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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G05D
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G05D
管理番号 1091349
審判番号 不服2002-6691  
総通号数 51 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-01-16 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-04-18 
確定日 2004-02-05 
事件の表示 平成 8年特許願第167565号「標識認識水平搬送システム」拒絶査定に対する審判事件[平成10年 1月16日出願公開、特開平10- 11135]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成8年6月27日の出願であって、平成14年3月12日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年4月18日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年5月20日付で手続補正がなされたものである。

2.平成14年5月20日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成14年5月20日付の手続補正を却下する。
[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「【請求項1】 自動搬送台車の走行経路に撤去可能に配置され、作業員にとっても一目でその標識の意味内容が理解される、文字、記号、絵などのパターンのみからなり、走行および停止の表示内容を含む誘導標識と、
前記自動搬送台車に設けられた前記誘導標識の視認手段と、
前記自動搬送台車に設けられ、前記視認手段から得られた前記誘導標識の画像の大きさに基づき前記誘導標識までの距離を測定する距離測定部と、
前記視認手段の視認結果と前記距離測定部の測定データに応じて前記自動搬送台車の走行を制御する制御手段とを備えたことを特徴とする標識認識水平搬送システム。」
と補正された。
上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「誘導標識」について「作業員にとっても一目でその標識の意味内容が理解される、文字、記号、絵などのパターンのみからなり、走行および停止の表示内容を含む」との限定を付加したものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用例等
原査定の拒絶の理由に引用された実願平2-13390号(実開平3-104207号)のマイクロフィルム(平成3年10月29日公開、以下「引用例」という。)には、図面とともに、以下の記載がある。
(a)「以上のように左右に条として配置したカラーコーンP1・P2を、防除作業車が自動繰向する場合の識別標識として、カラーテレビカメラ1が捉えるのである。」(6頁10行〜13行)
(b)「第4図に示す如く、条の端部に左折識別標識14を設け該左折識別標識14をカラーテレビカメラがパターン認識した場合には、一気に左折すべく構成しているものである。」(6頁18行〜7頁1行)
(c)「第9図は自動繰向開始標識15を・・・それぞれの場合ごとに、決められた識別標識があり、これをカラーコーンP1・P2の間に配置しておくことにより、カラーテレビカメラ1がこれを捉え、このパターンをA/D変換してパターン状にデジタル信号として表示することにより、コンピュータはそれぞれの識別標識が、所定の入力データの大きさまで近付いた場合において初めて意味を判断し、それにそって繰向操作や、噴霧バルブの操作や、変速レバーの操作を行うのである。」(7頁2〜18行)
(d)なお、第9〜14図に記載の右折・右折等の標識は、それぞれの意味を持つ絵又は記号として予め人間が定めたものであり、これらを設置する作業員は各標識の意味を知らなければ所望の走行経路を作り得ないから、前記作業員にとってこれらの標識を見たとき一目でその意味が解ることは当然のことにすぎないと認められる。又、右折・左折する行為は車両にとって走行の一種であると認められる。

これらの記載及び図面の記載によれば、引用例には、
「自動走行車の走行経路の左右に撤去可能に配置されたカラーコーンと作業員にとっても一目でその標識の意味内容が理解される記号又は絵からなる走行及び停止の表示内容を含む識別標識と、
前記自動走行車に設けられた前記カラーコーンと前記識別標識のパターンの認識手段と、
該認識手段によるカラーコーンの認識結果に応じて自動走行車の操向を制御し、該認識手段による識別標識の認識結果に応じて走行を制御する制御手段とを備えた作業車の自動繰向機構。」の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認めることができる。

同じく、原査定の拒絶の理由に周知技術として掲げられた特開昭62-285115号公報(昭和62年12月11日公開、以下「周知例1」という。)には、「マークを検出する撮像手段を具備した無人車の走向制御装置において、無人車の走行方向に一定幅のマークを設け、前記撮像手段における前記マークの画像位置から無人車の左右方向のずれを検出し、該画像の水平方向の長さにより無人車とマーク間の距離を検出し、これらの検出結果に基づいて無人走行車を走行させる点。」(2頁左上欄18行〜右上欄17行)が記載されている。

また、同じく掲げられた特開平3-71310号公報(平成3年3月27日公開、以下「周知例2」という。)には、「指標を走行機体に設けたカメラで撮影し、これを画像認識処理して自動走行制御を行うよう構成した作業用走行車において、前記画像認識処理はカメラにより撮影した前記指標の大きさから指標と走行機体間の距離を検出し、該検出出力により機体の反転制御を行うと共に、又前記指標の中央からのずれを検出し、該検出出力により機体の繰向制御も行うようにする点。」(3頁左上欄17行〜左下欄13行、4頁右上欄10行〜15行参照)が記載されている。

(3)対比
そこで、本願補正発明と引用発明とを比較すると、引用発明の「識別標識」は、本願補正発明の「誘導標識」に相当し、以下同様に、「認識手段」は「視認手段」に、「認識結果」は「視認結果」に、「作業車」は「自動搬送台車」に、「作業車の自動繰向機構」は「標識認識水平搬送システム」にそれぞれ相当するから、両者は、
「自動搬送台車の走行経路に撤去可能に配置され、作業員にとっても一目でその標識の意味内容が理解される、記号、絵などのパターンであって、走行および停止の表示内容を含む誘導標識と、
前記自動搬送台車に設けられた前記誘導標識の視認手段と、
前記視認手段の視認結果に応じて前記自動搬送台車を制御する制御手段とを備えたことを特徴とする標識認識水平搬送システム。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1]
本願補正発明は、走行経路に「誘導標識」だけを撤去可能に配置しているが、引用発明はこのような標識の他に、作業車を走行経路に沿って案内(繰向)するためのカラーコーンも撤去可能に配置している点。
[相違点2]
本願補正発明は、「自動搬送台車に設けられ、視認手段から得られた誘導標識の画像の大きさに基づき前記誘導標識までの距離を測定する距離測定部」を備えているのに対し、引用発明はこのような構成を備えていない点。
[相違点3]
本願補正発明は、「視認手段の視認結果と前記距離測定部の測定データに応じて前記自動搬送台車の走行を制御する制御手段」を備えているのに対し、引用発明の制御手段は、「距離測定部の測定データ」を用いていない点。

(4)当審の判断
上記相違点について検討する。
[相違点1]について
標識(マーク又は指標)を撮影する手段(撮像手段又はカメラ)を備えた無人走行車(無人車又は作業走行車)の制御装置(システム)において、繰向及び走行を制御するために標識のみを設置し、これの撮影結果により無人走行車の繰向及び走行を制御する手段を備えることは、上記周知例に記載のように周知の技術であるから、カラーコーンと識別標識を設置して繰向と走行を別々に制御する引用発明においても、識別標識のみを用いて繰向及び走行を制御するように構成することは、当業者が容易に考えられるものと認められる。

[相違点2、3]について
上記相違点1に記載のように識別標識のみを用いて無人走行車を制御する際、無人走行車と標識間の距離を測定する手段(検出手段)を備えると共に、その測定データ(検出出力)を無人走行車の制御に用いることは、上記周知例(前記2.(2)の周知例1,2参照)に記載のように当然行うべきことにすぎないと認められる。

そして、本願補正発明の作用効果も、引用発明及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。
したがって、本願補正発明は、引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第4項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
平成14年5月20日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成13年6月22日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「【請求項1】 自動搬送台車の走行経路の左右に撤去可能に配置される誘導標識と、前記自動搬送台車に設けられた前記誘導標識の視認手段と、前記自動搬送台車に設けられ、前記視認手段から得られた前記誘導標識の画像の大きさに基づき前記誘導標識までの距離を測定する距離測定部と、前記視認手段の視認結果と前記距離測定部の測定データに応じて前記自動搬送台車の走行を制御する制御手段とを備えたことを特徴とする標識認識水平搬送システム。」

(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例、および、その記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記2.で検討した本願補正発明から「誘導標識」の限定事項である「作業員にとっても一目でその標識の意味内容が理解される、文字、記号、絵などのパターンのみからなり、走行および停止の表示内容を含む」との構成を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(4)」に記載したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2003-11-27 
結審通知日 2003-12-02 
審決日 2003-12-16 
出願番号 特願平8-167565
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G05D)
P 1 8・ 121- Z (G05D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 槻木澤 昌司  
特許庁審判長 三友 英二
特許庁審判官 牧 初
村上 哲
発明の名称 標識認識水平搬送システム  
代理人 原島 典孝  
代理人 一色 健輔  
代理人 黒川 恵  

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