通させ、蒸気を排出側に放出しておく。
【0043】
このように準備した後、成長を開始する。すなわち、Si基板102の温度を450℃に、また反応容器101内の圧力を10Torrに保持して安定させた後、流路切換え器141および142を同時に反応容器101側に切換え、原料ガスを反応容器101内に供給して成長を開始させる。薄膜の成長時間は4時間とした。成長終了後、流路切換え器141および142を同時に排出管115側に切換え、ヒーター103による加熱を停止して基板102を冷却する。基板102を冷却している間は酸素ガスを反応容器中に流しておく。
【0044】
以上の工程により、膜厚約100nmのチタン酸ストロンチウム薄膜を得た。この薄膜について、誘導結合プラズマ発光分光法(ICP法)による分析を行ったところ、Sr/Ti=1であることが確認された。また、X線回折測定では、チタン酸ストロンチウム以外のピークを見出だすことはできず、この薄膜が多結晶チタン酸ストロンチウム薄膜であることが確認された。さらに、薄膜が形成された基板の断面を走査型電子顕微鏡で観察した結果、図10に示すように、平坦部分のSrTiO3薄膜201の膜厚と、溝の側面部分のSrTiO3薄膜202の膜厚とはほぼ同じであった。なお、ここで用いられる450℃という成長温度は、原料の(分解)反応により成長速度が律速される反応律速となる温度である。
【0045】
比較のため、原料の供給量で成長速度が律速される供給律速条件となるように、成長温度を600℃とした以外は上記と同様の条件で、SrTiO3薄膜を形成した。その結果、図11に示すように、溝の側面部の薄膜204の膜厚は、平坦部の薄膜203の膜厚の約70%であった。
【0046】
さらに、Tiの原料としてTi(OC3H7)4を用い、Srの原料は上記と同様にSr(C11H19O2)2を用いてSrTiO3薄膜の形成を行なった。この場合、供給律速条件である600℃で成長させたときには、図12に示すように、溝側面部の薄膜206は、平坦部の薄膜205の約30%程度にしか成長しなかった。また反応律速条件である450℃で成長させた場合には、SrOとTiOが分離した島状に成長し、SrTiO3薄膜を得ることはできなかった。
【0047】
以上のように、Sr原料としてSr(C11H19O2)2を用い、また、Ti原料としてTiO(C11H19O2)2を用いることによって、Ti原料としてTi(OC3H7)4を用いた場合には得ることができないような、優れた段差被覆性を有するSrTiO3薄膜を形成することができる。また、成長温度を反応律速条件となる温度に設定することにより、平坦部の膜厚と溝側面部の膜厚がほぼ等しいSrTiO3薄膜を得ることができる。
【0048】
実施例2
Baの原料としてBa(C11H19O2)2を用い、またSrの原料としてはSr(C11H19O2)2を、Tiの原料としてはTiO(C11H19O2)2をそれぞれ用いて実施例1と同様の工程を行うことにより、段差のあるSi基板上にBaxSr1-xTiO3薄膜を形成した。
【0049】
その結果、SrTiO3薄膜の場合と同様、反応律速となる成長温度450℃で、平坦部の膜厚と溝側面部の膜厚とがほぼ等しいBaxSr1-xTiO3薄膜を得ることができた。ICP分析によって、組成中のxは0.45、Ba+Sr/Ti組成比は1であることが確認された。また、X線回折測定を行うことにより、得られたBa0.45Sr0.55TiO3薄膜は多結晶体であることが確認された。
【0050】
また、原料を変えずに、Ba原料容器とSr原料容器へのキャリアガスの流量を調整することにより、組成xを変化させてBaxSr1-xTiO3薄膜の形成を行なった。
【0051】
その結果、反応律速条件においては、組成xに係わりなく、基板の平坦部の膜厚と溝側面部の膜厚がほぼ等しいBaxSr1-xTiO3薄膜が得られることを確認した。
【0052】
実施例3
前記実施例2の結果を踏まえ、以下の手順によりBaxSr1-xTiO3薄膜をキャパシタ絶縁膜とするダイナミック・ランダム・アクセス・メモリセル(DRAMセル)を作製した。このDRAMセルの断面を図13に示す。
【0053】
まず、p型シリコン基板301の(100)面上に、素子分離を行なうためのフィールド酸化膜302を形成する。次に、ゲート酸化膜303を形成し、続いて該ゲート酸化膜上に多結晶シリコンゲート電極304を形成する。その後、イオン注入法によりソースおよびドレイン領域305を形成し、続いて層間絶縁膜として酸化膜306を形成する。以上の工程は、膜の形成、フォトリソグラフィー法によるパターニング、イオン注入法等、通常この分野で用いられる方法で行なった。
【0054】
次に、トレンチキャパシタのためのトレンチ溝を形成した後、キャパシタの下部電極となるPt膜307を形成する。更に前記実施例2と同様の方法により、Pt膜307上に、キャパシタ絶縁膜としてBa0.45Sr0.55TiO3膜408を形成する。Pt下部電極307の膜厚は約20nm、Ba0.45Sr0.55TiO3膜408の膜厚は10nmとした。最後に、Pt膜409を全面に形成した後、フォトリソグラフィー法によりパターニングしてキャパシタの上部電極を形成しメモリセルを完成する。
【0055】
このようにして、本発明による製造方法を用いることにより、トレンチ構造のような複雑な形状を有する基板上にもBa0.45Sr0.55TiO3からなる蓄積容量膜を均一に形成することが可能となる。
【0056】
上記のようにして製造された、Ba0.45Sr0.55TiO3膜308をキャパシタ絶縁膜とするメモリセルは、従来の酸化シリコン膜や窒化シリコン膜をキャパシタ絶縁膜とし、同様のトレンチ構造を有するメモリーセルと比較して、約30倍という高い蓄積容量を示した。このことは、従来のDRAMよりも集積度が30倍程度高いDRAMを作製し得ることを示唆している。
【0057】
実施例4
キャパシタ部分にスタック構造を用いることを除いて、案施例3と同様の手順により、Ba0.45Sr0.55TiO3膜をキャパシタ絶縁膜とするDRAMセルを作製した。図8は、この実施例で作成したDRAMセルの断面構造を示している。同図において、図13と同じ機能部分には同一の参照番号を付した本発明の製造方法を用いることにより、スタック構造のような複雑な形状を有する基板上にも、Ba0.45Sr0.55TiO3からなるキャパシタ絶縁膜を均一に形成することが可能となる。
【0058】
上記のようにして製造したBa0.45Sr0.55TiO3膜308をキャパシタ絶縁膜とするメモリセルは、実施例3のトレンチ構造の場合と同様、従来の酸化シリコン膜や窒化シリコン膜をキャパシタ絶縁膜とし且つ同様のスタック構造を有するメモリーセルと比較して、約30倍という高い蓄積容量を示した。
【0059】
実施例5
この実施例は、本発明の好ましい態様のうち、高誘電率キャパシタ絶縁膜の優れた表面平滑性を得る態様に関する。即ち、この実施例におけるCVDプロセスは、原料に用いる金属化合物の何れの気相分解温度よりも低い温度で行なわれる。以下、図15および図16を参照し、DRAMの製造プロセスに従って説明する。
【0060】
(1)比抵抗10Ω・cmのP型(100)単結晶シリコン基板401上に熱酸化膜402を形成し、次いで、シリコン窒化膜からなる研磨障壁層403およびシリコン酸化膜404を順次CVDにより堆積する。次に、通常のフォトエッチングによって、シリコン酸化膜404をパターンニングする。該パターン404をマスクとしてRIEを行なうことにより、研磨障壁層403、熱酸化膜402およびシリコン基板401を順次選択的にエッチングし、図15(A)に示すように、素子分離領域となる凹溝を形成する。
【0061】
(2)次に、LPCVDによりシリコン酸化膜405を全面に堆積し、素子分離溝領域となる凹溝を埋める。次いで、このシリコン酸化膜405およびシリコン酸化膜パターン404を、研磨障壁層403が露出するまで化学的機械研磨法により研磨して平坦化することにより、図15(B)の状態を得る。図示のように、凹溝内にはシリコン酸化膜405が埋め込まれて素子分離が達成される。
【0062】
(3)次に、研磨障壁層403を剥離し、更にフッ酸等により前記シリコン熱酸化膜402を剥離する。続いて、素子領域を熱酸化することにより、薄い熱酸化膜からなるゲート酸化膜406を形成する。次いで、LPCVD法により全面にN型多結晶シリコン膜を堆積し、これをパターンニングすることによって、ゲード電極407を形成する。更に、ゲート電極407および素子分離膜405をブロッキングマスクとして、N型不純物をイオン注入する。これにより、相互に分離されたソース・ドレイン領域408,409が自己整合的に形成される。この状態が図15(C)に示されている。
【0063】
(4)次に、層間絶縁膜として、全面に厚いCVD酸化膜410を形成した後、PEPプロセスによって、ソース・ドレイン領域408に達するコンタクトホールを形成する。続いて、タングステンシリサイド膜の堆積およびパターンニングを行なうことにより、該コンタクトホールを介してソース・ドレイン領域408にコンタクトしたビット線411を形成する。次いで、層間絶縁膜としてCVD酸化膜413を堆積した後に、PEPプロセスを用いることにより、ソース・ドレイン領域409に達するコンタクトホールを形成する。更に、選択CVDを行うことにより、該コンタクトホール内にタングステン膜412を埋め込む。こうして、図15(D)に示す状態を得る。
【0064】
(5)次に、全面にCVD酸化膜414を堆積した後、プラズマCVDによりシリコン窒化膜415を全面に形成する。続いて、タングステン膜412が露出するまで、このCVD酸化膜414およびシリコン窒化膜415をPEPにより選択的にエッチングする。これにより、DRAMのキャパシタを形成するための凹部を形成する。次いで、スパッタ法により窒化タングステン膜416および白金膜417を全面に堆積する。続いて、シリコン窒化膜415を研磨障壁層とする化学的機械研磨法により、白金膜417および窒化タングステン膜416を研磨し、これら導電性膜417,416を前記凹部内にのみ残存させる。こうしてキャパシタの下部電極が形成され、図16(E)に示す状態が得られる。
【0065】
(6)次に、キャパシタ絶縁膜として、CVD法によりチタン酸ストロンチウム膜418を形成する。続いて、キャパシタ絶縁膜418上に、CVDにより窒化チタン膜419を堆積し、これをパターンニングする。こうしてプレート電極419が形成され、図16(F)の状態が得られる。
【0066】
当然ながら、この工程で重要なのはキャパシタ絶縁膜、即ちチタン酸ストロンチウム膜418の形成である。この実施例では、次のようにしてチタン酸ストロンチウム膜418を形成する。
【0067】
原料のSr(DPM)2およびTiO(DPM)2を、Arガスでバブリングしながら供給する。酸化剤としては酸素ガスを用いる。Sr(DPM)2およびTiO(DPM)2は、恒温槽の中で夫々215℃および140℃に維持しておく。ガス流量はSrのキャリアガスが325sccm、Tiのキャリアガスが125sccm、酸素ガスが50sccmであり、総流量は500sccmである。また、成膜時の圧力は10Torrとする。この成膜に用いた装置は、実施例1で用いた図7の装置と同じである。このときのSr(DPM)2の供給量は0.5mmol/m2となる。この成膜条件においては、Sr(DPM)2の気相中での分解温度は440℃である。従って、成膜はこの分解温度よりも低い420℃で行う。
【0068】
こうしてチタン酸ストロンチウム膜418を堆積した後、これを400℃、0.1Torrの酸素プラズマ中でアニールする。これによって、低温で成膜を行ったために膜中に残留した炭素を除去する。続いて、700℃で1分間の急速熱酸化法により、前記チタン酸ストロンチウム膜418を結晶化させる。こうして、ステップカバレッジが良好で且つ表面平滑性に優れた、高誘電体薄膜からなるキャパシタ絶縁膜が得られる。ここで、AFM(原子間力顕微鏡)で平面平滑性を評価したところ、表面の凹凸の高低差が0.5nm以下であった。
【0069】
(7)その後、通常のLSI製造プロセスに従ってパッシベーション膜を形成し、必要な敗戦の形成を行って集積回路を製造する。これらの工程の詳細については説明を省略する。
【0070】
実施例6
この実施例も、高誘電率キャパシタ絶縁膜の優れた表面平滑性を得るために、原料に用いる金属化合物の何れの気相分解温度よりも低い温度でCVDプロセス行なう態様に関する。以下、図17を参照して説明する。
【0071】
(1)実施例5の工程1〜4までを同様に行い、図15(D)の状態を得る。その後のプロセスは次の通りである。
【0072】
先ず、スパッタリングを用いてCVD酸化膜413上に膜厚1μmの酸化ルテニウム膜501を堆積し、更にその上にCVD酸化膜502を堆積する。次いで、CVD酸化膜502をパターンニングした後、該パターンをマスクとして酸化ルテニウム膜501をRIEで異方性エッチングする。これにより、図17(A)に示すように、DRAMキャパシタの下部電極となる酸化ルテニウム膜501のパターンを形成する。
【0073】
(2)次に、CVD酸化膜パターン502を除去した後、本発明の好ましい態様を適用して、チタン酸ストロンチウムからなるキャパシタ絶縁膜503を形成する。続いて、CVDを用いて窒化タングステン膜を堆積し、これをパターンニングすることにより、窒化タングステン膜からなるプレート電極504を形成する。この状態を図17(B)に示す。
【0074】
キャパシタ絶縁膜503は次のようにして形成する。原料のSr(DPM)2およびTiO(DPM)2を、恒温槽の中で夫々215℃および140℃に維持しておき、ArガスでバブリングしながらコールドウオールタイプのCVDチャンバー内に供給する。酸化剤としてはN2Oガスを用いる。原料の供給条件および使用した装置は、実施例5と同じである。このときのSr(DPM)2の気相中での分解温度は460℃である。従って、成膜はこの分解温度よりも低い440℃で行う。こうしてチタン酸ストロンチウム膜418を堆積した後に、これを酸素雰囲気中において600℃で30分間アニールして結晶化させる。こうしてステップカバレッジが良好で且つ表面平滑性に優れた、チタン酸ストロンチウムの高誘電体薄膜からなるキャパシタ絶縁膜が得られる。ここで、平面平滑性をAMFで評価したところ、表面の凹凸の高低差が0.2nm以下であった。
【0075】
(3)その後、通常のLSI製造プロセスに従ってパッシベーション膜を形成し、必要な敗戦の形成を行って集積回路を製造する。これらの工程の詳細については説明を省略する。
【0076】
実施例7
この実施例は、本発明の好ましい態様のうち、良好なステップカバレッジを得るために反応律速でのCVDを行うと共に、良好なペロブスカイト結晶構造を維持した高誘電率キャパシタ絶縁膜を形成する態様に関する。即ち、この実施例におけるCVDプロセスは、例えば、Sr原料の供給量に対するTi原料の供給量の比を、モル比で5以上に制御して行われる。
【0077】
この実施例では、図18に示すCVD装置を用いてチタン酸ストロンチウムの成膜を行なう。図示のように、この装置は排気系601、反応容器602およびガス供給系603からなっている。また、原料としてはSr(DPM)2およびTiO(DPM)2を用い、酸化剤としてO2を用いる。
【0078】
金属原料のSr(DPM)2およびTiO(DPM)2は、ステンレス製の原料容器604,605に収納されており、これら容器は夫々が独立に温度制御可能なオーブン606,607に格納されている。原料容器をオーブン内に格納することによって、原料の温度を極めて安定に制御することができる。また、原料容器604,605の出口には圧力調整バルブ608,609が設けられており、各原料容器内の圧力を制御できるようになっている。原料の供給は、Arガスによる原料のバブリングによって行う。純化装置610で純化されたArガスは、マスフローコントローラ611,612で流量を制御されて、原料容器604,605内の原料をバブリングする。気化した原料はArガスで搬送され、反応容器602の前段においてO2と混合された後に、反応容器602内にシャワーノズル613を通して導入される。反応容器内においてCVD反応が起こると、ヒータ614で一定温度に保持されたサセプタ615に載置された基板表面にチタン酸ストロンチウムの薄膜が形成される。
【0079】
上記のCVDプロセスは、良好なステップカバレッジと良好なペロブスカイト結晶構造を実現するために以下の条件で行う。
【0080】
Sr(DPM)2およびTiO(DPM)2の温度を夫々215℃および140℃に保持し、またこれら原料を収容している原料容器604,605の内部圧力は何れも100Torrに維持する。Srのキャリアガス流量は300sccm、Tiのキャリアガス流量は35sccmとする。この条件において基板に供給される各原料の量は、Sr(DPM)2が5mmol/m2、TiO(DPM)2が50mmol/m2となる。また、良好なステップカバレッジを実現するために、SrおよびTiの成膜速度が反応律速となるように、成膜温度は420℃、成膜圧力は10Torr、総流量は500sccmの条件でチタン酸ストロンチウム膜のCDVを行う。
【0081】
こうしてチタン酸ストロンチウム膜を成膜した後、700℃の酸素雰囲気において常圧下でアニールを行なうことにより結晶化させる。こうして得られたチタン酸ストロンチウム膜は良好なステップカバレッジを有し、しかも良好なペロブスカイト結晶構造を有している。また、上下電極として白金を用いて誘電率を評価したところ、チタン酸ストロンチウムについて、膜厚50nmの試料では比誘電率が200、膜厚25nmの試料では比誘電率170という高い値が得られた。
【0082】
実施例8
この実施例も、実施例7と同様、良好なステップカバレッジと共に、良好なペロブスカイト結晶構造を維持した高誘電率キャパシタ絶縁膜を形成する態様に関する。
【0083】
この実施例では、図19に示すCVD装置を用いてチタン酸ストロンチウムの成膜を行なう。図示のように、この装置は排気系701、反応容器702およびガス供給系703からなっている。また、原料としてはSr(DPM)2およびTiO(DPM)2を用い、酸化剤としてN2Oを用いた。
【0084】
金属原料のSr(DPM)2およびTiO(DPM)2は、テトラヒドロフランに溶解した溶液の状態で、夫々ステンレス製の原料容器104,105に収納されている。溶液中の各金属原料の濃度は、何れも0.01mmol/mlである。Arを用いて原料溶液の液面を加圧し、原料容器704,705から原料のテトラヒドロフラン溶液を圧送し、液体流量制御装置706,707を通して気化器708に導入する。なお、気化器708までの配管等は全て室温の状態にある。
【0085】
250℃に保持された気化器708中で気化した原料液は、Arガスで搬送されて、反応容器702の前段においてN2Oと混合された後に、シャワーノズル713を通して反応容器702内に導入される。反応容器内においてCVD反応が起こると、ヒータ710で一定温度に保持されたサセプタ711に載置された基板表面にチタン酸ストロンチウムの薄膜が形成される。
【0086】
上記のCVDプロセスは、良好なステップカバレッジと良好なペロブスカイト結晶構造を実現するために以下の条件で行う。
【0087】
Sr(DPM)2の原料溶液を0.005sccmの流量で、またTiO(DPM)2の原料溶液を0.025sccmの流量で供給する。この条件において基板に供給される各原料の量は、Sr(DPM)2が50mmol/m2、TiO(DPM)2が250mmol/m2となる。また、反応容器内での分圧は、夫々0.1Torr及び0.5Torrとなる。一方、良好なステップカバレッジを実現するために、SrおよびTiの成膜速度が反応律速となるように、成膜温度は450℃、成膜圧力は50Torrの条件でチタン酸ストロンチウム膜のCDVを行う。
【0088】
こうしてチタン酸ストロンチウム膜を成膜した後、700℃の酸素雰囲気において常圧下でアニールを行なうことにより結晶化させる。こうして得られたチタン酸ストロンチウム膜は良好なステップカバレッジを有し、しかも良好なペロブスカイト結晶構造を有している。また、上下電極として白金を用いて誘電率を評価したところ、チタン酸ストロンチウムについて、膜厚50nmの試料では非誘電率200、膜厚25nmの試料では非誘電率170であった。この値は、従来のスパッタ法で得られている値(K.Abe et al.,J.Appl.Phys.,32,4186(1993))と同等の高い値である。
【0089】
以上、この発明による半導体装置の製造方法を実施例を用いて説明したが、この発明はこれらの実施例に限定されるものではなく、この発明の本質を逸脱しない限りにおいて種々の変更を加えることが可能である。例えば、本発明者らは、化学気相成長の際に用いるキャリアガスとしてN2およびHeを使用した場合であってもこの発明の効果が達成されることを確認している。また、上記実施例においてはβジケトン錯体化合物としてC11H19O2(DPM)化合物を用いているが、これ以外にもC5HF6O2(HFA)化合物など、Ba、Sr、Tiのβジケトン化合物であれば効果に変わりがないことも確認している。さらに、酸化剤として、O2の代わりに、例えばN2O、NO2、NOのような窒素酸化物(NxOy)や、O3、C4H4O若しくはC4H8O、又はこれらのガスをプラズマや光で活性化したものを用いた場合にも同様の効果が得られることを確認している。
【0090】
また、誘電体薄膜以外の部材についても実施例に限定されるものではなく、種々の変形を行なうことが可能である。例えば、蓄積容量の上部電極および下部電極はPtに限られるものではなく、Ir等の他の金属でもよいし、PtOx、IrOx等の導電性金属酸化物でもよく、さらにはNbを添加して導電性を持たせたSrTiO3、ITO等でもよい。上記実施例においては、この発明の製造方法をDRAMに適用した例を説明したが、もちろんDRAM以外の半導体装置に適用することも可能である。
【0091】
【発明の効果】
以上のように、この発明の製造方法によると、一般式 ABO3(AはCa、Ba、Sr、PbおよびLaからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素であり、BはZrおよびTiからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素である)で表わされる化合物からなる誘電体薄膜を、段差を有する基板上に均一に形成することが可能となる。このため、従来用いられているSiO2、Si3N4等よりも誘電率が高い化合物、例えば、SrTiO3、BaxSr1-xTiO3またはPZTからなる誘電体薄膜を、トレンチ型またはスタック型セルのような複雑な立体構造を有する半導体装置の蓄積容量膜として利用することが可能となり、その結果、従来得ることができない高い集積度の半導体装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
この明細書において用いられる「反応律速条件」および「供給律速条件」という用語を説明するために、縦軸に薄膜の成長速度、横軸に薄膜の成長温度をとって成長速度の温度依存性を示したグラフ。
【図2】
SrTiO3膜を堆積する場合について、一定量のSr原料およびTi原料をCVDチャンバーに供給したときの、Sr堆積速度およびTi堆積速度の温度依存性を示すグラフ。
【図3】
PZT膜を堆積する場合について、一定量のPb原料、Ti原料およびZr原料をCVDチャンバーに供給したときの、Pb,TiおよびZrの堆積速度が温度依存性有することを示すグラフ。
【図4】
Sr(DPM)2の気相中における分解温度Tcが、酸化剤条件に依存して変化する状況を示すグラフ。
【図5】
反応律速条件でのCVDで高誘電体薄膜を形成するときに、薄膜の表面の平滑性が劣化する状況を示す説明図。
【図6】
チタン酸ストロンチウムの誘電率が組成依存性を有することを示すグラフ。
【図7】
原料ガス中のSr/(Sr+Ti)比が0.5になるように原料を供給しながら、CVDによってチタン酸ストロンチウムを成膜したときに、堆積膜中にのSr/(Sr+Ti)比が成膜温度に依存して変化することを示すグラフ。
【図8】
この発明の実施例において誘電体薄膜の形成に用いられる、化学気相成長装置の概略を示す図。
【図9】
この発明の実施例において、薄膜を形成する以前のSi基板の断面を示す図。
【図10】
この発明の実施例において、図9に断面を示すSi基板上に、反応律速条件でSrTiO3薄膜を形成した後のSi基板の断面を示す図。
【図11】
この発明の実施例において、図9に断面を示すSi基板上に、供給律速条件でSrTiO3薄膜を形成した後のSi基板の断面を示す図。
【図12】
この発明の実施例において、比較のために、図9に断面を示すSi基板上に、Ti原料としてTi(OC3H7)4を用い、供給律速条件でSrTiO3薄膜を形成した後のSi基板の断面を示す図。
【図13】
この発明の実施例で作製したBaxSr1-xTiO3薄膜をキャパシタ絶縁膜として構成された、トレンチキャパシタ構造を有するダイナミック・ランダム・アクセス・メモリセルの断面を示す図。
【図14】
この発明の実施例で作製したBaxSr1-xTiO3薄膜をキャパシタ絶縁膜として構成された、スタックトキャパシタ構造を有するダイナミック・ランダム・アクセス・メモリセルの断面を示す図。
【図15】
本発明の他の実施例を説明するために、DRAMセルの製造工程を順を追って示した断面図。
【図16】
本発明の他の実施例を説明するために、DRAMセルの製造工程を順を追って示した断面図。
【図17】
本発明の別の実施例を説明するために、DRAMセルの製造工程を順を追って示した断面図。
【図18】
この発明の更に別の実施例において、誘電体薄膜の形成に用いられる化学気相成長装置の概略を示す図。
【図19】
この発明の更に別の実施例において、誘電体薄膜の形成に用いられる化学気相成長装置の概略を示す図。
【符号の説明】
101…反応容器、102,601…Si基板、103…抵抗加熱ヒーター、104…熱電対、105,161,162…圧力検知器、106,151,152…圧力調整バルブ、107…真空ポンプ、108…ゲートバルブ、111,112…原料充填容器、113…アルゴンガス供給管、114…原料ガス供給管、115,118…排出管、116…酸素ガス供給管、121,122,123,124,125,126…質量流量制御器、131,132,133…バルブ、141,142,143…流路切換え器、171,172…原料加熱オーブン、173…配管加熱オーブン201,202,203,204,205,206…SrTiO3薄膜、302…素子分離酸化膜、303…ゲート酸化膜、304…多結晶シリコンゲート電極、305…ソースおよびドレイン、306…酸化膜、307…Pt下部電極、308…Ba0.45Sr0.55TiO3蓄積容量膜、609…Pt上部電極
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2003-09-25 
出願番号 特願平7-50104
審決分類 P 1 652・ - XA (H01L)
最終処分 決定却下  
前審関与審査官 藤原 敬士  
特許庁審判長 松本 邦夫
特許庁審判官 橋本 武
朽名 一夫
登録日 2001-01-26 
登録番号 特許第3152859号(P3152859)
権利者 株式会社東芝
発明の名称 半導体装置の製造方法  
代理人 竹村 壽  
代理人 河合 信明  
代理人 竹村 壽  

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