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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  G01P
管理番号 1091575
異議申立番号 異議2003-71785  
総通号数 51 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1996-07-23 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-07-10 
確定日 2004-02-16 
異議申立件数
事件の表示 特許第3368403号「圧電型加速度センサ」の請求項3に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3368403号の請求項3に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許第3368403号の請求項1〜3に係る発明についての出願は、平成7年1月6日に特許出願され、平成14年11月15日にその特許権の設定登録がなされ、その後、請求項3に係る特許について特許異議申立人株式会社村田製作所より特許異議の申立てがなされたものである。

2.特許異議申立について
ア.本件発明
特許第3368403号の請求項3に係る発明(以下、「本件発明」という)は、その特許請求の範囲の請求項3に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項3】圧電セラミック層と電極層が交互に積層された焼結体からなる圧電セラミック板を両端固定した加速度センサにおいて,正端子に接続される内部電極及び接地端子に接続される内部電極の内のいずれか一方を前記圧電セラミック板の自由振動部の長さ方向に対する中央部のみに設け,他方を長さ方向全域に設けたことを特徴とする圧電型加速度センサ。」

イ.特許異議申立の理由の概要
特許異議申立人株式会社村田製作所は、証拠として、
甲第1号証刊行物(特開平6-324073号公報)、
甲第2号証刊行物(特開昭61-269072号公報)、
甲第3号証刊行物(特開平1-148969号公報)、
を提出し、本件発明は、甲第1〜3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件発明の特許は特許法第113条第2号の規定により取り消されるべき旨主張している。

ウ.甲第1〜3号証記載の発明
甲第1号証(特開平6-324073号公報)には、加速度センサに関して以下のことが図面とともに記載されている。
「共に短冊形状とされたうえで主表面上に信号電極(4,6)及び中間電極(5)がそれぞれ形成された一対の圧電セラミック板(2,3)を備え、かつ、これら圧電セラミック板(2,3)の中間電極(5)同士を対面接合して一体化したバイモルフ型検出素子(1)の長手方向に沿う両端縁を固定支持してなる構造の加速度センサであって、圧電セラミック板(2,3)のそれぞれは、長手方向に沿う少なくとも中央部分(2a,3a)が各々の板厚方向に沿いつつ互いに逆となる向き(X,Y)に従って分極処理されたものであり、一方の信号電極(4)は一方の圧電セラミック板(2)の中央部分(2a)から端部分(2b)の一方側にかけて形成され、また、他方の信号電極(6)は他方の圧電セラミック板(3)の中央部分(3a)から端部分(3b)の他方側にかけて形成されたものであり、さらにまた、中間電極(5)は各圧電セラミック板(2,3)の中央部分(2a,3a)にのみ形成されたものであることを特徴とする加速度センサ。」(特許請求の範囲)、
「本実施例に係る検出素子1は・・・長手方向に沿う所定位置ごとに設定された一対の境界線Lによって挟まれた圧電セラミック板2,3それぞれの中央部分2a,3aは各々の板厚方向に沿いつつ互いに逆となる向き(図では、矢印X,Yで示す)に従って分極処理される一方、各境界線Lの外側に位置する端部分2b,3bのそれぞれは分極処理されないままとなっている。なお、この際、従来例と同様、これらの端部分2b,3bを含む圧電セラミック板2,3の全体が各々の板厚方向に沿いつつ互いに逆となる向きX,Yに従って分極処理されていてもよい」(段落【0009】)、
「加速度センサの全体に対して加速度Gが作用すると・・・この検出素子1は加速度Gの作用側に向かって撓んだ湾曲形状(図では、上向きの凸形状)を有するように変形することになる。・・・そのため、図2で示すように、撓み方向外側(図では、上側)に位置する圧電セラミック板2の中央部分2aには引っ張り応力Ptが、また、その端部分2bには圧縮応力Pcが現れる一方、撓み方向内側(図では、下側)に位置する圧電セラミック板3の中央部分3aには圧縮応力Pcが、また、その端部分3bには引っ張り応力Ptがそれぞれ現れることになる。・・・そして、このような変形が生じた場合、検出素子1を構成して撓み方向外側に位置する圧電セラミック板2上には中央部分2aと端部分2bの一方側とを覆う信号電極4が形成されているのであるから、その中央部分2aにおける外側主表面には分極の向きXと引っ張り応力Ptとの関係に基づいて正(+)の電荷が大きく発生し、また、その端部分2bにおける外側主表面には分極の向きX及び圧縮応力Pcの関係から負(-)の電荷が発生する。しかしながら、この端部分2bには、圧電セラミック板2を挟む形での電極が形成されておらず発生した電荷が出力として取り出されることはないから、上記正の電荷が負の電荷によって打ち消されることは起こらない。・・・また、同時に、撓み方向内側に位置する圧電セラミック板3上には中央部分3aと端部分2bの他方側とを覆う信号電極6が形成されているのであるから、その中央部分3aにおける外側主表面には分極の向きYと圧縮応力Pcとの関係から負の電荷が大きく発生する一方、その端部分3bにおける外側主表面には分極の向きY及び引っ張り応力Ptの関係から正の電荷が発生する。ところが、この端部分2bにおいても、発生した電荷が出力としては取り出されないため、上記負の電荷が正の電荷によって打ち消されることは起こり得ない。」(段落【0013】〜【0016】)
「本実施例に係る検出素子1では、これを構成する圧電セラミック板2,3の中間電極5と対向していない端部分2b,3bの一方側もしくは他方側のいずれかにおいて電荷が発生しないことになる結果、その分だけは信号電極4,6を通じて引き出される電荷の発生量が低減されず、信号が大きく現れるのである」(段落【0017】)

甲第2号証(特開昭61-269072号公報)には、圧電式加速度センサーに関して以下のことが図面とともに記載されている。
「錘と、厚さ0.5mm以下の分極処理された圧電セラミック素子を2枚以上積層した積層圧電セラミックとを具える・・・圧電式加速度センサー」(特許請求の範囲)、
「矩形状グリーンシート(17)の一方の面には・・・混合ペーストを印刷して、内部電極層(18)を形成する。この混合ペーストを印刷したグリーンシート(17)を1枚おきに180°回転して所望の枚数だけ積み重ね、熱プレスで上下から圧着して積層体を形成する。・・・そして、この積層体を次の焼成プロファイルで焼成する。・・・焼成の完了した積層体を・・・円筒状に切削加工して、第3図Bの如き円筒体(19)を形成し、その中心軸に貫通する中心孔(20)を設ける。」(2頁右下欄11行〜3頁左上欄5行)、
「なお、上述においては圧縮型の実施例を示したが、本発明を剪断型、円錐型、ベンディング型などの他の型の圧電式加速度センサーに適用することも可能である。」(4頁左下欄6〜9行)

甲第3号証(特開平1-148969号公報)には、加速度センサに関して以下のことが図面とともに記載されている。
「1は板状圧電素子であり、その厚み方向に互いに反対方向に分極軸を有する2枚の板状圧電素子1a、1bとこれらを貼り合わせる接着層1cからなる。この接着層1cは圧電素子1a、1bを電気的に導通させるもので電極としての機能も有する。・・・スリット2で囲まれた部分は片持ち梁構造の屈曲振動モード振動子3となる。屈曲振動子3の上下面には電極4a、4bを有し、上下面の電極が出力取り出し電極となる。」(2頁左下欄12行〜右下欄4行)、
「第3図には上記とは別の電気回路を示す。(a)に示すように、分極方向を厚み方向に同方向とし、上下面を短絡して一つの電極とし、一方接着面を別の電極としたいわゆる並列型に結線したものであり、・・・上記の直列型と同様に加速度のみを検出できる。」(3頁左上欄7〜13行)

エ.対比・判断
本件発明と甲第1号証に記載された発明とを対比すると、甲第1号証記載の一方の信号電極(4)は一方の圧電セラミック板(2)の中央部分(2a)から端部分(2b)の一方側にかけて形成され、他方の信号電極(6)は他方の圧電セラミック板(3)の中央部分(3a)から端部分(3b)の他方側にかけて形成されたものであるから、信号電極(4)、(6)は、中央部のみに設けたものとも長さ方向全域に設けたものともいえず、甲第1号証には本件発明の「正端子に接続される内部電極及び接地端子に接続される内部電極の内のいずれか一方を圧電セラミック板の自由振動部の長さ方向に対する中央部のみに設け、他方を長さ方向全域に設けた」点の構成が記載されていない。
さらに、甲第2号証記載のものは円筒体をなすものであってしかも圧縮型であるから自由振動部自体が存在せず、また、甲第3号証記載の電極4a、4b及び電極としての機能も有する接着層1cは、いずれも片持ち梁構造の振動子3の長さ方向全域に設けられていることが明らかであるから、本件発明におけるかかる点の構成は、甲第2、3号証にも記載されていない。
なお、特許異議申立人は、甲第1号証記載のものも加速度検出には信号電極の中央部分のみが寄与する旨主張しているが、甲第1号証記載のものにおいて加速度検出に信号電極の中央部分のみが寄与するのは、信号電極が、中央部分にのみ形成された中間電極と対向しているからであって、中間電極を必要としない本件発明におけるかかる点の構成が、甲第1号証記載の発明から容易になし得たものとすることはできない。また、特許異議申立人は、甲第3号証に積層されたセラミック層に発生する電圧を並列接続で取り出すことが開示されている旨主張しているが、甲第3号証記載の並列接続を甲第1号証記載の発明に適用して直列接続を並列接続に改造するには、中間電極を信号電極としなければならないから、中間電極はいずれかの外部電極18、19まで延長した形状になるというべきであり、本件発明のかかる点の構成が、甲第3号証記載の並列接続を甲第1号証記載の発明に適用して容易になし得たものとすることはできない。
そして、本件発明は、かかる点の構成により明細書記載の作用効果を奏するものである。
したがって、本件発明は、甲第1〜3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

オ.むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立の理由及び証拠によっては本件発明についての特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2004-01-22 
出願番号 特願平7-477
審決分類 P 1 652・ 121- Y (G01P)
最終処分 維持  
前審関与審査官 北川 創  
特許庁審判長 西川 一
特許庁審判官 三輪 学
杉野 裕幸
登録日 2002-11-15 
登録番号 特許第3368403号(P3368403)
権利者 エヌイーシートーキン株式会社
発明の名称 圧電型加速度センサ  

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