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審決分類 審判 全部申し立て 5項1、2号及び6項 請求の範囲の記載不備  G09G
審判 全部申し立て 2項進歩性  G09G
管理番号 1091552
異議申立番号 異議2002-70913  
総通号数 51 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1991-05-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2002-04-09 
確定日 2004-02-09 
異議申立件数
事件の表示 特許第3216810号「映像データ表示システム」に関する特許異議事件についてされた平成15年5月7日付けの異議の決定に対し、東京高等裁判所において決定取消の判決[平成15年(行ケ)第262号、平成15年11月27日判決言渡]があったので、更に審理の上、次のとおり決定する。 
結論 特許第3216810号の請求項1から請求項3までに係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第3216810号(以下「本件特許」という。)は、平成1年10月5日に特許出願(特願平1-261600号)され、平成13年8月3日に特許権の設定登録がされたものである。
大木茂は、平成14年4月9日に本件特許について特許異議の申立て(異議2002-70913号)をし、平成14年6月27日付けで取消理由が通知された。
特許権者は平成14年9月9日に訂正請求書及び特許異議意見書を提出したが、平成15年5月7日付けで「訂正を認める。特許第3216810号の請求項1ないし3に係る特許を取り消す。」との結論の異議の決定がされた。
特許権者は、この異議の決定の取消しを求めて、平成15年6月20日に東京高等裁判所に訴えを提起し、また、平成15年8月25日に本件特許の明細書の訂正を求めて、訂正審判を請求した。
この訂正審判の請求につき、平成15年10月20日に「特許第3216810号の明細書を本件審判請求書に添付された訂正明細書のとおり訂正することを認める。」との結論の審決がされた。
東京高等裁判所においては、平成15年11月27日に、特許庁が異議2002-70913号事件について平成15年5月7日にした決定を取り消すとの判決が言い渡された。
特許権者は、平成14年9月9日提出の訂正請求書についての訂正請求取下書を平成15年12月25日付けで提出した。

第2 特許異議申立ての理由の要点
1 本件特許の請求項1から請求項3までに係る発明は、当業者が特開昭62-57057号公報(甲第1号証)、特開昭59-135680号公報(甲第2号証)及び特開昭64-18189号公報(甲第3号証)に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものであるから特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
2 本件特許の請求項1から請求項3までの記載は不明瞭であり、特許法36条に規定する要件を満足していない。

第3 本件特許の請求項に係る発明
本件特許の請求項1から請求項3までに係る発明(以下「本件発明1」、「本件特許2」、「本件発明3」という。)は、訂正審判に係る訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1から請求項3までに記載された次のとおりのものである。
「1.所定の順序で並べられた動画像の映像データを記憶する記憶手段と、前記記憶手段に記憶された映像データの中から任意の映像データを選択する第1の映像データ選択手段と、前記記憶手段に記憶された映像データの中からマウスカーソルをずらすことにより指示された位置に対応する映像データを連続的に選択する第2の映像データ選択手段と、前記記憶手段に記憶された映像データの中から前記第1の映像データ選択手段により選択された映像データの直前または直後の映像データを選択する第3の映像データ選択手段と、前記第1乃至第3の映像データ選択手段により選択された一画面分の映像データを表示する表示手段と、を備えることを特徴とする映像データ表示システム。」
「2.所定の順序で並べられた動画像の映像データを記憶する記憶手段と、前記記憶手段に記憶された映像データの中から任意の映像データを選択する第1の映像データ選択手段と、前記記憶手段に記憶された映像データの中からマウスカーソルをずらすことにより指示された位置に対応する映像データを連続的に選択する第2の映像データ選択手段と、前記第1の映像データ選択手段または前記第2の映像データ選択手段により選択された一画面分の映像データを表示する表示手段と、を備えることを特徴とする映像データ表示システム。」
「3.所定の順序で並べられた動画像の映像データを記憶する記憶手段と、前記記憶手段に記憶された映像データの中から任意の映像データを選択し、この選択された映像データを起点として前記記憶手段に記憶された映像データの中からマウスカーソルをずらすことにより指示された位置に対応する映像データを連続的に選択する映像データ選択手段と、前記映像データ選択手段により選択された一画面分の映像データを表示する表示手段と、を備えることを特徴とする映像データ表示システム。」

第4 当審の判断
1 特許法29条2項の適用について
(1)甲第1号証に記載された発明
甲第1号証には、図面とともに、「本発明は電子化文書に対する電子ページめくり装置に関する。」(1頁右下欄3〜4行)、「本発明の第1の目的は、・・・視覚に訴えて直接的、連続的に操作できる電子ページめくり装置を提供することにある。」(2ページ左上欄7〜12行)、「第1図は本発明の第1の実施例を示すブロック図である。本実施例のポインティングデバイス1は、例えば、マウスや、トラックボールのような装置であり、表示画面上において任意に移動させることが可能であり、しかもその時の位置(座標)を検出できるものである。電子化文書格納手段2は、ワードプロセッサにより出力されたコードデータや図形データあるいはイメージデータなど、一般に電子化された文書を格納する手段であり、また大量のデータの中から検索システムにより該当文書を取り出した後格納している手段であるとみなすこともでき、例えば光ディスク装置は磁気ディスク装置などで構成される。また、線形ページ位置表示作成手段3は、電子化文書格納手段2のページ数に比例した大きさで、例えば、第3図(a)に示すような図を作成する手段である。この図では、表示画面20上に7頁分の文書を横棒グラフに表示した場合を示している。すなわち、7頁分の枠を棒グラフ上に用意し、この現在のページ(5)と、その前ページ、次ページとを色分けして表示する。また、この棒グラフの左側に現ページ(5)を、また棒グラフの上側に先頭ページ数(1)と末尾ページ数(7)とマウスカーソル上のページ数(3)とをそれぞれ表示している。さらに、制御手段4は、線形ページ位置表示作成手段3により得られたページ位置表示を表示し、このページ位置表示内にポインティングデバイス1のカーソルが入ると、その位置から直ちに対応するページ番号を計算し、電子化文書格納手段2から該当ページを取り出し、表示させるものである。これを実際に表示する手段が表示手段5であり、通常のCRTディスプレイなどで構成される。」(2頁左下欄13行〜3頁左上欄5行)との記載がされている。
(2)甲第2号証に記載された発明
甲第2号証には、図面とともに、「本発明は、例えばビデオテープを編集する際に、モニタ上に時系列的にほぼ連続する複数個のフレームのテレビ信号を同時に再生するようにしたビデオ編集用ビュワーに関するものである。」(1頁右下欄8〜11行)、「上述の目的を達成するための本発明の要旨は、複数個のフレームのテレビ信号を記憶し得るメモリと、ビデオ信号源から供給されるテレビ信号を前記メモリに書き込む書込制御回路と、前記メモリに記憶された複数フレームのテレビ信号を読み出す読出制御回路と、前記書込制御回路及び読出制御回路による前記メモリに対する書き込み・読み出し方向、書き込み・読み出し速度を制御する再生モード制御手段と、前記メモリから読み出された複数個のフレームのテレビ信号を画面上一連にして再生する1個のモニタと、該モニタ上の任意のフレームを編集点として指示する手段とを具備したことを特徴とするビデオ編集用ビュワーである。以下に図面を参照して本発明を詳細に説明する。第1図はビデオ編集用ビュワー外観図であり、本実施例においてはブラウン管モニタ1のスクリーン上にビデオ信号の時系列的に連続する複数個のフレームが、縦方向に一列に並んで再生されるようになっている。モニタ1の前部に設けられている操作パネル2には、編集点を示すモニタ画面上のマーカーMを上下方向に移動させるためのレバー4と、マーカーMによって指示されたフレームを編集点として登録するためのキューボタン5と、モニタ1上に映出されるフレーム画列を順方向の下方向、逆方向の上方向に任意の所望の速度で移動させたり、この移動を停止させたりするための再生モード制御用回転ノブ6とが設けられている。回転ノブ6の表面には矢印と中央マークとが設けられており、回転ノブ6を反時計方向に廻すとモニタ1上のフレーム画列は上から下に移動し、その速度は回転ノブ6の反時計方向への回転角に比例する。この状態から回転ノブ6を時計方向に廻してゆくと下方向への移動は徐々に遅くなり、中央マークが矢印7の位置に一致するとフレーム画列の動きは停止する。更に、回転ノブ6を時計方向に廻すと、フレーム画列は上方へ次第に移動するようになり、回転ノブ6を大きく廻すことにより上方への移動速度は速くなる。編集者は回転ノブ6を操作して、モニタ1上に映出されるフレーム画列を移動させながらモニタ1を観察し、編集点近傍に達すると移動速度を遅くし、前後のフレーム画列を比較観察しながら編集点を探索する。最後に回転ノブ6を中央に戻してフレーム画列の移動を停止し、レバー4を操作してモニタ1上のマーカーMを移動させ、マーカーMを編集点とするフレームの横に位置させる。次にキューボタン5を押しマーカーMが示すフレームの番号を読み出し、これをビデオ編集装置に供給することにより、順次の編集点の情報をビデオ編集装置に伝達することができる。本実施例のビデオ編集用ビュワーによれば、目的とするフレームの前後のフレームの画像も一目で判断できるので、編集点の探索は確実でしかも容易となり、あたかもフィルムを目視している場合と同様の効果が得られる。」(2頁左上欄17行〜右下欄13行)、「第3図は、第1図に示した実施例の変形例を示すものであり、この場合は操作パネル2上にノーマル←→拡大の切換スイッチを設け、この切換スイッチをノーマル側に倒したときには第3図(a)に示すようにモニタ1上に10数個のフレームの画像が表示されるが、拡大側に倒すと第3図(b)に示すようにモニタ1上に例えば4フレームの画像が拡大して表示されるようになる。このような構成によれば、大まかな編集点サーチはノーマルのフレーム数の多い表示により行い、より精度の高い確認は拡大再生により行うことで、正確な編集点の決定を効率よく行うことができる。第4図は本発明に係るビデオ編集用ビュワーの基本的な構成を示すブロック回路図である。ビデオテーブレコーダ等のビデオ信号源であるVTR21からのビデオ信号を入力端子22に供給する。このビデオ信号をA/D変換回路23によりデジタル信号に変換した後に、書込セレクタ24を介してメモリ25の14個のフレームメモリ25a〜25nの1つに供給しここに格納する。このフレームメモリ25a〜25nは、例えばモニタ1上に映出するフレーム数を13個とした場合には、これよりも1個多い数となっている。フレームメモリ25aに入力ビデオ信号の1フレーム分の画像を記憶しているときは、残りのフレームメモリ25b〜25nを読出モードに切換え、読出セレクタ26により順次のフレームのビデオ信号を読み出し、D/A変換回路27によりアナログビデオ信号に変換して出力端子28に出力し、そしてこのビデオ信号をモニタ1に供給しここに映出する。上述したVTR21、書込セレクタ24、メモリ25、読出セレクタ26及びモニタ1の動作を制御するために中央制御回路30が設けられている。更にこの中央制御回路30には、第1図に示したレバー4、キューボタン5及び回転ノブ6を有する操作パネル2も接続されている。回転ノブ6によってモニタ1上に映出されるフレーム画列の動きが変化するが、これに対応してVTR21のでの再生動作を制御するためにVTR制御回路31が設けられてある。即ち、モニタ1上のフレーム画列を順方向に移動させる場合には、VTR21も対応して順方向の再生が行われるようにし、逆方向に移動させる場合にはVTR21も逆方向に再生される。また、モニタ1上のフレーム画列を順方向に移動させる場合には、VTR21から供給されるテレビ信号がフレームメモリ25a、25b、25c、・・・、25n、25a、25b・・・に順方向に順次に記録されるように、書込セレクタ24を制御する書込制御回路32が設けられている。また、フレームメモリ25a〜25nのそれぞれを書込又は読出モードに切換える制御をするために、書込/読出制御回路33が設けられている。更に、モニタ1上のフレーム画列を順方向に移動する場合には、フレームメモリ25a、25b、・・・、25n、25a、25b・・・から順方向に順次にテレビ信号を読み出すように、読出セレクタ26を制御する読出制御回路34が設けられている。なお、書込制御回路32、読出制御回路34はフレームメモリ25a〜25nを逆方向に順次に書き込み、読み出しを行うこともできるようにされている。いま、モニタ1上のフレーム画列を毎秒1コマの速度で順方向へ移動する場合を考えると、読出セレクタ26はフレームメモリ25b〜25nに格納されている13フレーム分のテレビ信号をモニタ1での1フレーム期間に亘って読み出し1秒間に亘って再生する。この間、フレームメモリ25aには次のフレームのテレビ信号を記録するように書込セレクタ24は動作する。次に、読出セレクタ26よりフレームメモリ25c、25d、・・・、25n、25aを1フレーム期間に亘って読み出し、これを1秒間に亘って再生する。この間フレームメモリ25bに次のフレームのビデオ信号を記録する。このようにしてVTR21を1フレーム・1秒の割合で、順方向に再生駆動させることにより、モニタ1上のフレーム画列を順方向に移動させながら表示をすることができる。一方、モニタ1上のフレーム画列を逆方向に移動させるときには、フレームメモリ25b〜25nをモニタ1上で1フレーム期間に亘って再生し、1つ前のフレームのテレビ信号をフレームメモリ25aに記録し、1秒後にフレーム・・・メモリ25a〜25mのテレビ信号を読み出し、更に1つ前のフレームのテレビ信号をフレームメモリ25nに格納する。このようにVTR21を1フレーム・1秒の割合で逆方向に再生しながら、モニタ1上のフレーム画列を逆方向に毎秒・1フレームの速度で移動させることができる。」(3頁左上欄13行〜4頁右上欄2行)との記載がされている。
(3)甲第3号証に記載された発明
甲第3号証には、図面とともに、「本発明は、外部より取り込まれた一連の画像の切換表示を可能とする画像表示制御装置に関する。」(1頁左下欄17〜19行)、「本発明は、画像表示を行う表示手段を備え、外部より取り込まれた一連の映像の切換表示を可能とする画像表示制御装置において、画像の登録を指令する第1のスイッチと、この登録指令により、前記表示手段に現在表示されている画像の登録制御を実行する第1の制御手段と、登録画像の表示を指令する第2のスイッチと、この表示指令により登録画像の表示制御を実行する第2の制御手段とを具備するものである。」(2頁右上欄15行〜左下欄3行)、「次に前記操作卓5のキー配列について第1図(b)を参照しながら説明する。同図に示すように操作卓5上には、心位相連続キー58、動画表示「前進」キー59、動画表示「後退」キー60、前進キー61、後退キー62、登録キー63、取消キー64、登録画像表示「前進」キー65、登録画像表示「後退」キー66、編集保存「1」キー67、編集保存「2」キー68、及びそのキー群69が設けられている。前進キー61が押下されると、CRTディスプレイ51に現在表示されている画像に連続する次の画像が該ディスプレイ51に切換表示される。後退キー62が押下されると、CRTディスプレイ51に現在表示されている画像の一つ前の画像が該ディスプレイ51に切換表示される。動画表示「前進」キー59が押下されると、該キー59に設けられたランプが点灯し、一連の画像の前進方向連続切換表示がエンドレスで行われる(動画表示)。再びこのキー59が押下されると、該ランプは消灯し、キー押下時の表示画像が連続して表示される(静止画表示)。動画表示「後退」キー60が押下されると、同「前進」キー59の押下の場合と同様に動画表示、静止画表示が行われるが、連続切換方向が後退方向となる点で同「前進」キー59の場合と異なる。」(3頁左上欄9行〜右上欄13行)との記載がされている。
(4)対比判断
本件発明1から本件発明3までと甲第1号証から甲第3号証までに記載された発明とを対比する。
甲第1号証から甲第3号証までに記載された発明は、いずれも本件発明1から本件発明3までの構成要件である「記憶手段に記憶された映像データの中からマウスカーソルをずらすことにより指示された位置に対応する映像データを連続的に選択する」点を備えておらず、この点が容易になし得たものというべき根拠は見いだせない。
そして、本件発明1から本件発明3まではこの点により本件明細書記載の格別の作用、効果を奏するものということができる。
そうすると、本件発明1から本件発明3までが当業者が甲第1号証から甲第3号証までに記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものであるということはできず、本件発明1から本件発明3までが特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであるということはできない。
2 特許法36条の適用について
特許異議申立人大木茂は、本件請求項1から請求項3までに記載された構成では「ユーザの望む映像データを速やかに表示することができる」という目的・効果を達成することはできず、本件請求項1から請求項3までの記載は発明を明確に規定していないと主張する。
しかしながら、本件発明1から本件発明3までは「記憶手段に記憶された映像データの中から任意の映像データを選択」し、「記憶手段に記憶された映像データの中からマウスカーソルをずらすことにより指示された位置に対応する映像データを連続的に選択」するための「映像データ選択手段」を有するものであり、このような「映像データ選択手段」を備えることにより「ユーザの望む映像データを速やかに表示することができる」という作用、効果を達成するものであるということができる。
そうすると、本件明細書の請求項1から請求項3までの記載が不備であるということはできず、本件出願が特許法36条に規定する要件を満足していないということはできない。

第5 むすび
以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては本件発明1から本件発明3までについての特許を取り消すことはできない。また、他に本件発明1から本件発明3までについての特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2003-05-07 
出願番号 特願平1-261600
審決分類 P 1 651・ 534- Y (G09G)
P 1 651・ 121- Y (G09G)
最終処分 維持  
前審関与審査官 月野 洋一郎  
特許庁審判長 瀧 廣往
特許庁審判官 西川 一
江藤 保子
登録日 2001-08-03 
登録番号 特許第3216810号(P3216810)
権利者 富士ゼロックス株式会社
発明の名称 映像データ表示システム  
代理人 片山 修平  

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