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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65D
管理番号 1091279
審判番号 不服2001-3705  
総通号数 51 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-02-10 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-03-09 
確定日 2004-02-06 
事件の表示 平成 8年特許願第190962号「閉塞栓」拒絶査定に対する審判事件[平成10年 2月10日出願公開、特開平10- 35697]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 <1>請求項1に係る発明
本件出願は、平成8年7月19日の出願であって、その請求項1に係る発明は、平成12年11月27日付け手続補正書により補正された明細書および当初図面の記載からみてその特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「パネル面に形成されるパネル穴に係合するロック部を外周部に備え、パネル穴への装着時に押圧される押し壁を中央部に備え、押し壁をロック部よりパネル穴への挿入方向側に設け、ロック部がパネル穴に係合する取付け溝と、取付け溝の挿入方向側に隣接し、パネル穴への装着時にパネル穴の開口縁を乗り越えてパネルの裏面側に係止される係止ビークを備えた閉塞栓において、押圧側の押し壁の外周端からロック部の内周端にかけて複数の補強リブが設けられていることを特徴とする閉塞栓。」(「前記」は省略した、以下、「本件発明」という。)

<2>引用例
本件発明に対して、原査定の拒絶の理由には、下記の刊行物1および2が引用されている。
刊行物1:実願昭57-165550号(実開昭59-69076号)のマイクロフィルム
刊行物2:実公昭40-25599号公報

刊行物1および2には、図面を引用して、例えば次の記載がある。

<刊行物1>実願昭57-165550号(実開昭59-69076号)のマイクロフィルム
a:
「2.実用新案登録請求の範囲 板材(1)の被閉塞用孔(2)の一方の表面側孔縁に当接される大フランジ部(3)と、他方の表面側孔縁に当接される小フランジ部(4)と、両フランジ部間に形成された首部(5)と、小フランジ部(4)の外周縁から先細り状に又は、面取り状に形成された挿入部(6)と、大フランジ部(3)の中央部に形成された円形凹陥部(7)と、を具備して軟質弾性材料よりなることを特徴とする板材用のプラグ。」
b:
「〔考案の技術分野〕本考案は、例えば自動車のフロア一の水はけのために開けられた丸孔の如く、鋼板その他の板材に穿設された丸孔を塞ぐために用いられるプラグに関する。
〔考案の技術的背最及びその問題点〕
従来、この種のプラグはゴム材又は塩化ビニ-ル等の軟質弾性材よりなり、その一例として断面が第1図の如きものが存在していた。」(第1頁第14行〜第2頁第2行)
c:
「次に、他の従来例として第2図及び第3図の如きプラグが提案されていた。・・・しかしながら、第2図及び第3図に示す実施例においても板材の孔にそのプラグを嵌着するには、やはりそのプラグを3本の指で変形させながら、板材1の孔緑に沿って順次その首部5を押し込む必要がある。
なぜならば、第2図においてその上面中央にFなる力を加えてそのプラグを板材1の孔に嵌着させようとすれば、その上面中央部がへこみ、その分だけプラグの下部がa方向へ拡開し、小フランジ部4が外方へ拡がることになる。そのため、この実施例に於いても前記Fなる力によりワンタッチで孔に嵌着することは困難なものと思われる。」
〈第2頁第17行〜第3頁第15行)
d:
「〔考案の概要〕そこで、本考案は以上の問題点に鑑がみ、板材の孔に極めて容易迅速に嵌着することができるプラグを提供することを目的とする。
本考案のプラグは大フランジ部3が、板材1の被閉塞用孔2の一方表面側孔緑に当接されるものである。そして、小フランジ部4が他方の表面側孔縁に当接される。さらに、両フランジ3,4問に首部5が形成されている。それと共に、小フランジ部4の外周から先細り状又は面取り状に挿入部6が形成されている。さらに、大フランジ部3の中央部に円形凹陥部7が形成されたことを特徴とする。
従って、本考案のプラグは大フランジ部3の中央部に円形凹陥部7を有するから、該凹陥部7にその口径より小なる外径を有する棒体8の先端面等を当接して押庄すれば、円形凹陥部7の底部が力F方向に引き伸ばされる。すると、引き伸ばされた分だけ小フランジ部4の外径が縮小し、プラグは板材1の被閉塞用孔2に容易に嵌着される。即ち、棒体8等により、極めて容易に且つワンタッチでプラグを板材1に嵌着することができる。従って、容易迅速に板材に装着することができる作業性の優れたプラグを提供するものとなる。」(第4頁第17行〜第6頁第1行)
e:
「この実施例で、従来型プラグと異なる点は第4図において上面側となる大フランジ部3の中央部に円形凹陥部7が穿設されていることである。それと共に、本実施例では首部5の外周にシ-ル用の環状小凸部12が形成されている。これは、横断面が第4図の如く山型に形成され、該環状小凸部12が板材1の被閉塞用孔2の内面で押圧変形し、シールの作用をなすものである。なお、本実施例において前記円形凹陥部7の深さは、小フランジ部4の上面よりやや下方まで凹陥するようなものとしている。・・・本実施例においては、このプラグはゴム材からなり、その硬度をHs40°〜50°にしている。」(第7頁第7行〜第8頁第4行)
f:
「次に、プラグの円形凹嵌部7より小なる外径の棒体8下面を、該円形凹嵌部7の底面に当接すると共に、それをF方向に押圧すればよい。すると、本プラグは第6図の鎖線の状態から実線の状態に変形する。即ち、下方へ山形に円形凹嵌部7底面が変形する。すると、それに伴って小フランジ部4の外径が縮小する。そのため、該小フランジ部4は板材1の被閉塞用孔2を容易に通りのけ、板材1の上面が大フランジ部3下面に当接される。」(第8頁第16行〜第9頁第5行)
g:
第4図には、円形凹嵌部7の外壁に、上から大フランジ部3;首部5;小フランジ部4、挿入部6があり、円形凹嵌部7の内壁に補強リブ等は何ら設けられていなく、円形凹嵌部の底には、板状の底板があるプラグが示されている。

<刊行物2>実公昭40-25599号公報
h:
「この目的のために内スリ-ブがその下端にある厚い壁の密封部分と、スリ-ブ上端と前記厚壁密封部分との間にある薄い壁部分とを有し、環状の厚い下部補強部分が内スリーブの下部の薄い壁部分とカバー部分との間に設けられ、軸方向の補強リブが内スリーブの円筒形内面に設けられておりこれらの点がこの考案の特徴である。」(第1頁右欄第26〜32行)
i:
「びん蓋の密封効果は更に次のようにして増すことだ出来る。びん蓋に硬さを与えるために、その内スリ-ブは補強リブ8(垂直の方が有利)を付して作られることが出来る。此れらのリブは、その端部が環状補強材4に接触するように延長している。」(第2頁右欄第12〜17行)
j:
「この考案は、びん頸部に挿入圧縮されないときびん頸部の内径よりも大きい外径を有する内スリーブと、内スリーブの下端に結合されたこの内スリーブを閉じる上向湾曲カバー部分と、内スリーブの上端に結合され外方に延びびん口の上に位置するようになっている環状補強カラー部分とを有する一片からなる熱可塑性合成樹脂製びん蓋に関するものである。」(第1頁左欄第9〜16行)
k:
第1図、第2図には、びん首部の穴に係合するびん蓋の内スリーブ1の内側面に、環状補強材4外周から上端まで、複数の補強リブ8が設けられたものが示されている。


<3>本願発明と刊行物1記載の発明との対比
刊行物1記載の発明(特に、第4〜6図の例)と、本件発明とを対比すると、刊行物1記載の発明の「プラグ」「板材1」「被閉塞用孔2」が、本件発明の「閉塞栓」「パネル」「パネル穴」に、各々相当し、刊行物1記載の発明の「円形凹嵌部7」の底板が、本件発明の「押し壁」に相当する。
そして、刊行物1記載の発明には、本件発明の「ロック部」に相当する用語はないが、本件発明において「ロック部」を構成するのが、明細書の段落【0011】及び第1〜5図を参照すれば、上から衝合鍔部;取付け溝;係止ビークであり、刊行物1記載の発明の大フランジ部3;首部5;小フランジ部4が、本件発明の「ロック部」に相当するということができる。
そうすると、両者は、
「パネル面に形成されるパネル穴に係合するロック部を外周部に備え、パネル穴への装着時に押圧される押し壁を中央部に備え、ロック部がパネル穴に係合する取付け溝と、取付け溝の挿入方向側に隣接し、パネル穴への装着時にパネル穴の開口縁を乗り越えてパネルの裏面側に係止される係止ビークを備えた閉塞栓」、
で一致するが、次の点で相違する。
<相違点1>
本件発明が、
「押し壁をロック部よりパネル穴への挿入方向側に設け」ているのに対し、
刊行物1記載の発明は、
「円形凹嵌部7の深さは、小フランジ部4の上面よりやや下方まで凹嵌するようなものとしている」(記載e)点。
<相違点2>
本件発明が、
「押圧側の押し壁の外周端からロック部の内周端にかけて複数の補強リブが設けられている」ものであるのに対し、
刊行物1記載の発明は、補強リブが設けられていない(記載g)点。

<4>相違点についての検討
上記相違点について、次に検討する。
<相違点1について>
刊行物1記載の発明における、本件発明の「押し壁」に相当する、円形凹嵌部7の底板の位置は、底板に棒体8の下面を当接し、F方向に凹圧したときに、底板が変形し、それにより小フランジ部4の外形が縮小し得る範囲で、適宜設定できるものであるから、本件発明のように、押し壁をロック部よりパネル穴への挿入方向側へ設けることは、当業者が適宜なし得たことである。
<相違点2について>
本件発明が相違点2の事項を採用したのは、「挿入方向側へは容易に変形するが、反挿入方向側への変形は前記補強リブによって容易に変形できないので、前記パネル穴への装着後は前記係止ビークによって強固に前記パネルに係止されると共にシール性を確保することができ」(段落【0018】)るようにするためと解される。
しかし、刊行物2には、びん蓋に関して、「軸方向の補強リブが内スリーブの円筒形内面に設けられている」(記載h)との記載があると共に、第1図、第2図を参照すれば、閉塞栓の対象物(びん首部)の穴に係合する部分(内スリーブ1)の内側面に、底面(環状補強材4)外周から上端まで、複数の補強リブ8が設けられ(記載i、k)ており、該補強リブによりびん蓋に硬さを与え、密封効果を増すことができる(記載i)ことが、記載されている。
そうすると、押圧側の底面の外周端から略円筒形の内側壁の上端縁にかけて「複数の補強リブが設けられている」点は、刊行物2に記載されているということができ、上記刊行物1記載の発明の円形凹嵌部7の内壁面に、刊行物2記載の発明のように複数の補強リブを設けて、上記相違点2の「押圧側の押し壁の外周端からロック部の内周端にかけて複数の補強リブが設けられている」構成にすることは、必要に応じて当業者が容易に想到し得ることである。


<5>むすび
以上のとおり、本件発明は、刊行物1および刊行物2記載の発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論の通り審決する。
 
審理終結日 2003-12-01 
結審通知日 2003-12-03 
審決日 2003-12-16 
出願番号 特願平8-190962
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B65D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 谷治 和文  
特許庁審判長 鈴木 公子
特許庁審判官 山崎 勝司
西村 綾子
発明の名称 閉塞栓  
代理人 添田 全一  
代理人 萩野 平  

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