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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1091042
審判番号 不服2003-10438  
総通号数 51 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1997-05-20 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-06-09 
確定日 2004-01-23 
事件の表示 平成 7年特許願第317390号「CAD/CAM装置」拒絶査定に対する審判事件[平成 9年 5月20日出願公開、特開平 9-134383]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成7年11月10日の出願であって、その請求項1に係る発明は、平成15年3月7日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのものと認める。(以下、「本願発明」という。)
「【請求項1】 被加工物に対する各切断図形の切断配置を決める配置制御部を備えたCAD/CAM装置において、
上記配置制御部は、CAD/CAM装置が備えるビデオラム上に被加工物の形状と大きさを割り振った後、ビデオラム上において、被加工物に対して既に切断配置が決まっている切断図形と干渉しない位置に次に切断配置を決めるべき新たな切断図形を位置させ、該新たな切断図形を所定量だけ既に切断配置が決定している隣接位置の切断図形に向けてビデオラム上で移動させて位置させて、両者の位置が干渉するか否かを検出し、両者の位置が干渉しない場合には、上記新たな切断図形をさらに所定量だけビデオラム上で隣接位置の切断図形に向けて移動させて位置させる一方、両者の位置が干渉したことを確認した場合には、新たな切断図形を隣接位置の切断図形から所定量だけ後退させて位置させて、その位置を新たな切断図形の切断配置として決定するように構成したことを特徴とするCAD/CAM装置。」

2.引用例
(1)特開平5-28208号公報(引用例1)
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願の日前である平成5年2月5日に頒布された特開平5-28208号公報(以下「引用例1」という。)には、次の事項が記載されている。
(ア)「【請求項1】各部品1個毎の単品NCデータと該部品の材質・板厚・使用する加工工具の型・工具の交換情報等からなる部品情報とをデータベースに格納し、板取配置の対象となっている各部品の単品NCデータと部品情報を上記データベースから読み出し、読み出した単品NCデータと部品情報とに基づいて各部品形状を求め、加工対象の板のX-Y寸法と各部品の加工個数とその形状とに基づいて、各部品の接触判定行いながら板取配置し、板取配置の結果に基づいて上記板の加工用NCデータを作成することを特徴とするNCデータ自動作成方法。」(引用例1の2頁1欄2〜11行、【請求項1】)
(イ)「【0003】
【発明が解決しようとする課題】上記したように従来技術による板取配置は、部品のX-Y寸法を用いて部品形状を矩形化し、矩形化された部品寸法に基づいて行われていた。したがって、部品の板取配置を行う際の部品間の接触判定に部品形状そのものを用いず、また部品の単品NCデータも用いていないので、板取配置の際の歩留まりが悪く、信頼性も低く、加工用NCデータの自動作成が行えないという問題点があった。
【0004】本発明は上記した従来技術の問題点に鑑み成されたもので、多種多数の部品の板取配置の際の歩留まりを向上させ、信頼性も高く、さらに加工用NCデータの自動作成を行うことが可能な板金加工におけるNCデータ自動作成方法を提供することを目的している。」(引用例1の2頁1欄25〜38行、段落【0003】〜【0004】)
(ウ)「【0006】
【作用】本発明によれば、部品の単品NCデータと部品情報とがデータベース管理され、必要なとき参照可能な状態になっている。板取配置して、板取された板材の加工用NCデータを作成する際には、データベース中から単品NCデータと部品情報を参照し、部品形状を再現する。次に、板材のX-Y寸法や加工部品の個数・形状に基づき、部品間の接触判定を行って部品形状を考慮した板取配置を行い、この板取配置の結果から加工用NCデータを編集する。したがって、歩留まりの良い、高い信頼性の板取配置を実現でき、さらにその加工用NCデータを自動作成すること可能になる。」(引用例1の2頁2欄1〜12行、段落【0006】)
(エ)「【0008】図1は、本発明が適用されるNCデータ自動作成装置の構成を示すブロック図である。NCデータ自動作成装置6は、部品の単品NCデータと部品情報とを管理するデータベース管理装置1と、単品NCデータと部品情報から部品形状を再現する部品形状再現装置2と、再現した部品形状を用いて板取配置を行う配置装置3と、板取配置の配置結果に基づいて加工用NCデータを編集するNCデータ編集装置4とから構成されている。NC機械制御装置5は、NCデータ編集装置4から出力される加工用NCデータに基づいて、NC機械を制御するものである。
【0009】次に、本実施例の部品形状再現装置2の動作について、図2に示すフローチャートを用いて説明する。図2は部品形状再現装置2の動作手順を示している。まず、部品の図番、品番、図歴をキーとして、データベース管理装置1を介してデータベース11から部品情報が参照される(ステップS21)。ここで、データベース11は、例えばデータベース管理装置1内に設けられているものである。また、部品情報とは、部品の材質、板厚、加工時の使用される工具の型、標準工具以外の工具を付ける場合の型交換情報等を含むものである。
【0010】次に、単品NCデータファイル12から単品NCデータが取り込まれる(ステップS22)。ここで、単品NCデータファイル12は、例えばデータベース管理装置1内に設けられている。
【0011】次に、ステップS22において取り込まれた単品NCデータが一命令ずつ解析される(ステップS23)。
【0012】次に、ステップS23における解析結果とステップS21において参照した部品情報とに基づいて、部品形状に加工する際に使用する工具の型や加工用レーザのレーザ軌跡を直線・円(弧)の形状データで定義する。そして、定義された形状データから最外形を取り出すことにより、部品の形状を再現し、これを矩形化した時のX-Y座標の最小値を部品原点とする(ステップS24)。
【0013】図3は定義された形状データの一例を示し、図4は図3において定義された形状データの最外形を取り出して形状を再現した一例を示す図である。
【0014】次に、本実施例の配置装置3の動作について、図5乃至図10を用いて説明する。ここで、図5乃至図10は、配置装置3の動作手順を示している。まず、図5に示すように、加工部品A,B,Cの中でY寸法の大きなものから配置優先順位を高くする。この例では、優先順位が加工部品A,B,Cの順に設定される。
次に、図6に示すように、板金20のX-Y寸法に基づいて、配置領域a1を定義し、領域原点をX-Y座標の最小値の位置0とする。
【0015】次に、図7に示すように、配置領域a1に配置可能で、かつ優先順位の高い部品を選択し、部品原点と領域原点が一致するように配置する。この場合には、部品Aが選択される。さらに領域a2が配置領域として再定義され、領域a3が1次配置領域として定義される。
【0016】次に、図8に示すように、配置領域a2に対して配置可能で、かつ優先順位の高い部品を選択し、部品原点と領域原点が一致するように配置する。この場合には部品Bが選択される。
【0017】次に、図9に示すように、各部品A,Bの形状を考慮して、部品BをAに近づけながら部品間の接触の有無を判定し、部品間距離を最小にし、部品Bの配置原点を決定した後、領域a4を配置領域、領域a5を1次配置領域、領域a3を2次配置領域に再定義する。
【0018】次に、配置領域a4については配置できる部品が存在しないため、領域a5を配置領域に再定義する。しかし、配置領域a5についても領域a4と同様に配置できる部品が存在しないため、領域a3を配置領域に再定義する。そして、残りの部品Cを配置領域a3の領域原点と部品原点が一致するように配置する。
【0019】次に、配置装置3の配置結果である各部品A,B,Cの配置原点を用いて、NCデータ編集装置4が加工用NCデータを作成する。作成された加工用NCデータはNC機械制御装置5に出力される。
【0020】このように、上記実施例によれば、板取配置に単品NCデータと部品情報から再現する部品形状を用い、配置する領域を管理しながら部品形状を考慮して行うことにより、歩留まりが良く、高い信頼性で板取配置を行うことができ、加工用NCデータの作成が可能になる。」(引用例1の2頁2欄16行〜3頁4欄4行、段落【0008】〜【0020】)

この記載事項によると、引用例1には、
「部品の単品NCデータと部品情報とを管理するデータベース管理装置1と、単品NCデータと部品情報から部品形状を再現する部品形状再現装置2と、再現した部品形状を用いて板取配置を行う配置装置3と、板取配置の配置結果に基づいて加工用NCデータを編集するNCデータ編集装置4とから構成され、その出力である加工用NCデータは、レーザ加工機等のNC機械を制御するNC機械制御装置5に入力されるNCデータ自動作成装置6において、
各部品1個毎の単品NCデータと該部品の材質・板厚・使用する加工工具の型・工具の交換情報等からなる部品情報とをデータベースに格納し、板取配置の対象となっている各部品の単品NCデータと部品情報を上記データベースから読み出し、読み出した単品NCデータと部品情報とに基づいて各部品形状を求め、加工対象の板のX-Y寸法と各部品の加工個数とその形状とに基づいて、各部品の接触判定を行いながら板取配置し、板取配置の結果に基づいて上記板の加工用NCデータを作成することを特徴とし、
その具体的動作は、加工部品A,B,Cの中でY寸法の大きなものから配置優先順位が設定され、
次に、板金20のX-Y寸法に基づいて、配置領域a1を定義し、領域原点をX-Y座標の最小値の位置0とし、
次に、配置領域a1に配置可能で、かつ優先順位の高い部品を選択し、部品原点と領域原点が一致するように配置し、この場合には、部品Aが選択され、さらに領域a2が配置領域として再定義され、領域a3が1次配置領域として定義され、
次に、配置領域a2に対して配置可能で、かつ優先順位の高い部品を選択し、部品原点と領域原点が一致するように配置し、この場合には部品Bが選択され、
次に、各部品A,Bの形状を考慮して、部品BをAに近づけながら部品間の接触の有無を判定し、部品間距離を最小にし、部品Bの配置原点を決定した後、領域a4を配置領域、領域a5を1次配置領域、領域a3を2次配置領域に再定義し、
次に、配置領域a4については配置できる部品が存在しないため、領域a5を配置領域に再定義し、しかし、配置領域a5についても領域a4と同様に配置できる部品が存在しないため、領域a3を配置領域に再定義し、そして、残りの部品Cを配置領域a3の領域原点と部品原点が一致するように配置し、
次に、配置装置3の配置結果である各部品A,B,Cの配置原点を用いて、NCデータ編集装置4が加工用NCデータを作成する
NCデータ自動作成方法。」
の発明(以下、「引用例1記載の発明」という。)が記載されていると認められる。

3.対比
本願発明と引用例1に記載された発明とを比較すると、
引用例1の「部品」は、本願発明の「被加工物」に相当し、
引用例1はレーザ加工機等のNC機械を制御するための板取配置用のデータを作成するものであるから、引用例1の「板取配置」は、本願発明の「各切断図形の切断配置」に相当し、
引用例1の「配置装置」は、下記の相違点はあるが、部品の切断配置を決める点では、本願発明の「配置制御部」に相当し、
また、配置の仕方についても、下記で述べる相違点はあるが、引用例1の部品の配置と、本願発明の加工物の切断配置について、引用例の部品Aを配置し、次に、部品Bを配置する時に、部品BをAに近づけながら部品間の接触の有無を判定し、部品間距離を最小にし、部品Bの配置原点を決定することは、本願発明の、被加工物の形状と大きさを割り振った後、既に切断配置が決まっている切断図形と干渉しない位置に次に切断配置を決めるべき新たな切断図形を位置させ、該新たな切断図形を所定量だけ既に切断配置が決定している隣接位置の切断図形に向けて移動させて、干渉しないように新たな切断図形の切断配置を決定することに相当し、
また、引用例1に記載された発明は方法として表現されているが、これを装置として表現し得ることは自明であって、単なる表現上の問題にすぎないから、
両者は
「被加工物に対する各切断図形の切断配置を決める配置制御部を備えた装置において、
上記配置制御部は、被加工物の形状と大きさを割り振った後、被加工物に対して既に切断配置が決まっている切断図形と干渉しない位置に次に切断配置を決めるべき新たな切断図形を位置させ、該新たな切断図形を所定量だけ既に切断配置が決定している隣接位置の切断図形に向けて移動させて位置させて、両者の位置が干渉するか否かを検出し、両者間距離を最小にするように、新たな切断図形の切断配置として決定するように構成したことを特徴とする装置。」
で一致し、次の点で相違する。
(相違点)
(相違点1)
装置として、本願発明は、CAD/CAM装置であるのに対して、引用例1のものは、NCデータ自動作成装置である点。
(相違点2)
各切断図形の切断配置の決め方が、本願発明では、配置制御部が、CAD/CAM装置が備えるビデオラム上に被加工物の形状と大きさを割り振った後、ビデオラム上において、被加工物に対して既に切断配置が決まっている切断図形と干渉しない位置に次に切断配置を決めるべき新たな切断図形を位置させ、該新たな切断図形を所定量だけ既に切断配置が決定している隣接位置の切断図形に向けてビデオラム上で移動させて位置させて、両者の位置が干渉するか否かを検出し、両者の位置が干渉しない場合には、上記新たな切断図形をさらに所定量だけビデオラム上で隣接位置の切断図形に向けて移動させて位置させる一方、両者の位置が干渉したことを確認した場合には、新たな切断図形を隣接位置の切断図形から所定量だけ後退させて位置させて、その位置を新たな切断図形の切断配置として決定するのに対して、
引用例1では、配置装置は、加工部品A,B,Cの中でY寸法の大きなものから配置優先順位が設定し、次に、板金20のX-Y寸法に基づいて、配置領域a1を定義し、領域原点をX-Y座標の最小値の位置0とし、次に、配置領域a1に配置可能で、かつ優先順位の高い部品を選択し、部品原点と領域原点が一致するように配置し、この場合には、部品Aが選択され、さらに領域a2が配置領域として再定義され、領域a3が1次配置領域として定義され、次に、配置領域a2に対して配置可能で、かつ優先順位の高い部品を選択し、部品原点と領域原点が一致するように配置し、この場合には部品Bが選択され、次に、各部品A,Bの形状を考慮して、部品BをAに近づけながら部品間の接触の有無を判定し、部品間距離を最小にし、部品Bの配置原点を決定した後、領域a4を配置領域、領域a5を1次配置領域、領域a3を2次配置領域に再定義し、次に、配置領域a4については配置できる部品が存在しないため、領域a5を配置領域に再定義し、しかし、配置領域a5についても領域a4と同様に配置できる部品が存在しないため、領域a3を配置領域に再定義し、そして、残りの部品Cを配置領域a3の領域原点と部品原点が一致するように配置するのであるから、
引用例1には、ビデオラム上での割り振り、位置、及び移動については示されておらず、さらに、両者の位置が干渉するか否かを検出し、両者の位置が干渉しない場合には、新たな切断図形をさらに所定量だけビデオラム上で隣接位置の切断図形に向けて移動させて位置させる一方、両者の位置が干渉したことを確認した場合には、新たな切断図形を隣接位置の切断図形から所定量だけ後退させて位置させて、その位置を新たな切断図形の切断配置とすることは示されていない点。

4.当審の判断
(相違点1)について、
引用例1のものも、NC機械として、レーザ加工機等を想定しており、そのためのデータ作成方法であり、本願発明の明細書にも、レーザ加工機に適用したものが記載されているから、引用例1のNCデータ自動作成装置をCAD/CAM装置とすることは当業者が容易に考えられることである。
(相違点2)について、
まず、本願特許請求の範囲の記載、及び、本願明細書の詳細な説明においても、切断図形の位置づけ、移動、切断図形両者の位置が干渉するか否かの検出を、配置制御部がビデオラム上でどうのようにして行うのか具体的に記載していない。
さらに、請求項1の記載では、配置制御部が、ビデオラム上において、切断図形の位置づけ、移動、干渉の検出等の制御を行うことは記載されているから、配置制御部が行う制御とは、通常は計算機を用い計算とか演算によりその制御が行われるものである認められる。
また、本願発明の特許請求の範囲の記載には、その構成要件として、表示装置が記載されていない、そのため、ビデオラムが表示手段と関連づけて記載されていないため、ビデオラムが通常のRAMとして使用されることを排除することができないため、本願発明のビデオラムを通常のRAMとして考えることもできるで、場合分けをして判断することとする。
(1)ビデオラムが通常のメモリとして使用されていると考えた場合について
このような場合には、本願発明のビデオラムが、通常のメモリであるRAMとして考えられ、引用例1においても、各部品A,Bの形状を考慮して、部品BをAに近づけながら部品間の接触の有無を判定し、部品間距離を最小になるようにして、部品Bの配置を決定する作業は何処かのメモリ空間上で行っているものと認められる。
引用例1において、「部品間の接触の有無を判定し、部品間距離を最小にする」こととは、先ず、「部品間の接触の有無を判定」するということは、部品間の接触、非接触を検出することにより行われることが通常であり、「部品間に距離を最小にする」ことについては、レーザ加工機では、切断図形間に所定の距離を持たせなければ、レーザの幅分だけ寸法が小さくなり精密な加工処理ができないことも常識であることであることから、部品間に距離を持たせることであるから、このことは、部品間の接触を検出したら、戻して非接触の状態にすると共に、部品間に距離を持たせることである。
また、物体同士を近接配置するときに、対象物に対して移動体を接触させた後に所定距離戻すことにより、近接配置を行うことは、位置決めの常套手段である。
さらに、図形が接触するか否かを判断するときに、メモリ上において、切断図形の両者の位置が干渉するか否かの検出によって行うことは格別のことではない。
したがって、引用例1において、部品間の接触の有無を判定して、部品間の距離を最小にするために、メモリとしてビデオラムを用いて、このビデオラム上において、部品Aを配置し、次に部品Bを部品Aと干渉しない位置に位置させ、部品Bを部品Aに移動させ、両者の位置が干渉するか否かを検出し、干渉しない場合には、部品Aに向けて移動させ、徐々に近づけ、干渉したら所定量だけ戻すことにより、部品間の距離を最小にすること、すなわち、本願発明のようにすることは、当業者が容易に考えられることである。

(2)また、本願発明のビデオラムが、表示手段用のビデオラムであるとして考えた場合について(このことは本願の特許請求の範囲には記載されていな。)
上記(1)の判断に加えて、
一般的に、NC制御装置においても、CAD/CAM装置において、表示装置を設けることは周知のことであり、表示装置にビデオラムが設けられていることも技術常識であり、また、オペレータがディスプレイ等を見ながら、一定の範囲に多くの部品を配置しょうとするときにも、部品同士が重ならないようになるべく部品間の距離を最小にするように工夫して配置することは通常行われていることである。
したがって、引用例1において、表示装置と共にビデオラムを設けて、そのビデオラムを利用して、ビデオラム上において、部品Aを配置し、次に部品Bを部品Aと干渉しない位置に位置させ、部品Bを部品Aに移動させ、両者の位置が干渉するか否かを検出し、干渉しない場合には、部品Aに向けて移動させ、徐々に近づけ、干渉したら所定量だけ戻すことにより、部品間の距離を最小にすること、すなわち、本願発明のようにすることは、当業者が容易に考えられることである。

5.請求人の審判請求書での主張について
請求人は、審判請求書において、『(3)ところで、上記請求項1の発明の表現は、切断図形をビデオラム上に具体的に位置させることを表現しており、計算上で位置させることを意味しているわけではない。仮に、計算上で新たな切断図形をある位置に位置させるとしたら、通常、それは予め基準として設定した座標系におけるある位置に該切断図形を位置させることであって、少なくともビデオラム上に位置させるという表現がとられることはない。
仮に、ビデオラム上の特定の位置を原点とする座標系を考えた場合、切断図形の座標上の移動をビデオラム上の移動と言い換えることが可能であるかもしれないが、それはそのような条件が提示されて初めて用いることができる表現である。本願発明の場合にはそのような条件が提示されているわけでも、計算によるものでもないので、素直に切断図形がビデオラム上で具体的に移動されて位置(描写)される、と解するのが妥当である。
そして切断図形がビデオラム上で具体的に移動されて位置(描写)される結果、新たな切断図形と既に切断配置が決定している切断図形とが干渉するとは、両図形の重なりを意味することになり、その結果として「交点が演算により求められ」るような構成は含まれていないものと思慮される。』と述べている。
しかし、上記4.でも述べたように、本願特許請求の範囲の記載、及び、本願明細書の詳細な説明においても、切断図形の位置づけ、移動、切断図形両者の位置が干渉するか否かの検出を、配置制御部がビデオラム上でどのようにして行うのか具体的に記載していない。
さらに、請求項1の記載では、配置制御部が、ビデオラム上において、切断図形の位置づけ、移動、干渉の検出等の制御を行うことは記載されているから、配置制御部が行う制御とは、通常は計算機を用い計算とか演算によりその制御が行われるものであると認められる。
また、本願発明の特許請求の範囲の記載には、その構成要件として、表示装置が記載されていない。
そうすると、請求人の述べていることは意味のないこととなる。

6.むすび
したがって、本願発明は、引用例1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2003-11-18 
結審通知日 2003-11-18 
審決日 2003-12-12 
出願番号 特願平7-317390
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 加舎 理紅子田中 幸雄  
特許庁審判長 小川 謙
特許庁審判官 加藤 恵一
井上 信一
発明の名称 CAD/CAM装置  
代理人 神崎 真一郎  

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