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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65D |
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管理番号 | 1091272 |
審判番号 | 不服2002-15866 |
総通号数 | 51 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2003-04-18 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2002-08-20 |
確定日 | 2004-02-06 |
事件の表示 | 特願2001-290570「樹脂製容器、樹脂製容器の製造方法及び樹脂製容器入り飲料」拒絶査定に対する審判事件[平成15年 4月18日出願公開、特開2003-112716]について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成13年9月25日(国内優先権主張、平成13年7月31日(特願2001-231563号))に出願されたものであって、平成14年7月22日付で拒絶査定がなされ、これに対し、平成14年8月20日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年9月17日付で手続補正がなされたものである。 2.平成14年9月17日付の手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成14年9月17日付の手続補正を却下する。 [理由] この補正には、特許請求の範囲の請求項1において「容器製造におけるブロー成形金型の加熱媒体に水を用いて製造したこと」を特定する補正が含まれている。 しかしながら、当初明細書の段落【0027】には、「・・・ブロー成形機の金型温度は、120℃以下であり、好ましくは80℃以下に設定するとともに本実施の形態ではブロー成形品の肉厚も従来の耐熱ボトルよりも薄く設計してある。また、金型の加熱温度をこのように低くすることにより、金型の加熱に用いる加熱媒体として水を使用することができ・・・・」が記載されているのみで、容器製造におけるブロー成形金型の加熱媒体に水を用いて製造する際、水を温度限度なしで利用することについては記載されていない。してみると、本補正のように温度限定なしに水を利用することを特定する補正は、当初明細書に記載した事項の範囲内においてするものではない。 [むすび] 以上のとおり、この補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項で準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 3.本願発明について 平成14年9月17日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、平成14年4月24日付手続補正書により補正された明細書および図面の記載からみて、本願発明はその特許請求の範囲の請求項1ないし請求項5に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、請求項1に記載された発明は、次のとおりである。 「容器内を殺菌した後に殺菌済みの飲料を常温で充填する樹脂製容器において、この容器は飲料を加温販売するための容器であり、容器の口部の少なくとも一部が加熱により結晶化されているとともに口部の結晶化度は5%以上42%以下であり、且つ口部の下端に連続する容器胴部の結晶化度を10%以上35%以下にしていることを特徴とする樹脂製容器。」(以下「本願発明」という) (1)引用例 これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前の平成10年4月21日に頒布された特開平10-101051号公報(以下、「引用例1」という。)には、次の事項が記載されている。 ・記載1-1(段落【0002】、【0003】) 「近年、ジュース、天然水、各種飲用茶などの飲料用ボトルの素材として種々のプラスチック素材が用いられており、これらのプラスチック素材のうちポリエチレンテレフタレートなどのポリエステルは、透明性、ガスバリヤ性、耐熱性および機械的強度に優れているため多く採用されている。・・・・・。上記のジュースや飲用茶などは加熱滅菌処理されたものが高温でボトルに充填されるため、ボトルを形成するプラスチックは耐熱性が良くなければ、ボトルが変形したり、収縮したり、膨張するなどの問題を生じるおそれがある。このためボトルへ加熱した飲料等を充填してもボトルが変形することなく、自立性を保つことができる特性(以下「耐熱特性」ということがある。)を有するプラスチック製ボトルが求められている。」 ・記載1-2(特許請求の範囲) 「【請求項1】 X線分析により測定した胴部の結晶化度が25〜35%の範囲であり、かつ蛍光光度計を用いて測定した胴部の非晶部の配向度が0.14以下であることを特徴とする飽和ポリエステル樹脂製ボトル。 ・・・・・・・・。 【請求項3】 飽和ポリエステル樹脂からなるプリフォームを、95〜115℃に加熱して縦2.5倍以上、横3.5倍以上に延伸して二軸延伸ボトルを成形した後、90〜130℃の金型に3秒以上接触させて請求項1または2に記載の飽和ポリエステル樹脂製ボトルを製造すること特徴とする飽和ポリエステル樹脂製ボトルの製造方法。」 ・記載1-3(段落【0013】) 「・・・本発明に係る飽和ポリエステル樹脂製ボトルに用いられる飽和ポリエステル樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂などが挙げられ、好ましくはポリエチレンテレフタレート樹脂が使用される。」 ・記載1-4(段落【0042】) 「・・・[結晶化度の測定] ボトルの胴部から2mm角の切片を切り出し、密度勾配管法によって密度σ・・・を求め、・・・結晶化度xを算出する。」 以上の記載があることから、引用例1には、加熱滅菌済みのジュースや飲用茶などの飲料を充填する樹脂製ボトルにおいて、このボトルの口部の下端に連続するボトル胴部の結晶化度が25%〜35%である樹脂製ボトル、が記載されているものと認められる。 また、同じく原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前の平成5年4月16日に頒布された特開平5-92475号公報(以下、「引用例2」という。)には、 ・記載2-1(【特許請求の範囲】) 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 口部から首部の間でネジ部を除いて少なくとも首部が白化結晶化された有底パリソンから成形された飽和ポリエステル製二軸延伸ブロー成形ボトル。」 ・記載2-2(段落【0009】) 「本発明において白化結晶化させる範囲は、首部2のみでも良いが、更に口部1のうちネジ部3を除いて、支持リング部5からかぶら部4の範囲を白化結晶化させても差し支えない。」 が記載されている。 (2)対比 引用例1に記載された発明(以下、「引用例1の発明」という。)と、本願発明とを対比すると、引用例1の発明の「ボトル」は本願発明の「容器」に相当し、両者は容器内に飲料を充填する樹脂製容器でも同じであるから、 本願発明の用語を用いて表現すると、両者は「 殺菌済みの飲料を充填する樹脂製容器において、この容器の口部の下端に連続する容器胴部が結晶化していることを特徴とする樹脂製容器。 」で一致し、次の1〜4の点で相違する。 相違点1:本願発明は、「容器内を殺菌した後に飲料を常温で充填する 」と特定しているのに対して、引用例1の発明は、加熱した飲料等を容器内に充填するものであって、容器内を殺菌した後に飲料を常温で充填することを特定していない点。 相違点2:本願発明は、「飲料を加温販売するための容器」と特定しているのに対して、引用例1の発明はそのような特定をしていない点。 相違点3: 本願発明は、「容器の口部の少なくとも一部が加熱により結晶化されているとともに口部の結晶化度は5%以上42%以下であり、」と特定しているのに対して、引用例1の発明は容器の口部の少なくとも一部が加熱により結晶化されているのか否か不明である点。 相違点4:本願発明は、「容器胴部の結晶化度を10%以上35%以下にしている」と特定しているのに対して、引用例1の発明は、容器の胴部の結晶化度を25%〜35%としている点。 (3)判断 相違点について検討する。 相違点1について: 一般に、容器内に常温で飲料が充填されるものにおいて、充填後の搬送・販売等の期間中に容器内に細菌が増殖することが無いようにしておくことは当業者において自明のことであり、飲料を充填する前に容器内を殺菌しておくことは当業者に於ける常套手段であり、このように殺菌して充填するように特定した点に格別のことはない。 相違点2について: 容器に充填した飲料を冷却したり加温したりして販売することは、当業者において通常よく行われている販売手段であってそのような販売機も一般に周知のものである。してみると、容器に充填した飲料を冷却したり加温したりして販売することは、必要に応じて当業者が適宜選択してなし得ることであると認められるから、このように販売手段を特定することに格別のものはない。 相違点3について: 口部の少なくとも一部を加熱によって結晶化させ、耐熱性を向上させたり、加熱殺菌時の変形を防止するという技術的事項は、引用例2に記載されている。ところで、本願発明の明細書の段落【0034】には「また、口部4の結晶化処理は、・・・・・・。または、符号Fで示すように、口部4の上半分を結晶化するものであってもよい。・・・」の記載があり、本願発明の口部の上半分を結晶化させるものは、引用例2に記載された口部の下部分を結晶化させるものとは上下が逆であるが、口部の上下の一部を結晶化させるという考え方では同じである。してみると、引用例2に記載の技術的事項を引用例1の発明に適用して本願発明のように口部の一部を結晶化させることは、当業者が容易になし得ることと認められる。 次に、口部の結晶化度を本願発明のように5%以上42%以下と特定することについて検討する。 従来からPETボトルで耐熱性の向上や加熱時の変形防止等のために結晶化度を25%〜65%程度に限定することは当業者において周知(必要とあらば、引用例1の公報、特開平6-219433号公報、特開平8-164555号公報等参照)である。容器に所望の耐熱性向上や加熱時の変形防止や強度を与えるために必要なものとして当業者において周知である結晶化度の範囲を承知したうえで、本願発明は口部の結晶化度の範囲をやや少なめに5%以上42%以下と特定した発明に相当する。 本願発明の結晶化度を5%以上42%以下と特定した根拠についてさらに検討する。本願明細書に発明の目的で記載している、製造が容易であって、地球環境にやさしい樹脂製容器を製造するために、結晶化度を本願発明のように特定しても良いとする点について考察する。製造を容易にするためにとか、地球環境にやさしい樹脂製容器を製造するためには、その条件として、結晶化度をやや少なめに設定することが望ましいことは一般的に良く知られたことであり、強度等の条件を少し犠牲にしても結晶化度を少なめにしても良いという条件を採用すれば、金型の加熱温度を低くできるから成形が容易になる。結晶化度が少なくてもよいという条件を受け入れれば、結晶化に要する時間も短縮化でき、成形に必要な金型の加熱温度も低くでき、金型の加熱エネルギーの省エネ化ができるから製造コストも安価になる。また、成形品であるボトルの結晶化度が低いから機械的強度もやや弱く、粉砕等に要する機械力や必要エネルギーが省力化できるので、使用後のボトルの廃棄処理や再生処理も容易にすることができることは自明である。そしてこれらのことは、当業者が熟知していることである。 してみると、引用例2に記載された樹脂製容器の口部の一部を結晶化させるという技術的事項を引用例1の発明に適用するに当たり、容器の製造が容易であることや地球環境に良い容器を得ることを考慮して、容器の口部の結晶化度をやや少なめに、すなわち、5%以上42%以下とすることは、必要に応じて当業者が適宜なし得ることである。したがって、相違点3に格別のものはない。 相違点4について: 引用例1の発明は、容器の胴部の結晶化度の特定の範囲を25%〜35%としていて、本願発明の結晶化度と重なっている。上記の相違点3の検討でも記したように、従来からPETボトルで耐熱性の向上や加熱時の変形防止等のために結晶化度を25%〜65%程度に限定することは当業者において周知である。この周知の結晶化度限定の範囲を参照にして、胴部の結晶化度を、製造の容易や地球環境に良い等を考慮し、胴部の結晶化度を10%以上35%以下の範囲という従来よりも低い範囲に特定することは、相違点3で記したのと同じような理由で、当業者であれば必要に応じて適宜なし得ることである。よって、相違点4に格別のものはない。 (4)むすび 以上のとおり、本願発明は、引用例1及び2に記載された発明、並びに、周知の技術手段に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、 特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 それ故、本願は、特許請求の範囲の請求項2ないし5に係る発明について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2003-12-02 |
結審通知日 | 2003-12-04 |
審決日 | 2003-12-22 |
出願番号 | 特願2001-290570(P2001-290570) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(B65D)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 倉田 和博 |
特許庁審判長 |
鈴木 公子 |
特許庁審判官 |
溝渕 良一 市野 要助 |
発明の名称 | 樹脂製容器、樹脂製容器の製造方法及び樹脂製容器入り飲料 |
代理人 | 佐野 惣一郎 |