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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1091025
審判番号 不服2000-4205  
総通号数 51 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2000-09-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2000-03-24 
確定日 2004-01-23 
事件の表示 平成11年特許願第 66963号「パチンコ遊技機」拒絶査定に対する審判事件[平成12年 9月26日出願公開、特開2000-262678]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第一.手続の経緯
本願は、平成11年3月12日の出願であって、平成11年11月2日付拒絶理由通知に対応して、平成12年1月11日に手続補正がなされ、その後、平成12年2月21日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年3月24日に拒絶査定に対する不服の審判が請求されるとともに、同年4月13日に手続補正がなされたものである。
猶、平成12年4月12日にも手続補正がなされているが、当該補正は、同年4月13日付手続補正と同日に提出された上申書の趣旨から判断して、取り下げられたものと認められるので、上記のように認定する。

第二.平成12年4月13日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成12年4月13日付の手続補正を却下する。

[理由]
<1>.補正後の本願発明
本件補正により、本願の請求項に係る発明は、その特許請求の範囲に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に記載された発明(以下「補正後発明1」という)は、以下のとおりである。
「表示画面に特別な遊技状況の発生に関与する判定図柄の表示機能とキャラクタ図柄を動画で表示する機能とを有する可変図柄表示装置と、該可変図柄表示装置の判定図柄が図柄変動を停止した時ある特定の図柄を表示した時には特別な遊技状況の発生により最大所定ラウンド回数の開放動作を繰り返す特別入賞装置とを遊技盤面に有するパチンコ遊技機において、
異なる登場キャラクタによる複数種類の物語を記憶する記憶手段と、特別な遊技状況の発生により前記記憶手段に記憶される各種物語から1の物語を選択する選択手段と、該選択手段によって選択された物語を前記可変図柄表示装置の表示画面に表示する表示手段とを有するものであって、
特別な遊技状況の発生の度にその発生回数をカウントする計数手段と、該計数手段によってカウントされた特別な遊技状況の発生回数に応じて前記選択手段により選択される物語を決定する決定手段と、該決定手段により決定された物語を前記記憶手段より読み出し前記可変表示装置の表示画面に表示する表示制御手段とを備えることを特徴とするパチンコ遊技機。」

<2>.特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定(独立特許要件)に関する要件について、
(1).刊行物記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された(A)特開平7-323117号公報、及び周知技術を示す刊行物である(B)特開平6-165854号公報、(C)特開平8-112410号公報には、各々以下の事項が記載されている。
(A)特開平7-323117号公報(以下「刊行物A」という)記載事項
(A-1).「【0014】 しかして、上記のように構成される可変入賞球装置6は、以下のように作動する。即ち、打玉が始動入賞口4に入賞して始動口スイッチ5をONさせると、図柄表示装置30が変動を開始し、一定時間(例えば、7秒)が経過すると、左・右・中の順で図柄が確定され、その確定された図柄の組み合せが所定の表示態様となったときに特定遊技状態(大当り遊技状態とも言う)となる。そして、この特定遊技状態においては、可変入賞球装置6の開閉部材9が所定期間(例えば、29.5秒経過するまで、あるいは10個の入賞玉が発生するまで)開放する(開放サイクル)ように設定され、その開放している間遊技盤1の表面を落下する打玉を受け止めるようになっている。そして、入賞領域8内に設けられた特定領域11aに入賞すると、再度上記した開放サイクルを繰り返し、特定領域11aに入賞玉が入賞する毎に継続権が成立して開放サイクルを最高16回繰り返すことができるようになっている。」
(A-2).「【0018】ところで、上記図柄表示装置30を構成する液晶ユニット32によって表示される変動図柄は、図3に示すように、WC_RND ZU1〜ZU3の3列(左・中・右)の図柄列からなり、これらの各図柄列が特定遊技状態を発生させる大当り図柄の組合せ(WC RND_LINE)は、図4乃至図6に示すように、全54通りである。」(第5欄第37〜46行)
(A-3).段落【0023】に、「なお、表示制御信号を構成する表示制御転送データコマンド0は、図柄変動用及び警告表示用のコマンドに加えて、デモ表示用及び大当り中表示用のコマンドを備えることで、図12に示すように、電源投入時のデモ表示と、大当り中の各ラウンド表示とを制御して、前記キャラクター図柄(デジパロン)にストーリー性を持たせている。 また、このような大当り中の各ラウンド表示については、表示制御転送データコマンド4中のD5・4に大当り時ストーリー番号(1〜4)を設けることで、4種類のストーリーが設定されている。なお、このような4種類のストーリー選択は、後述の大当り時ストーリー選択用のランダム数(WC_RND2)に基づいて行われる。」(第7欄第31〜43行)
(A-4).「【0056】次に、大当り遊技状態となったときには、開閉部材9(可変入賞球装置と表示の)開放前と、可変入賞球装置の開放中と、特定領域11aの通過時と、次回の開放までの間との4段階に分けられる。そこで、これらを順次説明すると、まず、可変入賞球装置の開放前の第1段階の所定時間(5.500秒)においては、・・・周期で点灯移動し、図柄表示装置30は、大当り開始の表示を行う。なお、このとき、個数表示LED14は、「0」を点灯表示する。」(第20欄第1〜17行)
(A-5).「【0057】また、可変入賞球装置の開放中には、・・・点灯状態を保持する。更に、図柄表示装置30は、回数表示及び各図柄の表示を行い、効果音としては、各ストーリーに対応したラウンド効果音を発生させる。なお、このとき、個数表示LED14は、入賞個数を点灯表示する。」(第20欄第18〜33行)
(A-6).【図34】に「LCD 図柄表示装置30」列と「大当り」行との交差部分に「大当り開始表示」「回数表示および各図柄を表示」が示されている。
(A-7).【図12】のR1に、「『大当り』を表示、※デジパロン参上「これは・・・パチンカーの玉を盗む「悪のかつばき軍団」と戦う正義のヒーロー「デジパロン」の物語である。」を表示、※大当り図柄表示」、R2に「ストリー1〜4」が記載されている。
(A-8).段落【0063】に、「 また、図柄表示装置30は、特定遊技状態での各ラウンド表示を複数種類備えると共に、これら複数種類の表示態様をランダム数(WC_ RND2)の中から1種類選択して表示することで、特定遊技状態でのラウンド表示を多様化し、特定遊技状態での興趣を盛り上げるようになっている。」(第21欄第40〜46行)
(A-9).「【0040】次に、図柄表示装置30の変動動作において大当りでの図柄列の変動を図22及び図23のタイムチャートに基づいて説明する。まず、図22において、始動入賞口4に打玉が入賞して始動口スイッチ5がONされ始動信号SOを導出すると、その始動信号SOの立ち上がり時にWC_RND1及び各WC_RNDZU1〜ZU3からそれぞれ任意の値を抽出してこれらを格納し、また、WC_REECHから任意の値を抽出してこれをWF_RECCHに格納する。その後、始動信号SOの導出から微小時間(0.002秒)が経過したときに、格納したWC_RND1の値を読み出して大当りを判定し、WC_RND2から任意の値を抽出してこれを格納する。」(第14欄第47行〜第15欄第9行)
(A-10).してみると、刊行物Aには以下の事項(以下「引用発明」という)が記載されている。
すなわち、
図柄表示装置30が変動-停止し、確定した図柄が所定の表示態様となったときに特定遊技状態(大当り遊技状態)となり、その状態においては可変入賞球装置6の開閉部材が所定期間開放(開放サイクル)し、当該可変入賞球装置6に設けられた入賞領域8内の特定領域11aに打玉が入賞する毎に継続権が成立して、前記開放サイクルを最高16回、すなわち、16ラウンド迄繰り返すパチンコ機において、
特定遊技状態(大当り遊技状態)となり、可変入賞球装置6の開閉部材が開放される前には、図柄表示装置30に大当りの表示がなされ、開放中には、前記(A-7)に示される「デジパロン参上」との共通タイトルを含め、ストーリーに沿った図柄が各ラウンド毎に表示され、当該ストーリーは、大当りの時に複数のストーリーから1のストーリーがランダムに選択されたものであること。

(B).特開平6-165854号公報
(B-1).【0013】欄に「なお、この図3に示す可変表示装置4は、キャラクタを含む画像が表示されている。特定遊技状態が発生して可変入賞球装置が第1の状態となり、その第1の状態が繰返し継続制御された場合に、その繰返し継続制御のラウンド回数の進行に伴って後述するようにそれぞれ異なったキャラクタが登場して闘いを繰り広げるのであり、繰返し継続制御のラウンド回数が15回のときの動画が示されている。この可変表示装置4の表示部の右上隅の「15R」は繰返し継続制御のラウンド回数を示している。なお、振分装置8は常時回転しているが、特定の条件(たとえば大当り中や特定の識別情報の組合せで大当りが発生した後)を契機に図3に示す位置で停止させてもよい。なお、本発明でいうキャラクタとは、画像表示に登場する人物,動物あるいはUFO等の物を表わす図柄をいう。」(第4欄第36〜50行)
(B-2).段落【0024】に、「第1ラウンドが終了して可変入賞球装置が第2の状態となった後2回目の開放が行なわれる前までのインターバル期間(たとえば2秒)の間表に示すようにHのインターバル音が発せられるとともに勇者とヤンの戦闘を表わす画像が可変表示装置4により表示される。そして、2回目,3回目,4回目,5回目,6回目,7回目,8回目,9回目,10回目とラウンドが進行するに従って、勇者と戦う相手となる女性のキャラクタが、リン,ユン,ルン,ミンと次々に移り変わっていくとともに、表に示すように、それぞれの女性のキャラクタからそれぞれの音声が発せられる。」(第7欄第30〜40行)
(B-3).段落【0028】に、「そして所定箇所に別途画像表示装置を設け、前記繰返し継続制御のラウンドの進行に応じてキャラクタが活躍する画像の表示内容を変化させるように表示制御する。本実施例においては継続回数毎に毎回表示内容を変化させているが何回か置きに変化させてもよい。また、1継続回の中で2回以上表示内容を変化させてもよい。さらに繰返し条件の成立に基づいて表示内容を変化さてもよい。」(第9欄第6〜13行)

(C).特開平8-112410号公報
(C-1).「【請求項1】 遊技盤(5) に変動図柄表示手段(25)と、遊技球を検出して変動図柄表示手段(25)の図柄を変動させる始動ゲート(13)とを備えた弾球遊技機において、画像表示手段(24)を遊技盤(5) に設けると共に、変動図柄表示手段(25)の図柄が変動する時の変動回数に連動して、画像表示手段(24)に絵画像A〜Eを表示させる表示制御手段(37)を設けたことを特徴とする弾球遊技機の表示装置。」
(C-2).「【0005】従って、変動図柄表示手段の図柄の変動がある程度続き、未だ当たりが発生していなければ、そのパチンコ機は、その後、変動図柄表示手段の図柄が数回乃至十数回変動する間に、実際に当たりが発生するか否かはともかくとして、確率的には当たりの出る可能性が非常に高い状況にあるということができる。しかし、従来のパチンコ機では、始動ゲートが遊技球を検出した時に、変動図柄表示手段の各図柄表示部の図柄が一定時間変動する動作を繰り返すだけであって、変動図柄表示手段の変動回数を表示するようにはなっていない。」
(C-3).「【0006】このため、変動図柄表示手段の変動回数が増えれば増える程、数学上の確率からすれば、当たりの発生確率が大になってくるにも拘わらず、従来では変動図柄表示手段の変動回数が全く不明であるので、遊技者は、変動図柄表示手段の変動回数を勘によって判断せざるを得ないという問題がある。また始動ゲートが遊技球を検出する毎に、単に変動図柄表示手段が変動動作を繰り返すに過ぎないので、遊技者は変動図柄表示手段の変動回数を勘で判断しながら、ただ当たりの発生を待つだけになり、ゲーム自体が非常に単調になる欠点がある。」
(C-4).「【0058】 また異なる複数個の絵画像を用いる場合には、その絵画像は全体として統一性のあるものにすれば良く、実施例に限定されるものではない。各絵画像を物語性等で統一する場合には、変動図柄表示手段25が変動する毎に、その物語の進行に従った絵画像を順次表示するようにしても良い。」(第10欄第27〜32行)
(C-5).「【0061】 【発明の効果】 請求項1に記載の本発明によれば、遊技盤5に変動図柄表示手段25と、遊技球を検出して変動図柄表示手段25の図柄を変動させる始動ゲート13とを備えた弾球遊技機において、画像表示手段24を遊技盤5に設けると共に、変動図柄表示手段25の図柄が変動する時の変動回数に連動して、画像表示手段24に絵画像A〜Eを表示させる表示制御手段37を設けているので、遊技者は画像表示手段24に表示される絵画像A〜Eから変動図柄表示手段25の変動回数を推測し思考力を働かせながらゲームを行うことができる。」(第10欄第44行〜第11欄第4行)

<3>.対比
(1).補正後発明1における用語の定義
(ア).「特別な遊技状況の発生」について、
(ア-1).明細書の【0021】欄に「 図2は前記図1に示した特別図柄表示装置2の表示画面を示している。既述したように、特別図柄表示装置2は各々個別に図柄変動を行う各図柄表示部2a、2b、2c及びキャラクタ等の図柄が表示される図柄表示領域2dが設けられ、これらによって表示画面2fが構成される。この各図柄表示部2a、2b、2cに表示される図柄は、表1に示すように左右図柄表示部2a、2bにおいては各々30種類、中図柄表示部2cにおいては36種類が設定される。そして所定の遊技条件の発生を契機に7.7秒間の変動を開始し、停止表示した図柄の組合せが表2(a)に示す通常図柄(非特定図柄)、若しくは表2(b)に示す特定図柄(これらを総称して以下「大当たり図柄」という)の何れかの組合せと一致すると「大当たり」と称される特別な遊技状況が発生することになる。」と記載されている。
(ア-2).してみると、「特別な遊技状況の発生」とは、各図柄表示部に表示される図柄が停止し、その図柄の組合せが「大当たり図柄」の何れかの組合せと一致した場合の遊技状況であると認められる。
(イ).「ラウンド」について
(イ-1).段落【0054】に、「ここで、前記大入賞口16に落入した遊技球数はカウントされ(S58)、該カウント数が10個に至った場合若しくは大入賞口16が開放されてから29秒間が経過する(S60「YES」)と、大入賞口16は閉鎖され(S62)、更に「大当たり」表示画面の作動も終了(S64)して一連の「大当たり」に伴う条件装置の作動は終了する(S66)。但し、前記大入賞口16への遊技球の落入個数が10個未満か、若しくは大入賞口16を開放してから29秒間が経過していない(S60「NO」)場合は、この何れか一方の条件を満たすまで大入賞口16の開放状態を維持する。」
(イ-2).段落【0055】に、「また前記S54に示したように、遊技球が大入賞口16の内部に設けられた特定領域入賞口18に落入する(S54「NO」、S70「YES」)と、その通過が特定領域用スイッチ92に検知され、該スイッチ92による検知信号に基づいて賞球払出機構部44から15個の賞球が払出される(S72)。そして特定領域用ソレノイド99が作動して特定領域入賞口18が一旦閉鎖され(S74)、更に、前記S60に示した遊技球の落入個数及び開放時間に関わらず、大入賞口16も無条件で閉鎖される(S76)。」
(イ-3).段落【0056】に、「そして、前記閉鎖をもって条件装置に設定された連続作動回数(例えば最大16回を設定)のうちの1回目(以下「ラウンド」という)が終了し、ここで終了したラウンドが16ラウンド未満であれば(S78「NO」)、前記条件装置が再度作動(連続動作)し次ラウンドが開始する(S79)。つまり、特定領域入賞口18への遊技球の落入の有無によって条件装置が連続動作するか否か、ラウンドが進むか否かが決定されることになる。」
(イ-4).段落【0071】に、「そして、前記S122にて判定した「大当たり」発生回数が1回目であれば(S122「YES」、S124「NO」)、「ST1」が設定される(S126)。又、前記「大当たり」発生回数が2回目であれば(S124「YES」、S128「NO」)、「ST2」が設定される(S130)。更に前記「大当たり」発生回数が3回目であれば「ST3」が(S128「YES」、S132「NO」、S134)、4回目であれば「ST4」が(S132「YES」、S16「NO」、S138)、そして5回目であれば「ST5」が(S136「YES」、S140)各々設定されることになる。」
(イ-5).段落【0072】に、「このように、「大当たり」表示画面が複数設定される場合には、「ST1」から「ST5」を順次設定して表示すると、「大当たり」が発生する度に毎回異なる「大当たり」表示画面が表示されることになる。尚、前記「ST1」から「ST5」の「大当たり」表示画面も前記図11に示したと同様に、各々のラウンド毎に異なる画面が設定され、ラウンドの展開と共に画面が切換表示され、16ラウンドの終了をもって物語が完結するように構成される。」
と各々記載されている。
(イ-6).してみると、「ラウンド」とは、大入賞口が開放され、当該大入賞口に落入した遊技球が特定領域入賞口へ落入すると、大入賞口が無条件で閉鎖される一連の動作をもって1回とされ、以後、大当たり図柄の組み合わせの発生を必要とせずに遊技球が特定領域入賞口に落入する度に当該一連の動作が所定回数迄繰り返し可能とされる大入賞口の開閉一連動作と認められる。

(2).引用発明と補正後発明1との対応関係
(ア).引用発明における「特定遊技状態(大当り状態)」は、図柄の組み合わせが特定の組合せになったとき生じる遊技状態であるから、補正後発明1における「特別な遊技状況」に相当する。
(イ).引用発明における「図柄表示装置30」は、特定遊技状態(大当り状態)の発生に関する図柄、及びキャラクタを表示し、しかも当該装置はLCDであるから動画を表示する機能を有することは明らかなので、補正後発明1の「表示画面に特別な遊技状況の発生に関与する判定図柄の表示機能とキャラクタ図柄を動画で表示する機能とを有する可変図柄表示装置」に相当する。
(ウ).引用発明における「可変入賞装置6」は、特定遊技状態(大当り状態)の発生により、継続権が成立して開放サイクルを最高16回繰り返すものであるから、特定遊技状態(大当り状態)の発生により、開放サイクルを繰り返す点において、補正後発明1の「特別入賞装置」に相当する
(エ).引用発明における「ストーリー」は、補正後発明1の「登場キャラクタによる複数種類の物語」に相当する。
(オ).引用発明における「ラウンド」は、補正後発明1の「ラウンド」に相当する。
(カ).引用発明において、複数のストーリーから1のストーリーがランダムに選択され、当該選択されたストーリーが図柄表示装置に表示されるのであるから、引用発明においても、補正後発明1に言う「選択手段」、「決定手段」、「表示制御手段」が具備されていることは明らかである。
(キ).引用発明は大当り回数を表示するものであるから、引用発明は大当り発生回数をカウントする計数手段が具備されていることは明らかである。

(3).補正後発明1と引用発明との一致点、相違点
一致点
「表示画面に特別な遊技状況の発生に関与する判定図柄の表示機能とキャラクタ図柄を動画で表示する機能とを有する可変図柄表示装置と、該可変図柄表示装置の判定図柄が図柄変動を停止した時ある特定の図柄を表示した時には特別な遊技状況の発生により開放動作を繰り返す特別入賞装置とを遊技盤面に有するパチンコ遊技機において、
登場キャラクタによる複数種類の物語を記憶する記憶手段と、特別な遊技状況の発生により前記記憶手段に記憶される各種物語から1の物語を選択する選択手段と、該選択手段によって選択された物語を前記可変図柄表示装置の表示画面に表示する表示手段とを有するものであって、
特別な遊技状況の発生の度にその発生回数をカウントする計数手段と前記選択手段により選択される物語を決定する決定手段と、該決定手段により決定された物語を前記記憶手段より読み出し前記可変表示装置の表示画面に表示する表示制御手段とを備えることを特徴とするパチンコ遊技機。」
相違点
(ア).開放動作の繰り返し回数について、引用発明は、特定領域に入賞することを条件に最高16回繰り返すものであるのに対し、本願補正発明1は、最大所定ラウンド回数(【図8】に「16」と記載)としている点
(イ).特別な遊技状況の発生した時に対応させる物語を選択する手段として、引用発明は特別な遊技状況に対してランダムに物語を対応させているのに対し、補正後発明1は、特別な遊技状況の発生回数に1対1に対応させている点
(ウ).物語のキャラクタ及びその表示に関して、引用発明は、デジパロンと物語毎に異なる少女であり、ラウンド1は共通のタイトルが表示され、ラウンド2から相違する物語が始まるのに対し、補正後発明1は、物語のキャラクタについては異なるキャラクタとされ、さらに、その表示に関して、ラウンドに1に表示する表示事項を如何にするかについては記載されていない点

(4).相違点の検討
相違点(ア)について、
パチンコ遊技において、例えば、開閉口を備えたチューリップ等可動部材を備えた入賞口の開閉条件として、(i).特定の入賞口に入賞することを条件とする場合、(ii).特定の入賞口に入賞することを条件に、さらに、可変表示装置の表示が特定の組合せとなることを条件とする場合等成立条件を多くしたり少なくしたりすることは、例えば特開昭55-141265号公報、特開昭63-262169号公報に見られるように、パチンコの分野においては周知の事項である。
してみると、引用発明において、条件を減少させて補正後発明1の様にすることは、適宜なし得る設計的事項である。
したがって、当該相違点は格別のものではない。

相違点(イ)について、
一般的に2者間を対応付ける手法として、規則的に対応付ける手法、ランダムに対応付る手法は周知の対応付の手法であり、パチンコ機においても
(i).刊行物Aに、ラウンド毎に相違する図柄が表示されること、要するに、ラウンドの発生回数に対応した図柄が表示される点
(ii).刊行物Bに、ラウンドの進行に伴って勇者と戦う女性のキャラクタを変化させこと、要するに、継続回数毎に毎回表示内容を変化させる点(前記(B-2)、(B-3)参照)
(iii).刊行物Cに、図柄表示手段の図柄が変動するときの変動回数に連動して画像表示手段に絵画像を表示させ、その絵画像として、変動する毎に物語の進行に従った絵画像を順次表示すること、要するに、図柄表示手段の図柄変動の発生回数のグループ毎に対応した図柄が表示される点が示されているように、規則的に対応付ける手法は慣用されている周知の対応付手法である。
したがって、引用発明における、特別な遊技状況の発生と物語の対応付の手法として、前記(i)、(ii)、(iii)に示されるような周知の対応付手法である、規則的な対応付の手法を代替採用することは、当業者が適宜なし得る設計的変更である。

相違点(ウ)について、
「キャラクタ」とは、一般的に「小説・映画・演劇・漫画などの登場人物。その役柄。」「文字。数字」(広辞苑参照)であり、パチンコの分野においても前記(B-1)に記載されるように同様の意味で用いられていることからも、引用発明において、デジパロンと戦う少女はキャラクタであり、しかも、ラウンド毎に相違するキャラクタということになり実質的に相違しないものであり、しかも、キャラクタが相違するものであるから、共通のタイトルに変えて当該キャラクタに固有のタイトルとすることは当業者が容易になし得ることである。
仮に、補正後発明1に言う「異なる登場キャラクタ」が物語毎に登場キャラクタが全て相違することを意味するとしても、複数の物語の組み合わせ方として、オムニバス形式(「映画などで、いくつかの独立した短編を並べて一つの作品にしたもの。」広辞苑参照)が周知であるから、複数の物語の内容として複数の独立した物語とすることは当業者が適宜なしえる程度の事項であり、その場合は、引用発明における共通タイトルの表示は無くなるので、当然物語はラウンド1から始まることとなる。。
したがって、当該相違点も格別のものではない。

(5)まとめ
以上のように補正後発明1は、前記刊行物A、及び刊行物B、C等に記載されるような周知事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

(6)むすび
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第4項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。


<3>.特許法第17条の2第第3項、第4項第2号に関する要件
補正後発明1において、新たに記載された「特別な遊技状況の発生により最大所定ラウンド回数の開放動作を繰り返す」との事項は、以下の理由により特許法第17条の2第4項第2号に規定する、特許請求の範囲の減縮を目的とするものとは認められず、さらに、同条第3項に規定する、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものとは認められないない。
理由
前記事項は、「特別な遊技状況の発生」、すなわち、大当たりが生じると、決められているラウンド回数の最大回数の開放動作を繰り返す特別入賞装置の意味を有するものであるが、当該補正後発明1の直前の補正書(平成12年1月11日付)の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明においては、「所定の条件が成立すると予め設定された所定の回数内で前記特別な遊技状況を繰り返す」とされている。
ここで、当該特別な遊技状況を繰り返すものは、前記の様に「ラウンド」に相当するものであるから、「所定の条件」が成立することなく、「ラウンド回数」の最大開放動作を繰り返すことは、所定の条件を省くこととなるものであるから、特許請求の範囲の減縮には相当しないものであり、しかも、当該条件を省いた開放動作は、願書に最初に添付した明細書、及び図面には記載されていない。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第3項、または第4項第2号の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。


第3.本願発明について、
[1].本願発明
平成12年4月13日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成12年1月11日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に記載された発明(以下「本願発明1」という)は以下のとおりである。
「遊技盤面に設けられる図柄表示装置に所定の遊技状況が発生するに伴って特別な遊技状況が作動すると共に、該作動中に所定の条件が成立すると予め設定された所定回数内で前記特別な遊技状況を繰返す繰返し動作手段を備えたパチンコ遊技機において、
前記特別な遊技状況の作動に基づいて前記図柄表示装置に所定の図柄を表示する図柄表示手段と、
該図柄表示手段によって表示される図柄が前記繰返し動作手段の作動に基づいて異なる図柄に切換表示される図柄切換表示設定手段と、
該図柄切換表示設定手段によって切換表示される図柄が相互に関連すると共に前記繰返し動作手段に予め設定された最大所定回数分の切換表示を行うことによって一つの完結した物語となる物語設定手段と、
該物語設定手段によって設定される物語には各々異なる内容の物語が複数種類設定され、前記特別な遊技状況の作動に基づいて該物語の何れかが選択される物語選択設定手段とを備えることを特徴とするパチンコ遊技機。」

[2].特許法第29条第2項の検討
<1>.刊行物記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物、および、周知技術を示す刊行物の記載事項は、前記「第二.[理由].<2>.(1).」に記載したとおりである。

<2>.対比
(1).本願発明1における用語の定義
(ア).「特別な遊技状況」について、
特別な遊技状況については、請求項1に「特別遊技状況の作動中に所定の条件が成立すると予め設定された所定回数内で前記特別な遊技状況を繰返す」と記載されているので、実施例において、所定の条件が成立することにより、予め設定された所定回数繰り返す動作がなされるものをみると、最大16回に設定された「ラウンド」、すなわち、「大入賞口16の開閉一連動作」であり、その「所定の条件」とは「特定の領域入賞口18への遊技球の落入」ということになる。
してみると、「特別な遊技状況」とは、「大入賞口の開閉一連動作」を意味することとなる。

(イ).「所定の遊技状況」について、
所定の遊技状況に関して請求項1に、「遊技盤面に設けられる図柄表示装置に所定の遊技状況が発生するに伴って特別な遊技状況が作動すると共に」と記載され、当該「特別な遊技状況」については、前記(ア)に記載した如く、大入賞口の開閉一連動作であるから、当該大入賞口を開閉する原因を実施例に即して、図柄表示装置に関係する記載を見てみると、当該原因は、図柄表示装置に表示される図柄の組み合わせが大当り図柄に一致すること(段落【0023】参照)である。
してみると、「所定の遊技状況」とは、「図柄表示装置に表示される図柄の組み合わせが大当り図柄に一致すること」を意味することとなる。

(2).引用発明と本願発明1との対応関係
(ア).引用発明における「特定遊技状態(大当り状態)」は、図柄の組み合わせが特定の組合せになって、可変入賞装置が開閉可能な状態であるから、本願発明1における「特別な遊技状況」に相当する。
(イ).引用発明における「図柄表示装置30」は、大当り関する図柄、キャラクタを表示し、ラウンド毎、すなわち、可変入賞装置が開くことに基づいてストーリーに沿った図柄を順次表示するものであるから、本願発明1において、特別な遊技状況の作動に基づいて所定の図柄を表示する「図柄表示装置」及び「図柄表示手段」に相当する。
(ウ).引用発明においては、大当り状態になった時、可変入賞装置の開閉を繰り返すもの、すなわち、本願発明1に言う特別遊技状態を繰り返すものであるから、引用発明にも当該繰り返し手段が具備されていることは明らかである。
(エ).引用発明においては、前記繰り返しの時、当該繰り返し毎に、ストーリーに沿った異なる図柄が表示され、当該ストーリーは最大繰り返し回数にて完結するものであるから、引用発明には、本願発明1に言う「繰返し動作手段の作動に基づいて異なる図柄に切換表示される図柄切換表示設定手段」、及び「切換表示される図柄が相互に関連すると共に前記繰返し動作手段に予め設定された最大所定回数分の切換表示を行うことによって一つの完結した物語となる物語設定手段」が具備されていることは明らかである。
(オ).引用発明における「複数のストーリー」は、本願発明1の「登場キャラクタによる複数種類の物語」に相当する。
(カ).引用発明において、「ランダムにストーリーを選択する」選択手段は、複数のストーリーから1のストーリーを選択する選択手段の点において、本願発明1に言う「物語選択設定手段」に相当する。

(3).引用発明と本願発明1との一致点、相違点
一致点
遊技盤面に設けられる図柄表示装置に所定の遊技状況が発生するに伴って特別な遊技状況が作動すると共に、該作動中に所定の条件が成立すると予め設定された所定回数内で前記特別な遊技状況を繰返す繰返し動作手段を備えたパチンコ遊技機において、
前記特別な遊技状況の作動に基づいて前記図柄表示装置に所定の図柄を表示する図柄表示手段と、
該図柄表示手段によって表示される図柄が前記繰返し動作手段の作動に基づいて異なる図柄に切換表示される図柄切換表示設定手段と、
該図柄切換表示設定手段によって切換表示される図柄が相互に関連すると共に前記繰返し動作手段に予め設定された最大所定回数分の切換表示を行うことによって一つの完結した物語となる物語設定手段と、
該物語設定手段によって設定される物語には各々異なる内容の物語が複数種類設定され、該物語の何れかが選択される物語選択設定手段と
を備えることを特徴とするパチンコ遊技機。
相違点
物語の選択手法として、本願発明1は、「特別な遊技状況の作動」に基づくもの、すなわち、「大入賞口の開閉一連動作の作動」に基づくものであるのに対し、引用発明は、「大当り時ストーリー選択用のランダム数(WC-RND2)に基づいて行われ(段落【0023】の記載参照)、このランダム数(WC-RND2)は、前記(A-9)、及び図20に記載されるように始動入賞口4に打球が入賞して導出された始動信号SOの微小時間(0.002秒)経過後である点

(4).相違点の検討
物語は表示開始される前まで、すなわち、大入賞口が開放される前までに選定されることが必要であるから、当該開始以前の何れかの時点で選定するようにすることは当業者が適宜なし得ることであり、しかも、当該時点として特に本願発明1の様に「特別な遊技状況の作動」に基づかせたことによる格別の効果は認められない。
したがって、当該相違点は格別のものではない。


[3].むすび
以上のとおり、本願発明1は、刊行物Aに記載された発明、及び、周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2003-10-28 
結審通知日 2003-10-28 
審決日 2003-12-11 
出願番号 特願平11-66963
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 神 悦彦  
特許庁審判長 中村 和夫
特許庁審判官 塩崎 進
白樫 泰子
発明の名称 パチンコ遊技機  
代理人 上野 登  

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