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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C08J
審判 全部申し立て 2項進歩性  C08J
管理番号 1089826
異議申立番号 異議2001-73165  
総通号数 50 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1995-11-07 
種別 異議の決定 
異議申立日 2001-11-22 
確定日 2003-10-29 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3171001号「スチレン系発泡性樹脂粒子及びそれを得るための懸濁重合法」の請求項1ないし3に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3171001号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 [1]手続の経緯
本件特許第3171001号の発明は、平成6年4月28日に出願され、平成13年3月23日にその特許の設定登録がなされたものであり、その後、積水化成品工業株式会社より本件請求項1〜3に対し特許異議の申立がなされ、取消理由通知がなされ、平成14年6月3日付けで特許異議意見書とともに訂正請求書が提出され、さらに審尋に対し、特許異議申立人から平成14年10月4日付けと平成15年4月16日付けで回答書が出されたものである。
[2]訂正の適否についての判断
[訂正の内容]
訂正請求書による訂正事項は次のとおりである。
訂正事項a:
特許請求の範囲における請求項2を削除する。
訂正事項b:
特許請求の範囲における請求項3を削除する。
訂正事項c:
段落【0006】の「また、本発明は、この形態の気泡を有する予備発泡粒子を形成し得るスチレン系発泡性樹脂粒子を得る方法の1つとしての、スチレン系単量体を重合開始剤及び懸濁剤の存在下で水性媒体中で懸濁重合させる方法において、前記単量体の重合転化率が30%以上の時点で、水性媒体に対する濃度が0.02〜5.0mol/l、になるように電解質を添加することを特徴とする懸濁重合法である。」とあるのを,「また、この形態の気泡を有する予備発泡粒子を形成し得るスチレン系発泡性樹脂粒子を得る方法の1つとして、スチレン系単量体を重合開始剤及び懸濁剤の存在下で水性媒体中で懸濁重合させる方法において、前記単量体の重合転化率が30%以上の時点で、水性媒体に対する濃度が0.02〜5.0mol/l、になるように電解質を添加することを特徴とする懸濁重合法がある。」と訂正する。
訂正事項d:
段落【0011】の「本発明の懸濁重合法」とあるのを,「上記の懸濁重合法」と訂正する。
訂正事項e:
段落【0012】の「本発明の懸濁重合法」とあるのを,「上記懸濁重合法」と訂正する。
訂正事項f:
段落【0013】の「本発明の懸濁重合法」とあるのを,「上記懸濁重合法」と訂正する。
訂正事項g:
段落【0015】の「本発明の懸濁重合法」とあるのを,「上記懸濁重合法」と訂正する。
訂正事項h:
段落【0018】の「本発明の懸濁重合法」とあるのを,「上記の懸濁重合法」と訂正する。
訂正事項i:
段落【0020】に,「本発明の懸濁重合法」とあるのを,「上記の懸濁重合法」と訂正する。
訂正事項j:
段落【0021】の「本発明の懸濁重合法」とあるのを,「上記の懸濁重合法」と訂正する。
訂正事項k:
「発明の名称」の「スチレン系発泡性樹脂粒子及びそれを得るための懸濁重合法」とあるのを,「スチレン系発泡性樹脂粒子」と訂正する。
[訂正の目的の適否、訂正の範囲の適否、拡張・変更の存否]
上記訂正事項aは,特許明細書における特許請求の範囲の請求項2を削除したものである。これは,特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
上記訂正事項bは,特許明細書における特許請求の範囲の請求項3を削除したものである。これは,特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
上記訂正事項c〜iは,上記訂正事項a,bに伴い,特許請求の範囲と発明の詳細な説明との整合性を図るための訂正であり明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
上記訂正事項kは,上記訂正事項a,bに伴い,特許請求の範囲に記載の発明と発明の名称との整合性を図るための訂正であり明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
そして、上記訂正事項a〜kは、明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成六年法律第百十六号。)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する特許法第126条第1項ただし書き、第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。
[3]特許異議の申立についての判断
(訂正後の本件特許発明)
訂正後の請求項1に係る本件特許発明(以下、「訂正後の本件発明」という。)は、訂正明細書の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。
「嵩密度20g/lに発泡させた時の予備発泡粒子の表面から半径方向0.2mm以内の表面部の気泡数が3〜20個/mmの範囲にあり、表面から半径方向1mm以内を除く半径方向内部の気泡数が10個/mm以上であり、且つ、表面部の気泡数が内部の気泡数より小さいことを特徴とするスチレン系発泡性樹脂粒子。」
(特許異議申立の理由の概要)
(1)本件訂正前の請求項1〜3に係る発明は、その出願前に日本国内において頒布された下記刊行物1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定に違反して特許されたものである。
(2)本件訂正前の請求項1〜3に係る発明は、その出願前に日本国内において頒布された下記刊行物1に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものである。

刊行物1:特開昭62-235301号公報
刊行物2:特許庁公報[周知・慣用技術集(発泡成形)]日本国特許庁発行、昭和57年8月3日、第1,16,21頁
(刊行物等の記載事項)
刊行物1:
「ビニル系単量体を水性媒体中で懸濁重合するに際し、水性媒体中に難溶性無機塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩および非イオン系界面活性剤を存在させて重合を開始し、重合転化率が55〜75%の間において水性媒体中で中性を示す水溶性金属塩を添加することを特徴とするビニル系重合体の製造方法。」(特許請求の範囲の請求項1)
「ビニル系単量体を懸濁重合することによって得られる重合体粒子、例えばポリスチレン粒子は、ブタン、ペンタンなどの炭化水素類を発泡剤として含浸させ、発泡ポリスチレンとして使用されることが多い。この発泡ポリスチレンの用途は、・・・梱包、魚箱用に、・・・建材用ボードに、それぞれ使用されている。」(第1頁左欄下から1行〜右欄第9行)
「本発明に適用されるビニル系単量体としては、スチレン、α-メチルスチレン、p-クロルスチレンなどのスチレン誘導体、・・・などが挙げられるが、好ましくはスチレン誘導体、特に好ましくはスチレンである。」(第2頁右上欄第10〜17行)
「かかるビニル系単量体は、水性媒体中で懸濁重合されるが、その際に使用されるラジカル開始剤としては・・・t-ブチルパーオキシベンゾエートなどの有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリルなどのアゾ化合物など、一般的なラジカル重合に使用される重合開始剤が用いられる。」(第2頁右上欄下から3行〜左下欄第4行)
「また、難溶性無機塩は、ビニル系重合体の懸濁重合に際して懸濁安定剤として働き、懸濁系を安定に保つ作用をなすものである。この難溶性無機塩としては、リン酸力ルシウム、塩基性リン酸カルシウム・・・などの水性媒体である水に難溶性の無機塩を挙げることができる。・・・リン酸カルシウムを使用する場合には単量体100部に対して0.05〜1.0重量部、好ましくは0.2〜0.5重量部の範囲である。」(第2頁左下欄第5〜18行)
「この水性媒体中で中性を示す水溶性金属塩は、・・・例えば硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウムなどの1価あるいは2価の金属塩を挙げることができる。この水溶性金属塩の添加量は、単量体100重量部に対して0.001〜5.0重量部、好ましくは0.01〜2.0重量部であり、例えば硫酸ナトリウムを使用する場合には単量体100重量部に対して0.001〜1.0重量部、好ましくは0.01〜0.5重量部の範囲で使用される。」(第3頁右下欄第4〜16行)
「実施例1 攪拌機付きの内容積5lの重合容器中に、イオン交換水1,800g(100重量部)、リン酸三カルシウム9.0g(0.5重量部)、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム・・・を純分換算で0.18g(0.01重量部)、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル・・・を0.036g(0.002重量部)、ベンゾイルパーオキサイド4.68g(0.26重量部)、t-ブチルパーベンゾエート1.8g(0.1重量部)およびスチレンモノマー1、800g(100重量部)を添加し、充分に分散させ、これを90℃に昇温した。重合転化率が約60〜65%に達した時点で、重合系に硫酸ナトリウム3.6g(0.2重量部)を10重量%水溶液として添加し、引き続き重合を行ない、約5時間後冷却して固化したポリスチレンの重合体粒子を得た。この重合体粒子の粒径分布を第1表に示す。」(第4頁左下欄下から6行〜右下欄13行)
「比較例2 ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテルを添加しない以外は、実施例1と同様にして懸濁重合を行い、ポリスチレンの重合体粒子を得た。この重合体粒子の粒径分布を第1表に示す。」(第5頁右上欄第2〜6行)
刊行物2:
「熱可塑性樹脂粒子を得るには、一般に(1)原料として スチレンモノマーを懸濁重合させながら発泡剤を含浸させる。(2)ポリスチレン粒子に発泡剤を含浸させる。」(第1頁)
「スチレン系樹脂粒子およびスチレン単量体を水性媒体中に分散させ、重合させることにより、スチレン系樹脂粒子を得、これに発泡剤を含浸させる。なお、発泡剤は、重合途中で添加することも可能である。」(第16頁)
「ポリスチレン・・・の水性懸濁液に、揮発性発泡剤を加えこれを前記粒子に含浸させて発泡性粒子を製造する際に、揮発性発泡剤としてプロパン、ブタン、ペンタン及びこれらの混合物が使用される。」(第21頁)
(判断)
刊行物1には、訂正後の本件発明の特定の気泡数の分布を特徴とするスチレン系発泡性樹脂粒子の発泡前のスチレン系樹脂の製造方法と共通するスチレン系樹脂の水性媒体中での懸濁重合方法の発明が記載されているが、訂正後の本件発明の必須の構成である特定の嵩密度に発泡させた時の特定の気泡数の分布を特徴とするスチレン系発泡性樹脂粒子については記載も示唆されていない。
そして、刊行物2には、スチレン樹脂の発泡によるスチレン系発泡性樹脂粒子の製造方法について記載され、この文献は本件発明の発泡方法自体に技術的特徴があるものではないことが示されている(この点は、特許異議申立人が提出した平成14年10月4日付けの回答書に添付された甲第3号証(特公平5-83575号公報)記載からも窺える)としても、訂正後の本件発明の必須の構成である特定の嵩密度に発泡させた時の特定の気泡数の分布を特徴とするスチレン系発泡性樹脂粒子については記載も示唆もされていない。
そして、訂正後の本件発明は、上記特定の構成により明細書記載のとおりの効果を奏するものである。
したがって、刊行物1に記載された発明であるとは認められず、また刊行物2の記載を参酌しても、刊行物1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものとも認められない。
尚、特許異議申立人は、刊行物1で製造されたスチレン樹脂を、刊行物2及び特許異議申立人が提出した平成14年10月4日付けの回答書に添付された甲第3号証(特公平5-83575号公報)の文献で周知の発泡方法で発泡させれば、訂正後の本件発明のものと同じものができているはずだから、訂正後の本件発明は、刊行物1に記載された発明と同一、ないしは当業者が容易想到である旨の主張をしている。
しかしながら、刊行物1には、特定の嵩密度に発泡させた時の特定の気泡数の分布を特徴とするスチレン系発泡性樹脂粒子については記載も示唆もないし、また、刊行物1の具体的な実施例では本件発明のスチレン樹脂を製造する際に用いる電解質濃度が異なる範囲のものであり、刊行物1のスチレン樹脂と本件発明の発泡体の原料となるスチレン樹脂が直ちに一致しているものとはいえないことから、特許異議申立人の主張は採用できない。
[4]結び
したがって、特許異議申立人の主張および挙証によっては、本件の特許を取り消すことはできない。
また、他に本件の特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
スチレン系発泡性樹脂粒子
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 嵩密度20g/lに発泡させた時の予備発泡粒子の表面から半径方向0.2mm以内の表面部の気泡数が3〜20個/mmの範囲にあり、表面から半径方向1mm以内を除く半径方向内部の気泡数が10個/mm以上であり、且つ、表面部の気泡数が内部の気泡数より小さいことを特徴とするスチレン系発泡性樹脂粒子。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、制御された気泡形態を有し、表面外観および力学物性の優れた発泡成形体を製造することができるスチレン系発泡性樹脂粒子に関するもので、本発明の粒子は、魚箱、通い箱、断熱材、包装緩衝材等に用いられる発泡成形体の製造に有用である。
【0002】
【従来の技術とその課題】スチレン系樹脂発泡体は比較的安価で、特殊な方法を用いずに低圧の蒸気等で発泡成形ができ、高い緩衝・断熱の効果が得られる有用な材料である。しかしながら、使用される用途によっては機械的強度が未だ充分でないものもあり、それらを向上させるために、スチレン系樹脂発泡体を形成するスチレン系予備発泡粒子の気泡径(セルサイズ)をセル核剤等によって小さくすると、成形体の表面が溶融し外観が損なわれるという問題が生じ、逆に表面外観を良くしようとしてセルサイズを大きくすれば充分な機械的強度が得られない等の問題が生じ、表面外観、および衝撃強度等の力学物性を共に満足する発泡成形体が得られていないのが現状である。
【0003】また、機械的強度をあまり落とさずに表面外観を良くする方法としては、特開昭63-69843号公報、特開昭63-69844号公報、特開平1-299843号公報等の様にスチレン系発泡性樹脂粒子を製造した後に、強制的に粒子表面近傍の発泡剤を逸散させる方法が提案されている。しかしながら、この様な処理には一旦発泡性樹脂粒子に含浸した発泡剤を除去するという工程が必要であり工業的に不利である。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、かかる課題を解決する為に鋭意研究を重ねた結果、予備発泡粒子の表面近傍の気泡サイズが大きく、表面近傍以外の内部の気泡サイズが小さい発泡性樹脂粒子を用いると発泡成形体の表面が美麗な且つ充分な機械的強度が得られることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0005】即ち、本発明は、嵩密度20g/lに発泡させた時の予備発泡粒子の表面から半径方向0.2mm以内の表面部の気泡(セル)数が3〜20個/mmの範囲にあり、表面から半径方向1mm以内を除く半径方向内部の気泡(セル)数が10個/mm以上であり、且つ、表面部の気泡数が内部の気泡数より小さいことを特徴とするスチレン系発泡性樹脂粒子である。
【0006】また、この形態の気泡を有する予備発泡粒子を形成し得るスチレン系発泡性樹脂粒子を得る方法の1つとして、スチレン系単量体を重合開始剤及び懸濁剤の存在下で水性媒体中で懸濁重合させる方法において、前記単量体の重合転化率が30%以上の時点で、水性媒体に対する濃度が0.02〜5.0mol/l、になるように電界質を添加することを特徴とする懸濁重合法がある。
【0007】本発明のスチレン系発泡性樹脂粒子は、嵩密度20g/lに発泡させた時の予備発泡粒子の表面から半径方向0.2mm以内の表面部の気泡(セル)数が3〜20個/mmの範囲にあり、表面から半径方向1mm以内を除く半径方向内部の気泡(セル)数が10個/mm以上、好ましくは50個/mm以下であり、且つ、表面部の気泡数が内部の気泡数より小さいものである。
【0008】表面部の気泡数が3個/mm未満では、表面気泡径が大きすぎて、成形体の見栄えが悪くなる傾向があり、また20個/mmを越えると成形体の表面が溶融し、外観が損なわれるという問題がある。一方、内部の気泡数が10個/mm未満では、衝撃強度等の機械的強度が充分得られないという問題が生じる。
【0009】表面部の気泡数が内部の気泡数より大きくなると、上記範囲に入っていた場合でも、同程度の強度を持つものと比較して、表面外観が劣るものとなり、強度と表面外観の両立が出来ないという問題が生じる。なお、気泡数の測定は、嵩密度20g/lとした予備発泡粒子をカミソリで真半分に切り、光学顕微鏡で半径方向の気泡の数(樹脂部の壁と壁の間で区切られた部分を1単位とした)を計測し、これを1mm当りの数に換算した。
【0010】上記した本発明のスチレン系発泡性樹脂粒子を得る一つの方法としては、スチレン系単量体を重合開始剤及び懸濁剤の存在下で水性媒体中に分散させた後に重合反応を開始し、重合転化率が30%から100%の間に、該水性媒体に対する濃度が0.02〜5.0mol/l、になるように電解質を添加して懸濁重合を行い、懸濁重合中に発泡剤を添加するか、又は重合後に発泡剤を含浸させる方法が挙げられる。
【0011】上記の懸濁重合法において使用されるスチレン系単量体としては、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、p-メチルスチレン、p-エチルスチレン、スチレンスルホン酸ナトリウム、クロロスチレン等が挙げられる。また、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸-2-エチルヘキシル等のアクリル酸系ビニル化合物;メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸-2-エチルヘキシル等のメタクリル酸系ビニル化合物;アクリロニトリル;ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート等の架橋性二官能ビニル化合物;その他、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート等の各種のビニル系化合物を併用してもよい。
【0012】また、上記懸濁重合法において使用される重合開始剤としては、たとえばアゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系化合物、クメンヒドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、ベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ラウロイルパーオキサイド等の単量体に可溶な開始剤が挙げられる。重合開始剤の使用量は、通常、仕込み単量体の全重量100重量部に対して0.01〜3重量部が好ましい。
【0013】上記懸濁重合法において使用される懸濁剤としては、一般に市販されているものが利用でき、例えばポリビニルアルコール、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン等の水溶性高分子、ピロリン酸マグネシウム、第3燐酸カルシウム等の難溶性無機塩等を用いることができ、これらは界面活性剤を併用してもよい。なお、難溶性無機塩を用いる場合は、α-オレフィンスルホン酸ソーダ、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ等のアニオン性界面活性剤を併用するのが好ましい。
【0014】懸濁剤の使用量は、仕込み単量体の全重量100重量部に対し0.01〜5.0重量部が好ましく、前記した難溶性無機塩とアニオン性界面活性剤との併用系では、それぞれ仕込み単量体の全重量100重量部に対し難溶性無機塩を0.05〜3.0重量部、アニオン性界面活性剤を0.0001〜0.5重量部が好ましい。
【0015】上記懸濁重合法において使用される電解質は、水溶液中でイオン解離する物質であればよく、例えば、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化アンモニウム、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カリウム、硫酸アルミニウム、硫酸アンモニウム、硝酸ナトリウム、硝酸マグネシウム、硝酸カリウム、硝酸カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸アンモニウム等の無機塩類、或は酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、ベヘミン酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、琥珀酸二ナトリウム等の水に可溶なカルボン酸のアルカリ金属塩等が挙げられる。特に塩化ナトリウムは、少量の添加重量で本発明のスチレン系発泡性樹脂粒子を容易に得ることができ、また工業的に安価に大量に入手できるので好ましい。
【0016】また、本電解質の添加は、重合転化率が30%以上の時点で行うことが肝要である。重合転化率が30%未満で添加した場合は、本発明の気泡形態のスチレン系発泡性樹脂粒子が得られないばかりでなく、最終的に得られる発泡性樹脂粒子の粒子径が粗大化したり、変形を起こすことがあり、条件によっては重合中の懸濁状態が不安定になり塊化する場合がある。尚、本電解質の添加は、好ましくは重合転化率が50〜100%、更に好ましくは75〜100%の間で行う。
【0017】なお、ここでいう重合転化率は、比重液法、赤外吸光分析法、ガスクロマトグラフィー等の方法で知ることができる。また、水性媒体中に添加する電解質の量は、該水性媒体に対し、0.02〜5.0mol/l、好ましくは0.03〜1.0mol/lである。0.02mol/l未満の量では充分な気泡形態を有する発泡性樹脂粒子が得られない。また、5.0mol/lより多く添加しても、製造コストを上昇させるだけであり、使用する懸濁剤との組み合わせによっては、重合中の懸濁状態が不安定化し塊化する場合がある。
【0018】これら電解質は粉体若しくは水溶液として添加されるが、その添加方法は、重合転化率が30%以上の時点であれば、1回若しくは数回に分割してもよい。上記の懸濁重合法は、その懸濁重合の途中又は懸濁重合終了後に発泡剤を添加して重合体粒子に発泡剤を含有せしめた発泡性重合体粒子の製造方法に適用することができる。
【0019】その発泡剤としては、たとえばプロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、ヘキサン等の脂肪族炭化水素;シクロブタン、シクロペンタン等の脂環族炭化水素;塩化メチル、ジクロルフルオロメタン等のハロゲン化炭化水素等の物理発泡剤;さらには炭酸ガス、窒素、アンモニア等の無機ガスが挙げられる。これらの発泡剤は1種類を単独で、又は2種以上を併用して使用できる。
【0020】発泡剤は、通常、生成重合体粒子中の発泡剤含有量が1〜20重量%になる程度の量が供給される。また、スチレン系単量体には、気泡形成剤としてのエチレンビスステアリルアミド、メチレンビスステアリルアミド、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂等を添加しておくことができる。上記の懸濁重合法においては、必要に応じて、その重合反応系に分子量調整剤としてドデシルメルカプタン等のアルキルメルカプタン類、α-メチルスチレンダイマー等の連鎖移動剤を添加することができる。その連鎖移動剤の使用量は、重合させる全単量体100重量部に対して、通常、0.01〜3重量部が好ましい。
【0021】単量体の水性媒体への添加方法は、予め一括に仕込んでもよいし、徐々に添加しながら行っても良い。(特公昭46-2987号、特公昭49-2994号参照)
また、上記の懸濁重合法においては、必要に応じて、重合反応系に生成重合体の可塑剤、たとえばジオクチルフタレート等のフタル酸エステル、その他脂肪酸エステルやトルエン等の有機化合物等を添加することができる。
【0022】さらに、難燃剤、難燃助剤、帯電防止剤、導電化剤、セル核剤、粒度分布調整剤等の一般的に発泡性樹脂粒子の製造に使用されている添加剤を適宜添加したり、ブタジエンゴム、スチレン・ブタジエンゴム等のゴム成分を混合することもできる。また、得られた発泡性樹脂粒子に熱処理を施して、更にそれら粒子を用いて成形された成形体の表面外観を向上させてもよい。本発明の発泡性樹脂粒子の場合、従来の粒子に比べて、充分な表面外観及び強度が両立する成形体を得ることができる。
【0023】
【実施例】以下に、実施例及び比較例をあげて本発明をさらに詳述するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
実施例1撹拌器付き50リットルオートクレーブに、イオン交換水20リットル、第3燐酸カルシウム(太平化学社製)50g、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.6g、ポリエチレンワックス(ペトロライト社製、PW-1000)3.6gを投入した。
【0024】次いで撹拌下に、t-ブチルパーオキシ2-エチルヘキサノエート45g、1,1ビス(t-ブチルパーオキシ)3,3,5-トリメチルシクロヘキサン27g、可塑化剤としてシクロヘキサン270gをスチレンモノマー18kgに溶解させたものを投入した。撹拌下で30分間室温のまま放置した後、1時間かけて90℃まで昇温した。次いで90℃から100℃まで5時間半かけて昇温させ、その途中の4時間目にオートクレーブから懸濁液をサンプリングし、重合転化率を調べたところ、50%であった。ここで25%の塩化ナトリウム水溶液700g(イオン交換水に対する濃度は0.15mol/lに相当)を5分間かけてオートクレーブ内に投入した後、ブタン1.7kgをオートクレーブ内に圧入した。更に100℃から110℃まで1時間半かけて昇温し、2時間保持した。
【0025】室温まで冷却した後、遠心分離器にて発泡性樹脂粒子を取り出した。流動乾燥装置で表面付着水分を除去した後、予備発泡機(ダイセン(株)製DYH-850)で、常法により嵩密度20g/lに発泡させた。こうして得られた予備発泡粒子を、1日室温で放置(熟成)した後、これを28×35×15cmの大きさの箱型の金型内に充填し0.6kg/cm2・G及び1.0kg/cm2・Gの蒸気吹き込み圧でそれぞれ20秒間加熱して成形し、発泡成形体を得た。
【0026】上記のようにして得られる発泡性樹脂粒子中の内部水分、予備発泡粒子の気泡数及び発泡成形体の表面外観及び落球衝撃強度高さを下記の方法で評価した。
評価方法内部水分;製造後24時間以内の発泡性樹脂粒子を用いてカールフイッシャー法にて測定。
【0027】気泡数;嵩密度20g/lとした予備発泡粒子をカミソリで真半分に切り、光学顕微鏡で予備発泡粒子の表面から半径方向0.2mm以内の表面部の気泡数及び表面から半径方向1mm以内を除く半径方向内部の気泡数(樹脂部の壁と壁の間で区切られた部分を1単位とした)を計測しこれを1mm当りの数に換算した。
【0028】表面外観;発泡成形体の表面外観を目視により下記基準にて評価した。
良;溶融した粒子はなく、粒子間の間隙もなく、見栄えがよい。
やや不良;溶融した粒子が表面にあるか又は表面気泡径が大きすぎて見栄えが良くない。
不良;溶融した粒子があり、粒子間に間隙がある。
【0029】落球衝撃強度高さ;発泡成形体に重量255gの剛球を垂直に落下させ発泡成形体の50%が破壊したところの落下高さとする。(JIS K7211に準拠)
【0030】実施例225%の塩化ナトリウム水溶液700gの添加時期をブタンの圧入後の90℃到達から5時間半後(この時の重合転化率を調べたところ、75%であった。)とした以外は、実施例1と同様に行なった。
【0031】実施例325%の塩化ナトリウム水溶液700gの添加時期を110℃で2時間保持した後(この時の重合転化率を調べたところ、99%であった。)とした以外は、実施例1と同様に行なった。
【0032】実施例425%の塩化ナトリウム水溶液700gに代えて、硫酸ナトリウムの20%水溶液2300g(イオン交換水に対する濃度は0.15mol/lに相当)を用いた以外は、実施例1と同様に行なった。
【0033】実施例525%の塩化ナトリウム水溶液700gに代えて、酢酸ナトリウムの20%水溶液2200g(イオン交換水に対する濃度は0.15mol/lに相当)とした以外は、実施例1と同様に行なった。
【0034】実施例625%の塩化ナトリウム水溶液700gに代えて、20%の琥珀酸ナトリウム水溶液4800g(イオン交換水に対する濃度は0.15mol/lに相当)とした以外は、実施例1と同様に行なった。
【0035】実施例725%の塩化ナトリウム水溶液の添加量を3500g(イオン交換水に対する濃度は0.66mol/lに相当)とし、その添加時期を90℃到達から5時間半後(この時の重合転化率を調べたところ、75%であった。)とした以外は、実施例1と同様に行なった。
【0036】比較例125%の塩化ナトリウム水溶液を添加しなかった他は、実施例1と同様に行なった。
【0037】比較例225%の塩化ナトリウム水溶液700gの添加時期を90℃に昇温する前(この時の重合転化率は0%であった。)とした以外は、実施例1と同様に行なった。
【0038】比較例325%の塩化ナトリウム水溶液の添加量を30g(イオン交換水に対する濃度は0.006mol/lに相当)とした以外は、実施例1と同様に行なった。
【0039】比較例4塩化ナトリウム8Kg(イオン交換水に対する濃度は6.8mol/lに相当)とした以外は、実施例1と同様に行なった。
【0040】以上の各実施例及び各比較例における電解質の種類及び量、並らびに、得られた発泡性樹脂粒子の平均粒径、内部水分量、予備発泡粒子の気泡数、発泡成形体の表面外観及び落球強度高さは表1に示す通りであった。
【0041】
【表1】

【0042】又、実施例2、実施例7及び比較例1で得られた予備発泡粒子の断面を示す粒子構造の電子顕微鏡写真を図1〜図3に示す。
【0043】
【発明の効果】本発明の発泡性樹脂粒子を用いて成形された発泡成形体は表面が美麗で且つ充分な機械的強度を有するものである。
図の説明
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例2で得られた予備発泡粒子の断面を示す粒子構造の電子顕微鏡写真である。(×19)
【図2】実施例7で得られた予備発泡粒子の断面を示す粒子構造の電子顕微鏡写真である。(×19)
【図3】比較例1で得られた予備発泡粒子の断面を示す粒子構造の電子顕微鏡写真である。(×19)
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2003-10-10 
出願番号 特願平6-91559
審決分類 P 1 651・ 113- YA (C08J)
P 1 651・ 121- YA (C08J)
最終処分 維持  
前審関与審査官 内田 靖恵  
特許庁審判長 井出 隆一
特許庁審判官 佐野 整博
船岡 嘉彦
登録日 2001-03-23 
登録番号 特許第3171001号(P3171001)
権利者 株式会社ジェイエスピー
発明の名称 スチレン系発泡性樹脂粒子  
代理人 高橋 祥泰  
代理人 高橋 祥泰  
代理人 岩倉 民芳  
代理人 山本 拓也  
代理人 岩倉 民芳  
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