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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G01R |
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管理番号 | 1090958 |
審判番号 | 不服2001-6223 |
総通号数 | 51 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2000-07-04 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2001-04-20 |
確定日 | 2004-01-21 |
事件の表示 | 平成10年特許願第363081号「タ―ンテ―ブル装置」拒絶査定に対する審判事件[平成12年 7月 4日出願公開、特開2000-187052]について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成10年12月21日に特許出願されたものであり、平成13年3月7日付けで拒絶査定(同月21日発送)がされ、これに対して同年4月20日に審判が請求され、当審において平成15年6月30日付けで拒絶の理由を通知(同年7月8日発送)したところ、その指定期間内である同年9月3日に手続補正書及び意見書が提出されたものである。 2.本願請求項に係る発明 本願請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成11年12月21日提出の手続補正書、平成13年5月15日提出の手続補正書(平成13年8月1日付け手続補正指令書(方式)にともない平成13年8月8日提出の手続補正書により補正されたもの)、及び、平成15年9月3日提出の手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「床面に埋設され、試験対象物が載置され回動する支持台と、 前記支持台とこれに隣接する床面との間に生じる隙間の下方に配置され、電磁波遮蔽機能を有し、前記隙間を埋める目隠し板と、 前記目隠し板の下に取り付けられたアースローラー取り付け台と、 前記アースローラー取り付け台によって固定され、前記支持台に電気的に接続されるアースローラーとを備え、 前記目隠し板は、前記床面の下に取り付けられ、 前記アースローラー取り付け台は、前記床面の下方において、前記目隠し板の下に取り付けられ、 前記アースローラーと前記目隠し板とによって、前記支持台と床面とが電気的に接続されていることを特徴とするターンテーブル装置。」 3.当審で通知した拒絶の理由の要点 本願発明は、本願の出願日前に頒布された以下の刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 刊行物1 実願平3-47616号(実開平5-2077号) のCD-ROM 刊行物2 実願昭63-158542号(実開平2-79468号) のマイクロフィルム 4.引用刊行物に記載された発明 4-1.刊行物1 当審の拒絶理由通知書で引用した刊行物1乃至2のうち、刊行物1には以下の記載がある。 (A)「金属板が敷き詰られたグランドプレーン11にターンテーブル収容凹部12が形成され、収容凹部12は周壁面が円筒面とされた円形凹部であり、その周壁も金属で構成されている。収容凹部12内に金属製の回転板13がその凹部12の開口面をほぼ塞ぐように回転自在に施され、回転板13の上面はグランドプレーン11とほぼ同一面に位置されている。収容凹部12の底面に回転駆動部14が配され、回転駆動部14の回転軸上に回転板13が取外し自在に取付けれられ、回転板13を回転することができるようにされている。図に示していないが回転板13はグランドプレーン11と同電位に保持されている。」(段落番号【0002】) (B)「回転板13上に被測定電子機器15が乗せられる。」(段落番号【0003】) (C)「図1にこの考案の実施例を示し、図2と対応する部分に同一符号を付けてある。この考案においては回転板13の下側において、隙間19を塞ぐシールド板(例えば金属板)21が収容凹部12の内周壁面に取付けられる。シールド板21は回転板13と接触しないようにされる。つまりシールド板21はドーナツ板状をしており、・・・シールド板21は回転板13に対し接触しない程度になるべく接近させた方がよく、例えば2cm程度の間隔が設けられる。」(段落番号【0006】) (D)「このように構成されているから、回転板13の周面と収容凹部12との隙間19はシールド板21により電気的に塞がれ、グランドプレーン11と回転板13の上面とが連続した導電性平面として作用し、被測定電子機器15から放射され、隙間19に入射される電磁波が収容凹部12内に吸収されることなく、ほぼ100%反射され、よって正しい測定を行うことができる。」(段落番号【0007】) また、摘記事項(C)、(D)の記載、及び、図1からみて、「グランドプレーン11」は「回転板13」に「隣接する」ものであること、「隙間19」は両者の「間に生じる」ものであること、及び、「シールド板21」は「隙間19」の「下方に配置され」るものであることが、理解できる。 したがって、刊行物1には、以下の発明が記載されている。 「グランドプレーン11に収容され被測定電子機器15が乗せられ回転する回転板13と、 前記回転板13とこれに隣接するグランドプレーン11との間に生じる隙間19の下方に配置され、前記隙間を塞ぐシールド板21と、 前記回転板13とグランドプレーン11とを同電位に保持する手段とを備え、 前記シールド板21は、収納凹部12の内周壁面に取り付けられている、ターンテーブル」 4-2.刊行物2 刊行物2には、以下の記載がある。 (a)「電磁波を発生する被測定物を回転テーブルに載置することにより該回転テーブルと共に該被測定物を回転させ、該被測定物からの前記電磁波を測定可能にする電磁波測定用ターンテーブル」(実用新案登録請求の範囲第1乃至第4行) (b)「導電性ブラシ30は、複数の導電性の線材を束ねてブラシ固定部材32に突設されており、回転テーブル22との摩擦抵抗を軽減するために比較的柔らかく形成されている。 そして、この導電ブラシ30は、ブラシ固定部材32が、床1にねじ止めされた板状のブラケット31にねじ止めされることにより、回転テーブル22の裏面端部に位置して固定されている。 ブラケット31は、導電材を網状に形成した網板34を介してブラケット押え33により床1にねじ止めされており、この網板34により床1との電気的接触を良好にして固定されている。」(第8頁第6乃至17行) (c)「導電ブラシ30は、回転テーブル22に常に接触し、これにより回転テーブル22は、これら導電ブラシ30及びブラケット31により床1との導通が可能となり、接地しつつ回転可能になる。・・・測定条件を安定させ、正確な測定が行えるようになっている。」(第9頁第11乃至20行) したがって、刊行物2には、以下の発明が記載されている。 「ブラケット31によって固定され、回転テーブル22に電気的に接続される導電ブラシ30とを備え、前記ブラケット31は、床1の下方において、床1に取り付けられ、 前記導電ブラシ30と前記ブラケット31とによって前記回転テーブル22と床1とが電気的に接続されている電磁波測定用ターンテーブル装置。」 5.対比 本願発明と、刊行物1に記載された発明とを対比する。 第1に、刊行物1に記載された発明の「グランドプレーン11」、「被測定電子機器15」、「回転板13」は、それぞれ、本願発明の「床面」、「試験対象物」、「支持台」に相当する。 第2に、刊行物1に記載された発明の「収容され」、「乗せられ」、「回転する」、「塞ぐ」は、それぞれ、本願発明の「埋設され」、「載置され」、「回動する」、「埋める」と、技術的にみて同じ事項を表現している。 第3に、摘記事項(C)、(D)の記載、及び、当業者における技術常識を併せ考えれば、刊行物1に記載された発明の「シールド板21」は、「電磁波遮蔽機能を有」し、また、この機能からみて本願発明の「目隠し板」に相当する物である。 第4に、刊行物1全体の記載、特に、摘記事項(A)の記載からみて、刊行物1に記載された発明の「ターンテーブル」は、「ターンテーブル装置」と称しうる物である。 第5に、本願発明の「アースローラー取り付け台」及び「アースローラー」も、刊行物1に記載された発明における「回転板13とグランドプレーン11とを同電位に保持する手段」も共に、「支持台と床面とを同電位に保持する手段」である。 したがって、本願発明と刊行物1に記載された発明とは、「床面に埋設され、試験対象物が載置され回動する支持台と、前記支持台とこれに隣接する床面との間に生じる隙間の下方に配置され、電磁波遮蔽機能を有し、前記隙間を埋める目隠し板と、支持台と床面とを同電位に保持する手段とを備えたターンテーブル装置。」の点で一致し、他方、以下の点において相違する。 (相違点1) 本願発明の目隠し板は、「床面の下に取り付けられ」るものであるのに対して、刊行物1に記載された発明のそれは、収納凹部12の内周壁面に取り付けられている点。 (相違点2) 本願発明は、「アースローラー」「アースローラー取り付け台」を有し、当該部材と他の部材とは、以下(ア)(イ)(ウ)のような関係にあるのに対して、刊行物1に記載された発明は、このような部材を有するか否か、不明である。 (ア)「アースローラー取り付け台」は、床面の下方において、目隠し板の下に取り付けられる。 (イ)「アースローラー」はアースローラー取り付け台によって固定され、前記支持台に電気的に接続される。 (ウ)アースローラーと前記目隠し板とによって、前記支持台と床面とが電気的に接続される。 また、本願発明と、刊行物2に記載された発明とを対比すると、刊行物2に記載された発明における「回転テーブル22」、「床1」、「電磁波測定用ターンテーブル装置」は、それぞれ、本願発明の「支持台」、「床面」、「ターンテーブル装置」に相当する。 また、接地手段として、導電ブラシとアースローラーは共に広く用いられており(例えば、特開昭64-54465号公報、特開平7-325119号公報参照)、互いに置き換え可能な手段と考えられることから、両者をあえて相違点として採り上げるほどのものではないことを考慮すると、刊行物2に記載された発明における「ブラケット31」、「導電ブラシ30」は、それぞれ、本願発明の、「アースローラー取付台」、「アースローラー」に相当すると言える。 そうすると、結局刊行物2には、次の発明が記載されていることになる。 「アースローラー取付台によって固定され、支持台に電気的に接続されるアースローラーとを備え、前記アースローラー取付台は、床面の下方において床面に取り付けられ、 前記アースローラーと前記アースローラー取付台とによって前記支持台と床面とが電気的に接続されているターンテーブル装置。」 6.当審の判断 6-1.相違点1について 電子機器の発する電磁波測定用ターンテーブル装置において、床の下方に空洞が形成されている構成は、例えば上記刊行物2に見られるように周知であるから、刊行物1に記載された発明において、床の下方に空洞が形成されている構成を採用することは当業者ならば容易にできることである。 そして、そのような構成を有するターンテーブル装置において、隙間から漏れる電磁波を防止するべく目隠し板を床面の下方に取り付けることは、自然な発想であり、当業者が実施の際、容易になし得る設計的事項の域を超えるものではない。 6-2.相違点2について 刊行物1に記載された発明と刊行物2に記載された発明が共に電子機器から放射される不要電磁波の測定に用いられるターンテーブル装置であるという産業上の利用分野の共通性及び共通の技術課題を有するものであることを鑑みると、刊行物2に記載された発明を刊行物1に記載された発明に適用すること自体は、当業者が容易に想到し得ることである。 その際、アースローラー取付台、及び目隠し板を共に床面に取り付けて接地する必要が生じるが、接地を一個所でまとめて行うことは、接地技術において広く採用されている接地形態であることを考慮すると、アースローラー取付台及び目隠し板を床面の下方において一個所にまとめて取り付けて床面に接地することは、当業者が容易に採用し得る構成というべきものである。 また、アースローラー取付台及び目隠し板を床面にまとめて取り付ける際、アースローラー取付台が目隠し板の下に取り付けられるようにすることは、目隠し板が電磁波遮蔽機能を果たすべく支持台と床面との間に生じる隙間を埋めるように設けられる部材であることを考えると、当業者が普通に採用する配置構成と言い得るものである。 そしてその結果、アースローラーと目隠し板によって、支持台と床面とが電気的に接続されることは、アースローラーを支持するアースローラー取付台と目隠し板が共に導電性部材であることから、当然に備えるはずの構成に過ぎない。 6-4.結論 そして、本願発明の作用効果は、刊行物1及び刊行物2に記載された発明、及び、上記周知技術を組み合わせた結果として当然に予想される効果に過ぎず、また、相違点1乃至2が組み合わされた結果、当業者が予期し得ないような格別な効果を奏しているとすることもできない。 なお、出願人は当審の拒絶理由通知に対する意見書において「本願発明1では、・・・目隠し板は、床面の下に取り付けられ、・・・アースローラー取り付け台は、床面の下方において、目隠し板の下に取り付けられている。これらの特徴により、本願発明1では、床面と目隠し板との間、および目隠し板とアースローラー取り付け台との間を、いずれも面同士が対向するようにして、電気的に接続することができる。更に、本願発明1では、床面と目隠し板との接続箇所、および目隠し板とアースローラー取り付け台との接続箇所は、いずれも床面の下に近接して配置されるため、床面、目隠し板およびアースローラー取り付け台の接続のために要する領域を小さくすることができる。これらのことから、本願発明1では、床面と目隠し板との間、および目隠し板とアースローラー取り付け台との間の電気的な接続状態を良好にすることができる。 更に、本願発明1では、上述のように、床面と目隠し板との接続箇所、および目隠し板とアースローラー取り付け台との接続箇所は、いずれも床面の下に近接して配置されるため、これらの取り付けが容易である。」と主張している。 しかしながら、請求項1には「床面と目隠し板との間、および目隠し板とアースローラー取り付け台との間を、いずれも面同士が対向するようにして、電気的に接続する」とか「床面と目隠し板との接続箇所、および目隠し板とアースローラー取り付け台との接続箇所は、いずれも床面の下に近接して配置される」といった記載はない。また、請求項1の「・・・前記目隠し板の下に取り付けられたアースローラー取り付け台と、・・・前記目隠し板は、前記床面の下に取り付けられ、前記アースローラー取り付け台は、前記床面の下方において、前記目隠し板の下に取り付けられ、前記アースローラーと前記目隠し板とによって、前記支持台と床面とが電気的に接続されている・・・」という記載からは、各部材の取り付け位置に関する上下関係や、電気的な接続順序を読み取ることはできても、「面同士が対向する」とか「床面の下に近接して配置」などと言った具体的構成までは読み取ることができない。 よって、このような主張は、採用できない。 したがって、本願発明は、刊行物1及び刊行物2に記載された発明、及び、上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 7.むすび 以上の通り、本願発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 また、上記の通り、本願の請求項1に係る発明が特許を受けることができないものであるから、本願のその余の請求項に係る発明について審究するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2003-11-11 |
結審通知日 | 2003-11-18 |
審決日 | 2003-12-01 |
出願番号 | 特願平10-363081 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(G01R)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 中村 直行、武田 悟 |
特許庁審判長 |
西川 一 |
特許庁審判官 |
三輪 学 樋口 信宏 |
発明の名称 | タ―ンテ―ブル装置 |
代理人 | 星宮 勝美 |