ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B66C |
---|---|
管理番号 | 1092185 |
審判番号 | 不服2002-6948 |
総通号数 | 52 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1993-12-03 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2002-04-22 |
確定日 | 2004-01-05 |
事件の表示 | 平成 4年特許願第294729号「クレーンの上部構造体および下部構造体の整合システム」拒絶査定に対する審判事件[平成 5年12月 3日出願公開、特開平 5-319782]について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 (1)出願:平成4年9月21日(パリ条約による優先権主張1991年9月20日、米国) (2)拒絶の理由の通知:平成13年6月13日(発送日:同年6月18日) (3)意見書・補正書の提出:平成13年12月18日 (4)拒絶の査定:平成14年1月16日(発送日:同年2月21日) (5)審判の請求:平成14年4月22日 2.本願発明 本願の請求項1及び14に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」及び「本願発明14」という。)は、平成13年12月18日付けの手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1及び14に記載された次のとおりのものと認める。 「【請求項1】 再組立てを容易にするようにクレーンの上部構造体をクレーンの下部構造体に整合させる方法であって、 a)クレーンの上部構造体をほぼ水平に支持し、 b)クレーンの下部構造体を前記上部構造体の下側にほぼ整合させて位置させ、 c)前記下部構造体を前記上部構造体から下側に吊下げる装置を取付け、 d)前記下部構造体を前記吊下げ装置によって吊下げ、 e)前記下部構造体に対する重力作用により前記下部構造体を前記上部構造体に整合させ、 f)前記上部構造体を前記下部構造体に再組立てすることを含み、 g)前記クレーンが揺動ベアリングとアダプタフレームとを有し、該アダプタフレームは、前記上部構造体を前記下部構造体から外したときでさえ、前記揺動ベアリングをそのままにしておくことができる、前記方法。」 「【請求項14】再組立てを容易にするように、クレーンの上部構造体を下部構造体に整合させる方法であって、前記下部構造体に対する前記上部構造体の前記再組立てを、前記上部構造体の重量を前記下部構造体に負担させることなく達成するようにした方法。」 3.刊行物記載の発明 これに対して、原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先権主張日前に日本国内において頒布された刊行物である特開昭56-65793号公報(以下、「刊行物」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。 (a)「本発明は、・・・アウトリガーにより上部旋回体を適宜高さに支持した状態において、該上部旋回体の下部に台車を進入させ、続いて前記上部旋回体と台車の芯を合わせた際における対応する少なくとも3箇所をチェーンにより連結した後、前記アウトリガーを伸長し上部旋回体によりチェーンを介して台車を吊り上げることにより上部旋回体と台車の芯合せを行い、続いて前記アウトリガーを縮小し上部旋回体を台車上に載置して結合することを特徴とする上下分解式クレーンにおける結合方法、に係るものである。」(第2頁右上欄第1〜12行) (b)「台車(1)と上部旋回体(3)との結合を行うに当っては、アウトリガー(6)を張って上部旋回体(3)を所定の高さ位置に持ち上げて支持した状態において、第2図矢印方向から台車(1)を上部旋回体(3)の下部に進入させ旋回環(2)と(4)が凡そ一致するような位置で停止させる。第2図及び第3図の状態では前後に間隔(12)、左右に間隔(13)だけずれている。この状態で上部旋回体(3)と台車(1)の対応する位置における取付金具(10)(10)’間に、取付ピン(11)(11)’を介してチェーン(5)を取付ける。続いてアウトリガー(6)を伸長させれば、第5図及び第6図に示す如く台車(1)がチェーン(5)を介して上部旋回体(3)につり下げられることになり、対向する旋回体(2)と(4)が自動的に芯合わせされることになる。従ってこの状態からアウトリガー(6)を徐々に縮小すれば、台車(1)がまず地面上に降され、続いて上部旋回体(3)の旋回環(4)が台車(1)上の旋回環(2)に係合し、更に旋回環(2)(4)自身の芯合わせ機能により正確に芯合わせされ、結合が行われる。」(第2頁左下欄第14行〜右下欄第13行) (c)第2,3図の記載より、上部旋回体(3)は、ほぼ水平に支持されていることが看取できる。 上記記載事項及び第2〜6図の記載によれば、刊行物には次の発明が記載されているものと認められる。 「結合を容易にするように上下分解式クレーンの上部旋回体(3)をクレーンの台車(1)に整合させる方法であって、 前記クレーンの上部旋回体(3)をほぼ水平に支持し、 前記クレーンの台車(1)を前記上部旋回体(3)の下側にほぼ整合させて位置させ、 前記台車(1)を前記上部旋回体(3)から下側に吊下げるチェーン(5)を取付け、 前記台車(1)を前記チェーン(5)によって吊下げ、 前記上部旋回体と前記台車(1)の芯合わせを行い、 前記上部旋回体(3)を前記台車(1)に結合することを含み、 前記クレーンの上部旋回体及び台車のそれぞれが旋回環(4)(2)を有するものである、前記方法。」(以下、「刊行物記載の発明」という。) 4.対比・判断 (1)本願発明1について 本願発明1と刊行物記載の発明とを対比すると、後者の「結合」は、その機能・作用からみて、前者の「再組立て」に相当し、以下同様にして、「上下分解式クレーン」は「クレーン」に、「上部旋回体(3)」は「上部構造体」に、「台車(1)」は「下部構造体」に、「チェーン(5)」は「吊下げ装置」に、それぞれ相当する。 また、後者の「上部旋回体(3)と台車(1)の芯合わせを行い」は、その前の工程で「台車(1)をチェーン(5)によって吊下げ」ていることから、台車(1)に対する重力の作用によって「芯合わせ」を行っていることは当業者にとって明らかであり、そして、「芯合わせ」は、「整合」の概念に含まれるものである。 また、後者の「クレーンの上部旋回体及び台車のそれぞれが旋回環(4)(2)を有する」と、前者の「クレーンが揺動ベアリングを有し」とは、「クレーンが揺動案内機構部を有し」の限りにおいて一致している。 してみると、両者の一致点、相違点は次のとおりになる。 〈一致点〉 「再組立てを容易にするようにクレーンの上部構造体をクレーンの下部構造体に整合させる方法であって、 クレーンの上部構造体をほぼ水平に支持し、 クレーンの下部構造体を前記上部構造体の下側にほぼ整合させて位置させ、 前記下部構造体を前記上部構造体から下側に吊下げる装置を取付け、 前記下部構造体を前記吊下げ装置によって吊下げ、 前記下部構造体に対する重力作用により前記下部構造体を前記上部構造体に整合させ、 前記上部構造体を前記下部構造体に再組立てすることを含み、 前記クレーンが揺動案内機構部を有するものである、前記方法。」 〈相違点1〉 本願発明1が、「クレーンが揺動ベアリングとアダプタフレームとを有し、アダプタフレームは、上部構造体を下部構造体から外したときでさえ、揺動ベアリングをそのままにしておくことができる」ものであるのに対し、刊行物記載の発明は、「クレーンの上部旋回体及び台車のそれぞれが旋回環(4)(2)を有する」ものである点。 上記〈相違点1〉について検討する。 本願発明1における「揺動ベアリングをそのままにしておくことができる」の技術的意義について、本願明細書には何ら記載されていないので、平成13年12月18日付け意見書(3)の「再び、請求項1、6、15、23の発明に関連して述べると、引用例は、旋回ベアリング(旋回環2、4)で連結し、連結解除するようになっている。これに対して、本発明は、旋回又は揺動ベアリングの部分を連結解除する必要性を回避している。これは、クレーンの上部構造体と下部構造体とが連結解除されているときでさえ、アダプタフレームが揺動ベアリングをそのままにしておくことによって達成されている。」の記載を参酌すると、「揺動ベアリングを構成する外側旋回環と内側旋回環とが、上部構造体を下部構造体から外したときでも、一体のままである。」ということにあるものと解する余地がある。 しかしながら、上部構造体と下部構造体とが分解、組立て可能なクレーンにおいて、アダプターフレームを設け、それにより、上部構造体を下部構造体から外したときでも、揺動ベアリングの外側旋回環と内側旋回環が一体のままであるようにすることは本願の優先権主張日前に周知の技術である(例えば、実願昭58-72434号(実開昭59-178465号)のマイクロフィルム(「固定リング9」又は「締結リング7」がアダプタフレームに相当)、特開昭59-4596号公報(「上部旋回体側のリング状部材7」又は「下部旋回体側のリング状部材8」がアダプタフレームに相当)、特開昭58-183588号公報(「上部旋回体側のリング状部材7」又は「下部旋回体側のリング状部材8」がアダプタフレームに相当)を参照。)。 してみると、上記〈相違点1〉に係る本願発明1の構成は、刊行物記載の発明に上記周知の技術を、単に適用したに過ぎないものというべきであって、刊行物記載の発明及び上記周知の技術から、当業者が容易に想到できたものである。 また、本願発明1が奏する作用効果も、刊行物記載の発明及び上記周知の技術から、当業者が予測し得る程度のものである。 したがって、本願発明1は、刊行物記載の発明及び上記周知の技術から、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (2)本願発明14について 本願発明14と刊行物記載の発明とを対比すると、後者の「結合」は、その機能・作用からみて、前者の「再組立て」に相当し、以下同様にして、「上下分解式クレーン」は「クレーン」に、「上部旋回体(3)」は「上部構造体」に、「台車(1)」は「下部構造体」に、それぞれ相当する。 してみると、両者の一致点、相違点は次のとおりになる。 〈一致点〉 「再組立てを容易にするようにクレーンの上部構造体をクレーンの下部構造体に整合させる方法」 〈相違点2〉 本願発明14が、「下部構造体に対する上部構造体の再組立てを、上部構造体の重量を下部構造体に負担させることなく達成する」ものであるのに対し、刊行物記載の発明は、「クレーンの上部構造体をほぼ水平に支持し、前記クレーンの下部構造体を前記上部構造体の下側にほぼ整合させて位置させ、前記下部構造体を前記上部構造体から下側に吊下げるチェーン(5)を取付け、前記下部構造体を前記チェーン(5)によって吊下げ、前記上部旋回体と前記下部構造体の芯合わせを行い、前記上部構造体を前記下部構造体に結合することを含み、前記クレーンの上部旋回体及び台車のそれぞれが旋回環(4)(2)を有するものである」点。 上記〈相違点2〉について検討する。 本願発明14の、「下部構造体に対する上部構造体の再組立てを、上部構造体の重量を下部構造体に負担させることなく達成する」の技術的意義は、再組立てが完了した段階では、上部構造体の重量が下部構造体に加わることは、クレーンの構造からみて明らかであるから、「再組立ての過程において、上部構造体の重量を下部構造体に負担させることがない」ということにあることは、当業者にとって明らかである。そして、このような作用は、主として、下部構造体を上部構造体に吊下げて再組立てを行うことに起因するものである。 そして、刊行物記載の発明も、「下部構造体を上部構造体から吊下げ」て再組立てを行うものであるから、再組立ての過程において、上部構造体の重量を下部構造体に格別負担させることがないものであると解される。したがって、刊行物記載の発明を、上部構造体の重量を下部構造体に負担させることがないように構成することは、当業者が容易に想到できたものと認められる。 してみると、上記〈相違点2〉に係る本願発明14の構成は、刊行物記載の発明から、当業者が容易に想到できたものである。 また、本願発明14が奏する作用効果も、刊行物記載の発明から、当業者が予測し得る程度のものである。 したがって、本願発明14は、刊行物記載の発明から、当業者が容易に発明をすることができたものである。 なお、審決の結論に直接関係するものではないが、平成14年7月31日付けの請求の理由を補正対象とする手続補正書に記載された、請求項14,24についての補正案に係る発明(以下、それぞれ「補正案発明14」、「補正案発明24」という。)ついても検討しておく。 該補正案は次のようなものである。 「【請求項14】 再組立を容易にするように、クレーンの上部構造体を下部構造体に整合させる方法であって、前期下部構造体に対する前記上部構造体の前記再組立を、アダプタフレームを介して前記上部構造体の重量を前記下部構造体に負担させることなく達成し、前記アダプタフレームは、前記再組立中、揺動ベアリングを連結させたままにしておくことができる、方法。 【請求項24】 クレーンの上部構造体を下部構造体に再組立てするための整合システムにおいて、前記下部構造体に対する前記上部構造体の前記再組立てを、アダプタフレームを介して前記上部構造体の重量を前記下部構造体に負担させることなく達成し、前記アダプタフレームは、前記再組立中、揺動ベアリングを連結させたままにしておくことができる、整合方法。」 補正案発明14及び24は、実質的には、本願発明14に、「アダプタフレームを介し」たこと、「アダプタフレームは、前記再組立中、揺動ベアリングを連結させたままにしておくことができる」ものであることが付加されたものである。しかしながら、「アダプタフレームを設けることにより、揺動ベアリングの外側旋回環と内側旋回環が、上部構造体を下部構造体から外したときでも、一体のままである」ようにすることは、前示のとおり周知の技術であるから、補正案発明14及び24における上記付加された点は、刊行物記載の発明に、上記周知の技術を適用することにより当業者が容易になし得たものというべきである。 また、補正案発明14,24が奏する作用効果も、刊行物記載の発明及び上記周知の技術から、当業者が予測し得る程度のものである。 したがって、補正案発明14及び24は、刊行物記載の発明及び上記周知の技術から、当業者が容易に発明をすることができたものである。 5.むすび 以上のとおり、本願発明1及び本願発明14は、刊行物記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は拒絶の査定をすべきものである。 よって、上記結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2003-08-01 |
結審通知日 | 2003-08-04 |
審決日 | 2003-08-15 |
出願番号 | 特願平4-294729 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(B66C)
|
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 鳥居 稔 |
特許庁審判長 |
舟木 進 |
特許庁審判官 |
清田 栄章 鈴木 充 |
発明の名称 | クレーンの上部構造体および下部構造体の整合システム |
代理人 | 大塚 文昭 |
代理人 | 宍戸 嘉一 |
代理人 | 中村 稔 |
代理人 | 竹内 英人 |
代理人 | 村社 厚夫 |
代理人 | 今城 俊夫 |
代理人 | 小川 信夫 |