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審決分類 審判 訂正 2項進歩性 訂正する A41B
審判 訂正 4項(134条6項)独立特許用件 訂正する A41B
管理番号 1092071
審判番号 訂正2003-39225  
総通号数 52 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-03-31 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2003-10-23 
確定日 2003-12-24 
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3222090号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第3222090号に係る明細書を本件審判請求書に添付された訂正明細書のとおり訂正することを認める。 
理由 I 手続の経緯
特許第3222090号(以下「本件特許」という。)についての手続の経緯は、およそ次のとおりである。
(1)特許出願 平成2年5月23日(特願平2-133637号の分割出願)
(2)特許権の設定の登録 平成13年8月17日
(3)特許掲載公報の発行 平成13年10月22日
(4)鈴木康之より特許異議の申立て(異議2002-71043) 平成14年4月19日
堀修一朗より特許異議の申立て(同) 平成14年4月22日
(5)取消理由通知書の発送 平成14年10月1日
(6)特許権者より特許異議意見書の提出及び訂正請求 平成14年12月2日
(7)取消決定(訂正認容) 平成15年1月21日(特許権者への送達平成15年2月10日)
(8)取消決定取消の訴え〔東京高等裁判所平成15年(行ケ)第78号〕 平成15年3月5日
(9)訂正審判の請求(訂正2003-39095) 平成15年5月14日
(10)前記訂正審判請求の取下げ 平成15年10月28日

II 請求の趣旨及び訂正の内容

1 本件審判の請求の趣旨は、本件特許の願書に添付した明細書を本件審判請求書に添付した訂正明細書のとおり訂正することを求めるものである(以下、本件審判の請求に係る訂正を「本件訂正」という。)。

2 本件訂正の内容は、次のア〜カのとおりである(特許請求の範囲の訂正箇所に下線を付した。)。
ア 特許請求の範囲の請求項1の記載について、
「透液性トップシートとバックシートの間に吸収体を有し、かつ脚回り部分にフラップ部分を有し、前身頃と後身頃の両側部が固定されたパンツタイプの紙おむつであって、
前記バックシートは、前記吸収体側に第1バックシートを有し、これより裏面側に第2バックシートを有し、前記第1バックシートおよび第2バックシートは前記吸収体の縁より延在し、その延在部分により吸収体が存在しないフラップ部分を構成し、
一方の脚回りの前身頃側部から製品紙おむつの下部を巡って他方の脚回りの前身頃側部に連続した前記吸収体を横切る第1弾性伸縮部材と、一方の脚回りの後身頃側部から製品紙おむつの下部を巡って他方の脚回りの後身頃側部に連続した前記吸収体を横切る第2弾性伸縮部材とを有し、
前記各弾性伸縮部材は第1バックシートと第2バックシートとの間に介在され、
各弾性伸縮部材は少なくとも脚回りのフラップ部分において伸縮可能に固定されていることを特徴とするパンツタイプ紙おむつ。」
を、
「透液性トップシートとバックシートの間に吸収体を有し、かつ脚回り部分にフラップ部分を有し、前身頃と後身頃の両側部が固定されたパンツタイプの紙おむつであって、
前記バックシートは、前記吸収体側に第1バックシートを有し、これより裏面側に第2バックシートを有し、前記第1バックシートおよび第2バックシートは前記吸収体の縁より延在し、その延在部分により吸収体が存在しないフラップ部分を構成し、
前記前身頃両側部間及び前記後身頃両側部間よりそれぞれ幅狭の、製品紙おむつの下部を有し、
一方の脚回りの前身頃側部から製品紙おむつの下部を巡って他方の脚回りの前身頃側部に連続した前記吸収体を横切る複数本の糸ゴムからなる第1弾性伸縮部材と、一方の脚回りの後身頃側部から製品紙おむつの下部を巡って他方の脚回りの後身頃側部に連続した前記吸収体を横切る複数本の糸ゴムからなる第2弾性伸縮部材とを有し、
前記第1及び第2弾性伸縮部材は、それぞれ製品紙おむつの下部において交差せず、第1バックシートと第2バックシートとの間に介在され、それぞれ脚回りに沿いかつ前記吸収体を横切り製品の長手方向中心側に湾曲して設けられ、
各弾性伸縮部材は少なくとも脚回りのフラップ部分において伸縮可能に固定されていることを特徴とするパンツタイプ紙おむつ。」
と訂正する。
イ 発明の詳細な説明の段落【0009】の記載中、
「一方の脚回りの前身頃側部から製品紙おむつの下部を巡って他方の脚回りの前身頃側部に連続した前記吸収体を横切る第1弾性伸縮部材と、一方の脚回りの後身頃側部から製品紙おむつの下部を巡って他方の脚回りの後身頃側部に連続した前記吸収体を横切る第2弾性伸縮部材とを有し、
前記各弾性伸縮部材は第1バックシートと第2バックシートとの間に介在され、」
を、
「前記前身頃両側部間及び前記後身頃両側部間よりそれぞれ幅狭の、製品紙おむつの下部を有し、
一方の脚回りの前身頃側部から製品紙おむつの下部を巡って他方の脚回りの前身頃側部に連続した前記吸収体を横切る複数本の糸ゴムからなる第1弾性伸縮部材と、一方の脚回りの後身頃側部から製品紙おむつの下部を巡って他方の脚回りの後身頃側部に連続した前記吸収体を横切る複数本の糸ゴムからなる第2弾性伸縮部材とを有し、
前記第1及び第2弾性伸縮部材は、それぞれ製品紙おむつの下部において交差せず、第1バックシートと第2バックシートとの間に介在され、それぞれ脚回りに沿いかつ前記吸収体を横切り製品の長手方向中心側に湾曲して設けられ、」
と訂正する。
ウ 同じく段落【0018】の記載中、「糸ゴムなどからなる一本または複数本の第1弾性伸縮部材」を、「糸ゴムからなる複数本の第1弾性伸縮部材」と、「糸ゴムなどからなる一本または複数本の第2弾性伸縮部材」を、「糸ゴムからなる複数本の第2弾性伸縮部材」と、それぞれ訂正する。
エ 同じく段落【0030】の記載中、「第1バックロール」を「第1バックシート」と訂正する。
オ 同じく段落【0031】の記載中、「前面」を「全面」と訂正する。
カ 同じく段落【0033】の記載中、「またトップシート1側に弾性伸縮部材を固定するようにしてもよい。弾性伸縮部材の伸長量が少ない場合、これを吸収体3に固定することで、引っ張りに対抗させるようにすることも可能である。」を削除する。

III 当審の判断

1 新規事項の追加の有無、訂正の目的の適否及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)アの訂正について
(1-1)アの訂正のうち、「前記前身頃両側部間及び前記後身頃両側部間よりそれぞれ幅狭の、製品紙おむつの下部を有し、」を加入する訂正は、本件特許の願書に添付した明細書(以下「登録時明細書」という。)の発明の詳細な説明の段落【0017】の「図1のように、予め砂時計状に形成されたものが前後方向に折り畳まれかつ折り畳んだ両側部が固定されてパンツタイプの紙おむつが構成されている。」との記載、段落【0025】の「その後、ロールカッター装置19により、第1弾性伸縮部材4と第2弾性伸縮部材5との間でありかつ実質的に前記吸収体3上に位置しない部分がくり抜かれる。」との記載及び本件特許の願書に添付した図面(以下「登録時図面」という。これについては訂正はない。)の主として図1、3の記載(製品紙おむつを示す斜視図はない。)に基いて、登録時明細書の請求項1記載の「パンツタイプの紙おむつ」又は「パンツタイプ紙おむつ」について、それが、製品としての紙おむつにおいて前身頃両側部間及び後身頃両側部間に当たる部分より下方全体にわたって存在するところの、これら両側部間の間隔よりそれぞれ幅狭となっている部分である「下部」と称される部分〔製品となる前の紙おむつの展開図(図1参照)では、長手方向中央のくびれ部分全体〕を有するものであること、つまり、「前身頃両側部間及び後身頃両側部間よりそれぞれ幅狭の、製品紙おむつの下部を有する」ものであることを限定するものであるとともに、登録時明細書の請求項1にもともと存在した「製品紙おむつの下部」及び請求項2にもともと存在した「下部」なる用語の意味を明りょうにするものである。
(1-2)アの訂正のうち、「第1弾性伸縮部材」を「複数本の糸ゴムからなる第1弾性伸縮部材」と、「第2弾性伸縮部材」を「複数本の糸ゴムからなる第2弾性伸縮部材」と、それぞれ変更する訂正は、登録時明細書の段落【0018】の「本発明の実施の態様においては、一方の脚回りの前身頃F端から製品紙おむつの下部を巡って他方の脚回りの前身頃F端に連続した糸ゴムなどからなる一本または複数本の第1弾性伸縮部材4と、一方の脚回りの後身頃B端から製品紙おむつの下部(股下部分)を巡って他方の脚回りの後身頃B端に連続した糸ゴムなどからなる一本または複数本の第2弾性伸縮部材5とを有し」との記載及び登録時図面の主として図1、3の記載に基づいて、登録時明細書の請求項1にいう「第1弾性伸縮部材」及び「第2弾性伸縮部材」について、それらがそれぞれ、「複数本の糸ゴムからなる弾性伸縮部材」であることを限定するものである。
なお、ここで、「複数本の糸ゴムからなる弾性伸縮部材」における「複数本の」は、「糸ゴムからなる弾性伸縮部材」全体を修飾する語句、つまり、直接には「弾性伸縮部材」に係る語句と認める〔後記1の(2)を参照〕。
(1-3)アの訂正のうち、「各弾性伸縮部材は第1バックシートと第2バックシートとの間に介在され」を、「第1及び第2弾性伸縮部材は、それぞれ製品紙おむつの下部において交差せず、第1バックシートと第2バックシートとの間に介在され、それぞれ脚回りに沿いかつ前記吸収体を横切り製品の長手方向中心側に湾曲して設けられ」と変更する訂正は、登録時明細書の請求項2の記載、段落【0023】の「続いて、第1および第2弾性伸縮部材4、5の実質的に前記吸収体3上に位置しない部分は、後記する掴み引張手段により掴まれてライン中間から相互に離間される。」との記載及び登録時図面の主として図1、3、5の記載に基づいて、登録時明細書の請求項1にいう、もともと、吸収体を横切るものであり、かつ、第1バックシートと第2バックシートとの間に介在されているものである「各弾性伸縮部材」(すなわち「第1及び第2弾性伸縮部材」)について、さらに、それらがそれぞれ、製品紙おむつの下部において交差せず、脚回りに沿いかつ吸収体を横切り製品の長手方向中心側に湾曲して設けられているものであることを限定するものである。
なお、ここで、「製品の長手方向中心」とは、製品紙おむつの一方の脚回りの下端内縁と他方の脚回りの下端内縁とを結ぶ部分〔着用者の股下に当接する部分。これは、製品となる前の紙おむつの展開図(図1参照)では、長手方向中心の部分に相当する。〕を意味する用語と認める。また、「複数本の糸ゴムからなる弾性伸縮部材」における「複数本の」は、「糸ゴムからなる弾性伸縮部材」全体を修飾する語句、つまり直接には「弾性伸縮部材」に係る語句と認める〔後記1の(2)を参照〕。
(1-4)したがって、全体としてアの訂正は、特許請求の範囲の減縮及び明りょうでない記載の釈明を目的とするものであって、かつ、登録時明細書又は登録時図面に記載した事項の範囲内においてするものである。
そして、アの訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張するものでも変更するものでもない。
(2)イ〜カの訂正について
イ、ウ、カの訂正は、特許請求の範囲の請求項1を前記アのように訂正したことに伴って、発明の詳細な説明の記載をこれに整合させるものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであって、かつ、登録時明細書又は登録時図面に記載した事項の範囲内においてするものである。
なお、ウの訂正における「糸ゴムからなる複数本の・・弾性伸縮部材」は、アの訂正における「複数本の糸ゴムからなる・・弾性伸縮部材」と表現上相違するが、後者では、「複数本の」は「糸ゴムからなる・・弾性伸縮部材」全体を修飾する語句と認められるので、両訂正は整合している。
エ、オの訂正は、誤記の訂正を目的とするものであって、かつ、登録時明細書又は登録時図面に記載した事項の範囲内においてするものである。
そして、イ〜カの訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張するものでも変更するものでもない。
(3)まとめ
よって、本件訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、平成6年法律第116号による改正前の特許法(以下「旧特許法」という。)第126条第1項ただし書及び第2項の規定に適合する。
進んで、本件訂正が旧特許法第126条第3項の規定に適合するか否かについて検討する。

2 独立特許要件の存否
(1)本件発明
本件訂正後における特許請求の範囲の請求項1及び2に記載されている事項により構成される発明(以下、順に「第1発明」、「第2発明」という。)は、次のとおりのものである。
【第1発明】
「透液性トップシートとバックシートの間に吸収体を有し、かつ脚回り部分にフラップ部分を有し、前身頃と後身頃の両側が固定されたパンツタイプの紙おむつであって、
前記バックシートは、前記吸収体側に第1バックシートを有し、これより裏面側に第2バックシートを有し、前記第1バックシートおよび第2バックシートは前記吸収体の縁より延在し、その延在部分により吸収体が存在しないフラップ部分を構成し、
前記前身頃両側部間及び前記後身頃両側部間よりそれぞれ幅狭の、製品紙おむつの下部を有し、
一方の脚回りの前身頃側部から製品紙おむつの下部を巡って他方の脚回りの前身頃側部に連続した前記吸収体を横切る複数本の糸ゴムからなる第1弾性伸縮部材と、一方の脚回りの後身頃側部から製品紙おむつの下部を巡って他方の脚回りの後身頃側部に連続した前記吸収体を横切る複数本の糸ゴムからなる第2弾性伸縮部材とを有し、
前記第1及び第2弾性伸縮部材は、それぞれ製品紙おむつの下部において交差せず、第1バックシートと第2バックシートとの間に介在され、それぞれ脚回りに沿いかつ前記吸収体を横切り製品の長手方向中心側に湾曲して設けられ、
各弾性伸縮部材は少なくとも脚回りのフラップ部分において伸縮可能に固定されていることを特徴とするパンツタイプ紙おむつ。」
【第2発明】
「第1および第2弾性伸縮部材が下部において交差せず、脚回りのフラップ部分において各弾性伸縮部材により連続化している請求項1記載のパンツタイプ紙おむつ。」
(2)前記Iの(7)の取消決定に引用した特開昭62-21802号公報(以下「刊行物1」という。)の記載内容
刊行物1の記載を図面(第1〜4図。便宜的に、第1図における仮想折り返し線Xより上方を前身頃、下方を後身頃とする。)を参照しながら総合すると、刊行物1には、次の発明Aが記載されていると認められる(刊行物1の詳細な記載事項の認定については、同取消決定を参照)。
なお、ここで、「クロッチ」とは、刊行物1の4頁右上欄12行に「前記一対のレッグホール間、すなわち、クロッチ」との記載があることや「仮想折り返し線X」とクロッチの位置が一致することから見て、左右のレッグホールの各内縁を結ぶ部分(着用者の股下に当接する部分)を意味する用語と認められる。
【発明A】
「着用者の肌に接する透水性トップシート2と、該トップシート2と(着用者の肌と)反対側に位置する不透水性バックシート3との間に吸収性コア4を有し、かつレッグホール10a,10b周囲にフラップ部分を有し、クロッチを中心として折り返されて前身頃と後身頃の対向側縁が接合された使い捨て吸収性パンツであって、
不透水性バックシート3は、吸収性コア4の縁より延在し、その延在部分により吸収性コア4が存在しないフラップ部分を構成し、
レッグホール10a周囲の前身頃側部から製品パンツのクロッチ付近を巡ってレッグホール10b周囲の前身頃側部に連続した吸収性コア4を横切る伸縮部材11aと、レッグホール10a周囲の後身頃側部から製品パンツのクロッチ付近を巡ってレッグホール10b周囲の後身頃側部に連続した吸収性コア4を横切る伸縮部材11bとを有し、
伸縮部材11a及び伸縮部材11bは、それぞれ製品パンツのクロッチ付近において交差せず、透水性トップシート2と不透水性バックシート3との間に介在され、それぞれレッグホール10a,10b周囲に沿いかつ吸収性コア4を横切り全長にわたって略直線状に設けられ、
各伸縮部材11a,11bは少なくともレッグホール10a,10b周囲のフラップ部分において伸縮可能に接合されている使い捨て吸収性パンツ。」
(3)対比判断
(3-1)第1発明について
(3-1-1)第1発明において、「前記前身頃両側部間及び前記後身頃両側部間よりそれぞれ幅狭の、製品紙おむつの下部」とは、その後の、「一方の脚回りの前身頃側部から製品紙おむつの下部を巡って他方の脚回りの前身頃側部に連続した前記吸収体を横切る複数本の糸ゴムからなる第1弾性伸縮部材と、一方の脚回りの後身頃側部から製品紙おむつの下部を巡って他方の脚回りの後身頃側部に連続した前記吸収体を横切る複数本の糸ゴムからなる第2弾性伸縮部材とを有し、前記第1及び第2弾性伸縮部材は、・・それぞれ脚回りに沿いかつ前記吸収体を横切り製品の長手方向中心側に湾曲して設けられ」との規定から見て、各弾性伸縮部材が、各身頃の左右両側部から巡って製品紙おむつの長手方向中心側に湾曲して設けられる一定の領域であるところの、製品としての紙おむつにおいて各身頃の左右両側部間に当たる部分より下方全体にわたって存在する、これら両側部間の間隔よりそれぞれ幅狭となっている部分〔これは、製品となる前の紙おむつの展開図(図1参照)では、長手方向中央部のくびれ部分全体に相当する。〕を意味するものと認められる。
(3-1-2)そこで、第1発明と発明Aとを対比すると、発明Aにいう
「着用者の肌に接する透水性トップシート2」、「該トップシート2と(着用者の肌と)反対側に位置する不透水性バックシート3」、「吸収性コア4」、「レッグホール10a,10b周囲」、「クロッチを中心として折り返されて前身頃と後身頃の対向側縁が接合された」、「使い捨て吸収性パンツ」、「製品パンツ」、「側縁」、「レッグホール10a周囲」、「レッグホール10b周囲」、「伸縮部材11a」、「伸縮部材11b」、「接合されている」は順に、第1発明にいう
「透液性トップシート」、「バックシート」、「吸収体」、「脚回り部分」、「前身頃と後身頃の両側部が固定された」、「パンツタイプの紙おむつ」又は「パンツタイプ紙おむつ」、「製品紙おむつ」又は単に「製品」、「側部」、「一方の脚回り」、「他方の脚回り」、「第1弾性伸縮部材」、「第2弾性伸縮部材」、「固定されている」に相当すると認められる。
さらに、発明Aにいう「クロッチ」とは、前認定〔2の(2)〕のとおり、左右のレッグホールの各内縁を結ぶ部分(着用者の股下に当接する部分)を意味する用語であり、第1発明にいう「製品の長手方向中心」とは、前認定〔1の(1)の(1-3)〕のとおり、製品紙おむつの一方の脚回りの下端内縁と他方の脚回りの下端内縁とを結ぶ部分〔着用者の股下に当接する部分。これは、製品となる前の紙おむつの展開図(図1参照)では、長手方向中心の部分に相当する。〕を意味する用語であるから、発明Aにいう「クロッチ」は、第1発明にいう「製品の長手方向中心(製品紙おむつの長手方向中心)」に相当すると認められる。
そして、発明Aの使い捨て吸収性パンツ(パンツタイプ紙おむつ)が、前認定のような、「各弾性伸縮部材が、各身頃の左右両側部から巡って製品紙おむつの長手方向中心側に湾曲して設けられる一定の領域であるところの、製品としての紙おむつにおいて各身頃の左右両側部間に当たる部分より下方全体にわたって存在する、これら両側部間の間隔よりそれぞれ幅狭となっている部分(製品となる前の紙おむつの展開図(図1参照)では、長手方向中央部のくびれ部分全体)」という意味での、前身頃両側部間及び後身頃両側部間よりそれぞれ幅狭である「製品紙おむつの下部」を有するものでないことは明らかである。
そうすると、第1発明と発明Aとは、次の一致点で一致し、次の相違点1〜4で相違すると認められる。
【一致点】
「透液性トップシートとバックシートの間に吸収体を有し、かつ脚回り部分にフラップ部分を有し、前身頃と後身頃の両側部が固定されたパンツタイプの紙おむつであって、
前記バックシートは、前記吸収体の縁より延在し、その延在部分により吸収体が存在しないフラップ部分を構成し、
一方の脚回りの前身頃側部から他方の脚回りの前身頃側部に連続した前記吸収体を横切る第1弾性伸縮部材と、一方の脚回りの後身頃側部から他方の脚回りの後身頃側部に連続した前記吸収性体を横切る第2弾性伸縮部材とを有し、
前記第1及び第2弾性伸縮部材は、それぞれ交差せず、それぞれ脚回りに沿いかつ前記吸収体を横切り設けられ、
各弾性伸縮部材は少なくとも脚回りのフラップ部分において伸縮可能に固定されているパンツタイプ紙おむつ。」
【相違点1】
第1発明では、前身頃両側部間及び後身頃両側部間よりそれぞれ幅狭の、製品紙おむつの下部を有し、第1及び第2弾性伸縮部材はそれぞれ、製品紙おむつの下部を巡って吸収体を横切り、かつ、製品の長手方向中心側に湾曲して設けられるとするのに対し、発明Aでは、そのような製品紙おむつの下部を有さず、したがってまた、第1及び第2弾性伸縮部材はそれぞれ、単に、製品紙おむつの長手方向中心付近を巡って吸収体を横切り、かつ、全長にわたって略直線状に設けられる点。
【相違点2】
第1発明では、第1弾性伸縮部材及び第2弾性伸縮部材について、複数本の糸ゴムからなる第1の弾性伸縮部材及び複数本の糸ゴムからなる第2の弾性伸縮部材とするのに対し、発明Aでは、それに言及しない点〔なお、「複数本の糸ゴムからなる弾性伸縮部材」の解釈については、前記1の(1)の(1-2)及び(2)に述べた。〕。
【相違点3】
第1発明では、バックシートは、吸収体側に第1バックシートを有し、これより裏面側に第2バックシートを有するとするのに対し、発明Aでは、それに言及しない点。
【相違点4】
第1発明では、第1及び第2弾性伸縮部材は、それぞれ製品紙おむつの下部において交差せず、第1バックシートと第2バックシートとの間に介在されるとするのに対し、発明Aでは、第1及び第2弾性伸縮部材は、それぞれ製品紙おむつの長手方向中心付近において交差せず、透液性トップシートとバックシートとの間に介在される点。
(3-1-3)先ず、相違点1について検討する。
パンツタイプ紙おむつにおいて、前身頃両側部間及び後身頃両側部間よりそれぞれ幅狭の、製品紙おむつの下部を有するものとすること自体は、前記Iの(7)の取消決定にも引用した特開昭60-194947号公報や特開昭57-117602号公報によって本件出願前に当業界において周知ではあるが、これら周知技術においては、弾性伸縮部材は、製品紙おむつの下部を巡って吸収体を横切り、かつ、製品の長手方向中心側に湾曲して設けられるものではない。
したがって、これらの周知技術を勘案しても、相違点1をなす「前身頃両側部間及び後身頃両側部間よりそれぞれ幅狭の、製品紙おむつの下部を有し、第1及び第2弾性伸縮部材はそれぞれ、製品紙おむつの下部を巡って吸収体を横切り、かつ、製品の長手方向中心側に湾曲して設けられる」とする構成は、当業者に容易に想到されない。また、職権により調査しても、当該構成を教える本件出願前に頒布された刊行物は見当たらない。
一方、第1発明では、本件審判請求書9頁2行〜10頁下から6行の「引用発明は、・・安定したものとなる。」との記載を参照すると、当該構成を採用することによって、相違点4をなす「第1及び第2弾性伸縮部材は、第1バックシートと第2バックシートとの間に介在される」とする構成と相まって、着用時、第1及び第2弾性伸縮部材の弾性力により、着用者の股下に当接する吸収体を前身頃方向及び後身頃方向(つまり上部)に持ち上げて、吸収体を着用者に対しフィットさせて漏れを防止する等の格別の作用効果を奏するものと認められる。
(3-1-4)したがって、その余の相違点2〜4について検討するまでもなく、第1発明は、たとえ周知技術を勘案したとしても、刊行物1に記載された発明に基づいて本件出願前に当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。また、他に、第1発明について、特許を受けることができないとする理由を見いだすこともできない。
よって、第1発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものである。
(3-2)第2発明について
第2発明は、第1発明においてさらに、脚回りのフラップ部分において各弾性伸縮部材により連続化していることを単に限定するもの(第1および第2弾性伸縮部材が下部において交差しないことは、第1発明がすでに規定している。)であって、本件訂正後においても当然、特許出願の際独立して特許を受けることができるものである。
(4)まとめ
よって、第1発明及び第2発明、すなわち、本件訂正後における特許請求の範囲の請求項1及び2に記載されている事項により構成される発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるから、本件訂正は、旧特許法第126条第3項の規定に適合する。

IV むすび

以上のとおりであるから、本件訂正は、旧特許法、すなわち、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書、第2項及び第3項の規定に適合する。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
パンツタイプ紙おむつ
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】透液性トップシートとバックシートの間に吸収体を有し、かつ脚回り部分にフラップ部分を有し、前身頃と後身頃の両側部が固定されたパンツタイプの紙おむつであって、
前記バックシートは、前記吸収体側に第1バックシートを有し、これより裏面側に第2バックシートを有し、前記第1バックシートおよび第2バックシートは前記吸収体の縁より延在し、その延在部分により吸収体が存在しないフラップ部分を構成し、
前記前身頃両側部間及び前記後身頃両側部間よりそれぞれ幅狭の、製品紙おむつの下部を有し、
一方の脚回りの前身頃側部から製品紙おむつの下部を巡って他方の脚回りの前身頃側部に連続した前記吸収体を横切る複数本の糸ゴムからなる第1弾性伸縮部材と、一方の脚回りの後身頃側部から製品紙おむつの下部を巡って他方の脚回りの後身頃側部に連続した前記吸収体を横切る複数本の糸ゴムからなる第2弾性伸縮部材とを有し、
前記第1及び第2弾性伸縮部材は、それぞれ製品紙おむつの下部において交差せず、第1バックシートと第2バックシートとの間に介在され、それぞれ脚回りに沿いかつ前記吸収体を横切り製品の長手方向中心側に湾曲して設けられ、
各弾性伸縮部材は少なくとも脚回りのフラップ部分において伸縮可能に固定されていることを特徴とするパンツタイプ紙おむつ。
【請求項2】第1および第2弾性伸縮部材が下部において交差せず、脚回りのフラップ部分において各弾性伸縮部材により連続化している請求項1記載のパンツタイプ紙おむつ。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、パンツタイプの紙おむつ、具体的には透液性トップシートとバックシートの間に吸収体を有し、かつ脚回り部分にフラップ部分を有し、前身頃と後身頃の両側部が固定されたパンツタイプの紙おむつに関する。
【0002】
【従来の技術】
透液性トップシートと不透液性バックシートの間に少なくとも脚回り部分に前記各シートにより構成されるフラップ部分を残して吸収体が内包され、使用に際しては前身頃に対して後身頃に固定された止着テープにより固定することで、着用者を包む紙おむつは汎用されている。
【0003】
ところが、おむつ離れを促進するなどの目的であるいはその都度止着テープを用いての装着作業を大人から解放させ装着を簡便化するなどの目的をもって、近年、いわゆるパンツタイプの紙おむつが開発されつつある。
【0004】
また、古くからこのパンツタイプの紙おむつあるいはパンツに関する提案もいくつかなされている。たとえば、米国特許第3,828,367号には、吸収体を有しないパンツの構造およびその製造方法が開示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、前記公報のパンツは吸収体を有しないので、幼児または大人用の紙おむつとしては機能しない。
【0006】
他方、製造方法的には、脚回りに沿うように、ニップロールに対して曲線溝を形成し、これに弾性伸縮部材を案内させながら供給するようにしてあるが、実際の製造設備を考えた場合には、きわめてコントロールが困難となるとともに、吸収体を内包させる態様においては適用できない。
【0007】
一方で、弾性伸縮部材は単一のバックシートに対して固定することも可能であるが、この固定にはホットメルト接着剤を用いるのが大量生産に適するものの、弾性伸縮部材の収縮力により固定個所が外れ易い。一旦、一部の固定個所が外れると、他の個所にも収縮力が伝播し、所定の収縮力が発揮されない事態を招く。弾性伸縮部材の収縮力により固定個所が外れると、目的の製品形状を得難く、また脚回り部分におけるシール効果が損なわれる原因ともなる。
【0008】
したがって、本発明の主たる課題は、特に弾性伸縮部材の固定保持性に優れたものとすることにある。他の課題は、脚回りからの漏れ防止効果が高く、しかも製品の形状保持性及び製品の着用状態の外観に優れたものとすることにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決した本発明の請求項1記載の発明は、透液性トップシートとバックシートの間に吸収体を有し、かつ脚回り部分にフラップ部分を有し、前身頃と後身頃の両側部が固定されたパンツタイプの紙おむつであって、
前記バックシートは、前記吸収体側に第1バックシートを有し、これより裏面側に第2バックシートを有し、前記第1バックシートおよび第2バックシートは前記吸収体の縁より延在し、その延在部分により吸収体が存在しないフラップ部分を構成し、
前記前身頃両側部間及び前記後身頃両側部間よりそれぞれ幅狭の、製品紙おむつの下部を有し、
一方の脚回りの前身頃側部から製品紙おむつの下部を巡って他方の脚回りの前身頃側部に連続した前記吸収体を横切る複数本の糸ゴムからなる第1弾性伸縮部材と、一方の脚回りの後身頃側部から製品紙おむつの下部を巡って他方の脚回りの後身頃側部に連続した前記吸収体を横切る複数本の糸ゴムからなる第2弾性伸縮部材とを有し、
前記第1及び第2弾性伸縮部材は、それぞれ製品紙おむつの下部において交差せず、第1バックシートと第2バックシートとの間に介在され、それぞれ脚回りに沿いかつ前記吸収体を横切り製品の長手方向中心側に湾曲して設けられ、
各弾性伸縮部材は少なくとも脚回りのフラップ部分において伸縮可能に固定されていることを特徴とするパンツタイプ紙おむつである。
【0010】
請求項2記載の発明は、第1および第2弾性伸縮部材が下部において交差せず、脚回りのフラップ部分において各弾性伸縮部材により連続化している請求項1記載のパンツタイプ紙おむつである。
【0011】
【作用】
本発明に係る紙おむつにおいては、バックシートに対して弾性伸縮部材を固定するにあたり、第1バックシートと第2バックシートとの間において固定したものである。
【0012】
したがって、弾性伸縮部材の固定個所の一部が外れたとしても、第1バックシートがあるので、弾性伸縮部材の収縮力が伝播することが制限され、もって、全体としてみれば、弾性伸縮部材の固定は安定したものとなる。その結果、目的の製品形状を確実に得ることができる。かくして製品の形状保持性が良好であることは、製品を着用した場合において外観が優れたものとなる。そして、本発明においては、第1バックシートおよび第2バックシートを吸収体の縁より延在させ、その延在部分により吸収体が存在しないフラップ部分を構成するが、その脚回りのフラップ部分において、弾性伸縮部材の固定保持性が安定しているから、優れたシール効果を発揮させることができる。
【0013】
一方の脚回りの前身頃側部から製品紙おむつの下部を巡って他方の脚回りの前身頃側部に連続した前記吸収体を横切る第1弾性伸縮部材と、一方の脚回りの後身頃側部から製品紙おむつの下部を巡って他方の脚回りの後身頃側部に連続した前記吸収体を横切る第2弾性伸縮部材とを有し、各弾性伸縮部材は少なくとも脚回りのフラップ部分において伸縮可能に固定されているので、脚回りの排尿に対するシール性に優れ、漏れを確実に防止できる。
【0014】
また、請求項2記載の発明においては、第1および第2弾性伸縮部材が下部において交差せず、脚回りのフラップ部分において各弾性伸縮部材により連続化しているから、その製造設備が簡素となる。
【0015】
他方、製造方法および装置に関する作用については、次記の実施例とともに説明することとする。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下本発明を図面に示す実施の形態を参照しながらさらに詳説する。
図1に本発明に係る紙おむつ構造例が明示されている。
【0017】
すなわち、不織布などからなり着用者の肌に面する透液性トップシート1とポリエチレンなどからなる不透液性第1バックシート2および透液性第2バックシート6との間に、少なくとも脚回り部分に前記各シート1、2、6により構成されるフラップ部分FLを残して綿状パルプを主体とし必要により吸収紙などを設けた半剛性の吸収体3が内包され、図1のように、予め砂時計状に形成されたものが前後方向に折り畳まれかつ折り畳んだ両側部が固定されてパンツタイプの紙おむつが構成されている。
【0018】
本発明の実施の態様においては、一方の脚回りの前身頃F端から製品紙おむつの下部を巡って他方の脚回りの前身頃F端に連続した糸ゴムからなる複数本の第1弾性伸縮部材4と、一方の脚回りの後身頃B端から製品紙おむつの下部(股下部分)を巡って他方の脚回りの後身頃B端に連続した糸ゴムからなる複数本の第2弾性伸縮部材5とを有し、各弾性伸縮部材1、2の脚回り部分の実質的に全体が伸縮可能にフラップ部分FLにおいて固定され、実質的に吸収体3が位置する部分においては吸収体3が変形しない程度に実質的に非伸長状態で第1バックシート2に対して固定され、しかも各弾性伸縮部材1、2が前記下部において交差せず、前記脚回りのフラップ部分FLにおいて各弾性伸縮部材1、2により連続化、すなわちあたかも連続したようなループが構成されている。
【0019】
図2および図3には、紙おむつの製造設備が示されているので、より詳しい紙おむつ構造例とともにこれを説明する。
【0020】
すなわち、予め巻取られた連続透液性トップシート1とポリエチレンなどからなる連続不透液性第1バックシート2とが繰り出され組立ラインに供給されるとともに、その供給過程でそれらの間に、ラインの幅方向に長手を有する吸収体3が間欠的にコンベア10に乗って供給される。また、トップシート1の内面両側にはウエストギャザー用弾性伸縮部材11、11がノズル12によりホットメルト接着剤が塗布されながら供給され、ニップロール13、14により第1バックシート2との間において重合固定される。さらに、第1バックシート2内面(吸収体に対する)にはニップロール13、14間に供給される前に、塗布装置15によりホットメルト接着剤が塗布され、ニップロール13、14間でトップシート1との重合および吸収体3の固定が図られる。
【0021】
その後、第1バックシート2の裏面のライン幅方向中間に第1弾性伸縮部材4および第2弾性伸縮部材5がそれぞれ実質的に伸長させることなく連続的に供給手段16により供給される。また、この供給前にノズル17により間欠的にホットメルト接着剤が塗布される。
【0022】
次いで、供給された第1および第2弾性伸縮部材4、5の実質的に前記吸収体3上に位置する部分にはホットメルト接着剤が予め間欠的塗布が行われているので、第1弾性伸縮部材4および第2弾性伸縮部材5が第1バックシート2裏面に固定される。
【0023】
続いて、第1および第2弾性伸縮部材4、5の実質的に前記吸収体3上に位置しない部分は、後記する掴み引張手段により掴まれてライン中間から相互に離間される。
【0024】
この引張状態で、重合ロール18により、不織布などからなる第2バックシート6が第1バックシート2に重ね合わされるとともに、第1および第2弾性伸縮部材4、5の少なくとも実質的に前記吸収体3上に位置しない部分と第2バックシートとが固定される。
【0025】
その後、ロールカッター装置19により、第1弾性伸縮部材4と第2弾性伸縮部材5との間でありかつ実質的に前記吸収体3上に位置しない部分がくり抜かれる。
【0026】
続いて、セーラー手段20により、ライン中間を境にして上記の連続要素の一側が他側に折り返えされる。
【0027】
次いで、吸収体3が存在しない部分においてトップシート1と第1バックシート2とが、ヒートシールおよび切断兼用装置21により固定されるとともに、同時に固定部分において分断され、個別製品とされる。ヒートシールの後、下流に設けられた切断装置により切断されることもある。
【0028】
上記例においては、弾性伸縮部材4、5の固定に際しては、たとえば図4〜図7に示す掴み手段によって行うことができる。
【0029】
すなわち、掴み手段50、50は、ラインの両側に直交的に設けられたシリンダー51、51のそれぞれの先端にフック52を有するものである。
【0030】
かかる掴み手段50を配設した下で、第1および第2弾性伸縮部材4、5が、第1バックシート2の裏面に重ね合わされ、好ましくは配設される抑えロール22により押圧されて第1バックシート2の裏面の吸収体3が位置する部分において固定される。その後、下流に至って、好ましくは仮固定ロール23により、先の固定境界部分を仮固定される。この仮固定ロールは、第1バックシート2の裏面に対して進退自在とするのが望まれる。
【0031】
かかる状態において、掴み手段50、50のフック52、52が伸長してそれぞれ第1および第2弾性伸縮部材4、5をチャックした後、伸長限においてチャッキングを放す。このとき、第1および第2弾性伸縮部材4、5の離間幅より若干短い長さを有する重合ロール18により第2バックシート6を重ねると、第2バックシート6の内面のほぼ全面に塗布装置24により塗布されたホットメルト接着剤により、第1および第2弾性伸縮部材4、5が第1バックシート2および第2バックシート6に固定される。
【0032】
かかる固定の後、第2バックシート6の他の部分は全幅の固定ロール25により、第2バックシート6の最終的重合固定がなされる。
【0033】
他方、上記例において、一枚のバックシートでなく、第1および第2バックシート2、6の両者を用いたのは、弾性伸縮部材の固定が容易かつ確実になる利点をもたらすとともに、第2バックシート6として不織布を用いることによる、成品の体裁の向上をもたらす。逆に、バックシートが単一のポリエチレンなどのプラスチックシートからなる場合には、体裁が悪く、商品価値が低いものとなる。上記設備において、上下が逆でもよい。
【0034】
【発明の効果】
以上の通り、本発明の紙おむつ構造によれば、特に弾性伸縮部材の固定保持性に優れたものとなる。また、脚回りからの漏れ防止効果が高く、しかも形状保持性及び製品の着用状態の外観に優れたものが得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
(a)は本発明の紙おむつの要部展開図、(b)その要部斜視図である。
【図2】
製造装置例の正面図である。
【図3】
その平面図である。
【図4】
他の要部平面図である。
【図5】
別の要部平面図である。
【図6】
その要部平面図である。
【図7】
掴み手段の側面図である。
【符号の説明】
1…トップシート、2…第1バックシート、2A…単一バックシート、3…吸収体、4…第1弾性伸縮部材、5…第2弾性伸縮部材、6…第2バックシート。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審決日 2003-12-11 
出願番号 特願平9-134049
審決分類 P 1 41・ 856- Y (A41B)
P 1 41・ 121- Y (A41B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 渕野 留香  
特許庁審判長 鈴木 公子
特許庁審判官 杉原 進
山崎 豊
登録日 2001-08-17 
登録番号 特許第3222090号(P3222090)
発明の名称 パンツタイプ紙おむつ  
代理人 永井 義久  
代理人 永井 義久  

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