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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C11D
管理番号 1091559
異議申立番号 異議2003-72544  
総通号数 51 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2002-01-23 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-10-15 
確定日 2004-02-02 
異議申立件数
事件の表示 特許第3398653号「パール配合洗浄料」の請求項1ないし3に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3398653号の請求項1ないし3に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許第3398653号の請求項1〜3に係る発明は、平成12年7月11日に特許出願され、平成15年2月14日にその発明について特許権の設定登録がなされ、その後、大原 一により特許異議の申立てがなされたものである。

2.本件発明
本件の請求項1〜3に係る発明は、その特許請求の範囲の請求項1〜3に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】(A)有機酸0.01〜5.0重量%
(B)ヒドロキシエタンジホスホン酸及びその塩0.001〜1.0重量%
(C)エデト酸及びその塩0.01〜2.0重量%
(D)パール化剤0.1〜5.0重量%
(A)〜(D)を配合することを特徴とするパール配合洗浄料。
【請求項2】 有機酸が、クエン酸、乳酸、コハク酸、リンゴ酸、L-グルタミン酸、L-アスパラギン酸、ピロリドンカルボン酸の中から選ばれる一種又は二種以上であることを特徴とする請求項1に記載のパール配合洗浄料。
【請求項3】 パール化剤が、ジステアリン酸エチレングリコール、ジステアリン酸ポリエチレングリコール、モノラウリン酸ポリエチレングリコール、モノステアリン酸ポリエチレングリコールの中から選ばれる一種又は二種以上であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のパール配合洗浄料。」(以下、「本件発明1」〜「本件発明3」という。)

3.申立ての理由の概要
特許異議申立人大原 一は、甲第1号証〜甲第6号証を提出し、本件発明1〜3は、甲第1号証〜甲第6号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるので、本件特許は取り消されるべきであると主張している。

4.申立人が提出した刊行物及びその記載事項
(a)甲第1号証(特開平7-278587号公報)
甲第1号証には、一般式(1) [式省略] で表される、特定のβ分岐鎖を有するリン酸エステル系界面活性剤を含有する洗浄剤組成物が記載されている(特許請求の範囲請求項1、明細書段落【0007】参照)。
その他の成分について、「本発明の洗浄剤組成物には、上記成分の外にも必要に応じて、通常の洗浄剤に用いられる成分、例えば・・・エチレンジアミン四酢酸又はその塩、ジホスホン酸又はその塩等のキレート剤;その他パール化剤、・・・等を、発明の効果を損なわない範囲内で配合することができる。」(明細書段落【0038】)と記載されている。
実施例3(明細書段落【0060】)には、下記組成のシャンプーを常法により製造したとして、次の表が記載されている。
「(成分) (重量%)
2-(1,3,3-トリメチルブチル)-5,7,7
トリメチルオクチルリン酸カリウム 5
ポリオキシエチレン(3)ラウリル硫酸ナトリウム 10
ラウリン酸ジエタノールアミド 3
ラウリルヒドロキシスルホベタイン 2
ラウロイルプロピルアミドベタイン 2
カチオン化セルロース 0.3
ヒドロキシエタンジホスホン酸 0.2
エチレンジアミン四酢酸ジナトリウム 0.5
エタノール 3
メチルパラベン 0.2
プロピルパラベン 0.1
ジステアリン酸エチレングリコール 0.2
香料、色素 適量
精製水 バランス 計 100 」

(b)甲第2号証(安田利顕他著、「美容科学叢書 毛の生物学 他六編」、日本毛髪科学協会、昭和50年5月20日発行、第124頁)
甲第2号証には、酸性物質の効果について、「つぎに酸性物質をとりあげたいと思いますが、これらはクエン酸や酒石酸などの有機酸や緩衝液などであり、酸性リンス液や酸性シャンプーに用いられます。・・・次にヘアダイやヘアブリーチの後の酸性シャンプーの効果ですが、やはり損傷防止効果があります。ヘアダイやヘアブリーチの施術後は、アルカリと過酸化水素の作用によって毛髪は相当な損傷を受けます。このとき酸性シャンプーや酸性リンスをすると、コールドパーマの場合と同様に膨潤した毛髪は収れんし、ケラチンの分解溶出を防ぐことができます。」(第124頁14〜29行)と記載されている。

(c)甲第3号証(特関昭58一117297号公報)
甲第3号証には、「(A)式 [式省略] で表わされるエタン-1-ヒドロキシ-1,1-ジホスホニックアシド又はその塩0.005〜2.0重量%、(B)エチレンジアミンテトラ酢酸又はその塩0.005〜1.0重量%及び(C)炭素数2〜20を有する有機多塩基酸又はその塩0.01〜2.5重量%を含有することを特徴とする石けん組成物。」(特許請求の範囲)が記載されている。
該石けん組成物は、「石けんは、長期間にわたって貯蔵又は保管すると劣化をきたし、あるいは変質して変色や悪臭などを生ずることは一般に知られている。これは石けんに添加された香料や過脂肪剤等が酸化により変質したり、石けんのベース自身が酸敗するなどの現象によるものである。」(第1頁右下欄3〜8行)ということから、「本発明者は、・・・実質的に満足しうる安定性を有する石けん組成物を開発するために、各種安定剤及びそれらの組合せ配合剤について多くの実験研究を行った結果、・・・本発明をなすに至った。」(第2頁左上欄11行〜右上欄1行)ものであると記載されている。

(d)甲第4号証(特開平11-180855号公報)
甲第4号証には、「(A)アニオン界面活性剤、及び(B)トリメチルグリシンを含有し、成分(A)及び(B)の重量比が(A)/(B)=100/1〜4/1である皮膚洗浄剤組成物。」(特許請求の範囲請求項1)が記載されている。
その他の成分について、「本発明の皮膚洗浄剤組成物には、必要に応じて、更に通常の皮膚洗浄剤組成物に用いられる成分、例えば・・・エチレンジアミン四酢酸又はその塩、ヒドロキシエタンジホスホン酸又はその塩等のキレート剤、クエン酸、コハク酸等のpH調整剤、・・・その他パール化剤、・・・などを、本発明の効果を損なわない範囲において配合することができる。」(明細書段落【0041】)ことが記載されている。
実施例2(明細書段落【0050】〜【0051】)には、以下に示す組成の洗顔料を常法により製造したとして、次の表が記載されている。
「(成分) (重量%)
ラウリン酸アルギニン 5.0
ミリスチン酸アルギニン 10.0
ラウリルリン酸アルギニン 10.0
ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド 3.0
ジステアリン酸エチレングリコール 5.0
ラウリン酸アミドプロピルベタイン 3.0
トリメチルグリシン 5.0
1,3-ブチレングリコール 10.0
プロピレングリコール 10.0
エタノール 5.0
コハク酸 1.0
カルボキシビニルポリマー 0.5
ジブチルヒドロキシトルエン 0.1
メチルパラベン 0.1
エデト酸塩 0.1
香料 適量
精製水 バランス 」

(e)甲第5号証(特開平8-12547号公報)
甲第5号証には、「下記成分(A)及び成分(B)を含有することを特徴とする皮膚外用剤。 (A)下記一般式(I)[式及び符号の説明省略] で表されるアミノ酸誘導体またはその塩から選ばれる一種または二種以上 (B)多価アルコール」(特許請求の範囲請求項1)が記載されている。
その他の成分について、「更に皮膚外用剤におけるその他の常用成分を、本発明の皮膚外用剤に本発明の効果を阻害しない範囲で添加することができる。皮膚外用剤におけるその他の常用成分としては、・・・エチレンジアミンテトラ酢酸、クエン酸、アスコルビン酸、マレイン酸、コハク酸、・・・1-ヒドロキシエタン-1,1-ジフォスフォン酸、・・・あるいはこれらの塩等のキレート剤、・・・パール化剤、・・・等を挙げることができる。」(明細書段落【0027】)と記載されている。
実施例7、8(明細書段落【0035】〜【0037】)として、表3及び4に示す組成のボディーシャンプーを常法により調製したと記載され、表3の内容は以下のとおりである。
「 成 分 配合量
N-(2-ヒドロキシベンジル)グリシン 2
ラウリル硫酸ナトリウム 10
スルホコハク酸ラウリル二ナトリリム 15
N‐ラウロイル-L-グルタミン酸ナトリウム 5
ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド 5
ジステアリン酸ポリエチレングリコール 1
加水分解コラーゲン 1
エチレンジアミンテトラ酢酸ナトリウム 0.1
クエン酸 0.1
プロピレングリコール 5
防腐剤 0.1
香料 0.1
水 残部
合 計 100 」

(f)甲第6号証(特開昭57-3899号公報)
甲第6号証には、「石鹸成分中に、エチレンジアミンテトラ酢酸又はそのアルカリ金属塩と1-ハイドロキシエタン-1,1-ジフォスホン酸又はそのアルカリ金属塩を併用することを特徴とする石鹸の安定化法。」(特許請求の範囲)が記載されている。
その目的として、「本発明は、・・・石鹸における経日安定性の向上をはかったものであり、特に匂い、色調、耐光性の安定化と同時に、金属イオンに起因する変色に対してもその防止を目的としたものである。」(第1頁左下欄11〜19行)と記載されている。

5.対比・判断
(1)本件発明1について
甲第1号証の実施例3には、ヒドロキシエタンジホスホン酸0.2重量%、エチレンジアミン四酢酸ジナトリウム0.5重量%、ジステアリン酸エチレングリコール0.2重量%を配合してなるシャンプーが記載されている。上記シャンプーにおけるエチレンジアミン四酢酸ジナトリウム、ジステアリン酸エチレングリコールは、それぞれ本件発明1におけるエデト酸塩、パール化剤であるから本件発明1の洗浄料とは有機酸の配合の有無の点で相違している。
この相違点について検討するに、甲第2号証には、クエン酸や酒石酸などの有機酸を配合したシャンプーが記載されており、また、甲第3号証には、エタン-1-ヒドロキシ-1,1-ジホスホニックアシド(ヒドロキシエタンジホスホン酸)又はその塩、エチレンジアミンテトラ酢酸(エデト酸)又はその塩、及び有機多塩基酸を含有する石けん組成物が記載されている。しかしながら、甲第2号証記載の有機酸を配合した酸性シャンプーは、毛髪の損傷防止効果が有るとされるものであり、甲第3号証記載の石けん組成物は、石けんの添加成分及びベースの酸化による変質に対応するもので、いずれもパール化剤が配合された洗浄剤におけるパール安定性について記載も示唆もされていない。
そうしてみると、甲第2号証、甲第3号証に有機酸を配合した洗浄剤が記載されているとしても、甲第1号証に記載のパール化剤が配合されたシャンプーにパール安定性を意図して甲第2号証、甲第3号証に記載される有機酸を添加することは、当業者といえども容易に想到し得ることではない。

また、甲第4号証の実施例2には、コハク酸(有機酸)1.0重量%、エデト酸塩0.1重量%、ジステアリン酸エチレングリコール(パール化剤)5.0重量%を配合してなる洗顔料、甲第5号証の実施例7には、クエン酸(有機酸)0.1重量%、エチレンジアミンテトラ酢酸ナトリウム(エデト酸塩)0.1重量%、ジステアリン酸ポリエチレングリコール(パール化剤)1重量%を配合してなるボディシャンプーが記載されている。これらの洗浄料と本件発明1の洗浄料を比較すると、ヒドロキシエタンジホスホン酸及びその塩の有無の点で相違している。
この相違点について検討するに、甲第6号証には、エチレンジアミンテトラ酢酸(エデト酸)又はそのアルカリ金属、1-ハイドロキシエタン-1,1-ジフォスホン酸(ヒドロキシエタンジホスホン酸)又はそのアルカリ金属塩を併用する石けんの安定化法が記載されている。しかし、甲第6号証には、石けんの経日安定性の向上について記載されるものの、匂い、色調、耐光性の安定化、金属イオンに起因する変色に対する防止を目的とするものであり、パール化剤が配合された洗浄剤におけるパール安定性について記載ないし示唆されるものではない。
そうしてみると、甲第4号証、甲第5号証に記載されたパール化剤が配合された洗浄剤に、パール安定性を意図して甲第6号証に記載のヒドロキシエタンジホスホン酸及びその塩を添加することは、当業者が容易に想到し得ることではない。

さらに、甲第1号証〜甲第6号証の記載を総合勘案しても、本件発明1が当業者に容易に想到し得るとされるものではない。
そして、本件発明1は、本件特許明細書に記載される、「パールを含有する洗浄料において、きれいなパール光沢を有し、しかも経時的にパールが安定で、刺激が少なく、感触に優れた」(明細書段落【0031】)という、甲第1号証〜甲第6号証の記載からは予測し得ない格別の効果を奏するものである。

したがって、本件発明1は、甲第1号証〜甲第6号証に記載される発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとされるものではない。

(2)本件発明2、3について
本件発明2、3は、本件発明1における「(A)有機酸」、「(D)パール化剤」を特定の化合物に限定するものであるから、上記「(2)本件発明1について」に記載された理由と同様の理由により、甲第1号証〜甲第6号証に記載された発明に基づいて当業者が容易にその発明をすることができたものではない。

6.むすび
以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件請求項1〜3に係る発明についての特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1〜3に係る発明についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2004-01-14 
出願番号 特願2000-209726(P2000-209726)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (C11D)
最終処分 維持  
前審関与審査官 近藤 政克  
特許庁審判長 板橋 一隆
特許庁審判官 岩瀬 眞紀子
後藤 圭次
登録日 2003-02-14 
登録番号 特許第3398653号(P3398653)
権利者 日興製薬株式会社
発明の名称 パール配合洗浄料  
代理人 宇野 晴海  

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