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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A41B
管理番号 1091170
審判番号 不服2002-8985  
総通号数 51 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1994-09-01 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-05-20 
確定日 2004-01-05 
事件の表示 平成 4年特許願第510874号「特定の粒径分布の超吸収体ヒドロゲル形成材料を含む吸収体構造」拒絶査定に対する審判事件[平成 4年10月29日国際公開、WO92/18171、平成 6年 9月 1日国内公表、特表平 6-507564]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.手続の経緯・本願発明
本願は、平成4年4月9日(優先日:平成3年4月12日、米国)の国際出願であって、その請求項1ないし請求項36に係る発明は、平成13年12月17日付け手続き補正書により補正された明細書および図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし請求項36に記載されたとおりのものと認められるところ、請求項1に記載された発明(以下「本願発明」という)は、次のとおりである。

「少なくとも一部に繊維材料を有する主構造と、水不溶性で吸収性でヒドロゲル形成で溶液重合された重合体材料の複数の粒子とを有し、前記粒子は、主構造の中または上に配置または分散され、前記粒子の少なくとも85重量%が、125μmと297μmの間の大きさを有することを特徴とする吸収体構造。」

II.引用例の記載事項
これに対して、原査定の拒絶の理由で引用した、特開平1-132802号公報(以下「引用例1」という)には、次の1-1ないし1-5の事項が図面とともに記載されている。
1-1.(2ページ右下欄7行〜3ページ左上欄6行)「本発明は、排泄された体液を吸収するのに好適な繊維状ウェブ構造物およびそれらの構造物中で特に有用な吸収性ゲル化剤組成物に関する。・・・繊維の絡み合った密集体、即ち、繊維状ウェブを含む吸収性構造物は、技術上周知である。このような構造物は、流体を繊維物質それ自体によって吸収する吸収機構により、そして流体を繊維間の毛管隙間により獲得し毛管隙間を通して分布させ且つ毛管隙間内に貯蔵する灯心作用(vicking)機構により、排泄体液などの液体を吸収することができる。このような繊維状ウェブ構造物の吸収特性を改良する1つの手段は、流体を吸収することによって膨潤ヒドロゲル物質を形成するいわゆる超吸収性重合体をウェブ構造物に配合することである。得られるヒドロゲルは、排泄体液などの流体を構造物内に保持するのに役立つ。」

1-2.(3ページ左上欄17行〜3ページ右上欄4行)「実際の商業的プラクティスにおいては、使い捨ておむつ用吸収性芯で使用されているゲル化剤の粒子は、しばしば不規則であるが、形状が高度に細長くはなく、粒径が約45〜850μであり、質量メジアン粒径約200〜370μを有する。この形状および大きさの粒子が、一般に、産業衛生および加工の容易さの考慮のため選ばれている。」

1-3.(3ページ左下欄14行〜17行)「本発明の更に他の目的は、吸収性構造物で使用するゲル化剤物質の粒径分布の単純な調節および制御により改良された吸収能力およびゲル化剤効率の吸収性構造物を提供することにある。」

1-4.(9ページ右上欄17〜19行)「このような繊維/粒子組み合わせ内で、ゲル化剤粒子は、ウェブを形成する親水性繊維間に十分に分散すべきである。」

1-5.(5ページ左下欄3〜5行)「使用する高分子ゲル化剤粒子は、一般に、実質上水不溶性のわずかに架橋された部分中和ヒドロゲル形成重合体物質からなるであろう。」

また、同じく原査定の拒絶の理由で引用した、欧州特許出願公開第389015号明細書(以下「引用例2」という)には、吸収体に用いる吸収性ゲル化物質のサイズについて、次の2-1の事項が図面とともに記載されている(訳文で示す)。
2-1.(6ページ2行〜3行)「さらに液体吸収速度は粒子の大きさに影響され得る。より大きいサイズの粒子の吸収速度は非常に遅くなる。」

III.対比
そこで、本願発明と、上記引用例1に記載されたものとを対比すると、記載1-1より、引用例1の、繊維状ウェブを含む「吸収性構造物」の「繊維状ウェブ構造物」は、本願発明の「吸収体構造」の「少なくとも一部に繊維材料を有する主構造」に相当する。
また、引用例1の「ゲル化剤の粒子」は、「実質上水不溶性のわずかに架橋された部分中和ヒドロゲル形成重合体物質からな」り(記載1-5)、「流体を吸収することによって膨潤ヒドロゲル物質を形成」し(記載1-1)、「ウェブを形成する親水性繊維間に十分に分散」されるものである(記載1-4)ので、本願発明の、水不溶性で吸収性でヒドロゲル形成で、主構造の中に分散される「重合体材料の複数の粒子」に相当する。

そこで、本願発明の用語を用いて対比すると、両者は次の点で一致する。
「少なくとも一部に繊維材料を有する主構造と、水不溶性で吸収性でヒドロゲル形成の重合体材料の複数の粒子とを有し、前記粒子は、主構造の中または上に配置または分散される吸収体構造。」

そして、両者は次の点で相違する。
a.本願発明の粒子は、その「少なくとも85重量%が、125μmと297μmの間の大きさを有する」のに対し、引用例1には、一般に用いられる粒子の大きさとして、「粒径が約45〜850μ」(記載1-2)である旨記載されているので、引用例1の粒子は、かかる大きさを有するものと認められる点。

b.本願発明の「重合体材料」は溶液重合されたものであるのに対し、引用例1記載の「ヒドロゲル形成重合体」は、溶液重合されたものであるか否か不明である点。

IV.相違点の判断
上記相違点について検討する。
1.相違点a.について
引用例1には、「吸収性構造物で使用するゲル化剤物質の粒径分布の単純な調節および制御により改良された吸収能力およびゲル化剤効率の吸収性構造物を提供する」(記載1-3)と記載されており、ゲル化剤物質の粒径分布を調節、制御することによって、その吸収能力等を制御することができることが示唆されている。
また、引用例2に、「さらに液体吸収速度は粒子の大きさに影響され得る。より大きいサイズの粒子の吸収速度は非常に遅くなる」(記載2-1)と記載されているように、粒子の大きさにより、液体吸収速度が変わることが知られている。
そこで、液体の適度な浸透性や、吸収保持性等を満足するように、商業的に通常用いられる範囲内で、適当なゲル化剤の粒子の粒径分布の範囲を定め、相違点aに係る構成のようにすることは、当業者が適宜実験により、格別困難なく選定し得た事項であり、また、このようにした点に、格別な臨界的効果も認められない。

2.相違点b.について
水不溶性で吸収性の重合体材料を溶液重合することは、例えば特開昭57-34101号公報に示すように、従来周知の技術であるので、引用例1のヒドロゲル形成重合体を溶液重合するようにして、本願発明の相違点bに係る構成のようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

V.むすび
したがって、本願発明は、引用例1、2の記載及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであると認められるので、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
以上のとおりであるから、本願は、他の発明について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2003-07-30 
結審通知日 2003-08-01 
審決日 2003-08-20 
出願番号 特願平4-510874
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A41B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 千葉 成就  
特許庁審判長 鈴木 公子
特許庁審判官 山崎 豊
松縄 正登
発明の名称 特定の粒径分布の超吸収体ヒドロゲル形成材料を含む吸収体構造  
代理人 森 秀行  
代理人 勝沼 宏仁  
代理人 名塚 聡  
代理人 吉武 賢次  
代理人 岡田 淳平  
代理人 永井 浩之  

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