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審決分類 審判 全部申し立て その他  A01F
審判 全部申し立て 2項進歩性  A01F
管理番号 1091449
異議申立番号 異議2001-72259  
総通号数 51 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1998-05-19 
種別 異議の決定 
異議申立日 2001-08-17 
確定日 2003-11-07 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3137059号「コンバインの穀粒排出装置」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3137059号の請求項1に係る特許を取り消す。 
理由 1.手続きの経緯
特許第3137059号の請求項1に係る発明についての出願は、平成1年4月14日に特許出願された特願平1-96011号の出願の一部を新たな出願(特願平9-328050号)としたものであって、平成12年12月8日にその特許権の設定登録がなされ、その後、ヤンマー農機 株式会社 より特許異議の申立てがなされ、取り消しの理由が通知され、その指定期間内である平成15年3月25日に訂正請求がなされ、再度の取り消しの理由が通知されたものである。
2.訂正の適否についての判断
(1)訂正の内容
ア.訂正事項a
特許明細書の特許請求の範囲の記載について、
「【請求項1】 穀粒タンク(1)内の穀粒を排出する旋回自在の排出オーガ(2)と、該排出オーガ(2)を旋回操作する手動旋回操作レバー(15)と、前記排出オーガ(2)を収納位置と排出作業側位置との間にわたり自動旋回させると共にこの自動旋回中に排出オーガ(2)を停止させ得る旋回状態指示スイッチ(A)とを設け、これら手動旋回操作レバー(15)と旋回状態指示スイッチ(A)とを、手動旋回操作レバー(15)の前側近傍に旋回状態指示スイッチ(A)が位置する状態で操縦席(24)の一側に配置したことを特徴とするコンバインの穀粒排出装置。」
とあるのを、
「【請求項1】 穀粒タンク(1)内の穀粒を排出する旋回自在の排出オーガ(2)と、該排出オーガ(2)を旋回操作する手動旋回操作レバー(15)と、前記排出オーガ(2)を収納位置と排出作業側位置との間にわたり自動旋回させると共にこの自動旋回中に排出オーガ(2)を停止させ得る旋回状態指示スイッチ(A)とを設け、これら手動旋回操作レバー(15)と旋回状態指示スイッチ(A)とを、手動旋回操作レバー(15)の前側近傍に旋回状態指示スイッチ(A)が位置する状態で操縦席(24)の一側で操縦席(24)の前端部より後側に且つ排出オーガ(2)を収納位置で係止する係止具(20)と操縦席(24)との間に配置したことを特徴とするコンバインの穀粒排出装置。」
と訂正する。
イ.訂正事項b
特許明細書の段落【0011】の記載について、
「【課題を解決するための手段】
本発明は、上述の如き課題を解決するために、以下のような技術的手段を講じる。即ち、穀粒タンク(1)内の穀粒を排出する旋回自在の排出オーガ(2)と、該排出オーガ(2)を旋回操作する手動旋回操作レバー(15)と、前記排出オーガ(2)を収納位置と排出作業側位置との間にわたり自動旋回させると共にこの自動旋回中に排出オーガ(2)を停止させ得る旋回状態指示スイッチ(A)とを設け、これら手動旋回操作レバー(15)と旋回状態指示スイッチ(A)とを、手動旋回操作レバー(15)の前側近傍に旋回状態指示スイッチ(A)が位置する状態で操縦席(24)の一側に配置したことを特徴とするコンバインの穀粒排出装置としたものである。」
とあるのを、
「【課題を解決するための手段】
本発明は、上述の如き課題を解決するために、以下のような技術的手段を講じる。即ち、穀粒タンク(1)内の穀粒を排出する旋回自在の排出オーガ(2)と、該排出オーガ(2)を旋回操作する手動旋回操作レバー(15)と、前記排出オーガ(2)を収納位置と排出作業側位置との間にわたり自動旋回させると共にこの自動旋回中に排出オーガ(2)を停止させ得る旋回状態指示スイッチ(A)とを設け、これら手動旋回操作レバー(15)と旋回状態指示スイッチ(A)とを、手動旋回操作レバー(15)の前側近傍に旋回状態指示スイッチ(A)が位置する状態で操縦席(24)の一側で操縦席(24)の前端部より後側に且つ排出オーガ(2)を収納位置で係止する係止具(20)と操縦席(24)との間に配置したことを特徴とするコンバインの穀粒排出装置としたものである。」
と訂正する。
ウ.訂正事項c
特許明細書の段落【0017】の記載について、
「【発明の効果】
以上のように、本発明においては、穀粒タンク(1)内の穀粒を排出する旋回自在の排出オーガ(2)と、該排出オーガ(2)を旋回操作する手動旋回操作レバー(15)と、前記排出オーガ(2)を収納位置と排出作業側位置との間にわたり自動旋回させると共にこの自動旋回中に排出オーガ(2)を停止させ得る旋回状態指示スイッチ(A)とを設け、これら手動旋回操作レバー(15)と旋回状態指示スイッチ(A)とを、手動旋回操作レバー(15)の前側近傍に旋回状態指示スイッチ(A)が位置する状態で操縦席(24)の一側に配置したので、旋回状態指示スイッチ(A)の操作によって、排出オーガ(2)を穀粒排出作業側位置と収納位置とにわたって自動的に旋回させることができ、且つこの自動旋回位置から手動旋回操作レバー(15)の手動操作によって微妙な位置合わせができて穀粒排出作業の効率が向上し、またこの自動旋回中に旋回状態指示スイッチ(A)の操作によって排出オーガ(2)の旋回を停止させることができて排出オーガ(2)自動旋回時の安全性が向上し、またこれら排出オーガ(2)の旋回を司るレバー形態の手動旋回操作レバー(15)とスイッチ形態の旋回状態指示スイッチ(A)とを誤操作少なく操作することができて排出オーガ(2)の旋回操作性が向上する。」
とあるのを、
「【発明の効果】
以上のように、本発明においては、穀粒タンク(1)内の穀粒を排出する旋回自在の排出オーガ(2)と、該排出オーガ(2)を旋回操作する手動旋回操作レバー(15)と、前記排出オーガ(2)を収納位置と排出作業側位置との間にわたり自動旋回させると共にこの自動旋回中に排出オーガ(2)を停止させ得る旋回状態指示スイッチ(A)とを設け、これら手動旋回操作レバー(15)と旋回状態指示スイッチ(A)とを、手動旋回操作レバー(15)の前側近傍に旋回状態指示スイッチ(A)が位置する状態で操縦席(24)の一側で操縦席(24)の前端部より後側に且つ排出オーガ(2)を収納位置で係止する係止具(20)と操縦席(24)との間に配置したので、旋回状態指示スイッチ(A)の操作によって、排出オーガ(2)を穀粒排出作業側位置と収納位置とにわたって自動的に旋回させることができ、且つこの自動旋回位置から手動旋回操作レバー(15)の手動操作によって微妙な位置合わせができて穀粒排出作業の効率が向上し、またこの自動旋回中に旋回状態指示スイッチ(A)の操作によって排出オーガ(2)の旋回を停止させることができて排出オーガ(2)自動旋回時の安全性が向上し、またこれら排出オーガ(2)の旋回を司るレバー形態の手動旋回操作レバー(15)とスイッチ形態の旋回状態指示スイッチ(A)とを誤操作少なく操作することができて排出オーガ(2)の旋回操作性が向上する。」
と訂正する。
(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
上記訂正事項aは、請求項1において、手動旋回操作レバー(15)と旋回状態指示スイッチ(A)の配置位置を、「操縦席(24)の前端部より後側に且つ排出オーガ(2)を収納位置で係止する係止具(20)と操縦席(24)との間」と限定するものであり、本件特許明細書の【図1】に記載されていた事項に基づくものであるから、上記訂正事項aは、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当し、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
上記訂正事項b及び訂正事項cは、上記訂正事項aと整合を図るものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当し、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(3)むすび
以上のとおりであって、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書、第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。
3.特許異議の申立てについての判断
(1)申立ての理由の概要
特許異議申立人 ヤンマー農機 株式会社 は、
甲第1号証:特開昭63-313523号公報
甲第2号証:特開昭61-227708号公報
を提出して、特許第3137059号の請求項1に係る発明は、本件出願前に日本国内において頒布された刊行物に記載された発明に基いてその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであって、請求項1に係る発明についての特許は、拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものであるから、特許を取り消すべき旨主張している。
(2)請求項1に係る発明
本件特許第3137059号の請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)は、訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「【請求項1】 穀粒タンク(1)内の穀粒を排出する旋回自在の排出オーガ(2)と、該排出オーガ(2)を旋回操作する手動旋回操作レバー(15)と、前記排出オーガ(2)を収納位置と排出作業側位置との間にわたり自動旋回させると共にこの自動旋回中に排出オーガ(2)を停止させ得る旋回状態指示スイッチ(A)とを設け、これら手動旋回操作レバー(15)と旋回状態指示スイッチ(A)とを、手動旋回操作レバー(15)の前側近傍に旋回状態指示スイッチ(A)が位置する状態で操縦席(24)の一側で操縦席(24)の前端部より後側に且つ排出オーガ(2)を収納位置で係止する係止具(20)と操縦席(24)との間に配置したことを特徴とするコンバインの穀粒排出装置。」
(3)特許法第29条第2項違反について
[引用刊行物]
当審が通知した平成15年5月2日付け取消しの理由に引用された、
刊行物1:特開昭63-313523号公報(甲第1号証)
には、以下の事項が記載されている。
1-ア.「穀粒タンクと、穀粒タンクより機外に排出できるオーガと、オーガを上下動させるオーガ上下動手段と、オーガを水平移動させるオーガ回動手段と、オーガ上動手段及び回動手段の動作を順次指定してオーガを作業位置にむけて移動させる自動排出位置移動手段を備えたコンバインにおいて、
自動排出位置移動手段の作動・停止を司どる自動スイッチと、
オーガ上下動手段及び回動手段用の手動スイッチと、
手動スイッチの下げ操作時自動排出位置移動手段の作動を禁止する手段、を備えたことを特徴とするコンバインのオーガ自動排出位置移動装置。」(特許請求の範囲)
1-イ.「本発明はコンバインに備える穀粒タンクの穀粒排出オーガを機体内側の収納位置から穀粒排出作業位置に移動させるオーガ自動排出位置移動装置に関する。」(第1頁左下欄第20行〜右下欄第3行。)
1-ウ.「(14)は揚穀筒(15)を臨ませて脱穀部(4)から取出す穀粒を貯留する穀粒タンク、(16)は運転席(17)及び運転操作部(18)を備える運転台であり、」(第2頁左下欄第1〜4行。)
1-エ.「第8図に示す如く、前記横排出オーガ筒(26)の中間部を支持するオーガ収納用オーガレスト(62)を前記脱穀部(4)前方上部の固定ブラケット(63)に支持板(64)及びセットボルト(65)を介し着脱自在に取付けている。」(第3頁右上欄第18行〜左下欄第2行。)
1-オ.「第1図に示す如く、前記オーガ筒(26)を自動排出及び自動収納するための制御回路(CPU)(71)を備えると共に、該回路(71)の内容を自動排出と自動収納とに切換える切換レバー(71a)と、これら各制御をタッチ操作により開始及び停止させる自動スイッチ(72)並びにオペレータが任意に前記オーガ筒(26)を移動させる手動優先の左回動、右回動、上昇、下降用の各手動スイッチ(73)(74)(75)(76)を前記運転操作部(18)に配設し、レバー(71a)及び各スイッチ(72)(73)(74)(75)(76)と前記リミットスイッチ(53)(54)及び収納位置スイッチ(67)を前記制御回路(71)に入力接続させる一方、前記電動モータ(34)(35)を右及び左回動リレー(77)(78)を介し、また前記油圧シリンダ(48)の切換弁を操作する上昇ソレノイド(79)及び下降ソレノイド(80)をそれぞれ前記制御回路(71)に出力接続させている。」(第3頁右下欄第3〜19行。)
1-カ.「而して、穀粒タンク(14)より穀粒を取出す場合、切換レバー(71a)を自動排出側に切換えてオーガ筒(26)を作業方向にむけて移動させるものである。」(第4頁左上欄第15〜17行。)
1-キ.「上記のように自動排出中に作業者が危険を察知した時など、自動スイッチ(72)をタッチ操作すると、直ちに自動排出を中断させることで安全性を確保し、また再度自動スイッチ(72)をタッチ操作することでその中断した後から自動排出を再開させ無駄な動作を省略できる。」(第5頁右上欄第13〜18行。)
1-ク.「一方、穀粒排出作業位置のオーガ筒(26)をオーガレスト(62)つまり収納位置に収納させる場合、前記切換スイッチ(71a)を自動収納側に切換えて収納方向にむけて移動させるものである。」(第6頁左上欄第5〜8行。)
[対比・判断]
「1-ア.」〜「1-ク.」の摘記事項及び第1図〜第13図から判断して、刊行物1には、
「脱穀部(4)と、脱穀部(4)から取出す穀粒を貯留する穀粒タンク(14)と、穀粒タンク(14)より穀粒を機外に取出すオーガ筒(26)と、オーガ筒(26)を上下動させるオーガ筒上下動手段と、オーガ筒(26)を水平移動させるオーガ筒回動手段と、運転席(17)と、運転操作部(18)と、脱穀部(4)の前方上部に取付けられオーガ筒(26)の中間部を支持するオーガ収納用オーガレスト(62)とを備えるとともに、穀粒タンク(14)より穀粒を取出すときに、オーガ筒(26)を作業方向にむけて移動させる場合に自動排出をし、穀粒排出作業位置のオーガ筒(26)を収納位置であるオーガレスト(62)に収納させる場合に自動収納をするための制御回路(CPU)(71)を有し、該回路(71)の内容を自動排出と自動収納とに切換える切換レバー(71a)と、これら各制御をタッチ操作により開始及び停止(危険を察知した時の中断)させる自動スイッチ(72)と、オペレータが任意にオーガ筒(26)を移動させる手動優先の左回動、右回動、上昇、下降用の各手動スイッチ(73)(74)(75)(76)とを、運転操作部(18)に配設してなるコンバインのオーガ筒(26)の自動位置移動装置。」が記載されている。また、第3図をみて、運転操作部(18)は、運転席(17)の前側にあり、運転席(17)の横側から横側前方にかけて操縦台があり、操縦台上に操従レバーが配置されていること、及びオーガ収納用オーガレスト(62)と運転席(17)との間に操縦台が位置しているから、この操縦台上の操縦レバーは、オーガ収納用オーガレスト(62)と運転席(17)との間に配置されていることが把握される。
そこで、本件発明と、刊行物1に記載されたものを対比すると、
刊行物1に記載されたものの「穀粒タンク(14)」、「オーガ筒(26)」、「運転席(17)」、及び「オーガレスト(62)」は、それぞれ本件発明の「穀粒タンク(1)」、「排出オーガ(2)」、「操縦席(24)」、及び「係止具(20)」に相当し、刊行物1に記載されたものの「切換レバー(71a)」と「自動スイッチ(72)」からなるものが、本件発明の「自動旋回中に排出オーガ(2)を停止させ得る旋回状態指示スイッチ(A)」に「自動旋回操作具」として共通し、刊行物1に記載されたものの「左回動、右回動、上昇、下降用の各手動スイッチ(73)(74)(75)(76)」の全部が、本件発明の「手動旋回操作レバー(15)」に「手動旋回操作具」として共通するから、本件発明と、刊行物1に記載されたものとは、
「穀粒タンク内の穀粒を排出する旋回自在の排出オーガと、該排出オーガを旋回操作する手動旋回操作具と、前記排出オーガを収納位置と排出作業側位置との間にわたり自動旋回させると共にこの自動旋回中に排出オーガを停止させ得る自動旋回操作具とを設けたコンバインの穀粒排出装置。」
の点で一致し、
下記1〜3の点で相違する。
相違点1
本件発明が、「手動旋回操作レバー(15)と旋回状態指示スイッチ(A)とを、手動旋回操作レバー(15)の前側近傍に旋回状態指示スイッチ(A)が位置する状態で操縦席(24)の一側で操縦席(24)の前端部より後側に且つ排出オーガ(2)を収納位置で係止する係止具(20)と操縦席(24)との間に配置し」ているのに対し、刊行物1に記載されたものは、「左回動、右回動、上昇、下降用の各手動スイッチ(73)(74)(75)(76)」、「切換レバー(71a)」、及び「自動スイッチ(72)」を「運転席(17)」の前側の「運転操作部(18)」に配置している点。
相違点2
本件発明が、「手動旋回操作具」を「手動旋回操作レバー(15)」で構成しているのに対し、刊行物1に記載されたものは、「左回動、右回動、上昇、下降用の各手動スイッチ(73)(74)(75)(76)」により構成している点。
相違点3
本件発明が、「自動旋回操作具」を「自動旋回中に排出オーガ(2)を停止させ得る旋回状態指示スイッチ(A)」で構成しているのに対し、刊行物1に記載されたものは、「切換レバー(71a)」と「自動スイッチ(72)」とにより構成している点。
以下、上記相違点について検討する。
ア.相違点1について
コンバインのオーガ筒の位置を移動させるという機能を共通とする異種の操作具があるとき、これらの異種の操作具を一列に近接配置することは、周知の技術手段であり(例えば特開昭62-151114号公報参照。)、これら操作具全体を「旋回操作部」として把握することができる。また、コンバインのオーガ筒の位置を移動させる旋回操作具を、運転席の側方のサイドコラム上の運転席から操作できる近傍に配置することも周知の技術手段である(例えば実願昭55-26955号(実開昭56-131739号)のマイクロフイルム参照。)。そうすると、本件発明の「手動旋回操作レバー(15)」と「旋回状態指示スイッチ(A)」も「旋回操作部」として把握することができ、本件発明が、「手動旋回操作レバー(15)と旋回状態指示スイッチ(A)とを、操縦席(24)の一側で且つ排出オーガ(2)を収納位置で係止する係止具(20)と操縦席(24)との間に配置し」た点は、刊行物1に記載されたものの、運転席(17)の前側の「運転操作部(18)」に「左回動、右回動、上昇、下降用の各手動スイッチ(73)(74)(75)(76)」、「切換レバー(71a)」、及び「自動スイッチ(72)」を配置している構成に換えて、旋回操作具の配置領域として利用することが周知である、「運転席(17)の側方の操縦台上の運転席から操作できる近傍」に、「左回動、右回動、上昇、下降用の各手動スイッチ(73)(74)(75)(76)」、「切換レバー(71a)」、及び「自動スイッチ(72)」を「旋回操作部」としてまとめ配置換えすることにより当業者が容易になし得たものである。このとき、「運転席(17)の側方の操縦台上の運転席から操作できる近傍」は、「オーガ収納用オーガレスト(62)と運転席(17)との間」に位置している。そして、本件発明はさらに、「旋回操作部」を「操縦席(24)の前端部より後側に」位置させ、且つ「旋回操作部」の内部配置として「手動旋回操作具」である「手動旋回操作レバー(15)」と「自動旋回操作具」である「旋回状態指示スイッチ(A)」とを、「手動旋回操作レバー(15)の前側近傍に旋回状態指示スイッチ(A)が位置する状態で」配置させているが、オーガ筒の旋回操作具を「操縦席の前端部より後側に」位置させることは、周知の技術手段であり(例えば実願昭59-160205号(実開昭61-75419号公報)のマイクロフイルム及び実願昭60-148399号(実開昭62-57638号公報)のマイクロフイルム参照。)、当業者が適宜規定し得たものである。また、「手動旋回操作具」である「手動旋回操作レバー(15)」の前側近傍に「自動旋回操作具」である「旋回状態指示スイッチ(A)」を位置させる前後関係も、操縦者の操作位置及び操作具の形態を考慮して、当業者が適宜規定し得るものである。
イ.相違点2について
「手動旋回操作具」を「手動旋回操作レバー」で構成することは周知の技術手段であるから(例えば、特開昭61-227708号公報(甲第2号証)、特開昭62-151114号公報、及び特開昭63-304917号公報参照。)、本件発明が、「手動旋回操作具」を「手動旋回操作レバー」で構成した点は、刊行物1に記載されたものの、「左回動、右回動、上昇、下降用の各手動スイッチ(73)(74)(75)(76)」に換えて、周知技術の「手動旋回操作レバー」を採用することによって当業者が容易になし得たものである。
ウ.相違点3について
本件発明の「旋回状態指示スイッチ(A)」は、機能単位としてのスイッチであり(【0024】参照。)、物としてのスイッチが、単一のスイッチであるか、複数のスイッチからなるかは、問うところではない。そして、自動旋回操作における制御回路の内容を切換えるのは、「レバー」に限るという根拠はなく、適宜の「切換スイッチ」で置換可能なものである。したがって、本件発明が、「自動旋回操作具」を「自動旋回中に排出オーガ(2)を停止させ得る旋回状態指示スイッチ(A)」で構成した点は、刊行物1に記載されたものの、「切換レバー(71a)」と「自動スイッチ(72)」のうちの「切換レバー(71a)」の部分に「切換レバー(71a)」に換えて「切換スイッチ」を採用することにより当業者が容易になし得たものである。そして、このものは、「自動旋回中に排出オーガを停止させ得る」ものである。(「1-キ.」参照。)
本件発明の奏する作用効果についてみても、上記相違点1〜相違点3から当業者が予測し得る範囲内のものであって、格別のものではない。
よって、本件発明は、刊行物1に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(4)特許法第39条第2項違反について
[引用出願]
当審が通知した平成15年5月2日付け取消しの理由に引用された、
特許出願1:特願平10-102649号(出願の遡及する日:平成1年4月14日)
(特許第3137070号)
の請求項1に係る発明(以下「引用発明」という。)は、平成15年3月25日付け訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「【請求項1】 穀粒タンク(1)内の穀粒を排出する旋回自在の排出オーガ(2)と、該排出オーガ(2)を旋回操作する手動旋回操作レバー(15)と、前記排出オーガ(2)を収納位置と排出作業側位置との間にわたり自動的に旋回させる自動旋回指示スイッチ(A)とを設けると共に、操縦席(24)の一側で排出オーガ(2)を収納位置で係止する係止具(20)と操縦席(24)との間に前記手動旋回操作レバー(15)を配置し、該手動旋回操作レバー(15)の前側に前記自動旋回指示スイッチ(A)を近接配置したことを特徴とするコンバインの排出オーガ操作装置。」
[対比・判断]
本件発明と引用発明を対比すると、引用発明の「穀粒タンク(1)」、「排出オーガ(2)」、「手動旋回操作レバー(15)」、「操縦席(24)」、及び「係止具(20)」は、それぞれ本件発明の「穀粒タンク(1)」、「排出オーガ(2)」、「手動旋回操作レバー(15)」、「操縦席(24)」、及び「係止具(20)」に相当し、引用発明の「自動旋回指示スイッチ(A)」は、本件発明の「旋回状態指示スイッチ(A)」に「旋回指示スイッチ」として共通するから、本件発明と、引用発明とは、
「穀粒タンク内の穀粒を排出する旋回自在の排出オーガと、該排出オーガを旋回操作する手動旋回操作レバーと、前記排出オーガを収納位置と排出作業側位置との間にわたり自動旋回させる旋回指示スイッチとを設け、この手動旋回操作レバーを、手動旋回操作レバーの前側近傍に旋回指示スイッチが位置する状態で操縦席の一側で且つ排出オーガを収納位置で係止する係止具と操縦席との間に配置したことを特徴とするコンバインの穀粒排出装置。」
の点で一致し、下記1、2の点で相違する。
相違点1
本件発明が、「手動旋回操作レバー(15)と旋回状態指示スイッチ(A)とを、手動旋回操作レバー(15)の前側近傍に旋回状態指示スイッチ(A)が位置する状態で操縦席(24)の一側で操縦席(24)の前端部より後側に且つ排出オーガ(2)を収納位置で係止する係止具(20)と操縦席(24)との間に配置し」ているのに対し、引用発明は、「操縦席(24)の一側で排出オーガ(2)を収納位置で係止する係止具(20)と操縦席(24)との間に手動旋回操作レバー(15)を配置し、該手動旋回操作レバー(15)の前側に自動旋回指示スイッチ(A)を近接配置し」ている点。
相違点2
本件発明の「旋回指示スイッチ」が、「排出オーガ(2)を収納位置と排出作業側位置との間にわたり自動旋回させると共にこの自動旋回中に排出オーガ(2)を停止させ得る旋回状態指示スイッチ(A)」であるのに対し、引用発明の「旋回指示スイッチ」は、「排出オーガ(2)を収納位置と排出作業側位置との間にわたり自動的に旋回させる自動旋回指示スイッチ(A)」である点。
以下、上記相違点について検討する。
ア.相違点1について
引用発明では、「自動旋回指示スイッチ(A)」と「操縦席(24)」及び「係止具(20)」の関係について、「手動旋回操作レバー(15)」と同様の直接的規定をしていない。しかしながら、「手動旋回操作レバー(15)の前側に自動旋回指示スイッチ(A)を近接配置し」ている以上、「自動旋回指示スイッチ(A)」の配置位置は、「操縦席(24)の一側」であり、「排出オーガ(2)を収納位置で係止する係止具(20)と操縦席(24)との間」であることに相違はない。
そして、本件発明及び引用発明が対象とするコンバインの穀粒排出装置においてオーガ筒の旋回操作具を「操縦席の前端部より後側」に位置させることは、周知の技術手段である(例えば実願昭59-160205号(実開昭61-75419号公報)のマイクロフイルム及び実願昭60-148399号(実開昭62-57638号公報)のマイクロフイルム参照。)。そうすると、本件発明が「手動旋回操作レバー(15)」及び「旋回状態指示スイッチ(A)」の配置位置について、「操縦席(24)の前端部より後側」と特定した点は、「手動旋回操作レバー(15)」及び「自動旋回指示スイッチ(A)」の配置位置について、「操縦席(24)の前端部より後側」と特に規定していない引用発明と比較して、単なる周知技術の付加があるにすぎない。
イ.相違点2について
本件発明の「旋回状態指示スイッチ(A)」は、機能単位としてのスイッチであり(【0024】参照。)、引用発明の「自動旋回指示スイッチ(A)」もまた機能単位としてのスイッチであるから(引用発明の特許明細書の【0023】参照。)、物としてのスイッチが、単一のスイッチであるか、複数のスイッチからなるかは、問うところではない。そして、本件発明及び引用発明が対象とするコンバインの穀粒排出装置において「自動旋回中に排出オーガを停止させる得る」ように「旋回指示スイッチ」を構成することは周知の技術手段である(実願昭61-84606号(実開昭62-196648号)のマイクロフイルム及び特開昭63-313523号公報参照。)。そうすると、本件発明が「旋回指示スイッチ」である「旋回状態指示スイッチ(A)」について、「自動旋回中に排出オーガ(2)を停止させ得る」と特定した点は、「旋回指示スイッチ」である「自動旋回指示スイッチ(A)」について、「自動旋回中に排出オーガ(2)を停止させ得る」ことを特に規定していない引用発明と比較して、単なる周知技術の付加があるにすぎない。
したがって、本件発明と引用発明とは同一で、同日に特許出願されたものであり、もはやその発明について特許を受けることができる一の特許出願人を定める協議をすることができないから、いずれも、その発明について特許を受けることができない。よって、本件発明に係る特許は特許法第39条第2項の規定に違反してされたものである。
(5)むすび
以上のとおりであって、請求項1に係る発明についての特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものである。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
コンバインの穀粒排出装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】穀粒タンク(1)内の穀粒を排出する旋回自在の排出オ-ガ(2)と、該排出オ-ガ(2)を旋回操作する手動旋回操作レバ-(15)と、前記排出オ-ガ(2)を収納位置と排出作業側位置との間にわたり自動旋回させると共にこの自動旋回中に排出オ-ガ(2)を停止させ得る旋回状態指示スイッチ(A)とを設け、これら手動旋回操作レバ-(15)と旋回状態指示スイッチ(A)とを、手動旋回操作レバ-(15)の前側近傍に旋回状態指示スイッチ(A)が位置する状態で操縦席(24)の一側で操縦席(24)の前端部より後側に且つ排出オーガ(2)を収納位置で係止する係止具(20)と操縦席(24)との間に配置したことを特徴とするコンバインの穀粒排出装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、コンバインの穀粒タンクから穀粒を機外へ排出する排出オ-ガを備えた穀粒排出装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、コンバイン作業においては、刈取作業によって収穫される穀粒を、機体に設けた穀粒タンク内に貯留しながら走行し、この穀粒タンク内の穀粒が所定量になると、適宜、走行を停止し、排出オ-ガを旋回させて、運搬車の荷台等へ穀粒を排出する作業を行う。
【0003】
この排出オ-ガは、その全長を機体の前後長に見合う長尺に構成すると共に、機体に対して旋回及び昇降回動可能に構成し、刈取作業走行中や路上走行中には、排出オ-ガ自体の損傷防止や周囲の安全性確保のために、機体上部の収納位置へ収納しておく。そして、穀粒排出作業時には、排出作業位置へ旋回させて穀粒排出作業を行い、この穀粒排出作業が終了すると、前記の収納位置まで旋回させて収納する。
【0004】
しかして、このように、排出オ-ガを旋回及び昇降回動させるために、モ-タや油圧シリンダ等の駆動装置を設けており、これらの駆動装置は、操縦席の近傍に配置した手動旋回操作レバ-によって駆動操作する構成である。即ち、操縦者がこの手動旋回操作レバ-を操作することによって、排出オ-ガを適宜の位置へ旋回乃至昇降回動操作できる。
【0005】
尚、近年、上記のように排出オ-ガを手動旋回操作する技術に加え、排出オ-ガを収納位置と排出作業側位置との間にわたり自動的に旋回させる技術が研究されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記のように、手動の旋回操作レバ-によって排出オ-ガの旋回乃至昇降回動操作を行う構成においては、操縦者は、排出オ-ガの移動状態を目視によって確認しながら操作しなければならず、排出作業位置や収納位置等の、目標位置への排出オ-ガの移動操作が煩雑なものとなっていた。
【0007】
また、手動の旋回操作レバ-によって排出オ-ガを旋回乃至昇降回動させ、排出作業位置や収納位置等の目標位置で停止させる際に、目標位置に対して行き過ぎを生じ易く、この目標位置への正確な位置合わせが困難なものとなっていた。このように、手動操作レバ-のみでは、排出オ-ガの操作性が悪く、このため穀粒排出作業に長時間を要する等、甚だ作業効率の悪いものであった。
【0008】
そこで、自動旋回指示スイッチの操作によって排出オ-ガを収納位置と排出作業側位置との間にわたり自動的に旋回させる構成とすれば、操縦者を上記のような煩雑な操作から解放することができる。しかしながら、このように排出オ-ガを自動的に旋回する構成としても、実際の穀粒排出作業においては、コンバインの機体に対して、運搬車の荷台等の穀粒排出作業位置が常に一定したものとはならない。
【0009】
このため、排出オ-ガが、自動旋回によって到達した対機体位置に拘束されるものであると、穀粒排出作業位置への適切な位置合わせができず、円滑な穀粒排出作業を行うことができない。また、このように排出オ-ガを自動的に旋回する構成とした場合、自動旋回であるが故に、この旋回中に排出オ-ガが障害物に衝突して破損を来しやすい。
【0010】
また、手動旋回操作レバ-は、突起物であるが故に、操縦者が不用意に触れて誤操作を招きやすく、一方、自動旋回スイッチは、機体各部を操作する他の操作スイッチ類と混同しやすく、誤操作を招きやすい。そして、このような誤操作が行われた場合、排出オ-ガが不用意に旋回し、危険である。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上述の如き課題を解決するために、以下のような技術的手段を講じる。即ち、穀粒タンク(1)内の穀粒を排出する旋回自在の排出オ-ガ(2)と、該排出オ-ガ(2)を旋回操作する手動旋回操作レバ-(15)と、前記排出オ-ガ(2)を収納位置と排出作業側位置との間にわたり自動旋回させると共にこの自動旋回中に排出オ-ガ(2)を停止させ得る旋回状態指示スイッチ(A)とを設け、これら手動旋回操作レバ-(15)と旋回状態指示スイッチ(A)とを、手動旋回操作レバ-(15)の前側近傍に旋回状態指示スイッチ(A)が位置する状態で操縦席(24)の一側で操縦席(24)の前端部より後側に且つ排出オーガ(2)を収納位置で係止する係止具(20)と操縦席(24)との間に配置したことを特徴とするコンバインの穀粒排出装置としたものである。
【0012】
この構成により、コンバインによって刈取脱穀作業を行い、収穫された穀粒は、穀粒タンク(1)内へ一時貯留される。尚、この刈取脱穀作業中においては、通常、排出オ-ガ(2)は、機体上部の収納位置へ収納されている。そして、この貯留穀粒量が所定量に達した場合等、穀粒排出作業を行う場合には、操縦者は、排出オ-ガ(2)を、運搬車の荷台上等の排出作業位置へ移動させる。
【0013】
この排出オ-ガ(2)の移動は、手動旋回操作レバ-(15)、もしくは、旋回状態指示スイッチ(A)の操作によって行われる。即ち、手動旋回操作レバ-(15)を操作することによって、排出オ-ガ(2)は任意の位置へ旋回可能である。また、旋回状態指示スイッチ(A)を操作すると、排出オ-ガ(2)は、収納位置と排出作業側位置との間にわたって自動的に旋回する。即ち、旋回状態指示スイッチ(A)の操作によって、排出オ-ガ(2)が収納位置から排出作業側位置まで自動的に旋回し、これによって、穀粒排出作業が可能な状態となる。また、旋回状態指示スイッチ(A)の操作によって、排出オ-ガ(2)が穀粒排出作業側位置から収納位置まで自動的に旋回し、これによって、排出オ-ガ(2)が機体上の収納位置へ収納される。
【0014】
また、このような自動旋回中においても、旋回状態指示スイッチ(A)の操作により、排出オ-ガ(2)の自動旋回を停止させることができる。そして、前記手動旋回操作レバ-(15)と旋回状態指示スイッチ(A)とは、操縦席(24)の一側に配置されているため、操縦者は、これら排出オ-ガ(2)の旋回を司る手動旋回操作レバ-(15)と旋回状態指示スイッチ(A)とを操作できる。
【0015】
また、排出オ-ガ(2)の手動旋回を司る操作部材が、手動旋回操作レバ-(15)というレバ-形態に構成され、一方、排出オ-ガ(2)の自動旋回を司る操作部材が、旋回状態指示スイッチ(A)というスイッチ形態に構成されているため、この2つの操作部材を誤操作することが少なくなる。そして、前記旋回状態指示スイッチ(A)は、スイッチ形態であるために、自動旋回の開始操作後は、手を離しても、排出オ-ガ(2)は穀粒排出作業側位置乃至収納位置まで自動的に旋回する。
【0016】
また、突起物である手動旋回操作レバ-(15)の前側近傍に旋回状態指示スイッチ(A)が位置するため、操縦者は、これら排出オ-ガ(2)の旋回を司るスイッチ(A)を、機体各部を操作する他の操作スイッチ類と区別でき、誤操作が少なくなる。また、手動旋回操作レバ-(15)を、旋回状態指示スイッチ(A)の後側近傍に配置することにより、この突起物である手動旋回操作レバ-(15)を、操縦席(24)一側においてより後方に配置することが可能であり、このように配置した場合、操縦者が、この手動旋回操作レバ-(15)に不用意に触れて誤操作を招くことが少なくなる。
【0017】
【発明の効果】
以上のように、本発明においては、穀粒タンク(1)内の穀粒を排出する旋回自在の排出オ-ガ(2)と、該排出オ-ガ(2)を旋回操作する手動旋回操作レバ-(15)と、前記排出オ-ガ(2)を収納位置と排出作業側位置との間にわたり自動旋回させると共にこの自動旋回中に排出オ-ガ(2)を停止させ得る旋回状態指示スイッチ(A)とを設け、これら手動旋回操作レバ-(15)と旋回状態指示スイッチ(A)とを、手動旋回操作レバ-(15)の前側近傍に旋回状態指示スイッチ(A)が位置する状態で操縦席(24)の一側で操縦席(24)の前端部より後側に且つ排出オーガ(2)を収納位置で係止する係止具(20)と操縦席(24)との間に配置したので、旋回状態指示スイッチ(A)の操作によって、排出オ-ガ(2)を穀粒排出作業側位置と収納位置とにわたって自動的に旋回させることができ、且つこの自動旋回位置から手動旋回操作レバ-(15)の手動操作によって微妙な位置合わせができて穀粒排出作業の効率が向上し、またこの自動旋回中に旋回状態指示スイッチ(A)の操作によって排出オ-ガ(2)の旋回を停止させることができて排出オ-ガ(2)自動旋回時の安全性が向上し、またこれら排出オ-ガ(2)の旋回を司るレバ-形態の手動旋回操作レバ-(15)とスイッチ形態の旋回状態指示スイッチ(A)とを誤操作少なく操作することができて排出オ-ガ(2)の旋回操作性が向上する。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を図面に従い詳述する。図例において、コンバインは左右走行装置(7)を有する車台(8)上に、穀稈を刈取る刈取装置(9)、この刈取装置(9)で刈取られて移送される穀稈を受継して脱穀する後部の脱穀装置(10)、この脱穀装置(10)で脱穀された穀粒を揚穀機等によって揚穀して収容する穀粒タンク(1)等を設けている。
【0019】
穀粒タンク(1)は、車台(8)上の後端部に設けられ、この底部に沿って後方へ向う穀粒排出樋の後端部に、鉛直方向へ向けて揚穀筒(11)をこの揚穀筒軸の回りに回動自在に設け、この揚穀筒(11)の上端部に排出オ-ガ(2)を上下回動自在に設け、該排出オ-ガ(2)を機体に対して旋回、かつ、上下回動自在の構成としている。
【0020】
揚穀筒(11)はモ-タ(12)の正逆回転によってギヤ-を介して回動される構成である。排出オ-ガ(2)は、油圧シリンダ(13)の油圧による伸縮によって上下回動される構成で、この油圧シリンダ(13)に電磁弁(14)を設けている。これらモ-タ(12)及び油圧シリンダ(13)の作動は、操縦席(24)横側の操縦台(23)に設けられた操作レバ-(15)(手動旋回操作レバ-15)によって行いうるものである。
【0021】
該操作レバ-(15)は中立位置から前後、及び左右方向へ傾動自在の構成で、前、又は後方向へ傾動すると、電磁弁(14)の下降ソレノイド(16)、又は上昇ソレノイド(17)を制御連動して油圧シリンダ(13)を伸縮させる構成で、又、該操作レバ-(15)を左、又は右方向へ傾動すると、モ-タ(12)の正逆転装置(18)を制御連動して該モ-タ(12)を正、又は逆方向へ回転させる構成で、該操作レバ-(15)の操作によって排出オ-ガ(2)の左右旋回及び上下回動を行わせるものである。
【0022】
排出オ-ガ(2)が収納位置に旋回したことを検出して旋回を停止する旋回停止スイッチ(19)を設け、この排出オ-ガ(2)を下降して脱穀装置(10)上面の係止具(20)に係止された収納位置にあることを検出する係止スイッチ(21)を設けている。又、排出オ-ガ(2)が所定の排出位置へ旋回したことを検出して旋回を停止する位置決めスイッチ(22)を設けている。又、この排出オ-ガ(2)が旋回中に非常停止させる停止スイッチ(6)を設けている。
【0023】
該排出オ-ガ(2)を収納位置と穀粒を排出する排出位置とに切替作動するように制御する旋回制御装置(3)を設けている。旋回制御装置(3)は、CPU、メモリ、及び入出力回路を有しており、この旋回制御装置(3)に対して、該排出オ-ガ(2)を収納位置から排出位置へ旋回制御する排出スイッチ(4)、及び排出位置から収納位置へ旋回収納するよう制御する収納スイッチ(5)、及び停止スイッチ(6)の操作情報、前記旋回停止スイッチ(19)、係止スイッチ(21)、及び位置決めスイッチ(22)の検出情報が各々入力されると、これらの情報にもとずいて旋回制御装置(3)からモ-タ(12)の正逆転装置(18)、及び油圧シリンダ(13)の上昇ソレノイド(17)、又は下降ソレノイド(16)へ各々出力されるように制御する構成としている。
【0024】
尚、前記排出スイッチ(4)と収納スイッチ(5)と停止スイッチ(6)との機能をもって、旋回状態指示スイッチ(A)が形成される。該収納スイッチ(5)、排出スイッチ(4)、及び停止スイッチ(6)は、操縦席(24)横側の操縦台(23)に設けた前記操作レバ-(15)の近傍に集中させて配設している。
【0025】
コンバイン作業によって収穫された穀粒は、穀粒タンク(1)内へ収納される。この穀粒タンク(1)内の穀粒が適量になると、コンバイン作業を中断して農道等に待機している運搬車や他の容器等へ穀粒を移し替える。排出スイッチ(4)を入り操作すると、旋回制御装置(3)からの上昇信号によって油圧シリンダ(13)が伸長して排出オ-ガ(2)が係止具(20)から上方へ回動し、設定された方向の旋回信号が出力されてモ-タ(12)を回転制御して排出オ-ガ(2)は旋回し、位置決めスイッチ(22)が作動すると旋回を停止する。このようにして、排出スイッチ(4)の入り操作によって排出オ-ガ(2)は、収納位置から排出位置へ旋回制御される。この排出位置にある排出オ-ガ(2)は、操作レバ-(15)によって左右旋回及び上下回動操作して排出位置合せを行うことができる。
【0026】
穀粒の排出作業が終って収納スイッチ(5)を入り操作すると、排出位置への旋回方向とは逆の方向へ旋回され、旋回停止スイッチ(19)が作動すると旋回を停止して下方へ回動し、係止具(20)に係止される。このようにして、収納スイッチ(5)によって排出オ-ガ(2)は排出位置から収納位置へ旋回収納制御される。
【0027】
停止スイッチ(6)を入り操作すると、旋回制御中の排出オ-ガ(2)は旋回制御装置(3)からの停止信号によって非常停止することができる。このように、スイッチ操作によって収納位置と排出位置とに切替操作できるから操作が簡単で、かつ的確に切替制御するこができ、操作性の向上が図れると共に、穀粒排出作業の能率向上を図りうる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態における一部の拡大平面図である。
【図2】本発明の実施の形態における制御ブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態におけるコンバインの全体平面図である。
【図4】本発明の実施の形態におけるコンバインの全体側面図である。
【符号の説明】
1 穀粒タンク
2 排出オ-ガ
15 手動旋回操作レバ-
A 旋回状態指示スイッチ
24 操縦席
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2003-09-19 
出願番号 特願平9-328050
審決分類 P 1 651・ 121- ZA (A01F)
P 1 651・ 5- ZA (A01F)
最終処分 取消  
前審関与審査官 吉田 英一  
特許庁審判長 村山 隆
特許庁審判官 瀬津 太朗
前田 建男
登録日 2000-12-08 
登録番号 特許第3137059号(P3137059)
権利者 井関農機株式会社
発明の名称 コンバインの穀粒排出装置  
代理人 伴 正昭  

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