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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L |
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管理番号 | 1091359 |
審判番号 | 不服2002-15672 |
総通号数 | 51 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1995-05-12 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2002-08-15 |
確定日 | 2004-02-05 |
事件の表示 | 平成 5年特許願第270653号「レジストパターンの形成方法」拒絶査定に対する審判事件[平成 7年 5月12日出願公開、特開平 7-122482]について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.本願は、平成5年10月28日の出願であって、原審において、平成14年7月4日付けで拒絶査定され、平成14年8月15日審判請求された後、平成14年9月12日付け手続補正書によって補正された明細書及び図面の記載からみて、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、請求項1に記載された次のとおりのものである。 「下地基板上にフォトレジストパターン形状制御膜を形成する工程と、 このフォトレジストパターン形状制御膜上にフォトレジスト膜を塗布する工程と、 所望のパターンを有するフォトマスクを介して露光手段により前記フォトレジスト膜に対して所望のパターンを転写する工程と、 上記パターン転写後のフォトレジスト膜を現像処理してフォトレジストパターンを形成する工程と、 上記現像処理の前に、上記フォトレジスト膜およびその下層のフォトレジストパターン形状制御膜を加熱処理する工程と、 上記フォトレジストパターンをマスクとしてRIE法により上記フォトレジストパターン形状制御膜をエッチングする工程 とを具備し、 上記フォトレジスト膜は、上記露光手段による露光光に感光して酸もしくは塩基性物質を発生し、上記フォトレジスト膜中のバインダーポリマーの溶解性を触媒作用的に変化させる作用を有する化学増幅型のフォトレジスト膜であり、 上記フォトレジストパターン形状制御膜は、上記フォトレジスト膜に対する露光に際して照射される放射線により酸もしくは塩基性物質を発生し、この酸もしくは塩基性物質が上記フォトレジスト膜中のバインダーポリマーの溶解性を触媒作用的に変化させる作用を有する添加剤を有し、 上記所望のパターンを転写する工程の際に上記フォトレジストパターン形状制御膜に発生した酸もしくは塩基性物質を、上記加熱処理する工程の際に上記フォトレジスト膜中に拡散させる ことを特徴とするレジストパターンの形成方法。」 2.原審の拒絶の理由に引用した引用例 引用例1:特開平5-107770号公報 引用例2:特開平4-335516号公報 2.1 引用例1の記載内容 【0007】〜【0013】段落には、「【0007】 【課題を解決するための手段】本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、化学増幅型レジストのネッキング現象を効果的に防止して、高精度の微細パターンを安定的に形成する方法を提供することにある。 【0008】すなわち、従来のリソグラフィープロセスを大幅に変更することなく、化学増幅型レジストを安定して使用できる方法であり、基板上に化学増幅型レジスト薄膜を形成する際に、酸発生剤の濃度の高いレジスト層を形成し、その上に酸発生剤の濃度が通常のレジスト層を形成することによって、裾部分の食い込み(ネッキング)を防止し、パターン脱落等の無い高精度の微細パターンを安定して形成するものである。 【0009】架橋反応を引き起こす酸発生剤は、レジスト膜中で濃度分布あるいは基板の材質によって酸の発生が低下し、このために基板界面での架橋密度が低くなり、基板との界面で食い込み現象が生じるものと考えられる。 【0010】そこで、本発明は、レジストの基板との界面での架橋密度を低下させないために、酸発生剤の濃度の高い第1のレジスト層を基板面に形成し、その上に通常の酸発生剤濃度の第2のレジスト層を形成することによって、基板界面での架橋密度を高め、ネッキング等を防止して、基板の種類によって密着性が不安定だった化学増幅型のレジストを安定的に使用可能としたものである。第1のレジストは、ベース樹脂、架橋剤、酸発生剤の混合物からなる通常使用されているレジストに酸発生剤をさらに添加し、また、第2のレジストにはあらかじめ酸発生剤が配合されたレジストをそのまま使用することができるが、第1のレジスト、第2のレジストのいずれも所望の配合によって調整しても良い。 【0011】以下に図面を参照して、本発明のレジストパターンの形成方法を説明する。図1(a)に示すように、基板1上に酸発生剤を通常のレジストよりも10〜50%多く含んだ化学増幅型レジスト(A)をスピンコーティング法等により均一に塗布し、加熱乾燥処理を60〜200℃で5〜60分間施し、厚さ0.01〜0.3μm程度の第1のレジスト層2を形成する。続いてこの上に通常の化学増幅型レジスト(B)を同様に塗布し、加熱乾燥処理を施し、厚さ0.3〜2.0μm程度の第2のレジスト層3を形成する。また、2層目のレジストが1層目のレジストと相溶性がある場合には、1層目と2層目の間にポリビニルアルコール等の溶剤がレジストを溶解しない物質からなる混合防止膜の薄膜を設けることが好ましい。 【0012】次に、図1(b)に示すように、レジスト層2、3を電子線等の電離放射線でフォトマスクを介して、あるいは直接に描画して露光4する。露光後に加熱して露光部分5での架橋反応を進め、続いて所定の現像液で現像し、リンス液でリンスして、図1(c)に示すようなレジストパターン6を形成すると、裾部分の食い込み現象等のないレジストパターンが形成される。 【0013】 【作用】化学増幅型レジスト層の基板面の酸発生剤の濃度を高くし、レジストパターンの裾部分の食い込み現象及び解像度の劣化等を防止することができ、従来のリソグラフィープロセスを大幅に変更することなく高精度のレジストパターンを安定して形成することが可能となる。」と記載されている。 2.2 引用例2の記載内容 第2頁左欄第29行〜同欄第37行に、 「【0005】シリコン基板1上に下層レジスト4を塗布した後に、下層レジスト4に対して耐ドライ現像性のある上層レジスト2を塗布する((a)図)。次いで、これに対して、荷電ビーム3を部分的に照射し((b)図)、その後に、適当な薬液で現像処理してパターン2aを得る〔(c)図)。最後に酸素ガスによるリアクテイプイオンエツチング(以下、O2RIEと記す)によりパターン2aをマスクにして下層レジスト4を加工し、所望のパターン4aを形成する((d)図)。」と記載されている。 3.対比 本願発明と引用例1記載の発明を対比する。 引用例1記載の「基板」及び「第2のフォトレジスト層」は、本願発明の、「下地基板」及び「フォトレジスト膜」に相当する。 また、引用例1記載の「第1のフォトレジスト層」は、「レジストの基板との界面での架橋密度を低下させないために、酸発生剤の濃度の高い第1のレジスト層を基板面に形成することによって、基板界面での架橋密度を高め、ネッキング等を防止して、基板の種類によって密着性が不安定だった化学増幅型のレジストを安定的に使用可能としたものである。第1のレジストは、ベース樹脂、架橋剤、酸発生剤の混合物からなる通常使用されているレジストに酸発生剤をさらに添加し、また、第2のレジストにはあらかじめ酸発生剤が配合されたレジストをそのまま使用することができるが、第1のレジスト、第2のレジストのいずれも所望の配合によって調整しても良い」(【0010】段落)ものであって、「化学増幅型レジスト層の基板面の酸発生剤の濃度を高くし、レジストパターンの裾部分の食い込み現象及び解像度の劣化等を防止する」(【0013】段落)ものであるから、本願発明のフォトレジストパターン形状制御膜の「フォトレジストパターン形状制御膜は、上記フォトレジスト膜に対する露光に際して照射される放射線により酸もしくは塩基性物質を発生し、この酸が上記フォトレジスト膜中のバインダーポリマーの溶解性を触媒作用的に変化させる作用を有する添加剤を有」する構成を満たしているから、引用例1記載の「第1のフォトレジスト層」は、本願発明の「フォトレジストパターン形状制御膜」に相当する。 さらに、引用例1記載の第1のレジスト層及び第2のレジスト層は、「露光後に加熱して露光部分5での架橋反応を進め、続いて所定の現像液で現像」(【0012】段落)するものであり、露光後に加熱することにより、特開平4-77746号公報第3頁左下欄第9行〜第12行に記載されているように、引用例1記載の発明では、第1のレジスト層から第2のレジスト層へ酸が拡散することは明らかであるから、引用例1記載の発明は、本願発明の、「所望のパターンを転写する工程の際に上記フォトレジストパターン形状制御膜に発生した酸もしくは塩基性物質を、上記加熱処理する工程の際に上記フォトレジスト膜中に拡散させる」構成を満たしており、また、本願発明の、「パターン転写後のフォトレジスト膜を現像処理してフォトレジストパターンを形成する工程と、 上記現像処理の前に、上記フォトレジスト膜およびその下層のフォトレジストパターン形状制御膜を加熱処理する」構成を満たしている。 そうすると、本願発明と引用例1記載の発明は、「下地基板上にフォトレジストパターン形状制御膜を形成する工程と、 このフォトレジストパターン形状制御膜上にフォトレジスト膜を塗布する工程と、 所望のパターンを有するフォトマスクを介して露光手段により前記フォトレジスト膜に対して所望のパターンを転写する工程と、 上記パターン転写後のフォトレジスト膜を現像処理してフォトレジストパターンを形成する工程と、 上記現像処理の前に、上記フォトレジスト膜およびその下層のフォトレジストパターン形状制御膜を加熱処理する工程と、 とを具備し、 上記フォトレジスト膜は、上記露光手段による露光光に感光して酸を発生し、上記フォトレジスト膜中のバインダーポリマーの溶解性を触媒作用的に変化させる作用を有する化学増幅型のフォトレジスト膜であり、 上記フォトレジストパターン形状制御膜は、上記フォトレジスト膜に対する露光に際して照射される放射線により酸を発生し、この酸が上記フォトレジスト膜中のバインダーポリマーの溶解性を触媒作用的に変化させる作用を有する添加剤を有し、 上記所望のパターンを転写する工程の際に上記フォトレジストパターン形状制御膜に発生した酸を、上記加熱処理する工程の際に上記フォトレジスト膜中に拡散させる ことを特徴とするレジストパターンの形成方法。」において一致し、本願発明は、「フォトレジストパターンをマスクとしてRIE法により上記フォトレジストパターン形状制御膜をエッチングする工程」を有するのに対し、引用例1記載の発明では、第1のフォトレジスト層及び第2のフォトレジスト層を同時にエッチングしており、本願発明のように、第1のフォトレジスト層のRIE法によるエッチングを含む、第1のフォトレジスト層及び第2のフォトレジスト層を別々にエッチングする構成ではない点で相違(以下、「相違点」という。)する。 4.判断 上記相違点について検討すると、2層のレジストを、下層のフォトレジスト層のRIE法によるエッチングを含む、下層のフォトレジスト層及び上層のフォトレジスト層を別々にエッチングすることは、当該技術分野において、周知手段(例えば、引用例2、特開平2-224240号公報及び特開平2-244625号公報参照。)にすぎず、引用例1記載の発明において、上記周知手段を適用することは当業者が容易になし得たことであり、また、その効果も当業者が予測できた程度のものにすぎない。 5.そうすると、本願請求項1に係る発明は、引用例1に記載された発明及び周知手段に基いて当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2003-11-18 |
結審通知日 | 2003-11-25 |
審決日 | 2003-12-09 |
出願番号 | 特願平5-270653 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H01L)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 佐竹 政彦、芝 哲央、南 宏輔 |
特許庁審判長 |
末政 清滋 |
特許庁審判官 |
辻 徹二 柏崎 正男 |
発明の名称 | レジストパターンの形成方法 |
代理人 | 鈴江 武彦 |