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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1091278
審判番号 不服2001-6362  
総通号数 51 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1994-06-14 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-04-20 
確定日 2004-02-06 
事件の表示 平成 4年特許願第320377号「ゲーム装置」拒絶査定に対する審判事件[平成 6年 6月14日出願公開、特開平 6-165878]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯、本願発明
本願は、平成4年11月30日の出願であって、その請求項1ないし9に係る発明は平成13年5月21日付手続補正書によって補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲に記載されたとおりであると認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明1」という)は、次のものである。

「ゲームを制御するゲーム装置本体と、前記ゲーム装置本体により制御されるゲームを表示する表示部とを有するゲーム装置において、複数の鍵を有する鍵盤型入力手段を有し、前記鍵盤型入力手段の鍵が押されることにより前記ゲーム装置本体に操作信号が入力され、前記操作信号により前記表示部に表示される前記ゲームのキャラクタが操作されることを特徴とするゲーム装置。」

2.引用例
2-1.引用文献1
これに対して、原査定の拒絶理由に引用された、本願の出願日前に出願公開された特開昭59-95081号公報(以下「引用文献1」という)には、
(記載1)
「本発明は、特に電子楽器の音を利用したゲームの内容及び方法に関するものである。」(第1ページ右下欄第8、9行)

(記載2)
「本発明の主なる目的は、ゲーム機能と楽音発生機能を兼ね備えた新規なゲーム機能付電子楽器を提供するものである。」(第2ページ左上欄第2―4行)

(記載3)
「(3)楽音LSIが独自にキースキャンは行うが、発声せずにCPUへキーデータを転送する。CPUスレーブモード。」(第2ページ左上欄最終行-右上欄第2行)

(記載4)
「本装置のゲームの一例として、音名と鍵盤位置と耳との対応ゲームの場合を説明する。」(第2ページ左下欄第10、11行)

(記載5)
「競技者(奏者)がゲームモードをファンクションスイッチS1で選択すると本装置はゲームモードに選択される。」(第2ページ左下欄第19行-右下欄第1行)

(記載6)
「本装置は入力された鍵データを評価して正誤を、正解時は、液晶表示部AでYESを表示し、正解ファンファーレを音で出力し、非正解時は、液晶表示部AでNOを表示する。」(第2ページ右下欄第11-14行)

(記載7)
「各レベルでゲーム終了後、液晶表示部に得点が提示され、100点以上であると、ファンファーレが鳴り響く。」(第3ページ左上欄第8-10行)

(記載8)
「ゲームが指定されると、得点カウンター、及び1問における誤答回数カウンターNカウンターを0にセットし、第2図2Cの楽器マークの表示数カウンターPカウンターを1にセットし、楽器音をフルートにセットし、楽器マークのフルートを表示する。…
…LCDのアルファベット表示部2bに”NO”を表示して、誤答回数カウンター、Nカウンターに1を加え、キーオフを待ち、キーオフ後1秒、かつ出題後1秒経過後、同音の問題を前記と同様に出題する。」(第3ページ右上欄第14行-左下欄最終行)

(記載9)
「本発明によるゲーム機能付電子楽器は音感教育用のゲーム機能を備えている」(第4ページ右上欄第13、14行)
と記載されている。
これらの記載によれば、引用文献1には
「ゲーム機能と楽音発生機能を兼ね備えたゲーム機能付電子楽器であって、CPU2と楽音LSI3と鍵盤5を有しており、音名と鍵盤位置と耳との対応ゲームの場合、楽音LSIがキースキャンを行いキーデータをCPUに転送し、キー入力データが問題音データと一致するかどうかを比較し結果を表示して、入力された鍵データを評価して正誤を正解時は液晶表示部AでYESを表示し非正解時は液晶表示部AでNOを表示する、ゲーム機能付電子楽器」という発明(以下引用発明1という。)が記載されていると認められる。

2-2.引用文献2
また、周知例としての実願昭63-137345号(実開平2-58831号)のマイクロフィルム(以下「引用文献2」という)には、
(記載10)
「本考案は、上記目的を達成するため、電話機、電卓、ワープロ、パソコン、コンピュータシステム等のデータを入力するデータ入力用キーボードにおいて、入力用のキーが、ピアノ、オルガン、エレクトーン等の楽器に使用される鍵盤の構造を有していることを特徴とする。」(第3ページ第13-18行)と記載されている。

2-3.引用文献3
また、周知例としての特開昭60-119977号公報(以下「引用文献3」という)には、
(記載11)
「従来、電子ゲーム装置としては小型のハンディタイプのものから大型のパソコンタイプのものまで多種多様のものが実現化されている。」(第1ページ右下欄第15-17行)

3.対比
本願発明1と引用発明1とを比較すると、後者の「CPU2及び楽音LSI3」は前者の「ゲーム装置本体」に、「液晶表示部A」は「ゲームを表示する表示部」に、「鍵盤5」は「複数の鍵を有する鍵盤型入力手段」に、「キー入力」は「鍵が押されること」にそれぞれ相当するから、
両発明は、
「ゲームを制御するゲーム装置本体と、前記ゲーム装置本体により制御されるゲームを表示する表示部を有する装置であって、複数の鍵を有する鍵盤型入力手段を有し、前記鍵盤型入力手段の鍵をゲームを行う者が押すことによりゲームをおこなう型式の装置」
である点において一致し、

(相違点1)本願発明1は「鍵盤型入力手段を有したゲーム装置」であるのに対し引用発明1は「ゲーム機能の他に楽音発生機能も有した、鍵盤型入力手段を有した電子楽器」であること、

(相違点2)本願発明1は「ゲーム」が「鍵が押されることにより表示部に表示されるキャラクタが操作される」ものであるのに対し、引用発明1では「鍵が押されること」により入力される「キー入力データ」が「問題音データと一致するかどうかを比較した結果によりYES又はNOの表示」をするものであること、

において相違する。

4.当審の判断
(相違点1)について、
引用発明1において、「ゲーム機能を有する電子楽器」は、ゲーム機能を果たしている状態を取り出せばゲーム機と異なるところはなく、ゲーム機には操作入力手段が必須であるから電子楽器がゲーム機能を果たす場合にも入力手段が必要なことは自明である。そして引用発明1においては、鍵盤を操作入力手段として用いている。
鍵盤を使用した電子楽器においては、鍵盤そのものはスイッチとしての機能しかなく、音響は電子回路及び電気音響変換手段により発生されるものであることは当業者には自明であり、電子楽器用鍵盤が、スイッチとしての機能を要求されるいかなる用途にもスイッチとして使用し得るということもまた当業者には自明である。
ところで、パソコンが電子ゲームの実行ハードウエアとして周知であることは上記引用文献3や本願当初明細書段落番号0003にも記載されているとおりである。そして、パソコンのキーボードがスイッチを並べたものであって、パソコンゲームにおいてはキーボードの各キーが、実行するゲームの種類に応じてゲームにおける操作機能を異にするものであることも、周知の事項である。
通常パソコンのキーボードはタイプライターの入力キーの形状をしているから、パソコンゲームにおいては入力手段の形状が予定している機能以外の機能に入力装置を使用する、ということは自明の事項にすぎない。
実際、音楽用鍵盤を音楽とは関係のないパソコンの入力用キーボードとして用いる例が、上記周知引用文献2に開示されている。
また、「キーボード」を直訳すれば「鍵盤」となることからみても、請求人が審判請求の理由において「(c)本願発明と引用発明との対比(本願発明の特徴) 本願発明の第1の特徴は、ゲーム装置のコントローラとして、もともと音楽演奏に適するように構成された鍵盤型入力手段を用いた点にある。ゲーム装置専用のコントローラやジョイステックは、ゲームを操作するには適しているものの、操作ボタンの数が少ないため、多様で多彩なゲーム装置を行うには限度があった。このような問題点を解決するために、音楽演奏に用いられる鍵盤型入力手段をコントローラとして用いている。鍵盤型入力手段であるので、もともと多数の鍵を有しており、鍵の押す順番や押す鍵の組み合わせ等により規定される複雑な操作入力の場合でも、容易に操作できる。」なる記載で主張している「本願発明の特徴」は、パソコンゲームにおける入力用キーボードを考慮するならば、当業者の適宜なし得る程度の事項が有する自明の特徴にすぎない。

よって相違点1は、周知事項から容易に想到しうる程度の事項である。

(相違点2)について、
一般に、表示を有するゲーム装置においては、ゲームを行う操作者による操作が、ゲーム装置における何らかの表示を伴う動作を発生させて所期のゲーム動作を実行してゆくものが周知である。
該一般に周知のゲーム装置におけるゲーム動作として、各種のものが周知であり、例えば引用発明1における、入力が正解と一致するかどうかを比較して、比較結果を表示する、という型式のゲーム動作は、所謂クイズゲームとして周知である。
また、本願発明1の様な、入力手段による信号によってゲームキャラクタが操作されるという型式のゲーム動作も、所謂アクションゲームやスクロールゲーム等各種周知のものが存在し、請求人も審判請求の理由において、「「ゲームのキャラクタ」というゲームにおける周知概念」という記載において示しているように、従来から周知である。
引用発明1において行っているゲームは、鍵盤を、音を発生させる鍵として用いているのではなくゲームの入力のための入力手段として使用しているゲームである。
鍵盤型入力手段により操作されるキャラクタを表示するゲームも、回答を鍵盤型入力手段で入力するクイズゲームの正誤の結果を表示するゲームも、入力の如何により表示情況が定まるという型式の周知のゲームである点において変わりはなく、共に入力により表示が変化する「ゲーム」である。
よって、「表示部を有し、入力手段を有するゲーム」という引用発明1の開示から、ゲーム装置において周知の「表示部に表示されるキャラクタを入力手段への入力により操作する」型式のゲームを想到することに困難はない。

従って、引用発明1の「ゲーム」の内容を、周知ゲームに変更することに、当業者であれば格別困難はないと判断される。

よって、相違点2は、当業者が容易に想到し得た程度の事項である。

よって、本願発明1は引用発明1及び周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることが出来たと判断される。

4.むすび
以上のとおり、本願発明1は、引用発明1及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2003-11-18 
結審通知日 2003-11-25 
審決日 2003-12-08 
出願番号 特願平4-320377
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 植野 孝郎  
特許庁審判長 中村 和夫
特許庁審判官 白樫 泰子
塩崎 進
発明の名称 ゲーム装置  
代理人 北野 好人  
代理人 三村 治彦  

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