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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61K
管理番号 1092172
審判番号 不服2001-6210  
総通号数 52 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1997-08-12 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-03-16 
確定日 2004-02-13 
事件の表示 平成 8年特許願第 71305号「アトピー性皮膚炎用抗炎症剤」拒絶査定に対する審判事件[平成 9年 8月12日出願公開、特開平 9-208451]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
本願は、平成8年3月1日(国内優先権主張 平成7年11月27日)の出願であって、その請求項1に係る発明は、平成12年6月28日付手続補正書により補正された明細書の記載から見てその特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである(以下、本願発明という。)。

「モロヘイヤの水および/または有機溶媒抽出物を主成分とするアトピー性皮膚炎用抗炎症剤。」

これに対し原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先権主張の日前に頒布された刊行物1〜3には以下の事項が記載されている。

刊行物1: 特開平3ー153611号公報
モロヘイヤの葉から得られる抽出液を配合してなる化粧料の発明に関し、モロヘイヤはビタミンA、B1、B2、ナイアシン等のビタミン類を豊富に含んでおり、ビタミンAは皮膚の角化の改善や新陳代謝促進作用があり、ビタミンB1、B2は肌荒れ、かぶれの防止と治療効果等があり、又ナイアシンは皮膚炎の治療、その他皮膚病の予防に効果があること。このようにその抽出物は、皮膚医学的に優れた効果が期待できること(第1頁左欄)。
抽出に用いる溶媒は精製水、エタノール、プロピレングリコールなどであること(第1頁右欄)。
モロヘイヤ抽出物を配合したクリームは使用感がすぐれ、肌の状態を改善する効果が見られること(実施例5)。

刊行物2:特開平4ー49238号公報
皮膚疾患治療薬としては一般には液、軟膏・・の外用剤が使用されるが、同時にビタミンB2やB6を内服する方法もとられ、ビタミンB2は古くから「皮膚のビタミン」と呼ばれ脂漏性湿疹、・・などに有効であると報告されており、口内炎、湿疹、皮膚炎、かぶれ、にきび、肌荒れ等に使用されていること。中等度以上の蕁麻疹,1gE値1000以上を示すアトピー性皮膚炎でビタミンB2欠乏が観察されていること(第1頁)。

刊行物3: 特開平2ー286611号公報
モロヘイヤ抽出物は、優れた保湿効果を有しており、乾燥肌、乾燥髪に柔軟性と弾力性を与え、肌荒れ、ヒビ、アカギレ、フケ、カユミ、枝毛の予防又は治療に有効であること(第2頁左下欄)。
モロヘイヤの抽出溶媒は水、エタノール、多価アルコール又はそれらの混液であること(第2頁左下欄)。
モロヘイヤの効果は、含有する多糖類が、ヒアルロン酸と同様に保水効果に関与すると考えられ、豊富なミネラル、鉄、・・ビタミンA効力物質、ビタミンB等その他多数の未知化合物が含有されており、それらが相加的又は相乗的に作用して効果を発揮するものと考えられること(第2頁右下欄、成分組成については第3頁右上欄)。
モロヘイヤ抽出液には皮膚アレルギーの原因となり得るような物質は含有していないこと(第3頁左下欄)。

本願発明と刊行物1,3のモロヘイヤ抽出物とを対比すると、両者は、モロヘイヤの水および/又は有機溶媒抽出物である点で一致し、前者ではこれを主成分とするアトピー性皮膚炎用抗炎症剤であるのに対し、後者は乾燥肌や肌荒れの予防治療など皮膚医学的に優れた効果を有する成分を含有するとされているが、アトピー性皮膚炎を対象とする抗炎症剤であることの記載はない点で相違する。

そこで検討するに、本願出願時においてアトピー性皮膚炎は原因が不明で原因療法ができない病気とされ、したがって、皮膚の症状、痒みの程度に応じた対症療法が行われていること、通常はステロイド外用剤、鎮痒剤が使用されているが、ステロイド治療でいったん皮膚炎を抑えたら、以後一時ステロイド軟膏以外のものでしのぎ、次のひどい再発まではステロイド外用を休止するほうが身体全体のためには好ましいことが周知である(世界大百科事典1 平凡社 1988年3月15日初版発行 p322アトピー性皮膚炎の項)。
そして、アトピー性皮膚炎においては臨床的に乾燥型が多く保湿により症状が改善することが周知であり、また、ビタミンB2欠乏も知られていること(刊行物2)を考慮するならば、多糖類やビタミンを含み皮膚医学的に優れた効果を有し、皮膚アレルギーの原因物質を含まず、化粧品成分としてあるいは一般の皮膚炎に対する対症療法に使用可能なモロヘイヤ抽出物が、一般の皮膚炎と同様に重症でないアトピー性皮膚炎の皮膚症状の緩和や治療にも有効であることは当業者が容易に予測しうることである。
また、その効果にしても、本願明細書の記載(特に試験例1〜5)から見て当業者の予測を越える格別なものとすることはできない。

したがって、本願発明は引用刊行物1〜3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2003-11-27 
結審通知日 2003-12-02 
審決日 2003-12-15 
出願番号 特願平8-71305
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 内田 淳子新留 素子種村 慈樹冨永 保  
特許庁審判長 森田 ひとみ
特許庁審判官 渕野 留香
横尾 俊一
発明の名称 アトピー性皮膚炎用抗炎症剤  

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