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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  A61B
管理番号 1091461
異議申立番号 異議2002-73126  
総通号数 51 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1996-08-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2002-12-27 
確定日 2003-10-29 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3297971号「電子血圧計」の請求項1ないし3に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3297971号の請求項1ないし2に係る特許を取り消す。 
理由 1.手続の経緯
特許第3297971号の請求項1ないし4に係る発明は、平成7年2月16日に特許出願され、平成14年4月19日にその特許権の設定登録がされ、その後異議申立人松下電工株式会社により請求項1ないし3に対して特許異議の申立て(請求項1、2は特許法第29条第2項違反、および請求項1-3は特許法第29条の2違反という申立て)がなされ、取消しの理由が通知され、その指定期間内である平成15年5月2日に訂正請求がされた後、訂正拒絶理由が通知され、平成15年8月25日に手続補正書が提出されたものである。

2.訂正の適否についての判断
ア.訂正請求に対する補正の適否について
特許権者は、訂正請求書で訂正した明細書の特許請求の範囲の請求項3を削除、及びこの削除に伴い請求項4を請求項番号を繰り上げて請求項3とする補正を行ったものであり、当該訂正請求に対する補正は、訂正請求書の要旨を変更するものでなく、特許法第120の4第3項において準用する同法第131条第2項の規定に適合する。

イ.訂正の内容
特許権者が求めている訂正の内容(平成15年8月25日に手続補正書で補正された訂正の内容である)は以下のa,b,c,d,eのとおりである。
訂正事項a
特許請求の範囲の請求項1-4
「【請求項1】 手首に血圧計本体を装着し、前記手首の脈波情報を抽出する脈波情報抽出手段と、抽出された脈波情報に基づいて血圧あるいは血管情報を測定する測定手段とを備える手首用電子血圧計において、測定者の姿勢を検出する姿勢検出手段と、検出した姿勢により、測定の適否を判定する適否判定手段とを備えたことを特徴とする手首用電子血圧計。
【請求項2】前記姿勢検出手段は、測定部位の高さを検出する手段である請求項1記載の手首用電子血圧計。
【請求項3】前記高さ検出手段は、血圧計本体に傾きセンサを具備し、この傾きセンサにより、前記血圧計本体を装着した手首の腕の肘を机に載置した時の、机の面と肘との角度を検出し、傾きと、心臓と血圧計本体の高さの差との関係により、前記検出した角度から、心臓と血圧計本体の高さの差を検出することを特徴とする請求項2記載の手首用電子血圧計。
【請求項4】前記姿勢検出手段は、心音センサである請求項1記載の電子血圧計。」
を、
「【請求項1】手首に血圧計本体を装着し、前記手首の脈波情報を抽出する脈波情報抽出手段と、抽出された脈波情報に基づいて血圧あるいは血管情報を測定する測定手段と、測定した血圧あるいは血管情報を表示する表示手段とを備える手首用電子血圧計において、測定者の測定部位の高さを検出する高さ検出手段と、検出した測定部位の高さにより測定の適否を判定する適否判定手段とを備え、判定した測定の適否を前記表示手段に表示することを特徴とする手首用電子血圧計。
【請求項2】前記適否判定手段により測定部位の高さが適正でないと判定された場合に、適正でない状態表示用のシンボルを前記表示手段に表示することを特徴とする請求項1記載の手首用電子血圧計。」
【請求項3】前記高さ検出手段は、心音センサである請求項1記載の手首用電子血圧計。」
と訂正する。

訂正事項b
明細書段落番号0005を請求項1の訂正に伴う整合を図るための訂正をする。

訂正事項c
明細書段落番号0011において「最高血圧」とあるのを「最低血圧」と訂正する。

訂正事項d
明細書の段落番号0017の記載を請求項1の訂正に伴う整合を図るための訂正をする。

訂正事項e
明細書の段落番号0017において「測定不否」とあるのを「測定可否」と訂正する。

ウ.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
訂正事項aについて
訂正事項aにおいて、平成15年8月25日の手続補正書で補正された訂正明細書(以下、単に訂正明細書という)の請求項1、2は、訂正前の請求項1、2それぞれに対して構成要件を加えてなるものであり、訂正明細書の請求項1を引用する請求項3は、訂正前の請求項4を、請求項番号を繰り上げて請求項3にと訂正したものである。
したがって、訂正事項aは特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当し、また、本件出願当初の明細書には、「測定した血圧あるいは血管情報を表示する表示する手段」および「判定した測定の適否を前記表示手段に表示する」ことが記載されているから、前記構成要件を加えた点は、新規事項の追加に該当せず、訂正事項aは、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

訂正事項b,c,d,eについて
いずれも明瞭でない記載の釈明又は誤記の訂正を目的とするものと認められ、いずれも特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。

エ.独立特許要件
訂正明細書の請求項3は、訂正前の請求項4の訂正に係るものであるから、特許異議申立がされていない請求項についての訂正であって、特許請求の範囲の減縮を目的としたものに該当するから、訂正明細書の請求項3に係る発明の独立特許要件について検討する。
訂正明細書の請求項1を引用する請求項3に係る発明は、訂正明細書の特許請求の範囲の請求項3に記載のとおりのものであって(上記訂正の内容の訂正事項aを参照)、同請求項1に係る発明の構成要件を全て含むものである。
そして、当該請求項3に係る発明は、同請求項1記載の電子血圧計において、さらに「高さ検出手段は、心音センサである」と高さ検出手段の限定を付加したしたところに特徴があり、この特徴事項は新規であり、容易に想到できたものでもないから、当該請求項3に係る発明は、当業者が容易に発明できたと認めることができない。
したがって、訂正明細書の請求項3に係る発明は、出願の際、独立して特許を受けることができるものである。

オ.むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書、第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.特許異議の申立てについての判断
(1)申立の概要
申立人松下電工株式会社は、下記の甲第1号証により、請求項1,2に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから取り消すべき旨主張し、また、下記の甲第2号証により請求項1,2,3に係る発明の特許は、特許法第29条の2の規定に違反してなされたものであるから取り消すべき旨主張している。
甲第1号証:特開平5-200003号公報
甲第2号証:特開平7-143970号公報

(2)訂正明細書による訂正前請求項3の削除
訂正明細書で訂正前の請求項3の削除を行い、訂正前の請求項4を、請求項番号を繰り上げて請求項3にする訂正を行ったから、異議申立についての判断対象として残るのは請求項1,2に係る発明の特許だけである。

(3)請求項1、2に係る発明
本件特許第3297971号の請求項1、2に係る発明は、訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1、2に記載された事項により特定されるとおりのものである(上記2.イ.訂正の内容の訂正事項aを参照)。

(4)請求項1の発明について
当審が通知した取消の理由に引用された刊行物1(甲第1号証)には、
「【0005】【課題を解決するための手段】本発明は、人体の手首……のような要部1に取付けた圧迫阻血するカフ帯部2と、人体の心臓の高さ位置に設置される高さ合わせ部3と、カフ帯部2または高さ合わせ部3のいずれか一方に発光部4を設け、発光部4より略水平に発光させる手段を備えて成ることを特徴とするものである。」、
「【0006】また、カフ帯部2または高さ合わせ部3のいずれか一方に発光部4を、他方に受光部5を設け、発光部4からの発光を受光部5にて受光した際に報知する報知手段6を備えて成ることを特徴とするものである。また、発光部4からの発光をスリットSを介して略水平になす手段を備えて成ることを特徴とするものである。」、
「【0013】……ブザーのような報知手段6に報知させるようにしたものである。つまり、カフ帯部2と高さ合わせ部3の水平レベルが一致したときに、高さ合わせが完了したことを報知するようにしたものである。……」、 が記載されている。
そこで、請求項1に係る発明と刊行物1に記載の発明とを対比すると、両者は、手首に血圧計本体を装着し、前記手首の脈波情報を抽出する脈波情報抽出手段と、抽出された脈波情報に基づいて血圧を測定する測定手段とを備える手首用電子血圧計において、測定者の測定部位の高さを検出する高さ検出手段と、検出した測定部位の高さにより測定の適否を判定する適否判定手段とを備え、判定した測定の適否を報知することを特徴とする手首用電子血圧計」である点で一致し、次の相違点1,2において相違する。
(相違点1)
請求項1に係る発明は、測定した血圧を表示する表示手段とを備える手首用電子血圧計であるのに、刊行物1に記載の発明は、測定した血圧を表示する表示手段について記載がない点。
(相違点2)
検出した測定部位の高さにより測定の適否を判定をした際に、判定した測定の適否を報知することに関して、請求項1に係る発明は、その適否の報知を血圧を表示する表示手段に表示することで行うのに対し、刊行物1に記載の発明は、その適否の報知をブザーにより行うものである点。
(相違点1について)
手首用電子血圧計において、測定結果の表示をする必要があることは、当然のことであるから、刊行物1に記載がなくても、刊行物1の手首用電子血圧計に測定結果の表示装置が備えられているのは自明のことであるから、相違点1は実質的な相違点ではない。
(相違点2について)
手首、上腕等にカフ帯を巻き付けて血圧を測定する技術分野において、血圧測定が正確に行われる測定条件が整っているかどうかの適否判定の結果を利用者に報知するのに際し、ブザーで報知しても、表示部に表示させることで報知してもいずれでもよいこと、および、この適否判定の結果の利用者への表示による報知を血圧値の表示手段と同じ表示手段に表示することで行ってよいことがいずれも従来周知(従来周知の例として特開平5-200004号公報の「【0008】【実施例】……カフ帯1の上には体動を検知するための加速度センサー2が設置してあり、…。…加速度の大きさにしたがって制御部6から報知手段7(例えばブザー)を制御して報知するようになっている……」、「【0011】……加速度センサー2で検知した体動を報知する部分が血圧値、脈動値の表示部分と同じ表示手段15において表示される……」という記載、および特開平5-329111号公報の「【0013】……最高・最低血圧値を表示部1aに表示するものである。……」、「【0016】……使用者が測定部分に対してカフ帯の巻付けを締めつけ過ぎたり、緩く巻いたりした場合、……圧計本体1内に回路構成された動作制御部により表示部への表示又はブザー等により、使用者にその旨を報知する手段を設けても良い……」という記載を参照)と認められるから、刊行物1に記載された発明において、検出した測定部位の高さにより測定の適否を判定をした際に、判定した測定の適否の報知を血圧を表示する表示手段に表示することで行うことは当業者が容易に想到し得るものである。
したがって請求項1の発明は、刊行物1(甲第1号証)に記載された発明及び従来周知技術に基づいて当業者が容易に発明できたものである。

(5)請求項2の発明について
請求項2の発明は、請求項1の発明において判定した測定の適否の表示手段への表示に関して、適正でない場合に、適正でない状態表示用のシンボルを表示すると限定したものであるが、適否判定で否である場合に、その表示を否という文字で表示するか、まだ適になっていないと表示するか、シンボルで表示するかは当業者が必要に応じて適宜選択できたものと認められるから、請求項2に記載の発明は、請求項1の発明について記載したと同様に、刊行物1(甲第1号証)に記載された発明及び従来周知技術に基づいて当業者が容易に発明できたものである。

(6)むすび
以上のとおりであるから、請求項1,2に係る発明の特許は、特許法29条第2項の規定に違反してなされたものである。
したがって、特許法第29条の2についての違反の有無を判断するまでもなく、請求項1,2に係る発明の特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
よって結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
電子血圧計
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
手首に血圧計本体を装着し、前記手首の脈波情報を抽出する脈波情報抽出手段と、抽出された脈波情報に基づいて血圧あるいは血管情報を測定する測定手段と、測定した血圧あるいは血管情報を表示する表示手段とを備える手首用電子血圧計において、
測定者の測定部位の高さを検出する高さ検出手段と、検出した測定部位の高さにより測定の適否を判定する適否判定手段とを備え、判定した測定の適否を前記表示手段に表示することを特徴とする手首用電子血圧計。
【請求項2】
前記適否判定手段により測定部位の高さが適正でないと判定された場合に、適正でない状態表示用のシンボルを前記表示手段に表示することを特徴とする請求項1記載の手首用電子血圧計。
【請求項3】
前記高さ検出手段は、心音センサである請求項1記載の手首用電子血圧計。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
この発明は、高さが心臓の高さよりずれた場合に、測定者がこれを知り得、正しい測定を行い得る手首用電子血圧計に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に血圧計は、カフを心臓と同じ高さ位置にして測定する必要がある。しかし、手首用の電子血圧計、指用の電子血圧計等は、カフ(主として本体と一体)を自由に動き得る部位に装着するものであるために、心臓と同じ高さの位置に設置されずに、測定誤差を生じることがある。このような、不具合を避けるために、従来、手首・指カフと心臓の位置の関係(高さの差)を使用者が設定、入力し、その設定値に応じた補正値を血圧決定手段により得られた血圧値に対し、補正の演算処理を行っている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記した従来の電子血圧計では、使用者が手首、指カフと心臓との位置関係を正しく計測することは困難である上に、測定毎にその関係値を入力する必要があり、使用上、煩わしいし、操作ミスからかえって血圧測定誤差が発生することもあり、実使用上では手間がかかり、人的誤差が発生するという問題があった。
【0004】
この発明は、上記問題点に着目してなされたものであって、測定者が正しい姿勢で測定していないと、これを検出し、これを報知し、正しい姿勢とする機会を与え、結果として高精度に測定し得る電子血圧計を提供することを目的としている。
【0005】
【課題を解決するための手段及び作用】
この発明の手首用電子血圧計は、手首に血圧計本体を装着し、前記手首の脈波情報を抽出する脈波情報抽出手段と、抽出された脈波情報に基づいて血圧あるいは血管情報を測定する測定手段と、測定した血圧あるいは血管情報を表示する表示手段とを備えるものにおいて、測定者の測定部位の高さを検出する高さ検出手段と、検出した測定部位の高さにより測定の適否を判定する適否判定手段とを備え、判定した測定の適否を前記表示手段に表示することを特徴としている。
【0006】
この手首用電子血圧計では、高さ検出手段で測定者の測定部位の高さが検出される。そして、検出した測定部位の高さが血圧測定に適した高さであるか否か判定される。判定結果が否であれば、その旨を表示手段に表示することにより、測定者はその測定部位の高さが不適であることを知り、正しい測定部位の高さに修正する機会が与えられる。
【0007】
【実施例】
以下、実施例により、この発明をさらに詳細に説明する。
図1は、この発明の一実施例を示す手首用電子血圧計の構成を示すブロック図である。
この電子血圧計は、脈波センサ1と、検出された脈波をデジタル信号に変換するA/D変換器2と、血圧測定のための処理を実行するMPU(マイクロプロセッサ・ユニット)3と、測定した血圧値、脈拍数等を表示する表示器4と、他の回路各部に電源電圧を供給する電源回路5と、電源スイッチ6と、スタートスイッチ7と、高さを検出するための傾きセンサ8と、報知用のブザー9と、メモリ10とを備えている。
【0008】
もっとも、これらの基本的な回路構成は、傾きセンサ8を除いて従来のものと特に変わることはない。また、図示はしていないが、構造的に本体に表示器が付設され、カフも本体に一体的に構成されている。
表示器4は、例えば液晶表示パネルを使用し、血圧値、脈拍数等の数値、文字の他に本体の高さが適正でない場合に、その旨等、種々の指示、状態表示用のシンボルも表示できるものである。
【0009】
ここで、傾きと高さの関係について説明する。今、図2に示すように、手首11に血圧計本体12を装着した状態で、ヒジ13の手元を机14に載置し、机の面とヒジ13のなす角度をθとする。ここで、心臓15と血圧計本体12(測定部位)の高さの差Hとすると、傾きθと高さの差Hとの関係は、図3に示すものとなる。これより、傾きθが検出できれば、高さの差Hを知ることができる。つまり、傾きセンサによって高さを検出できる。高さの差が得られれば、図4より血圧誤差が求まる。したがって、血圧誤差が±Peを超える程、高さの差Hが大であると、この状態では測定部位の高さ、つまり姿勢が正しくないことを意味する。したがって、その旨を表示器4、ブザー9で報知すれば、測定者は測定部位の高さ、つまり姿勢が正しくないことを知り得、正しくなるように測定部位を動かすことができる。
【0010】
次に、この実施例電子血圧計の測定動作を図5に示すフローチャートより説明する。電源スイッチ6がONされると、回路の初期化処理がなされる(ステップST1)。そして、傾きセンサ8でその時の本体12の傾きθが検出され、A/D変換器2を介してMPU3に取り込まれ、メモリ10に傾きθとして記憶される(ステップST2)。次に傾きθが所定値aより小さいか判定する(ステップST3)。傾きθがaより小さい場合は、ST3の判定YESで、ブザー9を鳴らすとともに“カフ位置低い”の表示を表示器4に行う(ステップST4)。ST3で傾きθがaよりも大きい場合は、次にθが所定値b(a<b)より大きいかを判定する(ステップST5)。傾きθがbより大きい場合、判定YESでブザー9を鳴らすとともに“カフ位置高い”の表示を表示器4に行う(ステップST6)。傾きθがa≦θ≦bであれば、ブザー9を鳴らすことなく、次にスタートスイッチ7がONされるまで待機する(ステップST7)。スタートスイッチ7がONされると、測定が開始される(ステップST8)。
【0011】
この血圧測定は、通常、良く知られた手法でなされるものであり、例えば、カフで手首を圧迫し、所定のカフ圧までカフを加圧した後、減圧に入り、その一連の加圧及び減圧の過程で、脈波センサ1により検出される脈波振幅の列データと、カフ圧から最高血圧SYSを決定し、表示器4に表示する(ステップST9)とともに、最低血圧DIAを決定し、同じく表示する(ステップST10)。
【0012】
図6は、この発明の他の実施例を示す手首用の電子血圧計の構成を示すブロック図である。
この電子血圧計は、脈波センサ1と、検出された脈波をデジタル信号に変換するA/D変換器2と、血圧測定のための処理を実行するMPU(マイクロプロセッサ・ユニット)3と、測定した血圧値、脈拍数等を表示する表示器4と、他の回路各部に電源電圧を供給する電源回路5と、電源スイッチ6と、スタートスイッチ7と、報知用のブザー9と、メモリ10と、測定部位の高さを検出する心音センサ16と、心音センサ16で検出される心音信号の雑音成分を除去する雑音除去フィルタ17と、記憶スイッチ18とを備えている。
【0013】
この電子血圧計を用いて血圧を測定する場合は、測定開始前に手首に本体12を装着した状態で、図7に示すように測定者の心臓の位置15に、電子血圧計の本体12の高さを合わせる。合わせるためには、心音センサ16で心臓付近の心音の強さをサーチし、ピーク点Lpを検出した時(図8参照)、その位置が心臓位置である。ピーク点を検出した時は、表示器4に表示するか、あるいはブザー9で発音報知する。
【0014】
また、測定の再現性を追求する場合には、初回測定時にピーク点Lpの心音の強さの値を記憶スイッチ18を押し、メモリ10に記憶しておき、次回測定時は、その値となった位置で血圧測定を行う。
測定部位が正しい位置、つまり心臓位置に合わせれば、スタートスイッチ7をオンして、血圧測定の処理を開始する。血圧測定処理は従来の電子血圧計と特に変わるところはない。
【0015】
この実施例電子血圧計によれば、測定部位に心音の強さを検出するとしたので、心音の強さのピーク位置を検出し、報知することにより、心臓と同じ高さに合わせることができ、精度良く血圧を測定することができる。心音の強さを定量化し、表示・記憶することにより、毎回、同じ高さに合わせることが容易となり、測定の再現性が良くなる。心音の強さを検出する箇所が一箇所であるため、回路構成が簡単である。上記の構成により、基板を収めるケース1つにすることができるという効果が得られる。
【0016】
なお、上記実施例では脈波センサで脈波情報を抽出しているが、カフの空気圧に重畳される脈波成分をカフ圧から抽出する電子血圧計にも本発明を適用できる。
また、上記実施例は手首用電子血圧計について説明したが、この発明は測定部位が自由に動く電子血圧計、例えば指用電子血圧計にも適用できる。
【0017】
【発明の効果】
この発明によれば、検出した測定部位の高さに応じ、測定可否の有無を判定しているので、使用者が測定時において、測定部位と心臓との位置関係について容易に合わせることができ、煩わしさがない。位置ずれによる測定誤差がなく、高精度での血圧測定が可能になる。等の効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】
この発明の一実施例手首用の電子血圧計の構成を示すブロック図である。
【図2】
血圧測定における測定部位の傾きと、測定部位と心臓の高さの関係を説明する図である。
【図3】
測定部位の傾きと高さの差の関係を示す図である。
【図4】
高さの差と誤差との関係を示す図である。
【図5】
上記実施例手首用電子血圧計の動作を説明するためのフローチャートである。
【図6】
この発明の他の実施例手首用電子血圧計の構成を示すブロック図である。
【図7】
測定部位を心臓位置に合わせるための説明図である。
【図8】
測定部位の高さと心音の強さとの関係を示す図である。
【符号の説明】
1 脈波センサ
3 MPU
4 表示器
8 傾きセンサ
9 ブザー
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2003-09-12 
出願番号 特願平7-28065
審決分類 P 1 652・ 121- ZA (A61B)
最終処分 取消  
前審関与審査官 居島 一仁居島 一仁  
特許庁審判長 渡部 利行
特許庁審判官 菊井 広行
水垣 親房
登録日 2002-04-19 
登録番号 特許第3297971号(P3297971)
権利者 オムロンヘルスケア株式会社
発明の名称 電子血圧計  
代理人 森田 俊雄  
代理人 深見 久郎  
代理人 西川 惠清  
代理人 森田 俊雄  
代理人 深見 久郎  
代理人 森 厚夫  

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