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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  D21F
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  D21F
管理番号 1089919
異議申立番号 異議2002-72086  
総通号数 50 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1996-10-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2002-08-23 
確定日 2004-01-13 
異議申立件数
事件の表示 特許第3261005号「シームフェルト誘導帯」の請求項1ないし3に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3261005号の請求項1ないし3に係る特許を維持する。 
理由 1.本件発明
本件特許第3261005号(平成7年4月13日出願、平成13年12月14日設定登録。)の請求項1ないし3に係る発明は、それぞれ本件請求項1ないし3に記載されたとおりのものと認める。

2.特許異議申立ての理由の概要
特許異議申立人シキボウ株式会社は、証拠方法として甲第1ないし6号証を提示し、本件請求項1ないし3に係る発明は、甲第1号証に記載されたに等しい発明であり、さらに、甲各号証に記載された発明に基づいて当業者が容易になし得た発明であるから、その特許は、特許法第29条第1項及び第2項の規定に違反してなされたものであり、よって、本件請求項1ないし3に係る特許は取り消されるべきものである旨主張している。

3.特許異議申立人の提示した甲各号証及びその記載事項
(1)甲第1号証 実公昭57-55356号公報
(2)甲第2号証 実願昭51-158562号(実開昭53-78203号)のマイクロフィルム
(3)甲第3号証 特開昭52-144474号公報
(4)甲第4号証 実願昭63-58057号(実開平1-161279号)のマイクロフィルム
(5)甲第5号証 実願平2-44254号(実開平4-4098号)のマイクロフィルム
(6)甲第6号証 実願昭63-85492号(実開平2-10499号)のマイクロフィルム

甲第1号証には、以下の(ア)〜(エ)の記載(これらを「甲第1号証の記載事項」という。)が認められる。
(ア)「織物の端部全幅に亘り複数本の結括用紐柔を取り付け、織物他端部の内側一部に織物の長さ方向の糸のみの簾状並列部分を幅方向に形成し・・・・誘導布。」(第1頁実用新案登録請求の範囲の欄)、
(イ)「布本体1はカンバスと同一幅」(第2頁第3欄第1行)、
(ウ)「なお、・・・特に継手部を保護する必要のある場合は、第4図に示すように誘導布aは端部に紐条3を設けた分片布1aと端部内側に糸並列部分2を形成した分片布1bとの2枚の分片布で構成し、・・・端部布片1a’で糸並列部分2を覆うようにしてその分片布端部に縫着する。」(第2頁第3欄第20〜29行)、
(エ)第4図の記載として、「分片布1aの一端部には、紐条3を通すための複数の穴が設けられており、その他端部は端部布片(1a’)となっていて分片布(1b)端部に縫着(点線部)されるとともに分片布(1b)の糸並列部分2を覆う構造となって開放されている」こと。

甲第2号証には、「第2図のイ及びロに示すように、カンバス(3)の一端部に、先端に丈夫な連結ひも(4)を取付けた導布(5)を、該一端部より突出して重合して取外し容易に縫着し、該一端部のループ(1)に挿入した保護芯線(6)の数個所を該導布(5)に係止し、・・・特徴とするものである。」(明細書第4頁第9〜17行)と記載されている。

甲第3号証には、「他方の布22aは袋又は鎖縫32で、・・・案内フラップ34にはその案内端部にその全体の周辺を横切って延在する一連の離間した孔42を設けてある。・・・フラップ34は、操作中それがループの下に横たわり且つループ及びクリップ縫目の縫いに保護を与えるよう継目の前方走行側に取り付けられる。」(第5頁右上欄第6〜16行)と記載されている。

甲第4号証には、「本考案は、土木等の用途に使用されるターポリン等のシートを連結するための・・・連結用ベルトに関するものである。」(明細書第1頁第12〜16行)、「第1図において・・・連結用ベルト1は、その横断面がY字状になるよう・・・一体に織成されている。そして一の織成片2には、穴4が長さ方向に亘って所定間隔毎に設けられている。」(明細書第4頁第1〜6行)と記載されている。

甲第5号証には、「本考案による誘導布(10)第1図〜第3図に示しているように、・・・一方の端部の幅方向に・・・簾状部からなるカンバス(1)との接合部(11)が設けられ、他方の端部側に織物端を折り返しミシン掛け(12)をして棒状体(13)が挿入可能な袋部(14)が形成され、・・・ロープ(8)が挿通可能な分断切り込み(15)が設けられてなる。」(明細書第5頁第9〜17行)と記載されている。

甲第6号証には、「カンバス(1)の端部に接合用のループ(2)を設けた継手部の裏面に、幅8cmの綿帆布に継手引寄せ用の紐(3)を取付けた接合補助布(4)を重ね合せ、・・・ミシン糸(5)により重ね合せ部を5cm間隔に貫通させて形成された」(明細書第5頁第18行〜同第6頁第4行)と記載されている。


4.当審の判断

(1)本件請求項1に係る発明(「本件発明1」という。)について
本件発明1と甲第1号証の記載事項に係る発明(「甲第1号証発明」という。)とを対比する。

甲第1号証の記載事項(ウ)における分片布1a及び分片布1bがそれぞれ本件発明1の上下の布に対応し、甲第1号証の記載事項(イ)におけるカンバスは本件発明1のシームフェルトに対応し、甲第1号証の記載事項(ウ)における紐条3は本件発明1の連結紐に対応し、甲第1号証の記載事項(ウ)における分片布1aの端部布片1a’及び分片布1bは、甲第1号証の記載事項(エ)を参酌するに、両者が縫着された分片布1bにおける一縁側に対して他縁側が開放されていて、カンバスの先端部を上下より覆って仮止めしうる構造であると認められるから、
本件発明1と甲第1号証発明とは、「少なくともシームフェルトと同幅で、シームフェルトの先端部を覆う長さを有する上下布を重ね、該上下布を接続し、シームフェルトを抄紙機に引き入れるときの牽引体とを連結するための連結紐を通すための穴を設けるとともに、前記上下布の他縁側をシームフェルトの先端部を上下より覆って仮止めできるように開放させたシームフェルト誘導帯」である点で一致し、
本件発明1では、「上下布の一縁側にて接続」している点(「相違点1」という。)、
本件発明1では、「上下布接続位置の内側に沿って」連結紐を通す穴を設ける点(「相違点2」という。)、
で相違している。

まず、相違点1について検討する。

甲第1号証の記載事項(ウ)によると、甲第1号証発明において、上布(分片布1a)の端部布片1a’で糸並列部分を覆うように下布(分片布1b)端部に縫着する目的は、端部布片1a’により分片布1bの糸並列部分2に接合されるカンバスの繊維糸ループ継手部を保護するためであるから、上布における下布との縫着接続位置は、その糸並列部分近傍とすることが最も自然な選択であると考えられ、このことは、甲第1号証の記載事項(エ)において、上下布が開放されている側の端部にある糸並列部分の近傍を縫着位置としていることからも推認される。
そして、甲第1号証発明において本件発明1のように上下布の一縁側を接続(縫着)位置とすることは、わざわざ糸並列部分から離れた位置を選択することであって、接続位置から糸並列部分までが長くなることでカンバスの繊維糸ループ継手部の保護目的においては無駄に布を使用することになるものであるから、当業者であっても容易に想到し得ないことである。

甲第2ないし6号証の記載事項において、相違点1に関し、甲第1号証発明における縫着位置を上下布の一縁側とすることについて示唆するものは見当たらない。

他方、本件発明1は、上下布を一縁側で接続し、さらに上下布接続位置の内側に沿って連結紐を通す穴を設けるという前記相違点に係る構成を備えることにより、明細書記載の効果を奏するものである。

よって、相違点2についてさらに検討するまでもなく、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明であるとはいえず、また、甲第1ないし6号証に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(2)本件請求項2,3に係る発明について
本件請求項2及び3に係る発明の構成は、本件発明1を技術的に限定するものであるから、本件発明1が、甲第1号証に記載された発明であるとはいえず、また、甲第1ないし6号証に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない以上、本件請求項2及び3に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であるとはいえず、また、甲第1ないし6号証に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。


5.むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び証拠によっては本件請求項1ないし3に係る発明についての特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1ないし3に係る発明についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2003-12-12 
出願番号 特願平7-113576
審決分類 P 1 651・ 121- Y (D21F)
P 1 651・ 113- Y (D21F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 澤村 茂実  
特許庁審判長 鈴木 由紀夫
特許庁審判官 石井 克彦
菊地 則義
登録日 2001-12-14 
登録番号 特許第3261005号(P3261005)
権利者 市川毛織株式会社
発明の名称 シームフェルト誘導帯  
代理人 白石 吉之  
代理人 山根 広昭  
代理人 城村 邦彦  
代理人 江原 省吾  
代理人 熊野 剛  
代理人 田中 秀佳  

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