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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  B62D
審判 全部申し立て ただし書き3号明りょうでない記載の釈明  B62D
審判 全部申し立て 特36 条4項詳細な説明の記載不備  B62D
審判 全部申し立て ただし書き1号特許請求の範囲の減縮  B62D
審判 全部申し立て 5項1、2号及び6項 請求の範囲の記載不備  B62D
管理番号 1091419
異議申立番号 異議2003-70608  
総通号数 51 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1994-03-15 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-03-05 
確定日 2003-11-12 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3321770号「ゴムクロ-ラ」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3321770号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第3,321,770号(請求項の数1)の請求項1に係る発明は、平成4年12月31日(優先権主張平成4年7月10日)に特許出願され、平成14年6月28日に特許権の設定登録がなされた。
その後、特許異議申立人オーツタイヤ株式会社より特許異議の申立てがなされ、取消しの理由が通知され、その指定期間内である平成15年8月5日に訂正請求がなされたものである。

2.訂正の適否についての判断
(1)訂正の内容
ア.訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1中の、
「ゴム突起を形成してなるゴムクローラ」を、「ゴム突起を前記無端状ゴム弾性体の長手方向に一本づつ形成してなるゴムクローラ」と訂正し、
「前記低摩擦部材がゴム突起中で連続して埋設された」を、「前記低摩擦部材がゴム突起中で直線状に一体して連続している」と訂正する。
イ.訂正事項2
段落番号【0001】の「【産業上の利用分野】本発明は、車両の走行部に使用されるゴムクロ-ラに関するものであって、特に、ゴムクロ-ラの内周面より突出する突起の改良に係るものである。」を、
「【産業上の利用分野】本発明は、車両の走行部に使用されるゴムクロ-ラに関するものであって、特に、ゴムクロ-ラの内周面より突出するゴム突起の改良に係るものである。」と訂正する。
ウ.訂正事項3
段落番号【0007】の「ゴム突起を形成してなるゴムクローラ」を、「ゴム突起を前記無端状ゴム弾性体の長手方向に一本づつ形成してなるゴムクローラ」と訂正し、
「前記低摩擦部材がゴム突起中で連続して埋設された」を、「前記低摩擦部材がゴム突起中で直線状に一体して連続している」と訂正する。
エ.訂正事項4
段落番号【0008】の「接触面に露出した複数の低摩擦部材がゴム突起を構成するゴム中にて一体に連続したもので、」を、
「接触面に露出した複数の低摩擦部材がゴム突起を構成するゴム中にて直線状に一体に連続したもので、」と訂正する。
オ.訂正事項5
段落番号【0009】の「かかる低摩擦部材としては、(中略)起高分子量ポリエチレン部材からなるものが好ましい。この起高分子量ポリエチレンとしては、」を、
「かかる低摩擦部材としては、(中略)超高分子量ポリエチレン部材からなるものが好ましい。この超高分子量ポリエチレンとしては、」と訂正する。
段落番号【0010】の「前記した分子量300万の起高分子量ポリエチレン」を「前記した分子量300万の超高分子量ポリエチレン」と訂正する。
カ.訂正事項6
段落番号【0010】の「ゴムクロ-ラ1の内周面より突出したゴム製の一本突起2に適用した例の、」を、「ゴムクロ-ラ1の内周面より突出した一本のゴム突起2に適用した例の、」と訂正する。
キ.訂正事項7
段落番号【0011】の「このシ-ト31はゴム突起2の両側面4、5及び頂面6に露出しており、露出部位から見れば、これらがゴム突起2中にて一体に連続する構成となっている。」を、「このシ-ト31 はゴム突起2の両側面4、5及び頂面6に露出しており、露出部位から見れば、これらがゴム突起2中にて両側面に露出した低摩擦部材が直線状に一体に連続する構成となっている。」と訂正し、
「シ-ト31 の特性より低摩擦性であって、」を、「シ-ト31 の特性により低摩擦性であって、」と訂正する。
ク.訂正事項8
段落番号【0012】の「前記シ-ト31 はゴム突起2は両側面4、5にのみ露出しているもので、この露出部位はゴム突起2中にて一体に連続しているものである。」を、「前記シ-ト31 はゴム突起2の両側面4、5にのみ露出しているもので、この露出部位はゴム突起2中にて直線状に一体に連続しているものである。」と訂正する。
ケ.訂正事項9
段落番号【0013】の「勿論、露出部位はゴム突起2中にて一体に連続していることは言うまでもない。」を、「勿論、露出部位はゴム突起2中にて直線状に一体に連続していることは言うまでもない。」と訂正する。
コ.訂正事項10
段落番号【0015】の「図8は図6のB-B線での各断面を示すものである。この例にあっては、十文字状に形成された低摩擦部材33をゴム突起2内に一体としたものであり、(中略)この部材33にあっては、これ又金型内にセットするだけでよく、場合によっては、4つに分割された低摩擦部材であってもよい。」を、
「図8は図6のB-B線での各断面を示すものである。この例にあっては、直線状に一体に連続して十文字状に形成された低摩擦部材33 をゴム突起2内に一体としたものであり、(中略)この部材33にあっては、これ又金型内にセットするだけでよい。」と訂正する。
サ.訂正事項11
段落番号【0016】の「ゴムクロ-ラの特に機体側に備えられた部材との接触・衝突が繰り返される突起部にあって、」を、「ゴムクロ-ラの特に機体側に備えられた部材との接触・衝突が繰り返されるゴム突起にあって、」と訂正する。
シ.訂正事項12
【図面の簡単な説明】の「【図1】図1は本発明の第1例であり、ゴムクロ-ラの内周面より突出した一本突起に適用した例のゴム突起における幅方向断面である。」を、「【図1】図1は本発明の第1例であり、ゴムクロ-ラの内周面より突出した一本のゴム突起に適用した例のゴム突起における幅方向断面である。」と訂正する。
【符号の説明】の「4、5‥‥突起の両側面、6‥‥突起の頂面、7、8‥‥突起の前後面。」を、「4、5‥‥ゴム突起の両側面、6‥‥ゴム突起の頂面、7、8‥‥ゴム突起の前後面。」と訂正する。

(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び拡張・変更の存否
ア.訂正事項1について
a)訂正事項1の前段は、請求項1の「ゴムクローラ」の「ゴム突起」の形成される位置と本数(一本のタイプか、一対のタイプか)を特定するものであって、この訂正によって、「ゴムクローラ」として「ゴム突起を無端状ゴム弾性体の長手方向に一本づつ形成してなる」ものに限定したものである。
すなわち、「ゴム突起」の形成状態と機能については、段落番号【0002】【従来技術】に「一般に、ゴムクロ-ラの内周面にその長手方向に向ってゴム突起が連続的に形成されており、かかるゴム突起はスプロケットからの駆動力の伝達に供され、或いは転輪との外れ防止として機能している。」と記載されているが、このゴム突起には、従来、無端状ゴム弾性体の長手方向に形成する際、「一対のタイプ」(図9参照)と「一本のタイプ」(図10参照)とがあり、上記訂正は、このうちの後者の「一本のタイプ」に限定したものである。
段落番号【0010】の【実施例】に「図1は本発明のゴムクロ-ラの第1例であり、ゴムクロ-ラ1の内周面より突出したゴム製の一本突起2に適用した例の、」と記載されているように、図1は「一本のタイプ」の例であり、また、図2〜図8はいずれも図1の変形例であるので、全ての実施例はこの「一本のタイプ」であり、上記限定事項は新規事項ではない。
b)訂正事項1の後段は、「低摩擦部材」がゴム突起中でどのように埋設されているかを特定し明確にしたもので、ゴム突起の両側面及び/又は前後に露出している「低摩擦部材」がバラバラに埋設されているのではなく、「直線状で一体に連続している」ものであることに特定したものである。その根拠は図1〜図8に図示されていることから明らかであり、新規事項ではない。
c)以上のとおり、訂正事項1は、新規事項ではなく、特許請求の範囲の減縮に該当し、かつ実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものでもない。

イ.訂正事項2、6、11及び12について
これらの訂正は、本件発明における「突起2」が請求項1に記載されているとおりの「ゴム突起」であることを明確にし、かつ、明細書において用語を統一するものであり、明りょうでない記載の釈明に該当する。

ウ.訂正事項3、4、7の前段、8〜10について
これらの訂正は、上記アで述べた訂正事項1の特許請求の範囲の請求項1の訂正との整合をとるためのものであり、明りょうでない記載の釈明に該当する。

エ.訂正事項7の後段について
この訂正は、低摩擦性がシート31の特性によることを明確にするものであり、明りょうでない記載の釈明に該当する。

オ.訂正事項5について
この訂正は、「起高分子量ポリエチレン」を「超高分子量ポリエチレン」と訂正するものであるが、これは元来『超』とすべきものを『起』と誤記したことは明らかであり、誤記の訂正に該当する。

(3)訂正の認容
したがって、上記訂正は、特許法第120条の4第2項第1号乃至第3号に掲げる事項を目的とし、かつ、同条第3項において準用する特許法第126条第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.特許異議申立てについての判断
(1)特許異議申立ての理由の概要
(理由1)板金製の「芯材」が低摩擦部材であることは本件特許の出願前周知(周知例:甲第2号証(特開平4-183601号公報))であるので、本件特許の請求項1に係る発明は、甲第1号証(特開昭60-61378号公報)に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当する。
(理由2)予備的な申立て理由として、以下の主張もしている。
本件特許の請求項1に係る発明において、低摩擦部材の素材として合成樹脂材に限定された場合には、甲第3号証(特開平3-246177号公報)に示すように従来周知であり、特許法第29条第2項に該当する。
また、低摩擦部材のゴム突起の表面の露出箇所に関し、「両側面又は前後面」の選択的記載を「両側面及びその前後面」と限定された場合でも、その点は設計的事項に過ぎないので、甲第1号証から容易に想到できることであり、特許法第29条第2項に該当する。
(理由3)本件特許の請求項1の記載事項「かつ前記低摩擦部材がゴム突起中で連続して埋設された」の意味が不明瞭であるので、特許法第36条第4項又は第5項の規定に違反している。

(2)本件特許発明
上記2.で示したように上記訂正が認められるから、本件特許の請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という)は、上記訂正請求に係る訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された、以下のとおりのものである。
「【請求項1】 無端状ゴム弾性体の外周面にゴムラグを形成し、内周面に駆動力の伝達或いは転輪との外れ防止に供されるゴム突起を前記無端状ゴム弾性体の長手方向に一本づつ形成してなるゴムクロ-ラであって、
低摩擦部材を前記ゴム突起中に埋設し、当該ゴム突起の両側面及び/又はその前後面の表面に露出させ、かつ前記低摩擦部材がゴム突起中で直線状に一体に連続していることを特徴とするゴムクローラ。」

(3)刊行物等
ア.異議申立人が証拠として提示した刊行物1(特開昭60-61378号公報、甲第1号証)には、農業用コンバイン等の走行装置に使用される「弾性無限軌道帯」に関し、以下の事項が記載されている。
a)「全体がゴム等の弾性材料で無端状に形成され、内面側中央部に長手方向に沿って駆動輪のピンに噛合する突起が定間隔に列設された弾性無限軌道帯において、
帯本体の中央部に長手方向に沿いかつ定間隔をおいて大略U字状の芯材をその両側突起片を内面側へ突出させて埋設し、
……
前記芯材の突起片にこれを被覆するように突起を形成し結果として突起内に突起片を埋設したことを特徴とする弾性無限軌道帯。」(特許請求の範囲)
b)「この発明は、農業用コンバイン等の走行装置に使用される弾性無限軌道帯に関し、更に詳しくいうと駆動輪のピンで駆動されるタイプの弾性無限軌道帯に関するものである。」(公報第1頁左下欄19行〜右下欄2行)
c)「図示する従来例における軌道帯100の突起101は、ピン12と噛み合うために剛性を高める必要があり、そのためにゴム等の弾性材料のボリュームを増加させざるを得なかった。また、ピン12は鉄製であるため、鉄とゴムとの噛み合いとなり、藁等が巻き付き確実な駆動を妨げたり、軌道帯100を破損させる原因ともなっていた。さらには、第3図に示すように、側面から力が作用すると突起101がゴム製であるために変形し、脱輪し易いという欠点があった。」(公報第2頁左上欄2行〜12行)
d)「この発明は、従来のピン駆動タイプの欠点を解消するためになされたのであり、ピンと噛み合う突起の剛性をゴム等のボリュームを増大させることなく図り、もって脱輪を防ぎ、藁の巻き付きを減少させた弾性無限軌道帯を提供することを目的とするものである。」(公報第2頁左上欄14行〜19行)
e)「第4図において、所謂ピン駆動タイプの軌道帯を示し、駆動輪10のピン12(第1図・第2図参照)が噛み合う突起2を帯本体1の中央部に列設し、接地面側にラグ3を形成してある。この軌道帯の全体は、従来と同様にゴム等の弾性材料で無端状に形成してある。前記突起2は、帯本体1の幅方向に2個形成し、帯本体1の長手方向に沿いかつ定間隔をおいて2個1組のものを多数列設してある。また、第4図に示す第1実施例では、水平部4aと両側から立ち上った突起片4b・4bとから成る大略U字状の芯材4を帯本体1及び突起2・2内へ埋設してある。換言すると、帯本体1の中央部に長手方向に沿い、かつ定間隔をおいて、大略U字状の芯材4を埋設し、この際その両側の突起片4b・4bを帯本体1の内面側へ突出させ、この突起片4b・4bを突起2・2で被覆したものである。」(公報第2頁右上欄12行〜左下欄8行)
f)「第10図(a)ないし(f)は、第1実施例の変形例を示し、芯材4の形状とこれを被覆する突起2・2の形状との各バリエーションを示すものであり、この他にも各種の形状のものが考えられる。」(公報第2頁右下欄10行〜14行)
g)第10図(f)を参照すると、芯材4を突起2・2の内部に埋設した構成において、突起2・2の外側面に芯材4を露出せしめたものが示されている。
h)「第11図は、第2実施例を示し、帯本体1の幅方向における突起2を1個としたものである。」(公報第2頁右下欄15行〜16行)
i)「なお、芯材4は、板金のプレス加工等により安価かつ容易に製造することができる。」(公報第2頁右下欄16行〜18行)
j)「突起の剛性がゴム量を増加させることなく高くなり、脱輪の発生を防止することができ、さらに全体としての強度も向上した。また、突起のピンとの噛合箇所の内部に芯材が存在するので、藁等が巻き付いてもピンと芯材とが鋏のように機能して藁等を切断することもできる」(公報第3頁左上欄6行〜11行)
以上のa)〜j)の記載と併せて図面を参照すると、上記刊行物1には次の発明が記載されているものと認める。
「全体がゴム等の弾性材料で無端状に形成され、内面側中央部に長手方向に沿って駆動輪のピン12に噛合する突起2が定間隔に列設され、接地面にラグ3を形成した弾性無限軌道帯において、
突起2は帯本体1の幅方向に2個形成し、帯本体1の長手方向に沿い定間隔をおいて2個1組のものを多数列設するが、この突起2は第11図の実施例に示すように帯本体1の幅方向の個数を1個としてもよく、
水平部4aと両側から立ち上がった突起片4b・4bとから成る大略U字状の芯材4を、帯本体1及び突起2内へ埋設し、芯材4の突起片4b・4bは突起2の外側面に露出させ、
該芯材4は板金のプレス加工等により製造された弾性無限軌道帯」(以下、「刊行物1記載の発明」という)

イ.異議申立人が証拠として提示した刊行物2(特開平4-183601号公報、甲第2号証)には、「農用車輪」に関し、以下の事項が記載されている。
k)「従来技術の1では、通常の路上走行時は、摩擦係数の小さい鉄製円板が接地するためスリップが大きく、」(公報第1頁右下欄15行〜17行参照)

ウ.異議申立人が証拠として提示した刊行物3(特開平3-246177号公報、甲第3号証)には、「タイヤ駆動式クローラベルト装置」に関し、
l)クローラベルトのサイドガイド部の摩擦を低下せしめるため、「両テーパー面の間には、例えばテフロンシート、テフロン混練りゴム、綿チップフィラー入りゴム、樹脂製スパイクピン、樹脂ネット等の摩擦低減部材を介設しているので、両テーパー面間の摩擦係数を小さくして滑り易くできる。」という技術が記載されている。(公報第2頁左下欄9行〜13行、第4頁左下欄3行〜第5頁左下欄9行参照)

(4)対比・判断
そこで、本件発明と刊行物1記載の発明とを対比すると、刊行物1記載の発明の「弾性無限軌道帯」「内面」「接地面」「帯本体1」「突起2」「ラグ3」は、それぞれ本件発明の「ゴムクローラ」「内周面」「外周面」「無端状ゴム弾性体」「ゴム突起」「ゴムラグ」に相当するとともに、刊行物1記載の発明の「芯材4」は板金製であるので駆動ピン又は転輪との係合・接触に対し「低摩擦部材」と言え、また、「芯材4」は突起中では一体に連続している形成されているので、
両者は、
「無端状ゴム弾性体の外周面にゴムラグを形成し、内周面に駆動力の伝達に供されるゴム突起を前記無端状ゴム弾性体の長手方向に一本づつ形成してなるゴムクロ-ラであって、
低摩擦部材を前記ゴム突起中に埋設し、当該ゴム突起の両側面の表面に露出させ、かつ前記低摩擦部材がゴム突起中で一体に連続していることを特徴とするゴムクローラ」
で一致し、次の点で相違する。
<相違点>低摩擦部材の形状に関し、本件発明では、ゴム突起中で「直線状に一体に連続して」形成されているのに対し、刊行物1記載の発明では、ゴム突起中で「大略U字状に」形成されている点
また、上記相違点に係る「ゴム突起の両側面の表面に露出させた『低摩擦部材』を、ゴム突起中で直線状に一体に連続して形成した」点は、異議申立人が提示した他の刊行物2、3(甲第2号証、甲第3号証)にも記載されていないし、示唆もされていない。
そして、上記相違点により、本件発明では、ゴム突起の左右又は前後から加わる外力に対して、その対抗力が直接的に発揮することができ、強度的にも強く、かつ、重量的にも比較的軽いものとすることができ、また、外力がゴム突起のみに集中し、ゴムクローラ本体には大きな影響を与えないという効果を奏する。
これに対して、刊行物1記載の発明では、低摩擦部材に相当する芯材4の全体形状が大略U字状に形成されているため、両側面の表面に露出する突起片4b・4bに加わる外力に対し、ゴムクローラの本体中に埋設されたU字状の中央の水平部4aに力が伝わって湾曲させるように応力が作用し、芯材4が折れ曲がったり折損したりする恐れがある。
よって、本件発明は刊行物1に記載された発明といえないし、刊行物1〜3から容易に発明できたものでもない。

(5)理由3に関する明細書及び特許請求の範囲の記載事項の不備について
上記2で認めた訂正により、異議申立人が申し立てた明細書及び特許請求の範囲の記載不備は解消された。

(6)むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件請求項1に係る特許を取り消すことができない。
また、他に本件請求項1に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
ゴムクロ-ラ
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 無端状ゴム弾性体の外周面にゴムラグを形成し、内周面に駆動力の伝達或いは転輪との外れ防止に供されるゴム突起を前記無端状ゴム弾性体の長手方向に一本づつ形成してなるゴムクロ-ラであって、低摩擦部材を前記ゴム突起中に埋設し、当該ゴム突起の両側面及び/又はその前後面の表面に露出させ、かつ前記低摩擦部材がゴム突起中で直線状に一体に連続していることを特徴とするゴムクローラ。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、車両の走行部に使用されるゴムクロ-ラに関するものであって、特に、ゴムクロ-ラの内周面より突出するゴム突起の改良に係るものである。
【0002】
【従来の技術】
一般には、ゴムクロ-ラの内周面にその長手方向に向ってゴム突起が連続的に形成されており、かかるゴム突起はスプロケットからの駆動力の伝達に供され、或いは転輪との外れ防止として機能している。特に転輪との間の外れ防止にあっては、ゴムクロ-ラが横方向の力を受け、転輪との間に相対的にズレを生じた場合、転輪をゴム突起との間で接触・衝突が繰り返され、このズレを元の状態に戻そうとすることになる。このため、ゴム突起に摩擦力が加えられ転輪との間で脱輪が生じ、更には摩耗や破損が生じることとなる。
【0003】
図9〜図10は、かかる状態を示すゴムクロ-ラ11の内周面であって、図9は無端状ゴム弾性体より一対の突起12、12が突出した形状のものであり、転輪20は通常はこの突起12、12を跨いで転動するが、ゴムクロ-ラ11と転輪20との間で相互にズレが生じた場合には、転輪20は点線で示す(一方のみを示す)ように突起12、12と接触・衝突し、転輪20のズレを規制して元の転動面に戻そうとする。このため、突起12、12の特に外側面での摩擦力が大きく加えられ、転輪との間で脱輪が発生し易く、場合によっては、摩耗や破損が生じることとなる。
【0004】
一方、図10は、一本突起12を突出させたゴムクロ-ラであるが、これも又、転輪20が正規の転動位置よりズレた場合には、転輪20と突起12が点線で示すように接触・衝突を繰り返してズレを防止することとなり、この場合にも前記と同様に転輪との間で脱輪が発生し易く、場合によっては、摩耗や破損が生じることとなる。又、かかる突起12は、図示しないスプロケットと係合し、駆動力の伝達に供される際に、スプロケットピンと突起12とは常に擦れを生じており、このため、突起12の特に根元部に変形が加えられ、このため転輪との間で脱輪が発生し易いばかりでなく、この部分に摩耗や破損を生じ易く、特に突起12がゴムでできている場合にこの傾向が大きい。
【0005】
更に言えば、この転輪20と突起12との接触・衝突時には、大きな走行抵抗が生じエネルギ-のロスをもきたしていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、以上のような従来の技術に鑑みてなされたものであり、ゴムクロ-ラの内周面に突出する突起を特殊な構造とし、転輪との間での脱輪の発生を少なくし、更には、突起を摩耗・変形・破損等から保護することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、以上の目的を達成するため鋭意研究を進めた結果、突起を次のような構成として改良をなしたものである。即ち、本発明の要旨は、無端状ゴム弾性体の外周面にゴムラグを形成し、内周面に駆動力の伝達或いは転輪との外れ防止に供されるゴム突起を前記無端状ゴム弾性体の長手方向に一本づつ形成してなるゴムクロ-ラであって、低摩擦部材を前記ゴム突起中に埋設し、当該ゴム突起の両側面及び/又はその前後面の表面に露出させ、かつ前記低摩擦部材がゴム突起中で直線状に一体に連続していることを特徴とするゴムクローラである。
【0008】
【作用】
本発明は以上のような構成を採用するものであり、特に転輪と常に係合するゴム突起にあって、転輪等の他の部材との接触・衝突が繰り返されるゴム突起面部に低摩擦部材を露出させたものであって、具体的には、接触面に露出した複数の低摩擦部材がゴム突起を構成するゴム中にて直線状に一体に連続したもので、従って、特に転輪のズレを制御する場合にあっても、ゴム突起と転輪との間の脱輪性の改良がなされ、しかもゴム突起の摩耗等が少なく、しかも走行抵抗も小さいゴムクロ-ラとなったものである。
【0009】
かかる低摩擦部材としては、セラミック材、合成樹脂材等が選択されるが、なかでも軽量化、安価、ゴムとの接着性等を考慮すると、超高分子量ポリエチレン部材からなるものが好ましい。この超高分子量ポリエチレンとしては、例えば三井石油化学工業株式会社(商標名:ハイゼックス・ミリオン)のものがあり、平均分子量が100万以上、好ましくは300万〜500万のものであり、特に耐摩耗性、耐衝撃性、自己潤滑性等にすぐれている材料である。この材料は粉末状をなし、金型等によってプレス成形し、容易に所定の形状に成形することができる。
【0010】
【実施例】
以下、本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明する。
図1は本発明のゴムクロ-ラの第1例であり、ゴムクロ-ラ1の内周面より突出した一本のゴム突起2に適用した例の、ゴム突起2における幅方向断面を示し、図2は図1のゴム突起2における長手方向の断面を示す。即ち、ゴムクロ-ラ1の内周面より突出するゴム突起2にあって、一枚のシ-ト状の低摩擦部材31がその長手方向に面を向けて埋設されている。この低摩擦部材31は、前記した分子量300万の超高分子量ポリエチレンより成形されたシ-ト材で、ゴムクロ-ラ1を成形する金型のゴム突起2に相当する凹み部へセットされて一体成形されたものである。
【0011】
図にて分るように、このシ-ト31はゴム突起2の両側面4、5及び頂面6に露出しており、露出部位から見れば、これらがゴム突起2中にて両側面に露出した低摩擦部材が直線状に一体に連続する構成となっている。そして、この露出部位が転輪20や図示しないアイドラ-、スプロケット等との接触・衝突時にこれらと接触するものであり、シ-ト31の特性により低摩擦性であって、このため転輪との間での脱輪が減少し、摩耗や破損が少なく、更に自己潤滑性がよいため走行抵抗も著しく低下することとなる。
【0012】
図3は第1例の変形例を示すゴム突起2の拡大図であり、この場合には、前記シ-ト31はゴム突起2の両側面4、5にのみ露出しているもので、この露出部位はゴム突起2中にて直線状に一体に連続しているものである。
【0013】
このように、ゴム突起2の何処の面にシート31を露出させるかは設計上任意であって、図4は第1例の別の変形例を示すゴム突起2における幅方向断面図であり、シ-ト31がゴム突起2の両側面4、5より張り出して露出している場合である。従って、ゴム突起2に接触・衝突する転輪等は、専ら張り出したシ-ト31に接触するため、脱輪性が改良され、ゴム突起2の破損等は低減されることとなる。勿論、露出部位はゴム突起2中にて直線状に一体に連続していることは言うまでもない。
【0014】
図4にあっては、シ-ト31はゴム突起2の頂面6には露出していないが、勿論頂面6に露出する場合もあり、図5は図4の例における更に変形例を示すゴム突起2の平面図であって、特にこの図にあっては、張り出したシ-ト31とゴム突起2とのコ-ナ-部にはゴム突起2と同質のゴム10が肉付けされている。
【0015】
図6は本発明の第2例のゴムクロ-ラの内周面を示し、図7は図6のA-A線での、図8は図6のB-B線での各断面を示すものである。この例にあっては、直線状に一体に連続して十文字状に形成された低摩擦部材33をゴム突起2内に埋設したものであり、ゴム突起2の両側面4、5、前後面7、8に、かかる部材33の表面が露出している。勿論、頂面6に露出する場合もある。このように構成されたゴム突起2にあっては、転輪20との接触・衝突における場合と同様、スプロケットとの接触の際のゴム突起2の摩耗や破損の防止にも効果があることとなる。この部材33にあっては、これ又金型内にセットするだけでよい。
【0016】
【発明の効果】
本発明は以上の構成を採用したものであり、ゴムクロ-ラの特に機体側に備えられた部材との接触・衝突が繰り返されるゴム突起にあって、低摩擦部材を露出させてなるものである。このため、特に転輪とのズレによる接触・衝突が生じたとしても、脱輪の発生が低下し、摩耗や破損が極く少なくなり、更に走行抵抗も減少することとなり、ゴムクロ-ラの寿命が著しく向上したものとなった。
【図面の簡単な説明】
【図1】
図1は本発明の第1例であり、ゴムクロ-ラの内周面より突出した一本のゴム突起に適用した例のゴム突起における幅方向断面である。
【図2】
図2は図1のゴム突起における長手方向の断面図である。
【図3】
図3は第1例の変形例を示すゴム突起の拡大図である。
【図4】
図4は第1例の更に別変形例を示すゴム突起における幅方向断面図である。
【図5】
図5は図4の更なる変形例を示すゴム突起の平面図である。
【図6】
図6は本発明の第2例を示すゴムクロ-ラの内周面である。
【図7】
図7は図6のA-A線での断面図である。
【図8】
図8は図6のB-B線での断面図である。
【図9】
図9は従来の一対の突起におけるゴムクロ-ラの内周面である。
【図10】
図10は従来の一本突起におけるゴムクロ-ラの内周面である。
【符号の説明】
1‥‥ゴムクロ-ラ、
10、11‥‥ゴム、
2‥‥ゴム突起、
31、33‥‥低摩擦部材、
4、5‥‥ゴム突起の両側面、
6‥‥ゴム突起の頂面、
7、8‥‥ゴム突起の前後面。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2003-10-24 
出願番号 特願平4-360355
審決分類 P 1 651・ 534- YA (B62D)
P 1 651・ 851- YA (B62D)
P 1 651・ 531- YA (B62D)
P 1 651・ 113- YA (B62D)
P 1 651・ 853- YA (B62D)
最終処分 維持  
前審関与審査官 石原 正博川村 健一  
特許庁審判長 八日市谷 正朗
特許庁審判官 出口 昌哉
神崎 潔
登録日 2002-06-28 
登録番号 特許第3321770号(P3321770)
権利者 株式会社ブリヂストン
発明の名称 ゴムクロ-ラ  
代理人 鈴木 悦郎  
代理人 鈴木 悦郎  
代理人 中野 収二  
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