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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 C09K
管理番号 1092169
審判番号 不服2002-544  
総通号数 52 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1999-07-06 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-01-11 
確定日 2004-02-13 
事件の表示 平成10年特許願第 32770号「難燃剤、難燃性樹脂組成物及び難燃性樹脂成形体」拒絶査定に対する審判事件[平成11年 7月 6日出願公開、特開平11-181429]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.本願発明
本願は、平成10年2月16日の出願であって、その請求項1に係る発明は、平成14年2月12日付けで補正された明細書の記載からみて、本願の特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの次の事項により特定されるものである。
【請求項1】一般式(1)
【化1】

[式中mは3〜25の整数を示す。Phはフェニル基を示す。]で表される環状ホスファゼン化合物及び一般式(2)
【化2】

[式中Xは基-N=P(OPh)3又は基-N=P(O)OPhを示し、Yは基-P(OPh)4又は基-P(O)(OPh)2を示す。nは3〜1000の整数を示す。Phは前記に同じ。]で表される直鎖状ホスファゼン化合物からなる群より選ばれた少なくとも1種のホスファゼン化合物が、o-,m-,p-フェニレン基、ビフェニレン基及び基
【化3】

[式中Aは-C(CH3)2-、-SO2-、-S-又は-O-を示す。]からなる群より選ばれた少なくとも1種の架橋基により架橋されている化合物であって、(a)該架橋基は上記ホスファゼン化合物のフェニル基が脱離した2個の酸素原子間に介在しており、(b)架橋化合物中のフェニル基の含有割合が上記ホスファゼン化合物(1)及び/又は(2)中の全フェニル基の総数を基準に50〜99.9%であり、(c)残存塩素量が0.93%以下であることを特徴とする架橋フェノキシホスファゼン化合物からなる難燃剤。

2.引用例の記載
原審の平成13年9月4日付けの拒絶理由通知書で引用した刊行物である特開昭52-153987号公報(以下、「引用例1」という。)には、次のとおりの記載がある。
(2-1)
「 一般式

で表わされ、式中 R1〜R10のおのおのが式

で表わされ、X1〜X5が水素、臭素または塩素である基であり、R11はビスフェノールA、レゾルシノール、ヒドロキノン、ビスフェノールSおよびp,p′-ジヒドロキシビフェニルから誘導される結合基であり、nは1以上の整数である 化合物の着火遅延剤の有効量と重合体からなる着火遅延重合体組成物。」(1〜2頁の特許請求の範囲の第4項参照)、
(2-2)「 結合基は次に述べるものから誘導される。

」(6頁右下欄から7頁左上欄参照)、
(2-3)「本発明の目的に対してオリゴマーの着火遅延有効量は、重合体と組合せた場合に重合体を炎にさらした時の燃える傾向を弱めるシクロトリホスファゼンオリゴマーの量である。一般に、重量で1〜30%のオリゴマーを重合体と組合せた場合、重合体組成物に着火遅延性を与えるであろう。」(5頁右下欄4〜10行参照)、
(2-4)「本発明のオリゴマーは以下に記載するようにヘキサクロロシクロトリホスファゼンと置換されたフェノールあるいはフェノール類を適当なジオールと反応させることによって製造される。」(7頁右上欄4〜7行参照)、
(2-5)「実施例 1 ・・・p-ブロムフェノール0.80モル・・・KOH0.80モル・・・ヘキサクロロシクロトリホスファゼン0.27モル・・・ビスフェノールA0.27モルとKOH粒0.54モル・・・p-ブロモフェノール0.54モルとKOH0.54モルとを加え、・・・生成物が得られる。・・・塩素分析はすべてのP-Cl位置が反応したことを確認するために用いられる。更にC,H,PおよびBrの結果の比較は、・・・実施例1のnを決定するために用いることができる。」(7頁右上欄8行〜同頁右下欄2行参照)、
(2-6)実施例1の生成物の塩素量は0.3未満であること(7頁右下欄第1表参照)
(2-7)「実施例 2 ・・・p-ブロムフェノール1.6モルとヘキサクロロトリホスファゼン0.53モルをトルエン2lに溶かす。それからKOH粒(85%KOH)16モルを加え、・・・還流するまで加熱し、3時間還流する。・・・ビスフェノールA0.53モルを加え、・・・注意しながらKOH粒(85%KOH)1.06モルを加える。・・・更にp-ブロモフェノール1.06モルとKOH粒(85%KOH)1.06モルとを加え、溶液を6時間還流し、室温まで冷却してる濾過する。濾液を5%KOH水溶液で洗浄し、・・・真空乾燥させる。生成物は、・・・n=1〜10である。生成物の同定は実施例1で述べた方法によって以下のデータに基いている:・・・ Cl<0.3 」(8頁右上欄8行〜同頁左下欄15行参照)、
(2-8)「実施例 3-11 p-ブロムフェノールおよびビスフェノール-Aの代りに、それぞれ表に示してあるフェノールおよびジオールを用いることを除いては、大体において、実施例2の方法に従った。・・・最終的なモル比は実施例2と同様である。」(8頁右下欄1〜5行参照)、
(2-9)実施例4および7は、フェノールとしてフェノール、ジオールとしてビスフェノールAを用いた例であること(9頁左上欄1〜15行参照)。

3.検討
前記した(2-1)には、一般式で示された化合物を重合体の着火遅延剤とする発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
そして、前記した(2-1)に記載の一般式において、X1〜X5を水素とした場合の化合物は、フェニル基で置換された環状のホスファゼン化合物を(2-2)で示されるビスフェノールA、レゾルシノール、ヒドロキノン、ビスフェノールSおよびp,p′-ジヒドロキシビフェニルから誘導される結合基で架橋した化合物であると解され、(2-4)〜(2-9)の記載からは、前記化合物が実施例4、7として記載され、当該化合物は残存塩素量が0.3%未満になるまで反応させる実施例2の方法に従う方法により製造されると解されるから、前記引用発明において着火遅延剤とする化合物は、本願発明における「一般式(1)【化1】(省略)[式中mは3・・・の整数を示す。Phはフェニル基を示す。]で表される環状ホスファゼン化合物・・・が、m-,p-フェニレン基、ビフェニレン基及び基【化3】(省略)[式中Aは-C(CH3)2-、-SO2-、を示す。]からなる群より選ばれた少なくとも1種の架橋基により架橋されている化合物であって、(a)該架橋基は上記ホスファゼン化合物のフェニル基が脱離した2個の酸素原子間に介在しており、(c)残存塩素量が0.93%以下であること」という構成を満足するものである。
また、前記した(2-4)の記載は、(2-5)〜(2-9)に記載された実施例が「ヘキサクロロシクロトリホスファゼンと置換されたフェノール・・・を適当なジオールと反応させる」ものであることを表現しており、当該記載と、前記(2-1)の架橋環状ホスファゼン化合物の一般式、および、(2-5)〜(2-9)の前記架橋環状ホスファゼン化合物を残存塩素量が0.3%未満になるように反応して製造するとの記載を総合すると、引用発明において着火遅延剤とする化合物におけるフェニル基の含有割合は、ヘキサクロロトリホスファゼンを、生成物の残存塩素量が0.3%未満になるように、フェノールと反応させた化合物の全フェニル基の総数を基準として2/3程度(約66.6%)であると解され、前記引用発明において着火遅延剤とする化合物は、本願発明の「(b)架橋化合物中のフェニル基の含有割合が上記ホスファゼン化合物(1)・・・中の全フェニル基の総数を基準に50〜99.9%であり、」という構成をも備えるものである。
さらに、前記した(2-1)には、前記した架橋環状ホスファゼン化合物を着火遅延剤の有効量で重合体に配合することにより着火遅延重合体組成物とすることが記載され、前記した(2-3)には、「着火遅延有効量は、重合体と組合せた場合に重合体を炎にさらした時の燃える傾向を弱める・・・量である。」と記載されており、引用発明における「着火遅延剤」が本願発明における樹脂の発熱発火等を解決するために添加する「難燃剤」に相当するものであることは明かである。
してみると、前記引用発明は、本願発明の全ての構成を充足するものであり、本願発明は、引用例1に記載された発明である。

なお、請求人は、本願発明に係る難燃剤をポリカーボネート樹脂に配合した場合について実験結果を示し、残存塩素量を0.93%以下とすることに技術的な意義があると主張するが、当該残存塩素量の範囲は引用発明における範囲を包含するより広範囲のものであるうえに、前記実験結果は、ポリカーボネート樹脂以外の樹脂を用いた場合の結果について何ら示すものでなく、特許請求の範囲に記載された特定事項に対応した効果であるとできないものであるから、前記した本願発明の効果に係る主張は、採用することができない。
また、平成13年11月12日付けの意見書の8〜10頁で、「引用文献の実施例2と同様にして、・・・フェノキシホスファゼン化合物を製造しましたが、塩素含有量は1%を超えており」、本願発明が引用文献に記載された発明であるといえない旨を主張するが、実施例2と同様であれば、実施例2と同様に0.3未満の塩素含有量となるまで反応が進行すると解され、塩素含有量が1%を超える方法は、実施例2と同様でないことを示すとも解されるから、前記意見書のデータをみても、引用文献に記載された発明が本願発明の残存塩素量を満足しない発明であるとすることはできない。

4.むすび
したがって、本願発明は、本願の出願前に頒布された刊行物である引用例1に記載された発明であり、原審における平成13年9月4日付けの拒絶理由通知書に記載した理由1である、特許法第29条第1項第3号に規定する発明に該当するとの理由で、特許を受けることができないものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2003-12-09 
結審通知日 2003-12-10 
審決日 2003-12-24 
出願番号 特願平10-32770
審決分類 P 1 8・ 113- Z (C09K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 近藤 政克  
特許庁審判長 雨宮 弘治
特許庁審判官 佐藤 修
西川 和子
発明の名称 難燃剤、難燃性樹脂組成物及び難燃性樹脂成形体  
代理人 斎藤 健治  
代理人 中川 博司  
代理人 掛樋 悠路  
代理人 中野 睦子  
代理人 舘 泰光  
代理人 小原 健志  
代理人 関 仁士  
代理人 藤井 淳  
代理人 三枝 英二  

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